説明

バルブ装置

【課題】バルブ装置において、シート部材に摩耗が生じた場合でも弁閉時にバルブを確実にシートさせ、流体の漏出を防止する。
【解決手段】排気ガス再循環バルブ10を構成するボディ本体12には、連通室26に臨み、且つ、ガス流入口20に臨む環状凹部24を備え、前記環状凹部24には、バルブシート16の環状凸部35が挿入される。この環状凸部35は、ボディ本体12側に向かって突出し、バルブシート16とボディ本体12の内壁面12aとの間には、リング状のスペーサ42が設けられ、前記バルブシート16に対して当接している。そして、バルブシート16のシート部32が摩耗した際、弁閉時において前記バルブシート16がボールバルブ14から離間する方向に移動してしまうことがスペーサ42によって規制されると共に、環状凸部35によってガスのスペーサ42側への流入が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通する流路をバルブで開閉することにより該流体の流通状態を切り換えるバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を弁体の回転作用下に切り換えて前記流体の流通状態を制御するバルブ装置が知られている。このようなバルブ装置は、例えば、流路を有した弁箱の内部に、断面U字状の弁体が回転自在に設けられ、該弁体が前記流路に設けられたシートリングの弾性体に当接することによって流路が閉塞され、一方、該弁体が前記弾性体から離間することによって前記流路が開口し、前記弁体との間を通じて流体が流通することとなる。なお、弾性体は、弾性材料から形成されシートリングの端部に装着されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−161505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に係るバルブ装置では、長期間にわたって使用した場合に、弁閉時における弁体との当接によって弾性体が徐々に摩耗し、摩耗した弾性体と前記弁体とが摺接するのみで当接せず、次第にこれらの間に隙間が生じてしまい、それに伴って、流路を完全に閉塞することができず、前記弁閉時において流体の漏れが生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、シート部材に摩耗が生じた場合でも、弁閉時においてバルブを確実にシートさせ流体の漏出を防止することが可能なバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体の流通する通路を有したボディと、前記通路に配置され少なくとも外周面の一部が球面に形成された球面形状部を有し、該球面形状部の曲率中心から外れた軸線を有したシャフトを介して回動可能に設けられたバルブと、前記通路に設けられ前記流体の流通する孔部を有し前記ボディに対して可動自在に設けられ、且つ、前記バルブが着座するシート部材とを備えるバルブ装置において、
前記ボディと前記シート部材との当接面には、前記孔部又は前記通路を囲む溝部が形成され、前記溝部内に、前記シート部材に当接するスペーサが設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ボディと該ボディにおいて可動自在に設けられたシート部材との当接面に、前記シート部材の孔部又は前記ボディの通路を囲むように溝部が形成され、前記溝部内に前記シート部材に当接するスペーサが設けられる。
【0008】
従って、シート部材がバルブとの当接作用下に摩耗し、該バルブとの当接部位が後退するのに伴って、前記バルブの回動角度範囲が広がることを抑制することができる。その結果、例えば、シート部材が長期間の使用によって摩耗した場合でも、バルブを確実に前記シート部材に対して着座させて弁閉状態とし、通路を通じた流体の流通を遮断することができる。
【0009】
また、スペーサは、ボディとシート部材との当接面に形成された溝部内に設けられるため、通路を流通する流体が前記スペーサ側へと流入することが抑制され、例えば、流体が排気ガスであった場合に懸念される燃焼生成物の付着が防止され、該燃焼生成物の付着に起因したシート部材及びスペーサの固着を防止することができる。
【0010】
さらに、溝部は、シート部材とボディとの当接面に対してシート部材の軸方向のいずれか一方に窪ませて形成するとよい。
【0011】
さらにまた、溝部は、シート部材とボディとの当接面に対して通路を流通する流体の流通方向と反対方向に窪ませて形成するとよい。
【0012】
またさらに、ボディ又はシート部材には、通路に臨み、且つ、シート部材とボディとの当接面に対して軸方向に突出した壁部を有するとよい。
【0013】
また、バルブ装置は、内燃機関の排気系から吸気系へと排気ガスを再循環させる流路を切換可能な排気ガス再循環バルブとして用いるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、ボディと該ボディにおいて可動自在に設けられたシート部材との当接面に、前記シート部材の孔部又は前記ボディの通路を囲むように溝部を形成し、前記溝部内に前記シート部材に当接するスペーサを設けることにより、例えば、バルブの回動角度範囲が広がることを抑制することができる。その結果、例えば、シート部材が長期間の使用によって摩耗した場合でも、バルブを確実に前記シート部材に対して着座させ弁閉状態とし、通路を通じた流体の流通を遮断することが可能となる。さらに、ボディ若しくはシート部材とを別部材としてスペーサを設けているため、例えば、バルブ装置の組付誤差が生じた場合でも、適切な厚さを有したスペーサを選択的に用いることによってバルブを確実にシート部材に対して着座させることができ、シール性の確保が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブの全体断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブのバルブシート近傍を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブのバルブシート近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るバルブ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブを示す。
【0019】
この排気ガス再循環バルブ10は、図1及び図2に示されるように、ボディ本体(ボディ)12と、該ボディ本体12の内部に回動自在に設けられるボールバルブ(バルブ)14と、前記ボールバルブ14の外周面に当接するバルブシート(シート部材)16と、前記ボディ本体12の上部に設けられ、前記ボールバルブ14に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構18とを含む。
【0020】
このボディ本体12は、例えば、金属製材料から形成され、その下側には、排気ガスの供給されるガス流入口(通路)20と、その反対側に設けられ、前記排気ガスを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口(通路)22が設けられている。なお、ボディ本体12において、ガス流入口20とガス流出口22とは略一直線上に設けられる。
【0021】
また、ガス流入口20の端部には、ボディ本体12の内壁面12aに対して所定深さで窪み、且つ、後述する連通室26に臨むように環状凹部24が形成される。そして、環状凹部24は、ガス流入口20に対して拡径し、バルブシート16の環状凸部35が挿入される。
【0022】
このガス流入口20とガス流出口22との間には連通室26が形成され、この連通室26の内部に略球状のボールバルブ14が回動自在に配設される。
【0023】
また、連通室26とガス流入口20との間には、環状凹部24に対してさらに拡径した装着孔28が形成され、該装着孔28には、ボールバルブ14の外周面に摺接するバルブシート16が設けられる。
【0024】
このバルブシート16は、例えば、銅の焼結体等の金属製材料から形成され、装着孔28においてガス流入口20側(矢印A1方向)に配置される本体部30と、該本体部30に隣接しボールバルブ14に当接するシート部32と、前記本体部30の内周側から軸方向(矢印A1方向)に沿って円筒状に突出した環状凸部35とを含む。本体部30及びシート部32の中央には、連通孔34が軸方向(矢印A1、A2方向)に貫通し、前記連通孔34に沿って環状凸部35が形成される。すなわち、本体部30及びシート部32は、連通孔34を中心として環状に形成される。
【0025】
また、バルブシート16は、装着孔28において軸方向(矢印A1、A2方向)及び径方向に移動可能に設けられ、該装着孔28の連通室26側(矢印A1方向)に設けられたリング状のストッパ36と本体部30との間にスプリング38が介装され、該スプリング38によって前記バルブシート16がガス流入口20側(矢印A1方向)へと付勢されている。
【0026】
シート部32は、図1及び図2に示されるように、本体部30に隣接し該本体部30から離間する方向(矢印A2方向)に向かって徐々に拡径したシート面40を有し、前記シート面40に対してボールバルブ14が当接することによってガス流入口20と連通室26との連通が遮断された弁閉状態となる。
【0027】
環状凸部35は、本体部30に対してシート部32から離間する方向に所定長さで突出し、ボディ本体12の環状凹部24に挿入される。なお、環状凹部24内において、環状凸部35との間には若干のクリアランスが設けられている。
【0028】
バルブシート16とボディとの間には、環状凸部35の外周側となる位置にリング状のスペーサ42が設けられる。このスペーサ42は、断面略長方形状に形成され、軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って所定厚さで形成される。そして、バルブシート16の本体部30とボディ本体12との間に挟持されている。
【0029】
一方、ボディ本体12の略中央部には、図1に示されるように、連通室26から鉛直上方に向かって貫通したシャフト孔44が形成され、後述する駆動力伝達機構18の第2シャフト50が挿通される。
【0030】
ボールバルブ14は、その上部及び下部が平面状に形成され、前記上部及び下部を除いた部分の外周面は球面形状部46として構成されており、この球面形状部46の表面でバルブシート16に対して当接する。
【0031】
また、ボールバルブ14の下部には、第1シャフト48が連結され、一方、前記ボールバルブ14の上部には、第2シャフト50が連結されている。第1シャフト48は、ボディ本体12の下部に装着された軸受52aによって回転自在に支持されている。第2シャフト50は、前記ボディ本体12の上部に装着された軸受52bにより回転自在に支持されている。
【0032】
すなわち、第1シャフト48及び第2シャフト50は、ボールバルブ14を間として同軸上に設けられ、前記第1及び第2シャフト48、50と共に前記ボールバルブ14が回転自在に設けられる。
【0033】
第1シャフト48及び第2シャフト50の軸線B1の位置は、図2に示されるように、ボールバルブ14における球面形状部46の曲率中心(ほぼ球状のボールバルブ14の場合、その中心)を通る軸線B2から偏心した位置に設定されている。すなわち、軸線B1は、ボールバルブ14の軸線B2に対して所定距離だけ離間して平行となるように設定されている。このため、ボールバルブ14は、軸線B2から偏心した位置に設定された軸線B1を中心として回動(揺動)するように連通室26内に設置されている。
【0034】
駆動力伝達機構18は、ボールバルブ14の上部に連結される第2シャフト50と、前記第2シャフト50の上端部に連結されるバルブギア54と、ボディ本体12の上部に連結され、前記バルブギア54を介して前記第2シャフト50を回転駆動させる駆動源56とを含む。
【0035】
第2シャフト50は、バルブギア54の略中央部に挿通されてナット58を締め付けることによって固定されている。駆動源56は、例えば、通電作用下に回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなり、その回転駆動力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと伝達されることにより、第2シャフト50に連結されたボールバルブ14が軸線B1を中心として回動動作する。この場合、ボールバルブ14の下部に連結された第1シャフト48は、軸受52aの支持作用下に前記ボールバルブ14と一体となって回転する。
【0036】
本発明の第1の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1及び図2に示されるように、ボールバルブ14がバルブシート16のシート面40に着座し、ガス流入口20とガス流出口22との間の流路が前記ボールバルブ14によって遮断された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0037】
図2に示すように、初期位置では、ボールバルブ14の側面に設けられた球面形状部46がバルブシート16のシート部32に当接している。従って、ガス流入口20にガスが供給されているが、前記ガスはバルブシート16より下流側(矢印A2方向)には流入しない。
【0038】
次に、このような弁閉状態から、図1に示す駆動源56が駆動すると、該駆動源56の回転駆動力がバルブギア54を介して第2シャフト50へと伝達され、前記第2シャフト50に連結されたボールバルブ14が軸線B2から偏心した位置に設定された軸線B1を中心として所定角度だけ回転する。このように、偏心した軸線B1を中心にボールバルブ14が回転することにより、前記ボールバルブ14はバルブシート16から離間する方向に変位する。
【0039】
これにより、ボールバルブ14の球面形状部46が、シート部32から離間することによって、弁開状態となり該球面形状部46と前記シート部32との間の間隙を通じてガス流入口20に供給されたガスが連通室26内へと導入される。
【0040】
この際、バルブシート16の環状凸部35によってボディ本体12とスペーサ42との間の間隙が覆われているため、ガス流入口20から連通室26へと流通するガスが前記間隙に直接流入することが防止される。換言すれば、ガスは、ガス流入口20の軸方向(矢印A2方向)に沿って流通するため、該ガスの流通方向と直交方向となる環状凸部35と環状凹部24との間からスペーサ42側へと流入することが抑制される。
【0041】
その結果、例えば、ガスに含まれる燃焼生成物等がスペーサ42、バルブシート16及びボディ本体12に対して付着することによって固着し、前記バルブシート16の軸方向及び径方向の移動を妨げることが防止される。
【0042】
そして、駆動源56の駆動作用下にさらにボールバルブ14を回転させることにより、該ボールバルブ14がバルブシート16から徐々に離間し、前記ボールバルブ14が初期位置から、例えば、約90°回転した状態で完全な弁開状態(全開状態)となる。このような弁開状態において、ガス流入口20に供給されたガスが、バルブシート16の連通孔34、連通室26を通じてガス流出口22へと流通し、図示しない内燃機関へと供給される。
【0043】
次に、長期間の使用によってバルブシート16のシート部32が摩耗した場合について簡単に説明する。ボールバルブ14を開閉動作させる場合、その球面形状部46がシート部32に対して衝突、摺動等することにより、前記シート部32の表面が徐々に摩耗していく。これにより、シート部32に対するボールバルブ14の着座位置が、ガス流入口20側(矢印A1方向)へと徐々に後退していくこととなる。すなわち、摩耗していないバルブシート16にボールバルブ14が着座した初期の弁閉状態と比較し、該ボールバルブ14が所定角度だけ大きく回転することによって初めて前記バルブシート16に着座した弁閉状態となる。
【0044】
そして、ボールバルブ14の全開状態を一定とした場合、シート部32の摩耗が進行するのに伴って、弁閉状態とするためのボールバルブ14の回転角度範囲が大きくなると共に、バルブシート16のシート部32がガス流入口20側(矢印A1方向)へと移動(後退)してしまうため、例えば、該バルブシート16のシート部32が後退し過ぎた場合には、ボールバルブ14の球面形状部46をシート部32に対して当接させて弁閉状態とすることができなくなる。具体的には、ボールバルブ14とバルブシート16とは摺接するのみで、前記バルブシート16に対してボールバルブ14を所定圧力で当接させ弁閉状態とすることができなくなり、次第にこれらの間に間隙が生じ、ガス流入口20に供給されたガスが連通室26側へと漏出してしまうこととなる。
【0045】
そこで、バルブシート16のガス流入口20側(矢印A1方向)への移動量を調整する目的で、該バルブシート16の本体部30とボディ本体12の内壁面12aとの間に所定厚さのスペーサ42を設けることにより、ボールバルブ14の回動角度範囲を予め狭めておけば、摩耗時においても前記ボールバルブ14の回動角度範囲の広がりを抑制することができ、前記バルブシート16のシート部32にボールバルブ14を所定圧力で確実に着座させて弁閉状態とすることができる。換言すれば、スペーサ42は、ボールバルブ14の回動角度範囲を調整可能な調整手段として機能する。
【0046】
なお、このスペーサ42の軸方向に沿った厚さは、バルブシート16が摩耗した際、ボールバルブ14を所定圧力で着座させることが可能な該バルブシート16の位置と、前記環状凹部24の底面との間の軸方向に沿った距離に基づいて設定される。
【0047】
以上のように、第1の実施の形態では、軸方向及び径方向に移動自在に設けられたバルブシート16とボディ本体12の内壁面12aとの間に、所定厚さで環状のスペーサ42を設けることにより、該バルブシート16がボールバルブ14との当接作用下に摩耗した場合でも、前記ボールバルブ14の回動角度範囲の広がりを抑制することが可能となる。その結果、バルブシート16が摩耗した場合でも、ボールバルブ14を所定圧力で前記バルブシート16に対して確実に着座させ弁閉状態とすることが可能となる。
【0048】
また、ボディ本体12若しくはバルブシート16とを別部材としてスペーサ42を設けているため、例えば、排気ガス再循環バルブ10の組付誤差が生じた場合でも、適切な厚さを有したスペーサ42を選択的に用いることによってボールバルブ14を確実にバルブシート16に対して着座させることができ、シール性の確保が容易となる。
【0049】
さらに、スペーサ42は、バルブシート16の環状凸部35によってガス流入口20に露呈することがなく、ボディ本体12と前記スペーサ42との間の間隙も覆われているため、前記ガス流入口20を流通するガスが前記スペーサ42側に流入することが抑制され、該ガスに含まれる燃焼生成物等の付着による前記バルブシート16の固着が防止される。その結果、ボールバルブ14の回転に追随させてバルブシート16を軸方向及び径方向に好適に移動させることができる。
【0050】
次に、第2の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ100を図3に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0051】
この第2の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ100では、バルブシート102を構成する本体部30の端面に環状凸部104が形成され、該環状凸部104が、ボディ本体12の内壁面12aに形成された環状凹部106にスペーサ108と共に挿入されている点で、第1の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ10と相違している。
【0052】
この排気ガス再循環バルブ100では、連通室26に臨むボディ本体12の内壁面12aに、該連通室26から離間する方向(矢印A1方向)に窪み、且つ、ガス流入口20から半径外方向に所定距離だけ離間した環状凹部106が形成される。この環状凹部106の底部には、断面長方形状でリング状に形成されたスペーサ108が収納される。一方、環状凸部104は、バルブシート102を装着孔28に装着した際、環状凹部106と対向する位置に形成される。そして、環状凹部106に環状凸部104が挿入されることによってスペーサ108がボディ本体12とバルブシート102との間に挟持される。
【0053】
すなわち、スペーサ108が、環状凹部106によってボディ本体12の内壁面12aに対してガスの流通方向(矢印A2方向)とは反対方向(矢印A1方向)にオフセットして配置されている。
【0054】
以上のように、第2の実施の形態では、スペーサ108を、ボディ本体12の内壁面12aに窪んだ環状凹部106内に配置し、しかも、前記環状凹部106にバルブシート102の環状凸部104を挿入する構成としているため、ガス流入口20を流通するガスが、その流通方向と直交するバルブシート102とボディ本体12の内壁面12aとの間を通じてスペーサ108側へと流入することが抑制され、さらに、前記スペーサ108の設けられた環状凹部106は、ガスの流れ方向(矢印A2方向)と反対方向(矢印A1方向)に窪んで形成されているため、前記ガスが前記環状凹部106に流れ込むのを抑制することができる。換言すれば、環状凹部106と環状凸部104とを組み合わせることによってボディ本体12とバルブシート102との間の間隙を、断面略U字となるクランク状とすることができるため、このクランク状の間隙を通じてガスがスペーサ108側へと流入することを好適に防止することができる。
【0055】
その結果、ガスが、環状凹部106へと流入することが好適に防止され、該ガスに含まれる燃焼生成物等によるスペーサ108、バルブシート102の固着を回避することが可能となり、前記バルブシート102の可動性が確保され、前記ボールバルブ14をバルブシート102に対して確実に着座させて弁閉状態とすることができる。
【0056】
次に、第3の実施の形態に係るバルブ装置として用いられる排気ガス再循環バルブ150を図4に示す。なお、上述した第2の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0057】
この第3の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ150では、ガス流入口20に臨むボディ本体12の内壁面12aに、連通室26側(矢印A2方向)に向かって突出した突出部152が設けられている点で、第2の実施の形態に係る排気ガス再循環バルブ100と相違している。
【0058】
この排気ガス再循環バルブ150のボディ本体12には、連通室26に臨む内壁面12aから円筒状に突出した突出部152を備え、前記突出部152は、ガス流入口20と略同一の内周径で形成され、バルブシート102における本体部30の一部を覆うように設けられる。換言すれば、突出部152は、ガス流入口20から供給されるガスの流通方向(矢印A2方向)に沿ってボディ本体12の内壁面12aから所定高さだけ突出して形成される。
【0059】
以上のように、第3の実施の形態では、ボディ本体12の内壁面12aに突出部152を設け、前記突出部152がバルブシート102とボディ本体12の内壁面12aとの間の間隙を覆うように配置され、さらに、ガス流入口20から環状凹部106へと通じる間隙は、前記ガス流入口20から供給されるガスの流通方向(矢印A1方向)とは反対方向(矢印A2方向)となるように形成されているため、これらの間隙を通じて環状凹部106内へと流入することが好適に抑制される。
【0060】
その結果、ガスの環状凹部106への流入が好適に防止され、該ガスに含まれる燃焼生成物等によるスペーサ108、バルブシート102の固着をより一層効果的に回避することができる。それに伴って、バルブシート102が摩耗した際でもスペーサ108によって、ボールバルブ14の回動角度範囲の広がりが効果的に抑制され、前記ボールバルブ14をバルブシート102に対して確実に着座させて弁閉状態とすることができる。
【0061】
なお、本発明に係るバルブ装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
10、100、150…排気ガス再循環バルブ
12…ボディ本体 14…ボールバルブ
16、102…バルブシート 18…駆動力伝達機構
20…ガス流入口 22…ガス流出口
24、106…環状凹部 26…連通室
28…装着孔 32…シート部
35、104…環状凸部 40…シート面
42、108…スペーサ 46…球面形状部
152…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通する通路を有したボディと、前記通路に配置され少なくとも外周面の一部が球面に形成された球面形状部を有し、該球面形状部の曲率中心から外れた軸線を有したシャフトを介して回動可能に設けられたバルブと、前記通路に設けられ前記流体の流通する孔部を有し前記ボディに対して可動自在に設けられ、且つ、前記バルブが着座するシート部材とを備えるバルブ装置において、
前記ボディと前記シート部材との当接面には、前記孔部又は前記通路を囲む溝部が形成され、前記溝部内に、前記シート部材に当接するスペーサが設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1記載のバルブ装置において、
前記溝部は、前記シート部材と前記ボディとの当接面に対して前記シート部材の軸方向のいずれか一方に窪んで形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバルブ装置において、
前記溝部は、前記シート部材と前記ボディとの当接面に対して前記通路を流通する流体の流通方向と反対方向に窪んで形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1又は3記載のバルブ装置において、
前記ボディ又はシート部材には、前記通路に臨み、且つ、前記シート部材と前記ボディとの当接面に対して軸方向に突出した壁部を有することを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバルブ装置において、
前記バルブ装置は、内燃機関の排気系から吸気系へと排気ガスを再循環させる流路を切換可能な排気ガス再循環バルブとして用いられることを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202465(P2012−202465A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67004(P2011−67004)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】