説明

バルブ装置

【課題】弁体の支持剛性を高めるとともに、弁体およびシャフトを応答性良く低負荷で動かすことのできるバルブ装置を提供する。
【解決手段】ハウジングに軸受部3を設け、この軸受部3に形成された摺動穴2によってシャフト1の先端部を軸方向へ摺動自在に支持する。これにより、弁体の支持剛性を長期に亘って安定して高めることができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。また、摺動穴2の内周壁に軸方向へ延びる溝6を設けて、摺動穴2の底部とハウジング内とを連通する呼吸路4を設けている。これにより、「シャフト1の先端部と摺動穴2の底部との間」の容積変動が容易になり、シャフト1の軸方向への移動が容易になる。その結果、弁体の開閉の応答性を向上できるとともに、弁体の駆動負荷を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体が軸方向に駆動されるバルブ装置に関し、例えば、冷却水(流体の一例)をコントロールするバルブ装置に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
弁体を軸方向に駆動することで、流体のコントロールを行うバルブ装置(ポペットバルブ等)が知られている。
バルブシートから離座した弁体は、流体の流れの影響を受ける。このため、流体の流れの影響を受ける弁体の支持剛性を高める要求がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、
(i)弁体の軸方向の両側にシャフトを設け、
(ii)弁体の一方側のシャフト(一方の案内バー)の途中部位を軸方向へ摺動自在に支持し、
(iii)弁体の他方側のシャフト(他方の案内バー)の先端部を軸方向へ摺動自在に支持して、弁体の支持剛性を高めるバルブ装置が提案されている。
【0004】
シャフトの先端部を摺動自在に支持する部位は、
(a)弁体と一体に移動するシャフトと、
(b)バルブハウジングに設けられ、シャフトの先端部が挿し入れられてシャフトを軸方向へ摺動自在に支持する摺動穴を備える軸受部と、
で構成される。
このように、シャフトの先端部が摺動穴によって軸方向へ摺動自在に支持されることで、シャフトおよび弁体の移動方向を軸方向に規制することができる。その結果、弁体の支持剛性を高めることができ、結果的に長期に亘って安定した弁体の開閉を実現できる。
【0005】
しかしながら、シャフトの先端部が挿入される摺動穴が袋小路になっている。
このため、シャフトを軸受部から抜き出す方向に移動させる際、「シャフト先端部と摺動穴の底部との間」に大きな負圧が生じ、シャフトの移動が妨げられる。
同様に、シャフトを軸受部に押し込む方向に移動させる際、「シャフト先端部と摺動穴の底部との間」の冷却水を強く液圧縮することになり、シャフトの移動が妨げられる。
このように、特許文献1の技術では、シャフトを移動させる際に「シャフトの先端部と摺動穴の底部との間」に液圧縮と液拡張が生じるため、シャフトの動きが妨げられる。その結果、弁体の応答性が劣化するとともに、弁体を駆動する駆動手段に大きな駆動力が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−249021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、弁体の支持剛性を高めるとともに、弁体およびシャフトを応答性良く低負荷で動かすことのできるバルブ装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1の手段〕
請求項1のバルブ装置は、弁体を収容するバルブハウジングに、摺動穴を有する軸受部を設け、この摺動穴によってシャフトの先端部を軸方向へ摺動自在に支持する。これにより、弁体の支持剛性を長期に亘って安定して高めることができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
また、請求項1のバルブ装置は、摺動穴の底部とバルブハウジング内とを連通する呼吸路を設けている。この呼吸路によって「シャフトの先端部と摺動穴の底部との間」に生じる流体圧縮と流体拡張を回避することができ、弁体およびシャフトを低負荷で動かすことができる。即ち、弁体の開閉の応答性を向上できるとともに、弁体を駆動する駆動手段の駆動負荷を低減することができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の呼吸路は、摺動穴の内周壁に形成された軸方向に延びる溝によって設けられる。
このように、摺動穴の内周壁に溝を設けることで、上述した請求項1の効果を得ることができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の呼吸路は、シャフトの外周壁に形成された軸方向に延びる溝によって設けられる。
このように、シャフトの外周壁に溝を設けることで、上述した請求項1の効果を得ることができる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4のバルブ装置は、シャフトが軸受部に最も深く挿し入れられた状態で、シャフトの先端部と摺動穴の底部との間に空間(隙間)が形成される。
これにより、「シャフトの先端面」と「摺動穴の底面」の密着によってシャフトの移動が妨げられる不具合を回避することができるとともに、密着によってシャフトの駆動負荷が大きくなる不具合を回避することができる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の軸受部は、シャフトを摺動自在に支持する金属製の滑り軸受(メタルブッシュ)を備える。
これにより、シャフトの摺動に対する摩耗を長期に亘って抑えることができる。即ち、弁体の支持剛性を長期に亘って、より安定して高めることができる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6のシャフトの先端には、テーパ面が設けられる。
これにより、シャフトの先端が摺動穴の底部に近づく際、テーパ面が流体を押し退けるため、弁体およびシャフトを、より低負荷で動かすことができる。
【0014】
〔請求項7の手段〕
請求項7のバルブ装置は、呼吸路の通路面積によって、シャフトの移動速度をコントロールする。
これにより、弁体の移動速度をコントロールすることができる。
【0015】
〔請求項8の手段〕
請求項8のバルブ装置は、「冷却水流路の開閉」、「冷却水流路の切替や分配」、「冷却水流路の開度調整」等を行う冷却水バルブである。
これにより、冷却水バルブにおいて上述した請求項1〜請求項7のいずれか1つ以上の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)軸受部の斜視図、(b)シャフトが挿入された軸受部の斜視図である(実施例1)。
【図2】(a)シャフトが挿入された軸受部の斜視図、(b)シャフトが挿入された軸受部の断面図である(実施例2)。
【図3】シャフトが挿入された軸受部の断面図である(実施例3)。
【図4】シャフトが挿入された軸受部の斜視図である(実施例4)。
【図5】冷却水バルブの断面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して[発明を実施するための形態(本発明の基本構成)]を説明する。
バルブ装置は、
・軸方向へ駆動されるシャフト1と、
・このシャフト1と一体に移動する弁体20と、
・この弁体20を収容するハウジングと、
・ハウジングに設けられ、シャフト1の先端部が挿し入れられてシャフト1を軸方向へ摺動自在に支持する摺動穴2を有する軸受部3と、
を具備する。
そして、摺動穴2によってシャフト1を軸方向へ摺動自在に支持することで、シャフト1および弁体20の移動方向を軸方向に規制する。さらに、このバルブ装置には、摺動穴2の底部とハウジング内とを連通する呼吸路4が設けられている。
【実施例】
【0018】
以下において[実施例(本発明の具体的一例の構成)]を、図面を参照して説明する。以下の実施例は具体的な一例を示すものであって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。なお、以下の実施例において、上記「発明を実施するための形態」と同一符号は同一機能物を示すものである。
【0019】
[実施例1]
図1を参照して実施例1を説明する。
バルブ装置の具体的な一例として、この実施例のバルブ装置は、自動車に搭載されて、エンジン冷却水の流量制御(流路の開閉および開度制御)、あるいは分配制御(流路の切替制御)を行うものである。
【0020】
このバルブ装置は、弁体が軸方向へ駆動されることで、エンジン冷却水の流量制御あるいは分配制御を行うものであり、
・軸方向へ駆動されるシャフト1と、
・このシャフトの途中に設けられる弁体と、
・この弁体を収容するハウジング(固定部材)と、
・シャフト1の途中部位を軸方向へ摺動自在に支持する中間軸受手段と、
・シャフト1の先端部を軸方向へ摺動自在に支持する先端軸受手段5と、
を備える。
【0021】
シャフト1の先端部を摺動自在に支持する先端軸受手段5の具体例を、図1(b)を参照して説明する。
先端軸受手段5は、上述したように、シャフト1の先端部を軸方向へ摺動自在に支持するものであり、
・弁体と一体に移動するシャフト1と、
・シャフト1の先端部を軸方向へ摺動自在に支持する軸受部3と、
を用いて構成される。
【0022】
シャフト1は、円柱棒状を呈した金属製であり、弁体の軸心に固定されて弁体と一体に移動するものである。
軸受部3は、樹脂製のハウジングと一体に設けられた樹脂成形体であり、シャフト1の先端部(先端を含むシャフト1の一部)が挿し入れられてシャフト1を軸方向へ摺動自在に支持する摺動穴2が設けられている。
【0023】
また、バルブ装置には、摺動穴2の底部とハウジング内とを連通する呼吸路4が設けられている。
この実施例1の呼吸路4は、図1(a)に示すように、摺動穴2の内周壁に形成された軸方向に延びる溝6によって設けられている。即ち、摺動穴2に挿し入れられたシャフト1と、溝6との間に呼吸路4が形成されるものである。
具体的に、呼吸路4を成す溝6は、摺動穴2の開口端から底部に至る筋状の窪みである。なお、図1では、摺動穴2の内周壁に4本の溝6を設ける例を示すが、溝6の数は限定されるものではなく、1本以上であれば良い。
【0024】
(実施例1の効果1)
この実施例1のバルブ装置は、上述したように、弁体の両側のシャフト1が、中間軸受手段および先端軸受手段5によって支持されることにより、弁体の支持剛性を高めることができる。
具体的にこの実施例では、弁体を収容するハウジングに、摺動穴2を有する軸受部3を設け、この摺動穴2によってシャフト1の先端部を軸方向へ摺動自在に支持する。これにより、中間軸受手段だけでシャフト1を支持するバルブ装置に比較して、弁体の支持剛性を長期に亘って安定して高めることができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【0025】
(実施例1の効果2)
この実施例1のバルブ装置は、上述したように、摺動穴2の内周壁に軸方向へ延びる溝6を設けることで、摺動穴2の底部とハウジング内とを連通する呼吸路4を設けている。 これにより、シャフト1を軸受部3から抜き出す方向に移動させる際、「シャフト1の先端部と摺動穴2の底部との間」に呼吸路4を介して冷却水が円滑に流入するため、シャフト1をスムーズに移動させることができる。
同様に、シャフト1を軸受部3に押し込む方向に移動させる際、「シャフト1の先端部と摺動穴2の底部との間」の冷却水が呼吸路4を介してハウジング内へ円滑に排出されるため、シャフト1をスムーズに移動させることができる。
【0026】
このように、この実施例1のバルブ装置では、呼吸路4によって「シャフト1の先端部と摺動穴2の底部との間」に生じる液圧縮と液拡張を回避することができ、弁体およびシャフト1を低負荷で動かすことができる。
これにより、弁体の開閉の応答性を向上できるとともに、弁体を駆動する駆動手段(例えば、電動アクチュエータ等)の駆動負荷を低減することができる。
【0027】
[実施例2]
図2を参照して実施例2を説明する。
上記の実施例1では、樹脂製の軸受部3にシャフト1を直接支持させる例を示した。
これに対し、この実施例2は、軸受部3にシャフト1を摺動自在に支持する金属製の滑り軸受(メタルブッシュ)7を設けたものである。
これにより、金属製のシャフト1を、金属製の滑り軸受7によって支持するため、シャフト1の摺動に対する摩耗を長期に亘って抑えることができる。即ち、弁体の支持剛性を長期に亘って、より安定して高めることができる。
また、金属製のシャフト1を金属製の滑り軸受7によって支持するため、シャフト1の摺動抵抗を長期に亘って安定して小さく抑えることが可能になる。
【0028】
この実施例2のバルブ装置は、図2(b)に示すように、シャフト1が軸受部3に最も深く挿し入れられた状態で、シャフト1の先端部と摺動穴2の底部とが軸方向へ離間して、シャフト1の先端部と摺動穴2の底部の間に空間αが形成される。
これにより、シャフト1が軸受部3に最も深く挿し入れられた状態において、「シャフト1の先端面」と「摺動穴2の底面」の密着を防ぐことができる。このため、この密着によってシャフト1の移動が妨げられる不具合(弁体の応答性が劣化する不具合)を回避することができるとともに、密着によってシャフト1の駆動負荷が大きくなる不具合を回避することができる。
【0029】
[実施例3]
図3を参照して実施例3を説明する。
この実施例3のバルブ装置は、シャフト1の先端に、端部中心(図3の下方)に向けて縮径するテーパ面8を設けたものである。
このように設けることにより、シャフト1の先端が摺動穴2の底部に近づく際、テーパ面8が冷却水を押し退けるため、弁体およびシャフト1の駆動負荷を、より小さくすることができる。
【0030】
[実施例4]
図4を参照して実施例4を説明する。
上記の実施例1では、呼吸路4を設ける手段の一例として、摺動穴2の内周壁に溝6を設ける例を示した。
これに対し、この実施例4では、呼吸路4を設ける手段として、シャフト1の外周壁に軸方向に延びる溝6を設けたものである。即ち、摺動穴2の内周壁と、シャフト1の溝6との間に呼吸路4が形成されるものである。なお、図4では、シャフト1の外周壁に4本の溝6を設ける例を示すが、溝6の数は限定されるものではなく、1本以上であれば良い。
このように設けても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0031】
[実施例5]
図5を参照して実施例5を説明する。
なお、以下では、図5の上側を上、図5の下側を下と称して説明するが、この上下方向は実施例説明のための方向であって、車両の搭載方向にかかわるものではない。
【0032】
図5に示すバルブ装置は、エンジン冷却水の流量制御(流路の開閉および流量制御)を行う冷却水バルブ(二方弁)である。
なお、以下では、具体的な一例として二方弁構造の冷却水バルブを説明するが、限定するものではなく、冷却水の分配制御(流路の分配切替および分配流量制御)を行う冷却水バルブ(三方方弁等)に本発明を適用しても良い。
【0033】
このバルブ装置は、
・軸方向へ駆動されるシャフト1と、
・このシャフト1の軸方向の途中(下側)に固定される弁体20と、
・シャフト1を軸方向へ駆動する駆動手段と、
・全閉時に弁体20を弁座21へ押し付けるスプリング22と、
・アッパーハウジング23、ミドルハウジング24、ロアハウジング25およびカバー26を組み合わせて設けられるハウジングと、
・シャフト1の途中部位を軸方向へ摺動自在に支持する中間軸受手段27と、
・シャフト1の下端を軸方向へ摺動自在に支持する先端軸受手段5と、
を備えて構成される。
【0034】
そして、
・弁体20が上方へ移動して弁座21に着座することで、入力ポート28と出力ポート29の連通が遮断され、
・弁体20が下方へ移動して弁座21から離座することで、入力ポート28と出力ポート29が連通し、
・弁体20が弁座21から離座する量(弁体20の下降量)が増加するに従い、入力ポート28と出力ポート29の連通度合が大きくなるものである。
【0035】
以下において、この実施例におけるバルブ装置を詳細に説明する。
シャフト1は、上下方向へ延びる略円柱棒状を呈し、上述した中間軸受手段27と先端軸受手段5とにより、上下方向へ摺動自在に支持される。
【0036】
弁体20は、シャフト1の周囲から外径方向へ拡径した傘形状(略円板形状)を呈するポペット弁である。この弁体20の中心部は、シャフト1に固定されており、シャフト1と一体に弁体20が上下方向へ移動する。
【0037】
駆動手段は、電動モータの発生する回転力を減速(トルク増加)した後、回転を軸方向の移動に変換してシャフトを駆動するものであり、
・正逆両方向の回転の切替えが可能な電動モータ(例えば、DCモータ:図示しない)と、
・この電動モータの回転力をシャフト1へ伝える歯車減速機と、
・シャフト1に伝えられた回転力をシャフト1の軸方向の移動に変換する変換手段31と、
を備えて構成される。
【0038】
歯車減速機は、カバー26とアッパーハウジング23の間に設けられた歯車列の収容空間に配置される。
歯車減速機の最終ギヤ32が固定されるギヤ軸33は、ベアリング(ボールベアリング等)34を介してアッパーハウジング23に回転自在に支持される。なお、ベアリング34の直下に配置される符号35は、シール部材であり、後述するカムプレート36の収容空間に供給された冷却水が歯車列の収容空間へ洩れないように設けられている。
【0039】
ギヤ軸33の下側には、「内側にシャフト1が挿し入れられる継手用の円筒体33a」が設けられている。そして、「円筒体33aの内周」と「この円筒体33aに挿し入れられるシャフト1の上端の外周」とが、軸方向へ沿う複数のスプライン溝により嵌め合わされている。
この構成(軸方向へのスプライン嵌合)により、ギヤ軸33の回転トルクがシャフト1に伝達されるとともに、ギヤ軸33に対してシャフト1が軸方向へ移動可能に設けられる。
【0040】
変換手段31は、
・シャフト1と一体に回転するカムプレート(ロータリカム)36と、
・このカムプレート36の外周壁面に設けられたカム溝37に嵌まり合うピン38と、
を備えて構成される。
【0041】
カムプレート36は、結合部材36aを介してシャフト1に強固に結合されるものであり、外径側に円筒状の外周壁面を備える。
カム溝37は、カムプレート36の外周壁面において周方向に連続して延びる1本溝であり、カムプレート36の周方向(回転方向)の角度に応じて、カム溝37の軸方向位置が滑らかに変化するものである。
ピン38は、先端(シャフト1に近い側)が常にカム溝37に嵌まり合うものであり、外側(シャフト1から離れた側)がベアリング39を介してアッパーハウジング23に回転自在に支持されるものである。
【0042】
スプリング22は、カムプレート36を介してシャフト1を上方へ付勢する圧縮コイルバネであり、中間軸受手段27(滑りベアリング等)の上面において回転自在に支持されるバネ座41と、カムプレート36との間で、圧縮配置されるものである。
【0043】
アッパーハウジング23、ミドルハウジング24、ロアハウジング25は、軸方向(上下方向)へ重ね合わされ、この実施例ではスタッドボルト42により結合されている。
なお、アッパーハウジング23とミドルハウジング24の間と、ミドルハウジング24とロアハウジング25の間には、それぞれパッキン(Oリング)43が配置され、内部の冷却水が外部へ洩れないように設けられている。
【0044】
冷却水が供給される入力ポート28は、ロアハウジング25に設けられている。
また、入力ポート28から供給される冷却水は、バイパス路44を介してカムプレート36の収容空間(アッパーハウジング23の内部空間)に供給するように設けられている。
【0045】
閉弁時に弁体20が着座する弁座21は、ミドルハウジング24の下部に設けられている。
冷却水の出力ポート29は、弁座21より上側で、且つミドルハウジング24の内部に設けられたの円筒部(後述する区画プレート45の摺動壁)の下側に設けられている。
【0046】
シャフト1の中間部位(弁体20より上側)には、円筒部の内側を上下方向で液密に区画する円板形状を呈した区画プレート(ピストン)45が固定されており、弁体20と同様、シャフト1と一体に区画プレート45が上下方向へ移動する。
なお、区画プレート45の外周の環状溝に配置された符号46は、シールリング(Oリング)であり、「区画プレート45」と「ミドルハウジング24の内周壁」の間の摺動クリアランスをシールするものである。
【0047】
この区画プレート45の上面には、上述したバイパス路44を介して上方へ供給された冷却水の供給圧が付与される。具体的には、バイパス路44を介してカムプレート36の周囲に導かれた冷却水の供給圧は、中間軸受手段27を支持する支持壁47に設けられた上下方向の貫通穴48を通って、区画プレート45の上面に供給される。
【0048】
これにより、弁体20が弁座21に着座する状態(全閉時)において、「冷却水の供給圧が弁体20を押し上げる力」を「冷却水の供給圧が区画プレート45を押し下げる力」によって相殺できる。
このため、閉弁状態から弁体20を開弁させる際の開弁力(電動モータが開弁の際に発生する力)を小さくすることができる。
【0049】
なお、上述した各部材の素材(材料)は、それぞれに応じた素材(金属材料や樹脂材料等)が適宜選択して用いられるものであり、各部材の素材は限定されるものではない。
先端軸受手段5には、本発明が適用された実施例1〜実施例4のいずれかを適用するものであり、適用した実施例に応じた効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記の各実施例を組み合わせて用いても良い。
【0051】
上記の実施例では、「摺動穴2の内周壁」または「シャフト1の外周壁」に溝6を形成することで呼吸路4を設ける例を示したが、呼吸路4は摺動穴2の底部とハウジング内とを連通するものであれば良く、例えば軸受部3の内外(摺動穴2の底部と軸受部3の外壁)を貫通する貫通孔によって設けるものであっても良い。
【0052】
上記の実施例では、シャフト1の移動抵抗を極力小さくするために呼吸路4の通路面積を大きく設ける例(溝6の断面積を大きく設けるとともに、溝6を複数用いる例)を示したが、呼吸路4の通路面積を意図的に小さく設け、シャフト1の移動速度をコントロールし、弁体20の移動速度をコントロールしても良い。
【0053】
上記の実施例では、軸受部3をハウジングと一体に形成する例を示したが、別体に設けた軸受部3をハウジングに取り付けるものであっても良い。
【0054】
上記の実施例では、エンジン冷却水のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、エンジン冷却水に限定されるものではなく、エンジンを搭載しない車両の排熱回収循環水のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用しても良い。
【0055】
上記の実施例では、液体(具体的な一例として冷却水)のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、流体は液体に限定されるものではなく、気体(ガス類)のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 シャフト
2 摺動穴
3 軸受部
4 呼吸路
6 溝
7 滑り軸受
8 テーパ面
20 弁体
α 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)軸方向へ駆動されるシャフト(1)と、
(c)このシャフト(1)と一体に移動する弁体(20)と、
(b)この弁体(20)を収容するハウジングと、
(d)前記ハウジングに設けられ、前記シャフト(1)の先端部が挿し入れられて前記シャフト(1)を軸方向へ摺動自在に支持する摺動穴(2)を有し、この摺動穴(2)によって前記シャフト(1)を軸方向へ摺動自在に支持することで、前記シャフト(1)および前記弁体(20)の移動方向を軸方向に規制する軸受部(3)と、
(e)前記摺動穴(2)の底部と前記ハウジング内とを連通する呼吸路(4)と、を具備するバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置において、
前記呼吸路(4)は、前記摺動穴(2)の内周壁に形成された軸方向に延びる溝(6)によって設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のバルブ装置において、
前記呼吸路(4)は、前記シャフト(1)の外周壁に形成された軸方向に延びる溝(6)によって設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記シャフト(1)が前記軸受部(3)に最も深く挿し入れられた状態で、前記シャフト(1)の先端部と前記摺動穴(2)の底部との間に空間(α)が形成されることを特徴とするバルブ装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記軸受部(3)は、前記シャフト(1)を摺動自在に支持する金属製の滑り軸受(7)を備えることを特徴とするバルブ装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記シャフト(1)の先端には、テーパ面(8)が設けられることを特徴とするバルブ装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記呼吸路(4)の通路面積によって、前記シャフト(1)の移動速度をコントロールすることを特徴とするバルブ装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、自動車に搭載されて、エンジン冷却水の流量制御、あるいは分配制御を行うことを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92250(P2013−92250A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170038(P2012−170038)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】