説明

バンドおよび腕時計

【課題】 湿気を吸収して外部に効率良く放出することができる。
【解決手段】 複数本の糸単体を束ねた第1糸材14を編んでバンド本体2を構成した時計バンド1において、糸単体の芯部が吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とで構成され、糸単体の外周部が熱伝導性を有する合成繊維で構成されている。従って、腕に装着して使用する際、腕の汗を糸単体のポリマー繊維によって十分に吸収してバンド本体2の表面から外部に効率良く放出することができ、これにより腕が蒸れないようにすることができる。また、吸収した湿気を放出するときの気化熱を糸単体の熱伝導性に優れた合成繊維によって腕に伝えて冷たい感触を与えることができ、これによってもバンド本体2を腕に装着して快適に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計バンドなどのバンドおよび腕時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計を腕に装着するための時計バンドにおいては、腕にフィットさせ易くするために、糸材を編んでなるクロス製のバンド本体を用い、このバンド本体に腕時計を取り付けるように構成したのものがある。
【0003】
しかしながら、この種の時計バンドでは、腕時計を腕に取り付けて使用するときに、腕の汗をある程度バンド本体によって吸収することはできても、十分に汗を吸収して効率良く湿気を放出させることがでないため、湿気がバンド本体に溜ってしまい、腕が蒸れ易いという問題がある。
【0004】
また、このような時計バンドでは、汗などの湿気を吸収したバンド本体が乾く前に、再び腕に装着すると、吸収した湿気によってバンド本体の接触感が冷たく感じ、不快感を与えるという問題もある。なお、上記のような各問題は、腕時計においても、同様に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−342011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする第1の課題は、効率良く湿気を吸収して放出することができるバンドおよび腕時計を提供することにある。
また、この発明の第2の課題は、吸収した湿気によって接触感が冷たく感じ不快感を与えることがないバンドおよび腕時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
なお、各構成要素には、後述する各実施形態の項で説明される各要素に付されている図面の参照番号などを括弧と共に付す。
請求項1に記載の発明は、図1〜図9に示すように、少なくとも複数本の糸単体(17)を束ねた糸材(第1糸材14)を編んでバンド本体(2、21、26)を構成したバンドにおいて、前記糸単体は芯部(18)と外周部(19)とからなり、前記芯部は吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、前記外周部は熱伝導性を有する合成繊維からなることを特徴するバンド(時計バンド1、20、25)である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、図5および図6に示すように、前記バンド本体(21)の少なくとも表面の一部に、毛細管現象により湿気を前記バンド本体の面方向に導いて前記バンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材(第4糸材22)が編み込まれていることを特徴する請求項1に記載のバンド(時計バンド20)である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、図7〜図9に示すように、前記バンド本体(26)に腕時計(3)が取り付けられ、この腕時計が取り付けられる個所(26b)の前記バンド本体が、毛細管現象により湿気を前記バンド本体の面方向に導いて前記バンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材(第4糸材22)のみで構成されていることを特徴する請求項1に記載のバンド(時計バンド25)である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、図10〜図12に示すように、少なくとも複数本の糸単体(33)を束ねた糸材(第1糸材32)を編んでバンド本体(31)を構成したバンドにおいて、前記糸単体は芯部(34)と外周部(35)とからなり、前記芯部は光の吸収により加温性を有する合成繊維からなり、前記外周部は熱伝導性を有する合成繊維からなることを特徴するバンド(時計バンド30)である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、図10〜図12に示すように、前記バンド本体(31)に、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部(18)、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部(19)とで構成された糸単体(17)を複数本束ねた他の糸材(第3糸材16または第1糸材14)が編み込まれていることを特徴する請求項4に記載のバンド(時計バンド30)である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、図1〜図12に示すように、前記バンド本体(2、21、26、31)に有色の通常糸材(第2糸材15)が編み込まれていることを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載のバンド(時計バンド1、20、25、30)である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、図13〜図15に示すように、放湿性を有する表面側合成皮革(42)と、この表面側合成皮革の裏面側に設けられた多孔質の裏面側合成皮革(43)と、前記表面側合成皮革と前記裏面側合成皮革との間に設けられた内装材(44)とでバンド本体(41)が構成され、前記内装材が、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部(18)、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部(19)とで構成された糸単体(17)を複数本束ねた糸材(第1糸材50)によって構成されていることを特徴するバンド(時計バンド40)である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、図16〜図19に示すように、腕時計ケース(4)の上面に時計ガラス(6)が設けられ、前記腕時計ケースの下面に裏蓋(8)が設けられ、前記腕時計ケースの内部に時計モジュール(7)が設けられた腕時計において、前記腕時計ケースの下面側を覆うカバー部材(64)を備え、このカバー部材における前記裏蓋に対応する個所に開口部(67)が設けられ、この開口部に吸放湿部材(65)が設けられていることを特徴する腕時計(60)である。
【0015】
請求項9に記載の発明は、図16〜図19に示すように、前記吸放湿部材(65)が、少なくとも、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部(18)、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部(19)とで構成された糸単体(17)を複数本束ねた糸材(第1糸材14)を編んで構成されていることを特徴する請求項8に記載の腕時計(60)である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、図16〜図19に示すように、前記吸放湿部材(65)の表面に、毛細管現象により湿気を前記吸放湿部材の面方向に導いて前記吸放湿部材の側面側から拡散放出する他の糸材(第4糸材22)が編み込まれていることを特徴する請求項8または9に記載の腕時計(60)である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも複数本の糸単体を束ねた糸材を編んでバンド本体を構成したバンドにおいて、糸単体の芯部が吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、糸単体の外周部が熱伝導性を有する合成繊維からなるので、糸単体の芯部を構成するポリマー繊維によって湿気を吸収すると共に、この吸収した湿気をバンド本体の外部に放出することができる。また、このときには、ポリマー繊維が吸収した湿気を放出するときの気化熱を、糸単体の芯部とその外周部との熱伝導性を有するナイロン繊維などの合成繊維によって、バンド本体のほぼ全域に伝えることができる。
【0018】
このため、例えばバンド本体を腕に装着して使用する際、腕の汗を糸単体のポリマー繊維によって十分に吸収してバンド本体の表面から外部に効率良く放出することができ、これにより腕が蒸れないようにすることができる。また、糸単体のポリマー繊維が吸収した湿気をバンド本体から外部に放出するときの気化熱を、熱伝導性を有するナイロン繊維などの合成繊維によって腕に伝えて冷たい感触を与えることができるので、快適にバンド本体を腕に装着して使用することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、バンド本体の少なくとも表面の一部に、毛細管現象により湿気をバンド本体の面方向に導いてバンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材が編み込まれていることにより、バンド本体の表裏両面の一方、例えば裏面側の湿気を上記と同様に糸単体の芯部によって効率良く吸収してバンド本体の表裏両面の他方、例えば表面側の他の糸材に伝えることができ、この伝えられた湿気を表面側の他の糸材の毛細管現象によってバンド本体の面方向に導いてバンド本体の側面側から外部に拡散放出することができる。このため、仮にバンド本体の表面にバンド本体の連結用の止め部材や腕時計などの部材が配置されて、バンド本体の表面からの湿気の放出が妨げられても、バンド本体内に湿気が溜ることがなく、効率良く湿気を外部側方に拡散放出することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、バンド本体に腕時計が取り付けられ、この腕時計が取り付けられる個所のバンド本体が、毛細管現象により湿気をバンド本体の面方向に導いてバンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材のみで構成されていることにより、腕時計をバンド本体によって腕に取り付けて使用する際、バンド本体の表面に腕時計が配置されて、バンド本体の表面からの湿気の放出が妨げられても、バンド本体の裏面側の湿気を他の糸材によって効率良く吸収すると共に、この吸収した湿気を毛細管現象によってバンド本体の面方向に導いてバンド本体の側面側から外部に拡散放出することができる。このため、請求項2に記載の発明よりも、吸収した湿気を、より一層効率良く、バンド本体の側方に放出することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、少なくとも複数本の糸単体を束ねた糸材を編んでバンド本体を構成したバンドにおいて、糸単体の芯部が光の吸収により加温性を有する合成繊維からなり、糸単体の外周部が熱伝導性を有する合成繊維からなるので、糸単体の芯部を構成する合成繊維によって光を吸収して加温することができると共に、糸単体の外周部を構成する合成繊維によって加温された熱をバンド本体のほぼ全域に伝えることができる。このため、例えばバンド本体を腕などに装着するときに、バンド本体が湿気を含んでいても、バンド本体に光が当たることにより、バンド本体が加温されるので、バンド本体が冷たい感触を与えることがなく、温かい感触を与えることができ、これにより不快感を与えずに、快適に腕に装着して使用することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明のバンド本体に、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体を複数本束ねた他の糸材が編み込まれていることにより、請求項4に記載の発明と同様の作用効果があるほか、特に吸放湿性を有する糸単体によって湿気を吸収して外部に放出することができ、これによりバンド本体内に湿気が溜らないようにすることができるので、より一層、快適に使用することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、バンド本体に有色の通常糸材が編み込まれていることにより、請求項1〜5に記載の発明と同様の作用効果があるほか、特に有色の通常糸材によって色彩性および装飾性を高めることができ、これにより外観的にもデザイン的にも優れたものを得ることができると共に、商品価値をも高めることができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、放湿性を有する表面側合成皮革と、この表面側合成皮革の裏面側に設けられた多孔質の裏面側合成皮革と、表面側合成皮革と裏面側合成皮革との間に設けられた内装材とでバンド本体を構成したので、通常の合成皮革と同じ外観で且つ同じ感触のものを得ることができるほか、特に裏面側合成皮革が多孔質であるから、裏面側の湿気をバンド本体の内部に取り込むことができる。
【0025】
このときには、内装材が、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部によって構成された糸単体を複数本束ねた糸材で構成されていることにより、裏面側合成皮革でバンド本体内に吸収した湿気を糸材の芯部によって効率良く吸収して表面側合成皮革に放出することができ、この放出された湿気を表面側合成皮革によってバンド本体の外部に放出することができる。このため、バンド本体内に湿気が溜ることがないので、例えばバンド本体を腕に装着して使用するときに、バンド本体によって腕が蒸れることがなく、快適に使用することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、腕時計ケースの上面に時計ガラスが設けられ、この腕時計ケースの内部に時計モジュールが設けられ、且つこの腕時計ケースの下面に裏蓋が設けられた腕時計において、この腕時計ケースの下面側を覆うカバー部材を備え、このカバー部材の裏蓋に対応する個所に開口部が設けられ、この開口部に吸放湿部材が設けられているので、腕時計を腕に装着して使用する際、腕時計ケースの下面側を覆うカバー部材の開口部に設けられた吸放湿部材によって、汗などの湿気を吸収することができ、この吸収した湿気を腕時計ケースの裏蓋とカバー部材との間の隙間から外部に放出することができるので、腕時計ケースによって腕が蒸れることがなく、快適に使用することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、吸放湿部材が、少なくとも、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体を複数本束ねた糸材によって構成されていることにより、糸単体のポリマー繊維によって湿気を吸収してバンド本体の外部に放出するので、腕時計を腕に装着して使用する際、腕の汗を糸単体のポリマー繊維によって十分に吸収することができ、この吸収した湿気を効率良くカバー部材と裏蓋との間の隙間から外部に放出することができる。この場合にも、吸収した湿気を放出するときの気化熱を、糸単体の合成繊維によって腕に伝えて冷たい感触を与えることができるので、快適に腕に装着して使用することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明によれば、吸放湿部材の表面に、毛細管現象により湿気を吸放湿部材の面方向に導いて吸放湿部材の側面側から拡散放出する他の糸材が編み込まれていることにより、吸放湿部材の裏面側の湿気をポリマー繊維と合成繊維とからなる糸材の芯部によって効率良く吸収して吸放湿部材の表面側の他の糸材に放出し、この放出された湿気を表面側の他の糸材の毛細管現象によって吸放湿部材の面方向に導いてカバー部材と裏蓋との間の隙間から外部に放出することができる。このため、請求項9に記載の発明よりも、吸収した湿気を効率良く外部に放出することができるので、より一層、快適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明を時計バンドに適用した正面図である。(実施形態1)
【図2】図1の一部を破断した側面図である。
【図3】図2のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3の糸単体を示した要部の拡大断面図である。
【図5】この発明を時計バンドに適用した一部破断した側面図である。(実施形態2)
【図6】図5のB−B矢視における拡大断面図である。
【図7】この発明を時計バンドに適用した一部破断した側面図である。(実施形態3)
【図8】図7のC−C矢視における拡大断面図である。
【図9】図7のD−D矢視における拡大断面図である。
【図10】この発明を時計バンドに適用した一部破断した側面図である。(実施形態4)
【図11】図10のE−E矢視における拡大断面図である。
【図12】図11の糸単体を示した要部の拡大断面図である。
【図13】この発明を時計バンドに適用した正面図である。(実施形態5)
【図14】図13の一部を破断した側面図である。
【図15】図14のF−F矢視における拡大断面図である。
【図16】この発明を腕時計に適用した正面図である。(実施形態6)
【図17】図16の腕時計を破断した側面図である。
【図18】図17のカバー部材を上下反転して示した斜視図である。
【図19】図18のG−G矢視における拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
以下、図1〜図4を参照して、この発明を時計バンドに適用した実施形態1について説明する。
図1はこの発明の時計バンドに腕時計を取り付けた状態を示した正面図、図2はその一部を破断した側面図、図3は図2のA−A矢視における拡大断面図、図4は図3の糸単体の拡大断面図である。
この時計バンド1は、図1および図2に示すように、全体が帯状のバンド本体2を備えており、腕時計3は腕時計ケース4を備えている。
【0031】
この場合、腕時計ケース4の上部外周には、図1および図2に示すように、ベゼル4aが設けられており、この腕時計ケース4の上面中央部には、時計ガラス6が取り付けられている。また、この腕時計ケース4の内部には、図2に示すように、時計モジュール7が収納されており、この腕時計ケース4の下面には、裏蓋8が取り付けられている。さらに、この腕時計ケース4の3時側、9時側、および6時側における各側面には、図1および図2に示すように、押釦スイッチ9が設けられている。
【0032】
また、時計バンド1は、図2に示すように、バンド本体2が腕時計ケース4における12時側と6時側とにそれぞれ設けられたバンド取付部5の取付孔5aに連続して挿入されることにより、腕時計ケース4がバンド本体2に取り付けられるように構成されている。この時計バンド1のバンド本体2における12時側の端部(図1および図2では上端部)には、尾錠10が取り付けられている。この尾錠10は、図1および図2に示すように、四角い枠状に形成され、この枠状内に2本の連結棒10a、10bが架け渡され、これにより全体がほぼ目字状に形成されている。
【0033】
この尾錠10は、図2に示すように、12時側のバンド本体2の端部が尾錠10の手前端部(図2では下端部)と手前側の連結棒10aとの間に下側から挿入され、この挿入された時計バンド1の端部が尾錠10の先端部(図2では上端部)と先端側の連結棒10bとの間に上側から挿入されて折り返され、この折り返された時計バンド1の端部が尾錠10の2本の連結棒10a、10bの間に下側から挿入され、更にこの挿入された時計バンド1の端部が尾錠10の手前端部と手前側の連結棒10aとの間に上側から挿入されることにより、12時側のバンド本体2の端部に取り付けられるように構成されている。
【0034】
また、このバンド本体2の6時側の端部には、第1面状ファスナ11と第2面状ファスナ12とがバンド本体2の長手方向に沿って設けられていると共に、遊環13がスライド可能に取り付けられている。この場合、第1、第2面状ファスナ11、12は、一方が雄型に形成され、他方が雌型に形成され、バンド本体2の6時側の端部を尾錠10内に挿入させて、第1、第2面状ファスナ11、12の間で折り返し、この折り返された第1、第2面状ファスナ11、12を重ね合わせると、第1、第2面状ファスナ11、12が互いに係脱可能に係合し、これにより6時側のバンド本体2の端部が12時側のバンド本体2の尾錠10に連結されるように構成されている。
【0035】
ところで、この時計バンド1は、図3および図4に示すように、第1糸材14、有色の第2糸材15、および第3糸材16をそれぞれ編み込むことにより、帯状のバンド本体2が構成されている。第1糸材14は、複数本の糸単体17を束ねたものであり、これら糸単体17は、図4に示すように、芯部18と外周部19とからなっている。芯部18は吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、外周部19は熱伝導性を有する合成繊維からなっている。この場合、芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維としては、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。
【0036】
また、有色の第2糸材15は、色展開を図るためのものであり、着色された通常の糸からなっている。さらに、第3糸材16は、バンド本体2の表裏両面のみに編み込まれるものであり、通常の糸材であっても良いが、吸放湿性を有する構造のものであることが望ましい。すなわち、この第3糸材16は、第1糸材14と同様、複数本の糸単体17を束ねたものであり、糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、糸単体17の外周部19が熱伝導性を有する合成繊維からなる構成になっていることが望ましいが、糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維のみで構成されていても良い。この場合にも、芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維としては、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。
【0037】
このような時計バンド1では、第1糸材14、有色の第2糸材15、および第3糸材16の3種類の糸材を編んでバンド本体2が構成されていると共に、第1、第3糸材14、16がそれぞれ複数本の糸単体17を束ねてなり、これら糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維を備え、糸単体17の外周部19が熱伝導性を有する合成繊維からなるので、糸単体17の芯部18のポリマー繊維によって湿気を吸収することができると共に、この吸収した湿気をバンド本体2の外部に放出することができる。このときには、第1、第3糸材14、16が吸収した湿気を放出するときの気化熱を、第1、第3糸材14、16の熱伝導性を有する合成繊維、つまり熱伝導性に優れたナイロン繊維によってバンド本体2のほぼ全体に伝えることができる。
【0038】
このため、この時計バンド1によれば、腕時計3が取り付けられたバンド本体2を腕に装着して使用する際、腕の汗などの湿気をバンド本体2の裏面側に位置する第3糸材16のポリマー繊維が吸収し、この吸収した湿気をバンド本体2中に編み込まれた第1糸材14のポリマー繊維が吸収し、この吸収した湿気をバンド本体2の表面側に位置する第3糸材16のポリマー繊維が更に吸収してバンド本体2の表面から外部に放出するので、腕の汗を十分に吸収して効率良くバンド本体2の外部に放出することができ、これにより腕が蒸れないようにすることができる。
【0039】
また、この時計バンド1によれば、第1、第3糸材14、16が吸収した湿気の気化熱を、第1、第3糸材14、16の熱伝導性に優れたナイロン繊維によってバンド本体2のほぼ全体に伝えることができるので、この気化熱を裏面側に位置する第3糸材16の熱伝導性に優れたナイロン繊維によって腕に伝えて冷たい感触を与えることができ、これによってもバンド本体2を腕に装着して快適に使用することができる。また、この時計バンド1では、バンド本体2に有色の第2糸材15が編み込まれていることにより、バンド本体2の色彩性および装飾性を高めることができ、これにより外観的にもデザイン的にも好ましいものを得ることができると共に、商品価値をも高めることができる。
【0040】
なお、上記実施形態1では、第1糸材14、有色の第2糸材15、および第3糸材16の3種類の糸材を編んでバンド本体2を構成したが、必ずしも3種類の糸材を編んでバンド本体2を構成する必要はなく、第1糸材14のみを編んでバンド本体を構成しても良い。このような時計バンドにおいても、第1糸材14によって湿気を吸収して放出することができると共に、その気化熱を腕に伝えることができるので、実施形態1とほぼ同様の作用効果がある。
【0041】
(実施形態2)
次に、図5および図6を参照して、この発明を時計バンドに適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この時計バンド20は、第1〜第3糸材14〜16のほかに、第4糸材22を編み込んで帯状のバンド本体21が構成され、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。すなわち、この第4糸材22は、毛細管現象により湿気をバンド本体21の面方向に導いてバンド本体21の側面側から拡散放出する構造で、バンド本体21の表面(図6では上面)のみに編み込まれている。この場合には、第3糸材16はバンド本体21の裏面(図6では下面)のみに編み込まれている。
【0042】
このような時計バンド20では、実施形態1と同様の作用効果があるほか、特にバンド本体21の表面に、毛細管現象により湿気をバンド本体21の面方向に導いてバンド本体21の側面側から拡散放出する第4糸材22が編み込まれているので、腕時計3を腕に装着して使用するときに、バンド本体21の裏面側の湿気を第1、第3糸材14、16の糸単体17における芯部18のポリマー繊維によって効率良く吸収してバンド本体21の表面に編み込まれた第4糸材22に伝えることができ、この伝えられた湿気を第4糸材22の毛細管現象によってバンド本体21の面方向に導いてバンド本体21の側面側から外部に拡散放出することができる。
【0043】
このため、この時計バンド20では、バンド本体21の表面に腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられ、これら腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12によってバンド本体21の表面から湿気を放出することができなくても、バンド本体21内に湿気が溜ることがなく、効率良く湿気をバンド本体21の側面側から外部に拡散放出することができる。これにより、バンド本体21の表面に腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられていても、腕の汗などの湿気を十分に吸収して効率良くバンド本体21の外部側方に放出するので、腕が蒸れることなく、快適に使用することができる。
【0044】
(実施形態3)
次に、図7〜図9を参照して、この発明を時計バンドに適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この時計バンド25は、腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられていない個所26aのバンド本体26と、腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられている個所26bのバンド本体26とで、バンド本体26の構成が異なる構造で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構造になっている。
【0045】
すなわち、腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられない個所26aのバンド本体26は、図8に示すように、第1、第2糸材14、15を編んだ構成になっている。この第1糸材14は、実施形態1と同様、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部18、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部19とで構成された糸単体17を複数本束ねた構成になっている。この場合にも、芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維としては、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。また、第2糸材15は、実施形態1と同様、色展開を図るためのものであり、着色された通常の糸からなっている。
【0046】
一方、腕時計3および第1、第2面状ファスナ11、12のうち、少なくとも腕時計3が設けられる個所26bのバンド本体26は、図9に示すように、第4糸材22のみを編んだ構成になっている。この第4糸材22は、実施形態2と同様、毛細管現象により湿気をバンド本体26の面方向に導いてバンド本体26の側面側から拡散放出するように構成されている。
【0047】
このような時計バンド25においても、腕に装着して使用するときに、腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられていない個所26aのバンド本体26が、図8に示すように、第1、第2糸材14、15を編んだ構成になっているので、第1糸材14のポリマー繊維によって腕の汗などの湿気を吸収してバンド本体26の表面から外部に放出することができると共に、その放出される湿気の気化熱を芯部18および外周部19の熱伝導性に優れた合成繊維であるナイロン繊維によってバンド本体26のほぼ全体に伝えることができる。
【0048】
このため、この時計バンド25では、腕時計3や第1、第2面状ファスナ11、12が設けられていない個所26aのバンド本体26が、腕の汗などの湿気を十分に吸収して効率良くバンド本体26の表面から外部に放出することができるので、腕が蒸れないようにすることができると共に、吸収した湿気の気化熱を腕に伝えて冷たい感触を与えることができるので、実施形態1と同様、快適に腕に装着して使用することができる。この場合にも、バンド本体26に有色の第2糸材15が編み込まれているので、バンド本体26の色彩性および装飾性を高めることができ、これにより外観的にもデザイン的にも好ましいものを得ることができると共に、商品価値をも高めることができる。
【0049】
また、この時計バンド25では、腕時計3が取り付けられる個所26bのバンド本体26が、毛細管現象により湿気をバンド本体26の面方向に導いてバンド本体26の側面側から拡散放出する第4糸材22のみで構成されているので、腕に取り付けて使用する際、腕時計3によってバンド本体26の表面からの湿気の放出が妨げられても、腕の汗などの湿気を第4糸材22によって効率良く吸収し、この吸収した湿気を第4糸材22の毛細管現象によってバンド本体26の面方向に導いてバンド本体26の側面側から外部に拡散放出することができる。このため、バンド本体26の表面に腕時計3が配置されていても、吸収した湿気を効率良くバンド本体26の側方に放出することができるので、より一層、快適に使用することができる。
【0050】
(実施形態4)
次に、図10〜図12を参照して、この発明を時計バンドに適用した実施形態4について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この時計バンド30は、図11に示すように、バンド本体31が光の吸収によって加温性を有する第1糸材32、有色の第2糸材15、および第3糸材16を帯状に編んだ構成で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構造になっている。
【0051】
すなわち、第1糸材32は、複数本の糸単体33を束ねた構成になっており、糸単体33は、図12に示すように、芯部34と外周部35とからなっている。この糸単体33の芯部34は可視光線や赤外線などの光を吸収して熱を発生することにより加温性を有する合成繊維、例えばポリマー繊維やモノマー繊維からなっている。また、糸単体33の外周部35は熱伝導性を有する合成繊維、例えば熱伝性に優れたナイロン繊維からなっている。なお、第2糸材15は、実施形態1と同様、色展開を図るためのものであり、着色された通常の糸からなっている。
【0052】
また、第3糸材16は、実施形態1と同様、バンド本体31の表裏両面のみに編み込まれるものであり、通常の糸材であっても良いが、吸放湿性を有する構造のものであることが望ましい。すなわち、この第3糸材16は、複数本の糸単体17を束ねたものであり、糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、糸単体17の外周部19が熱伝導性を有する合成繊維からなる構成になっていることが望ましいが、糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維のみで構成されていても良い。この場合にも、芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維しては、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。
【0053】
このような時計バンド30によれば、第1、第2、第3糸材32、15、16を編んでバンド本体31を構成すると共に、第1糸材32が複数本の糸単体33を束ねてなり、この糸単体33の芯部34が光の吸収により加温性を有する合成繊維からなり、糸単体33の外周部35が熱伝導性を有する合成繊維からなるので、糸単体33の芯部34を構成する合成繊維によって光を吸収して加温することができると共に、糸単体33の外周部35および第3糸材16の合成繊維であるナイロン繊維によって加温された熱をバンド本体31のほぼ全域に伝えることができる。
【0054】
このため、バンド本体31を腕に装着して使用するときに、バンド本体31が湿気を含んでいても、バンド本体31に光が当ることにより、第1糸材32が加温され、この加温された熱が第1糸材32および第3糸材16の熱伝導性に優れた合成繊維であるナイロン繊維によってバンド本体31の表裏両面に伝わるので、バンド本体31が冷たい感触を与えず、温かい感触を与えることができ、これにより不快感を与えることがなく、快適に腕に装着して使用することができる。
【0055】
なお、上記実施形態4では、第1糸材32、有色の第2糸材15、および第3糸材16の3種類の糸材を編んでバンド本体31を構成したが、必ずしも3種類の糸材を編んでバンド本体31を構成する必要はなく、第1糸材32のみを編んでバンド本体を構成しても良い。このような時計バンドでも、光を吸収して加温することができるので、実施形態4とほぼ同様の作用効果がある。
【0056】
(実施形態5)
次に、図13〜図15を参照して、この発明を時計バンドに適用した実施形態5について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この時計バンド40は、図15に示すように、バンド本体41が表面側合成皮革42、裏面側合成皮革43、および内装材44によって構成され、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0057】
この場合、バンド本体41は、図13および図14に示すように、全体がほぼ帯状に形成されている。このバンド本体41の12時側に位置する先端部には、ほぼコ字状の尾錠45とツク棒46とが取付ピン47によって取り付けられており、この12時側のバンド本体41には、遊環48がスライド可能に取り付けられている。また、バンド本体41の6時側には、ツク棒46がそれぞれ挿入する複数の係止孔49がバンド本体41の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0058】
一方、バンド本体41の表面側合成皮革42は、図15に示すように、放湿性を有する合成樹脂からなっており、裏面側合成皮革43は、多数の細孔43aが形成された多孔質の合成樹脂からなり、表面側合成皮革42の裏面側に設けられている。内装材44は、吸放湿性を有する第1糸材50を編んだ構成で、表面側合成皮革42と裏面側合成皮革43との間の空間内に設けられている。
【0059】
第1糸材50は、実施形態1の第1糸材14と同様、複数本の糸単体17を束ねてなり、この糸単体17は、芯部18と外周部19とからなっている。この糸単体17の芯部18は吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなっており、糸単体17の外周部19は熱伝導性を有する合成繊維からなっている。この場合にも、芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維としては、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。
【0060】
このような時計バンド40によれば、放湿性を有する表面側合成皮革42と、この表面側合成皮革の裏面側に設けられた多孔質の裏面側合成皮革43と、表面側合成皮革42と裏面側合成皮革43との間の空間内に設けられた内装材44とでバンド本体41を構成したので、通常の合成皮革と同じ外観で且つ同じ感触のものを得ることができる。また、このバンド本体41は、裏面側合成皮革43が多数の細孔43aを有する多孔質であるから、バンド本体41を腕に装着して使用するときに、腕の汗などの湿気を裏面側合成皮革43の多数の細孔43aによってバンド本体41の内部に吸収することができる。
【0061】
このときには、内装材44が、実施形態1の第1糸材14と同じ構造の第1糸材50を編んだ構成で、この第1糸材50が、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部18、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体51を複数本束ねた構成であるから、裏面側合成皮革43でバンド本体41内に吸収した湿気を糸単体51の芯部18によって効率良く吸収して表面側合成皮革42に放出することができ、この放出された湿気を表面側合成皮革42によってバンド本体41の外部に放出することができる。このため、この時計バンド40においても、実施形態1と同様、腕が蒸れることなく、快適に腕に装着して使用することができる。
【0062】
(実施形態6)
次に、図16〜図19を参照して、この発明を腕時計に適用した実施形態6について説明する。この場合には、図1〜図4に示された実施形態1および図13〜図15に示された実施形態5と同一部分に同一符号を付して説明する。
この腕時計60は、図16および図17に示すように、腕時計ケース4の12時側と6時側とにそれぞれ設けられたバンド取付部5に時計バンド61のバンド本体62がそれぞれ取付ピン63で取り付けられていると共に、この腕時計ケース4の下面側にカバー部材64が設けられ、このカバー部材64に吸放湿部材65が設けられた構成になっている。
【0063】
この場合、腕時計ケース4の上部外周には、実施形態1と同様、ベゼル4aが設けられており、この腕時計ケース4の上面中央部には、図16および図17に示すように、時計ガラス6が取り付けられている。また、この腕時計ケース4の内部には、時計モジュール7が収納されており、この腕時計ケース4の下面には、裏蓋8が取り付けられている。さらに、この腕時計ケース4の3時側、9時側、および6時側における側面には、押釦スイッチ9が設けられている。
【0064】
また、腕時計ケース4の12時側に位置するバンド本体62の先端部には、実施形態5と同様、ほぼコ字状の尾錠45とツク棒46とが取付ピン47によって取り付けられており、この12時側のバンド本体62には、図16および図17に示すように、遊環48がスライド可能に取り付けられている。また、バンド本体62の6時側には、ツク棒46がそれぞれ挿入する複数の係止孔49がバンド本体62の長手方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0065】
一方、腕時計ケース4の下面側に設けられたカバー部材64は、ウレタン樹脂などの合成樹脂からなり、図17に示すように、腕時計ケース4の下部外周、バンド取付部5、および裏蓋8を覆うように形成されている。このカバー部材64には、図18に示すように、バンド取付部5に取り付けられるバンド本体62の各端部が隙間(図示せず)を持って挿入する挿入口66が設けられていると共に、裏蓋8に対応する個所に開口部67が設けられており、この開口部67の縁部には、吸放湿部材65が開口部67を塞いで取り付けられている。
【0066】
この吸放湿部材65は、図19に示すように、開口部67の内周面にインサート成形によって一体的に設けられているが、これに限らず、吸放湿部材65の縁部を開口部67の縁部に縫合によって取り付けた構造でも良い。この場合、吸放湿部材65およびカバー部材64は、図17に示すように、腕時計ケース4の下面つまり裏蓋8との間に所定の隙間68を持って腕時計ケース4の下部外周に取り付けられるように構成されている。また、この吸放湿部材65は、図19に示すように、第1糸材14、有色の第2糸材15、および第4糸材22を編んだ布状に形成されている。
【0067】
この場合にも、第1糸材14は、実施形態1と同様、複数本の糸単体17を束ねてなり、この糸単体17の芯部18が吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、糸単体17の外周部19が熱伝導性を有する合成繊維からなる構成になっている。これら芯部18および外周部19の熱伝導性を有する合成繊維としても、熱伝導性に優れたナイロン繊維であることが望ましい。また、有色の第2糸材15も、実施形態1と同様、色展開を図るためのものであり、着色された通常の糸からなっている。さらに、第4糸材22は、実施形態2と同様、毛細管現象により湿気を吸放湿部材65の面方向に導いて吸放湿部材65の側面側から拡散放出する構造で、吸放湿部材65の上面側のみに編み込まれている。
【0068】
このような腕時計60によれば、時計バンド61によって腕時計ケース4を腕に装着して使用するときに、腕時計ケース4の裏蓋8が腕に直接接触せず、腕時計ケース4の下部外周に装着されたカバー部材64の開口部67に設けられた吸放湿部材65が腕に接触することになるので、この吸放湿部材65によって腕の汗などの湿気を吸収することができ、この吸収した湿気を腕時計ケース4の裏蓋8とカバー部材64との間の隙間68および挿入口66の隙間を通して腕時計ケース4の外部に放出することができ、これにより腕時計ケース4によって腕が蒸れないようにすることができる。
【0069】
すなわち、吸放湿部材65は、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部18、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部19とで構成された糸単体17を複数本束ねた第1糸材14と、毛細管現象により湿気を裏蓋8の面方向に導いて吸放湿部材65の側面側から拡散放出する第4糸材22とを備えた構成であるから、第1糸材14のポリマー繊維によって湿気を吸収することができると共に、この吸収した湿気を第4糸材22に放出して伝えることができ、この伝えられた湿気を第4糸材22の毛細管現象によって吸放湿部材65の面方向に導いてカバー部材64と裏蓋8との間の隙間68および挿入口66の隙間を通して腕時計ケース4の外部に効率良く放出することができる。
【0070】
このため、この腕時計60では、腕に装着して使用する際、腕の汗を吸放湿部材65の第1糸材14のポリマー繊維によって十分に吸収することができ、この吸収した湿気を第4糸材22に伝え、この伝えられた湿気を第4糸材22の毛細管現象によって吸放湿部材65の面方向に導いて腕時計ケース4の外部に効率良く放出することができるので、腕時計ケース4によって腕が蒸れないようにすることができる。このときにも、腕時計ケース4から外部に放出される湿気の気化熱を、第1糸材14の熱伝導性に優れた合成繊維であるナイロン繊維によって、腕に伝えて冷たい感触を与えることができるので、快適に腕に装着して使用することができる。
【0071】
なお、上記実施形態6では、第1糸材14、有色の第2糸材15、および第4糸材22の3種類の糸材を編んで吸放湿部材65を構成したが、必ずしも3種類の糸材を編んで吸放湿部材65を構成する必要はなく、第1糸材14のみを編んで吸放湿部材65を構成しても良い。このような吸放湿部材においても、第1糸材14によって湿気を吸収して放出することができると共に、その気化熱を腕に伝えることができるので、実施形態6とほぼ同様の効果がある。
また、上記実施形態1〜5では時計バンド1、20、25、30、40に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計を腕に装着するための時計バンドに限られる必要はなく、他のバンドやベルトなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、20、25、30、40 時計バンド
2、21、26、31、41 バンド本体
3、60 腕時計
4 腕時計ケース
6 時計ガラス
7 時計モジュール
8 裏蓋
14、32、50 第1糸材
15 第2糸材
16 第3糸材
17、33 糸単体
18、34 芯部
19、35 外周部
22 第4糸材
42 表面側合成皮革
43 裏面側合成皮革
43a 細孔
44 内装材
64 カバー部材
65 吸放湿部材
67 開口部
68 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数本の糸単体を束ねた糸材を編んでバンド本体を構成したバンドにおいて、
前記糸単体は芯部と外周部とからなり、
前記芯部は吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなり、
前記外周部は熱伝導性を有する合成繊維からなる
ことを特徴するバンド。
【請求項2】
前記バンド本体の少なくとも表面の一部には、毛細管現象により湿気を前記バンド本体の面方向に導いて前記バンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材が編み込まれていることを特徴する請求項1に記載のバンド。
【請求項3】
前記バンド本体には腕時計が取り付けられ、この腕時計が取り付けられる個所の前記バンド本体は、毛細管現象により湿気を前記バンド本体の面方向に導いて前記バンド本体の側面側から拡散放出する他の糸材のみで構成されていることを特徴する請求項1に記載のバンド。
【請求項4】
少なくとも複数本の糸単体を束ねた糸材を編んでバンド本体を構成したバンドにおいて、
前記糸単体は芯部と外周部とからなり、
前記芯部は光の吸収により加温性を有する合成繊維からなり、
前記外周部は熱伝導性を有する合成繊維からなる
ことを特徴するバンド。
【請求項5】
前記バンド本体には、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体を複数本束ねた他の糸材が編み込まれていることを特徴する請求項4に記載のバンド。
【請求項6】
前記バンド本体には有色の通常糸材が編み込まれていることを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載のバンド。
【請求項7】
放湿性を有する表面側合成皮革と、この表面側合成皮革の裏面側に設けられた多孔質の裏面側合成皮革と、前記表面側合成皮革と前記裏面側合成皮革との間に設けられた内装材とでバンド本体が構成され、
前記内装材が、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体を複数本束ねた糸材によって構成されていることを特徴するバンド。
【請求項8】
腕時計ケースの上面に時計ガラスが設けられ、前記腕時計ケースの下面に裏蓋が設けられ、前記腕時計ケースの内部に時計モジュールが設けられた腕時計において、
前記腕時計ケースの下面側を覆うカバー部材を備え、このカバー部材における前記裏蓋に対応する個所に開口部が設けられ、この開口部に吸放湿部材が設けられていることを特徴する腕時計。
【請求項9】
前記吸放湿部材は、少なくとも、吸放湿性を有するポリマー繊維と熱伝導性を有する合成繊維とからなる芯部、および熱伝導性を有する合成繊維からなる外周部とで構成された糸単体を複数本束ねた糸材を編んで構成されていることを特徴する請求項8に記載の腕時計。
【請求項10】
前記吸放湿部材の表面には、毛細管現象により湿気を前記吸放湿部材の面方向に導いて前記吸放湿部材の側面側から拡散放出する他の糸材が編み込まれていることを特徴する請求項8または9に記載の腕時計。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−57929(P2010−57929A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221192(P2009−221192)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【分割の表示】特願2003−429586(P2003−429586)の分割
【原出願日】平成15年12月25日(2003.12.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】