説明

バルーンカテーテル

【課題】ラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、第1バルーンを膨張させるときに第1バルーンの位置ずれが生じることを低減し得るバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル11は、基部シャフト30と、膨張・収縮が可能な第1バルーン40を備える先端シャフト50と、を備えている。先端シャフトには、第1バルーンよりも先端側において開口する先端開口61、および第1バルーンよりも基端側において開口する基端開口62を備えるガイドワイヤ用ルーメン60が設けられている。バルーンカテーテルはさらに、ガイドワイヤ用ルーメンの基端開口よりも基端側に配置され、膨張・収縮が可能な第2バルーン70と、第1バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第1流路81と、第2バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第2流路82と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、PTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈経血管形成術)のような治療においては、例えば血管等の体腔内に生じた狭窄部(病変部)を拡張するために、バルーンカテーテルが用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に示されるバルーンカテーテルは、ラピッドエクスチェンジタイプと称されている。ラピッドエクスチェンジタイプのカテーテルは、ガイドワイヤ挿入用の開口が、カテーテルの基端側ではなく、カテーテルの先端側の側面に形成されている。このタイプのカテーテルは、カテーテルの遠位部分のみがガイドワイヤをたどる構造であり、ガイドワイヤを血管内に留置したままでカテーテルの交換が容易である。ガイドワイヤを血管内に留置したままカテーテルの交換を行えるので、患者の負担軽減、手術時間および手間の軽減、感染の防止等の点において好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平06−507105号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バルーンカテーテルにあっては、バルーンを膨張させて狭窄部を拡張するときに、狭窄部の形状によってはバルーンが狭窄部から滑ってしまい、バルーンの位置ずれが生じることがある。
【0006】
本発明の目的は、ラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、バルーンを膨張させるときにバルーンの位置ずれが生じることを低減し得るバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのバルーンカテーテルは、基部シャフトと、前記基部シャフトの先端側に接続され膨張・収縮が可能な第1バルーンを備える先端シャフトと、を備えている。前記先端シャフトには、ガイドワイヤを挿通するための通路であって、前記第1バルーンよりも先端側において開口する先端開口、および前記第1バルーンよりも基端側において開口する基端開口を備えるガイドワイヤ用ルーメンが設けられている。バルーンカテーテルはさらに、前記ガイドワイヤ用ルーメンの前記基端開口よりも基端側に配置され、膨張・収縮が可能な第2バルーンと、前記第1バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第1流路と、前記第2バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第2流路と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバルーンカテーテルによれば、第1バルーンを膨張させるときには、第1バルーンに近い部分が、第2バルーンによってガイディングカテーテルや体腔に対し固定(位置決め)された状態になっている。よって、第1バルーンを膨張させるときに、第1バルーンが狭窄部から滑ってしまうことを防止し、第1バルーンの位置ずれが生じることを低減することができ、狭窄部を第1バルーンによって拡張することができる。したがって、本発明によれば、ラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテルであって、第1バルーンを膨張させるときに第1バルーンの位置ずれが生じることを低減し得るバルーンカテーテルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るバルーンカテーテルを概略示す外観図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】実施形態に係るバルーンカテーテルにおいて、第2バルーンが設けられた部位を拡大して示す断面図である。
【図4】バルーンカテーテルの使用状態の説明に使用する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のバルーンカテーテルを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図面において、理解を容易にするために誇張して図示される部分を含んでおり、寸法比率が実際の比率と異なる場合がある。なお、以下では、説明の都合上、図1中の右側を各部材における「基端側」、左側を各部材における「先端側」という。
【0011】
図1〜図3を参照して、実施形態のバルーンカテーテル11は、ラピッドエクスチェンジタイプであり、概説すれば、Yコネクタ20と、Yコネクタ20の先端側に接続された基部シャフト30と、基部シャフト30の先端側に接続され膨張・収縮が可能な第1バルーン40を備える先端シャフト50と、を備えている。先端シャフト50には、ガイドワイヤ110を挿通するための通路であって、第1バルーン40よりも先端側において開口する先端開口61、および第1バルーン40よりも基端側において開口する基端開口62を備えるガイドワイヤ用ルーメン60が設けられている。このバルーンカテーテル11はさらに、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62よりも基端側に配置され、膨張・収縮が可能な第2バルーン70と、第1バルーン40を膨張・収縮させる作動流体が通過する第1流路81と、第2バルーン70を膨張・収縮させる作動流体が通過する第2流路82と、を有している。バルーンカテーテル11は、ガイドワイヤ用ルーメン60に挿通されたガイドワイヤ110に沿って、血管などの体腔130内に挿入される。以下、詳述する。
【0012】
図1を参照して、Yコネクタ20は、本体部21と、本体部21から分岐した分岐部22と、を有している。本体部21の基端側には第1接続部23が形成され、分岐部22の基端側には第2接続部24が形成されている。第1接続部23は第1流路81に連通し、第2接続部24は第2流路82に連通している。第1接続部23には、第1バルーン40に供給する作動流体を注入するシリンジなどの注入器具(図示せず)が接続される。第2接続部24には、第2バルーン70に供給する作動流体を注入するシリンジなどの注入器具(図示せず)が接続される。
【0013】
図3を参照して、基部シャフト30は、比較的剛性の高い材質から形成され、Yコネクタ20の先端側に流体連通可能に接合されている。基部シャフト30は、外管31と、外管31内に挿通される内管32とを有している。外管31と内管32との間の隙間から形成される第1ルーメン33が第1流路81の一部を構成する。内管32内に形成される第2ルーメン34が第2流路82を構成する。基部シャフト30には、バルーンカテーテル11をガイディングカテーテル120に挿入した深度がどのくらいか容易に確認できるように深度マーカー35(図1を参照)が設けられている。
【0014】
基部シャフト30の先端にはインフレーション開口部36が設けられ、さらにインフレーション開口部36から先端側に向けて伸びるように形成された補強体部37が設けられている。第1接続部23から導入される作動流体は、第1ルーメン33を通ってインフレーション開口部36から外部へ出る。補強体部37は、基部シャフト30の先端部分を延伸加工や口絞り加工することによって形成されている。補強体部37は、先端シャフト50の基端部を越えて先端シャフト50の内部にまで伸びている。
【0015】
基部シャフト30は、長さが800mm〜1600mm、より好ましくは、1000〜1300mmである。外管31としては、内管32を挿入可能なものであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.2〜1.4mm、好ましくは0.3〜1.2mmである。内管32としては、外径が0.1〜1.2mm、好ましくは0.3〜1.0mmであり、内径が0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.8mmである。
【0016】
基部シャフト30における外管31および内管32の形成材料としては、比較的剛性の高い材質、例えばNi−Ti、真鍮、SUS、アルミ等の金属を用いることが好ましい。なお、比較的剛性の高い材質であれば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等の樹脂を用いることもできる。
【0017】
図2および図3を参照して、先端シャフト50は、基部シャフト30に比較して剛性の低い材質から形成され、基部シャフト30の先端側に流体連通可能に接合されている。先端シャフト50は、外管51と、外管51および第1バルーン40内に挿通される内管52とを有している。外管51と内管52との間の隙間から形成されるルーメン53が第1流路81の一部を構成する。内管52内に形成されるルーメン54がガイドワイヤ用ルーメン60を構成する。
【0018】
内管52の先端部は、第1バルーン40の先端を越えて延長され、先端チップ55を形成している。第1バルーン40の基端部41は、外管51の先端側に流体連通可能に取り付けられ、第1バルーン40の先端部42は、内管52の先端チップ55に、融着または接着によって液密を保った状態で取り付けられている。内管52の基端部は、外管51の外周面の一部に形成した第1開口部56に、融着または接着によって液密を保った状態で取り付けられている。外管51の第1開口部56は、第1バルーン40の基端部41が取り付けられた部位と、外管51の基端部との間に形成されている。
【0019】
内管52は、基端部から先端部まで貫通している。この内管52によって、ガイドワイヤ110を挿通するための通路であるガイドワイヤ用ルーメン60が構成されている。内管52の先端部は、第1バルーン40よりも先端側に延長されている。したがって、ガイドワイヤ用ルーメン60は、第1バルーン40よりも先端側において開口する先端開口61を備えている。また、内管52の基端部は、第1バルーン40よりも基端側の位置において、外管51の第1開口部56に取り付けられている。したがって、ガイドワイヤ用ルーメン60は、第1バルーン40よりも基端側において開口する基端開口62を備えている。ガイドワイヤ110は、先端開口61を入口とし、基端開口62を出口として、内管52つまりガイドワイヤ用ルーメン60に挿通される。
【0020】
先端シャフト50の外管51としては、外径が0.6〜1.5mm、好ましくは0.8〜1.1mmであり、内径が0.5〜1.4mm、好ましくは0.7〜1.0mmである。内管52としては、外径が0.35〜1.0mm、好ましくは0.45〜0.8mmであり、内径が0.2〜0.9mm、好ましくは0.35〜0.7mmである。内管52が外管51の先端から突出する長さは、使用する第1バルーン40の長さによって相違するが、5〜100mm程度であり、好ましくは10〜60mmである。
【0021】
先端シャフト50における外管51および内管52の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびこれらの架橋もしくは部分架橋物)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が好適である。また、内管52としては、単一の樹脂材料により形成してもよいが、ガイドワイヤ110の摺動性を良好なものとするために、内層は低摩擦性材料、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂により形成し、外層が、外管51の材質と相溶性を有する材質からなるものとすることが好ましい。
【0022】
先端シャフト50内には、基部シャフト30の補強体部37が延長して配置されている。補強体部37はさらに、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62よりも先端側にまで延長されている。このように先端シャフト50内に基部シャフト30の補強体部37を配置することによって、先端シャフト50の基端部から中間部分にかけての剛性が低く(柔らかく)、先端シャフの中間部分から先端部にかけての剛性が高く(硬く)なるようにすることができる。バルーンカテーテル11を構成するシャフトの剛性を基端側から先端側にかけて徐々に変化させることができ、先端シャフト50の基端部から中間部分にかけての部位が急激に曲がる際にも応力が1カ所に集中することがなく、キンクの発生を低減させることが可能である。
【0023】
第1バルーン40は、膨張させない状態では、内管52の外周に折り畳まれた状態になっている。第1バルーン40は、内管52の周囲を取り囲んでいる。第1バルーン40は、膨張した状態では、中央部がほぼ円筒状になり狭窄部を容易に拡張できる。第1バルーン40の中央部は完全な円筒状になる必要はなく、多角柱状になってもよい。第1バルーン40内部の内管52の周囲には、造影マーカー43が設けられている。造影マーカー43は手技中、X線透視下で狭窄部位への第1バルーン40の位置決めを容易にするために設けられている。
【0024】
Yコネクタ20の第1接続部23に接続したシリンジなどの注入器具(図示せず)から作動流体を注入すると、作動流体が、Yコネクタ20から基部シャフト30の第1ルーメン33、インフレーション開口部36、先端シャフト50のルーメン53を経て第1バルーン40に至り、第1バルーン40を膨張させることができる。第1バルーン40を収縮させるときには、作動流体を逆方向に流して抜き取る。このように、第1バルーン40を膨張・収縮させる作動流体が通過する第1流路81は、基部シャフト30の第1ルーメン33、インフレーション開口部36、および先端シャフト50のルーメン53によって構成されている。
【0025】
第1バルーン40用の作動流体としては、好ましくは液体を用いるが、液体の中でも、X線造影性を有する液体であるのがより好ましく、例えば、動脈用造影剤等のX線造影剤を生理食塩水で数倍に希釈した液体等を使用することができる。
【0026】
第1バルーン40の大きさとしては、膨張されたときの円筒部分(膨張可能部)の外径が、1.5〜5.0mm、好ましくは2.5〜4.0mmであり、長さが5〜50mm、好ましくは10〜40mmである。
【0027】
第1バルーン40の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアリレーンサルファイド等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、第1バルーン40は、高い強度および膨張力を有する2軸延伸されたものが好ましい。
【0028】
第2バルーン70は、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62よりも基端側の部位に配置されている。実施形態にあっては、基部シャフト30における内管32の先端部は、外管51の外周面の一部に形成した第2開口部57に、融着または接着によって液密を保った状態で取り付けられている。外管51の第2開口部57は、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62と、外管51の基端部との間に形成されている。第2バルーン70は、第2開口部57に、融着または接着によって液密を保った状態で取り付けられている。第2バルーン70の位置は、周方向に見て、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62からずれた位置にある。両者の位置は、ずれていれば何度でもよく、特に限定されないが、例えば、少なくとも90度ずらすことが好ましい。第2バルーン70がガイドワイヤ110を血管内壁に押し当てることを防止して、血管内壁を傷つけないようにできるからである。
【0029】
第2バルーン70は、膨張させない状態では、外管51の外周に折り畳まれた状態になっている。第2バルーン70は、外管51の周方向の一部分を覆うように取り付けられている。第2バルーン70は、膨張した状態では、中央部がほぼ円筒状になり、ガイディングカテーテル120の内面あるいは体腔130の内面に対して押付けられ固定される。第2バルーン70の中央部は完全な円筒状になる必要はなく、多角柱状になってもよい。
【0030】
Yコネクタ20の第2接続部24に接続したシリンジなどの注入器具(図示せず)から作動流体を注入すると、作動流体が、Yコネクタ20から基部シャフト30の内管32を経て第2バルーン70に至り、第2バルーン70を膨張させることができる。第2バルーン70を収縮させるときには、作動流体を逆方向に流して抜き取る。このように、第2バルーン70を膨張・収縮させる作動流体が通過する第2流路82は、基部シャフト30の内管32によって構成されている。
【0031】
実施形態にあっては、第2流路82が、第1流路81とは別個独立して設けられている。体腔やガイディングカテーテル120の内径の条件に合わせて第2バルーン70をある程度自由な大きさに膨張させることができ、その結果、第2バルーン70を体腔やガイディングカテーテル120内においてより確実に固定することができるからである。
【0032】
第2バルーン70用の作動流体は、上述した第1バルーン40用の作動流体と同様の流体を使用することができる。
【0033】
第2バルーン70の大きさとしては、膨張されたときの円筒部分(膨張可能部)の外径が、0.5〜3.0mm、好ましくは1.0〜2.5mmであり、長さが1.0〜20.0mm、好ましくは2.0〜10mmである。
【0034】
第2バルーン70の形成材料としては、上述した第1バルーン40の形成材料と同様の材料を使用することができる。
【0035】
次に、図4をも参照して、バルーンカテーテル11の使用方法の一例について説明する。
【0036】
使用前、バルーンカテーテル11は、第1バルーン40および第2バルーン70がともに収納状態とされている。この状態のバルーンカテーテル11に対し、第1流路81および第2流路82をプライミング用液体で満たしておく。
【0037】
バルーンカテーテル11を、血管130内に留置したガイディングカテーテル120内に挿入し、前進させる。このとき、ガイドワイヤ用ルーメン60内に挿通したガイドワイヤ110(図示せず)を先行させながら、ガイディングカテーテル120の内腔に沿ってバルーンカテーテル11を前進させる。ガイディングカテーテル120は、その先端が体腔壁面に突き当てられることによって、位置決めされている。
【0038】
第1バルーン40が狭窄部まで挿入されたら、第2流路82を通して作動流体を第2バルーン70内に供給し、第2バルーン70を膨張させる。これにより、第2バルーン70をガイディングカテーテル120内で固定(位置決め)することができる。
【0039】
第2バルーン70の固定が終わると、第1流路81を通して作動流体を第1バルーン40内に供給し、狭窄部に位置する第1バルーン40を膨張させる。これにより、狭窄部は、膨張した第1バルーン40によって拡張される。
【0040】
狭窄部の拡張操作が終了したら、第1流路81および第2流路82からそれぞれ作動流体を抜き取り、第1バルーン40および第2バルーン70をそれぞれ収縮させる。次いで、バルーンカテーテル11をガイディングカテーテル120内から抜去する。これにより、狭窄部の拡張治療が完了する。
【0041】
実施形態にあっては、第1バルーン40の膨張に先立って、第1バルーン40に比較的近接した部位において第2バルーン70を膨張させ、第2バルーン70をガイディングカテーテル120の内面に対して固定している。ガイディングカテーテル120は、予め、体腔内において位置決めされている。このため、第1バルーン40を膨張させるときには、第1バルーン40に近い部分が、第2バルーン70によってガイディングカテーテル120に対し固定(位置決め)された状態になっている。よって、第1バルーン40を膨張させるときに、術者が手元操作部分でバルーンカテーテルを固定する場合に比べて、第1バルーン40が狭窄部から滑ってしまうことを防止でき、第1バルーン40の位置ずれが生じることを低減することができる。その結果、狭窄部を第1バルーン40によって確実に拡張することが可能となる。
【0042】
したがって、実施形態によれば、ラピッドエクスチェンジタイプのバルーンカテーテル11であって、第1バルーン40を膨張させるときに第1バルーン40の位置ずれが生じることを低減し得るバルーンカテーテル11を提供することが可能となる。また、第2バルーン70がガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62よりも基端側に配置することによって、次のような効果を奏する。つまり、ガイディングカテーテル120内で第2バルーン70が固定される可能性が高くなる。さらに、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62と、第2バルーン70拡張用の第2ルーメン34とが重ならないので、径が太くなることがない。
【0043】
また、第2流路82が第1流路81とは別個独立して設けられているので、ガイディングカテーテル120の内径の条件に合わせて第2バルーン70をある程度自由な大きさに膨張させることができ、その結果、第2バルーン70をガイディングカテーテル120内においてより確実に固定することができる。
【0044】
第2バルーン70が、基部シャフト30または先端シャフト50の周の一部のみにあるので、第2バルーン70とガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62との位置関係を、第2バルーン70がガイドワイヤ110を血管内壁に押し当てることを防止する位置関係に簡単に設定できる。これにより、第2バルーン70を拡張させたときに、ガイドワイヤ110によって血管内壁を傷つけないようにできる。
【0045】
また、第2バルーン70をガイディングカテーテル120の内面に対して固定しているので、ガイディングカテーテル120を用いてバルーンカテーテル11を前進させる工程を有する手技に用いて好適なバルーンカテーテル11を提供できる。
【0046】
以上、本発明のバルーンカテーテル11を図示の実施形態および改変例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、バルーンカテーテル11を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0047】
ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62を先端シャフト50に設けた実施形態について図示したが、ガイドワイヤ用ルーメン60の基端開口62は、第1バルーン40よりも基端側において開口していればよい。基端開口62は、基部シャフト30に設けてもよいし、先端シャフト50と基部シャフト30との境界部(接合部)に設けてもよい。
【0048】
また、先端シャフト50を外管51と内管52とから構成した実施形態について図示したが、例えば、基部シャフト30と外管51とを接続する接続用管部を用いてもよい。この場合、基部シャフト30の先端部を接続用管部の基端部に接続し、先端シャフト50の基端部を接続用管部の先端部に接続する。
【0049】
また、ガイドワイヤ用ルーメン60が先端シャフト50内に同軸的に配置したコアキシャル構造を有するカテーテルを図示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つのチューブ(シャフト)内にガイドワイヤ用ルーメンとインフレーション用ルーメンとが平行に形成されたカテーテルでもよい。
【0050】
また、本発明のバルーンカテーテル11、12は、PTCA術に用いられるものに限らず、他の血管(例えば、透析シャント、下肢、腎等の血管)に対する経皮的血管形成術(PTA)に用いられるものや、さらには、血管以外の体腔130(例えば、卵管、胆管、膵管等)に生じた狭窄部を拡張するためのものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 バルーンカテーテル、
30 基部シャフト、
31 基部シャフトの外管、
32 基部シャフトの内管、
33 第1ルーメン、
34 第2ルーメン、
36 インフレーション開口部、
37 補強体部、
40 第1バルーン、
50 先端シャフト、
51 先端シャフトの外管、
52 先端シャフトの内管、
53 ルーメン、
54 ルーメン、
55 先端チップ、
56 第1開口部、
57 第2開口部、
60 ガイドワイヤ用ルーメン、
61 先端開口、
62 基端開口、
70 第2バルーン、
81 第1流路、
82 第2流路、
110 ガイドワイヤ、
120 ガイディングカテーテル、
130 体腔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部シャフトと、
前記基部シャフトの先端側に接続され膨張・収縮が可能な第1バルーンを備える先端シャフトと、
ガイドワイヤを挿通するために前記先端シャフトに設けられた通路であって、前記第1バルーンよりも先端側において開口する先端開口、および前記第1バルーンよりも基端側において開口する基端開口を備えるガイドワイヤ用ルーメンと、
前記ガイドワイヤ用ルーメンの前記基端開口よりも基端側に配置され、膨張・収縮が可能な第2バルーンと、
前記第1バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第1流路と、
前記第2バルーンを膨張・収縮させる作動流体が通過する第2流路と、を有するバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記第2流路が、前記第1流路とは別個独立して設けられている、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記第2バルーンが、前記基部シャフトまたは前記先端シャフトの周の一部のみにある、請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記第2バルーンが、ガイディングカテーテルの内面に対して固定される、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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