説明

バルーンカテーテル

【課題】操作性に優れたバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10は、先端側に弾性的に膨張可能なバルーン11が設けられており、内部空間がバルーン11の内部空間に連通された先端シャフト21と、先端シャフト21に連結された中間シャフト22と、中間シャフト22に連結された基端シャフト23と、先端シャフト21の内部空間に設けられたガイドワイヤ用チューブ14と、先端側がガイドワイヤ用チューブ14に固定され、かつ基端側が基端シャフト23に固定されて、中間シャフト22の内部空間に挿通された線材16と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の狭窄部分を拡張する治療に用いられるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管にカテーテルを挿入して、血管の狭窄を拡張する治療が行われている。例えば、冠動脈形成術(PTCA)において冠動脈の狭窄部分をバルーンカテーテルで拡張するには、まず、セルジンガー法などによって動脈血管にシースイントロデューサを挿入し、体外から動脈血管を確保した後、造影用ガイドワイヤを心臓近くまで挿入する。次いで、造影用ガイドワイヤに導かれるようにして、ガイディングカテーテルを挿入して、その先端を冠状動脈入口に位置させる。その後、造影用ガイドワイヤを抜き取り、PTCA用ガイドワイヤ(以下、単に「ガイドワイヤ」とも称される。)をガイディングカテーテルに挿入して、その先端を狭窄部分付近に位置させる。このガイドワイヤに導かれるようにして、バルーンカテーテルをガイディングカテーテルに挿入して、そのバルーン部分を冠状動脈の狭窄部分に位置させる。そして、バルーン部分を膨らませて冠状動脈の狭窄部分を拡張させる(特許文献1〜3参照)。
【0003】
バルーンカテーテルには、全長に渡ってガイドワイヤ用ルーメンが設けられたオーバー・ザ・ワイヤー型(OTW型)のものと、先端側にのみガイドワイヤ用ルーメンが設けられており、そのガイドワイヤ用ルーメンの基端側がバルーンカテーテルの途中において開口する高速交換型(RX型)のものとがある。
【0004】
RX型のバルーンカテーテルでは、ガイドワイヤはバルーンカテーテルの先端側においてのみガイドワイヤ用ルーメンに挿通されているので、バルーンカテーテルの基端側はガイドワイヤによる補強効果が期待できない。その結果、RX型のバルーンカテーテルは、血管へ挿入する際に屈曲するおそれがある。このような問題に対して、RX型のバルーンカテーテルの内部空間に、芯材としてコアワイヤが設けられた構成が知られている(特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−326226号公報
【特許文献2】特開2007−20737号公報
【特許文献3】特開2009−536546号公報
【特許文献4】特開2003−102841号公報
【特許文献5】特開2002−736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述されたコアワイヤを有するバルーンカテーテルであっても、血管へ挿入する際に屈曲(キンク)が生じやすかったり、先端を所望の血管へ導くには操作性が良くないという問題があった。例えば、特許文献4,5においては、シャフト内にコアワイヤーなどが設けられることによりシャフトが補強されているが、コアワイヤ−などの両端のうち一方のみしかシャフトと固定されていない。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作性に優れたバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバルーンカテーテルは、先端側に弾性的に膨張可能なバルーンが設けられており、内部空間が当該バルーンの内部空間に連通された先端シャフトと、上記先端シャフトに連結された中間シャフトと、上記中間シャフトに連結された基端シャフトと、上記先端シャフトの内部空間に設けられたガイドワイヤ用チューブと、先端側が上記ガイドワイヤ用チューブに固定され、かつ基端側が上記基端シャフトに固定されて、上記中間シャフトの内部空間に挿通された線材と、を具備する。
【0009】
バルーンカテーテルは、拡張すべき狭窄部分を有する血管に挿入される。血管には、予めガイドワイヤが挿入される。バルーンカテーテルが血管に挿入される前に、このガイドワイヤが、バルーンカテーテルのガイドワイヤ用チューブに挿入される。施術者は、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを血管へ挿入する。バルーンカテーテルの先端シャフトの内部空間には線材が挿通されており、その線材の両端側が各々ガイドワイヤ用チューブ及び基端シャフトに固定されているので、血管の湾曲に沿って中間シャフトが湾曲しても、線材が先端シャフトの径方向に逃げることがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るバルーンカテーテルによれば、線材の先端側がガイドワイヤ用チューブに固定され、線材の基端側が基端シャフトに固定されているので、中間シャフトが湾曲しても、線材が先端シャフトの径方向に逃げることがない。これにより、操作性に優れたバルーンカテーテルが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、バルーン11が収縮姿勢である状態のバルーンカテーテル10の外観構成を示す図である。
【図2】図2は、バルーンカテーテル10の部分断面である。
【図3】図3は、バルーンカテーテル10が湾曲された状態を示す部分断面図である。
【図4】図4(A)は、変形例に係るバルーンカテーテル10の部分断面図であり、図4(B)は、図4(A)におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0013】
図1,2に示されるように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、先端側にバルーン11が設けられたシャフト12を有する。シャフト12は、先端から基端へ向けて、先端シャフト21、中間シャフト22、及び基端シャフト23が同じ軸線方向101に沿って1本に連結されている。なお、図1においては、ガイドワイヤ20が挿通された状態のバルーンカテーテル10が示されているが、図2においては、ガイドワイヤ20が省略されている。
【0014】
なお、本実施形態において基端側とは、バルーンカテーテル10が血管に挿入される向きに対して後ろ側(図1における右側)をいう。先端側とは、バルーンカテーテル10が血管に挿入される向きに対して前側(図1における左側)をいう。
【0015】
シャフト12は、全体として軸線方向101に長尺な部材である。シャフト12は、軸線方向101に対して湾曲するように弾性的に撓み得る管体である。湾曲していない状態のシャフト12が延びる方向が、本明細書において軸線方向101と称される。先端シャフト21及び中間シャフト22の素材として、例えば合成樹脂が使用できる。基端シャフト23の素材として、例えばステンレスが使用できる。したがって、中間シャフト22より基端シャフト23の方が曲げ剛性が高い。なお、各シャフトの素材としては、合成樹脂やステンレスなどの他、バルーンカテーテルに用いられている公知の材質が使用でき、また、必ずしも1種類の素材のみから構成される必要はなく、他素材からなる複数の部品が組み付けられて構成されていてもよい。
【0016】
先端シャフト21に基端側に、中間シャフト22が外側から嵌め込まれて融着されている。また、基端シャフト23の先端側に中間シャフト22が外側から嵌め込まれて接着されている。先端シャフト21、中間シャフト22及び基端シャフト23の内部空間は連通されている。なお、シャフト12の外径及び内径は、先端シャフト21、中間シャフト22、基端シャフト23において、肉厚分程度変化している。
【0017】
先端シャフト21の先端側には、バルーン11が設けられている。バルーン11は、内部空間に流体(液体、気体)が流入されることにより弾性的に膨張し、内部空間から流体が流出されることにより収縮するものである。図1,2においては、収縮した状態のバルーン11が示されている。バルーン11の内部空間は、先端シャフト21の内部空間と連通されている。バルーン11の内部空間に流体が流入されると、バルーン11は、軸線方向101の中央が最大径となるように軸線方向101と直交する径方向へ膨張する。バルーン11の材質や、バルーン11と先端シャフト21との固定方法は、バルーンカテーテルにおいて用いられる公知の材質及び方法が使用できる。
【0018】
基端シャフト23の基端にはハブ13が設けられている。ハブ13には、基端シャフト23の内部空間と連通する孔が形成されている。ハブ13を通じて、バルーン11を膨張させるための流体(気体、液体)が基端シャフト23に流入又は流出される。
【0019】
図2に示されるように、先端シャフト21の内部空間には、ガイドワイヤ用チューブ14が設けられている。ガイドワイヤ用チューブ14は、バルーン11の先端から先端シャフト21の基端付近まで設けられている。つまり、バルーンカテーテル10は、RX型である。
【0020】
ガイドワイヤ用チューブ14が設けられることにより、シャフト12の先端側、つまり先端シャフト21は二重管構造をなしている。バルーン11は、先端シャフト21の先端に固定されている。ガイドワイヤ用チューブ14の先端側は、バルーン11の内部空間を通っており、バルーン11の先端においてバルーン11と固定されている。ガイドワイヤ用チューブ14の基端は、中間シャフト22の基端まで到達していない。ガイドワイヤ用チューブ14の基端は、先端シャフト21の外壁において外側へ開口されている。この開口を通じて、シャフト12の外側からガイドワイヤ用チューブ14へガイドワイヤ20を挿通可能である。ガイドワイヤ用チューブ14の材質や、バルーン11及び先端シャフト21との固定方法は、バルーンカテーテルにおいて用いられる公知の材質及び方法が使用できる。
【0021】
バルーン11の先端側であって外側に、ガイドワイヤ用チューブ14と連続して先端チップ15が設けられている。先端チップ15は、血管の内壁を傷つけない程度の柔軟性を有する合成樹脂の成型品であり、バルーン11の先端側に溶着されている。先端チップ15の内部空間はガイドワイヤ用チューブ14と連通している。
【0022】
中間シャフト22の内部空間には、線材16が設けられている。線材16は、先端シャフト21と基端シャフト23とを連結可能な長さを有している。線材16の断面形状は、円や多角形などであり、先端から基端へ渡って外形寸法が同じであっても、例えば先端側へ向かって細くなるように狭められていてもよい。線材16は、中間シャフト22やガイドワイヤ用チューブ14と同等以上の曲げ剛性を有する。線材16の外径は、中間シャフト22の内径に対して十分に小さく、また、先端シャフト21の内壁とガイドワイヤ用チューブ14の外壁との隙間よりも細いので、線材16が、先端シャフト21の内部空間を流れる流体を遮断することはない。線材16の材質としては、例えば医療用ステンレスなどの金属が使用できる。
【0023】
線材16の先端側は、ガイドワイヤ用チューブ14に固定されている。線材16の先端側は、ガイドワイヤ用チューブ14の外周面に螺旋に巻き付けられて、溶着などの公知の手法によりガイドワイヤ用チューブ14と接着されている。線材16の基端側は、基端シャフト23の先端側において、溶着や接着などの公知の手法により固定されている。線材16の先端側及び基端側以外の部分は、中間シャフト22及びガイドワイヤ用チューブ14とは固定されていない。
【0024】
[バルーンカテーテル10の使用方法]
以下に、バルーンカテーテル10の使用方法が説明される。
【0025】
バルーンカテーテル10は、狭窄部分を拡張するために血管に挿入される。血管には、ガイドワイヤ20が予め挿通されて狭窄部分へ到達されている。このようなガイドワイヤ20の挿通は、例えば、特開2006−326226号公報や特開2006−230442号公報に開示された公知の手法によりなされる。
【0026】
バルーンカテーテル10が血管へ挿入されるときには、バルーン11には流体が圧入されておらず、バルーン11は収縮した状態である。この状態のバルーンカテーテル10の先端から、ガイドワイヤ20の基端が、ガイドワイヤ用チューブ14に挿入され、シャフト12の外壁に開口したガイドワイヤ用チューブ14の基端へ通される。そして、バルーンカテーテル10が、ガイドワイヤ20に沿って血管に挿入される。血管におけるバルーンカテーテル10の挿入位置は、例えば、先端チップ15に埋め込まれたマーカを放射線により確認することによって把握される。
【0027】
施術者は、血管の湾曲状態などを把握して、バルーンカテーテル10のハブ13を操作する。図3に示されるように、バルーンカテーテル10が血管の湾曲部分を通過するときに、中間シャフト22が血管に沿って弾性的に湾曲する。線材16の両端側が、それぞれガイドワイヤ用チューブ14及び基端シャフト23と固定されているので、線材16が血管に沿って弾性的に湾曲されても、線材16の両端が、先端シャフト21の径方向(軸線方向101と直交する方向)に対して位置ズレしない。したがって、ハブ13側に付与された押し込み力が、湾曲部分より先端側、つまり、先端シャフト21に効率的に伝達されるので、バルーンカテーテル10の先端まで力が伝達されやすい。
【0028】
このようにして、バルーンカテーテル10を血管へ挿入して、血管の狭窄部分へバルーン11を到達した後は、ハブ13から流体が圧入されることによって、バルーン11が拡張される。そして、拡張されたバルーン11によって狭窄部分が拡張される。
【0029】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態に係るバルーンカテーテル10によれば、線材16の先端側がガイドワイヤ用チューブ14に固定され、線材16の基端側が基端シャフト23に固定されているので、中間シャフト22が湾曲しても、線材16が先端シャフト21の径方向(軸線方向101と直交する方向)に逃げることがない。これにより、操作性に優れたバルーンカテーテル10が実現される。
【0030】
[変形例]
前述された実施形態では、線材16の外径が先端シャフト21の内壁とガイドワイヤ用チューブ14の外壁との隙間よりも細いので、線材16が、先端シャフト21の内部空間を流れる流体を遮断することはないが、図4に示されるように、線材16の外径が先端シャフト21の内壁とガイドワイヤ用チューブ14の外壁との隙間と同程度であってもよい。また、線材16が、先端シャフト21の内壁及びガイドワイヤ用チューブ14の外壁の両方に対して合成樹脂などにより接着されていてもよい。
【0031】
前述されたような線材16の外径や接着方法では、線材16又は合成樹脂が、先端シャフト21の内壁とガイドワイヤ用チューブ14の外壁との隙間を塞ぐこととなるが、1本の線材である線材16が、ガイドワイヤ用チューブ14の外壁に螺旋に巻き付かれているので、螺旋形状において隣り合う線材16の間が流体の流路として機能する。これにより、先端シャフト21の内部空間からバルーン11へ、流体を流入及び流出させることができる。
【0032】
なお、前述された実施形態では、先端シャフト21、中間シャフト22及び基端シャフト23のそれぞれが1つの部材として構成されているが、先端シャフト21、中間シャフト22又は基端シャフト23が複数の部材が連結されて構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10・・・バルーンカテーテル
11・・・バルーン
12・・・シャフト
14・・・ガイドワイヤ用チューブ
16・・・線材
21・・・先端シャフト
22・・・中間シャフト
23・・・基端シャフト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に弾性的に膨張可能なバルーンが設けられており、内部空間が当該バルーンの内部空間に連通された先端シャフトと、
上記先端シャフトに連結された中間シャフトと、
上記中間シャフトに連結された基端シャフトと、
上記先端シャフトの内部空間に設けられたガイドワイヤ用チューブと、
先端側が上記ガイドワイヤ用チューブに固定され、かつ基端側が上記基端シャフトに固定されて、上記中間シャフトの内部空間に挿通された線材と、を具備するバルーンカテーテル。
【請求項2】
上記中間シャフトは、上記基端シャフトより曲げ剛性が低いものである請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
上記線材の先端側は、上記ガイドワイヤ用チューブの外周面に螺旋に巻き付けられたものである請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
上記先端シャフトと上記ガイドワイヤ用チューブとの間は、上記線材の先端側の螺旋形状に沿って塞がれている請求項3に記載のバルーンカテーテル。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106797(P2013−106797A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254237(P2011−254237)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】