バンドパスフィルタ及び電子部品
【課題】複数のSAW共振子が直列腕及び並列腕としてラダー型に接続されると共にこれら直列腕のうち中央の直列腕を容量素子として配置したバンドパスフィルタにおいて、通過ロスを小さく保ったまま、当該中央の直列腕によって形成される極を減衰させること。
【解決手段】容量素子8をなすSAW共振子である直列腕10によって2つのラダー型フィルタ50、50を互いに直列に接続して圧電基板1上に配置すると共に、当該直列腕10を覆うようにモールド材51を設けて、この直列腕10における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくする。
【解決手段】容量素子8をなすSAW共振子である直列腕10によって2つのラダー型フィルタ50、50を互いに直列に接続して圧電基板1上に配置すると共に、当該直列腕10を覆うようにモールド材51を設けて、この直列腕10における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したバンドパスフィルタ及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したフィルタの一つとして、図18に示すように、一部の周波数帯域を通過域にすると共に、当該通過域よりも低域側及び高域側を阻止域とするバンドパスフィルタが知られている。このフィルタは、図1に示すように、複数例えば3つのSAW共振子からなる直列腕10を互いに直列に接続すると共に、これら直列腕10、10間にSAW共振子からなる並列腕20を各々並列に接続したラダー型の回路によって構成される。図1中5は入力ポート、6は出力ポートである。
【0003】
これらの直列腕10及び並列腕20は、図3及び図19に示すように、例えば各々の直列腕10及び並列腕20におけるバスバー31、31同士を接続する導電線路41と共に共通の圧電基板1上に各々パターニングされた状態で、例えばアルミナ(Al2O3)などからなるパッケージ基板2に搭載される。そして、圧電基板1は、導電体からなるバンプ3などにより当該圧電基板1上の入力ポート5、出力ポート6及び接地ポート7がパッケージ基板2の導電線路(図示せず)に電気的に各々接続されると共に、例えばエポキシなどの樹脂からなるモールド材51によりパッケージ基板2に固定される。このモールド材51は、これら直列腕10及び並列腕20における弾性表面波の減衰を抑えるために(電気機械結合係数の低下を抑えるために)、例えば流動性をほとんど持たない状態の樹脂からなる板状体を例えば圧電基板1の上方側からパッケージ基板2側に押しつけて硬化させることにより、直列腕10及び並列腕20のパターニングされた領域を避けるように形成される。
【0004】
ここで、バンドパスフィルタを構成するにあたって、各々の直列腕10の直列共振周波数(共振点)及び各々の並列腕20の並列共振点(反共振点)を通過域内において揃える場合もあるが、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10の共振点について、他の直列腕10の共振点及び並列腕20の反共振点よりも高い周波数に設定する場合もある。このように中央の直列腕10の共振点を設定することにより、図2に示すように、いわば1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50を2つ配置すると共に、各々のフィルタ部50、50における直列腕10、10同士を容量素子8により互いに直列に接続した回路が構成されると言える。
【0005】
この図2のように中央の直列腕10を容量素子8として配置した場合には、直列腕10の共振点及び並列腕20の反共振点を揃える場合よりも、通過域の帯域幅を広くすることができると共に、通過域における減衰量(通過ロス)を小さくすることができる。この時、通過域よりも高域側には、既述の図18に示したように、容量素子8をなす中央の直列腕10の共振点に対応する極がスプリアスとして形成される。尚、容量素子8を通常のコンデンサにより構成した場合には、通過域における減衰量が大きくなり、またフィルタの寸法が大型化してしまう。
【0006】
一方、このように3つの直列腕10のうち中央の直列腕10を容量素子8として配置したフィルタにおいて、このフィルタが搭載されるデバイスの種類によっては、通過域における減衰量を小さく保ったまま、当該中央の直列腕10の極を低減させたいという要請がある。
特許文献1には、圧電基板上に樹脂膜を形成し、バルク波を抑止する技術が記載されており、また特許文献2には、2つのフィルタのうち一方のフィルタのIDT上を吸音剤で覆う技術について記載されているが、既述の課題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−232333(段落0010〜0011)
【特許文献2】特開2003−17982(段落0014、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕を備えたラダー型フィルタを圧電基板上に2つ配置すると共に、SAW共振子からなる容量素子によってこれらラダー型フィルタを互いに直列に接続したバンドパスフィルタにおいて、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該容量素子をなす直列腕によって形成される極を減衰させることのできるフィルタ及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバンドパスフィルタは、
圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第1のラダー型フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第2のラダー型フィルタと、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕を互いに直列に接続するIDT電極を備えたSAW共振子からなる容量素子と、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕、前記容量素子及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕の並びの一端側及び他端側に夫々接続された入力ポート及び出力ポートと、
前記容量素子における弾性表面波の発生を抑えるために、前記第1のラダー型フィルタ及び前記第2のラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子の前記IDT電極を覆うように前記圧電基板上に設けられ、前記容量素子にて発生する弾性表面波を吸収する吸収体と、を備えたことを特徴とする。
前記吸収体は、前記圧電基板の表面をモールドするモールド材により構成されていても良い。
本発明の電子部品は、
既述のバンドパスフィルタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕を備えたラダー型フィルタを圧電基板上に2つ配置すると共に、SAW共振子からなる容量素子のIDT電極によってこれらラダー型フィルタを互いに直列に接続し、ラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子のIDT電極を覆うように吸収体を設けている。そのため、この容量素子における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくすることができるので、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該容量素子の極を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のバンドパスフィルタの一例を示す回路図である。
【図2】前記フィルタにおいて得られる特性に対応する回路を模式的に示す回路図である。
【図3】前記フィルタが形成された圧電基板を示す平面図である。
【図4】前記フィルタの概観を示す斜視図である。
【図5】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図6】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図7】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図8】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図9】前記フィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図10】従来のフィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図11】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す縦断面図である。
【図12】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す平面図である。
【図13】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す縦断面図である。
【図14】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図15】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図16】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図17】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図18】バンドパスフィルタにおいて得られる特性を示す模式図である。
【図19】従来のフィルタの概観を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態の一例であるバンドパスフィルタについて、図1〜図8を参照して説明する。先ず、フィルタの回路構成について説明する。このフィルタは、一部の周波数帯域この例ではおよそ1900MHz〜2000MHz程度の帯域を通過域、当該通過域よりも低域側及び高域側を各々阻止域としたフィルタであり、図1に示すように、各々SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)共振子からなる直列腕10及び並列腕20を備えたラダー型フィルタを構成している。この例では、3つの直列腕10が互いに直列に接続され、これら直列腕10、10間に並列腕20が各々並列に接続されている。これら直列腕10の並びの一方側及び他方側には、夫々入力ポート5及び出力ポート6が接続されている。各々の並列腕20は接地されている。
【0013】
そして、このフィルタでは、後述するように、入力ポート5側の直列腕10及び出力ポート6側の直列腕10の夫々の直列共振周波数(共振点)と、各々の並列腕20の並列共振周波数(反共振点)とを既述の通過域内において揃えている。また、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10の共振点については、通過域よりも高域側の周波数例えば2040MHz程度に設定している。従って、中央の直列腕10が容量素子として機能するので、このフィルタは、図2に示すように、1つの直列腕10及び当該直列腕10に対して並列に接続された1つの並列腕20からなる構成をラダー型フィルタ50と呼ぶと、2つのラダー型フィルタ50、50の各々の直列腕10、10同士を容量素子8により互いに直列に接続していると言える。そして、このフィルタでは、後述するように、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10において弾性表面波の発生を抑えることにより、当該直列腕10の極を減衰させている。
【0014】
続いて、既述の回路に対応するフィルタの各部の構成について説明する。このフィルタは、図3に示すように、例えばLiTaO3(タンタル酸リチウム)などからなる圧電基板1上に配置されており、入力ポート5及び出力ポート6が弾性表面波の伝搬方向(図3中X方向)に対して直交する方向(Y方向)に互いに離間して形成されている。ここで、圧電基板1上において入力ポート5の形成された領域を奥側、出力ポート6の形成された領域を手前側と呼ぶと、既述の2つのラダー型フィルタ50、50は、各々手前側及び奥側に配置されている。そして、これらラダー型フィルタ50、50間に、既述の容量素子8をなす直列腕10が配置されている。即ち、奥側のラダー型フィルタ50を第1のラダー型フィルタ、手前側のラダー型フィルタ50を第2のラダー型フィルタと呼ぶと、第1のラダー型フィルタ50の直列腕10、容量素子8をなす直列腕10及び第2のラダー型フィルタ50の直列腕10の並びの一端側及び他端側に夫々入力ポート5及び出力ポート6が金属膜からなる導電線路41によって各々接続されている。
【0015】
各々の直列腕10及び並列腕20は、IDT(インターディジタルトランスデューサ)電極33と、このIDT電極33におけるX方向両側に配置された反射器34、34とを備えている。図3中31はY方向に互いに離間するように形成された一対のバスバー、32はこれらバスバー31の各々から対向するバスバー31に向かって互いに櫛歯状に伸び出す電極指である。また、35はグレーティングバスバー、36はグレーティング電極指である。各々の直列腕10及び並列腕20は、弾性波の伝搬方向において、電極指32及びグレーティング電極指36の各々の幅寸法と、これら電極指32及びグレーティング電極指36の形成されていない領域の寸法と、からなる周期単位が当該伝搬方向に沿って繰り返されるように配置されている。既述の導電線路41は、これら直列腕10及び並列腕20の間において、バスバー31、31同士を接続するように配置されている。図3中7は接地ポートである。尚、図3では、これらIDT電極33及び反射器34について簡略化して描画している。また、図3では、IDT電極33、導電線路41及び各ポート5、6、7について、他の部位と区別するためにハッチングを変えてある。
【0016】
次に、圧電基板1を図示しない電子部品に搭載するための構成について説明する。圧電基板1上には、図4に示すように、例えばエポキシなどの樹脂からなるモールド材51が吸収体として積層されており、このモールド材51の上面における四隅には、このフィルタが搭載される図示しない電子部品と当該フィルタの各ポート5、6、7とを電気的に各々接続するための突起状の端子部60が形成されている。このモールド材51は、図5に示すように、2つのラダー型フィルタ50、50の形成された領域においては、これらフィルタ部50、50から離間するように(フィルタ部50、50に接触しないように)下方側が中空となるように形成され、容量素子8をなす直列腕10の形成された領域においては、当該直列腕10を覆うように(直列腕10に接触するように)配置されている。図6〜図8には、既述の図3に示す圧電基板1を夫々B−B線、C−C線及びD−D線にて切断した場合の縦断面図を夫々示している。また、図3には、圧電基板1の表面におけるモールド材51の輪郭を模式的に破線で示しており、2つのラダー型フィルタ50、50及び各ポート5、6、7が露出するように当該モールド材51が形成されている。尚、図5はフィルタを模式的に示している。また、図4においては、4つの端子部60について、各々の端子部60の接続される各ポート5、6、7の符号を括弧内に示している。
【0017】
従って、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により弾性表面波の励振(発生)が抑えられていることになり、即ち他の直列腕10や並列腕20よりも電気機械結合係数が小さくなっている。そのため、入力ポート5に入力された電気信号が出力ポート6から取り出される時に、容量素子8をなす直列腕10により2040MHz付近に形成される極(スプリアス)は、図9(a)に示すように、当該直列腕10をモールド材51により覆わない場合(図10(a))よりも小さくなる。この時、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51により覆った場合における通過域の損失(挿入損失)及び帯域幅は、図9(b)に示すように、当該直列腕10をモールド材51により覆わない場合(図10(b))に比べて、ほぼ同等となる。以下の表に、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51によって覆った場合(本発明、図9)及び覆わない場合(比較例、図10)にて得られる特性を纏めて示す。また、図9から分かるように、入力ポート5側の直列腕10及び出力ポート6側の直列腕10の夫々の共振点と、各々の並列腕20の反共振点とを通過域内において揃えている。
(表)
【0018】
続いて、図4のようにモールド材51を形成したフィルタを製造する方法の一例について、以下に簡単に説明する。先ず、図11(a)、(b)に示すように、圧電材料からなるウエハW上に、フォトレジスト膜を用いたフォトリソグラフィ工程により、フィルタの各部に対応する電極膜(ラダー型フィルタ50、50、容量素子8をなす直列腕10、各ポート5、6、7及び導電線路41)70を形成する。このウエハW上には、図12に示すように、電極膜70が縦横に夫々複数形成される。尚、図11は、既述の図3において概略Y方向に圧電基板1(ウエハW)を切断した縦断面図であり、図1に対応する部分(一つの電極膜70)を拡大して示している。また、図11では導電線路41については省略している。
【0019】
次いで、図11(c)に示すように、例えばモールド材51と同じ材料である紫外線硬化樹脂の塗膜を第1の膜81として形成する。この第1の膜81は、例えば概略シート(板)状に成形した紫外線硬化樹脂をウエハW側に押しつけながら接着することにより、あるいは液状の紫外線硬化樹脂をウエハW上に塗布し、その後乾燥させることにより形成される。そして、各ポート5、6、7及びラダー型フィルタ50、50以外の領域に対してマスクを介して紫外線を照射して硬化させた後、ウエハWの表面を有機溶剤により洗浄すると、同図(d)に示すように、各ポート5、6、7及びラダー型フィルタ50、50がウエハWの表面に露出する。
【0020】
そして、図13(a)に示すように、ウエハWの表面に、例えば流動性をほとんど持たない概略シート状の紫外線硬化樹脂からなる第2の膜82を積層すると共に、当該第2の膜82の下面と第1の膜81の上面とを接着する。従って、ラダー型フィルタ50、50の上方における第2の膜82は、第1の膜81によって周囲が支持されて、ラダー型フィルタ50、50の表面から浮いた状態となる。次いで、マスクを介して各ポート5、6、7の上方側の領域以外の領域に紫外線を照射して硬化させ、続いて有機溶剤によりウエハWの表面を洗浄すると、図13(b)に示すように、各ポート5、6、7の上方領域にホール83が形成される。その後、図13(c)に示すように、例えばメッキにより各々のホール83に金属を埋め込み、各ホール83上に金属からなる既述の端子部60を配置する。こうして例えば各電極膜70、70間のダイシングラインにおいてウエハWを切断して圧電基板1をチップ化することにより、既述の図4に示すフィルタが形成される。その後、図示しない電子部品に対して各端子部60を当接させて接着することにより、当該電子部品に圧電基板1(フィルタ)が搭載される。
【0021】
上述の実施の形態によれば、容量素子8をなすSAW共振子である直列腕10によって2つのラダー型フィルタ50、50を互いに直列に接続して圧電基板1上に配置すると共に、当該直列腕10を覆うようにモールド材51を設けている。そのため、容量素子8をなす直列腕10における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくすることができるので、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該直列腕10の極を減衰させることができる。また、圧電基板1を電子部品に搭載する際に当該圧電基板1に積層するモールド材51を利用して、容量素子8をなす直列腕10を覆っているので、当該モールド材51とは別の材料を用いるよりも工程を簡略化できる。
【0022】
既述の例では、ラダー型フィルタ50、50として、夫々1つの直列腕10と当該直列腕10に対して並列に接続された1つの並列腕20とを備えた構成としたが、直列腕10の数量を夫々2つ以上にしても良いし、2つのラダー型フィルタ50、50における直列腕10の数量を互いに変えても(容量素子8をなす直列腕10から入力ポート5側及び出力ポート6側を見た時のラダー型フィルタ50、50が非対称であっても)良い。図14は、直列腕10を4つ配置すると共に、入力ポート5側から2つ目の直列腕10を容量素子8として構成することにより、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、2つの直列腕10と2つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、を容量素子8により互いに直列に接続した回路の例を示している。この場合においても、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により覆われる。また、図15は、直列腕10を5つ配置して、中央の直列腕10を容量素子8として構成した例を示している。この場合には、2つの直列腕10及び2つの並列腕20によって各々のラダー型フィルタ50、50が構成される。更に、図16は、直列腕10を5つ設けた場合において、入力ポート5側から2つ目の直列腕10を容量素子8として構成して、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、3つの直列腕10及び3つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、を容量素子8により互いに直列に接続した例を示している。これらの図15及び図16においても、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により覆われる。更に、図15及び図16において、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50を複数の容量素子8により接続しても良い。この場合にも、これら複数の容量素子8はモールド材51により覆われる。
【0023】
また、既述の例では、第1の膜81及び第2の膜82にホール83を形成し、当該ホール83に埋め込んだ金属の上方に端子部60を設けたが、この端子部60に代えて、既述のバンプ3を用いても良い。具体的には、図17に示すように、既述の図13(a)において第1の膜81上に第2の膜82を積層した後、マスクを介した紫外線の照射及び有機溶剤によるウエハWの表面の洗浄を行うことにより、各ポート5、6、7の上方側における第2の膜82を取り除く。即ち、ラダー型フィルタ50、50及び容量素子8をなす直列腕10の上方側の凹部を塞ぐように第2の膜82を形成する。そして、第1の膜81のホール83に金属を埋め込んだ後、ホール83の上方側に各々バンプ3を配置する。この場合においても、同様の効果が得られる。
【0024】
更に、既述の図19に示す構成においても、本発明を適用しても良い。即ち、パッケージ基板2に圧電基板1を搭載する前に、容量素子8をなす直列腕10を覆うようにウエハWの状態で圧電基板1上に樹脂膜を形成する。そして、ウエハWを切断した後、圧電基板1の表面におけるラダー型フィルタ50、50及び容量素子8をなす直列腕10の形成された面をパッケージ基板2側に当接させ、バンプ3を用いて、各ポート5、6、7と当該パッケージ基板2に形成された導電線路(図示せず)とを接続する。この場合においても、通過ロスの劣化を抑えながら、容量素子8をなす直列腕10の極を減衰させることができる。
【0025】
直列腕10を容量素子8として用いるにあたって、当該直列腕10の共振点は、通過域よりも例えばフィルタの中心周波数の2.5%程度(例えば2GHz帯のラダー型フィルタでは50MHz程度)高域側に設定される。
ここで、既述の各例において、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51により覆うにあたって、当該直列腕10におけるIDT電極33及び2つの反射器34、34の上方にモールド材51を形成したが、弾性表面波の発生を抑えるためにはこのIDT電極33だけを覆うようにしても良い。また、容量素子8をなす直列腕10において弾性表面波の発生を抑えるにあたり、フィルタをモールドする時に用いるモールド材51を利用したが、このモールド材51以外の樹脂やゴムなど、粘性を持つと共に弾性表面波を吸収する(弾性表面波を減衰させる)材料であっても良い。
また、圧電基板1としては、既述のLiTaO3に変えて、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)や水晶など、圧電作用を有する基板を用いても良い。
以上において説明したバンドパスフィルタについて、例えば携帯端末のデュプレクサの送信側フィルタあるいは受信側フィルタ(SAWBPFやUMTS用TX段間フィルタ)として用いることにより、通過ロスの小さい電子部品を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 圧電基板
5 入力ポート
6 出力ポート
7 接地ポート
8 容量素子
10 直列腕
20 並列腕
50 ラダー型フィルタ
51 モールド材
【技術分野】
【0001】
本発明は、SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したバンドパスフィルタ及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)を利用したフィルタの一つとして、図18に示すように、一部の周波数帯域を通過域にすると共に、当該通過域よりも低域側及び高域側を阻止域とするバンドパスフィルタが知られている。このフィルタは、図1に示すように、複数例えば3つのSAW共振子からなる直列腕10を互いに直列に接続すると共に、これら直列腕10、10間にSAW共振子からなる並列腕20を各々並列に接続したラダー型の回路によって構成される。図1中5は入力ポート、6は出力ポートである。
【0003】
これらの直列腕10及び並列腕20は、図3及び図19に示すように、例えば各々の直列腕10及び並列腕20におけるバスバー31、31同士を接続する導電線路41と共に共通の圧電基板1上に各々パターニングされた状態で、例えばアルミナ(Al2O3)などからなるパッケージ基板2に搭載される。そして、圧電基板1は、導電体からなるバンプ3などにより当該圧電基板1上の入力ポート5、出力ポート6及び接地ポート7がパッケージ基板2の導電線路(図示せず)に電気的に各々接続されると共に、例えばエポキシなどの樹脂からなるモールド材51によりパッケージ基板2に固定される。このモールド材51は、これら直列腕10及び並列腕20における弾性表面波の減衰を抑えるために(電気機械結合係数の低下を抑えるために)、例えば流動性をほとんど持たない状態の樹脂からなる板状体を例えば圧電基板1の上方側からパッケージ基板2側に押しつけて硬化させることにより、直列腕10及び並列腕20のパターニングされた領域を避けるように形成される。
【0004】
ここで、バンドパスフィルタを構成するにあたって、各々の直列腕10の直列共振周波数(共振点)及び各々の並列腕20の並列共振点(反共振点)を通過域内において揃える場合もあるが、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10の共振点について、他の直列腕10の共振点及び並列腕20の反共振点よりも高い周波数に設定する場合もある。このように中央の直列腕10の共振点を設定することにより、図2に示すように、いわば1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50を2つ配置すると共に、各々のフィルタ部50、50における直列腕10、10同士を容量素子8により互いに直列に接続した回路が構成されると言える。
【0005】
この図2のように中央の直列腕10を容量素子8として配置した場合には、直列腕10の共振点及び並列腕20の反共振点を揃える場合よりも、通過域の帯域幅を広くすることができると共に、通過域における減衰量(通過ロス)を小さくすることができる。この時、通過域よりも高域側には、既述の図18に示したように、容量素子8をなす中央の直列腕10の共振点に対応する極がスプリアスとして形成される。尚、容量素子8を通常のコンデンサにより構成した場合には、通過域における減衰量が大きくなり、またフィルタの寸法が大型化してしまう。
【0006】
一方、このように3つの直列腕10のうち中央の直列腕10を容量素子8として配置したフィルタにおいて、このフィルタが搭載されるデバイスの種類によっては、通過域における減衰量を小さく保ったまま、当該中央の直列腕10の極を低減させたいという要請がある。
特許文献1には、圧電基板上に樹脂膜を形成し、バルク波を抑止する技術が記載されており、また特許文献2には、2つのフィルタのうち一方のフィルタのIDT上を吸音剤で覆う技術について記載されているが、既述の課題は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−232333(段落0010〜0011)
【特許文献2】特開2003−17982(段落0014、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕を備えたラダー型フィルタを圧電基板上に2つ配置すると共に、SAW共振子からなる容量素子によってこれらラダー型フィルタを互いに直列に接続したバンドパスフィルタにおいて、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該容量素子をなす直列腕によって形成される極を減衰させることのできるフィルタ及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバンドパスフィルタは、
圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第1のラダー型フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第2のラダー型フィルタと、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕を互いに直列に接続するIDT電極を備えたSAW共振子からなる容量素子と、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕、前記容量素子及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕の並びの一端側及び他端側に夫々接続された入力ポート及び出力ポートと、
前記容量素子における弾性表面波の発生を抑えるために、前記第1のラダー型フィルタ及び前記第2のラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子の前記IDT電極を覆うように前記圧電基板上に設けられ、前記容量素子にて発生する弾性表面波を吸収する吸収体と、を備えたことを特徴とする。
前記吸収体は、前記圧電基板の表面をモールドするモールド材により構成されていても良い。
本発明の電子部品は、
既述のバンドパスフィルタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕を備えたラダー型フィルタを圧電基板上に2つ配置すると共に、SAW共振子からなる容量素子のIDT電極によってこれらラダー型フィルタを互いに直列に接続し、ラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子のIDT電極を覆うように吸収体を設けている。そのため、この容量素子における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくすることができるので、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該容量素子の極を減衰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のバンドパスフィルタの一例を示す回路図である。
【図2】前記フィルタにおいて得られる特性に対応する回路を模式的に示す回路図である。
【図3】前記フィルタが形成された圧電基板を示す平面図である。
【図4】前記フィルタの概観を示す斜視図である。
【図5】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図6】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図7】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図8】前記フィルタの内部を模式的に示す縦断面図である。
【図9】前記フィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図10】従来のフィルタにおいて得られる特性を示す特性図である。
【図11】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す縦断面図である。
【図12】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す平面図である。
【図13】本発明のフィルタの製造方法の一例を示す縦断面図である。
【図14】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図15】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図16】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図17】前記フィルタの他の例を示す回路図である。
【図18】バンドパスフィルタにおいて得られる特性を示す模式図である。
【図19】従来のフィルタの概観を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態の一例であるバンドパスフィルタについて、図1〜図8を参照して説明する。先ず、フィルタの回路構成について説明する。このフィルタは、一部の周波数帯域この例ではおよそ1900MHz〜2000MHz程度の帯域を通過域、当該通過域よりも低域側及び高域側を各々阻止域としたフィルタであり、図1に示すように、各々SAW(surface acoustic wave:弾性表面波)共振子からなる直列腕10及び並列腕20を備えたラダー型フィルタを構成している。この例では、3つの直列腕10が互いに直列に接続され、これら直列腕10、10間に並列腕20が各々並列に接続されている。これら直列腕10の並びの一方側及び他方側には、夫々入力ポート5及び出力ポート6が接続されている。各々の並列腕20は接地されている。
【0013】
そして、このフィルタでは、後述するように、入力ポート5側の直列腕10及び出力ポート6側の直列腕10の夫々の直列共振周波数(共振点)と、各々の並列腕20の並列共振周波数(反共振点)とを既述の通過域内において揃えている。また、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10の共振点については、通過域よりも高域側の周波数例えば2040MHz程度に設定している。従って、中央の直列腕10が容量素子として機能するので、このフィルタは、図2に示すように、1つの直列腕10及び当該直列腕10に対して並列に接続された1つの並列腕20からなる構成をラダー型フィルタ50と呼ぶと、2つのラダー型フィルタ50、50の各々の直列腕10、10同士を容量素子8により互いに直列に接続していると言える。そして、このフィルタでは、後述するように、3つの直列腕10のうち中央の直列腕10において弾性表面波の発生を抑えることにより、当該直列腕10の極を減衰させている。
【0014】
続いて、既述の回路に対応するフィルタの各部の構成について説明する。このフィルタは、図3に示すように、例えばLiTaO3(タンタル酸リチウム)などからなる圧電基板1上に配置されており、入力ポート5及び出力ポート6が弾性表面波の伝搬方向(図3中X方向)に対して直交する方向(Y方向)に互いに離間して形成されている。ここで、圧電基板1上において入力ポート5の形成された領域を奥側、出力ポート6の形成された領域を手前側と呼ぶと、既述の2つのラダー型フィルタ50、50は、各々手前側及び奥側に配置されている。そして、これらラダー型フィルタ50、50間に、既述の容量素子8をなす直列腕10が配置されている。即ち、奥側のラダー型フィルタ50を第1のラダー型フィルタ、手前側のラダー型フィルタ50を第2のラダー型フィルタと呼ぶと、第1のラダー型フィルタ50の直列腕10、容量素子8をなす直列腕10及び第2のラダー型フィルタ50の直列腕10の並びの一端側及び他端側に夫々入力ポート5及び出力ポート6が金属膜からなる導電線路41によって各々接続されている。
【0015】
各々の直列腕10及び並列腕20は、IDT(インターディジタルトランスデューサ)電極33と、このIDT電極33におけるX方向両側に配置された反射器34、34とを備えている。図3中31はY方向に互いに離間するように形成された一対のバスバー、32はこれらバスバー31の各々から対向するバスバー31に向かって互いに櫛歯状に伸び出す電極指である。また、35はグレーティングバスバー、36はグレーティング電極指である。各々の直列腕10及び並列腕20は、弾性波の伝搬方向において、電極指32及びグレーティング電極指36の各々の幅寸法と、これら電極指32及びグレーティング電極指36の形成されていない領域の寸法と、からなる周期単位が当該伝搬方向に沿って繰り返されるように配置されている。既述の導電線路41は、これら直列腕10及び並列腕20の間において、バスバー31、31同士を接続するように配置されている。図3中7は接地ポートである。尚、図3では、これらIDT電極33及び反射器34について簡略化して描画している。また、図3では、IDT電極33、導電線路41及び各ポート5、6、7について、他の部位と区別するためにハッチングを変えてある。
【0016】
次に、圧電基板1を図示しない電子部品に搭載するための構成について説明する。圧電基板1上には、図4に示すように、例えばエポキシなどの樹脂からなるモールド材51が吸収体として積層されており、このモールド材51の上面における四隅には、このフィルタが搭載される図示しない電子部品と当該フィルタの各ポート5、6、7とを電気的に各々接続するための突起状の端子部60が形成されている。このモールド材51は、図5に示すように、2つのラダー型フィルタ50、50の形成された領域においては、これらフィルタ部50、50から離間するように(フィルタ部50、50に接触しないように)下方側が中空となるように形成され、容量素子8をなす直列腕10の形成された領域においては、当該直列腕10を覆うように(直列腕10に接触するように)配置されている。図6〜図8には、既述の図3に示す圧電基板1を夫々B−B線、C−C線及びD−D線にて切断した場合の縦断面図を夫々示している。また、図3には、圧電基板1の表面におけるモールド材51の輪郭を模式的に破線で示しており、2つのラダー型フィルタ50、50及び各ポート5、6、7が露出するように当該モールド材51が形成されている。尚、図5はフィルタを模式的に示している。また、図4においては、4つの端子部60について、各々の端子部60の接続される各ポート5、6、7の符号を括弧内に示している。
【0017】
従って、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により弾性表面波の励振(発生)が抑えられていることになり、即ち他の直列腕10や並列腕20よりも電気機械結合係数が小さくなっている。そのため、入力ポート5に入力された電気信号が出力ポート6から取り出される時に、容量素子8をなす直列腕10により2040MHz付近に形成される極(スプリアス)は、図9(a)に示すように、当該直列腕10をモールド材51により覆わない場合(図10(a))よりも小さくなる。この時、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51により覆った場合における通過域の損失(挿入損失)及び帯域幅は、図9(b)に示すように、当該直列腕10をモールド材51により覆わない場合(図10(b))に比べて、ほぼ同等となる。以下の表に、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51によって覆った場合(本発明、図9)及び覆わない場合(比較例、図10)にて得られる特性を纏めて示す。また、図9から分かるように、入力ポート5側の直列腕10及び出力ポート6側の直列腕10の夫々の共振点と、各々の並列腕20の反共振点とを通過域内において揃えている。
(表)
【0018】
続いて、図4のようにモールド材51を形成したフィルタを製造する方法の一例について、以下に簡単に説明する。先ず、図11(a)、(b)に示すように、圧電材料からなるウエハW上に、フォトレジスト膜を用いたフォトリソグラフィ工程により、フィルタの各部に対応する電極膜(ラダー型フィルタ50、50、容量素子8をなす直列腕10、各ポート5、6、7及び導電線路41)70を形成する。このウエハW上には、図12に示すように、電極膜70が縦横に夫々複数形成される。尚、図11は、既述の図3において概略Y方向に圧電基板1(ウエハW)を切断した縦断面図であり、図1に対応する部分(一つの電極膜70)を拡大して示している。また、図11では導電線路41については省略している。
【0019】
次いで、図11(c)に示すように、例えばモールド材51と同じ材料である紫外線硬化樹脂の塗膜を第1の膜81として形成する。この第1の膜81は、例えば概略シート(板)状に成形した紫外線硬化樹脂をウエハW側に押しつけながら接着することにより、あるいは液状の紫外線硬化樹脂をウエハW上に塗布し、その後乾燥させることにより形成される。そして、各ポート5、6、7及びラダー型フィルタ50、50以外の領域に対してマスクを介して紫外線を照射して硬化させた後、ウエハWの表面を有機溶剤により洗浄すると、同図(d)に示すように、各ポート5、6、7及びラダー型フィルタ50、50がウエハWの表面に露出する。
【0020】
そして、図13(a)に示すように、ウエハWの表面に、例えば流動性をほとんど持たない概略シート状の紫外線硬化樹脂からなる第2の膜82を積層すると共に、当該第2の膜82の下面と第1の膜81の上面とを接着する。従って、ラダー型フィルタ50、50の上方における第2の膜82は、第1の膜81によって周囲が支持されて、ラダー型フィルタ50、50の表面から浮いた状態となる。次いで、マスクを介して各ポート5、6、7の上方側の領域以外の領域に紫外線を照射して硬化させ、続いて有機溶剤によりウエハWの表面を洗浄すると、図13(b)に示すように、各ポート5、6、7の上方領域にホール83が形成される。その後、図13(c)に示すように、例えばメッキにより各々のホール83に金属を埋め込み、各ホール83上に金属からなる既述の端子部60を配置する。こうして例えば各電極膜70、70間のダイシングラインにおいてウエハWを切断して圧電基板1をチップ化することにより、既述の図4に示すフィルタが形成される。その後、図示しない電子部品に対して各端子部60を当接させて接着することにより、当該電子部品に圧電基板1(フィルタ)が搭載される。
【0021】
上述の実施の形態によれば、容量素子8をなすSAW共振子である直列腕10によって2つのラダー型フィルタ50、50を互いに直列に接続して圧電基板1上に配置すると共に、当該直列腕10を覆うようにモールド材51を設けている。そのため、容量素子8をなす直列腕10における弾性表面波の発生を抑えて電気機械結合係数を小さくすることができるので、通過域における減衰量の増大を抑えながら、当該直列腕10の極を減衰させることができる。また、圧電基板1を電子部品に搭載する際に当該圧電基板1に積層するモールド材51を利用して、容量素子8をなす直列腕10を覆っているので、当該モールド材51とは別の材料を用いるよりも工程を簡略化できる。
【0022】
既述の例では、ラダー型フィルタ50、50として、夫々1つの直列腕10と当該直列腕10に対して並列に接続された1つの並列腕20とを備えた構成としたが、直列腕10の数量を夫々2つ以上にしても良いし、2つのラダー型フィルタ50、50における直列腕10の数量を互いに変えても(容量素子8をなす直列腕10から入力ポート5側及び出力ポート6側を見た時のラダー型フィルタ50、50が非対称であっても)良い。図14は、直列腕10を4つ配置すると共に、入力ポート5側から2つ目の直列腕10を容量素子8として構成することにより、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、2つの直列腕10と2つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、を容量素子8により互いに直列に接続した回路の例を示している。この場合においても、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により覆われる。また、図15は、直列腕10を5つ配置して、中央の直列腕10を容量素子8として構成した例を示している。この場合には、2つの直列腕10及び2つの並列腕20によって各々のラダー型フィルタ50、50が構成される。更に、図16は、直列腕10を5つ設けた場合において、入力ポート5側から2つ目の直列腕10を容量素子8として構成して、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、3つの直列腕10及び3つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50と、を容量素子8により互いに直列に接続した例を示している。これらの図15及び図16においても、容量素子8をなす直列腕10は、モールド材51により覆われる。更に、図15及び図16において、1つの直列腕10及び1つの並列腕20からなるラダー型フィルタ50を複数の容量素子8により接続しても良い。この場合にも、これら複数の容量素子8はモールド材51により覆われる。
【0023】
また、既述の例では、第1の膜81及び第2の膜82にホール83を形成し、当該ホール83に埋め込んだ金属の上方に端子部60を設けたが、この端子部60に代えて、既述のバンプ3を用いても良い。具体的には、図17に示すように、既述の図13(a)において第1の膜81上に第2の膜82を積層した後、マスクを介した紫外線の照射及び有機溶剤によるウエハWの表面の洗浄を行うことにより、各ポート5、6、7の上方側における第2の膜82を取り除く。即ち、ラダー型フィルタ50、50及び容量素子8をなす直列腕10の上方側の凹部を塞ぐように第2の膜82を形成する。そして、第1の膜81のホール83に金属を埋め込んだ後、ホール83の上方側に各々バンプ3を配置する。この場合においても、同様の効果が得られる。
【0024】
更に、既述の図19に示す構成においても、本発明を適用しても良い。即ち、パッケージ基板2に圧電基板1を搭載する前に、容量素子8をなす直列腕10を覆うようにウエハWの状態で圧電基板1上に樹脂膜を形成する。そして、ウエハWを切断した後、圧電基板1の表面におけるラダー型フィルタ50、50及び容量素子8をなす直列腕10の形成された面をパッケージ基板2側に当接させ、バンプ3を用いて、各ポート5、6、7と当該パッケージ基板2に形成された導電線路(図示せず)とを接続する。この場合においても、通過ロスの劣化を抑えながら、容量素子8をなす直列腕10の極を減衰させることができる。
【0025】
直列腕10を容量素子8として用いるにあたって、当該直列腕10の共振点は、通過域よりも例えばフィルタの中心周波数の2.5%程度(例えば2GHz帯のラダー型フィルタでは50MHz程度)高域側に設定される。
ここで、既述の各例において、容量素子8をなす直列腕10をモールド材51により覆うにあたって、当該直列腕10におけるIDT電極33及び2つの反射器34、34の上方にモールド材51を形成したが、弾性表面波の発生を抑えるためにはこのIDT電極33だけを覆うようにしても良い。また、容量素子8をなす直列腕10において弾性表面波の発生を抑えるにあたり、フィルタをモールドする時に用いるモールド材51を利用したが、このモールド材51以外の樹脂やゴムなど、粘性を持つと共に弾性表面波を吸収する(弾性表面波を減衰させる)材料であっても良い。
また、圧電基板1としては、既述のLiTaO3に変えて、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)や水晶など、圧電作用を有する基板を用いても良い。
以上において説明したバンドパスフィルタについて、例えば携帯端末のデュプレクサの送信側フィルタあるいは受信側フィルタ(SAWBPFやUMTS用TX段間フィルタ)として用いることにより、通過ロスの小さい電子部品を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 圧電基板
5 入力ポート
6 出力ポート
7 接地ポート
8 容量素子
10 直列腕
20 並列腕
50 ラダー型フィルタ
51 モールド材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第1のラダー型フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第2のラダー型フィルタと、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕を互いに直列に接続するIDT電極を備えたSAW共振子からなる容量素子と、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕、前記容量素子及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕の並びの一端側及び他端側に夫々接続された入力ポート及び出力ポートと、
前記容量素子における弾性表面波の発生を抑えるために、前記第1のラダー型フィルタ及び前記第2のラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子の前記IDT電極を覆うように前記圧電基板上に設けられ、前記容量素子にて発生する弾性表面波を吸収する吸収体と、を備えたことを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記吸収体は、前記圧電基板の表面をモールドするモールド材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバンドパスフィルタを備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項1】
圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第1のラダー型フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、各々SAW共振子からなる直列腕及び並列腕をラダー型に接続した第2のラダー型フィルタと、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕を互いに直列に接続するIDT電極を備えたSAW共振子からなる容量素子と、
前記第1のラダー型フィルタの直列腕、前記容量素子及び前記第2のラダー型フィルタの直列腕の並びの一端側及び他端側に夫々接続された入力ポート及び出力ポートと、
前記容量素子における弾性表面波の発生を抑えるために、前記第1のラダー型フィルタ及び前記第2のラダー型フィルタの形成された領域から外れた領域において当該容量素子の前記IDT電極を覆うように前記圧電基板上に設けられ、前記容量素子にて発生する弾性表面波を吸収する吸収体と、を備えたことを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記吸収体は、前記圧電基板の表面をモールドするモールド材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバンドパスフィルタを備えたことを特徴とする電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−75026(P2012−75026A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219597(P2010−219597)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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