説明

バルーンカテーテル

【課題】バルーンとシャフトとの接合部の構成が改善されたバルーンカテーテルを提供すること。
【解決手段】アウターシャフトと、アウターシャフトに内挿され前記アウターシャフトの先端部から先端部が先端側に延在するインナーシャフトと、先端部と基端部とを有し、先端部がインナーシャフトの先端部に接合され、基端部がアウターシャフトの先端部に接合されるバルーンとを備えるバルーンカテーテルにおいて、バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合強度が、バルーンの先端部とインナーシャフトの先端部との接合強度よりも大きいことを特徴とするバルーンカテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔、特に血管内に挿入して用いられるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば血管内の狭窄部を治療するために、狭窄部を拡張し狭窄部抹消側における血流の改善を図るためバルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、たとえば特許文献1に示すように、カテーテルシャフトの先端部に、内圧調整により折畳まれた収縮状態から折畳みが解除された拡張状態に、収縮および拡張自在のバルーンが接合されて構成されている。具体的にはバルーンカテーテルは、アウターシャフトと、アウターシャフトに内挿され、アウターシャフトの先端から先端部が先端側に延在するインナーシャフトとを備え、バルーンの先端部がインナーシャフトの先端部に接合され、バルーンの基端部がアウターシャフトの先端部に接合されて構成されている。バルーンの内圧調整は、流体をバルーンに供給、排出することによって行われる。流体が加圧器からアウターシャフトによって形成される流体用ルーメンを介してバルーンに供給され、バルーンが加圧されることによってバルーンが収縮状態から拡張状態に移行する。またバルーンに供給された流体が流通路を介してバルーンから排出されることによってバルーンが拡張状態から収縮に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−98064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーンカテーテルを用いた治療において、体内でのバルーンの収縮、拡張状態を確認するためにバルーンの収縮、拡張用流体として、造影剤が用いられることがある。また血管内などの治療に用いる場合は、バルーンに10気圧以上の高圧を付与し、狭窄部を拡張する必要がある。上述のバルーンカテーテルの構成において、バルーンとシャフトとが接合される構成なので、バルーンに不所望に高圧が付与された場合、バルーンとシャフトとの接合箇所が破断開始箇所となるおそれがあり、破断箇所からバルーンに供給された造影剤が漏れ、流体用ルーメンを介してバルーンから造影剤を排出し難くなるおそれがある。また破断によってバルーンと流体用ルーメンとの連通が解除されると、バルーンを拡張状態から収縮状態に移行させ難くなる。
本発明は、上述の従来の課題を解決するために、バルーンとシャフトとの接合部の構成が改善されたバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体が流通する流体用ルーメンを形成するアウターシャフトと、前記アウターシャフトに内挿され前記アウターシャフトの先端部から先端部が先端側に延在するインナーシャフトと、先端部と基端部とを有し、先端部が前記インナーシャフトの先端部に接合され、基端部が前記アウターシャフトの先端部に接合され、前記流体用ルーメンと連通するバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、前記バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合強度が、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトのと先端部との接合強度よりも大きいことを特徴とするバルーンカテーテルである。
【0006】
本発明によれば、バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合強度が、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトのと先端部との接合強度よりも大きいので、バルーンに不所望に高圧が付与された場合、バルーンの先端部の接合がバルーンの基端部の接合よりも先に解除される。したがって万一接合部が破断した場合でもあっても流体用ルーメンと、バルーンとの連通状態が維持されるので、バルーンを収縮状態に移行させ易く、またバルーンに供給された造影剤などの流体を流体用ルーメンを介して排出することができるので、造影剤などの流体の漏れを抑制することができる。
【0007】
また本発明は、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトとの先端部とが融着によって一体となるように接合されて形成される先端側接合部と、前記バルーンの基端部と前記アウターシャフトとの基端部とが融着によって一体となるように接合されて形成される基端側接合部とを有し、前記基端側接合部における最大の厚みは、前記先端側接合部における最大の厚みよりも大きいことを特徴とするバルーンカテーテルである。
【0008】
本発明によれば、接合部の厚みを制御するという簡易な構成で、バルーンに不所望に高圧が付与された場合にバルーンの先端部の接合がバルーンの基端部の接合よりも先に解除されるバルーンを実現することができる。したがって万一接合部が破断した場合でもあっても流体用ルーメンとバルーンとの連通状態を維持することができる。
【0009】
また本発明は、バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合面積は、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトの先端部との接合面積よりも大き小さいことを特徴とするバルーンカテーテルである。
【0010】
本発明によれば、接合面積を制御するという簡易な構成で、バルーンに不所望に高圧が付与された場合にバルーンの先端部の接合がバルーンの基端部の接合よりも先に解除されるバルーンを実現することができる。したがって万一接合部が破断した場合でもあっても流体用ルーメンとバルーンとの連通状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バルーンカテーテルの構成を示す正面図である。
【図2】バルーンカテーテルの構成を示す縦断面図である。
【図3】バルーンを拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1はバルーンカテーテル1の構成を示す正面図であり、図2はバルーンカテーテル1の構成を示す縦断面図である。バルーンカテーテル1は、流体が流通する流体用ルーメン2を形成するアウターシャフト3と、アウターシャフト3に内挿されアウターシャフト3の先端部4から先端部5が先端側に延在するインナーシャフト6と、先端部7と基端部8とを有し、先端部7がインナーシャフト6の先端部5に接合され、基端部8がアウターシャフト3の先端部4に接合され、流体用ルーメン2と連通するバルーン9とを備える。なお本発明においてバルーンカテーテル1を体内に挿入するときに術者からみて遠い側を先端とし、術者の手元側を基端という。
【0014】
アウターシャフト3は先端および基端で開口する管状に形成され、先端部(以下、アウター先端部という)4から基端部(以下、アウター基端部という)10にわたって流体用ルーメン2が形成されている。流体用ルーメン2は、先端でバルーン9と連通し、基端でアウター基端部10に液密に接合されたハブ11と連通している。アウターシャフト3は、1の管状の部材で形成されてもよく、また複数の管状の部材を軸方向に接合することによって形成されてもよい。本実施形態ではアウターシャフト3は基端側からプロキシマルシャフト12と、ミッドシャフト13と、ディスタールシャフト14とを軸方向に接合することによって形成されている。
【0015】
プロキシマルシャフト12は、ステンレスやニッケルチタンなどの金属により形成されている。プロキシマルシャフト12は金属製に限定されることはなく、合成樹脂で形成されてもよい。プロキシマルシャフト12の基端部にハブ11が液密に接合され、先端部15にはミッドシャフト13の基端部16が接合されている。
【0016】
ミッドシャフト13は、合成樹脂で形成され、剛性がプロキシマルシャフト12よりも低くなるように、材料、肉厚、外径が設定されている。ミッドシャフト13の先端部17には、ディスタールシャフト14の基端部18が接合されている。ディスタールシャフト14は、合成樹脂で形成され、剛性がミッドシャフト13よりも低くなるように、その材料、肉厚及び外径などが設定されている。また、ディスタールシャフト14には、インナーシャフト6が内挿されている。
【0017】
ミッドシャフト13およびディスタールシャフト14の形成材料としては、たとえば、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など、さらに、架橋もしくは部分架橋物も含む)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(たとえば、ナイロン11、ナイロン12など)、ポリアミドエラストマー(たとえば、ポリエーテルエステルブロックアミド(PEBA)など)、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。なお、上記の材料は単独で用いてもよく、あるいは、これらの材料を適宜ブレンドして用いてもよい。さらには、上記の材料のアロイ化成形物、若しくはこれらの材料を適宜積層した多層チューブを用いてもよい。
【0018】
インナーシャフト6は先端および基端で開口する管状に形成され、インナーシャフト6の先端部(以下、インナー先端部という)5から基端部(以下、インナー基端部という)19にわたって、図示しないガイドワイヤが挿通可能なガイドワイヤルーメン24が形成されている。インナー基端部19は、アウターシャフト3の基端より先端側に設けられ、これによりアウターシャフト3の軸方向途中位置でガイドワイヤルーメン24が開口している。具体的にはディスタールシャフト14の基端部18とミッドシャフト13の先端部17との間に、インナー基端部19が設けられ、ガイドワイヤルーメン24が開口している。
【0019】
インナーシャフト6は、1の管状の部材で形成されていてもよく、複数の管状の部材を接合することによって形成されてもよい。本実施形態ではインナーシャフト6は、基端側からみてインナーシャフト本体20とチップチューブ21とが接合されることによって形成されている。インナーシャフト6とチップチューブ21との接合部22は、バルーン9の筒状部23に被覆される位置に設けられる。
【0020】
チップチューブ21およびインナーシャフト6の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、たとえばポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など、さらに、架橋もしくは部分架橋物も含む)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(たとえば、ナイロン11、ナイロン12など)、ポリアミドエラストマー(たとえば、ポリエーテルエステルブロックアミド(PEBA)など)、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。なお、上記の材料は単独で用いてもよく、あるいは、これらの材料を適宜ブレンドして用いてもよい。さらには、上記の材料のアロイ化成形物、若しくはこれらの材料を適宜積層した多層チューブを用いてもよい。
【0021】
バルーン9は、流体たとえば造影剤を、ハブ11に接続された図示しないシリンジなどの加圧器から流体用ルーメン2を介してバルーン9に供給、排出することによって収縮状態から拡張状態に移行可能に形成されている。バルーン9は拡張状態では血管の狭窄部を容易に拡張できるように少なくとも一部が円筒状となっているほぼ同径の筒状部(拡張可能部)を有する。なお筒状部23は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。またバルーン9は、筒状部23よりも先端側に、先端部(以下、バルーン先端部という)7を、筒状部31よりも基端側に、基端部(バルーン基端ぶという)8を有する。バルーン先端部7およびバルーン基端部8は、筒状部23よりも外形が小さくなるような、ほぼ円筒状に形成されている。またバルーン先端部7は、バルーン基端部8よりも外形が小さくなるように形成されている。バルーン9は筒状部23の先端側、基端側にそれぞれバルーン先端部7およびバルーン基端部8から筒状部23に向かって末広がりに形成される先端側テーパ部25、基端側テーパ部26を有する。
【0022】
バルーン9は収縮状態では少なくとも筒状部23の外径が小さくなるように形成される。本実施形態では、バルーン9は収縮状態では少なくとも筒状部23がインナーシャフト6の回りに巻きつくように折畳まれている。具体的には先端側テーパ部25から基端側テーパ部26にわたってバルーン9の軸線沿いに、インナーシャフト6に対して起立するような羽をバルーンの周方向に等間隔に形成し、当該羽をインナーシャフト6に周方向に巻きつけることによって収縮状態が形成される。
【0023】
拡張状態のバルーン9の大きさとしては、バルーンカテーテル1が経皮経管冠状動脈形成術に用いられる場合は、筒状部31の外径が、1〜5mm、好ましくは1.5〜4.0mmであり、長さが5〜50mm、好ましくは59〜40mmである。またバルーン先端部732の外径が、0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、長さが0.5〜35mm、好ましくは1〜2mmである。またバルーン基端部8の外径が、0.75〜1.85mm、好ましくは0.86〜1.53mmであり、長さが0.5〜5mm、好ましくは1〜4mmである。インナーシャフト21としては、外径が0.35〜1.0mm、好ましくは0.45〜0.8mmであり、内径が0.2〜0.9mm、好ましくは0.35〜0.7mmである。アウターシャフト22としては、外径が0.6〜1.5mm、好ましくは0.78〜1.1mmであり、内径が0.5〜1.4mm、好ましくは0.67〜1.0mmである。
【0024】
バルーン9の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、たとえば、ポリオレフィン(たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド(たとえば、ナイロン11、ナイロン12など)、ポリアミドエラストマー(たとえば、ポリエーテルエステルブロックアミド(PEBA)など)、ポリウレタン、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアリレーンサルファイド(たとえば、ポリフェニレンサルファイド)等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン3は、高い強度および拡張力を有する二軸延伸されたものが好ましい。また、上記の材料は単独で用いてもよく、あるいは、これらの材料を適宜ブレンドして用いてもよい。さらには、上記の材料のアロイ化成形物を用いてもよい。
【0025】
本実施形態のバルーンカテーテル1は、バルーン基端部8とアウター先端部4との接合強度が、バルーン先端部7とインナー先端部5との接合強度よりも大きくなるように、バルーン先端部7がインナー先端部5に、バルーン基端部8がアウター先端部4に各々接合されている。具体的にはバルーン基端部8とアウター先端部4との引張強度が、バルーン先端部7とインナー先端部5との引張強度よりも大きくなるように、バルーン先端部7がインナー先端部5に、バルーン基端部8がアウター先端部に各々接合されている。バルーン先端部7とインナー基端部19との接合およびバルーン基端部8とアウター先端部4との接合はたとえば接着剤や溶剤等による接着によって接合してもよい。本実施形態ではバルーン先端部7がインナー先端部に融着され、バルーン基端部8がアウター先端部に融着されることによって各々液密に接合されている。これによりバルーン9とインナーシャフト6との間に、流体用ルーメン2と連通する拡張用空間27が形成される。
【0026】
上記のインナーシャフト6およびアウターシャフト3を構成する材料のうち、少なくともバルーン先端部7およびバルーン基端部8と接合されるインナー先端部5およびアウター先端部4については、それぞれバルーン先端部7およびバルーン基端部8と融着可能な材料が選択される。具体的には、インナーシャフト6のうちチップチューブ21以外の部分およびアウターシャフト3のディスタールシャフト14以外の部分については、それぞれ、バルーン先端部7およびバルーン基端部8と融着可能な材料と同じ材料で形成してもよく、バルーン3と融着しない材料で形成してもかまわない。
【0027】
インナー先端部5およびバルーン先端部、アウター先端部4およびバルーン基端部を互いに融着可能な材料で形成するに際しては、両者の材料として、加熱溶融時に互いに可溶性のある材料を選択することが好ましい。互いに可溶性のある材料の組合せとしては、たとえば、ポリエチレンとポリエチレン、ポリアミド(たとえば、ナイロン11、ナイロン12など)とポリアミド、ポリアミドエラストマー(たとえば、ポリエーテルエステルブロックアミド(PEBA)など)とポリアミドエラストマー、ポリウレタンとポリウレタン、ナイロンおよびポリウレタンのアロイ化合物とナイロンおよびポリウレタンのアロイ化合物というような同種の材質の組合せのほか、ポリアミドとポリアミドエラストマー、ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート)とポリエステルエラストマー、ポリウレタンとポリウレタンエラストマー、ナイロンおよびポリウレタンのアロイ化合物とナイロン、ナイロンおよびポリウレタンのアロイ化合物とポリウレタン等の組合せが挙げられる。なお、ポリエチレンとナイロンのように可溶性のない材料を用いる場合でも、両者の中間に極めて薄膜の接着性ポリマー(エチレン−酢酸ビニル共重合体等)を配置し、融着を行ってもよい。
【0028】
本実施形態では、ポリアミドエラストマーで形成されたチューブを、たとえばブロー成形などによって二軸延伸することによってバルーン9が形成される。インナー先端部5を形成するチップチューブ21はポリアミドエラストマーで形成されている。インナーシャフト本体20はポリアミドエラストマーで形成された外層と、PTFEなどのフッ素樹脂で形成された内層とを有する管状部材で形成されている。またアウター先端部4を形成するディスタールシャフト14およびミッドシャフト13はポリアミドエラストマーで形成されている。
【0029】
図3はバルーン9を拡大して示す縦断面図である。本実施形態ではバルーン先端部7とインナー先端部5との接合およびバルーン基端部8およびアウター先端部4との接合は、上述のように融着によって接合されている。具体的には、バルーンカテーテル1は、バルーン先端部7とインナー先端部5とが融着によって一体となるように接合されて形成される先端側接合部28と、バルーン基端部8とアウター先端部4とが融着によって一体となるように接合されて形成される基端側接合部29とを有し、基端側接合部29における最大の厚みt1は、前記先端側接合部における最大の厚みt2よりも大きくなるように形成されている。これにより基端側接合部29の引張強度は、先端側接合部28の引張強度よりも大きくなるように基端側接合部29および先端側接合部28が形成されている。
【0030】
本発明において融着によって一体となるとは、インナー先端部5およびアウター先端部4が複数層で形成されている場合、バルーン先端部7およびバルーン基端部8と融着可能な層とが一体となっている部分をいう。このとき先端側接合部28および基端側接合部29における最大の厚みt1、t2は、バルーン先端部7およびバルーン基端部8とそれぞれ融着可能な層とが融着によって一体となっている部分の最大の厚みt1、t2をいう。たとえばインナー先端部5またはアウター先端部4が、バルーン先端部7およびバルーン基端部8と融着可能な外層および融着不能な内層の2層で形成されている場合は、融着可能な外層と一体となったバルーン先端部7およびバルーン基端部8とがなす厚みt1、t2のうち最大のものを先端側接合部28、基端側接合部29の最大の厚みt1、t2という。
【0031】
先端側接合部28のうち最大の厚みt2を有する部分は、先端側接合部28の基端に形成される。具体的には先端側接合部28の外面が、先端から基端に向かって末広がりに形成されバルーン9の先端側テーパ部25の外面に滑らかに移行するように形成されている。また基端側接合部のうち最大の厚みt1を有する部分は、基端側接合部29の先端に形成される。具体的には基端側接合部29の外面が、基端から先端に向かって末広がりに形成されバルーン9の基端側テーパ部26の外面に滑らかに移行するように形成されている。また基端側接合部29は、バルーン基端部8の先端から基端側に退避した位置に形成されている。バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合面積は、バルーンの先端部と前記インナーシャフトの先端部との接合面積よりも大き小さくなるように、基端側接合部29の軸方向長さs1は、先端側接合部28の軸方向の長さs2よりも大きくなるように形成されている。
【0032】
基端側接合部29は、たとえばアウターシャフト3の流体用ルーメン2に芯金を挿入し、アウター先端部4の外側からバルーン基端部8を被せ、熱を加え融着することによって形成される。具体的には、アウター先端部4に被せられたバルーン基端部8の外側に、フッ素樹脂などで形成された熱収縮性チューブを被せる。この状態で、熱収縮性チューブを外側から加熱し、熱収縮させる。バルーン基端部8とアウター先端部4とが溶融し、バルーン基端部8およびアウター先端部4は、一体化する。その後、熱収縮チューブが被せられた領域を冷却し、熱収縮チューブを剥離する。これにより、バルーン9の基端側接合部29が形成される。先端側接合部28も基端側接合部29と同様に、たとえばインナーシャフト6のガイドワイヤルーメンに芯金を挿入し、インナー先端部5の外側からバルーン先端部7を被せ、熱収縮チューブを被せた状態で熱を加え融着することによって形成される。なお先端側接合部28および基端側接合部29の形成は、熱融着に限定されるものではなく、超音波融着や、光ビーム等による融着等の、他の融着方法によって行ってもよい。
【0033】
本実施形態のバルーンカテーテル1は、以下のように使用される。先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、ガイディングカテーテル先端部を冠動脈入口部まで導入する。次いで、ガイドワイヤをバルーンカテーテル10のガイドワイヤルーメン24及びガイディングカテーテル内に挿通し、冠動脈入口部から治療対象箇所(たとえば、狭窄部位)を経て抹消部位まで導入する。続いて、ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル1を、押引又は捻り操作を加えながら治療対象箇所まで導入する。この場合に、上記のとおり本バルーンカテーテル10は、通過性、追随性、伝達性及び耐キンク性が高められているため、導入操作を良好に行うことができる。バルーン9が治療対象箇所に到達したら、加圧器でバルーン9を拡張し治療を行う。
【0034】
本実施形態のバルーンカテーテル1によれば、バルーン基端部8とアウター先端部4との接合強度が、バルーン先端部7とインナー先端部5との接合強度よりも大きいので、バルーン9に不所望に高圧が付与された場合、バルーン先端部7の接合がバルーン基端部8の接合よりも先に解除される。したがって万一接合部が破断した場合でもあっても流体用ルーメンと、バルーンとの連通状態が維持され、バルーン基端部8とアウター先端部4との接合が先に解除された場合と比較して、バルーンを収縮状態に移行させ易く、バルーンに供給された造影剤などの流体を流体用ルーメンを介して加圧器を用いて排出することができるので、造影剤などの流体の漏れを抑制することができる。なお本発明において接合が解除されるとは、各接合部においてバルーン9の拡張用空間27が外と連通する状態をいい、たとえば接合が一部解除される、または接合部自体が破壊されることを含む。
【0035】
またバルーンカテーテル1によれば、基端側接合部29における最大の厚みt2は、先端側接合部28における最大の厚みt1よりも大きく形成されている。このように接合部の厚みを制御するという簡易な構成で、バルーン9に不所望に高圧が付与された場合にバルーン先端部7の接合がバルーン基端部8の接合よりも先に解除されるバルーンカテーテル1を実現することができる。
【0036】
またバルーンカテーテル1は、バルーン基端部8とアウター先端部4との接合面積は、バルーン先端部7とインナー先端部5との接合面積よりも大き小さくなるように形成されている。このように接合面積を制御するという簡易な構成で、バルーンに不所望に高圧が付与された場合にバルーンの先端部の接合がバルーンの基端部の接合よりも先に解除されるバルーンを実現することができる。
【0037】
またバルーンカテーテル1は、基端側接合部29のうち最大の厚みt12を有する部分は、基端側接合部29の先端に形成される。このように基端側接合部29の最大の厚みt2を有する部分が、バルーン9が加圧された場合に基端側接合部29において最も応力が大きくなる部分に形成されているので、バルーン9に不所望に高圧が付与された場合でもバルーンと流体用ルーメン2との連通を維持することができる。また基端側接合部29がバルーン基端部8の先端から基端側に退避した位置に形成されているので、バルーン基端部8の剛性が大きくなりすぎることを抑制しつつ、基端側接合部29の接合強度を確実に大きくすることができる。特に融着によって基端側接合部29を形成する場合は、基端側接合部29がバルーン基端部8の先端から基端側に退避した位置に形成することによってバルーン9に融着作業時に不所望に熱が加わることを抑制し、バルーン9の耐圧値が小さくなることを抑制することができる。
【0038】
なお、以上説明した実施形態は、本発明を限定するために記載されたものではなく、本発明の技術思想内において当業者により種々変更が可能である。たとえば上述した実施形態においてはバルーン基端部8をアウター先端部4に被せて融着することによって基端側接合部を形成しているが、バルーン基端部8にアウター先端部4を被せて融着し、基端側接合部29を形成してもよい。また上述した実施形態においては、ガイドワイヤルーメン24がアウターシャフトの軸方向途中位置で開口するいわゆるRxタイプのカテーテルであるが、当該ガイドワイヤルーメン24がアウター基端部10に設けられる、いわゆるオーバーザワイヤタイプのカテーテルであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…バルーンカテーテル、2…流体用ルーメン、3…アウターシャフト、4…アウター先端部、5…インナー先端部、6…インナーシャフト、7…バルーン先端部、8…バルーン基端部、9…バルーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流体用ルーメンを形成するアウターシャフトと、
前記アウターシャフトに内挿され前記アウターシャフトの先端部から先端部が先端側に延在するインナーシャフトと、
先端部と基端部とを有し、先端部が前記インナーシャフトの先端部に接合され、基端部が前記アウターシャフトの先端部に接合され、前記流体用ルーメンと連通するバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、
前記バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合強度が、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトの先端部との接合強度よりも大きいことを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトとの先端部とが溶着によって一体となるように接合されて形成される先端側接合部と、
前記バルーンの基端部と前記アウターシャフトとの基端部とが溶着によって一体となるように接合されて形成される基端側接合部とを有し、
前記基端側接合部における最大の厚みは、前記先端側接合部における最大の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンの基端部と前記アウターシャフトの先端部との接合面積は、前記バルーンの先端部と前記インナーシャフトの先端部との接合面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−111089(P2013−111089A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256884(P2011−256884)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(393015324)株式会社グツドマン (56)
【Fターム(参考)】