説明

バーチカル型III族窒化物半導体発光素子およびその製造方法

【課題】ラテラル構造およびフリップチップ構造の問題を解決し、さらに発光層で発生した紫外光のうち、裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができるバーチカル型III族窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子100は、p側電極層111と、導電性サポート部109と、接続層108と、反射電極層107と、p型半導体積層体105、発光層104およびn型半導体積層体103からなるIII族窒化物半導体積層体と、n側電極層110とを順に具え、前記反射電極層107は、前記p型半導体積層体105に直接接合するロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、発光波長が200〜495nmの範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチカル型III族窒化物半導体発光素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、III族窒化物半導体発光素子を使用した紫外LEDは、樹脂硬化、殺菌用、照明用白色LEDの励起光源用および医療用等に用いられることが期待され、盛んに研究および技術開発が行われている。
【0003】
このような紫外LED用III族窒化物半導体発光素子は、従来、図1に示すように、サファイア基板201上にIII族窒化物半導体積層体202を形成し、このIII族窒化物半導体積層体202の同一面側にp側電極層203およびn側電極層204を形成する横型(ラテラル)構造をとるのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、このようなラテラル構造の発光素子200は、発光層の一部を除去して一方の電極領域を形成するため、発光層面積が減少し、また、わずか数μmの厚さの層に横方向に電流を流すことになるため、素子の直列抵抗成分が大きくなり、発光成分に比べて抵抗による発熱成分が大きくなってしまうという問題がある。さらに、基板の材料として熱伝導率の低いサファイアを用いているため、熱の放散が十分ではなく、素子温度が上昇し、発光効率を低下させてしまうという問題がある。また、図1に矢印で示されるように、III族窒化物半導体積層体202の発光層で発生した光は、p側電極層203を透過させて取り出すことになるため、p側電極層203には透光性が要求され、その厚みは例えば50〜100Å程度と、非常に狭い範囲に限定されるものであった。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、発光層で発生した光のうち、裏面に向かう光を表面から有効に取り出すことを目的として、図2に一例として示されるように、上述したラテラル構造の発光素子200を引っ繰り返してサファイア基板側から光を取り出す、いわゆるフリップチップ構造を採用した技術が開示されている。この技術によれば、発光素子の表面に向かった光は、この光に対して透明なサファイア基板301を透過するのみで、p側電極層303を透過する必要がなく、また、発光素子の裏面に向かった光は、p側電極層303側で反射されて表面へ向かうため、従来のラテラル構造の発光素子よりも光取り出し効率を向上させることができるが、上述した発光層面積の減少、発熱および放熱性の問題は依然として解決されないままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−36619号公報
【特許文献2】特開2006−108161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記ラテラル構造およびフリップチップ構造の問題を解決し、さらに発光層で発生した紫外光のうち、裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができるバーチカル型III族窒化物半導体発光素子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)p側電極層と、導電性サポート部と、接続層と、反射電極層と、p型半導体積層体、発光層およびn型半導体積層体からなるIII族窒化物半導体積層体と、n側電極層とを順に具え、前記反射電極層は、前記p型半導体積層体に直接接合するロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、発光波長が200〜495nmの範囲であることを特徴とするバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0009】
(2)前記反射電極層は、200〜495nmの範囲の波長の光に対する反射率が60%以上のロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかである上記(1)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0010】
(3)前記反射電極層は、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなる上記(1)または(2)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0011】
(4)前記発光波長が200〜350nmの範囲である上記(3)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0012】
(5)前記反射電極層は、100〜3000Åの厚さを有する上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0013】
(6)前記接続層は、Au含有材料である上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【0014】
(7)成長用基板の上方に、金属バッファ層を形成する工程と、該金属バッファ層に熱処理を施した後、もしくは前記金属バッファ層に窒化処理を施して窒化処理層を形成した後、前記熱処理後の金属バッファ層もしくは前記窒化処理層上に、n型半導体積層体、発光層およびp型半導体積層体からなるIII族窒化物半導体積層体を形成する工程と、該III族窒化物半導体積層体上に、反射電極層および接続層を順に形成する工程と、前記接続層上に、導電性サポート部を設ける工程と、前記金属バッファ層もしくは窒化処理層をエッチングにより除去し、前記III族窒化物半導体積層体から前記成長用基板を剥離する工程と、該剥離により露出したn型半導体積層体および前記導電性サポート部に、それぞれ、n側電極層およびp側電極層を形成する工程とを具え、前記反射電極層が、ロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、発光波長が200〜495nmの範囲であることを特徴とするバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【0015】
(8)前記導電性サポート部を設ける工程は、前記導電性サポート部上に、Pt含有材料からなるバリア層およびAu含有材料からなる導電性サポート部側接続層を順に形成し、該導電性サポート部側接続層と、前記接続層とを接合することを含む上記(7)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【0016】
(9)前記反射電極層および接続層を順に形成する工程は、前記接続層をAu含有材料とし、該接続層と前記反射電極層との間に、Pt含有材料からなるバリア層を形成することを含む上記(7)または(8)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【0017】
(10)前記導電性サポート部を設ける工程は、前記接続層上に湿式または乾式のめっき法により前記導電性サポート部を形成する工程である上記(7)に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のIII族窒化物半導体発光素子は、素子構造をバーチカル型構造とすることにより、上述したラテラル構造およびフリップチップ構造の問題を解決し、かつp側の反射電極層をロジウム、ロジウム含有合金材料、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかで形成することにより、反射電極層とp型半導体積層体との間のオーミックコンタクトを得ると共に、発光層で発生した光のうち、素子の裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができる。
【0019】
また、本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法は、成長用基板と半導体積層体とを化学エッチングによって剥離することによって、剥離工程における結晶欠陥やダメージの導入を抑制し、上述したバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、従来のラテラル構造のIII族窒化物半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2は、従来のフリップチップ構造のIII族窒化物半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】図3(a)〜図3(e)は、本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造工程を示す模式的断面図である。
【図4】図4は、種々の金属材料の、所定の波長に対する反射率を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。図3(a)〜(e)は、本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造工程をしたものであって、説明の便宜上、厚さ方向が誇張して描かれている。
【0022】
図3に示すように、本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子100の製造方法は、成長用基板101の上方に、金属バッファ層102を形成する工程(図3(a))と、この金属バッファ層102に熱処理を施した後、もしくは金属バッファ層に窒化処理を施して窒化処理層102を形成した後、熱処理後の金属バッファ層102もしくは窒化処理層102上に、n型半導体積層体103、発光層104およびp型半導体積層体105からなるIII族窒化物半導体積層体106を形成する工程(図3(b))と、このIII族窒化物半導体積層体106上に、反射電極層107および接続層108を順に形成する工程(図3(c))と、接続層108上に、導電性サポート部109を設ける工程(図3(d))と、金属バッファ層102もしくは窒化処理層102をエッチングにより除去し、III族窒化物半導体積層体106から成長用基板101を剥離する工程(図3(d))と、この剥離により露出したn型半導体積層体103および導電性サポート部109に、それぞれ、n側電極層110およびp側電極層111を形成する工程(図3(e))とを具えることにより、剥離工程における結晶欠陥やダメージの導入を抑制することができ、また、この方法により製造されたバーチカル型III族窒化物半導体発光素子100は、ラテラル構造およびフリップチップ構造の問題を解決し、かつ反射電極層107をロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかで形成することにより、反射電極層107とp型半導体積層体105との間のオーミックコンタクトを得ると共に、発光層104で発生した発光波長が200〜495nmの範囲の光のうち、素子の裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができるものである。
【0023】
成長用基板101としては、III族窒化物半導体積層体106のエピタキシャル成長の温度に耐性のある基板を用いるのが好ましく、例えばサファイア基板やAlN単結晶層をサファイアなどの基板上に形成したAlNテンプレートが使用できる。
【0024】
金属バッファ層102は、成長用基板101および金属バッファ層102の上のIII族窒化物半導体積層体106の格子定数に合わせて選択され、ケミカルリフトオフが可能な金属材料(例えばクロム(Cr)、スカンジウム(Sc)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)など)を、蒸着法またはスパッタ法などの成膜法により成長用基板101上に蒸着させて形成する。金属バッファ層102は、水素雰囲気中で熱処理を施すか、または、アンモニアガス等を用いて熱処理を行ってそれら金属を窒化し、金属窒化物層として使用される。なお、金属(または金属窒化物)バッファ層102を形成する材料は、素子を構成する材料に応じて適宜選択することができ、特に、紫外・深紫外領域では、III族窒化物半導体積層体106を構成するAlxGa1-xNのAl組成xに応じた適切な金属を選択するのが好ましい。なお、金属(または金属窒化物)バッファ層102はIII族元素(Al,Ga,Inなど)以外の元素からなる。
【0025】
n型半導体積層体103およびp型半導体積層体105は、AlxGa1-xN材料(0≦x≦1)をMOCVD法等により成長させて形成し、また、発光層104は、AlInGaN/AlInGaNの多重量子井戸構造をMOCVD法等により成長させて形成することができる。なお、発光波長は、III族窒化物半導体積層体106を構成するこれらの層のAl組成を調整することで適宜設定することができる。
【0026】
反射電極層107は、ロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなるものとする。これにより、反射電極層107とp側半導体積層体105との間の良好なオーミックコンタクトを得ることができる。また、図4は、様々な金属材料(膜厚:2000Å)の、様々な波長に対する反射率を、平坦なガラス基板にアルミニウム(Al)を蒸着した標準サンプルの反射率を基準として紫外・可視・赤外分光光度計(日本分光製V−650ST)にて測定し、プロットしたものを線で結んだグラフである。ロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)が、紫外光および青色光(波長が200〜350nmおよび350〜495nm)に対して60%以上の反射率を有することがわかる。したがって、反射電極層107としてロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかを用いることにより、上記オーミックコンタクトを得るだけでなく、発光層104で発生した光のうち、素子の裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができる。
【0027】
反射電極層107は、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなることが好ましい。ルテニウム、ルテニウム含有合金の場合、波長が200〜350nmの範囲で高い反射率を示すため、発光波長が200〜350nmの範囲である発光素子の場合、素子の裏面に向かう光をより効率的に反射することができる。また、ルテニウムはロジウムに比べて安価である点でも好ましい。
【0028】
なお、紫外光および青色光に対する反射率が高い金属として、アルミニウムが挙げられるが、金属バッファ層をエッチングにより除去する際に溶解してしまうおそれがあり、腐食が起こりやすい金属であるため、反射金属層107の材料としては好ましくない。
【0029】
接続層108上に、導電性サポート部109を設ける工程(図3(d))は、例えば以下の2通りの方法をとることができる。第1に、導電性サポート部109を接続層108上に接合することができる。第2に、接続層108上にめっき法により導電性サポート部を形成することができる。
【0030】
接続層108は、接合により導電性サポート部を設ける場合はAu含有材料とするのが好ましく、より好ましくはAuまたはAuSnとする。めっき法により導電性サポート部を形成する場合はAu、Pt、Pdなどの貴金属やNi、Cuのいずれかを含む材料とするのが好ましい。また、いずれの場合でも、ケミカルリフトオフ法により成長用基板を剥離する際に使用するエッチング液に対して耐性を持つ金属を選択することが望ましい。また、反射電極層107のロジウムおよびルテニウムは、この接続層108からのAuの拡散を止めるバリア層としての効果をも有するが、接続層108と反射電極層107との間に、Pt含有材料からなるバリア層をさらに形成してもよい。
【0031】
導電性サポート部109は、放熱性の良い材料からなるものとすることができ、例えば導電性Si基板やMo、W、Ni、Cuおよびこれらの合金を材料とする基板を用いるのが好ましい。ただし、その後のケミカルリフトオフのエッチング液に依り基板を選択する。
【0032】
また、図3には示されていないが、導電性サポート部109を設ける工程(図3(d))は、接合により導電性サポート部を設ける場合は、導電性サポート部109上に、Pt含有材料からなるバリア層およびAu含有材料からなる導電性サポート部側接続層を順に形成し、この導電性サポート部側接続層と、接続層108とを接合することを含むのが好ましい。導電性サポート部109とp型半導体積層体105との間に形成される層は、ケミカルリフトオフ法に用いられるエッチング液に曝されるため、そのようなエッチング液に侵されるような金属を用いることは好ましくない。本発明の実施形態によれば、ロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかの反射電極層107、Au含有材料からなる接続層およびPt含有材料からなるバリア層のいずれも、種々なエッチング液に対して耐性のある金属であるため、ケミカルリフトオフ用のエッチング液を選択しやすいという特徴がある。
【0033】
n側電極層110は、ケミカルリフトオフ法を用いた成長用基板101の剥離により露出したn型半導体積層体103に、スパッタ法等により形成することができる。このn側電極層110の材料としては、n型半導体積層体103との接触抵抗が低いという理由から、例えばTi/Al材料を用いるのが好ましい。
【0034】
p側電極層111は、導電性サポート部109に、スパッタ法等により形成することができる。このp側電極層111の材料としては、Si等の導電性半導体基板を使用する場合はオーミック接触可能な金属を用いることが好ましい。Si基板にオーミック接触可能な金属は数多く報告されているが、例えばPt、Rh、Ruを含む金属層を用いることがケミカルリフトオフの際のエッチング液に対して耐性を持つため、好ましい。
【0035】
さらに、n側電極層110およびp側電極層111を形成する工程の後、所定の加熱処理を施すのが好ましく、300〜700℃の条件下で加熱処理を施すのがより好ましい。これら電極と半導体積層体との間の接触抵抗を十分に低減させるためである。
【0036】
また、導電性サポート部109を設ける工程は、接続層108上に乾式または湿式のめっき法によって導電性サポート部109を形成する工程としてもよい。乾式のめっき法とは、蒸着やスパッタ法などを含む。湿式のめっき法とは、液中で行うめっきをいう。めっきは無電解めっきと電解めっきのいずれを用いてもサポート部を形成することができる。
【0037】
次に、本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の実施形態について図面を参照しながら説明する。図5は、本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の模式的断面図を示したものであって、説明の便宜上、厚さ方向が誇張して描かれている。
【0038】
図5に示すように、本発明の一実施形態であるバーチカル型III族窒化物半導体発光素子100は、p側電極層111と、導電性サポート部109と、接続層108と、反射電極層107と、p型半導体積層体105、発光層104およびn型半導体積層体103からなるIII族窒化物半導体積層体と、n側電極層110とを順に具え、反射電極層107は、p型半導体積層体105に直接接合するロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、発光波長が200〜495nm、より好ましくは200〜350nmの範囲であることを特徴とする。この発光素子100は、バーチカル型構造を有することにより、ラテラル構造およびフリップチップ構造と比較して発光部面積が大きく、また、わずか数μmの厚さの層に縦方向に電流を流すことになるため、素子の直列抵抗成分が小さいため発熱成分が小さくなる。さらに、この発光素子100は、基板の材料として熱伝導率の低いサファイアを用いる必要がないため、熱の放散性が良く、発光効率の低下を抑制することができるものである。また、反射電極層107が、ロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなることにより、反射電極層107とp型半導体積層体105との間の接触抵抗を低減させ、かつ発光層104で発生した発光波長が200〜495nmの範囲の光のうち、素子の裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができる。
【0039】
反射電極層107は、100〜3000Åの厚さを有することが好ましい。反射電極層107の厚さが100Å未満だと、発光層104で発生した光が透過してしまい、反射層としての機能を十分に果すことができないおそれがあり、また、Au含有材料等からなる接続層108からのAu等の拡散を防ぐバリア効果も弱いからである。一方、3000Åを超えても、単にコストが増加するのみであって、特段有利な効果が得られないからである。
【0040】
ロジウム含有合金はロジウムを90質量%以上含有するのが好ましい。ルテニウム含有合金はルテニウムを90質量%以上含有するのが好ましい。ロジウムおよびルテニウムを含有する合金の場合は、両方合わせて90質量%以上含有するのが好ましい。ロジウムおよび/またはルテニウムが90質量%未満だと、発光層104で発生した光を十分に反射することができないおそれがあり、また、p側半導体積層体105との間の接触抵抗を十分に低減することができないためである。
【0041】
また、図5には示されていないが、反射電極層107と接続層108との間に、Ptまたはロジウム含有合金からなるバリア層をさらに具えるのが好ましい。接続層108からのAu等の拡散を防ぐためである。
【0042】
なお、図1〜5は、代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
図3および図5に示すように、サファイアAlNテンプレートからなる成長用基板の上方に、金属バッファ層(厚さ:10nm、Sc材料)をスパッタ法により形成し、この金属バッファ層をMOCVD炉内で窒化処理した層の上に、MOCVD法により、n型半導体積層体(厚さ:4μm、AlGaN材料)、発光層(総厚:100nm、InAlGaN/InAlGaN材料)およびp型半導体積層体(厚さ:200nm、AlGaN材料)からなる発光波長330nmのIII族窒化物半導体積層体を形成し、このp型半導体積層体上に直接、反射電極層(厚さ:2000Å、ロジウム(Rh))をスパッタ法により形成した。反射電極層を形成後、650℃でコンタクトアニールを行った。次に反射電極層上に反射電極側接続層(図3,5における接続層108)として直接AuSn合金(厚さ:1μm)を蒸着により形成した。導電性Siサポート部側にもAuSnを含む導電性サポート部側接続層を形成し、その後、2インチウエハに対して4kNの加重を加え、300℃に加熱することにより、反射電極側接続層と導電性サポート部側接続層とを接合した。この際、ロジウムはバリア層としての働きを兼ね、AuやSnのp型半導体積層体への拡散は見られなかった。前記Sc窒化処理層を塩酸により除去し、前記III族窒化物半導体積層体から前記成長用基板を剥離した。この溶液による反射電極層および接合層の侵食は見られなかった。その後、この剥離により露出したn型半導体に、n側電極層(厚さ:200Å/3000Å、Ti/Al材料)を形成した。その後、接続層を形成していないSiサポート部の裏面側にp側電極層(厚さ:100Å/500Å/1μm、Ti/Pt/Au材料)を形成し、400℃でコンタクトアニールを行い、本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0044】
(実施例2)
前記反射電極層の厚さを100Åとしたこと以外は実施例1と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0045】
(実施例3)
前記反射電極層を厚さ2000Åのルテニウム(Ru)としたこと以外は実施例1と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0046】
(実施例4)
前記反射電極層の厚さを100Åとしたこと以外は実施例3と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0047】
(比較例1)
前記反射電極層をNi/Au(50/2000Å)としたこと以外は実施例1と同様の方法によりバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0048】
(評価)
上記実施例1〜4および比較例1の各発光素子について、20mA(一定)の電流を流したときの、発光出力Poを比較したところ、比較例1に対して、実施例1の出力は1.7倍、実施例2の出力は1.5倍、実施例3の出力は1.8倍、実施例4の出力は1.5倍となり、出力向上効果が大きいことが示された。これは、比較例1の反射電極層の反射率が実施例1および2の反射電極層のものよりも小さいことが原因と考えられる。また、比較例1の反射電極層が、金属バッファ層もしくは窒化処理層を除去するためのエッチング液である酸によって一部溶解したことで反射電極層とp型半導体積層体の密着性の低下が見られた。また、加熱によりAuSn材料とNi/Auとが混ざったことにより、順方向電圧が大きくなる傾向が見られた。
【0049】
(実施例5)
発光波長280nmのIII族窒化物半導体積層体を形成したこと以外は実施例1と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0050】
(実施例6)
前記反射電極層の厚さを100Åとしたこと以外は実施例5と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0051】
(実施例7)
前記反射電極層を厚さ2000Åのルテニウム(Ru)としたこと以外は実施例5と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0052】
(実施例8)
前記反射電極層の厚さを100Åとしたこと以外は実施例7と同様の方法により本発明に従うバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0053】
(比較例2)
前記反射電極層をNi/Au(50/2000Å)としたこと以外は実施例5と同様の方法によりバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を作製した。
【0054】
(評価)
上記実施例5〜8および比較例2の各発光素子について、20mA(一定)の電流を流したときの、発光出力Poを比較したところ、比較例2に対して、実施例5の出力は1.6倍、実施例6の出力は1.3倍、実施例7の出力は1.7倍、実施例8の出力は1.4倍となり、出力向上効果が大きいことが示された。また、上記実施例1〜8の結果から、特にルテニウムは発光波長350nm以下の発光素子に対して高い出力向上効果を示すことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、素子構造をバーチカル型構造とすることにより、上述したラテラル構造およびフリップチップ構造の問題を解決し、かつp側の反射電極層をロジウムまたはロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかで形成することにより、反射電極層とp型半導体積層体との間のオーミックコンタクトを得ると共に、発光層で発生した光のうち、素子の裏面に向かう光を効率的に反射して表面からの発光量を増大させることができるバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0056】
また、本発明のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、成長用基板と半導体積層体とを化学エッチングによって剥離することによって、剥離工程における結晶欠陥やダメージの導入を抑制し、上述したバーチカル型III族窒化物半導体発光素子を効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 バーチカル型III族窒化物半導体発光素子
101 成長用基板
102 金属バッファ層
103 n型半導体積層体
104 発光層
105 p型半導体積層体
106 III族窒化物半導体積層体
107 反射電極層
108 接続層
109 導電性サポート部
110 n側電極層
111 p側電極層
200 ラテラル型構造のIII族窒化物半導体発光素子
201 サファイア基板
202 III族窒化物半導体積層体
203 p側電極層
204 n側電極層
300 フリップチップ型構造のIII族窒化物半導体発光素子
301 サファイア基板
302 III族窒化物半導体積層体
303 p側電極層
304 n側電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p側電極層と、導電性サポート部と、接続層と、反射電極層と、p型半導体積層体、発光層およびn型半導体積層体からなるIII族窒化物半導体積層体と、n側電極層とを順に具え、
前記反射電極層は、前記p型半導体積層体に直接接合するロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、
発光波長が200〜495nmの範囲であることを特徴とするバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記反射電極層は、200〜495nmの範囲の波長の光に対する反射率が60%以上のロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかである請求項1に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記反射電極層は、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなる請求項1または2に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記発光波長が200〜350nmの範囲である請求項3に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記反射電極層は、100〜3000Åの厚さを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記接続層は、Au含有材料である請求項1〜5のいずれか1項に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
成長用基板の上方に金属バッファ層を形成する工程と、
該金属バッファ層に熱処理を施した後、もしくは前記金属バッファ層に窒化処理を施して窒化処理層を形成した後、前記熱処理後の金属バッファ層もしくは前記窒化処理層上に、n型半導体積層体、発光層およびp型半導体積層体からなるIII族窒化物半導体積層体を形成する工程と、
該III族窒化物半導体積層体上に、反射電極層および接続層を順に形成する工程と、
前記接続層上に、導電性サポート部を設ける工程と、
前記金属バッファ層もしくは窒化処理層をエッチングにより除去し、前記III族窒化物半導体積層体から前記成長用基板を剥離する工程と、
該剥離により露出したn型半導体積層体および前記導電性サポート部に、それぞれ、n側電極層およびp側電極層を形成する工程と
を具え、
前記反射電極層が、ロジウム、ロジウム含有合金、ルテニウム、ルテニウム含有合金のいずれかからなり、発光波長が200〜495nmの範囲であることを特徴とするバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記導電性サポート部を設ける工程は、前記導電性サポート部上に、Pt含有材料からなるバリア層およびAu含有材料からなる導電性サポート部側接続層を順に形成し、該導電性サポート部側接続層と、前記接続層とを接合することを含む請求項7に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記反射電極層および接続層を順に形成する工程は、前記接続層をAu含有材料とし、該接続層と前記反射電極層との間に、Pt含有材料からなるバリア層を形成することを含む請求項7または8に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記導電性サポート部を設ける工程は、前記接続層上に湿式または乾式のめっき法により前記導電性サポート部を形成する工程である請求項7に記載のバーチカル型III族窒化物半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151393(P2011−151393A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287502(P2010−287502)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】