説明

バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムの包装体

【課題】 薬物吸収性及び保存安定性に優れたバレニクリン又はその薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムを提供することを本発明の課題とした。
【解決手段】 バレニクリン又はその薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムを、最内層をポリアクリロニトリル層としたアルミニウム積層シートで包装することによって、薬物バレニクリンの分解化合物の生成が少なく、特に包装体の経時的変色が少ない経皮薬物送達システムの包装体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムの包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
バレニクリン(valenicline)は下記式の構造を有する。
【化1】

バレニクリンは、5,8,14−トリアザテトラシクロ[10.3.1.02,11.04,9]−ヘキサデカ−2(11),3,5,7,9−ペンタン、または7,8,9,10−Tetrahydro−6H−6,10−methanoazepino[4,5−g]quinoxalineとしても知られている。
【0003】
バレニクリンはα4β2ニコチン受容体に対して高い結合親和性を有する部分作動薬であり、バレニクリンが脳内のα4β2ニコチン受容体に結合すると、ニコチンを遮断して喫煙による満足感を抑制する。それと同時に、ニコチンの作用で放出されるよりも少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する。現時点で日本国内において提供されている酒石酸バレニクリン製剤(0.5mg錠および1mg錠)の適応症は、ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助である。
【0004】
禁煙を補助するための経皮薬物送達システムについては、特開平1−135717(特許文献1)等に、ニコチンを含有する経皮薬物送達システムが開示され、既にいくつかのニコチン置換療法のための市販製剤が存在する。また、バレニクリンを含有する経皮薬物送達システムに関しては、特開2007−031436(特許文献2)に開示され、錠剤またはカプセル剤と比較した利点が述べられている。
【0005】
製剤の包装に関しては、例えば実公昭61−002034(特許文献3)、特開昭61−171340(特許文献4)、実公昭62−017244(特許文献5)、特開平5−305108(特許文献6)、他(特許文献7〜10)に述べられているとおり、ポリアクリロニトリルによる包装体は医薬、食品等の包装に用いられており、酸素などのガスバリア性、耐薬品性、芳香成分の非吸着性等に優れることが知られている。ポリアクリロニトリルフィルムは、酸素のバリア性において他の汎用樹脂フィルムよりも優れており、例えばポリオレフィン系フィルムと比較すればおよそ200〜1000倍程度の酸素遮断性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−135717
【特許文献2】特開2007−031436(WO2007/012963)
【特許文献3】実公昭61−002034
【特許文献4】特開昭61−171340
【特許文献5】実公昭62−017244
【特許文献6】特開平5−305108
【特許文献7】実開昭62−149337
【特許文献8】WO99/35131
【特許文献9】WO2005/072675
【特許文献10】WO2005/072716
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バレニクリンを経皮送達することによって、より持続的な禁煙に対する補助効果が期待されるものの、実際、バレニクリンの酸付加塩は極めて親水性が高いために基剤に対する溶解が乏しく、必要な薬物送達速度をもたらすためには特別な工夫が必要となる。
本発明者らは鋭意研究を行い、バレニクリンの酸付加塩である酒石酸バレニクリンの経皮送達速度を十分なものとするために、塩基性化合物(水酸化ナトリウム等のアルカリ性成分)を配合してバレニクリンを遊離体化することにより経皮送達速度を高めることが可能であることを見出した。ところが、このような製剤ではバレニクリン自体の保存安定性が悪いことがその後に判明した。
【0008】
本発明は、このようなバレニクリンを含有する経皮薬物送達システムが有していた問題を解決しようとするものであり、特にバレニクリンを含有する経皮送達システムの包装体に関し、保存安定性を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムを、最内層がポリアクリロニトリル層であるアルミニウム積層シートで包装することによって、薬物バレニクリンの分解化合物の生成が少なく、特に包装体の経時的変色を防止できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくとも支持体、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する粘着剤層、保護フィルム、からなる経皮薬物送達システムを、最内層がポリアクリロニトリル層であるアルミニウム積層シートで包装した経皮薬物送達システムの包装体を提供する。
また、本発明は、前記バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩が酒石酸バレニクリンである前記の包装体を提供する。
更にまた、本発明は、経皮薬物送達システムと共に保存安定剤を封入した前記の包装体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムを最内層がポリアクリロニトリル層であるアルミニウム積層シートで包装することによって、薬物バレニクリンの保存安定性に優れ、バレニクリンの分解化合物の生成が少なく、包装体の経時的な変色が少ない経皮送達システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の経皮薬物送達システムの包装体の断面の模式図
【図2】本発明の経皮薬物送達システムと共に保存安定剤を封入した包装体の断面の模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、特に断らない限り「%」とは「質量%」を意味する。
【0014】
本発明は、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムを最内層がポリアクリロニトリル層であるアルミニウム積層シートで包装した包装体に関する。
前記の経皮薬物送達システムは、少なくとも支持体と、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する粘着剤層と、保護フィルムとからなる。
また、前記包装体は、経皮薬物送達システムと共に保存安定剤を封入することができる。
【0015】
前記バレニクリンの薬学的に許容される酸付加塩は、酒石酸、塩酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、硫酸、メシル酸等との付加塩が例示され、酒石酸の付加塩が好ましい。バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩の含有率は、粘着剤層全体の成分に対して好ましくは0.3〜10%(遊離体として換算)の範囲である。
【0016】
前記粘着基剤は、経皮薬物送達システムに一般に使用されるものであれば特に限定はなく、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤から選択される1種又は2種以上が例示される。粘着基剤は、カルボキシル基を有さないものが好ましい。
【0017】
前記合成ゴム系粘着剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)又はスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)等のスチレン系ブロック共重合体、ポリイソプレン(PIB)、ポリイソブチレン等が例示される。
【0018】
前記アクリル系粘着剤は、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸−2−エチルヘキシル等に代表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも一種含有させて共重合したものである。アクリル系粘着剤は、官能基としてカルボキシル基を有さないか、モノマー全体に対する比率として10%以下であることが薬物の経皮吸収性の点から好ましい。また、共重合モノマーとして酢酸ビニルを含まないか、モノマー全体に対する比率として10%以下であることが製剤の経時着色が少ないという点から好ましく、酢酸ビニルをモノマー残基として含有せず、官能基としてカルボキシル基を有さないアクリル系粘着剤がより好ましい。
【0019】
前記粘着剤層は、必要に応じて、例えば、粘着付与剤、軟化剤、可溶化剤、アルカリ性成分、その他の添加剤成分を含有させることもできる。
【0020】
前記粘着付与剤は、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジン誘導体(例えばロジン、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル又はロジンのペンタエリスリトールエステル等)、テルペン樹脂、石油樹脂又はマレイン酸レジン等が例示される。
【0021】
前記軟化剤は、流動パラフィンなどのパラフィン油、スクワラン、スクワレンなどの動物油、植物油(例えば、アーモンド油、オリブ油、ツバキ油、ヒマシ油、トール油、ラッカセイ油等)、シリコーン油、液状ゴム(例えばポリブテン又はポリイソプレン等)、脂肪族アルコール(イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)、液状脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル又はセバシン酸イソプロピル等)、グリコール類(ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等)、トリアセチン、クエン酸トリエチル又はクロタミトン等が例示される。また、これらの軟化剤は1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記可溶化剤は、イソステアリルアルコール等の脂肪族アルコール、カプリン酸のような脂肪酸、プロピレングリコールモノラウレートやミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸誘導体、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリオール類等が例示される。
【0023】
前記アルカリ性成分は、バレニクリンに付加した酸や粘着剤層中に存在する遊離カルボキシル基などをもつ酸成分を中和するために配合され、これらの酸を全て中和するモル数の0.1〜2倍のモル数を配合することが好ましい。アルカリ性成分は、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等が好ましい。
【0024】
前記その他の添加剤成分は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、経皮吸収促進剤、結晶析出防止剤などが例示される。
【0025】
前記支持体は、粘着剤層を支持可能であり、柔軟性に優れるものが好ましい。支持体は、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリアクリロニトリル、等の合成樹脂や綿などから選ばれた成分で主に形成された、フィルム、布帛(例、織布及、不織布等)、多孔質膜、発泡体、あるいはこれらを適宜積層したものが例示される。
【0026】
前記保護フィルムは、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、紙等を用いることが可能であり、粘着剤層の剥離を容易にするために前記の表面をシリコーンやテフロン等によって離型処理したものが好ましい。
【0027】
バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する経皮薬物送達システムの製造方法は、例えば、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩及びその他の粘着剤層の成分を加熱し溶融させて均一に混合し、保護フィルム上に塗布し粘着剤層を形成した後、支持体と貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより経皮薬物送達システムを製造することができる。
または、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩及びその他の粘着剤層の成分をトルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させ、保護フィルム上に塗布し、溶媒を乾燥して除去し粘着剤層を形成した後、支持体を貼り合わせ、所定の形状に裁断することにより経皮薬物送達システムを製造することもできる。
【0028】
上記のようにして製造した経皮薬物送達システムは、最内層をポリアクリロニトリル層としたアルミニウム積層シートからなる袋で包装する(図1参照)。この袋は、少なくともアルミニウムからなるバリア層と、ポリアクリロニトリルからなるシーラント層を有する包装材を対向させ、周縁部を互いに接合して製袋される。つまり、この袋は、アルミニウムからなるバリア層を有し、最も内側がポリアクリロニトリル層からなる。
【0029】
前記アルミニウムからなるバリア層は、気体遮断性を保ち、ピンホール生成などの不都合を防止し、バレニクリンの分解を抑制する上で1〜30μmの範囲の厚みが好ましい。
前記ポリアクリロニトリル(PAN)層は、前記袋のうち最も内側の層を構成し、アクリロニトリル単位を50%以上含む(共)重合体を主成分とする樹脂からなり、加熱、超音波振動等によって樹脂を溶融させることによって互いに接合することができるシーラント層である。ポリアクリロニトリル層は、一般にポリアクリロニトリル系樹脂と称されるものを使用することができ、市販樹脂では、ゼクロン(三井化学)を例示することができる。ポリアクリロニトリル層の厚みは、10〜50μmが好ましい。
【0030】
前記のバリア層とポリアクリロニトリル層との間は、カール防止、ピンホール防止、接合、その他の目的のために、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などからなる任意の中間層を設けることができる。
【0031】
また、前記バリア層の外側にも、カール防止、ピンホール防止、表面光沢、印刷適性、包装強度向上、遮光、腐食防止、すべり摩擦力調整、その他の目的のために、ポリエステル樹脂、セロハン、ビニルアルコール(共)重合体、ポリプロピレン、紙などからなる任意の外層を設けることができ、必要ならば更に外層とバリア層との間に接合層を設けることができる。
【0032】
前記した経皮薬物送達システムは、保存安定剤と共に、最内層をポリアクリロニトリル層としたアルミニウム積層シートで包装することがより好ましい(図2参照)。保存安定剤は、吸着剤、乾燥剤、脱酸素剤を使用することができ、例えば、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、モレキュラーシーブ、モンモリロナイト等の吸着剤や、ハイドロサルファイト、鉄系化合物等の脱酸素剤、炭酸カルシウム、シリカゲル等の乾燥剤が例示される。具体的には、Sorb−It(Adsorbents & Desiccants Corporation of America社製)、ファーマキープ(三菱ガス化学株式会社製)、エージレス(三菱ガス化学株式会社製)、バイタロン(常盤産業株式会社製)等が例示される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
Duro−Tak 387−2510を17.6g(87.8%)、酒石酸バレニクリン2.0g(10.0%)、水酸化ナトリウム0.4g(2.2%)に溶媒メタノールを加えて混合し、均一な溶液とした。 この溶液を保護フィルムである厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのシリコーン離型処理した面に塗布し、送風乾燥器中で溶媒を乾燥除去し、形成された粘着剤層上に支持体としてポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを貼り合わせ、適宜裁断して経皮薬物送達システムを調製した。
次に、セロハン、ポリエチレン、アルミニウム箔、ポリアクリロニトリル(PAN)をこの順で積層した長方形の包装材シート2枚を、PAN層同士が対向するように重ね合わせ、その間に前記の製剤1枚を挟み込み、包装材の周縁4辺同士をヒートシーラーで熱接着し、経皮薬物送達システムの包装体を得た。
【0035】
(実施例2)
経皮薬物送達システムは実施例1と同様にして調製した。
次に、セロハン、ポリエチレン、アルミニウム箔、ポリアクリロニトリル(PAN)をこの順で積層した長方形の包装材シート2枚を、PAN同士が対向するように重ね合わせ、その間に前記の製剤1枚及び乾燥及び脱酸素機能を併せ持つファーマキープ(三菱ガス化学社製)を挟み込み、包装材の周縁4辺同士をヒートシーラーで熱接着し、保存安定剤を同封した経皮薬物送達システムの包装体を得た。
【0036】
(比較例1)
経皮薬物送達システムは実施例1と同様にして調製した。
次に、セロハン、ポリエチレン、アルミニウム箔、低密度ポリエチレン(LDPE)をこの順で積層した長方形の包装材シート2枚を、LDPE同士が対向するように重ね合わせ、その間に前記の製剤1枚を挟み込み、包装材の周縁4辺同士をヒートシーラーで熱接着し、経皮薬物送達システムの包装体を得た。
【0037】
(比較例2)
経皮薬物送達システムは実施例1と同様にして調製した。
次に、セロハン、ポリエチレン、アルミニウム箔、低密度ポリエチレン(LDPE)をこの順で積層した長方形の包装材シート2枚を、LDPE同士が対向するように重ね合わせ、その間に前記の製剤1枚及び乾燥及び脱酸素機能を併せ持つファーマキープ(三菱ガス化学社製)を挟み込み、包装材の周縁4辺同士をヒートシーラーで熱接着し、保存安定剤を同封した経皮薬物送達システムの包装体を得た。
【0038】
(試験1)
実施例1及び比較例1の包装体について、調製した初期包装体、及び80℃の恒温チャンバー中で3日間保存した包装体について、バレニクリンの分解物を下記の方法で定量するとともに、経皮薬物送達システム包装体の経時的変色について評価した。
【0039】
(バレニクリンの分解物の定量方法)
各包装体について、開封して経皮薬物送達システムを取り出し、6.25平方cmの製剤から有機溶媒で成分を抽出して検液とし、高性能液体クロマトグラフィー(ODSカラム、UV検出器)にてバレニクリン及び未知化合物を検索した。未知化合物の量は、バレニクリンの理論量を100として、未知化合物のクロマトグラフィーの吸収面積の合計から算出した。
(経皮薬物送達システムの経時着色の評価方法)
各包装体について、開封して経皮薬物送達システムを取り出し、その外観、包材の内面等を目視で観察した。
【0040】
バレニクリンの分解化合物の定量結果
【表1】

経皮薬物送達システムの経時着色の評価結果
【表2】

試験1の結果は上表1〜2のようになり、経皮薬物送達システムをPAN包装材にて包装した実施例1の包装体では、80℃で3日間の過酷条件下での保存後においてバレニクリンに由来する分解物の生成率が4.79%にとどまったのに対し、LDPE包装材を用いた比較例1の場合には、分解物の生成率が5.46%と高い割合を示した。また、比較例1の包装体では包装材の内面に明らかな経時的変色がみとめられたのに対し、実施例1の包装体では経時的変色はみとめられなかった。
【0041】
(試験2)
実施例2及び比較例2の包装体について、調製した初期包装体、及び80℃の恒温チャンバー中で3日間保存した包装体について、バレニクリンの分解物を下記の方法で定量するとともに、経皮薬物送達システム包装体の経時的変色について試験1と同様に評価した。
【0042】
バレニクリンの分解化合物定量結果(保存安定剤と共に封入した場合)
【表3】

経皮薬物送達システムの経時着色の評価結果
【表4】

試験2の結果は上表3〜4のようになり、経皮薬物送達システムを保存安定剤とともにPAN包装材で包装した実施例2の包装体では、80℃で3日間の過酷条件下での保存後においてバレニクリンに由来する分解物の生成率が2.19%にとどまったのに対し、保存安定剤とともに包装したLDPE包装材の比較例2の包装体では分解物の生成率が2.71%と高い割合を示した。また、保存安定剤を入れた実施例2は、保存安定剤を入れなかった実施例1よりも更に優れた安定性を示した。
また、比較例2の包装体では包装材の内面に経時的変色がみとめられたのに対し、実施例2の包装体では経時的変色はみとめられなかった。
【符号の説明】
【0043】
1 経皮薬物送達システムの包装体
2 経皮薬物送達システム
3 支持体
4 薬物を含有する粘着剤層
5 保護フィルム
10a 包装材
10b 包装材
11 外層
12 バリア層
13 中間層
14 ポリアクリロニトリル層
20 経皮薬物送達システムと共に封入した、包装した保存安定剤
21a 保存安定剤のための包装シート
21b 保存安定剤のための包装シート
22 保存安定剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、バレニクリン又は薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩を含有する粘着剤層、保護フィルム、からなる経皮薬物送達システムを、最内層がポリアクリロニトリル層であるアルミニウム積層シートで包装した経皮薬物送達システムの包装体。
【請求項2】
前記薬学的に許容されるバレニクリン酸付加塩が酒石酸バレニクリンである請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
経皮薬物送達システムと共に保存安定剤を封入した請求項1または2に記載の包装体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−285415(P2010−285415A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160222(P2009−160222)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】