説明

バンド、腕時計及びバンドの製造方法

【課題】バンド本体の強度の大幅な向上を図ることができるバンド、腕時計及びバンドの製造方法を提供すること。
【解決手段】
この発明は、バンド、腕時計及びバンドの製造方法に関する。長手方向に複数のバンド長さ調整穴(20)が複数個形成されたバンド本体(10)は、表面に第1の樹脂層を、裏面に第2の樹脂層をそれぞれ備えたカーボン繊維の織物等の支持層(12b)にて形成されている。この支持層(12b)は、バンド本体(10)の長手方向H及び短手方向に対して、当該支持層のカーボン繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度(例、45度)で傾斜するよう形成されている。これにより、バンド本体の強度の大幅な向上を図ることができ、かつ、使用中における、バンドのいわゆる切れまたは捩れ時における別部材の剥離の発生を未然に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド、腕時計及びバンドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、時計用バンド及び遊環として樹脂製のものが使用されている。このような樹脂製の時計用バンド及び遊環は、長年の使用により、使用途中でいわゆる切れるという切断問題がある。原因は、水分や、カビなどを樹脂が吸収して機能劣化を起こしているからだと考えられる。このいわゆる切れるという問題に対する対策としては、長期間の使用に耐えられる樹脂の選定を行ってきた。しかし、樹脂の選定のみでは、バンドの強度向上に限界がある。
【0003】
そこで、カーボン繊維の織物を補強材として樹脂バンドの中にインサートする構成の時計用バンドが開発されている。
例えば、従来、特許文献1に示すように、透明材料からなるトップコート層と、このトップコート層に密着した下層として設けたカーボン繊維の織物と、このカーボン繊維の織物に密着した下層としてバンド・コア材を積層したバンド材料からなり、このバンド材料をバンドの全面または一部として構成した時計用バンドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−136008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載の従来の時計用バンドでは、突棒と嵌合するバンド長さ調整穴の強度の向上を図ってはいるが、例えば、腕時計の本体ケースと時計用バンドとのつながり部分(ばね棒穴まわり)の補強については考慮がされておらず、そのつながり部分のばね棒穴から時計用バンドが切れるという問題の解決にはつながってはいなかった。
【0006】
また、バンドの使用中における、バンドのいわゆる切れまたは捩れによるトップコート層の剥離という問題も孕んでいた。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、バンド本体の強度の大幅な向上を図ることができ、かつ、使用中における、バンドのいわゆる切れまたは捩れ時における別部材の剥離という問題の発生を未然に防止することができるバンド、腕時計及びバンドの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、長手方向に複数のバンド長さ調整穴が形成されたバンド本体を備えているバンドにおいて、前記バンド本体は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなるバンド形状の支持層と、
この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層と、
前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層とを備え、
前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してその繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されていることを特徴とするバンドである。
【0009】
請求項2の発明は、
長手方向に複数のバンド長さ調整穴が形成されたバンド本体を備えているバンドにおいて、
前記バンド本体は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の繊維層と、この繊維層の表面に形成されたアルミ合金、ニッケル合金等の金属粒子からなる金属層とからなるバンド形状の支持層と、
この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層と、
前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層とを備え、
前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してその繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されていることを特徴とするバンドである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のバンドであって、前記予め定められた傾斜角度は、15度から75度であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載のバンドであって、前記予め定められた傾斜角度は、45度であることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4いずれか一項に記載のバンドであって、前記支持層は、被取付本体に接続されるばね棒穴を形成するループをその端部に有し、この端部の幅は、前記バンド本体の幅よりも幾分小さく、前記第1の樹脂層は、透明もしくは半透明であり、前記第2の樹脂層は、当該支持層と同色系であり、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層によって前記バンド本体の外周が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から5いずれか一項に記載のバンドと、このバンドに設けられた本体ケースと、を備えていることを特徴とする腕時計である。
【0014】
請求項7の発明は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなる支持層を備えている大判シートから、当該大判シートの繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように、複数個のバンド形状の支持層をカットして取り出すステップと、
金型を用いて前記大判シートから取り出された複数個の各支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設けるステップと、
金型を用いて前記複数個の各支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けるステップと、
を備えることを特徴とするバンドの製造方法である。
【0015】
請求項8の発明は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の繊維層と、この繊維層の表面に形成されたアルミ合金、ニッケル合金等の金属粒子からなる金属層とからなる支持層を備えている大判シートから、当該大判シートの繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように、複数個のバンド形状の支持層をカットして取り出すステップと、
金型を用いて前記大判シートから取り出された複数個の各支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設けるステップと、
金型を用いて前記複数個の各支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けるステップと、
を備えることを特徴とするバンドの製造方法である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項7又は8に記載のバンドの製造方法であって、前記予め定められている傾斜角度は、15度から75度であることを特徴とする。
【0017】
請求項10の発明は、請求項7又は8に記載のバンドの製造方法であって、前記予め定められている傾斜角度は、45度であることを特徴とする。
【0018】
請求項11の発明は、請求項7から10いずれか一項に記載のバンドの製造方法であって、前記大判シートは、その繊維束に前記第2の樹脂層と同じ樹脂を含浸させておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係るバンドによれば、バンド本体の長手方向及び短手方向に対して、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなる支持層の繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されているので、バンド本体を長手方向に伸ばす力に対して、支持層を構成している繊維束がこの伸びに追従し、長手方向に伸びやすくなり、長手方向の引っ張りや捩れに対してバンドの強度が大幅に向上させることができる。このため、バンドの使用中における、いわゆる切れ、捩れによる第1の樹脂層と第2の樹脂層との剥離を未然に防止することができる。
【0020】
また、この発明に係るバンドの製造方法によれば、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなる支持層を備えている大判シートから、当該大判シートの繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように複数個の支持層をカットして取り出すことができる。このために、繊維束の伸長方向が予め定められている傾斜角度で傾斜する支持層を迅速かつ容易に取り出すことができる。そればかりでなく、その後、金型を用いて支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設ける一方で、金型を用いて支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けることができる。このために、美的な外観形状をし、かつ、高級感のあるバンドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態の時計用バンドを備える腕時計の分解斜視図である。
【図2】(A)は図1に示す時計用バンドのうち第1のバンドの長手方向に沿った断面図、(B)は第1のバンドの短手方向に沿った断面図、(C)は中間層を織物又は編み物の繊維層と表面の金属層とで形成した第1のバンドの短手方向に沿った断面図である。
【図3】(A)は図1の時計用バンドにおける遊環の長手方向に沿った断面図、(B)は遊環の短手方向に沿った断面図である。
【図4】(A)は図1に示す時計用バンドのうち第2のバンドの長手方向に沿った断面図、(B)は第2のバンドの短手方向に沿った断面図である。
【図5】図1に示す時計用バンドの製造方法の工程図である。
【図6】(A)は図5の時計用バンドの製造方法で用意される大判シートの一部を示す平面図である。(B)はその大判シートの部分拡大図ある。
【図7】図5の支持層取出工程における大判シートの一部を示す平面図である。
【図8】図7の支持層取出工程で取り出された第2の支持層の平面図である。
【図9】図5の支持層変形工程のうち波形形成の後の第2の支持層の斜視図である。
【図10】図5の支持層変形工程のうちループ形成の後の第2の支持層の斜視図である。
【図11】図5の第1の樹脂成型工程の手順を第2のバンドを例に説明するための金型の断面図である。
【図12】図5の第2の樹脂成型工程の手順を第2のバンドを例に説明するための金型の断面図である。
【図13】第1の樹脂成型及び第2の樹脂成型で得られた第2のバンドの断面図である。
【図14】第2のバンドの成型時における金型内の樹脂の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本実施形態における時計用バンドを備える腕時計の分解斜視図である。この実施形態において腕時計100は、例えば、秒針、分針及び時針等の指針(図示せず)を回転させて時刻を表示するものである。勿論、指針を持たないもの、指針を併せ持ち、液晶表示部等により時刻を表示する腕時計であってもよい。
【0023】
この腕時計100は、中空の短柱形状に形成された本体ケース1を備えている。本体ケース1の外周部にはバンド取付部2,3が形成されている。また、本体ケース1の外周部には、時刻合わせの指示などの種々の操作指示が入力される複数の操作ボタン4が設けられている。ただし、図1には1つの操作ボタン4のみが記載されている。
【0024】
上記バンド取付部2,3には時計用バンド10が取り付けられる。実施形態の腕時計100の場合、時計用バンド10は第1のバンド11と第2のバンド12とから構成されている。第1のバンド11には尾錠である留め具14が設けられている。尾錠14は突棒14aと止め輪14bから構成されている。第2のバンド12には尾錠14の突棒14aが嵌合するバンド長さ調整穴20が形成されている。
【0025】
第1のバンド11は第2のバンド12よりも短尺となっている。この第1のバンド11には、被取付本体である本体ケース1に取り付けるための被取付部13が基端部に形成されている。被取付部13には、ばね棒穴13aが形成されている。また、第1のバンド11の先端部には、尾錠14を取り付けるための取付部15が形成されている。取付部15にはばね棒穴15aが形成されている。なお、取付部15の一部にはばね棒穴15aに連通する切欠き15bが形成されている。そして、ばね棒穴13aの一端側から当該ばね棒穴13aにばね棒16を挿入し、このばね棒16の両端をバンド取付部2の穴2aに係合させることによって、第1のバンド11が本体ケース1の取付部2に取り付けられている。
【0026】
一方、ばね棒穴15aの一端側から当該ばね棒穴15aにばね棒17を挿入し、途中で、切欠き15bに位置する突棒14aの基端部にばね棒17を貫通させ、ばね棒17の両端を止め輪14bの穴14cに係合させることによって、尾錠14が第1のバンド11の取付部15に取り付けられる。また、第1のバンド11には遊環18が取り付けられる。
【0027】
第2のバンド12には、本体ケース1に取り付けるための被取付部19が基端部に形成されている。被取付部19にはばね棒穴19aが形成されている。また、第2のバンド12には長手方向に沿ってバンド長さ調整穴20が複数形成されている。
【0028】
続いて、第1のバンド11、遊環18及び第2のバンド12の材質についてこの順で説明する。第1のバンド11は、図2(A)及び図2(B)に示すように、上層、中間層及び下層の3層構造となっている。図2(A)は第1のバンド11の長手方向に沿った断面図、図2(B)は第1のバンド11の短手方向に沿った断面図である。
【0029】
上層は透明材料もしくは半透明材料からなる第1の樹脂層11aである。中間層はカーボン繊維束の織物からなるバンド形状の支持層11bである。下層は支持層11bと同色系の第2の樹脂層11cである。この第2の樹脂層11cは例えばウレタン系樹脂によって構成されている。また、この第2の樹脂層11cと第1の樹脂層11aとは、第1の樹脂層11a側から見て、支持層11bよりも一回り大きく形成されており、これら第2の樹脂層11cと第1の樹脂層11aとにより、支持層11bの全体が覆い隠されている。
【0030】
ここで、上層を透明材料としたのは、支持層11bを外観として見せるためである。また、上層を半透明材料としたのは、支持層11bを外観として見せるとともに、表面すり傷等の外観不具合を目立たなくするためである。半透明材料とは、半透明、透明に近い半透明、不透明に近い半透明の材料を含むほかに、顔料、染料を混練して薄く加色された半透明の材料を意味する。
またここで、中間層を、アルミ合金やニッケル合金等の金属粒子を蒸着、スパッタリングさせて、表面に金属を付着させた織物又は編み物からなるバンド形状の支持層とし、上層を半透明材料とした組み合わせとすれば、中間層は同一の支持層でも、上層の半透明材料の加色や透明度を変えることで、見た目の異なる多様なデザインのバンドとすることができる。
また、下層を支持層11bと同色系としたのは、支持層11bの織目の隙間や端部の変形等の外観不具合を第1の樹脂層11a側から見て目立たなくするためである。また、第1のバンド11においては、被取付部13のばね棒穴13aや、取付部15のばね棒穴15aを取り囲むように支持層11bが配置されている。すなわち、支持層11bの長手方向両端部はループとなっている。このようにしたのは、被取付部13及び取付部15の強度を向上させるためである。
【0031】
遊環18は、図3(A)および図3(B)に示すように、上層、中間層及び下層の3層構造となっている。図3(A)は遊環18の長手方向に沿った断面図、図3(B)は遊環18の短手方向に沿った断面図である。上層は透明材料、例えば、ポリウレタン系樹脂、または半透明材料からなる第1の樹脂層18aである。
【0032】
中間層はカーボン繊維束の織物からなる支持層18bである。下層は支持層18bと同色系の第2の樹脂層18cである。この第2の樹脂層18cは例えばポリウレタン系樹脂によって構成されている。
【0033】
また、この第2の樹脂層18cと第1の樹脂層18aとは、第1の樹脂層18a側から見て、支持層18bよりも一回り大きく形成されており、これら第2の樹脂層18cと第1の樹脂層18aとにより、支持層18bの全体が被覆されている。
【0034】
ここで、上層を透明材料としたのは、支持層18bを外観として見せるためである。また、上層を半透明材料としたのは、前述の場合と同様、支持層18bを外観として見せるとともに、表面すり傷等の外観不具合を目立たなくするためである。半透明材料とは、前述の場合と同様の意味である。またここで、中間層を、前述の場合と同様、アルミ合金やニッケル合金等の金属粒子を蒸着、スパッタリングさせて、表面に金属を付着させた織物又は編み物からなるバンド形状の支持層とし、上層を半透明材料とした組み合わせとすれば、中間層は同一の支持層でも、上層の半透明材料の加色や透明度を変えることで、見た目の異なる多様なデザインのバンドとすることができる。
また、下層を支持層18bと同色系としたのは、支持層18bの織目の隙間や端部の変形等の外観不具合を第1の樹脂層18a側から見て目立たなくするためである。
【0035】
第2のバンド12は、図4(A)及び図4(B)に示すように、上層、中間層及び下層の3層構造となっている。図4(A)は第2のバンド12の長手方向に沿った断面図、図4(B)は第2のバンド12の短手方向に沿った断面図である。
【0036】
上層は透明材料もしくは半透明材料からなる第1の樹脂層12aである。中間層はカーボン繊維束の織物からなる支持層12bである。下層は支持層12bと同色系の第2の樹脂層12cである。この第2の樹脂層12cは例えばウレタン系樹脂によって構成されている。また、この第2の樹脂層12cは、第1の樹脂層12a側から見て、支持層12bよりも一回り大きくなっている。なお、第2のバンド12においては、支持層12bのカーボン繊維束が剥き出しとならないように最外形及びバンド長さ調整穴20の内周は樹脂層(第1の樹脂層12aまたは第2の樹脂層12c)となるように工夫されている。
【0037】
ここで、上層を透明材料若しくは半透明材料としたのは、前述の場合と同様、支持層12bを外観として見せるためである。また、上層を半透明材料としたのは、前述の場合と同様、支持層12bを外観として見せるとともに、表面すり傷等の外観不具合を目立たなくするためである。半透明材料とは、前述の場合と同様の意味である。またここで、中間層を、前述の場合と同様、アルミ合金やニッケル合金等の金属粒子を蒸着、スパッタリングさせて、表面に金属を付着させた織物又は編み物からなるバンド形状の支持層とし、上層を半透明材料とした組み合わせとすれば、中間層は同一の支持層でも、上層の半透明材料の加色や透明度を変えることで、見た目の異なる多様なデザインのバンドとすることができる。
また、下層を支持層12bと同色系としたのは、支持層12bの織目の隙間や端部の変形等の外観不具合を第1の樹脂層12a側から見て目立たなくするためである。
【0038】
また、第2のバンド12においては、被取付部19のばね棒穴19aを取り囲むように支持層12bが配置されている。すなわち、支持層12bの長手方向一端部はループとなっている。このようにしたのは、被取付部19の強度を向上させるためである。
【0039】
このように、この実施の形態によれば、第1及び第2の各樹脂層の間にカーボン繊維束の織物又は編み物の支持層を入れたので、バンド本体の、いわゆる切れまたは捩れによる剥離の発生を未然に防止することができる。
【0040】
また、バンド本体の長手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向を予め定められた傾斜角度で傾斜するようにしたので、第1及び第2の各樹脂層とともにカーボン繊維束がバンドの伸びに追従し、長手方向に伸びやすくなるため、前記各樹脂層とカーボン繊維束からなる当該支持層との間に剥離が起きない。よって、長手方向の引っ張りや捩れに対してバンドの強度を大幅に向上させることができる。このため、バンドの使用中における、いわゆる捩れによる第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、カーボン繊維束からなる当該支持層との剥離を未然に防止することができる。
傾斜させない場合、例えば、バンドの長手方向とカーボン繊維束の伸長方向とが平行で傾斜角度が0度またはそれに近似した角度の場合、バンド本体を長手方向に伸ばす力に対して、第1及び第2の各樹脂層は伸びに追従するものの、カーボン繊維束がバンドの伸びに追従しないため、前記各樹脂層とカーボン繊維束からなる当該支持層との間に剥離が起きてしまう。よって、長手方向の引っ張りや捩れに対してバンドの強度を大幅に向上させることができない。
【0041】
また、バンド本体の長手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向を予め定められた傾斜角度で傾斜するようにしたので、成型の際に、バンドの幅方向中央に長手方向に沿って、いわゆる、筋(すじ)ができるのを未然に防止することができ、バンドの、いわゆる切れが発生することを未然に防止するとともに、バンドとしての外観性を向上させることができる。
【0042】
また、上層を透明系の第1の樹脂層としているので、デザインとしてカーボン繊維束の支持層の色やつやなどの状態を確実に使用者に見せることができる。また、上層を半透明材料の第1の樹脂層とした場合には、デザインとしてカーボン繊維束の支持層の色やつやなどの状態を使用者に見せることができるとともに、表面すり傷等の外観不具合を目立たなくすることができる。半透明材料とは、前述の場合と同様の意味である。
またここで、中間層を、前述の場合と同様、アルミ合金やニッケル合金等の金属粒子を蒸着、スパッタリングさせて、表面に金属を付着させた織物又は編み物からなるバンド形状の支持層とし、上層を半透明材料とした組み合わせとすれば、中間層は同一の支持層でも、上層の半透明材料の加色や透明度を変えることで、見た目の異なる多様なデザインのバンドとすることができる。
すなわち、図2(C)に示すように、第1のバンド本体11を構成している中間層を、カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の繊維層11b1と、この繊維層11b1の表面に形成されたアルミ合金、ニッケル合金等の金属粒子からなる金属層11b2とからなるバンド形状の支持層11bとで形成してもよい。なお、この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層11aと、支持層
11bの裏面に密着して設けられた第2の樹脂層11cとを備えるようにする。
また、下層を支持層の色(例えば、黒色)と同色系とした場合には、支持層の縁12b1のゆがみ、変形、織目のばらつきなどが多少あったとしても、その不具合が目立たなくなり、量産性に優れたものとなる。
【0043】
また、ばね棒が挿入されるばね棒穴が支持層によって取り囲まれているため、ばね棒穴から、バンド本体が、いわゆる切れるという事態を未然に防止することができる。
【0044】
続いて、時計用バンド100の製造方法の一例を説明する。本実施形態の時計用バンド100の製造方法は、図5に示すように、支持層取出工程(ステップS1)と、支持層変形工程(ステップS2)と、第1の樹脂成型工程(ステップS3)と、第2の樹脂成型工程(ステップS4)とを含んでいる。以下、この順で説明する。
【0045】
(バンド形状の支持層取出工程)
バンド形状の持層取出工程(ステップS1)は、用意された大判シートからバンド用の支持層を複数個取り出す工程である。図6には大判シートの一部が具体的に示されている。図6(A)は平面図、図6(B)はその部分拡大図である。また、図7には第2のバンド12の取出工程の様子が具体的に示されている。
【0046】
まず、図6(A)に示すように、大判シート200を用意する。大判シート200は、カーボン繊維束の伸長方向が互いに直交するカーボン繊維束の編物または織物である。この織物又は編み物は、図6(B)に示すように、カーボン繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成されている。繊維束は、1本の直径が例えば7μmのカーボン繊維を
例えば1000本(1K)束ねて形成されている。
なお、織物又は編み物の素材は、この実施の態様のようなカーボン繊維ではなく、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維であっても良い。また、この織物又は編み物は、これらの繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成しても良い。
大判シート200は個片のバンド用支持層を複数個取りできる大きさとなっている。ここで、支持層を複数個取りできるとは、本実施形態の場合、第1のバンド11または第2のバンド12のいずれか一方に用いられる個片の支持層を複数個取りできる場合と、第1のバンド11及び第2のバンド12の双方に用いられる個片の支持層を混在させて複数個取りできる場合とを含む。複数個取りとは多数個取りを含む概念である。
【0047】
大判シート200のカーボン繊維束の編物または織物には、上層の第1の樹脂層(第1の
樹脂層11a,第1の樹脂層12a,第1の樹脂層18a)及び、下層の第2の樹脂層(
第2の樹脂層11c,第2の樹脂層12c,第2の樹脂層18c)との材料との親和性を確保するために、前記上層及び前記下層の樹脂層と同系の樹脂を繊維束に含浸させてある。若しくは前記上層及び前記下層の樹脂層と同系の樹脂膜を当該大判シート200の表裏面のどちらか一面もしくは両面に圧着させてある。若しくは前記上層及び前記下層の樹脂層と同系の樹脂を繊維束に含浸させ、且つ、同系の樹脂膜を当該大判シート200の表裏面のどちらか一面もしくは両面に圧着させてある。
【0048】
このような大判シート200から図7に示すように第2のバンド12の支持層12bをカットして多数個取りする。ここでは、大判シート200のカーボン繊維束の伸長方向(互いに直交する縦のカーボン繊維束201と横のカーボン繊維束202とのカーボン繊維束の伸長方向)に対して支持層の長手方向Hが予め定められている45度の傾斜角度となるようにカットして多数個取りしている。多数個取りは例えばプレスでの打ち抜きによって行う。バンド長さ調整穴20の打ち抜きは、この支持層12bの多数個取りと同時に、または異なった時点で、例えば、プレスによって行う。
【0049】
図8には支持層取出工程で取り出された支持層12bの個片の一例が示されている。同様に、第1のバンド11の支持層11bや、遊環18の支持層18bの個片を多数個取りする。なお、可能であれば、支持層11b,12bを切り出した大判シート200に余裕があれば、そこから遊環用支持層18bをカットして取り出すことが好ましい。
【0050】
(バンド形状の支持層変形工程)
次に、バンド形状の支持層変形工程について説明する。このバンド用の支持層変形工程は、図9及び図10に示すように、前述した支持層取出工程において大判シートから複数個取り出された支持層11b,12bに変形工程を施す工程である。この支持層11b,12bの変形工程にはループ形成工程が含まれる。また、支持層11b,12bには必要に応じて波形形成工程が施される。
【0051】
図9及び図10にはこのバンド用の支持層変形工程によって得られた第2のバンド12の支持層12bの具体例が示されている。ここで図9の支持層12bは波形形成後のものであり、図10の支持層12bは波形形成後にループ形成工程を施した支持層12bである。波形形成を行った部分Aが図9及び図10に示され、ループ形成を行った部分Bが図10に示されている。なお、ループ形成を行った後にはその形が崩れないようにバンド用支持層12bの重なり部分を圧接着しておくことが好ましい。
【0052】
同様にして、第1のバンド11の支持層12bの波形形成及びループ形成を行う。ループ形成を行った後にはその形が崩れないように支持層12bの重なり部分を圧接着することが好ましい。また、遊環18用の支持層18bには遊環18の形とするためにループ形成を行う。ここでもループ形成を行った後にはその形が崩れないように支持層の重なり部分を圧接着することが好ましい。
【0053】
(第1の樹脂成型工程及び第2の樹脂成型工程・・・インサート成型)
図11から図13は第2のバンド12の第1の樹脂成型工程及び第2の樹脂成型工程の具体例を示すが、この二つの工程のうち、第1の樹脂成型工程は、図11および図12に示すように、上型である固定側金型300と下型である可動側金型301とを用いて、この第2のバンド12を構成するための支持層12bの一面側に、当該支持層12bと同色系の第2の樹脂層12cを設ける工程である。
【0054】
また、第2の樹脂成型工程は、図12に示すように、下型である可動側金型301と別に用意した他の上型である固定側金型303とを用いて支持層12b,12bの他面側に透明系もしくは半透明系の樹脂層12aを設ける工程である。この第1の樹脂成型工程及び第2の樹脂成型工程の順序は逆であってもよい。
【0055】
図11から図13は、この第2のバンド12の第1の樹脂成型工程及び第2の樹脂成型工程の具体例を示し、特に、バンド長さ調整穴20の部分の成型の仕方を示している。
【0056】
次に、第1の樹脂成型工程を説明する。図11に示すように、上型である固定側金型300の凹部300a内にバンド用の支持層12bを設置し、支持層12bにおけるバンド長さ調整穴20に対応する位置に、バンド長さ調整穴20形成のため、可動側金型301側の突部301aと固定側金型300の突起300bとを互いに突き合わせて配置させる。そして、固定側金型300と可動側金型301とを型締めし、固定側金型300と可動側金型301とによって構成された多数のキャビティ302、302内に、溶融した熱可塑性樹脂、例えばポリウレタン樹脂を充填する。これによって支持層12bの下面に第2の樹脂層12cが設けられ、支持層12bは、固定側金型300から離れて第2の樹脂層12cに接着する。その後、第2の樹脂層12cを硬化させる。
【0057】
次に、第2の樹脂成型工程を説明する。図12に示すように、可動側金型301側に、第2の樹脂層12cが設けられた支持層12bを保持させたまま、可動側金型301を固定側金型300から引き離し、別の他の上型である固定側金型303に接合する。この固定側金型303は、支持層12bにおけるバンド長さ調整穴20に対応する穴に対応する位置に、可動側金型301側の突部301aと嵌合する突起303aを備えている。これら可動側金型301と別な他の固定側金型303とを型締めする。
【0058】
次に、固定側金型303と可動側金型301とによって構成された多数のキャビティ304内に、第1の樹脂層12aを形成するために溶融した熱可塑性樹脂、例えばポリウレタン樹脂を充填する。これによってバンド用支持層12bの上面に第1の樹脂層12aが設けられ、支持層12bは、この第1の樹脂層12aにも接着する。その後、第1の樹脂層12を硬化させる。この第1の成型工程及び第2の成型工程によって得られた第2のバンド12の一例が図13に示されている。同様にして、第1のバンド11及び遊環18の成型も行う。この場合、遊環18の成型に当たっては、金型内に、キャビティを画成する可動中子である中駒JIGが必要となる。この中駒JIGは、遊環18の成型のあとに当該遊環18から引き抜かれる。
【0059】
ところで、第1の成型工程及び第2の成型工程の際には、図14に示すように、樹脂の充填方向(X)は支持層12bの長手方向の一端側(図14中の左)から、長手方向の他端側(図14中の右)に向かう方向であるのが一般である。このとき、充填された樹脂は、固定側金型300の突起300bまたは固定側金型303の突起303aのうちの、樹脂が充填される始める突起300a、300bの前方外周面に当たって左右2つに分かれ、突起外周面に沿って流れ込んだあとに、突起300bまたは303aののうちの、樹脂が充填され終わる後方外周面で合流し、次の突起300bまたは303aの前方外周面に当たって左右2つに分かれ、突起外周面に沿って流れ込んだあとに、突起300bまたは303aの後方外周面で合流し、このようなことを繰り返すことになる。
【0060】
この場合、支持層12bの長手方向及び短手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向が平行又は直交であって傾斜していないと、すなわち、支持層12bの長手方向及び短手方向がカーボン繊維束の伸長方向と同じ又は直交していると、溶融樹脂が回り込んだ後に再び合流して発生するウエルドライン(樹脂の流れ道。樹脂強度が弱い部分)と、前記カーボン繊維束の伸長方向の、隣り合う繊維束と繊維束との織目の隙間(繊維が無い空隙部分)が直線状に重なることがある。この結果、支持層12bにおいて、隣接のバンド長さ調整穴20の間を結ぶ線上に、非常に強度が弱く、バンドの使用中に切れやすい、いわゆる筋(すじ)が形成されてしまう。
【0061】
しかし、支持層12bの長手方向及び短手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向が予め定められている傾斜角度(例えば、45度)で傾斜しているので、溶融樹脂が回り込んだ後に再び合流して発生するウエルドライン(樹脂の流れ道。樹脂強度が弱い部分)ができても、当該ウエルドライン下には、強度の強い繊維束が必ず存在するため、このようないわゆる筋が形成されないために、バンド長さ調整穴20の部分から支持層12bの長手方向に沿って、バンド使用中における、いわゆる切れが発生することを未然に防止することができる。
【0062】
この実施の形態に係るバンドの製造方法によれば、カーボン繊維束の伸長方向が互いに直交するように編まれたカーボン繊維束で構成された大判シートを用意し、この用意された大判シートから、当該大判シートのカーボン繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように複数個のバンド用の支持層をカットして同時に取り出すことができる。このために、カーボン繊維束の伸長方向が予め定められている傾斜角度で傾斜する複数個の支持層を迅速かつ容易に製造することができる。
【0063】
この実施の形態に係るバンドの製造方法によれば、そればかりでなく、その後、金型を用いて支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設ける一方で、金型を用いて支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けることができる。このために、美的な外観形状をし、かつ、高級感のあるバンドを製造することができる。
【0064】
以上のように、この実施の形態に係るバンドは、長手方向に複数のバンド長さ調整穴(図1のバンド長さ調整穴20)が形成されたバンド本体(図1のバンド本体10)を備えているバンドにおいて、前記バンド本体は、カーボン繊維束の織物または編み物からなる支持層(図2の支持層11b,図4の支持層12b)と、この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層(図2の第1の樹脂層11a,図4の第1の樹脂層12a)と、前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層(図2の第2の樹脂層11c,図4の第2の樹脂層12c)とを備え、前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されている(図7)ことを特徴とする。
この実施の形態に係るバンドは、前記予め定められた傾斜角度は、前記バンドの長手方向及び短手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向が15度から75度、または45度の傾斜角度であることを特徴とする。
【0065】
この実施の形態に係るバンドで、前記支持層は、ばね棒穴(図1のばね棒穴13a,15a,19a)を有し、当該ばね棒穴に対応する部分に当該ばね棒穴を取り囲むループが形成され、かつ、当該バンド本体の最外形よりも一回り小さく形成されており、前記支持層の表面には透明系もしくは半透明系の第1の樹脂層(図2の第1の樹脂層11a,図4の第1の樹脂層12a)が密着して設けられ、前記支持層の裏面には当該支持層と同色系の第2の樹脂層(図2の第2の樹脂層11c,図4の第2の樹脂層12c)が設けられ、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層によって前記バンド本体の最外形が形成されていることを特徴とする。
【0066】
この実施の形態に係る腕時計は、バンド本体と、このバンド本体に設けられた時計本体ケースとを備えており、前記バンド本体は、カーボン繊維束の織物又は編み物からなる支持層(図2の支持層11b,図4の支持層12b)と、この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層(図2の第1の樹脂層11a,図4の第1の樹脂層12a)と、前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層(図2の第2の樹脂層11c,図4の第2の樹脂層12c)とを備え、前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してカーボン繊維束の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されている(図7)ことを特徴とする。
【0067】
この実施の形態に係るバンドの製造方法は、カーボン繊維束の伸長方向が互いに直交するように編まれた大判シート(図6の大判シート200)を用意し、この用意された大判シートから、当該大判シートのカーボン繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように複数個のバンド用支持層(図7の支持層12b)をカットして取り出す支持層取出工程(図5のステップS1;図6,図7、図8)と、金型を用いて前記支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設けるための第1の成型工程(図5のステップS3;図11)と、金型を用いて前記支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けるための第2の成型工程(図5のステップS4;図12)とを備えたことを特徴とする。
【0068】
この実施の形態に係るバンドの製造方法で、前記支持層取出工程は、前記大判シートのカーボン繊維束の伸長方向に対して、前記支持層の伸長方向が予め定められている傾斜角度として45度傾斜するように当該大判シートから当該支持層をカットして取り出す工程を含むことを特徴とする。
また、この実施の形態に係るバンドの製造方法で、前記大判シートは、(1)前記カーボン繊維束に前記第1の樹脂層及び第2の樹脂層と同じ樹脂を含浸させておく、(2)若しくは同じ樹脂系の樹脂膜を当該大判シートの表裏面のどちらか一面もしくは両面に圧着させておく、(3)若しくは前記第1及び第2の樹脂層と同じ樹脂を含浸させ、且つ、同じ樹脂系の樹脂膜を当該大判シートの表裏面のどちらか一面または両面に圧着させておくことを特徴とする。
【0069】
なお、この実施の態様の場合、大判シート200は、矩形の形をしており、そのカーボン繊維束の伸長方向は、その矩形の縦横の辺に平行である。即ち、縦横のカーボン繊維束は、直交している。そして、大判シート200のカーボン繊維束の伸長方向に対して支持層の伸長方向が45度の傾斜角度となるように支持層をカットして多数個取り出している。
【0070】
これに対して、大判シート200が矩形状であって、その直交するカーボン繊維束の伸長方向が矩形状の大判シート200の縦辺又は横辺に対して45度で交差する場合、その矩形の縦辺または横辺に対して支持層の伸長方向が平行となるように支持層をカットして多数個取り出してもよい。
【0071】
また、この実施の態様の場合、支持層の長手方向がカーボン繊維束の伸長方向に対して45度の傾斜角度となるように形成しているが、43度、30度など、他の傾斜角度で形成されていてもよい。好ましくは、15度から75度の傾斜角度が望ましい。
15度より小さい傾斜角度及び75度より大きい傾斜角度の場合、バンド本体を長手方向に伸ばす力に対して、第1及び第2の各樹脂層は伸びに追従するものの、カーボン繊維
束がバンドの伸びに追従しないため、前記各樹脂層とカーボン繊維束からなる当該支持層との間に剥離が起きてしまう。よって、長手方向の引っ張りや捩れに対してバンドの強度を大幅に向上させることができない。また、15度より小さい傾斜角度及び75度より大きい傾斜角度の場合、溶融樹脂が回り込んだ後に再び合流して発生するウエルドライン(樹脂の流れ道。樹脂強度が弱い部分)と、前記カーボン繊維束の伸長方向の、隣り合う繊維束と繊維束との織目の隙間(繊維が無い空隙部分)が直線状に重なることがある。この結果、支持層12bにおいて、隣接のバンド長さ調整穴20の間を結ぶ線上に、非常に強度が弱く、バンドの使用中に切れやすい、いわゆる筋(すじ)が形成されてしまう。
【0072】
また、この実施の態様の場合、支持層の構成素材として、カーボン繊維束の織物または編み物を用いているが、これに限定されず、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、及びボロン繊維の繊維群から選んだ1種類または2種類以上の繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の表面に、アルミ合金やニッケル合金等の金属粒子を蒸着、スパッタリングさせて、表面に金属を付着させた織物又は編み物を用いるようにしてもよい。
さらに、この実施の態様の場合、この発明を時計用のバンドに適用した場合について説明しているが、これに限定されず、洋装用のベルト、腕バンドなどの各種のバンドに適用可能である。
【0073】
種々の変形例は、本発明の広範な趣旨及び範囲から逸脱せずになし得よう。
上記実施の形態及び変形例は、本発明の例示を意図するものであり、本発明の制限を意図するものではない。本発明の範囲は、上記の実施例及び変形例よりもむしろ添付の請求項によりしめされ、本発明の請求項の範囲及びその均等物の意味範囲でなされた種々の変更は本発明の範囲に入るものとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0074】
100 腕時計
1 本体ケース
2,3 バンド取付部
10 時計用バンド
11 第1のバンド
11a 第1の樹脂層
11b バンド用カーボンシート
11c 第2の樹脂層
12 第2のバンド
12a 第1の樹脂層
12b バンド用カーボンシート
12c 第2の樹脂層
13a,15a,19a ばね棒穴
18 遊環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に複数のバンド長さ調整穴が形成されたバンド本体を備えているバンドにおいて、
前記バンド本体は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなるバンド形状の支持層と、
この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層と、
前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層とを備え、
前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してその繊維の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項2】
長手方向に複数のバンド長さ調整穴が形成されたバンド本体を備えているバンドにおいて、
前記バンド本体は、
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の繊維層と、この繊維層の表面に形成されたアルミ合金、ニッケル合金等の金属粒子からなる金属層とからなるバンド形状の支持層と、
この支持層の表面に密着して設けられた第1の樹脂層と、
前記支持層の裏面に密着して設けられた第2の樹脂層とを備え、
前記支持層は、前記バンド本体の長手方向及び短手方向に対してその繊維の伸長方向が予め定められた傾斜角度で傾斜するよう形成されていることを特徴とするバンド。
【請求項3】
前記予め定められた傾斜角度は、15度から75度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンド。
【請求項4】
前記予め定められた傾斜角度は、45度であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバンド。
【請求項5】
前記支持層は、被取付本体に接続されるばね棒穴を形成するループをその端部に有し、この端部の幅は、前記バンド本体の幅よりも幾分小さく、前記第1の樹脂層は、透明もしくは半透明であり、前記第2の樹脂層は、当該支持層と同色系であり、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層によって前記バンド本体の外周が形成されていることを特徴とする請求項1から4いずれか一項に記載のバンド。
【請求項6】
請求項1から5いずれか一項に記載のバンドと、
このバンドに設けられた本体ケースと、
を備えていることを特徴とする腕時計。
【請求項7】
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物からなる支持層を備えている大判シートから、当該大判シートの繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように、複数個のバンド形状の支持層をカットして取り出すステップと、
金型を用いて前記大判シートから取り出された複数個の各支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設けるステップと、
金型を用いて前記複数個の各支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けるステップと、
を備えることを特徴とするバンドの製造方法。
【請求項8】
カーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維及びボロン繊維の繊維群の中から選んだ1種類又は2種類以上の繊維からなる繊維束を当該繊維束の伸長方向が互いに直交するように織り込み又は編み込んで形成された織物又は編み物の繊維層と、この繊維層の表面に形成されたアルミ合金、ニッケル合金等の金属粒子からなる金属層とからなる支持層を備えている大判シートから、当該大判シートの繊維束の伸長方向に対して予め定められている傾斜角度で傾斜するように、複数個のバンド形状の支持層をカットして取り出すステップと、
金型を用いて前記大判シートから取り出された複数個の各支持層の一面側に第1の樹脂層を密着して設けるステップと、
金型を用いて前記複数個の各支持層の他面側に第2の樹脂層を密着して設けるステップと、
を備えることを特徴とするバンドの製造方法。
【請求項9】
前記予め定められている傾斜角度は、15度から75度であることを特徴とする請求項7又は8に記載のバンドの製造方法。
【請求項10】
前記予め定められている傾斜角度は、45度であることを特徴とする請求項7又は8に記載のバンドの製造方法。
【請求項11】
前記大判シートは、その繊維束に前記第2の樹脂層と同じ樹脂を含浸させておくことを特徴とする請求項7から10いずれか一項に記載のバンドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−135659(P2012−135659A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93661(P2012−93661)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【分割の表示】特願2010−181370(P2010−181370)の分割
【原出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(302019599)ミズノ テクニクス株式会社 (47)