説明

バーチャル・ナビゲーション・システムおよび携帯端末機

【課題】 現在位置から実際に移動させない状態においてルート案内を提供することが可能なバーチャル・ナビゲーション・システムを提供する。
【解決手段】 現実空間に基づいて作成されたバーチャル空間の画像データおよび地図データを相互に関連づけた状態で記憶する記憶部2と、バーチャル空間の現在位置を特定する位置特定手段3と、入力操作に応じて操作データを出力する操作部4と、前記バーチャル空間の画像を表示する画像表示部6と、バーチャル空間の所定位置または指定位置のいずれか一の位置を起点とするとともに前記起点に前記操作データを加えて得れられる存在位置を算出し、前記存在位置から前記バーチャル空間内を移動しているかのように、前記存在位置および前記操作部4の入力操作に応じて前記バーチャル空間の画像データを前記画像表示部6に表示させる中央処理部5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャル空間などを利用してこれから通行するルートを予め案内するバーチャル・ナビゲーション・システムに係り、特に、現在位置から目的地までの道のりを案内するカー・ナビゲーション・システム、携帯電話機またはその他のナビゲーション・システムなどに好適に利用可能となるバーチャル・ナビゲーション・システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ナビゲーション・システムは、自動車やオートバイ等の移動体や携帯電話機等に搭載され、それを操作して利用する者(以下、「利用主体」という。)を目的地まで誘導するシステムとして用いられている。このナビゲーション・システムのルート案内によって、その利用主体は、一度も行ったことのない目的地であったとしても、迷わずにその目的地に到着するため、安心して目的地に向かうことができるようになった。また、このナビゲーション・システムのルート案内によって、たとえその目的地を一度以上訪ねたことがあったとしても、最短距離のルート、最短時間のルート、最安値のルート、道路渋滞のないルートなど各種ルート情報を考慮して自分の好みのルートを選択することができるようになった。以下に、従来のナビゲーション・システムの一例を説明する。
【0003】
従来のナビゲーション・システムは、地図表示処理、位置算出処理、推奨ルート算出処理、ルート案内処理などの各種演算処理を行なうCPU、地図データを有するDVDもしくはHDDなどの記憶部、GPS受信機などの位置特定手段、位置特定手段を補助する3Dジャイロセンサなどの方位センサ、および、液晶ディスプレイなどの画像表示部をBusケーブルにて相互に通信可能なように連接することによって形成されている。そして、従来のナビゲーション・システムは、そのCPUが、記憶部の地図データを読み込み、測位された地点(現在位置)を地図データに整合させながら測位された地点を起点とした目的地までの推奨ルートを演算処理し、また、その画像表示部がCPUの処理によって得た地図および推奨ルートを表示することによって、その利用主体を目的地まで誘導することが可能となっている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−315073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のナビゲーション・システムは、測位された地点(現在位置)を地図データに整合させながらその利用主体を目的地まで誘導するため、そのナビゲーション・システムが搭載されている自動車等の移動体若しくは携帯電話機を実際に現在位置から移動させない限り、ルート案内を行なうことができないという問題が生じた。この問題は、その利用主体にとって通行しやすいルートなのか、案内されるルート周辺にどのような店があるかなど、そのルート自体もしくはルート周辺を予め調べておきたい場合に不都合なものであった。また、自動車やオートバイの運転時のように、ルート案内が行なわれていてもルートを間違えたり見落としたりしやすい時に、その間違い等を回避するために、そのルート案内を予習しておきたい場合などにも、前述した問題があり不都合なものであった。
【0006】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ナビゲーションを利用する利用主体に対して、ナビゲーション・システムを現在位置から実際に移動させない状態においてルート案内を提供することが可能なバーチャル・ナビゲーション・システムを得ることを本発明の目的としている。
【0007】
また、本発明の他の目的は、本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムによるルート案内機能の利便性を拡張させることが可能となる携帯用端末機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明であるバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1の態様として、現実空間に基づいて作成されたバーチャル空間の画像データおよび地図データを相互に関連づけた状態で記憶する記憶部と、現実空間の現在位置と対応させて前記バーチャル空間の地図データ上にあるバーチャル空間の現在位置を特定する位置特定手段と、入力操作に応じて操作データを出力する操作部と、前記バーチャル空間の画像を表示する画像表示部と、前記バーチャル空間の現在位置、前記バーチャル空間の現在位置に前記操作データを予め加えて得られたバーチャル空間の所定位置または前記位置特定手段に依存することなく指定された指定位置のいずれか一の位置を起点とするとともに前記起点に前記操作データを加えて得れられる存在位置を算出し、前記存在位置から前記バーチャル空間内を移動しているかのように、前記存在位置および前記操作部の入力操作に応じて前記バーチャル空間の画像データを前記画像表示部に表示させる中央処理部とを備えることを特徴としている。
【0009】
ここで、記憶部が記憶しているバーチャル空間の画像データとは、3Dポリゴンなど現在空間を表示するために本質的に必要な画像データを意味しており、地図データとは、現実空間に連結しているバーチャル空間上の緯度および経度によって特定されるその空間の座標データを意味している。
【0010】
また、操作部とは、このバーチャル・ナビゲーション・システムの利用主体によって、前記バーチャル空間上の利用主体の進行方向を積極的に操作するためのものである。
【0011】
そして、中央処理部は、CPU(中央演算処理手段)、RAM、記憶部用デコーダやユーザインターフェースなどの外部機器接続部およびグラフィック・レンダ(画像描写処理手段)などによって形成されており、画像データ、地図データおよび操作部の操作データに基づいて、マップ・マッチング(位置算出)に関する処理を行なうものである。
【0012】
そして、画像表示部は、前記中央処理部によって処理されたバーチャル空間などの画像データを表示するものである。この画像表示部としては、CRTディスプレイや、TFTディスプレイなど画像を表示するすべての画像表示手段を用いることが可能である。
【0013】
なお、前述した起点(バーチャル・ナビゲーション・システムを利用するときにおいて、その画像表示部の画面上に表示されるスタート地点)としては、前記バーチャル空間の現在位置に限らず、前記バーチャル空間の現在位置に前記操作データを予め加えて得られたバーチャル空間の所定位置または前記位置特定手段に依存することなく指定された指定位置のいずれか一の位置をも用いることが可能となっている。
【0014】
第1の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムによって、利用主体は操作部によって操作されたバーチャル空間上の利用主体の存在位置からバーチャル空間上を移動することが可能となる。つまり、現実の世界(現実空間)においてその利用主体が、バーチャル・ナビゲーション・システムと一緒に実際に移動せずにその場で停止していたとしても、バーチャル空間上の利用主体がバーチャル空間上を移動することが可能となっている。また、このバーチャル・ナビゲーション・システムは、バーチャル空間上の利用主体からみた風景を表示しているため、これから通行するルートを実際に通行しているかのような人工現実感(バーチャル・リアリティ)をその利用主体に与えることが可能となっている。
【0015】
本発明の第2の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記記憶部が前記バーチャル空間のルート案内用データを記憶しており、前記中央処理部が前記存在位置を算出する位置算出処理と、前記存在位置から前記バーチャル空間上に任意に指定された任意の位置までの推奨ルートを算出する推奨ルート算出処理と、前記存在位置および前記推奨ルートを整合させながら前記ルート案内用データを用いて前記推奨ルートを案内するルート案内処理とを有していることを特徴としている。
【0016】
ここで、ルート案内用データは、方向指示(音声出力がある場合は音声指示も含む)や推奨ルートをなぞる線などルート案内時に必要なデータを意味している。
【0017】
なお、推奨ルート算出処理は、前記バーチャル空間上の利用主体の存在位置を起点として算出するものであり、バーチャル空間上の現在位置のみを起点として算出するものではない。
【0018】
本発明の第2の態様によって、前述した利用主体はバーチャル空間上の起点から自由に移動することができるばかりでなく、バーチャル空間上のその起点から目的地までの推奨ルートを算出し、その推奨ルートをバーチャル空間上で案内されることが可能となる。
【0019】
本発明の第3の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1または第2の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記操作部を操作する利用主体の視界に写る現実空間を前記画像表示部に映し出すカメラを有していることを特徴としている。
【0020】
第3の態様によって、3Dポリゴンのようなバーチャル空間の画像だけでなく、現実の世界(現実空間)の映像を画像表示部に表示することが可能となり、本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムによるルート案内が行なわれないときにおいても、その画像表示部を見ながら移動することが可能となる。
【0021】
本発明の第4の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1から第3のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記中央処理部が、前記記憶部もしくは前記カメラが走査した電子タグによって得られた前記現実空間に存在する目的物の物件データ、サービスデータおよびその他の目的物に関するデータ(POIデータ)を、前記カメラが走査した現実空間の映像に付与して前記画像表示部に表示する画像処理を行うことを特徴としている。
【0022】
この第4の態様によって、カメラが走査した現実空間の映像にPOIデータを強化することが可能となる。また、現実世界での事物と人間との関係を強化する強化現実感(アーギュメンティッド・リアリティ)をその利用主体に与えることが可能となる。
【0023】
本発明の第5の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1から第4のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記記憶部に記憶された画像データや地図データを含む各種データに関連したデータを有線または無線通信網を経由して各種データサーバと双方向に通信し、前記各種データに関連したデータを前記中央処理部に提供するデータ通信部を有していることを特徴としている。
【0024】
第5の態様によって、画像データ、地図データを含む各種データを更新することが可能となる。
【0025】
本発明の第6の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1から第5のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記画像表示部が、頭部に装着できるとともに画像を表示するゴーグル部を備えたヘッドマウントディスプレイ状に形成されていることを特徴としている。
【0026】
この第6の態様によって、利用主体に対して人工現実感(バーチャル・リアリティ)の没入感を拡張することが可能となる。ゆえに、その利用主体が現在位置を移動しなくとも、その位置から目的地までのルートをあたかも移動しているような感覚を向上させることが可能となっている。
【0027】
本発明の第7の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1から第6のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記操作部が、伸縮性のある検出用基板と、前記検出用基板の裏面、外周、もしくは裏面および外周の両方に配設されている複数の荷重センサとを有してシート状に形成されていることを特徴としている。
【0028】
この第7の態様によって、シート状に形成された操作部をその利用主体の足によって操作することが可能となり、人工現実感(バーチャル・リアリティ)に必要なバーチャル空間への対話性を向上させることが可能となる。
【0029】
本発明の第8の態様のバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1から第7のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムにおいて、前記操作部が、操舵角を測定する位置センサを有する乗物用ハンドルと、操作量を検出する位置センサを有する乗物用加速装置(アクセル)とを組み合わせて形成されていることを特徴としている。
【0030】
この第8の態様によって、現実的に移動はしていないが、その操作部をその利用主体の人工現実感的な運転にて操作することが可能となり、人工現実感(バーチャル・リアリティ)に必要なバーチャル空間への対話性を向上させることが可能となる。なお、第8の態様の操作部は、本物の乗物のハンドルとアクセルとを利用せず、シミュレートゲーム用コントローラなど本物の乗物に近い態様のハンドルとアクセルとを利用しても良い。
【0031】
また、本発明の第9の態様である携帯端末機は、第1から第5のいずれか1つの態様のバーチャル・ナビゲーション・システムを内蔵していることを特徴としている。
【0032】
この第9の態様によって、人工現実感(バーチャル・リアリティ)に近い感覚を与えることが難しくなるが、本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムの携帯性を向上させることが可能となる。
【0033】
そして、本発明の第10の態様である携帯端末機は、本発明の第9の態様の携帯端末機において、前記操作部が、静電容量式または感圧式タッチパネル状に形成されていることを特徴としている。
【0034】
この第10の態様によって、操作部に対して様々な入力が可能となる。また、この第10の態様に係る操作部を携帯端末機の画像表示部に配設することによって、バーチャル・ナビゲーション・システムを有する携帯端末機との対話性を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムは、利用主体が現在位置を移動することなくバーチャル空間上を移動することが可能となっている。それによって、その利用主体が、当該ナビゲーション・システムと一緒に現在位置から移動せずとも人工現実感的(バーチャル・リアリティ)に移動体験を受けることが可能となり、その人工現実感的な移動体験を受けたその利用主体に大きな安心感を与えるという作用効果を奏する。そして、そのバーチャル・ナビゲーション・システムにルート案内機能が付加されているならば、利用主体が希望する目的地までの推奨ルートを予め予習することが可能となるため、その利用主体に対して、より大きな安心感を与えるという作用効果を奏する。
【0036】
また、バーチャル空間上の利用主体からみた風景に相当する画像データを表示してそのルート案内を行うことにより、現実空間のルートを本当に通行しているかのような人工現実感的体験をその利用主体に与えることが可能となる。そのため、その利用主体はさらなる安心感を得られるという作用効果を奏する。
【0037】
さらに、本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムおよび携帯端末機は、前述した様々な特徴を有することによって、人工現実感(バーチャル・リアリティ)、強化現実感(アーギュメンティッド・リアリティ)を向上させる作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図1から図5を用いて、本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムの2つの実施形態を説明する。ここで、図1は本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムの構成を、図2(a)(b)は操作部の一例であるシート状入力装置を、図3は画像表示部の一例であるヘッドマウントディスプレイを、図4(a)(b)は画像表示部に表示されたバーチャル空間の画像を、図5は本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムを搭載する携帯端末機を示している。
【0039】
本発明の第1の実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1は、図1に示すように、記憶部としてのHDD(ハード・ディスク・ドライブ)2と、位置特定手段としてのGPS受信機3と、データ通信部としてのデータ受信機14と、操作部としてのコントローラ4と、中央処理部としてのメインユニット5と、画像表示部としての液晶ディスプレイ6と、カメラ15と、スピーカ13とを有している。
【0040】
この記憶部2には、バーチャル空間に係る画像データ、地図データおよびルート案内用データが記憶されている。このバーチャル空間の画像データは現実空間(現実の世界)に基づいて作成された3Dポリゴンの画像データである。その結果、その画像データ容量は大きくなりやすいことから、本実施形態においては記憶部2としてHDDを用いている。なお、これらの画像データ容量をすべて記憶することができるようであるならば、DVD−ROMやCD−ROMを利用した外部記録装置によってこの記憶部2を構成しても良い。
【0041】
位置特定手段3は、衛星からのGPS(全地球測位システム)電波を受信して、現実空間の現在位置に対応した前記バーチャル空間上の現在位置を測位するように形成されている。この位置特定手段3はGPSの電波を受信するGPS受信機を用いている。
【0042】
操作部4は、バーチャル空間上に存在する自動車等の移動体や人物等の利用主体の進行方向を操作するため、靴底などに取り付けて使用するシート状入力装置、もしくは自動車用ハンドルおよび加速装置形状の入力装置のようなコントローラ状に形成されている。
【0043】
この操作部4のシート状入力装置は、図2に示すように、靴底に取り付けられた伸縮性のある検出用基板4aと、複数の荷重センサ4bと、検出した荷重の移動方向を演算する移動方向演算部(図示せず)とを有して形成されている。この検出用基板4aの伸縮を加重センサ4bが検出するために、この検出用基板4aはゴム弾生体などの高い伸縮性を有するものが好ましい。そして、シート状入力装置の検出用基板4aの裏面(靴底側に貼り付けられる面、図2(b)を参照)には、複数の荷重センサ4bが各部分に配設されており、検出用基板4a内のどの方向に荷重が変化したかを検出することが可能になっている。なお、荷重センサ4bは、検出用基板4aの裏面以外の場所に配設しても同様の作用を得ることが可能である。
【0044】
また、この利用主体が自動車の運転による進行を予定している場合、自動車用ハンドルおよびアクセルペダルに位置センサを取り付けることによって操作部4を形成すると良い。
【0045】
なお、この操作部4としては、ジョイスティック状コントローラなどの既存の形状のコントローラを用いても良い。
【0046】
中央処理部5は、演算処理を行なう中央演算処理装置としてのCPU7と、HDD2内の画像データの一部分を記憶してCPU7が直接的に読み書きするメモリ8と、HDD2などから送られた符号化されたデータを復号化し、もとの画像データを取り出すデコーダ9と、コントローラ(操作部4)から中央処理部5への操作データを入力するユーザインタフェース10と、画像データを描写処理する画像LSI11と、音声データを処理する音声LSI12とを有している。これら中央処理部5内の各部はシステムバスによって相互に接続されている。また、中央処理部5内のCPU7は位置特定手段3と、デコーダ9は記憶部2およびデータ通信部としてのデータ受信機14と、ユーザインタフェース10はコントローラ4と、画像LSI11は画像表示部6と、音声LSI12はスピーカ13と接続されている。このため、中央処理部5は、マップ・マッチング(位置算出)、推奨ルート算出、ルート案内および地図表示に関する処理を行ない、中央処理部5に接続しているこれら各部を集中制御することが可能となっている。
【0047】
中央処理部5のCPU7に接続しているデータ通信部14は、有線または無線通信網によって前記記憶部2に記憶された各種データに関連したデータを双方向に通信するように形成されており、記憶部2の画像データ、地図データおよびルート案内用データを最新のものに更新することが可能となっている。
【0048】
中央処理部5の画像LSI11に接続している画像表示部6は、中央処理部5によって処理された画像データを表示するように形成されている。本実施形態の画像表示部6は、人工現実感(バーチャル・リアリティ)における没入感を向上させるために、図3に示すように、頭部に装着できるとともに画像を表示するゴーグル部を備えたヘッドマウントディスプレイ状に形成されている。なお、本実施形態の中央処理部5はさらに音声LSI12を有しているため、図3に示すように、音声LSI12に接続されたスピーカ13として、ヘッドホンをこのヘッドマウントディスプレイとともに有して形成されている。
【0049】
そして、この中央処理部5には、前記操作部4を操作する利用主体の視界に写る現実空間を前記画像表示部6に映し出すカメラ15が配設されている。このカメラ15は、図3に示すように、ヘッドマウントディスプレイと共に配設することによって、その利用主体の目線の位置に合わせられている。また、当該カメラ15は、前記現実空間に存在する目的物の物件データ、サービスデータおよびその他の目的物に関するデータ(POIデータ)が記録されている電子タグを走査することが可能なように形成されている。
【0050】
次に、第1の実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1の作用を説明する。
【0051】
第1の実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1の中央処理部5は、HDD2に記憶されたバーチャル空間の画像データおよび地図データに基づいて、バーチャル空間上の利用主体に対してルート案内を提供するための処理を開始する。
【0052】
まずはじめに、中央処理部5は、マップ・マッチング(位置算出)処理を開始する。このマップ・マッチング(位置算出)処理は、3つの起点のうちのいずれか1の起点に、操作部4によって得られた操作データを加えて、バーチャル空間上の利用主体の存在位置を算出するものである。この3つの起点としては、前記バーチャル空間の現在位置、前記バーチャル空間の現在位置に前記操作データを予め加えて得られたバーチャル空間の所定位置または前記位置特定手段に依存することなく指定された指定位置のいずれか一の位置を利用することが可能となっている。この3つの起点をさらに詳しく説明する。
【0053】
前記バーチャル空間の現在位置は、GPS受信機3によって測定された現実空間の現在位置に対応した位置である。つまり、利用主体が現に存在する位置と対応したバーチャル空間上の現在位置を意味している。
【0054】
前記バーチャル空間の現在位置に前記操作データを予め加えて得られたバーチャル空間の所定位置とは、例えば、本実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1を以前に利用して特定された所定位置から利用主体が移動するために、記憶部2などに記憶された所定の位置のことである。以前にバーチャル空間上のルートを目的地の途中まで移動して本実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1を終了したが、再度、このバーチャル・ナビゲーション・システム1を利用して、途中まで移動した所定の位置からバーチャル空間上を移動したい場合などに、当該所定位置は用いられる。
【0055】
前記位置特定手段3に依存することなく指定された指定位置とは、利用主体が任意に指定したバーチャル空間上の位置のことである。この指定位置は、例えば現在位置から目的地までのルートにおいて途中のルートまでは知っているがその先のルートが分からないためにその地点からバーチャル空間上を移動したい場合に用いられる。
【0056】
また、これら3つの起点のうちのいずれか1の起点に加えられる操作データは、ベクトルデータとしてマップ・マッチング(位置算出)処理に利用される。つまり、バーチャル空間の座標軸上において、前述した3つの起点のうちのいずれか1の起点を原点とし、その原点からベクトルデータである操作データを加えて、バーチャル空間上の存在位置を算出している。
【0057】
ここで、操作データを出力する操作部4としては、歩行を前提としている場合はシート状入力装置を用い、自動車の運転など乗物の運転を前提としている場合はハンドルおよび加速装置状入力装置を用いている。これは、実際に移動しなくともバーチャル空間上を移動しているかのような人工現実感を利用主体に与えることを可能にするためである。これによって、図2に示すシート状の入力装置4を有する靴を履いた利用主体がつま先側に体重をかけたときに前進したり、かかと側に体重をかけたときに後退するといったような進行方向の入力が可能となるとともに、歩行や運転の際に必要となる部材に操作部4を内蔵して操作部4の携帯性も向上させることが可能となる。また、自動車やオートバイの運転を行う場合には、それらに取り付けられているハンドルとアクセルによって操作することが可能となる。つまり、操作部4として個別に携帯しなければならないといったことを意識することなく、普段から使用している部材の一部に取り入れてバーチャル・ナビゲーション・システム1を利用することが可能となっている。
【0058】
マップ・マッチング(位置算出)処理によってその存在位置が特定された後、中央処理部5は推奨ルート算出処理を行なう。この推奨ルート算出処理は、バーチャル空間上の存在位置からバーチャル空間上の任意の地点までの推奨ルートを算出するものである。
【0059】
推奨ルート算出処理によって案内されるルートが決定すると、中央処理部5はルート案内処理を行なう。このルート案内処理は、存在位置および推奨ルートを整合し、バーチャル空間上の利用主体の進行方向を案内する。
【0060】
そして、前述の処理を図3に示すヘッドマウントディスプレイなど画像表示部6に画像として表示するために、中央処理部5は地図表示処理を行なう。この地図表示処理は、バーチャル空間の全画像データ内から画像表示に必要な画像データを選択し、図4(a)および(b)に示すように、利用主体から見た風景に相当する画像を得る画像処理を施すことが可能となっている。たとえば、ある地点から階段を下りて目的地に歩いていくルートを案内された場合、画像表示部6においては、図4(a)に示すような階段や、図4(b)に示すような目的地が表示される。
【0061】
前述した処理を中央処理部5が行なうことによって、その利用主体は実際に移動することなく、その利用主体の目の前に広がっている現実空間に相当するようなバーチャル空間上を移動することが可能となっている。そのため、中央処理部5によるルート案内に従いながら操作部4を操作して、ある地点(現在位置もしくはバーチャル空間の存在位置)から目的地までのルートを予め調べることが可能となっている。また、バーチャル空間上のルートを間違えた場合、3つの起点(前述した現在位置、所定位置もしくは指定位置)のいずれかに瞬時に戻ることが可能である。このような処理によって、その利用主体は案内される未知のルートに対して、不安を抱くことなく歩行もしくは運転することが可能となる。
【0062】
さらに、このバーチャル・ナビゲーションシステム1は、バーチャル空間をルート案内するばかりでなく、図3に示すように現実空間を映し出すカメラ15を有することによって、その画像表示部6に現実空間の映像を映し出すことも可能となっている。このカメラ15によって現実空間の映像を撮影し、同時にヘッドマウントディスプレイの画像表示部6に当該現実空間の映像を映し出すことにより、ヘッドマウントディスプレイを装着しながら現実空間における実際の歩行や運転をすることが可能となっている。
【0063】
また、カメラ15によって映し出された映像には、中央処理部5による処理によって、POIデータ(前記現実空間に存在する目的物の物件データ、サービスデータおよびその他の目的物に関するデータ)を付与することが可能である。例えば、その利用主体が現実空間上のある飲食店を見た時に、記憶部2に記憶されているPOIデータを利用して、カメラ15が走査したその飲食店の映像にメニューデータを同時に表示することが可能となる。また、現実空間に埋め込まれた電子タグをカメラ15が走査すると、その電子タグから得られたPOIデータをカメラ15が走査した現実空間の映像に重ねて表示することが可能となっている。すなわち、カメラ15が走査した現実空間の映像を利用して、バーチャル・ナビゲーション・システム1の中央処理部5がその利用主体に強化現実感(アーギュメンティッド・リアリティ)を与えるような処理を行なうことが可能となっている。
【0064】
第1の実施形態のバーチャル・ナビゲーション・システム1は、前述したような作用を及ぼすことにより、利用主体に対してバーチャル・ナビゲーション・システム1と一緒に利用主体が実際に移動することなくバーチャル空間におけるルート案内を提供することができ、利用主体がこれから通行するルートを予め学習することが可能となるため、利用主体が今後案内されるルートを間違わずにすむという効果を奏する。
【0065】
なお、第1の実施形態においては、中央処理部5が推奨ルート算出処理およびルート案内処理をおこなうように形成されているが、この2つの処理は付属的な機能であるため、当該処理を省いて中央処理部5を形成しても良い。これによって、前述した3つの起点をマップ・マッピング処理によって特定し、それら3つの起点のいずれか1の起点から操作部4を操作することによって、バーチャル空間上を自由に移動することのみに機能を選定したバーチャル・ナビゲーション・システム1を形成することが可能となる。
【0066】
次に、第2の実施形態について説明する。
【0067】
図5(a)および(b)に示すように、第2の実施形態の携帯端末機16は、公知の携帯電話機やPDA(携帯情報端末機)にバーチャル・ナビゲーション・システムが備わっている。このバーチャル・ナビゲーション・システムは、第1の実施形態とほぼ同様に形成されている。第1の実施形態と異なっている点は、第2の実施形態の画像表示部6が、ヘッドマウントディスプレイではなく携帯端末機16の表示画面を利用していることである。また、第2の実施形態の操作部4は、シート状コントローラなどではなく静電容量式または感圧式のタッチパネルを用いていることである。なお、記憶部においては、HDDやDVDドライブ等の寸法が大きいために第2の携帯端末機16に搭載することが困難であることが多いことから、メモリーカードなどを利用することが好ましい。
【0068】
このような第2の実施形態の携帯端末機16によって、第1の実施形態よりも人工現実感が薄れてしまうものの、携帯端末機16にバーチャル・ナビゲーション・システムを内蔵することが可能となるため、バーチャル・ナビゲーション・システムに係る携帯性を向上させることが可能となっている。
【0069】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のバーチャル・ナビゲーション・システムの1実施形態の構成を示すブロック図
【図2】本発明の操作部の一例であるシート状入力装置を示す図であり、(a)はシート状入力装置を靴底に用いた例の斜視図、(b)は(a)の2b線に沿った拡大断面図
【図3】本発明の画像表示部の一例であるヘッドマウントディスプレイを示す概略図
【図4】本発明の画像表示部に表示されたバーチャル空間の画像を示す概略図;(a)は下り階段、(b)は目的地の画像を示している。
【図5】本発明であるバーチャル・ナビゲーション・システムを搭載する携帯端末機を示す概略図;(a)は携帯電話機、(b)は携帯情報端末機(PDA)を示している。
【符号の説明】
【0071】
1 バーチャル・ナビゲーション・システム
2 記憶部
3 位置特定手段
4 操作部
5 中央処理部
6 画像表示部
13 スピーカ
14 データ通信部
15 カメラ
16 携帯端末機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実空間に基づいて作成されたバーチャル空間の画像データおよび地図データを相互に関連づけた状態で記憶する記憶部と、
現実空間の現在位置と対応させて前記バーチャル空間の地図データ上にあるバーチャル空間の現在位置を特定する位置特定手段と、
入力操作に応じて操作データを出力する操作部と、
前記バーチャル空間の画像を表示する画像表示部と、
前記バーチャル空間の現在位置、前記バーチャル空間の現在位置に前記操作データを予め加えて得られたバーチャル空間の所定位置または前記位置特定手段に依存することなく指定された指定位置のいずれか一の位置を起点とするとともに前記起点に前記操作データを加えて得れられる存在位置を算出し、前記存在位置から前記バーチャル空間内を移動しているかのように、前記存在位置および前記操作部の入力操作に応じて前記バーチャル空間の画像データを前記画像表示部に表示させる中央処理部と
を備えることを特徴とするバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項2】
前記記憶部は、前記バーチャル空間のルート案内用データを記憶しており、
前記中央処理部は、前記存在位置を算出する位置算出処理と、前記存在位置から前記バーチャル空間上に任意に指定された任意の位置までの推奨ルートを算出する推奨ルート算出処理と、前記存在位置および前記推奨ルートを整合させながら前記ルート案内用データを用いて前記推奨ルートを案内するルート案内処理とを有している
ことを特徴とする請求項1に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項3】
前記操作部を操作する利用主体の視界に写る現実空間を前記画像表示部に映し出すカメラを有していることを特徴とする請求項1または2に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項4】
前記中央処理部は、前記記憶部もしくは前記カメラが走査した電子タグによって得られた前記現実空間に存在する目的物の物件データ、サービスデータその他の目的物に関するデータ(POIデータ)を、前記カメラが走査した現実空間の映像に付与して前記画像表示部に表示する画像処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項5】
前記記憶部に記憶された画像データや地図データを含む各種データに関連したデータを有線または無線通信網を経由して各種データサーバと双方向に通信し、前記各種データに関連したデータを前記中央処理部に提供するデータ通信部を有していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項6】
前記画像表示部は、頭部に装着できるとともに画像を表示するゴーグル部を備えたヘッドマウントディスプレイ状に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項7】
前記操作部は、伸縮性のある検出用基板と、前記検出用基板の裏面、外周、もしくは裏面および外周の両方に配設されている複数の荷重センサとを有してシート状に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項8】
前記操作部は、操舵角を測定する位置センサを有するハンドルと、操作量を検出する位置センサを有する加速装置とを組み合わせて形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システム。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバーチャル・ナビゲーション・システムを内蔵していることを特徴とする携帯端末機。
【請求項10】
前記操作部は、静電容量式または感圧式のタッチパネル状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の携帯端末機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−292616(P2006−292616A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115755(P2005−115755)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】