説明

バーハンドル車両用連動ブレーキ機構

【課題】簡単な構造で連動ブレーキ機構を小型化することができ、また、精度良くシリンダ孔やポートを形成でき、良好な操作フィーリングが得られるバーハンドル車両用連動ブレーキ機構を提供する。
【解決手段】前輪用液圧マスタシリンダ3と連動用スレーブシリンダ9とは、同一のシリンダ基体13に、有底のシリンダ孔3a,9aがシリンダ基体一側にそれぞれ開口して穿設され、これらシリンダ孔3a,9aにピストン19,25をそれぞれ内挿して形成する。シリンダ基体一側の一面を両シリンダ孔3a,9aの加工基準面32とする。連動部材14と前輪用ブレーキレバー2とをシリンダ基体13の一側に配設し、連動部材14と前輪用ブレーキレバー2とには、連動用スレーブシリンダ9側への回動を規制する回動規制片14e,2eがそれぞれ設けられ、連動部材14は、回動規制片14eを加工基準面32に当接させることによって回動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドル車両用連動ブレーキ機構に係り、詳しくは、連動ブレーキ用の液圧系統に用いられる連動用スレーブシリンダと前輪用液圧マスタシリンダとを備えたシリンダ基体の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バーハンドル車両用連動ブレーキ機構として、前輪用ブレーキレバーの操作に応じて前輪用液圧マスタシリンダを介して前輪ブレーキに液圧を供給する第1液圧系統と、後輪用ブレーキ操作子の操作に応じて後輪用アクチュエータを介して後輪ブレーキに液圧を供給すると共に、後輪用ブレーキ操作子の操作に応じて液圧作動する連動用スレーブシリンダを介して前記前輪用液圧マスタシリンダを作動させて前輪ブレーキに液圧を供給する第2液圧系統とを備えたものが提案されている。この前輪用液圧マスタシリンダと前記連動用スレーブシリンダとは並列に配置され、前輪用液圧マスタシリンダのピストン端面と連動用スレーブシリンダのピストン端面とに両端がそれぞれ当接する円弧状の連動部材の中間部を、前記前輪用ブレーキレバーに回動自在に連結し、前輪用ブレーキレバーを操作して第1液圧系統によって前輪ブレーキを作動させる時には、前輪用ブレーキレバーの操作に伴って前記連動部材が回動して前輪用液圧マスタシリンダのピストンを押動して前輪用液圧マスタシリンダを作動させ、後輪用ブレーキ操作子を操作して第2液圧系統によって前輪ブレーキを作動させる時には、前記連動用スレーブシリンダが液圧作動することにより、前記連動部材が前輪用ブレーキレバーを非操作状態に保持したまま回動して前輪用液圧マスタシリンダのピストンを押動して前輪用液圧マスタシリンダを作動させるようにしている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平9−254771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のものでは、前輪用液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダとは別体に形成され、前輪用液圧マスタシリンダのシリンダボディに突設したブラケットと、連動用スレーブシリンダのシリンダボディに突設したブラケットとをボルトで一体に連結し、前輪用液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダの開口部側に前記連動部材と前輪用ブレーキレバーとを配設することから、連動ブレーキ機構が大型化すると共に、前輪用液圧マスタシリンダや連動用スレーブシリンダのシリンダ孔やポートの加工や組み付けには精度が要求され、各シリンダ孔やポートの加工や組み付けに設定されている公差が組み合わさると、操作フィーリングが低下する虞があった。
【0004】
そこで本発明は、簡単な構造で連動ブレーキ機構を小型化することができ、また、精度良くシリンダ孔やポートを形成でき、良好な操作フィーリングが得られるバーハンドル車両用連動ブレーキ機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため第1の発明は、後輪用ブレーキ操作子の操作に応じて後輪用液圧マスタシリンダから後輪ブレーキと連動用スレーブシリンダとに液圧を供給し、該連動用スレーブシリンダのピストンの動きを連動部材を介して前輪用液圧マスタシリンダのピストンに伝達することにより、該前輪用液圧マスタシリンダから前輪ブレーキに液圧を供給するとともに、前輪用ブレーキレバーの操作を前記連動部材を介して前記前輪用液圧マスタシリンダのピストンに伝達することにより、前輪用液圧マスタシリンダから前輪ブレーキに液圧を供給する連動機構を備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ機構において、前記連動用スレーブシリンダのシリンダ孔と前記前輪用液圧マスタシリンダのシリンダ孔とを一つのシリンダ基体に並列に配置し、該シリンダ基体の一側面を共通の加工基準面として、両シリンダ孔をシリンダ基体の一側に隣接させて開口させた状態に加工形成し、両開口の間に設けた回動軸に、前記前輪用ブレーキレバーと前記連動部材とを前記シリンダ孔の軸線方向に沿って揺動可能に軸着し、前記連動部材には、前記回動軸への軸着部と、該軸着部から車体前後方向に突出して前記前輪用液圧マスタシリンダのピストン端面と前記連動用スレーブシリンダのピストン端面とにそれぞれ当接する一対の作用腕と、前記前輪用ブレーキレバーに設けた連動部材押圧腕に当接する当接腕と、連動用スレーブシリンダ側への回動を規制する回動規制片とが設けられ、前記前輪用ブレーキレバーには、前記回動軸への軸着部と、該軸着部から延出した操作部と、該操作部の基端部に形成された前記連動部材押圧腕と、連動用スレーブシリンダ側への回動を規制する回動規制片とが設けられ、前記連動部材の回動規制片及び前輪用ブレーキレバーの回動規制片の少なくともいずれか一方が前記加工基準面に当接して前記連動部材及び前記前輪用ブレーキレバーの連動用スレーブシリンダ側への回動が規制されることを特徴としている。
【0006】
第2の発明では、前記シリンダ基体の反バーハンドル側に、前記回動規制片と前記加工基準面との当接部分を覆う第1覆壁部を形成したことを特徴としている。
【0007】
第3の発明では、前記シリンダ基体の車体取付時の姿勢において上方側に、前記回動規制片と前記加工基準面との当接部分を覆う第2覆壁部を形成したことを特徴としている。
【0008】
第4の発明では、前記連動部材の回動規制片を延出して、ブレーキランプスイッチのスイッチ作動部を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述のように構成することにより、第1の発明では、前輪用液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダとを一体に形成することから、連動ブレーキ機構の小型化を図ることができる。また、前輪用液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダの加工基準面を同一面としたことにより、各シリンダ孔やポートを同一の加工基準面から追って設定できることから、各シリンダ孔やポートを簡単に精度良く加工でき、クリアランスの精度を上げることができ、ブレーキ操作時に良好な操作フィーリングを得ることができる。また、連動部材や前輪用ブレーキレバーの回動規制片を前記加工基準面に当接させて回り止めすることから、回り止め用の当接面を別途設ける必要がなくなり、さらに、連動部材や前輪用ブレーキレバーに近い位置で回動規制片を前記加工基準面に当接させることができることから、連動ブレーキ機構の小型化を図ることができる。
【0010】
第2及び第3の発明では、レバー操作時に回動規制片と該回動規制片が当接する加工基準面との間に隙間が生じても、該隙間に異物が挟まることを防止でき、常に良好にレバー操作を行うことができる。また、風切り音等の騒音の軽減を図ることができる。
【0011】
第4の発明では、連動部材の回動規制片にブレーキランプスイッチのスイッチ作動部を形成したことにより、前輪用ブレーキレバーを操作した時も後輪用のブレーキレバーやブレーキペダル等のブレーキ操作子を操作した時もブレーキランプスイッチを点灯させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の各形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1乃至図6は本発明の第1形態例を示すもので、図1は連動ブレーキ機構の要部断面正面図、図2は連動ブレーキ機構の説明図、図3は連動ブレーキ機構の車体取付状態の要部断面側面図、図4は図3のIV-IV断面図、図5は前輪用ブレーキレバーを操作した時の連動ブレーキ機構の要部断面正面図、図6は後輪用ブレーキペダルを操作した時の連動ブレーキ機構の要部断面正面図である。
【0013】
図2に示されるように、本形態例のバーハンドル車両用の連動ブレーキ機構1は、前輪用ブレーキレバー2の操作に応じて前輪用液圧マスタシリンダ3を介して前輪ブレーキ4に液圧を供給する第1液圧系統5と、後輪用ブレーキ操作子となる後輪用ブレーキペダル6の操作に応じて後輪用液圧マスタシリンダ7を介して後輪ブレーキ8に液圧を供給すると共に、後輪用ブレーキペダル6の操作に応じて液圧作動する連動用スレーブシリンダ9を介して前輪用液圧マスタシリンダ3を作動させて前輪ブレーキ4に液圧を供給する第2液圧系統10とを備えている。
【0014】
前輪用液圧マスタシリンダ3と連動用スレーブシリンダ9とは、バーハンドル車両の車体前部で前輪を操向するハンドルバー11のアクセルグリップ12に近接して取り付けられるシリンダ基体13に、ハンドルバー11の軸線L1に対して平行方向に併設される。シリンダ基体13の車体一側方には、上下一対のレバーブラケット13a,13aが、前記前輪用液圧マスタシリンダ3と連動用スレーブシリンダ9のシリンダ孔開口側の中間位置に突設され、該レバーブラケット13a,13aに前輪用ブレーキレバー2と連動部材14とが、前記前輪用液圧マスタシリンダ3の軸線L2と連動用スレーブシリンダ9の軸線L3の中間位置に配設されるカラー15とピボット16とを用いて、前記軸線L2及び軸線L3方向に沿って揺動可能に設けられている。即ち、カラー15及びピボット16は、前記軸線L2及び軸線L3を通る平面に対して垂直に設けられ、前輪用ブレーキレバー2と連動部材14とは、前記軸線L2及び軸線L3を通る平面に沿って回動するように設けられている。
【0015】
前輪用液圧マスタシリンダ3は、シリンダ基体13のハンドルバー11に近い位置に配設される。前輪用液圧マスタシリンダ3に用いられる有底の第1シリンダ孔3aは、ハンドルバー11の軸線L1に沿って、より好適には軸線L1に平行に形成され、シリンダ基体13の車体外側方向に開口し、開口側には大径部3bが形成され、また、第1シリンダ孔3aの底部3cには、前輪ブレーキ4に作動液を供給する作動液供給口17が形成されている。第1シリンダ孔3aには、2つのカップシール18,18を介して第1ピストン19が内挿され、該第1ピストン19と第1シリンダ孔3aの底部3cとの間に液圧室20が画成される。また、第1ピストン19は、第1ピストン19の基端側に形成したフランジ部19aと前記底部3cとの間に縮設された第1リターンスプリング21によって常時開口側に付勢され、その後退限は、第1シリンダ孔3aの大径部3bに設けたサークリップ22によって規制されている。さらに、第1ピストン19は、非作動時に於いて先端部19bが第1シリンダ孔3aから突出した状態となっており、先端部19bと大径部3bの開口側との間に第1ダストブーツ23が装着されている。
【0016】
連動用スレーブシリンダ9は、シリンダ基体13のハンドルバー11から遠い位置に配設される。連動用スレーブシリンダ9に用いられる有底の第2シリンダ孔9aは、その軸線L3がハンドルバー11の軸線L1及び前記第1シリンダ孔3aの軸線L2に沿って平行に形成され、特に本形態例では、車両走行姿勢において、前記各軸線L1,L2,L3が水平になるように形成され、シリンダ基体13の車体一側方に開口し、開口側の大径シリンダ部9bと、底部側の小径シリンダ部9cと、大径シリンダ部9bと小径シリンダ部9cとを繋ぐ円錐部9dとを備えている。また、第2シリンダ孔9aの底部9eには、後輪用ブレーキペダル6の操作に応じて液圧が供給される作動液導入口24が小径シリンダ部9cに連通して形成されている。第2ピストン25は、カップシール26が装着され、前記小径シリンダ部9cに挿入される大径軸部25aと、該大径軸部25aのシリンダ開口側端部に形成されるフランジ部25bと、該フランジ部25bに連続する中径軸部25cと、該中径軸部25cに連続する先端小径部25dとを備えている。この第2ピストン25を第2シリンダ孔9aに挿入し、大径シリンダ部9bの開口側に、サークリップ27を介して抜止部材28が装着されることにより、該抜止部材28と大径シリンダ部9bと円錐部9dとにより空気室29が画成され、抜止部材28と前記フランジ部25bとの間には、第2ピストン25を常時シリンダ孔底部側に付勢する第2リターンスプリング30が縮設される。また、前記中径軸部25cと抜止部材28とが当接することによって、第2ピストン25のストロークの規制と第2ピストン25の抜け止めが図られる。さらに、第2ピストン25は、非作動時において先端部25eが第2シリンダ孔9aから突出した状態となっており、該先端部25eと大径シリンダ部9bの開口側との間に第2ダストブーツ31が装着されている。
【0017】
前記第1シリンダ孔3aと第2シリンダ孔9aとは、シリンダ基体13一側の一面を両シリンダ孔3a,9aの共通の加工基準面32として、該加工基準面32から寸法を追って、第1シリンダ孔3a,大径部3b,第2シリンダ孔9aの大径シリンダ部9b,小径シリンダ部9c,円錐部9d及び、ポート(図示せず)が形成される。
【0018】
シリンダ基体13は、前輪用液圧マスタシリンダ3の上部に、第1シリンダ孔3aに前記ポート(図示せず)を介して連通する作動液を貯留したリザーバタンク33が設けられ、連動用スレーブシリンダ9の上部に、第2シリンダ孔底部側の作動液導入口24に連通するブリーダ孔34を備えたブリーダボス部13bがそれぞれ設けられる。また、シリンダ基体13の下部には、ブレーキランプスイッチ35が設けられ、該ブレーキランプスイッチ35の作動子35aは前記加工基準面32から突出するように配設されている。
【0019】
前輪用ブレーキレバー2は、アクセルグリップ12の前方に略沿って緩やかに湾曲する棒状体に形成され、ライダーに操作される操作部2aと、該操作部2aの基部側に連続して、前記連動部材14を押圧して回動させる連動部材押圧腕2bと、シリンダ基体13のレバーブラケット13a,13aに支持される軸着部2cとが一体に形成され、軸着部2cには、前記ピボット16及びカラー15の挿通孔2dが形成されるとともに、前記シリンダ基体13の一側部に当接して前輪用ブレーキレバー2の連動用スレーブシリンダ側への回動を規制する回動規制片2eが延設されている。
【0020】
連動部材14は、前記シリンダ基体13のレバーブラケット13a,13aに支持される中間部の軸着部14aと、該軸着部14aから車体前後方向に延出され、前記第1ピストン19と第2ピストン25の先端部にそれぞれ当接する円弧状の第1作用腕14b及び第2作用腕14cと、前記前輪用ブレーキレバー2に形成された連動部材押圧腕2bと対向する当接腕14dと、前記シリンダ基体13の前記加工基準面32に当接して連動部材14の回動を規制する回動規制片14eと、該回動規制片14eから延出されるブレーキランプスイッチ35の作動子35aを押動するスイッチ作動部14fとを一体に備えている。軸着部14aには、前記ピボット16及びカラー15の挿通孔14gが形成されている。また、当接腕14dと前記連動部材押圧腕2bとの間には、前輪用ブレーキレバー2を非作動位置に付勢するスプリング部材36が縮設されている。さらに、前記シリンダ基体13の反バーハンドル側には、連動部材14の回動規制片14aと加工基準面32との当接部分を覆う第1覆壁部13cが、また、シリンダ基体13の車体上方側には、前記当接部分を覆う第2覆壁部13dがそれぞれ形成されている。
【0021】
上述のように形成された連動ブレーキ機構1は、前輪用ブレーキレバー2及び後輪用ブレーキペダル6の非作動状態では、前輪用液圧マスタシリンダ3の第1リターンスプリング21と、連動用スレーブシリンダ9の第2リターンスプリング30と、スプリング部材36の弾発力によって、前輪用ブレーキレバー2は回動規制片2eがシリンダ基体13の一側部に当接して回動が規制され、連動部材14は回動規制片14eが加工基準面32に当接して回動が規制された状態となっている。また、連動部材14に設けたスイッチ作動部14fが、前記作動子35aを押し込んで、ブレーキランプスイッチ35はOFFの状態となっている。
【0022】
前輪用ブレーキレバー2を回動操作すると、図5に示されるように、前輪用ブレーキレバー2の連動部材押圧腕2bが連動部材14の当接腕14dを押動し、前輪用ブレーキレバー2と連動部材14とが、ピボット16を中心として前輪用液圧マスタシリンダ3側へ回動し、連動部材14の第2作用腕14cが、第1リターンスプリング21の弾発力に抗して第1ピストン19をシリンダ孔底部側に押し込む。これに伴って、液圧室20に液圧が発生し、作動液供給口17より第1液圧系統5を介して前輪ブレーキ4に液圧が供給され、前輪ブレーキ4を作動させる。また、前輪用ブレーキレバー2の回動操作に伴って、前輪用ブレーキレバー2の回動規制片2eがシリンダ基体13の一側部から離れ、また、連動部材14の回動規制片14eが加工基準面32から離れるとともに、スイッチ作動部14fが作動子35aから離れることにより、ブレーキランプスイッチ35の作動子35aが突出し、ブレーキランプスイッチ35がONの状態となり、図示しないブレーキランプを点灯させる。
【0023】
また、後輪用ブレーキペダル6を操作すると、図6に示されるように、後輪用液圧マスタシリンダ7の液圧室(図示せず)に液圧が発生し、第2液圧系統10を介して、後輪ブレーキ8に液圧が供給され、後輪ブレーキ8を作動させる。一方、後輪用液圧マスタシリンダ7の液圧室に発生した液圧は、第2液圧系統10を介して、連動用スレーブシリンダ9の作動液導入口24から、第2シリンダ孔9aに供給され、第2ピストン25を第2リターンスプリング30の弾発力に抗してシリンダ孔開口側に押圧する。これに伴い、第2ピストン25の先端部25eがシリンダ孔開口部から突出し、連動部材14の第1作用腕14bを押圧し、連動部材14をピボット16を中心に回動させる。連動部材14は、スプリング部材36が伸長することによって、前輪用ブレーキレバー2を非操作状態に保持したまま単独で回動し、第2作用腕14cが前輪用液圧マスタシリンダ3を作動させて、上述のように前輪ブレーキ4を作動させる。また、この時、連動部材14の回動規制片14eが加工基準面32から離れることにより、上述のように、ブレーキランプスイッチ35がONの状態となり、ブレーキランプを点灯させる。
【0024】
本形態例の前輪用液圧マスタシリンダ3と連動用スレーブシリンダ9とは、上述のように、前輪用液圧マスタシリンダ3の第1シリンダ孔3aと、連動用スレーブシリンダ9の第2シリンダ孔9aとを、一つのシリンダ基体13内に一体に形成することから、連動ブレーキ機構の小型化を図ることができる。さらに、前輪用液圧マスタシリンダ3と連動用スレーブシリンダ9とは、シリンダ基体13一側の共通の加工基準面32から寸法を追って形成されることから、シリンダ孔3a,9aやポートを簡単に精度良く加工でき、クリアランスの精度を上げることができ、ブレーキ操作時に良好な操作フィーリングを得ることができる。また、連動部材14の回動規制片14eを加工基準面32に当接させて回り止めすることから、所定位置で確実に回り止めすることができるとともに、回り止め用の当接面を別途設ける必要がなくなる。さらに、連動部材14や前輪用ブレーキレバー2に近い位置で回動規制片を前記加工基準面32に当接させることができることから、連動ブレーキ機構1の小型化を図ることができる。また、第1覆壁部13cと第2覆壁部13dとを設けたことにより、ピボット16周りを別途カバーで覆わなくても、前輪用ブレーキレバー2の操作時に回動規制片14eと加工基準面32との間に隙間が生じた際に、該隙間に異物が挟まることを防止でき、常に良好にレバー操作を行うことができ、風切り音等の騒音の軽減も図ることができる。さらに、連動部材14の回動規制片14eにブレーキランプスイッチ35のスイッチ作動部14fを形成したことにより、前輪用ブレーキレバー2を操作した時も後輪用ブレーキペダル6を操作した時もブレーキランプスイッチ35を作動させてブレーキランプを点灯させることができる。
【0025】
図7乃至図9は、本発明の第2形態例を示すもので、図7は連動ブレーキ機構の要部断面正面図、図8は連動ブレーキ機構の車体取付状態の要部断面側面図、図9は図8のIX-IX断面図である。また、第1形態例と同一の部材には、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0026】
本形態例では、シリンダ基体13の反バーハンドル側に設けられ、連動部材14の回動規制片14aと加工基準面32との当接部分を覆う第1覆壁部13eを、前輪用ブレーキレバー2側へ延出させると共に、車両下方に向けて延出させて第3覆壁部13fを形成し、該第3覆壁部13fによって、ブレーキランプスイッチ35と、連動部材14のスイッチ作動部14fの当接部分を車両進行方向前方から覆うようにしている。また、本形態例の前輪用操作レバー2は、回動規制片2fが連動部材14の回動規制片14eと同様に、加工基準面32に当接することによって回り止めされている。
【0027】
本形態例は以上のように構成されることにより、第1覆壁部13eによって、前輪用ブレーキレバー2の操作時に連動部材14の回動規制片14eと加工基準面32との間に生じる隙間を完全に車両進行方向前方から覆うことができ、前記隙間に異物が挟まることを確実に防止できる。さらに、第3覆壁部13fによって、ブレーキランプスイッチ35の側面と、連動部材14のスイッチ作動部14fとの間に生じる隙間へ異物が挟まることを防止でき、ブレーキランプスイッチ35を確実に作動させることができる。
【0028】
なお、本発明は後輪用ブレーキ操作子がブレーキレバーであっても良く、また、シリンダ基体をシリンダ孔の軸線がハンドルバーの軸線と直交するように配設した縦型のブレーキ装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1形態例を示す連動ブレーキ機構の要部断面正面図である。
【図2】同じく連動ブレーキ機構の説明図である。
【図3】同じく連動ブレーキ機構の車体取付状態の要部断面側面図である。
【図4】図3のIV-IV断面図である。
【図5】同じく前輪用ブレーキレバーを操作した時の連動ブレーキ機構の要部断面正面図である。
【図6】同じく後輪用ブレーキペダルを操作した時の連動ブレーキ機構の要部断面正面図である。
【図7】本発明の第2形態例を示す連動ブレーキ機構の要部断面正面図である。
【図8】同じく連動ブレーキ機構の車体取付状態の要部断面側面図である。
【図9】図8のIX-IX断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…連動ブレーキ機構、2…前輪用ブレーキレバー、2a…操作部、2b…連動部材押圧腕、2c…軸着部、2e,2f…回動規制片、3…前輪用液圧マスタシリンダ、3a…第1シリンダ孔、3b…大径部、4…前輪ブレーキ、5…第1液圧系統、6…後輪用ブレーキペダル、8…後輪ブレーキ、9…連動用スレーブシリンダ、9a…第2シリンダ孔、9b…大径シリンダ部、9c…小径シリンダ部、9d…円錐部、10…第2液圧系統、11…ハンドルバー、12…アクセルグリップ、13…シリンダ基体、13a…レバーブラケット、13b…ブリーダボス部、13c,13e…第1覆壁部、13d…第2覆壁部、13f…第3覆壁部、14…連動部材、14a…軸着部、14b…第1作用腕、14c…第2作用腕、14d…当接腕、14e…回動規制片、14f…スイッチ作動部、15…カラー、16…ピボット、17…作動液供給口、19…第1ピストン、19b…先端部、20…液圧室、21…第1リターンスプリング、23…第1ダストブーツ、24…作動液導入口、25…第2ピストン、25a…大径軸部、25b…フランジ部、25c…中径軸部、25d…小径軸部、25e…先端部、28…抜止部材、29…空気室、30…第2リターンスプリング、31…第2ダストブーツ、32…加工基準面、33…リザーバタンク、34…ブリーダ孔、35…ブレーキランプスイッチ、35a…作動子、36…スプリング部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪用ブレーキ操作子の操作に応じて後輪用液圧マスタシリンダから後輪ブレーキと連動用スレーブシリンダとに液圧を供給し、該連動用スレーブシリンダのピストンの動きを連動部材を介して前輪用液圧マスタシリンダのピストンに伝達することにより、該前輪用液圧マスタシリンダから前輪ブレーキに液圧を供給するとともに、前輪用ブレーキレバーの操作を前記連動部材を介して前記前輪用液圧マスタシリンダのピストンに伝達することにより、前輪用液圧マスタシリンダから前輪ブレーキに液圧を供給する連動機構を備えたバーハンドル車両用連動ブレーキ機構において、前記連動用スレーブシリンダのシリンダ孔と前記前輪用液圧マスタシリンダのシリンダ孔とを一つのシリンダ基体に並列に配置し、該シリンダ基体の一側面を共通の加工基準面として、両シリンダ孔をシリンダ基体の一側に隣接させて開口させた状態に加工形成し、両開口の間に設けた回動軸に、前記前輪用ブレーキレバーと前記連動部材とを前記シリンダ孔の軸線方向に沿って揺動可能に軸着し、前記連動部材には、前記回動軸への軸着部と、該軸着部から車体前後方向に突出して前記前輪用液圧マスタシリンダのピストン端面と前記連動用スレーブシリンダのピストン端面とにそれぞれ当接する一対の作用腕と、前記前輪用ブレーキレバーに設けた連動部材押圧腕に当接する当接腕と、連動用スレーブシリンダ側への回動を規制する回動規制片とが設けられ、前記前輪用ブレーキレバーには、前記回動軸への軸着部と、該軸着部から延出した操作部と、該操作部の基端部に形成された前記連動部材押圧腕と、連動用スレーブシリンダ側への回動を規制する回動規制片とが設けられ、前記連動部材の回動規制片及び前輪用ブレーキレバーの回動規制片の少なくともいずれか一方が前記加工基準面に当接して前記連動部材及び前記前輪用ブレーキレバーの連動用スレーブシリンダ側への回動が規制されることを特徴とするバーハンドル車両用連動ブレーキ機構。
【請求項2】
前記シリンダ基体の反バーハンドル側に、前記回動規制片と前記加工基準面との当接部分を覆う第1覆壁部を形成したことを特徴とする請求項1記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ機構。
【請求項3】
前記シリンダ基体の車体取付時の姿勢において上方側に、前記回動規制片と前記加工基準面との当接部分を覆う第2覆壁部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ機構。
【請求項4】
前記連動部材の回動規制片を延出して、ブレーキランプスイッチのスイッチ作動部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のバーハンドル車両用連動ブレーキ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−153270(P2007−153270A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354956(P2005−354956)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】