説明

バルーンチューブ、バルーンカテーテル及びこれらの製造方法

【課題】耐薬品性と均一な拡張性とを両立したバルーンカテーテル及びそれに用いられる耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブ並びにこれらの製造方法の提供。
【解決手段】下記条件を満たす伸縮性拡張部11を有するバルーンチューブ10、このバルーンチューブ10とシャフトチューブ2とを備えたバルーンカテーテル1、特定の条件を満たす管状キャビティを有する金型にシリコーンゴム組成物を注入して伸縮性拡張部11を成形するバルーンチューブ10の製造方法、並びにこのバルーンチューブ10の製造方法によりバルーンチューブ10を作製し、バルーンチューブ10をシャフトチューブ2の先端部に装着するバルーンカテーテル1の製造方法。 条件(1):内径が実質的に一定、条件(2):最小肉厚が0.3〜0.6mm、条件(3):外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルーンチューブ、バルーンカテーテル及びこれらの製造方法に関し、さらに詳しくは、耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンカテーテル及びそれに用いられる耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブ、並びに、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内に挿入して医療行為を施す医療用バルーンカテーテルがある。この医療用バルーンカテーテルは患者の患部又はその近傍にバルーンを留置してバルーンを拡張及び収縮させることで、各種の医療行為、例えば、患者への薬液の注入又は投与、血栓の除去、大動脈内バルーンポンピング(IABP法とも略称される。)、体液の排泄若しくは生理食塩水の注入等が行われる。
【0003】
このようなバルーンカテーテルのバルーンは、伸縮性に優れたゴム、エラストマー等で形成されるが、衛生面に優れ、生体との親和性も高い点で、シリコーンゴム等で形成されることが多い。
【0004】
バルーンカテーテルのバルーンは拡張及び伸縮が繰り返されて医療行為が実施されるから、バルーンはその全体にわたって均一に拡張し、収縮することが重要である。例えば、大動脈内バルーンポンピング用のバルーンカテーテルに関するものではあるが、特許文献1には、「バルーン部における拡張および収縮の応答性に優れたバルーンカテーテルを提供することを目的」として、「内部に流体を導入および導出することにより拡張および収縮可能なバルーン部と、前記バルーン部の近位端部が接合してあり、当該バルーン部の内部と連通するルーメンが軸方向に形成してあるカテーテルチューブとを有するバルーンカテーテルであって、前記バルーン部を構成するバルーン膜の厚みが、バルーン部の遠位端側に比較して近位端側で厚いことを特徴とするバルーンカテーテル」が記載されている。
【0005】
一方で、バルーンカテーテルの中でも患者の体内にバルーンを留置させる膀胱留置用カテーテル(尿道用カテーテルとも称される。)及び患者の体内に各種の薬液を投与する薬液投与用カテーテルは体液又は各種の薬液に曝されるため耐薬品性に優れていることが要求される。バルーンチューブの耐薬品性はバルーンチューブの肉厚を増大させることで向上させることができるが、バルーンチューブが肉厚になるにつれて均一に膨らむバルーンチューブの成型は難しくなり、均一にバルーンが膨らまないということが起こる。
【0006】
このようなバルーンカテーテルに要求される耐薬品性と均一に拡張する特性(以下、拡張性と称する。)とは互いに相反する要求特性でもあり、これまで耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンカテーテルはなく、実施予定の医療行為に特に要求される一方の特性に優れたバルーンカテーテルを使用せざるを得ないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−238954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンカテーテル及びそれに用いられる耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブ、並びに、これらの製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、下記条件(1)〜(3)を満たす伸縮性拡張部を有することを特徴とするバルーンチューブであり、
請求項2は、請求項1に記載のバルーンチューブと、先端部に前記バルーンチューブが装着され、前記バルーンチューブに連通するルーメンを有するシャフトチューブとを備えて成ることを特徴とするバルーンカテーテルであり、
請求項3は、下記条件(ア)〜(ウ)を満たす管状キャビティを有する金型にシリコーンゴム組成物を注入して伸縮性拡張部を成形することを特徴とするバルーンチューブの製造方法であり、
請求項4は、請求項3に記載のバルーンチューブの製造方法によりバルーンチューブを作製し、このバルーンチューブをシャフトチューブの先端部に装着することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法である。
条件(1):内径が実質的に一定であること
条件(2):最小肉厚が0.3〜0.6mmであること
条件(3):軸線方向の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)であること
条件(ア):内径が実質的に一定であること
条件(イ):最小間隙距離が0.3〜0.7mmであること
条件(ウ):軸線方向の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)であること
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るバルーンチューブは、前記条件(1)〜(3)を満たす伸縮性拡張部を有することを特徴とするから、高い耐薬品性を発揮すると共にバルーンカテーテルとされたときに流体の流入によって均一に拡張する。また、この発明に係るバルーンカテーテルはこの発明に係るバルーンチューブを備えることを特徴とする。したがって、この発明によれば、耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンカテーテル、及び、それに用いられる、耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブを提供できる。
【0011】
この発明に係るバルーンチューブの製造方法は、前記条件(ア)〜(ウ)を満たす管状キャビティを有する金型にシリコーンゴム組成物を注入して伸縮性拡張部を成形することを特徴とするから、この発明に係るバルーンチューブを製造することができる。また、この発明に係るバルーンカテーテルの製造方法はこの発明に係るバルーンチューブの製造方法で製造したバルーンチューブをシャフトチューブに接着又は縫合で横着することを特徴とする。したがって、この発明によれば、耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンカテーテルの製造方法、及び、それに用いられる、耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、この発明に係るバルーンチューブの一例を示す図であり、図1(a)はこの発明に係るバルーンチューブの側面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面を示す断面図である。
【図2】図2は、この発明に係るバルーンカテーテルの一例を示す図であり、図2(a)はこの発明に係るバルーンカテーテルの一例を示す側面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線における断面を示す断面図である。
【図3】図3は、この発明に係るバルーンチューブの製造方法に用いられる金型の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明に係るバルーンチューブは、各種のバルーンカテーテル、好ましくは医療用バルーンカテーテル、特に好ましくは膀胱留置用バルーンカテーテルのバルーンとされる。この発明に係るバルーンチューブは、例えば図1に示されるように、通常、管状に形成され、その端部にバルーンカテーテルのシャフトチューブに接着又は縫合される部位を有し、中央部にその径方向に拡張する伸縮性拡張部を有している。すなわち、この発明に係るバルーンチューブは、襞等のない自己収縮自在な管状体であり、襞を有し、襞が伸びて拡張し襞が折り畳まれて収縮するタイプのバルーンではない。そして、この伸縮性拡張部が前記条件(1)〜(3)を満たしていると、高い耐薬品性を発揮すると共に均一に拡張する。なお、この発明において、「均一に拡張」とは伸縮性拡張部が高度に精密に均一に拡張することに限定されず、実質的に例えば適切な医療行為を実施可能な程度に均一に拡張することを意味する。この伸縮性拡張部の大きさはバルーンカテーテルの用途等に応じて適宜の体積となるように調整される。
【0014】
この発明に係るバルーンチューブの一例であるバルーンチューブ10を、図を参酌して、説明する。このバルーンチューブ10は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、両端が開口した、断面が略円形の管状に形成され、小径の一端部(小径端部とも称する。)12と、大径の他端部(大径端部とも称する。)13と、これらを連結する伸縮性拡張部11とを有している。このバルーンチューブ10は、小径端部12、伸縮性拡張部11及び大径端部13が一体となって円錐台形状の管状体に形成されており、小径端部12と伸縮性拡張部11との境界及び伸縮性拡張部11と大径端部13との境界は図1(b)において破線で示されている。
【0015】
このバルーンチューブ10は下記条件を満たす伸縮性拡張部11を有している。すなわち、この伸縮性拡張部11は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、内径が実質的に一定である(条件(1))。ここで、「実質的に一定」とは幾何学的に正確な一定を意味するのではなく、シャフトチューブに接着又は縫合可能な程度に一定であればよいことを意味する。例えば、内径の許容誤差は0.1mm程度である。このように、バルーンチューブ10の内径が実質的に一定であると、伸縮性拡張部11が均一に拡張しやすくなるうえ、バルーンチューブ10をシャフトチューブに挿入しやすくなり、バルーンカテーテルの製造効率が向上する。この発明において、バルーンチューブ10の内径は、装着されるシャフトチューブの外径、バルーンの内容積等に応じて適宜に設定されるが、バルーンチューブ10が例えば膀胱留置用バルーンカテーテル用である場合には、その内径は例えば1〜10mmである。
【0016】
伸縮性拡張部11は、図1(a)及び図1(b)に示されるように、その収縮時の外径が先端部14から基端部15に向かって一様に増大し、内径が一定の軸孔16(図1(b)参照。)を有する円錐台形状をなしている。この円錐台形状の伸縮性拡張部11は、後述する条件(3)を満たすようにその外径が一方の端部から他方の端部に向かって増大している。ここで、図1(a)及び図1(b)に示されるように、伸縮性拡張部11における一方の端部(先端部とも称する。)14は小径端部12との接続部すなわちこれらの境界であり、他方の端部(基端部とも称する。)15は大径端部13との接続部すなわちこれらの境界である。この発明において、伸縮性拡張部11は、図1(a)及び図1(b)に示されるように先端部14から基端部15に向かって増大している。
【0017】
伸縮性拡張部11は、軸線C方向における収縮時の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)である(条件(3))。この外径増大率(%)は、伸縮性拡張部11における両端部それぞれの外径差を伸縮性拡張部11の軸線長さで除した割合(百分率)であって、具体的には、式:[(先端部14と基端部15との外径差)/軸線長さ]×100で算出され、伸縮性拡張部11における軸線長さに対する外径増大割合とも称することができる。軸線C方向における収縮時の外径増大率(%)が前記範囲内にあると、高い耐薬品性を確保するために伸縮性拡張部11の肉厚を全体的に厚くしたときに生じる伸縮性拡張部11の不均一な拡張(偏膨脹)という問題を高い耐薬品性を損なうことなく解消して、伸縮性拡張部11が均一に拡張するという効果が得られる。この効果により一層優れる点で、伸縮性拡張部11の収縮時の外径増大率(%)は0.25〜3(%)であるのが好ましく、0.3〜1(%)であるのが特に好ましい。
【0018】
前記条件を満たす伸縮性拡張部11の肉厚は、その軸線Cに垂直な断面における管状輪郭線の幅であり、必要に応じて平均幅を採用できる。この発明において、伸縮性拡張部11の肉厚を下記条件等を満たすように設定すると、伸縮性拡張部11の拡張性を犠牲にすることなく高い耐薬品性を確保できる。
【0019】
例えば、この伸縮性拡張部11は、その収縮時の最小肉厚が0.3〜0.6mmである(条件(2))。この収縮時の最小肉厚が0.3〜0.6mmであると、伸縮性拡張部11が全体的に厚肉になるから、耐薬品性が向上するとしても、例えば、大動脈内バルーンポンピング用のバルーンカテーテルに関する特許文献1に「内チューブなどの周りに巻回して折り畳むことが困難になる傾向にある」ことを理由として「バルーン膜の最大厚みは好ましくは130μm以下」であることが記載されているように、通常、バルーンの拡張性及び伸縮性は低下する。ところが、伸縮性拡張部11が条件(1)〜(3)を満たしていると、このような従来の技術常識に反し、伸縮性拡張部11の拡張性を大きく犠牲にすることなく、厚肉化されて高い耐薬品性を発揮する。すなわち、この発明において、伸縮性拡張部11の先端部14は高い耐薬品性を確保できる最低限の厚さを有しているということができる。ここで、耐薬品性とは、バルーンカテーテルが接触する薬品、例えば、生理食塩水、体液、各種の薬剤等に対する耐性である。より一層高い耐薬品性を発揮できる点で、伸縮性拡張部11の収縮時の最小肉厚は0.4〜0.6mmであるのが好ましい。伸縮性拡張部11の収縮時の最小肉厚は、通常、先端部14の収縮時の肉厚である。一方、伸縮性拡張部11の収縮時の最大肉厚は、前記条件(3)を満たす肉厚であり、通常、基端部15の収縮時の肉厚である。この最大肉厚は、前記条件(3)を満たす範囲内で適宜に設定され、例えば、前記最小肉厚に対して1.1〜1.6倍であるのが好ましく、1.1〜1.4倍であるのが特に好ましく、具体的には、0.4〜0.8mmであるのが好ましい。そして、伸縮性拡張部11における収縮時の最小肉厚と収縮時の最大肉厚との肉厚差(収縮時)は、前記条件(3)を満たす範囲内で、適宜に設定され、例えば、前記最小肉厚に対して0.05〜0.2倍であるのが好ましく、0.05〜0.15倍であるのが特に好ましく、具体的には、0.03〜0.12mmであるのが好ましい。
【0020】
伸縮性拡張部11は、バルーンカテーテルの用途及び寸法等に応じて、軸線長さ、内容積等が適宜に設定される。例えば、バルーンチューブ10が例えば膀胱留置用カテーテル及び薬液投与用バルーンカテーテルに用いられる場合には、伸縮性拡張部11の軸線長さは5〜50mmであるのが好ましく、7〜45mmであるのが特に好ましい。
【0021】
バルーンチューブ10は、バルーンカテーテルとされたときに伸縮性拡張部11が拡張する。このとき、伸縮性拡張部11は、図1(a)及び図1(b)に示されるように円錐台形状に形成され、かつ前記条件(1)〜(3)を満たしているから、その軸線C方向の略中央部が最も大きくなる楕円球面、球面等の外面形状になるように拡張される。このときの伸縮性拡張部11の寸法は、バルーンカテーテルの用途及び寸法等に応じて適宜に設定され、例えば、バルーンチューブ10が膀胱留置用カテーテル及び薬液投与用バルーンカテーテルに用いられる場合には、伸縮性拡張部11の拡張時の最大外径は6〜35mmであるのが好ましく、10〜34mmであるのが特に好ましく、その最大内容積は1〜40ccであるのが好ましく、1.5〜30ccであるのが特に好ましい。
【0022】
伸縮性拡張部11は、自己伸縮性を有しており、例えば、拡張時の最大外径及び拡張時の最大内容積が好ましくは前記範囲内になるように、拡張する。例えば、伸縮性拡張部11は、伸縮性拡張部11すなわちバルーンチューブ10の拡張及び収縮性に優れる点で、伸びが600〜1000%、引張強度が5〜10Mpaであるのが好ましい。このような伸縮性を有する伸縮性拡張部11すなわちバルーンチューブ10は、ゴムで形成され、特に、衛生面の性能に優れ、生体との親和性が高いシリコーンゴムで好適に形成される。前記伸び及び前記引張強度は、伸縮性拡張部11を形成しているゴム組成物で作製した試験片(ダンベル状3号試験片 厚み2mm)を用いて、測定温度が25±2℃、引張速度が500mm/minの条件下でJIS K6521に記載の測定方法に準拠して測定したときの値である。伸縮性拡張部11の伸び及び引張強度を前記範囲に調整するには、例えば、伸縮性拡張部11を形成するゴム組成物におけるシリカの添加量及び加硫剤の添加量を調整する方法等が挙げられる。具体的には、ゴム組成物におけるシリカの添加量を多くすると、伸びは低くなる傾向があり、引張強度は高くなる傾向がある。
【0023】
バルーンチューブ10は小径端部12、伸縮性拡張部11及び大径端部13が一体となって形成されているから、小径端部12は伸縮性拡張部11の先端部14に連接された管状構造を有し、大径端部14は伸縮性拡張部11の基端部15に連接された管状構造を有している。したがって、小径端部12及び大径端部14は伸縮性拡張部11と同様に例えば条件(1)及び条件(3)等を満たしている。小径端部12及び大径端部13は伸縮性拡張部11の肉厚化に応じて厚さが厚く設定されている。例えば、小径端部12の最小肉厚は0.3〜0.6mmであるのが好ましく、0.4〜0.6mmであるのが特に好ましく、大径端部13の最大肉厚は0.5〜0.8mmであるのが好ましく、0.5〜0.7mmであるのが特に好ましい。小径端部12及び大径端部13は後述するシャフトチューブに固着されてバルーンチューブ10がシャフトチューブに装着されるから、小径端部12及び大径端部13はシャフトチューブに固着可能な軸線長さを有していればよく、例えば3〜6mであるのが好ましい。
【0024】
このように、バルーンチューブ10は少なくとも前記条件(1)〜(3)を満たす伸縮性拡張部11を有しているから、従来、トレードオフの関係にあった耐薬品性と拡張性とを互いに損なうことなく高い水準で発揮する。
【0025】
この発明に係るバルーンカテーテルは、各種のバルーンカテーテルとして、好ましくは医療用バルーンカテーテルとして、特に好ましくは膀胱留置用カテーテル及び薬液投与用バルーンカテーテルとして用いられる。この発明に係るバルーンカテーテルは、このような用途に応じたバルーンチューブを有している。
【0026】
この発明に係るバルーンカテーテルの一例であるバルーンカテーテル1を、図を参酌して、説明する。このバルーンカテーテル1は、図2に示されるように、バルーンチューブ10と、先端部にバルーンチューブ10を有し、このバルーンチューブ10に連通するルーメンを有するシャフトチューブ2とを備えて成ることを特徴とする。
【0027】
シャフトチューブ2は、カテーテルチューブとも称され、図2に示されるように、その内部に軸線方向に延在する2つのルーメン、すなわち、メインルーメン21及びサブルーメン22を有する単層構造の管体である。メインルーメン21は、生理食塩水、殺菌精製水、空気等の流体、ガイドワイヤー等の固体物を送出する内部導通孔であり、シャフトチューブ2の軸線に沿って比較的大きな孔径を有している。このメインルーメン21はシャフトチューブ2の両端部に開口している。このメインルーメン21の軸線に垂直な断面形状は特に限定されず送出物に応じて適宜に決定される。この断面形状としては、円形、半円形、扇形、楕円形、三日月形、多角形、三角形等が挙げられ、この例においては半円形となっている。
【0028】
サブルーメン22は、バルーンチューブ10を拡張させる流体、例えば、生理食塩水、殺菌精製水、空気等を送出する内部導通孔であり、シャフトチューブ2の軸線に沿ってメインルーメン21に連通することなく形成され、比較的小さな孔径を有している。このサブルーメン22はシャフトチューブ2の両端部に開口している。このサブルーメン22の軸線に垂直な断面形状は特に限定されず、例えば、円形、半円形、扇形、楕円形、三日月形、多角形、三角形等が挙げられ、この例においては円形となっている。このサブルーメン22は、図2に示されるように、シャフトチューブ2の径方向に延在して、サブルーメン22とバルーンチューブ10に連通する連通孔23を有している。
【0029】
バルーンカテーテル1において、バルーンチューブ10はこのシャフトチューブ2の途中に貫通孔23がバルーンチューブ10に連通するように、このシャフトチューブ2の外周面を囲繞して装着されている。具体的には、バルーンチューブ10は、シャフトチューブ2の一方の端部すなわち先端部2aの近傍に、小径端部12が先端部2a側で大径端部13が基端部2b側となり、貫通孔23の開口がバルーンチューブ10の軸線C方向略中央に位置するように、装着されている。バルーンチューブ10はシャフトチューブ2に装着されていればよく、例えば、バルーンチューブ10の小径端部12及び大径端部13がシャフトチューブ2の外周面に接着又は縫合される。バルーンチューブ10は前記した通りである。
【0030】
シャフトチューブ2の一方の端部すなわち先端部2aには、図2に示されるように、メインルーメン21の開口部及びサブルーメン22の開口部を封止すると共に、バルーンカテーテル1の患者への挿入を円滑にさせる先端封止部24が装着されている。この先端封止部24は、例えば、接着剤でシャフトチューブ2に接着されている。
【0031】
シャフトチューブ2の他方の端部すなわち基端部2bにはハンドル部(ファネルとも称する。)3が装着されている。このハンドル部3は、シャフトチューブ2を支持又は操作し、バルーンチューブ10を拡張させる流体を送出する機能を有している。このようなハンドル部3は従来のバルーンカテーテルにおけるハンドル部と基本的に同様である。
【0032】
このバルーンカテーテル1は、耐薬品性と均一な拡張性とを高い水準で両立したバルーンチューブ10を備えているから、医療用バルーンカテーテルとして好適に用いられ、膀胱留置用カテーテル及び薬液投与用カテーテルとして特に好適に用いられる。
【0033】
この発明に係るバルーンチューブの製造方法は、条件(ア)〜(ウ)を満たす管状キャビティを有する金型にシリコーンゴム組成物を注入して伸縮性拡張部11を成形することを特徴とする。このように金型を用いてバルーンチューブ、少なくとも伸縮性拡張部11を成形すると、条件(1)〜(3)を満たすこの発明に係るバルーンチューブ、例えばバルーンチューブ10を製造することができる。この発明に係るバルーンチューブの製造方法は金型を用いる方法であるから、例えば、特許文献1のようにディッピング法又はブロー成形法とは異なり、製造条件の制御が容易であるにもかかわらず寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブを製造できる。また、この発明に係るバルーンチューブの製造方法は金型を用いる方法であるから、寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブを高い歩留まりで容易に製造できる。
【0034】
この発明に係るバルーンカテーテルの製造方法は、この発明に係るバルーンチューブの製造方法によりバルーンチューブを作製し、このバルーンチューブをシャフトチューブに装着することを特徴とする。したがって、この発明に係るバルーンカテーテルの製造方法は、製造条件の制御が容易であるにもかかわらず、バルーンチューブが寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンカテーテルを製造できる。また、この発明に係るバルーンカテーテルの製造方法は、バルーンチューブが寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンカテーテルを高い歩留まりで容易に製造できる。
【0035】
この発明に係るバルーンチューブの製造方法及びこの発明に係るバルーンカテーテルの製造方法の一例として、バルーンチューブ10及びバルーンカテーテル1を製造する製造方法(以下、この発明に係る製造方法と称する。)を説明する。
【0036】
この発明に係る製造方法においては、下記条件(ア)〜(ウ)を満たす管状キャビティを有する金型(例えば図3参照。)、及び、シリコーンゴム組成物を準備する。
【0037】
この発明に係るバルーンチューブの製造方法に用いられる金型の一例として、図3に示される金型5を挙げることができる。この金型5は、図3に示されるように、小径端部12、伸縮性拡張部11及び大径端部13が一体となって円錐台形状の管状体をなすバルーンチューブ10を成型可能な管状キャビティ31を有しており、この管状キャビティ31において小径端部12と伸縮性拡張部11との境界及び伸縮性拡張部11と大径端部13との境界が図3において破線で示されている。具体的には、金型5は、バルーンチューブ10に対応する管状キャビティ31とこの管状キャビティ31に連通するランナー32と、管状キャビティ31から外部に連通するベント33等とを有している。
【0038】
管状キャビティ31は、自身の軸線C方向に中軸34を有する円錐台形状をなしており、軸線Cに沿って小径端部12を成形可能な第1キャビティ31aと、伸縮性拡張部11を成形可能な第2キャビティ31bと、大径端部14を成形可能な第3キャビティ31cとが連接されている。
【0039】
第2キャビティ31bは、前記条件(1)〜(3)を満たす伸縮性拡張部11を成形可能であるから、これら条件に対応する次の条件(ア)〜(ウ)を満たしている。具体的には、第2キャビティ31bはその内径すなわち中軸34の径が実質的に一定である(条件(ア))。この条件(ア)は前記条件(1)と基本的に同様であり、内径の許容誤差は0.1mm程度である。また、第2キャビティ31bはその軸線C方向における外径増大率([第2キャビティ31bの両端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)である(条件(ウ))。この条件(ウ)は前記条件(3)と基本的に同様であり、その好ましい範囲も条件(3)と同様である。さらに、第2キャビティ31bは、軸線Cに垂直な方向に沿う間隙幅(この発明において間隙距離とも称する。)のうち第1キャビティ31aとの境界における最小間隙距離が0.3〜0.7mmである(条件(イ))。一方、第2キャビティ31bの間隙距離のうち第3キャビティ31cとの境界における最大間隙距離は前記条件(ウ)を満たす範囲内で適宜に設定され、例えば、前記最小間隙距離に対して1.1〜1.6倍であるのが好ましく、1.1〜1.4倍であるのが特に好ましく、具体的には、0.4〜0.8mmであるのが好ましい。そして、第2キャビティ31bにおける最小間隙距離と最大間隙距離との間隙距離差は、前記条件(ウ)を満たす範囲内で、適宜に設定され、例えば、前記最小間隙距離に対して0.05〜0.2倍であるのが好ましく、0.05〜0.15倍であるのが特に好ましく、具体的には、0.04〜0.12mmであるのが好ましい。なお、第2キャビティ31bは、伸縮性拡張部11に要求される寸法及び形状並びに用いるシリコーンゴム組成物の成型収縮率等に応じて、軸線長さ等の寸法及び形状が適宜に設定される。
【0040】
管状キャビティ31は第1キャビティ31a、第2キャビティ31b及び第3キャビティ31cが一体となって形成されているから、第1キャビティ31a及び第3キャビティ31cは第2キャビティ31bの端部それぞれに連接された管状構造を有している。したがって、第1キャビティ31a及び第3キャビティ31cは第2キャビティ31bと同様に例えば条件(ア)及び条件(ウ)等を満たし、小径端部12及び大径端部14を成形可能であるから、小径端部12及び大径端部14の寸法及び形状と基本的に同様の寸法及び形状が設定される。例えば、第1キャビティ31aの最小間隙距離は0.3〜0.6mmであるのが好ましく、0.4〜0.6mmであるのが特に好ましく、第3キャビティ31cの最大間隙距離は0.5〜0.7mmであるのが好ましく、第1キャビティ31a及び第3キャビティ31cの軸線長さは例えば3〜6mであるのが好ましい。管状キャビティ31において、第1キャビティ31a及び第3キャビティ31cは伸縮性拡張部11と一体となって条件(ア)及び条件(ウ)を満しているが、この発明において、第1キャビティ及び第3キャビティは伸縮性拡張部と別体として形成されていてもよい。
【0041】
ランナー32は金型5の外部と第3キャビティ31cとを連通するように軸線Cに沿って配置され、ベント33は金型5の外部と第1キャビティ31aとを連通するように軸線Cに沿って、この軸線Cを挟んでランナー32と反対側に配置されている。ランナー32及びベント33の径及び数等は適宜に設定される。
【0042】
シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムを含有する組成物であればよく、好ましくは成形体が前記伸び及び前記引張強度を満足するシリコーンゴム組成物である。このシリコーンゴム組成物はゴム組成物に通常用いられる各種添加剤を含有していてもよい。
【0043】
シリコーンゴム組成物は、硬化後の成形体の硬度(JIS A)が20〜40(JIS A)であるのが好ましく、24〜35であるのが特に好ましい。前記硬度が40を越えると、生理食塩水がバルーンチューブ10内に充填しにくくなってバルーンチューブ10が膨張しにくく、カテーテルとしての機能を十分に発揮できなくなるうえ、生理食塩水を無理に充填しようとするとバルーンチューブ10が破裂しやすくなることがある。一方、前記硬度が20未満であるとバルーンの物性が弱くなるためバルーンチューブ10が破裂しやすくなることがある。
【0044】
このような特性を満たすシリコーンゴム組成物として、例えば、シリコーンゴム(「KE−530(U)」、信越化学工業株式会社製、商品名)100質量部と、加硫剤(「C−8A」、信越化学工業株式会社製、商品名)0.5質量部とを含有するシリコーンゴム組成物等が挙げられる。特に前記範囲の伸び及び引張強度を発揮するシリコーンゴム組成物はミラブル型のシリコーンゴムを含有しているのが好ましい。
【0045】
この発明に係る製造方法においては、準備した金型にシリコーンゴム組成物を注入してバルーンチューブ10を成形する。まず、金型にシリコーンゴム組成物を注入する。このときの温度等の条件は特に限定されない。金型にシリコーンゴム組成物を注入する方法(成形法)は、金型を用いる方法であればよく、例えば、トランスファー成形法、コンプレッション成形法、射出成形法等が挙げられる。次いで、金型に注入されたシリコーンゴム組成物を加熱硬化する。シリコーンゴムの加熱硬化条件は、用いるシリコーンゴム組成物が硬化する条件であればよく、例えば、シリコーンゴム組成物として、前記シリコーンゴム「KE−530(U)」(信越化学工業株式会社製)100質量部と加硫剤「C−8A」(信越化学工業株式会社製)0.5質量部とを含有するシリコーンゴム組成物等を用いる場合には、加熱温度は好ましくは150〜190℃、特に好ましくは160〜185℃であり、加熱時間は好ましくは3〜10分、特に好ましくは4〜6分である。このようにしてシリコーンゴム組成物を管状に成形できる。
【0046】
この発明に係る製造方法においては、所望により、管状成形体のバリ等の除去、研磨処理等を施して、バルーンチューブ10を製造できる。このようにして、この発明に係るバルーンチューブの製造方法によって寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンチューブ10を製造できる。このようにして形成されたバルーンチューブ10は、小径端部12、伸縮性拡張部11及び大径端部13の一体成形体であってその全体が円錐台状になっている。
【0047】
この発明に係る製造方法においては、次いで、製造したバルーンチューブ10をシャフトチューブ2に装着する。シャフトチューブ2は、ルーメンを有する管体であり、このような管体を作製できる方法であればいかなる方法でも作製することができ、例えば、各種ゴム若しくは樹脂、又は、各種ゴム組成物若しくは樹脂組成物等を押出し成形等して作製される。シャフトチューブ2を形成するゴムは、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられ、シャフトチューブ2を形成する樹脂は、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。これらの中でも衛生面の性能に優れ、生体との親和性も高い点でシリコーンゴムが好ましい。
【0048】
バルーンチューブ10は、シャフトチューブ2の先端部2aの近傍の外周面に、小径端部12が先端部2a側で大径端部13が基端部2b側となり、貫通孔23の開口部がバルーンチューブ10の軸線C方向略中央に位置し、バルーンチューブ10で覆われるように、装着される。バルーンチューブ10は、バルーンチューブ10の伸縮用流体が漏出しないようにシャフトチューブ2に液密に装着されていればよく、例えば、バルーンチューブ10の小径端部12及び大径端部13それぞれを接着剤でシャフトチューブ2に接着する方法、小径端部12及び大径端部13それぞれをシャフトチューブ2に縫合する方法等が挙げられる。バルーンチューブ10をシャフトチューブ2に接着する接着剤としては、例えば、一液型室温硬化性シリコーンゴム組成物(例えば、商品名「KE−45RTV」、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。なお、バルーンチューブ10は小径端部12が基端部2b側で大径端部13が先端部2a側となるようにシャフトチューブ2に装着されてもよい。
【0049】
この発明に係る製造方法においては、次いで、シャフトチューブ2の先端部2aに先端封止部24を装着する。この先端封止部24は、例えば、バルーンチューブ10の接着と同様の接着剤でシャフトチューブ2のバルーンチューブ10接着できる。
【0050】
この発明に係る製造方法においては、所望により、シャフトチューブ2の基端部2bにハンドル部5を装着する。ハンドル部5の装着は公知のバルーンカテーテルと基本的に同様の方法で実施できる。このようにして、この発明に係るバルーンカテーテルの製造方法によってバルーンチューブ10が寸法精度及び耐薬品性に優れ均一に拡張するバルーンカテーテル1を製造できる。
【0051】
この発明に係るバルーンチューブは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、バルーンチューブ10は、両端が開口し、内径が一定の軸孔16を有する円錐台形状をなしているが、この発明において、バルーンチューブは、楕円錐台形状、多角錐台形状をなしていてもよく、両端が開口していなくてもよい。
【0052】
また、バルーンチューブ10は、収縮時の外径が先端部14から基端部15に向かって連続して一様に増大しているが、この発明において、バルーンチューブは、収縮時の外径が先端部から基端部に向かって任意に変化しながら増大していてもよく、また、収縮時の外径が先端部から基端部に向かって断続的に増大して収縮時の外径が一定の外径均一部すなわち肉厚均一部を有していてもよい。
【0053】
バルーンチューブ10において、小径端部12及び大径端部13は伸縮性拡張部11と一体となって条件(1)及び条件(3)を満たす円錐台形状に形成しているが、この発明において、小径端部及び大径端部は伸縮性拡張部と別体として形成されていてもよい。例えば、小径端部及び大径端部はシャフトチューブが挿入可能な内径を有していればよく、伸縮性拡張部の内径よりも大きくても小さくてもよい。また、小径端部及び大径端部は軸線方向に一定の外径を有してもよい。
【0054】
この発明に係るバルーンカテーテルは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、バルーンカテーテル1は、2つのルーメン21及び22を有するシャフトチューブを備えているが、この発明において、バルーンカテーテルは、少なくとも1つのルーメンを有するシャフトチューブを備えていればよい。特に膀胱留置用のバルーンカテーテルは1つのルーメンを有するシャフトチューブを備えていればよい。
【0055】
バルーンカテーテル1は、バルーンチューブ10の軸線C方向略中央に貫通孔23の開口が位置するように装着されているが、この発明において、貫通孔の開口の位置は特に限定されず、例えば、バルーンチューブ10の軸線C方向端部近傍であってもよい。また、バルーンカテーテル1は、バルーンチューブ10の小径端部12が先端部2a側で大径端部13が基端部2b側となるように、バルーンチューブ10がシャフトチューブ2に装着されているが、この発明において、バルーンチューブの小径端部が基端部側で大径端部が先端部側となるように、バルーンチューブがシャフトチューブに装着されていてもよい。
【0056】
バルーンカテーテル1は、シャフトチューブ2の先端部2aに先端封止部24が装着されているが、この発明において、バルーンカテーテルは、シャフトチューブの先端部にルーメンが開口してなければ先端封止部を備えている必要はない。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
管状キャビティ31、スプルー32及びベント33を有する図3に示される金型5を準備した。この管状キャビティ31は、中軸34の直径が5.1mmで一定であり、管状キャビティ31全体における最小間隙距離(第1キャビティ31aのベント33側端部に相当する)が0.55mm、管状キャビティ31全体における最大間隙距離(第3キャビティ31cのスプルー32側端部に相当する)が0.65mm、管状キャビティ31全体の軸線長さが38mmである。第1キャビティ31aは最小間隙距離0.55mm、最小外径6.2mm、軸線長さ5mmで、第3キャビティ31cは最大間隙距離0.65mm、最大外径6.4mm、軸線長さ5mmであった。第2キャビティ31bは下記条件(ア)〜(カ)を満たしていた。
条件(ア):内径が5.1mmで一定
条件(イ):第2キャビティ31bの最小間隙距離が0.56mm
条件(ウ):第2キャビティ31bの軸線C方向の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.57(%)(なお、第2キャビティ31bの外径差は0.16mm)
条件(エ):第2キャビティ31bの最大間隙距離が0.64mm(最小間隙距離に対して1.14倍)
条件(オ):最大間隙距離と最小間隙距離との差が0.08mm
条件(カ):軸線長さが28mm
【0058】
バルーンチューブ10を形成するシリコーンゴム組成物1としてシリコーンゴム組成物(商品名「KE−530(U)」、信越化学工業株式会社製)を、シャフトチューブ2を形成するシリコーンゴム組成物2としてシリコーンゴム組成物(商品名「KE−561」、信越化学工業株式会社製)を、接着剤として一液型室温硬化性シリコーンゴム組成物(例えば、商品名「KE−45RTV」、信越化学工業株式会社製)を、先端封止部24を形成するシリコーンゴム組成物3としてシリコーンゴム組成物(商品名「KE−951」、信越化学工業株式会社製)を、それぞれ準備した。
【0059】
トランスファー成形法によって金型にシリコーンゴム組成物1を注入した後に、加熱温度180℃、加熱時間5分間の硬化条件で、シリコーンゴム組成物を成形した。金型から成形体を取り出してバリ等を除去して、下記条件(1)〜(10)を満たす伸縮性拡張部11と小径端部12(最小肉厚0.55mm、最小外径6.2mm、軸線長さ5mm)と大径端部13(最大肉厚0.65mm、最大外径6.4mmで軸線長さ5mm)とを有するバルーンチューブ10を作製した。
【0060】
条件(1):内径が5.1mmで一定
条件(2):先端部14の最小肉厚が0.56mm
条件(3):軸線C方向の外径増大率(端部の外径差/軸線長さ)が0.57(%)(伸縮性拡張部11の外径差は0.16mm)
条件(4):基端部15の最大肉厚が0.64mm(先端部14の最小肉厚に対して1.14倍)
条件(5):肉厚差(収縮時)が0.08mm
条件(6):軸線長さが28mm
条件(7):拡張時の最大外径が34mm
条件(8):拡張時の最大内容積が30cc
条件(9):伸びが880%
条件(10):引張強度が9.8MPa
【0061】
シリコーンゴム組成物2を押出し成形して、外径5.2mmで軸線長さ300mmのシャフトチューブ2を作製した。このシャフトチューブ2は、軸線Cに沿って略平行に形成された、直径3.2mmの半円形断面を有するメインルーメン22と内径0.7mmの円形断面を有するサブルーメン22とを有していた。また、シリコーンゴム組成物3を圧縮成形によって、外径5.2mmの半球状の先端封止部24を作製した。
【0062】
シャフトチューブ2の外周面に開口する貫通孔23の開口部がバルーンチューブ10の軸線C方向の略中央に位置するまで、シャフトチューブ2をバルーンチューブ10の大径端部13側から小径端部12に向かって挿通した後に、バルーンチューブ10の小径端部12及び大径端部13それぞれを前記一液型室温硬化性シリコーンゴム組成物でシャフトチューブ2の外周面に接着した。
【0063】
次いで、シャフトチューブ2の先端部2aに先端封止部24を一液型室温硬化性シリコーンゴム組成物で接着し、シャフトチューブ2の基端部2bにハンドル部5を装着した。このようにして図2に示されるバルーンカテーテル1を製造した。
【0064】
(実施例2)
「バルーン容量30cc」有する実施例1の伸縮性拡張部11に代えて、下記条件(ア)〜(カ)を満たす管状キャビティ31を有する金型5を用いて形成した下記条件(1)〜(10)を満たす「バルーン容量5cc」の伸縮性拡張部11と、小径端部12(最小肉厚0.40mm、最小外径5.9mm、軸線長さ4.5mm)と、大径端部13(最大肉厚0.50mm、最大外径6.1mm、軸線長さ4.5mm)とを有するバルーンチューブ10を作製したこと以外は実施例1と基本的に同様にして図2に示されるバルーンカテーテル1を製造した。
【0065】
管状キャビティ31全体:中軸34の直径が5.1mmで一定、管状キャビティ31全体における最小間隙距離(第1キャビティ31aのベント33側端部に相当する)が0.4mm、管状キャビティ31全体における最大間隙距離(第3キャビティ31cのスプルー32側端部に相当する)が0.5mm、管状キャビティ31全体の軸線長さが22mm
第1キャビティ31a:最小間隙距離0.40mm、最小外径5.9mm、軸線長さ4.5mm
第3キャビティ31c:最大間隙距離0.50mm、最大外径6.1mm、軸線長さ4.5mm
第2キャビティ31b:条件(ア)〜(カ)を満たしていた。
条件(ア):内径が5.1mmで一定
条件(イ):第2キャビティ31bの最小間隙距離が0.42mm
条件(ウ):第2キャビティ31bの軸線C方向の外径増大率(端部の外径差/軸線長さ)が0.92(%)(なお、第2キャビティ31bの外径差は0.12mm)
条件(エ):第2キャビティ31bの最大間隙距離が0.48mm(最小間隙距離に対して1.14倍)
条件(オ):最大間隙距離と最小間隙距離との差が0.06mm
条件(カ):軸線長さが13mm
【0066】
条件(1):内径が5.1mmで一定
条件(2):最小肉厚が0.42mm
条件(3):軸線C方向の外径増大率(端部の外径差/軸線長さ)が0.92(%)(伸縮性拡張部11の外径差は0.12mm)
条件(4):最大肉厚が0.48mm(最小肉厚に対して1.14倍)
条件(5):肉厚差(収縮時)が0.06mm
条件(6):軸線長さが13mm
条件(7):拡張時の最大外径が16mm
条件(8):拡張時の最大内容積が5cc
条件(9):伸びが880%
条件(10):引張強度が9.8MPa
【0067】
(実施例3)
「バルーン容量30cc」有する実施例1の伸縮性拡張部11に代えて、下記条件(ア)〜(カ)を満たす管状キャビティ31を有する金型5を用いて形成した下記条件(1)〜(10)を満たす「バルーン容量3cc」の伸縮性拡張部11と、小径端部12(最小肉厚0.50mm、最小外径3.7mm、軸線長さ3mm)と、大径端部13(最大肉厚0.55mm、最大外径3.8mm、軸線長さ3mm)とを有するバルーンチューブ10を作製したこと以外は実施例1と基本的に同様にして図2に示されるバルーンカテーテル1を製造した。
管状キャビティ31全体:中軸34の直径が2.7mmで一定、管状キャビティ31全体における最小間隙距離(第1キャビティ31aのベント33側端部に相当する)が0.50mm、管状キャビティ31全体における最大間隙距離(第3キャビティ31cのスプルー32側端部に相当する)が0.55mm、管状キャビティ31全体の軸線長さが13mm
第1キャビティ31a:最小間隙距離0.50mm、最小外径3.7mm、軸線長さ3mm
第3キャビティ31c:最大間隙距離0.55mm、最大外径3.8mm、軸線長さ3mm
第2キャビティ31b:条件(ア)〜(カ)を満たしていた。
条件(ア):内径が2.7mmで一定
条件(イ):第2キャビティ31bの最小間隙距離が0.51mm
条件(ウ):軸線C方向の内径増大量(端部の外径差/軸線長さ)が0.85(%)(なお、第2キャビティ31bの外径差は0.06mm)
条件(エ):第2キャビティ31bの最大間隙距離が0.54mm(最小間隙距離に対して1.05倍)
条件(オ):最大間隙距離と最小間隙距離との差が0.03mm
条件(カ):軸線長さが7mm
【0068】
条件(1):内径が2.7mmで一定
条件(2):最小肉厚が0.51mm
条件(3):軸線C方向の外径増大率(端部の外径差/軸線長さ)が0.85(%)(伸縮性拡張部11の外径差は0.06mm)
条件(4):最大肉厚が0.54mm(最小肉厚に対して1.05倍)
条件(5):肉厚差(収縮時)が0.03mm
条件(6):軸線長さが7mm
条件(7):拡張時の最大外径が13mm
条件(8):拡張時の最大内容積が3cc
条件(9):伸びが880%
条件(10):引張強度が9.8MPa
【0069】
(比較例1)
前記条件(ア)〜(カ)を満たす管状キャビティ31を有する金型5に代えて、第1キャビティ31a及び第3キャビティ31cを除いた第2キャビティ31bの寸法が内径5.1mm、外径6.7mmで間隙距離が0.8mm、軸線長さ28mmの管状キャビティを有する金型を用いたこと以外は実施例1と基本的に同様にしてバルーンカテーテルを製造した。このバルーンチューブは、内径及び外径が一定で肉厚も一定である軸線Cに垂直な断面が円形である管状の伸縮性拡張部を有していた。
【0070】
(比較例2)
前記条件(ア)〜(カ)を満たす管状キャビティ31を有する金型5に代えて、内径2.7mm、外径3.1mmで間隙距離が0.2mm、軸線長さ7mmの第2キャビティ31bを有する管状キャビティ31を有する金型を用いたこと以外は実施例3と基本的に同様にしてバルーンカテーテルを製造した。このバルーンチューブは、内径及び外径が一定で肉厚も一定である軸線Cに垂直な断面が円形である管状の伸縮性拡張部を有していた。
【0071】
実施例1〜3並びに比較例1及び2における各条件等を第1表に示す。
【0072】
(耐薬品性)
実施例1〜3並びに比較例1及び2で製造した各バルーンカテーテルを60℃の乾燥機に130日入れて加速試験を行った後に、人口尿中に浸漬する試験をJIS T3214(EURO規格:EN1616)に準拠して行った。その結果、実施例1〜3並びに比較例1で製造した各バルーンカテーテルはいずれもバルーンチューブが割れることはなく高い耐薬品性を発揮した(第1表において「good」と表記する。)のに対して、比較例2で製造したバルーンカテーテルはバルーンチューブが割れて十分な耐薬品性を発揮しなかった(第1表において「bad」と表記する。)。結果を第1表に示す。
【0073】
(拡張性)
実施例1並びに比較例1で製造したバルーンカテーテルに空気30mLを大気圧下で送入し、バルーンチューブが均一に膨らんでいるか否かを目視にて確認した。その結果、実施例1のバルーンカテーテルはいずれも均一性の高い拡張性を発揮した(第1表において「good」と表記する。)のに対して比較例1のバルーンカテーテルはバルーンチューブが均一に拡張しなかった(第1表において「bad」と表記する。)。また、同様にして実施例2で製造したバルーンカテーテルに5mLの空気を挿入し、実施例3及び比較例2で製造したバルーンカテーテルに3mLの空気を送入したところ、これらバルーンカテーテルのバルーンチューブはいずれも均一に拡張した(第1表において「good」と表記する。)。結果を第1表に示す。
【0074】
【表1】

【符号の説明】
【0075】
1 バルーンカテーテル
2 シャフトチューブ
2a 先端部
2b 基端部
3 ハンドル部(ファネル)
10 バルーンチューブ
11 伸縮性拡張部
12 一端部(小径端部)
13 他端部(大径端部)
14 一方の端部(先端部)
15 他方の端部(基端部)
16 軸孔
21 メインルーメン
22 サブルーメン
23 連通孔
24 先端封止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(1)〜(3)を満たす伸縮性拡張部を有することを特徴とするバルーンチューブ。
条件(1):内径が実質的に一定であること
条件(2):最小肉厚が0.3〜0.6mmであること
条件(3):軸線方向の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)であること
【請求項2】
請求項1に記載のバルーンチューブと、先端部に前記バルーンチューブが装着され、前記バルーンチューブに連通するルーメンを有するシャフトチューブとを備えて成ることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項3】
下記条件(ア)〜(ウ)を満たす管状キャビティを有する金型にシリコーンゴム組成物を注入して伸縮性拡張部を成形することを特徴とするバルーンチューブの製造方法。
条件(ア):内径が実質的に一定であること
条件(イ):最小間隙距離が0.3〜0.7mmであること
条件(ウ):軸線方向の外径増大率([端部の外径差/軸線長さ]×100)が0.2〜4(%)であること
【請求項4】
請求項3に記載のバルーンチューブの製造方法によりバルーンチューブを作製し、このバルーンチューブをシャフトチューブの先端部に装着することを特徴とするバルーンカテーテルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate