説明

バンド装置

【課題】バンド装置において15N以上の締め付け力を容易且つ適切に確保できるようにする。
【解決手段】各板バネ1は、帯状の金属板に対し、その幅方向の断面において、この金属板の一面1aを湾曲内側とする湾曲を施してテンパー処理をした後、この金属板の他面1b側がリング内側となるようにこの金属板をリング状に成形し、前記幅方向の湾曲により直線状態に維持され、且つ、この湾曲を解除することで直線状態からリング状態に弾性復帰するように構成されている。各板バネ1は、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下としている。各板バネ1を、隣り合う板バネ1の一方の前記一面1aが隣り合う板バネ1の他方の前記他面1bに向き合うように重ねた状態で、帯状収納体2に納めてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直線状態から、弾性復帰を促す外力を作用させることで、巻回状態に復帰して、対象物に巻き付くリング状となるバンド装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
断面円弧状にて直線状態を保持し、この断面円弧状の解消により捲線状態に変形する可逆変形可能な細長い板バネを主体としたアームバンドがある。(特許文献1参照)この種のバンドは、前記断面円弧状を解消する外力を作用させることで捲線状態にいわば自動的に変形させて対象物(特許文献1では腕)に巻き付けることができるものである。
【0003】
このような板バネは、帯状の金属板に対し、その幅方向の断面において、この金属板の一面を湾曲内側とする湾曲を施した後、(第一の成形)この金属板の他面側がリング内側となるようにこの金属板をリング状に成形(第二の成形)することで得られる。
【0004】
かかる板バネは、前記第一の成形による幅方向の湾曲により直線状態に維持され、且つ、この湾曲を解消する外力を作用されたときに直線状態から前記第二の成形によるリング状態に弾性復帰するようになる。
【0005】
ここで、この種のバンドの巻き付き力、すなわち、かかるバンドによる対象物に対する締め付け力を18N以上にしようとする場合、前記金属板の厚さを増加させる手法が先ず考えられる。しかし、前記金属板はその厚さが0.2mmを超えると、前記直線状態の維持力と弾性復帰力とを適切に均衡させた状態を前記成形により創出することが困難となる。また、単純に前記金属板の厚さを増加させた場合、得られた板バネの寿命が短くなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3062990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のバンド装置において、15N以上の締め付け力を容易且つ適切に確保できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、バンド装置を、帯状をなす二以上の板バネと、
これらの板バネを一緒に収納する帯状収納体とを有するバンド装置であって、 前記各板バネは、リボン鋼又はステンレス製の帯状の金属板に対し、その幅方向の断面において、この金属板の一面を湾曲内側とする湾曲を施してテンパー処理をした後、この金属板の他面側がリング内側となるようにこの金属板をリング状に成形し、前記幅方向の湾曲により直線状態に維持され、且つ、この湾曲を解除することで直線状態からリング状態に弾性復帰するように構成されており、
各板バネは、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下としていると共に、
各板バネを、隣り合う板バネの一方の長さ方向に隣り合う板バネの他方の長さ方向が沿い、かつ、隣り合う板バネの一方の前記一面が隣り合う板バネの他方の前記他面に向き合うように重ねた状態で、前記帯状収納体に納めてなるものとした。
【0009】
前記のように重ね合わされた各板バネが直線状態にある状態においてこの板バネの両端末間に前記幅方向の湾曲を解く向きの外力を作用させると、この外力の作用された箇所において各板バネのかかる幅方向の湾曲が解かれると共に、この箇所から各板バネの弾性復帰が開始される。かかる各板バネの幅方向の湾曲は前記外力が作用された箇所から次第にその端末に向けて解かれて行き、また、これに伴って各板バネは前記外力が作用された箇所を中心としてその両端末を次第に近づける向きに湾曲して行き、最終的には完全に弾性復帰して前記リング状態となる。各板バネはそれぞれ、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下とすることから、各板バネには前記成形によって前記直線状態の維持力と弾性復帰力とをどちらかに偏ることなく適切に具備させることができる。また、二以上の板バネによって、バンド装置が18N以上の締め付け力を発揮するようにすることができる。
【0010】
前記帯状収納体の一面に雌雄をなす面状ファスナーの一方を備え、かつ、他面に雌雄をなす面状ファスナーの他方を備えるようにしておくこともある。このようした場合、かかる面状ファスナーにより、前記各板バネがリング状態となったときに、帯状収納体の一端側と他端側とを係合させることができ、対象物にバンド装置が巻き付いた状態をこの面状ファスナーによっても維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、直線状態から外力の作用によりリング状態に移行して対象物を18N以上の力で締め付けるバンド装置を、容易且つ適切に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施の形態にかかるバンド装置を構成する板バネの斜視図であり、板バネは直線状態にある。
【図2】図2は図1におけるA−A線位置での断面図である。
【図3】図3は前記バンド装置を構成する板バネの斜視図であり、板バネはリング状態にある。
【図4】図4は図3におけるB−B線位置での断面図である。
【図5】図5は前記バンド装置を構成する板バネと帯状収納体とを分離させた状態で示した斜視図である。
【図6】図6は前記バンド装置の斜視図であり、バンド装置は直線状態にある。
【図7】図7は前記バンド装置を図6と反対の向きから示した斜視図であり、バンド装置は直線状態にある。
【図8】図8は前記バンド装置の斜視図であり、バンド装置はリング状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図8に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるバンド装置Bは、直線状態から、弾性復帰を促す外力を作用させることで、リング状態に復帰して、対象物(図示は省略する。)に巻き付くものである。
【0014】
かかるバンド装置Bは、帯状をなす二以上の板バネ1、1…と、これらの板バネ1、1…を一緒に収納する帯状収納体2とから構成されている。
【0015】
図示の例では、バンド装置Bは、同寸、同形の三枚の板バネ1…1を、隣り合う板バネ1の一方の長さ方向に隣り合う板バネ1の他方の長さ方向が沿い、かつ、隣り合う板バネ1の一方の一面1aが隣り合う板バネ1の他方の他面1bに向き合うように重ねた状態で、帯状収納体2に納めることで構成されている。
【0016】
図示の例では、三枚の板バネ1…1をこのように重ね合わせた状態を、前記帯状収納体2によって維持させている。図示の例では、帯状収納体2は、前記板バネ1と略同じ長さと、略同じ幅とを有し、その一端に形成された開放箇所2aから、板バネ1をその一方の端末1cを先にして内部に差し込むことが可能な、扁平な袋状をしている。また、帯状収納体2は、三枚の板バネ1…1を互いに密着させた状態で納めるように構成されている。図示の例とは別に、各板バネ1は、その両端末1c、1c間の一箇所において、ネジやリベットなどを用いて固着させるようにしておいても良い。
【0017】
各板バネ1はそれぞれ、帯状の金属板に対し、その幅方向の断面において、この金属板の一面を湾曲内側とする湾曲を施してテンパー処理をした後、この金属板の他面側がリング内側となるようにこの金属板をリング状に成形し、前記幅方向の湾曲により直線状態に維持され、且つ、この湾曲を解除することで直線状態からリング状態に弾性復帰するように構成されている。
【0018】
典型的には、かかる板バネ1は、リボン鋼又はステンレス製の帯状の金属板に前記幅方向の湾曲を成形機により施した後、これにテンパー処理を施し(一例として摂氏250度程度で20分程度のテンパー処理)、次いでこれを成形機により前記リング状となるように成形する。すなわち、かかる成形により、板バネ1は、弾性復帰時に一方の端末1cの外側に他方の端末1cを位置させて両端末1cを重ね合わせ全体としてリング状をなすようになる。
【0019】
かかる板バネ1は、前記幅方向の湾曲により、弾性復帰時には前記リング状を呈するにもかかわらず、(図3)直線状態が維持されるようになっている。(図1)この直線状態において、板バネ1の幅方向の断面形状は、その長さ方向のいずれの位置においても、前記金属板の一面1aを湾曲内側とする弧状をなしている。(図2)
【0020】
前記のように重ね合わされた各板バネ1が直線状態にある状態においてこの板バネ1の両端末1c、1c間に前記幅方向の湾曲を解く向きの外力を作用させると、この外力の作用された箇所において各板バネ1のかかる幅方向の湾曲が解かれると共に、この箇所から各板バネ1の弾性復帰が開始される。かかる各板バネ1の幅方向の湾曲は前記外力が作用された箇所から次第にその端末1cに向けて解かれて行き、また、これに伴って各板バネ1は前記外力が作用された箇所を中心としてその両端末1cを次第に近づける向きに湾曲して行き、最終的には完全に弾性復帰して前記リング状態となる。
【0021】
また、前記各板バネ1はそれぞれ、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下としている。板バネ1、つまり、前記金属板の厚さが0.05mm未満であると、前記の成形をしても前記のようにリング状になるときの弾性復帰力が大きく確保できないため、バンド装置Bに18N以上の締め付け力を付与するために必要となる板バネ1の枚数を徒に多くする。また、前記金属板の幅が25mm未満であるときも、前記の成形をしても前記のようにリング状になるときの弾性復帰力が大きく確保できない。一方、金属板の厚さが0.2mm超であると、前記直線状態の維持力と弾性復帰力とを適切に均衡させた状態を前記成形により創出することが困難であり、また、単純に前記金属板の厚さを増加させた場合、得られた板バネ1の寿命が短くなることが認められる。前記各板バネ1をそれぞれ、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下とすることで、各板バネ1には前記成形によって前記直線状態の維持力と弾性復帰力とをどちらかに偏ることなく適切に具備させることができる。また、二以上の板バネ1によって、18N以上の締め付け力を発揮するバンド装置Bを適切に構成することができる。
【0022】
バンド装置Bが対象物に巻き付いた状態は、リング状態となった板バネ1の両端末1c、1c間の距離を離隔させるように操作してこの板バネ1を再び直線状態に向けて弾性変形させることで解くことができる。板バネ1は前記他面1bをリング内側とするリング状態の湾曲を解かれると代わりに前記幅方向の湾曲を生じるようになっており、前記操作により板バネ1は最終的にその長さ方向に亘るどの箇所においても前記幅方向に湾曲された状態となって直線状態に復帰される。すなわち、板バネ1は直線状態からリング状態に変形可能で且つリング状態から直線状態に変形可能であり、かつ、外力を作用されない限り板バネ1のいずれの状態も維持されるようになっている。
【0023】
また、この実施の形態にあっては、バンド装置Bを構成する前記帯状収納体2の一面1aには雌雄をなす面状ファスナーの一方2bが備えられ、かつ、他面1bには雌雄をなす面状ファスナーの他方2cが備えられている。
【0024】
かかる帯状収納体2は、典型的には織物生地などよりなる二枚のシート2d、2dをその長さ方向に亘る両縁部において互いに縫着などさせて構成され、前記板バネ1の変形を抵抗少なく許容するように構成される。そして、この二枚のシート2d、2dの一方の外面に雌雄をなす面状ファスナーの一方2bを設けさせ、かつ、かかる二枚のシート2d、2dの他方の外面に雌雄をなす面状ファスナーの他方2cを設けさせる。これによりこの実施の形態にあっては、かかる面状ファスナー2b、2cにより、前記各板バネ1がリング状態となったときに、帯状収納体2の一端側と他端側とを係合させることができ、(図8)対象物にバンド装置Bが巻き付いた状態をこの面状ファスナーによっても維持することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 板バネ
1a 一面
1b 他面
2 帯状収納体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状をなす二以上の板バネと、
これらの板バネを一緒に収納する帯状収納体とを有するバンド装置であって、 前記各板バネは、リボン鋼又はステンレス製の帯状の金属板に対し、その幅方向の断面において、この金属板の一面を湾曲内側とする湾曲を施してテンパー処理をした後、この金属板の他面側がリング内側となるようにこの金属板をリング状に成形し、前記幅方向の湾曲により直線状態に維持され、且つ、この湾曲を解除することで直線状態からリング状態に弾性復帰するように構成されており、
各板バネは、厚さを0.05mm以上0.2mm以下とし、幅を25mm以上100mm以下とし、かつ、長さを400mm以上1500mm以下としていると共に、
各板バネを、隣り合う板バネの一方の長さ方向に隣り合う板バネの他方の長さ方向が沿い、かつ、隣り合う板バネの一方の前記一面が隣り合う板バネの他方の前記他面に向き合うように重ねた状態で、前記帯状収納体に納めてなることを特徴とするバンド装置。
【請求項2】
帯状収納体の一面に雌雄をなす面状ファスナーの一方が備えられ、かつ、他面に雌雄をなす面状ファスナーの他方が備えられていることを特徴とする請求項1に記載のバンド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−106914(P2013−106914A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256658(P2011−256658)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(592174659)有限会社佐野機工 (2)
【Fターム(参考)】