バルブ
【課題】流体が外部に漏れるおそれが小さいバルブを提供する。
【解決手段】バルブ100は、内部に流路が形成された弁箱110と、弁箱110の流路に配置される弁体120と、弁体120が係止される弁座111と、弁箱110の流路に配置され、弁体120を押して移動させることによって流路を開閉する押棒130と、を備え、押棒130の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、弁箱110の内周面にネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、押棒130がネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に弁箱110を円運動させることによって、押棒130が自転して流路方向に直動し弁体を押す。
【解決手段】バルブ100は、内部に流路が形成された弁箱110と、弁箱110の流路に配置される弁体120と、弁体120が係止される弁座111と、弁箱110の流路に配置され、弁体120を押して移動させることによって流路を開閉する押棒130と、を備え、押棒130の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、弁箱110の内周面にネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、押棒130がネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に弁箱110を円運動させることによって、押棒130が自転して流路方向に直動し弁体を押す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、バルブは、バルブ内部に設置された弁体によって流路が開閉される。特許文献1には、バルブを貫通する弁棒を使って外部から弁体を動かす、いわゆるゲートバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−110072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなバルブには、バルブボディーの壁に弁棒を通すための穴が開いている。弁棒と穴の隙間はパッキンによって密閉されるが、流体が劇物、毒物、強腐食性流体や温度変化の大きな流体である場合、通常のパッキンでは対応しきれず、流体が漏れるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流体が外部に漏れるおそれが小さいバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のバルブは、
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の流路に配置される弁体と、
前記弁体が係止される弁体係止部と、
前記弁箱の流路に配置され、前記弁体を押して移動させることによって流路を開閉する押棒と、を備え、
前記押棒の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、
前記弁箱の内周面に前記ネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、
前記押棒が前記ネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に前記弁箱を円運動させることによって、前記押棒が自転して流路方向に直動し前記弁体を押す、
ことを特徴とする。
【0007】
前記弁体は、前記弁箱の流路に配置される球体であり、
前記押棒は、前記球体を押して前記弁体係止部から前記球体を離間させることによって前記弁箱の流路を開いてもよい。
【0008】
前記押棒の内部に流体を通過させる流体通過路を有していてもよい。
【0009】
前記弁箱の流路の下流側に前記押棒の所定以上の下流方向への移動を規制する押棒係止部を備えていてもよい。
【0010】
前記弁箱に直接的或いは間接的に振動を供給する振動発生装置、を備え、
前記弁箱は、前記振動発生装置から直接或いは間接的に供給される振動によって円運動してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るバルブによれば、バルブの外壁に穴がないため、流体が外部に漏れるおそれが小さいバルブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかるバルブの断面図である。
【図2】図1に示すバルブが備える弁箱の構成を説明するための図であり、(A)は弁座の斜視図、(B)はストッパの断面図である。
【図3】図1に示すバルブが備える押棒の構成を説明するための図であり、(A)は押棒の側面図、(B)は押棒の各部の断面図である。
【図4】押棒の雄ネジ部と弁箱の雌ネジ部の関係を説明するための図であり、(A)は雄ネジ部のネジ山と雌ネジ部のネジ溝の関係を説明するための図であり、(B)は雄ネジ部が雌ネジ部に対して偏心して螺合している状態を示す図である。
【図5】バルブに円運動を伴った振動を与える様子を示す図であり、(A)はバルブに振動モータを設置した振動伝達板を固定した様子を示す図であり、(B)は振動モータを振動させた様子を示す図であり、(C)はバルブが円運動する様子を示す図である。
【図6】押棒が弁箱内で回転する様子を説明するための図であり、(A)は雌ネジ部が円運動する様子を示す図であり、(B)は雌ネジ部が円運動することに伴って押棒が回転することを説明するための図である。
【図7】バルブの開閉動作を説明するための図であり、(A)は押棒が上流に向かって移動する様子を示す図であり、(B)は押棒が弁体を押圧する様子を示す図であり、(C)は押棒が下流に向かって移動する様子を示す図である。
【図8】他の実施形態に係るバルブの開閉動作を説明するための図であり、(A)は押棒が弁体を押圧する様子を示す図であり、(B)は押棒が下流に向かって移動する様子を示す図である。
【図9】実施例で使用したバルブの構成を示す図である。
【図10】実施例で実際に使用したバルブを示す図である。
【図11】実施例で使用した実験装置を示す図である。
【図12】実施例の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態にかかるバルブについて、図面を参照しながら説明する。
バルブ100は、気体や液体などの流体の通路(以下、「流路」という。)を開閉するための装置であり、図1に示すように、弁箱110と、弁体120と、押棒130と、から構成される。
【0014】
弁箱110は、両端に開口を有し、内部が中空の円筒体から構成される。弁箱110の両端の開口に配管やゴムホース等が接続され、内部を流体が流れる。弁箱110は、流路となる円筒内部に、図1に示すように、弁座111と、雌ネジ部112と、ストッパ113と、を備える。なお、以下の説明では、図1に示す破線矢印の方向に流体が流れるものとし、矢印の指し示す方向を「下流」、その反対を「上流」と表現する。
【0015】
弁座111は、弁体120を着座保持するための部分であり、図2(A)に示すように、下流に向けて径が縮小した逆円錐台状(いわゆる「すり鉢状」)をしている。
【0016】
雌ネジ部112は、弁箱110の内壁に螺旋状のネジ溝が形成された部分であり、図1に示すように、弁座111の下流に配置されている。
【0017】
ストッパ113は、弁箱110の内壁から流路の中心方向に向けて突出した突起部分である。ストッパ113は雌ネジ部112のさらに下流に配置されている。ストッパ113、図2(B)に示すように、例えば、流路内の上下左右4箇所に配置されている。突起間の距離Dは、押棒130の頭部133の直径より小さくなっている。
【0018】
弁体120は、例えば金属製の球体から構成される球状弁である。弁体120の直径は弁座111の最も小さい内径よりも大きく構成されている。弁体120は、図1に示すように、流体の流れの力で下流に移動して弁座111に着座し、流体の圧力によって流路を閉じるようになっている。
【0019】
押棒130は、雌ネジ部112に螺合させるための金属製のネジである。押棒130は、図3(A)に示すように、先端部131と、雄ネジ部132と、頭部133と、から構成される。押棒130の内部には、図1および図3(B)に示すように、流体が通過可能な流体通過路が形成されている。さらに、押棒130の先端部131の側面には、流体通過路に通じる導入口が形成されている。弁座111を通過して侵入した流体は、図1に示すように、導入口および流体通過路を通って、下流へと流れていく。
【0020】
雄ネジ部132のネジ山のピッチPは、図4(A)に示すように、雌ネジ部112のネジ溝のピッチPと等しい。また、雄ネジ部132のネジ山の直径rは、図4(A)に示すように、雌ネジ部112のネジ溝の直径R1より小さく、雌ネジ部112のネジ山の直径R2より大きい。そのため、雄ネジ部132の中心軸は、図4(B)に示すように、雌ネジ部112の中心軸に対して偏心可能となっている。また、雄ネジ部132のネジ山の直径rは、雌ネジ部112のネジ山の直径R2より大きい。このため、雄ネジ部132の中心軸が雌ネジ部112の中心軸に対して偏心量が0になったときでも、雄ネジ部132が雌ネジ部112から抜けることはない。
【0021】
次に、このような構成を有するバルブ100の動作について説明する。
【0022】
まず、図5(A)に示すように、振動伝達部材210にバルブ100の弁箱110及び振動発生装置としてモータ220が設置される。
【0023】
振動伝達部材210は、モータ220の回転駆動による振動をバルブ100に伝達する役割を果たす。振動伝達部材210は、例えば板状で、金属や硬質樹脂等、モータ220からの振動をバルブ100に効率よく伝達可能な素材から構成される。振動伝達部材210には、バルブ100及びモータ220のシャフト221がそれぞれ貫通して設置される。
【0024】
シャフト221はバルブ100の長手方向、即ち押棒130の軸方向と平行に設置されている。
【0025】
シャフト221は振動伝達部材210の孔に振動伝達部材210に対して回転自在に取り付けられている。また、図5(B)に示すように、モータ220のシャフト221には重心が偏った錘222が設置されている。
【0026】
モータ220を駆動すると、シャフト221が回転する。図5(B)に示すように、シャフト221が回転すると、振動伝達部材210にはバルブ100及びシャフト221が取り付けられていることから、シャフト221を軸とする自転が規制されるので、振動伝達部材210はその向きを維持した状態で、すなわち自転することなく円運動する。なお、シャフト221には重心が偏った錘222が設置されているので、振動伝達部材210に円運動を生じさせることにより大きなエネルギーが供給される。
【0027】
この振動伝達部材210の円運動はバルブ100の弁箱110にも伝達される。したがって、図5(C)に示すように、振動伝達部材210同様、弁箱110もその向きを維持した状態でバルブ100の中心軸を支点に円運動する。
【0028】
弁箱110内部には雌ネジ部112を備えているので、図6(A)に示すように、雌ネジ部112も弁箱110と同様に円運動を開始する。そうすると、弁箱110内部に設置された押棒130は、図6(B)に示すように、雌ネジ部112の内周に沿って、例えば、地球の公転運動のように一周する。
【0029】
このとき、押棒130は、雌ネジ部112に対して僅かに回転する。なぜなら、雌ネジ部112のネジ溝の内周Lより雄ネジ部132のネジ山の外周lのほうが小さいことから、雌ネジ部112が一周して元の位置に戻ったときに、図6(B)に示す(9)のように、雄ネジ部132は円周差L−l分だけ、元の位置からずれるからである。これは、ネジをドライバー等で回転させたのと同じことなので、押棒130は、回転した角度θ分だけ僅かに軸方向に移動する。
【0030】
弁箱110に振動を加え続けると、押棒130は、図7(A)に示すように、上流に向かって移動していく。やがて押棒130は、弁体120に接触するが、さらに振動を加え続けると、押棒130は、弁体120を押圧し始める。弁体120は、押棒130からの押圧力によって、図7(B)に示すように、弁座111から離脱する。
【0031】
弁体120が弁座111から離脱すると、せき止められていた流体が下流へと流れ始める。流体は、図7(B)に示すように、押棒130の導入口から流体通過路に侵入し、やがて、バルブ下流へと流れていく。
【0032】
一方、バルブ100の閉鎖を行う場合、モータ220を上記とは逆向きに回転駆動させればよい。モータ220を逆向きに回転させることで、振動伝達部材210及び弁箱110は上記とは逆向きに円運動する。即ち、図7(B)に示した状態から、モータ220を逆回転させると、押棒130は逆回転を開始する。振動を加え続けると、押棒130は徐々に下流へと移動していき、やがて弁体120から離脱する。弁体120は、流体の圧力によって、図7(C)に示すように、再び弁座111に着座する。押棒130は、ストッパ113に達した時点で下流への移動を停止する。
【0033】
本実施形態によれば、バルブ100を完全に密封した状態で弁体120を動かすことができる。そのため、バルブ100に穴を開ける必要がなくなるので、従来の弁棒を使ったバルブと比べ、流体の漏れる危険性を低減することができる。その結果、毒物、劇物、強腐食性、および温度変化の大きな流体を安全に取り扱うことができる。
【0034】
なお、弁体120の形状は球体に限られない。例えば、弁座111の形状に合わせて円錐台としてもよい。
【0035】
また、上記では、上流から下流に向けて弁体120、弁座111、押棒130が順に配置され、流体の流れの力で弁体120を弁座111に係止させ、流体の流れに逆行する方向へ押棒130が弁体120を押して流路を開放する形態について説明したが、これに限られない。
【0036】
例えば、図8(A)、図8(B)に示すように、上流から下流に向けて弁座111、弁体120、押棒130が配置された形態であってもよい。図8(A)に示すように、押棒130を上流に向けて移動させることで、弁体120を弁座111に押し付けて流路を閉鎖する。一方、押棒130を下流に向けて移動させることで、弁体120が弁座111から離脱し、流路の開放が行われる。
【実施例】
【0037】
ネジによってバルブが開閉できるか検証した。本実施例で使用したバルブの構成を図9に示す。流体は左側から右側に流れるとする。弁箱(main body)には円錐台の穴が開いており、その穴に球が左側から加わる圧力により押され塞がることによりバルブが閉じられた状態となる。また、弁箱には雌ネジがあり、それよりも少し径の小さい雄ネジが噛み合っている。弁箱を振動させることにより、雄ネジが球を押し、球が円錐台の穴から外れる。雄ネジにはT字の穴が開いているため、その穴を通り流体が流れバルブが開いた状態となる。本機構はx軸に対しy軸方向に90°位相がずれた振動を加えることにより駆動されるが、位相のずらし方の正負を逆にすると雄ネジは逆転する。ゆえに、バルブを閉めることも開くこともできる。また、90°位相のずれた振動は、錘を付けたモータなどにより発生させることができる。
【0038】
製作したバルブを図10に示す。弁箱は円等の形状をしており直径は6mmで長さは32.1mmであり、雌ネジはM4並目を用いた。雄ネジもM4並目を用いているがダイスを調整することにより少し細く成形されており、山の先端で計測した直径は3.91mmである。弁箱、雄ネジ、球の質量はそれぞれ、0.5g、2.0g、0.3gであり、合計で2.8gである。また、材料はそれぞれ、MCナイロン、真鍮、SUS440である。図9には示されていないが、モータによって錘を回転させることにより振動を発生させる加振器は円筒の形状をしており質量は20.1gであり、大きさは直径10mm、長さが54mmである。
【0039】
空気圧が0.2MPaのとき、本バルブが開閉できるかを検証した。実験装置を図11に示す。図11のように、アルミ板に噴射される空気噴流が当たるようにバルブを設置した。バルブが開くと空気噴流により、このアルミ板が(a)の方向に少したわむため、このたわみをレーザー変位計で計測することにより、バルブの開閉状態を監視した。加振器のモータは、このレーザー変位計にて計測した変位と指令値の差に比例ゲインを掛け回転数を制御した。また、加振器による振動の振幅を計測するためのレーザー変位計も備え付けられている。1秒おきにアルミ板に0.2mmのたわみが生じるように指令したときの、アルミ板のたわみと加振器の振幅を図12に示す。指令値に応じてたわみが生じており、製作したバルブが開閉できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
水道管のバルブをはじめ、毒物、劇物、強腐食性、および温度変化の大きな流体を取り扱う種々の配管で利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100 バルブ
110 弁箱
111 弁座
112 雌ネジ部
113 ストッパ
120 弁体
130 押棒
131 先端部
132 雄ネジ部
133 頭部
210 振動伝達部材
220 モータ
221 シャフト
222 錘
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、バルブは、バルブ内部に設置された弁体によって流路が開閉される。特許文献1には、バルブを貫通する弁棒を使って外部から弁体を動かす、いわゆるゲートバルブが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−110072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すようなバルブには、バルブボディーの壁に弁棒を通すための穴が開いている。弁棒と穴の隙間はパッキンによって密閉されるが、流体が劇物、毒物、強腐食性流体や温度変化の大きな流体である場合、通常のパッキンでは対応しきれず、流体が漏れるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流体が外部に漏れるおそれが小さいバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のバルブは、
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の流路に配置される弁体と、
前記弁体が係止される弁体係止部と、
前記弁箱の流路に配置され、前記弁体を押して移動させることによって流路を開閉する押棒と、を備え、
前記押棒の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、
前記弁箱の内周面に前記ネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、
前記押棒が前記ネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に前記弁箱を円運動させることによって、前記押棒が自転して流路方向に直動し前記弁体を押す、
ことを特徴とする。
【0007】
前記弁体は、前記弁箱の流路に配置される球体であり、
前記押棒は、前記球体を押して前記弁体係止部から前記球体を離間させることによって前記弁箱の流路を開いてもよい。
【0008】
前記押棒の内部に流体を通過させる流体通過路を有していてもよい。
【0009】
前記弁箱の流路の下流側に前記押棒の所定以上の下流方向への移動を規制する押棒係止部を備えていてもよい。
【0010】
前記弁箱に直接的或いは間接的に振動を供給する振動発生装置、を備え、
前記弁箱は、前記振動発生装置から直接或いは間接的に供給される振動によって円運動してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るバルブによれば、バルブの外壁に穴がないため、流体が外部に漏れるおそれが小さいバルブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかるバルブの断面図である。
【図2】図1に示すバルブが備える弁箱の構成を説明するための図であり、(A)は弁座の斜視図、(B)はストッパの断面図である。
【図3】図1に示すバルブが備える押棒の構成を説明するための図であり、(A)は押棒の側面図、(B)は押棒の各部の断面図である。
【図4】押棒の雄ネジ部と弁箱の雌ネジ部の関係を説明するための図であり、(A)は雄ネジ部のネジ山と雌ネジ部のネジ溝の関係を説明するための図であり、(B)は雄ネジ部が雌ネジ部に対して偏心して螺合している状態を示す図である。
【図5】バルブに円運動を伴った振動を与える様子を示す図であり、(A)はバルブに振動モータを設置した振動伝達板を固定した様子を示す図であり、(B)は振動モータを振動させた様子を示す図であり、(C)はバルブが円運動する様子を示す図である。
【図6】押棒が弁箱内で回転する様子を説明するための図であり、(A)は雌ネジ部が円運動する様子を示す図であり、(B)は雌ネジ部が円運動することに伴って押棒が回転することを説明するための図である。
【図7】バルブの開閉動作を説明するための図であり、(A)は押棒が上流に向かって移動する様子を示す図であり、(B)は押棒が弁体を押圧する様子を示す図であり、(C)は押棒が下流に向かって移動する様子を示す図である。
【図8】他の実施形態に係るバルブの開閉動作を説明するための図であり、(A)は押棒が弁体を押圧する様子を示す図であり、(B)は押棒が下流に向かって移動する様子を示す図である。
【図9】実施例で使用したバルブの構成を示す図である。
【図10】実施例で実際に使用したバルブを示す図である。
【図11】実施例で使用した実験装置を示す図である。
【図12】実施例の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態にかかるバルブについて、図面を参照しながら説明する。
バルブ100は、気体や液体などの流体の通路(以下、「流路」という。)を開閉するための装置であり、図1に示すように、弁箱110と、弁体120と、押棒130と、から構成される。
【0014】
弁箱110は、両端に開口を有し、内部が中空の円筒体から構成される。弁箱110の両端の開口に配管やゴムホース等が接続され、内部を流体が流れる。弁箱110は、流路となる円筒内部に、図1に示すように、弁座111と、雌ネジ部112と、ストッパ113と、を備える。なお、以下の説明では、図1に示す破線矢印の方向に流体が流れるものとし、矢印の指し示す方向を「下流」、その反対を「上流」と表現する。
【0015】
弁座111は、弁体120を着座保持するための部分であり、図2(A)に示すように、下流に向けて径が縮小した逆円錐台状(いわゆる「すり鉢状」)をしている。
【0016】
雌ネジ部112は、弁箱110の内壁に螺旋状のネジ溝が形成された部分であり、図1に示すように、弁座111の下流に配置されている。
【0017】
ストッパ113は、弁箱110の内壁から流路の中心方向に向けて突出した突起部分である。ストッパ113は雌ネジ部112のさらに下流に配置されている。ストッパ113、図2(B)に示すように、例えば、流路内の上下左右4箇所に配置されている。突起間の距離Dは、押棒130の頭部133の直径より小さくなっている。
【0018】
弁体120は、例えば金属製の球体から構成される球状弁である。弁体120の直径は弁座111の最も小さい内径よりも大きく構成されている。弁体120は、図1に示すように、流体の流れの力で下流に移動して弁座111に着座し、流体の圧力によって流路を閉じるようになっている。
【0019】
押棒130は、雌ネジ部112に螺合させるための金属製のネジである。押棒130は、図3(A)に示すように、先端部131と、雄ネジ部132と、頭部133と、から構成される。押棒130の内部には、図1および図3(B)に示すように、流体が通過可能な流体通過路が形成されている。さらに、押棒130の先端部131の側面には、流体通過路に通じる導入口が形成されている。弁座111を通過して侵入した流体は、図1に示すように、導入口および流体通過路を通って、下流へと流れていく。
【0020】
雄ネジ部132のネジ山のピッチPは、図4(A)に示すように、雌ネジ部112のネジ溝のピッチPと等しい。また、雄ネジ部132のネジ山の直径rは、図4(A)に示すように、雌ネジ部112のネジ溝の直径R1より小さく、雌ネジ部112のネジ山の直径R2より大きい。そのため、雄ネジ部132の中心軸は、図4(B)に示すように、雌ネジ部112の中心軸に対して偏心可能となっている。また、雄ネジ部132のネジ山の直径rは、雌ネジ部112のネジ山の直径R2より大きい。このため、雄ネジ部132の中心軸が雌ネジ部112の中心軸に対して偏心量が0になったときでも、雄ネジ部132が雌ネジ部112から抜けることはない。
【0021】
次に、このような構成を有するバルブ100の動作について説明する。
【0022】
まず、図5(A)に示すように、振動伝達部材210にバルブ100の弁箱110及び振動発生装置としてモータ220が設置される。
【0023】
振動伝達部材210は、モータ220の回転駆動による振動をバルブ100に伝達する役割を果たす。振動伝達部材210は、例えば板状で、金属や硬質樹脂等、モータ220からの振動をバルブ100に効率よく伝達可能な素材から構成される。振動伝達部材210には、バルブ100及びモータ220のシャフト221がそれぞれ貫通して設置される。
【0024】
シャフト221はバルブ100の長手方向、即ち押棒130の軸方向と平行に設置されている。
【0025】
シャフト221は振動伝達部材210の孔に振動伝達部材210に対して回転自在に取り付けられている。また、図5(B)に示すように、モータ220のシャフト221には重心が偏った錘222が設置されている。
【0026】
モータ220を駆動すると、シャフト221が回転する。図5(B)に示すように、シャフト221が回転すると、振動伝達部材210にはバルブ100及びシャフト221が取り付けられていることから、シャフト221を軸とする自転が規制されるので、振動伝達部材210はその向きを維持した状態で、すなわち自転することなく円運動する。なお、シャフト221には重心が偏った錘222が設置されているので、振動伝達部材210に円運動を生じさせることにより大きなエネルギーが供給される。
【0027】
この振動伝達部材210の円運動はバルブ100の弁箱110にも伝達される。したがって、図5(C)に示すように、振動伝達部材210同様、弁箱110もその向きを維持した状態でバルブ100の中心軸を支点に円運動する。
【0028】
弁箱110内部には雌ネジ部112を備えているので、図6(A)に示すように、雌ネジ部112も弁箱110と同様に円運動を開始する。そうすると、弁箱110内部に設置された押棒130は、図6(B)に示すように、雌ネジ部112の内周に沿って、例えば、地球の公転運動のように一周する。
【0029】
このとき、押棒130は、雌ネジ部112に対して僅かに回転する。なぜなら、雌ネジ部112のネジ溝の内周Lより雄ネジ部132のネジ山の外周lのほうが小さいことから、雌ネジ部112が一周して元の位置に戻ったときに、図6(B)に示す(9)のように、雄ネジ部132は円周差L−l分だけ、元の位置からずれるからである。これは、ネジをドライバー等で回転させたのと同じことなので、押棒130は、回転した角度θ分だけ僅かに軸方向に移動する。
【0030】
弁箱110に振動を加え続けると、押棒130は、図7(A)に示すように、上流に向かって移動していく。やがて押棒130は、弁体120に接触するが、さらに振動を加え続けると、押棒130は、弁体120を押圧し始める。弁体120は、押棒130からの押圧力によって、図7(B)に示すように、弁座111から離脱する。
【0031】
弁体120が弁座111から離脱すると、せき止められていた流体が下流へと流れ始める。流体は、図7(B)に示すように、押棒130の導入口から流体通過路に侵入し、やがて、バルブ下流へと流れていく。
【0032】
一方、バルブ100の閉鎖を行う場合、モータ220を上記とは逆向きに回転駆動させればよい。モータ220を逆向きに回転させることで、振動伝達部材210及び弁箱110は上記とは逆向きに円運動する。即ち、図7(B)に示した状態から、モータ220を逆回転させると、押棒130は逆回転を開始する。振動を加え続けると、押棒130は徐々に下流へと移動していき、やがて弁体120から離脱する。弁体120は、流体の圧力によって、図7(C)に示すように、再び弁座111に着座する。押棒130は、ストッパ113に達した時点で下流への移動を停止する。
【0033】
本実施形態によれば、バルブ100を完全に密封した状態で弁体120を動かすことができる。そのため、バルブ100に穴を開ける必要がなくなるので、従来の弁棒を使ったバルブと比べ、流体の漏れる危険性を低減することができる。その結果、毒物、劇物、強腐食性、および温度変化の大きな流体を安全に取り扱うことができる。
【0034】
なお、弁体120の形状は球体に限られない。例えば、弁座111の形状に合わせて円錐台としてもよい。
【0035】
また、上記では、上流から下流に向けて弁体120、弁座111、押棒130が順に配置され、流体の流れの力で弁体120を弁座111に係止させ、流体の流れに逆行する方向へ押棒130が弁体120を押して流路を開放する形態について説明したが、これに限られない。
【0036】
例えば、図8(A)、図8(B)に示すように、上流から下流に向けて弁座111、弁体120、押棒130が配置された形態であってもよい。図8(A)に示すように、押棒130を上流に向けて移動させることで、弁体120を弁座111に押し付けて流路を閉鎖する。一方、押棒130を下流に向けて移動させることで、弁体120が弁座111から離脱し、流路の開放が行われる。
【実施例】
【0037】
ネジによってバルブが開閉できるか検証した。本実施例で使用したバルブの構成を図9に示す。流体は左側から右側に流れるとする。弁箱(main body)には円錐台の穴が開いており、その穴に球が左側から加わる圧力により押され塞がることによりバルブが閉じられた状態となる。また、弁箱には雌ネジがあり、それよりも少し径の小さい雄ネジが噛み合っている。弁箱を振動させることにより、雄ネジが球を押し、球が円錐台の穴から外れる。雄ネジにはT字の穴が開いているため、その穴を通り流体が流れバルブが開いた状態となる。本機構はx軸に対しy軸方向に90°位相がずれた振動を加えることにより駆動されるが、位相のずらし方の正負を逆にすると雄ネジは逆転する。ゆえに、バルブを閉めることも開くこともできる。また、90°位相のずれた振動は、錘を付けたモータなどにより発生させることができる。
【0038】
製作したバルブを図10に示す。弁箱は円等の形状をしており直径は6mmで長さは32.1mmであり、雌ネジはM4並目を用いた。雄ネジもM4並目を用いているがダイスを調整することにより少し細く成形されており、山の先端で計測した直径は3.91mmである。弁箱、雄ネジ、球の質量はそれぞれ、0.5g、2.0g、0.3gであり、合計で2.8gである。また、材料はそれぞれ、MCナイロン、真鍮、SUS440である。図9には示されていないが、モータによって錘を回転させることにより振動を発生させる加振器は円筒の形状をしており質量は20.1gであり、大きさは直径10mm、長さが54mmである。
【0039】
空気圧が0.2MPaのとき、本バルブが開閉できるかを検証した。実験装置を図11に示す。図11のように、アルミ板に噴射される空気噴流が当たるようにバルブを設置した。バルブが開くと空気噴流により、このアルミ板が(a)の方向に少したわむため、このたわみをレーザー変位計で計測することにより、バルブの開閉状態を監視した。加振器のモータは、このレーザー変位計にて計測した変位と指令値の差に比例ゲインを掛け回転数を制御した。また、加振器による振動の振幅を計測するためのレーザー変位計も備え付けられている。1秒おきにアルミ板に0.2mmのたわみが生じるように指令したときの、アルミ板のたわみと加振器の振幅を図12に示す。指令値に応じてたわみが生じており、製作したバルブが開閉できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
水道管のバルブをはじめ、毒物、劇物、強腐食性、および温度変化の大きな流体を取り扱う種々の配管で利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
100 バルブ
110 弁箱
111 弁座
112 雌ネジ部
113 ストッパ
120 弁体
130 押棒
131 先端部
132 雄ネジ部
133 頭部
210 振動伝達部材
220 モータ
221 シャフト
222 錘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の流路に配置される弁体と、
前記弁体が係止される弁体係止部と、
前記弁箱の流路に配置され、前記弁体を押して移動させることによって流路を開閉する押棒と、を備え、
前記押棒の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、
前記弁箱の内周面に前記ネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、
前記押棒が前記ネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に前記弁箱を円運動させることによって、前記押棒が自転して流路方向に直動し前記弁体を押す、
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁箱の流路に配置される球体であり、
前記押棒は、前記球体を押して前記弁体係止部から前記球体を離間させることによって前記弁箱の流路を開く、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記押棒の内部に流体を通過させる流体通過路を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記弁箱の流路の下流側に前記押棒の所定以上の下流方向への移動を規制する押棒係止部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記弁箱に直接的或いは間接的に振動を供給する振動発生装置、を備え、
前記弁箱は、前記振動発生装置から直接或いは間接的に供給される振動によって円運動する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項1】
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の流路に配置される弁体と、
前記弁体が係止される弁体係止部と、
前記弁箱の流路に配置され、前記弁体を押して移動させることによって流路を開閉する押棒と、を備え、
前記押棒の少なくとも一部の外周面にネジ山を有し、
前記弁箱の内周面に前記ネジ山の直径より大きい直径のネジ溝を有し、
前記押棒が前記ネジ溝に偏心可能に螺合され、流路方向を軸に前記弁箱を円運動させることによって、前記押棒が自転して流路方向に直動し前記弁体を押す、
ことを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁箱の流路に配置される球体であり、
前記押棒は、前記球体を押して前記弁体係止部から前記球体を離間させることによって前記弁箱の流路を開く、
ことを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記押棒の内部に流体を通過させる流体通過路を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記弁箱の流路の下流側に前記押棒の所定以上の下流方向への移動を規制する押棒係止部を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項5】
前記弁箱に直接的或いは間接的に振動を供給する振動発生装置、を備え、
前記弁箱は、前記振動発生装置から直接或いは間接的に供給される振動によって円運動する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバルブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−246955(P2012−246955A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117113(P2011−117113)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】
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