説明

バンパへのセンサ固定用リテーナ

【課題】車両用障害物検出装置において、1種類のリテーナで異なる厚みのバンパに対応できるようにする。
【解決手段】リテーナ2を構成するセンサ支持部9から延設される一対の支柱部11と、支柱部11の延設方向と直交する方向にセンサ支持部9から延設される一対の支柱部12が、弾性変形可能となるようにする。そして、このリテーナ2が異なる厚みのバンパ22,28に取り付けられたとき、支柱部11とバンパ22,28の肉厚方向とがなす角度α1を変化させることにより、リテーナ2に取り付けられたセンサの先端部3のマイク面3aが、バンパ22,28の外側面22b,28bと面一になるようにして、固定部13,14をバンパ22,28の内側面22a,28aに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパに固定され、車両と障害物との距離を計測する障害物検出装置におけるセンサ固定用リテーナに関するものである。なお、車両と障害物との距離を計測する装置は、「クリアランスソナー」等と称されている。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、超音波センサを使用した障害物検出装置について説明する。超音波センサが、車両のバンパの取付孔に直接的に(ベゼル等を介することなく)取り付けられる形態の超音波センサ装置(ベゼルレス超音波センサ装置)は、超音波を発するセンサと、それを支持するリテーナとを備えている。ここで、センサは、その先端部のマイク面(超音波の発射面)がバンパの外側面と面一になるようにして取り付けられる(特許文献1を参照)。これにより、超音波センサ装置が目立たなくなって意匠性が良好になるとともに、超音波の指向性に支障が生じなくなる。
【0003】
ここで、センサはリテーナによって支持された状態でバンパの内側面に取り付けられる。バンパは、車種に応じて複数種類の厚みのもの(2〜3.4mm)が存する。しかし、従来の超音波センサ装置のリテーナは、特定の厚みのバンパに対して専用のものを使用しており(換言すれば、リテーナの高さが一定であり)、異なる厚みのバンパに対応することは困難であった。
【0004】
上記の不具合を解消するため、例えばリテーナとバンパとの間にスペーサを介在させて調整することが考えられる。しかし、バンパの厚みに応じて複数種類のスペーサを用意しなければならず、部品点数が増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−527480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記した不具合に鑑み、1種類のリテーナで異なる厚みのバンパに対応できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明は、
所定の肉厚を有する車両のバンパに形成されたセンサ設置部である開口又は凹部に対しセンサの先端部が入り込むように、センサとバンパとの間に介在して該センサを前記バンパの内側面に固定するリテーナであって、
前記センサは、前記バンパの内側面からセンサ設置部に入り込む前記先端部を含む第1部分と、その第1部分と一体的にかつ該第1部分から前記バンパの内側面から遠ざかる部位に位置する第2部分とを備え、
前記リテーナは、その第2部分を保持するセンサ支持部と、そのセンサ支持部から前記バンパの内側面の側へ伸びる複数の支柱部と、該支柱部の先端側部分又は該支柱部からさらに先端側に延長された部分で構成され、前記バンパの内側面に固定される固定部と、を備え、
前記支柱部のセンサ支持部に対する接続部と前記固定部とを結ぶ直線の、前記バンパの肉厚方向に対する角度が拡大・縮小する向きに変化するように前記センサ支持部と複数の支柱部及び固定部との関係が設定され、前記直線の前記バンパの肉厚方向に対する角度の変化に基づき、前記センサの先端部と前記固定部との該バンパの肉厚方向における距離が可変とされ、前記センサの先端部が前記バンパのセンサ設置部に対して該バンパの肉厚の相違に拘らず一定の位置を占めるように前記角度が調整された状態で、前記固定部がバンパの内側面における最適位置に固定されることにより、当該リテーナを介して前記センサがバンパに固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るセンサ固定用リテーナは上記のように構成され、複数の支柱部がバンパの肉厚方向となす角度が変化する。これにより、センサの先端部と固定部とのバンパの肉厚方向における距離が可変となる。この結果、バンパの肉厚の相違に拘らず、センサの先端部が一定の位置を占めるようにバンパに取り付けられる。複数の支柱部がバンパの肉厚方向となす角度を変化させるためには、支柱部を弾性変形させたり、支柱部をセンサ支持部との接続部を中心に回動自在に設けたりすることにより、実現可能である。
【0009】
この支柱部は、センサの先端部がリテーナのセンサ支持部からバンパの側に向かって突出して取り付けられている場合、センサの突出部を挟む形で、少なくとも一対の支柱部を対向して設けることができる。これにより、バンパに固定されたリテーナが安定して配置される。
【0010】
前記リテーナは樹脂材よりなり、前記センサ支持部、前記支柱部及び前記固定部が一体に設けられている。これにより、リテーナの支柱部に可撓性をもたせるようにすることができるため、支柱部を弾性変形させることができる。
【0011】
前記リテーナには、一端部が前記固定部における前記支柱部と連結されていない側の端部と回動自在に連結されるとともに、他端部が前記センサ支持部に向かって延設され、前記センサ支持部の側壁部で、その厚み方向における任意の位置で回動自在に連結される延設部が設けることができる。
【0012】
そして、前記センサ支持部の側壁部には、前記バンパの肉厚方向に該バンパの厚みに対応する目盛り部が段階的に設けられていて、
前記延設部の他端部は、前記目盛り部に係合して連結されるようにすることが望ましい。
【0013】
センサ支持部に、バンパの厚みに対応する目盛り部が設けられている。この目盛り部により、バンパの厚みの変化に迅速に対応することができる。
【0014】
また、前記支柱部は可撓材よりなるものが対向して設けられ、
前記固定部と前記バンパの内側面との固定位置をそのままにして前記支柱部を外部から内部に向かって強制的に撓ませることにより、前記支柱部と前記バンパの肉厚方向とがなす角度が調整されるようにすることができる。
【0015】
そして、U字形状部材で前記対向する支柱部を外側から挟み込み、それらが互いに接近する方向に撓ませ、かつその撓み状態を保持させることにより、前記支柱部と前記バンパの肉厚方向とがなす角度が調整されるようにすることができる。
【0016】
さらに、前記対向する支柱部には、それらの長さ方向に前記バンパの厚みに対応する目盛り部が段階的に設けられ、
前記U字形状部材で前記支柱部における所定の目盛り部を挟み込んで、前記支柱部を撓ませることができる。
【0017】
前記センサは、その先端面から発射波を発信し、障害物に当たった反射波を受信して、前記車両から前記障害物までの距離を計測する。このセンサとして、超音波センサ、電磁波反射型センサ、レーザ等が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例の超音波センサ装置101をバンパ22に取り付けた状態の斜視図である。
【図2】超音波センサ装置101のセンサ1とリテーナ2を分離した状態の斜視図である。
【図3】(a)はセンサ1の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく底面図である。
【図4】(a)はリテーナ2の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく底面図、(d)は同じく側面図である。
【図5】一部を破断した超音波センサ装置101の側面図である。
【図6】(a)は第1実施例の超音波センサ装置101を厚さt1のバンパ22に取り付けたときの側面図、(b),(c)は厚さt2のバンパ28に取り付けるときの作用説明図である。
【図7】(a),(b)は、リテーナ2の支柱部11と固定部13とを回動させることによって、第1実施例の超音波センサ装置101を厚さt2のバンパ28に取り付けるときの作用説明図である。
【図8】(a)は、リテーナ2の支柱部11を回動させ、かつその下半部を撓ませることによって、第1実施例の超音波センサ装置101を厚さt2のバンパ28に取り付けるときの作用説明図、(b)はリテーナ2の支柱部11の途中の部分を回動させることによって、厚さt2のバンパ28に取り付けるときの作用説明図である。
【図9】第2実施例の超音波センサ装置102をバンパ22,28に取り付けるときの作用説明図である。
【図10】(a)は第3実施例の超音波センサ装置103の側面図、(b)は同じく平面図である。
【図11】第3実施例の超音波センサ装置103の作用説明図である。
【図12】(a)は、バンパ22の段付き形状の取付孔26に第1実施例の超音波センサ装置101を取り付けたときの側面図、(b)は、同じく凹部38に第1実施例の超音波センサ装置101を取り付けたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は第1実施例の超音波センサ装置101をバンパ22に取り付けた状態の斜視図、図2は超音波センサ装置101のセンサ1とリテーナ2を分離した状態の斜視図、図3の(a)はセンサ1の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく底面図、図4の(a)はリテーナ2の平面図、(b)は同じく正面図、(c)は同じく底面図、(d)は同じく側面図、図5は一部を破断した超音波センサ装置101の側面図である。
【実施例1】
【0020】
第1実施例の超音波センサ装置101について説明する。図1及び図2に示されるように、超音波センサ装置101は、センサ1と、センサ1を支持するリテーナ2とを備え、リテーナ2にセンサ1が一体に組み込まれてなる。
【0021】
最初に、センサ1について説明する。図3に示されるように、センサ1は、下端部(先端部3)が細くなった2段の円柱形状で、先端面(マイク面3a)から超音波を発する本体部4と、本体部4の上端部に一体に取り付けられる直方体形状の筐体部5とを有する。平面視における筐体部5の大きさは、本体部4よりも少し大きく、本体部4の周囲に張り出している。筐体部5の一側面部には、ケーブル(図示せず)を接続する接続端子部6が設けられている。筐体部5における接続端子部6が設けられていない側面部には、リテーナ2に取り付けられたときにリテーナ2との位置決め及びずれ止めを行う柱形状の各位置決め部7a,7b,7cが、筐体部5の高さ方向に沿って設けられている。このうち、接続端子部6と反対側の面に設けられた位置決め部7bは、筐体部5の側面部における幅方向の中央部から少しずれて設けられているため、作業者が誤ってセンサ1を反対に取り付けてしまうことが防止される。また、筐体部5における他の2つの側面部のほぼ中央部には、リテーナ2に取り付けられたときにリテーナ2の内周面と係合し、リテーナ2から抜け出ることを防止するための係合突起部8が、それぞれ設けられている。
【0022】
次に、リテーナ2について説明する。図4に示されるように、リテーナ2は樹脂材(例えば、ポリブチンテレフタレート)よりなり、平面視において方形状で、センサ1の筐体部5を嵌め込んで支持するセンサ支持部9と、センサ支持部9の各辺の周縁部から斜め下方に向かって突出する二対(合計4本)の支柱部11,12と、各支柱部11,12の先端部と連結する固定部13,14とを備える。各対の固定部13,14は、対応する支柱部11,12から同一の幅で延設されている。
【0023】
センサ支持部9は、方形板状の底面部15における3つの周縁部(センサ1の接続端子部6が配置される周縁部を除く3つの周縁部)から高さ方向に、薄板形状の各側壁部16a,16b,16cが延設されてなる。また、底面部15には、センサ1の先端部3を挿通させるための貫通孔15aが設けられている。3つの側壁部16a,16b,16cのうち、対向配置される側壁部16a,16cどうしの内幅はセンサ1の筐体部5の幅よりも少し広く、それらの内周面には、センサ1の各係合突起部8を係合させる被係合部17が設けられている。また、各側壁部16a,16b,16cには、センサ1の各位置決め部7a,7b,7cを嵌合させる溝部18a,18b,18cが設けられている。
【0024】
センサ支持部9の3つの側壁部16a,16b,16cに、センサ1の筐体部5が嵌め込まれる。このとき、センサ1の本体部4は、センサ支持部9の底面部15の貫通孔15aに挿通され、その先端部3はセンサ支持部9よりも下方に突出する。また、センサ1の接続端子部6は、センサ支持部9の開放部分(側壁部16a,16b,16cが設けられていない部分)から側方に突出する。
【0025】
第1実施例の超音波センサ装置101のリテーナ2の場合、一対の支柱部11の幅は、一対の支柱部12の幅よりも広くなっている。リテーナ2は、これらの支柱部11,12の底面部に取り付けられた接着部材(例えば、両面テープ19,21)によって、バンパ22の裏面(内側面22a)に接着される(図1参照)。このとき、幅の広い固定部13が、リテーナ2とバンパ22とを接着する主固定部となり、幅の狭い固定部14が補助固定部となる。支柱部11,12及び固定部13,14の構成は、それらの幅を除いて同一であるため、以下、幅の広い支柱部11及び固定部13についてのみ説明する。なお、以下の図においては説明を容易にするため、一部の寸法を変更したり、一部の部材の図示を省略したりする場合がある。
【0026】
図5に示されるように、支柱部11の一端部は、センサ支持部9と一体成形されている。また、支柱部11の他端部は、肉厚の薄い薄肉部23を介して固定部13と一体成形されている。この支柱部11は薄く、弾性変形可能である。そして、支柱部11が弾性変形することにより、支柱部11とバンパ22の肉厚方向とがなす角度αが可変である。
【0027】
また、支柱部11を、センサ支持部9との連結部24において矢印P1の方向に回動自在とすることもできる。これによって、支柱部11とバンパ22の肉厚方向とがなす角度αを自在に変化させることができる。同様に、固定部13を、支柱部11との連結部25において矢印P2の方向に回動自在とすることもできる。これによって、支柱部11が固定部13となす角度βを自在に変化させることができる。上記したように、リテーナ2における支柱部11を弾性変形可能とする場合と、支柱部11を弾性変形可能とせず、連結部24,25において回動自在とする場合、及び支柱部11を弾性変形可能とし、かつ連結部24,25において回動自在とする場合を考えることができる。なお、従来のリテーナの場合、支柱部11は弾性変形困難で、かつセンサ支持部9又は固定部13に対して回動困難に連結されていて、固定支柱部11とバンパ22の肉厚方向とがなす角度α及び支柱部11と固定部13とがなす角度βを変化させることは困難である。
【0028】
本実施例の超音波センサ装置101のリテーナ2の作用について説明する。最初に、支柱部11を撓ませる(弾性変形させる)ことによって、厚みの異なるバンパ22に取り付ける場合を説明する。図6の(a)に示されるように、厚みがt1のバンパ22に第1実施例のリテーナ2によってセンサ1が取り付けられている。センサ1のマイク面3aは、バンパ22の外側面22bと面一に配置されている。この状態で、支柱部11とバンパ22の肉厚方向とがなす角度をα1、固定部13の先端部どうしの距離をL1とする。
【0029】
次に、このリテーナ2を使用して、厚みt2の厚い(t2>t1)のバンパ28にセンサ1を取り付ける。図6の(b)に示されるように、バンパ28の外側で、取付孔26と対応する位置に組付け治具(ストッパ27)を宛がい、取付孔26を閉塞する。バンパ28の内側から、バンパ28の取付孔26に向かって超音波センサ装置101が下降される。バンパ28の厚みt2が厚くなっているため、センサ1のマイク面3aがストッパ27に当接するよりも先に、固定部13がバンパ28の内側面28aに当接する。換言すれば、センサ1のマイク面3aとバンパ28の外側面28bとの間に隙間e1が形成される。そのままセンサ1を押し込み、マイク面3aをストッパ27に当接させると、図6の(c)に示されるように、リテーナ2の一対の支柱部11が撓み、固定部13の先端部を外側に押し広げる。この結果、固定部13の先端部どうしの距離L2は、距離L1(図6の(a)参照)よりも少し長くなる(L2>L1)。この状態で、一対の固定部13が、両面テープ19(図5参照)によってバンパ28の内側面28aに固定され、超音波センサ装置101が、そのセンサ1のマイク面3aをバンパ28の外側面28bと面一にして取り付けられる。
【0030】
次に、このリテーナ2の作用について、支柱部11及び固定部13を回動させることによって、厚みt1,t2の異なるバンパ22,28に取り付ける場合を説明する。上記した第1実施例の場合と同様に、厚みがt1のバンパ22に取り付けられているリテーナ2を(図6の(a)参照)、厚みの厚い(t2)のバンパ28に取り付ける。図7の(a)に示される状態でセンサ1を押し込み、マイク面3aをストッパ27に当接させる。すると、リテーナ2の支柱部11がセンサ支持部9との連結部24を中心に、上方(センサ支持部9に接近する方向)に向かって回動し、支柱部11とバンパ28の肉厚方向とがなす角度が、α1(図6の(a)参照)より大きいα2に変化する(α2>α1)。このため、一対の支柱部11が拡開され、固定部13の先端部はより遠くに配置される。同時に、支柱部11と固定部13との連結部25がバンパ28の内側面28aに当接する。このとき、角度α1,α2の変化により、固定部13は少し斜めに配置される。
【0031】
図7の(b)に示されるように、一対の固定部13が支柱部11との連結部25を中心に下方(センサ支持部9から遠ざかる方向)に回動し、固定部13がバンパ28の内側面28aに固定され、超音波センサ装置101が、そのセンサ1のマイク面3aをバンパ28の外側面28bと面一にして取り付けられる。そして、固定部13の先端部どうしの距離L3は、距離L1(図6の(a)参照)よりも少し長くなる。
【0032】
図8の(a)に示されるように、厚みt2の厚いバンパ28に超音波センサ装置101を取り付けるとき、支柱部11の上半部が、センサ支持部9との連結部24を中心に回動し(そのときに支柱部11とバンパ28の肉厚方向とがなす角度をα3とする。)、かつ支柱部11の下半部が撓むことにより、超音波センサ装置101がバンパ22,28の厚みt1,t2の差を吸収して取り付けられる形態であってもよい。
【0033】
一対の支柱部11の上側の回動中心29がセンサ支持部9との連結部24に設けられておらず、例えば図8の(b)に示されるように、支柱部11の途中の部分に設けられていてもよい。この場合、支柱部11の上半部は変形せず、支柱部11の下半部がその途中に設けられた回動中心29を中心に回動することによって、超音波センサ装置101がバンパ22,28の厚みt1,t2の差を吸収して取り付けられる形態であってもよい。
【実施例2】
【0034】
次に、第2実施例の超音波センサ装置102について説明する。図9の(a)に示されるように、第2実施例の超音波センサ装置102を構成するリテーナ2のセンサ支持部9において、一対の支柱部11と対応するセンサ支持部9の側壁部の下部には、上方に向かうにつれて外側に張り出す形態で刻み部30が階段状に設けられている。また、固定部13の先端部(支柱部11との連結部24と反対側の端部)からセンサ支持部9に向かう延設部31が設けられている。第1実施例の超音波センサ装置101と同様に、支柱部11はセンサ支持部9に対して回動自在であり、固定部13は支柱部11に対して回動自在である。延設部31を回動させた状態を、二点鎖線で示す。また、延設部31は、固定部13との連結部32を中心に回動自在である。延設部31の先端部は鋭角状になっていて、刻み部30と係合可能である。
【0035】
延設部31が刻み部30に係合された状態で、刻み部30、支柱部11、固定部13及び延設部31により、四角形33が形成される。この四角形33における固定部13が水平に配置されるようにすると、固定部13の底面部からセンサ1のマイク面3aまでの高さH2は、刻み部30と延設部31との係合位置によって一意に決まる。この状態で、支柱部11とバンパ22の肉厚方向とがなす角度をα4とする。
【0036】
そして、図9の(b)に示されるように、刻み部30と延設部31との係合位置を上方へ移動させると、それに伴って固定部13と延設部31との連結部32も上方へ移動する。この状態で固定部13が水平に配置されるようにセンサ支持部9に対して支柱部11を回動させると、支柱部11とバンパ28の肉厚方向とがなす角度α4はα5に変化する。この結果、固定部13の底面部からセンサ1のマイク面3aとの高さH3が大きくなる。換言すれば、刻み部30と延設部31との係合位置を変化させることによって、高さH2,H3を変化させることができる。そして、この高さH2,H3は、バンパ22,28の厚みt1,t2に相当する。
【0037】
ここで、刻み部30の各段位置に、固定部13の底面部からセンサ1のマイク面3aとの高さH2,H3を表示する目盛り34を設けておくことができる。即ち、作業者は、予めバンパ22,28の厚みt1,t2に応じて刻み部30と延設部31との係合位置を決めておくことができる。この場合、超音波センサ装置102を、そのままバンパ22,28に取り付けることができ、ストッパ27が不要になるという効果が奏される。
【実施例3】
【0038】
次に、第3実施例の超音波センサ装置103について、第1実施例の超音波センサ装置101と異なる部分について説明する。第3実施例の超音波センサ装置103は、図10の(a),(b)に示されるように、リテーナ2における一対の支柱部11の外側部分に階段状の長さ調整部35が設けられている。そして、一対の支柱部11における長さ調整部35に嵌合されるゲージ具36を備える。このゲージ具36は平面視において略U字状で、内幅Wは、一対の支柱部11における長さ調整部35どうしの間隔Kに対応して設けられている。そして、長さ調整部35の各段部の間隔Kに対応する複数種類のゲージ具36が、予め用意されている。
【0039】
第3実施例の超音波センサ装置103の作用について説明する。図11の(a)に示されるように、この超音波センサ装置103がバンパ22に取り付けられたとき、センサ1のマイク面3aがバンパ22の外側面22bから僅かな距離e2だけ凹んでいた場合を考える。このとき、一対の支柱部11の外側から、その長さ調整部35におけるいずれかの段部にゲージ具36が嵌め込まれる。このとき、リテーナ2の間隔Kよりも短い内幅Wを有するゲージ具36が嵌め込まれる。図11の(b)に示されるように、一対の支柱部11は、ゲージ具36によって外側から内側に向かって押圧され、湾曲して撓む。一対の支柱部11が撓むことにより、センサ支持部9が押し下げられ、センサ1のマイク面3aがバンパ22の外側面22bと面一に配置される。もし、センサ支持部9の押下げ量が少ない場合(又は多い場合)には、長さ調整部35においてゲージ具36を嵌め込む段部の位置を変更することによって、その押下げ量を調整することができる。
【0040】
そして、第2実施例の超音波センサ装置102のように、長さ調整部35の各段部に目盛りを設け、一対の支柱部11が撓んだときの変形量を記しておくことができる。
【0041】
第3実施例の超音波センサ装置103は、リテーナ2をバンパ22に取り付けた後でセンサ1のマイク面3aの高さ位置を調整できるという利点がある。
【0042】
上記した各実施例の超音波センサ装置101〜103が取り付けられるバンパ22,28の取付孔26は、ストレート形状の貫通孔である。しかし、図12の(a)に示されるように、段付き形状の取付孔26であってもよい。また、センサ1が電磁波反射型センサの場合、その先端面(超音波センサの場合のマイク面3a)がバンパ22の外側面22bに露出している必要はない。このため、図12の(b)に示されるように、凹部38であってもよい。凹部38の場合、センサ1の位置決めが容易であるという利点がある。このため、センサ1の位置決めを考慮しなくてもよいのであれば、センサ1の先端面をバンパ22の内側面22aに当接させる形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、車両における障害物検出装置、特に超音波センサを使用した障害物検出装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
101〜103 超音波センサ装置(障害物検出装置)
1 センサ
2 リテーナ(センサ固定用リテーナ)
3 センサの先端部
4 本体部(第1部分)
5 筐体部(第2部分)
9 センサ支持部
11,12 支柱部
13,14 固定部
22,28 バンパ
22a,28a 内側面
24 連結部(センサ支持部に対する接続部)
26,37 取付孔(開口)
29 回動中心(接続部)
30 刻み部
31 延設部
34 目盛り
36 ゲージ具(U字状部材)
38 凹部
P1,P2 角度が拡大・縮小する向き
t1,t2 肉厚
α,α1〜α4 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の肉厚を有する車両のバンパに形成されたセンサ設置部である開口又は凹部に対しセンサの先端部が入り込むように、センサとバンパとの間に介在して該センサを前記バンパの内側面に固定するリテーナであって、
前記センサは、前記バンパの内側面からセンサ設置部に入り込む前記先端部を含む第1部分と、その第1部分と一体的にかつ該第1部分から前記バンパの内側面から遠ざかる部位に位置する第2部分とを備え、
前記リテーナは、その第2部分を保持するセンサ支持部と、そのセンサ支持部から前記バンパの内側面の側へ伸びる複数の支柱部と、該支柱部の先端側部分又は該支柱部からさらに先端側に延長された部分で構成され、前記バンパの内側面に固定される固定部と、を備え、
前記支柱部のセンサ支持部に対する接続部と前記固定部とを結ぶ直線の、前記バンパの肉厚方向に対する角度が拡大・縮小する向きに変化するように前記センサ支持部と複数の支柱部及び固定部との関係が設定され、前記直線の前記バンパの肉厚方向に対する角度の変化に基づき、前記センサの先端部と前記固定部との該バンパの肉厚方向における距離が可変とされ、前記センサの先端部が前記バンパのセンサ設置部に対して該バンパの肉厚の相違に拘らず一定の位置を占めるように前記角度が調整された状態で、前記固定部がバンパの内側面における最適位置に固定されることにより、当該リテーナを介して前記センサがバンパに固定されることを特徴とするバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項2】
前記支柱部が弾性変形することによって、前記支柱部が前記バンパの肉厚方向となす角度が変化することを特徴とする請求項1に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項3】
前記複数の支柱部は、前記センサ支持部との接続部を中心に回動自在であり、
前記複数の支柱部が前記センサ支持部との接続部を中心に回動することにより、前記支柱部が前記バンパの肉厚方向となす角度が変化することを特徴とする請求項1又は2に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項4】
前記センサの先端部は、前記リテーナのセンサ支持部から前記バンパの側に向かって突出して取り付けられ、
前記センサの突出部を挟む形で、少なくとも一対の支柱部が対向して設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項5】
前記リテーナは樹脂材よりなり、前記センサ支持部、前記支柱部及び前記固定部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項6】
前記リテーナには、一端部が前記固定部における前記支柱部と連結されていない側の端部と回動自在に連結されるとともに、他端部が前記センサ支持部に向かって延設され、前記センサ支持部の側壁部で、その厚み方向における任意の位置で回動自在に連結される延設部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項7】
前記センサ支持部の側壁部には、前記バンパの肉厚方向に該バンパの厚みに対応する目盛り部が段階的に設けられていて、
前記延設部の他端部は、前記目盛り部に係合して連結されることを特徴とする請求項6に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項8】
前記支柱部は可撓材よりなるものが対向して設けられ、
前記固定部と前記バンパの内側面との固定位置をそのままにして前記支柱部を外部から内部に向かって強制的に撓ませることにより、前記支柱部と前記バンパの肉厚方向とがなす角度が調整されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項9】
U字形状部材で前記対向する支柱部を外側から挟み込み、それらが互いに接近する方向に撓ませ、かつその撓み状態を保持させることにより、前記支柱部と前記バンパの肉厚方向とがなす角度が調整されることを特徴とする請求項8に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項10】
前記対向する支柱部には、それらの長さ方向に前記バンパの厚みに対応する目盛り部が段階的に設けられ、
前記U字形状部材で前記支柱部における所定の目盛り部を挟み込んで、前記支柱部を撓ませることを特徴とする請求項9に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項11】
前記センサの先端面が前記バンパの外側面と面一に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。
【請求項12】
前記センサは、その先端面から発射波を発信し、障害物に当たった反射波を受信して、前記車両から前記障害物までの距離を計測することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載のバンパへのセンサ固定用リテーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−86583(P2012−86583A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232205(P2010−232205)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)