説明

バルブ

【課題】環状シール部材の摩耗損傷を効果的に防止すると共に、構造が簡単なバルブを提供する。
【解決手段】ロータ1と、ロータ1を収容する円筒状本体2と、本体2に形成され、本体2に設けた一対のポート22と、ポート22に設けられ、ロータ1の周面11と密接して流体の流れを遮断する環状シール部材3とより成るバルブにおいて、流体の流れを遮断する為に、ロータ1がシール部材3に接近する際における関係において、ロータ1のシール部材3に近い側の一端部の幅W2と遠い側の他端部の幅W1との関係がW2<W1であると共に、最もロータ1に近いシール部材3のロータ1の周面11に対するリップ飛び出し量H1と、最もロータ1から離れているシール部材3のロータ1の周面11に対するリップ飛び出し量H2との関係がH1<H2の関係であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブに関する。
また、本発明は、例えば自動車の冷却液を制御する為のバルブや気体を制御するバルブとして自動車関係及び一般産業機械関係に広く使用されるバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図5及び6に示すようなバルブが知られている。
すなわち、この種従来技術に係るバルブは、略扇形状のロータ100と、このロータ100を回動可能に収容する円筒状本体200と、この本体200に形成され、本体200内への流体の流入と、本体200内からの流体の流出を行う為の一対のポート220と、このポート220の一方に設けられ、ロータ100の周面110と密接して流体の流れを遮断する為の弾性材製の環状シール部材300とより構成されている。
【0003】
そして、略扇形状のロータ100の一端部120の径方向長さと他端部130の径方向長さとは等しい長さに設計されている。
また、ロータ100の回転中心と円筒状本体200の中心とが一致する形に設計されている為、ロータ100の周面110と円筒状本体200の内周面230との間隙は一定である。
【0004】
一方、環状シール部材300は、ポート220を形成している金属材製の筒状部材310に一体的に形成され、円筒状本体200内への突出量が何れの箇所においても一定となる様に設計されている。
また、流体を確実にシールする為、環状シール部材300は、ロータ100の周面110よりも円筒状本体200内に突き出た形となっている。
この為、図6に示す様に、ポート220をロータ100で閉じ始める初期段階において、ロータ100の一端部120により、環状シール部材300が変形させられ、早期に摩耗損傷する問題を惹起した。
【0005】
この対策として、特許文献1に記載の構造のバルブが提案されたが、ロータ側の構造が複雑となり、製造コストが高価に成らざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−113873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、環状シール部材の摩耗損傷を効果的に防止すると共に、確実な流体の開閉を行える、構造が簡単なバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバルブは、略扇形状のロータと、前記ロータを回動可能に収容する円筒状本体と、前記本体に形成され、前記本体内への流体の流入と、前記本体内からの流体の流出を行う為の一対のポートと、前記ポートに設けられ、前記ロータの周面と密接して流体の流れを遮断する為の弾性材製の環状シール部材とより成るバルブにおいて、
前記流体の流れを遮断する為に、前記ロータが前記シール部材に接近する際における関係において、前記ロータの前記シール部材に近い側の一端部の幅W2と遠い側の他端部の幅W1との関係がW2<W1であると共に、最も前記ロータに近い前記シール部材の前記ロータの前記周面に対するリップ飛び出し量H1と、最も前記ロータから離れている前記シール部材の前記ロータの前記周面に対するリップ飛び出し量H2との関係がH1<H2の関係であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のバルブによれば、環状シール部材の摩耗損傷を効果的に防止すると共に、確実な流体の開閉を行え、構造が簡単である。
請求項2記載の発明のバルブによれば、ポートをロータで閉じ始める初期段階において、ロータの一端部により、環状シール部材が変形させられるこが無い。
【0010】
請求項3記載の発明のバルブによれば、ポートに腐食性の金属材を使用した場合にあっても、腐食性流体を制御するバルブにも適用できる。
請求項4記載の発明の開閉弁によれば、構造が簡単で、流体の流通を確実に制御出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るバルブの概念図。
【図2】本発明に係るバルブの開状態を示す部分断面図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】本発明に係るバルブの閉状態を示す部分断面図。
【図5】従来技術に係るバルブを図2と同様に示した図。
【図6】図5に示したバルブがシール部材に当接した状態の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図に基づき説明する。
図1乃至図3において、本発明に係るバルブは、図1に示す様に、略扇形状のロータ1と、このロータ1を回動可能に収容する円筒状本体2と、この本体2に形成され、本体2内への流体の流入と、本体2内からの流体の流出とを行う為の一対のポート21、22とより構成されている。
【0013】
また、ポート22に設けられ、ロータ1の周面11と密接して流体の流れを遮断する為の弾性材製の環状シール部材3が配置されている。
更に、流体の流れを遮断する為に、ロータ1がシール部材3に接近する際における関係において、ロータ1のシール部材3に近い側の一端部12の径方向幅W2と、遠い側の他端部13の径方向幅W1との関係が、W2<W1であると共に、最もロータ1に近いシール部材3のロータ1の周面11に対するリップ飛び出し量H1と、最もロータ1から離れているシール部材3のロータ1の周面11に対するリップ飛び出し量H2との関係がH1<H2の関係に成る様に設計されている。
【0014】
特に、シール部材3の摩耗損傷を効果的に防止する為には、ロータ1の一端部12の幅W2とリップ飛び出し量H1との関係は、一端部12がシール部材3の先端に僅かに接するか、少し間隙を有する様に設計されている。
この事により、従来技術の図6に示す様に、ロータ1によりシール部材3が変形されることを回避出来る。
【0015】
ついで、図4に示す様に、ロータ1が回転して、バルブが閉の状態になると、一端部12は、リップ飛び出し量H2がリップ飛び出し量H1よりも大きい為、シール部材3に密接して、流体の漏洩を確実に阻止する。
一方、他端部13の径方向幅W1は、一端部12の径方向幅W2に比べ大きい為、シール部材3に密接して、流体の漏洩を確実に阻止する。
【0016】
この様に、図2に示す様に、ポート22をロータ1で閉じ始める初期段階においては、ロータ1とシール部材3とは離れているか、僅かに接する状態であるが、図4に示す様に、ポート22をロータ1で完全に閉じた段階においては、ロータ1の周面11がシール部材3のリップ部(先端部)をしっかりと押圧する為、シール部材3を損傷する事無く確実にバルブを閉じた状態を作り出せる。
【0017】
また、シール部材3は、ポート22を形成している金属材製の筒状部材31に一体的に形成され、筒状部材31の流体と接する表面はシール部材3と同一材質の弾性材により被覆された状態で、筒状部材31が本体2側に、螺合により固着されている。
この為、ポート22に腐食性の金属材を使用し、腐食性流体を制御するバルブにも適用できる。
また、シール部材3のメンテナンスが容易である。
【0018】
尚、シール部材3は、一対のポート21、22の何れか一方にのみ存在する形とすれば、バルブとしての機能が発揮出来る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係るバルブは、自動車の冷却液を制御する為のバルブや気体を制御するバルブとして自動車関係及び一般産業機械関係に広く使用される。
【符号の説明】
【0020】
1 ロータ
2 本体
3 シール部材
11 周面
12 一端部
13 他端部
21 ポート
22 ポート
23 内周面
31 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略扇形状のロータ(1)と、前記ロータ(1)を回動可能に収容する円筒状本体(2)と、前記本体(2)に形成され、前記本体(2)内への流体の流入と、前記本体(2)内からの流体の流出を行う為の一対のポート(21)、(22)と、前記ポート(21)、(22)に設けられ、前記ロータ(1)の周面(11)と密接して流体の流れを遮断する為の弾性材製の環状シール部材(3)とより成るバルブにおいて、
前記流体の流れを遮断する為に、前記ロータ(1)が前記シール部材(3)に接近する際における関係において、前記ロータ(1)の前記シール部材(3)に近い側の一端部(12)の幅(W2)と遠い側の他端部(13)の幅(W1)との関係がW2<W1であると共に、最も前記ロータ(1)に近い前記シール部材(3)の前記ロータ(1)の前記周面(11)に対するリップ飛び出し量(H1)と、最も前記ロータ(1)から離れている前記シール部材(3)の前記ロータ(1)の前記周面(11)に対するリップ飛び出し量(H2)との関係がH1<H2の関係であることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記ロータ(1)の前記一端部(12)の幅(W2)とリップ飛び出し量(H1)との関係は、前記一端部(12)が前記シール部材(3)の先端に僅かに接するか、少し間隙を有する様に設計されていることを特徴とする請求項1記載のバルブ。
【請求項3】
前記シール部材(3)は、前記ポート(21)、(22)を形成している金属材製の筒状部材(31)に一体的に形成され、前記筒状部材(31)の前記流体と接する表面は前記シール部材(3)と同一材質の弾性材により被覆された状態で、前記筒状部材(31)が
前記本体(2)側に固着されていることを特徴とする請求項1または2記載のバルブ。
【請求項4】
前記シール部材(3)は、前記一対のポート(21)、(22)の何れか一方にのみ存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−145124(P2012−145124A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1735(P2011−1735)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】