説明

パイプコンベア

【課題】循環走行する帯状搬送ベルトをパイプ状に丸め、該パイプ内に被搬送物を包み込んで搬送するパイプコンベアにおいて、石炭等の被搬送物によるパイプコンベアの破損を生じることなく、該被搬送物を円滑に搬送することが可能なパイプコンベアを提供する。
【解決手段】帯状搬送ベルト1の被搬送物の受部から、該ベルトの側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に、該帯状搬送ベルトの搬送面の上方より、支持部材7により該搬送面に対して垂下される部材であって、被搬送物と共に走行する長尺状の異物と接触してその向きを搬送方向に揃える流れ調節部材8を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ドラム間を循環走行する無端の帯状搬送ベルトを、上記回転ドラム間における一部の領域でパイプ状に変形させて走行せしめるパイプコンベアに関する。より詳しくは、石炭等の被搬送物によるパイプコンベアの破損を生じることなく、該被搬送物を円滑に搬送することが可能なパイプコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
回転ドラム間を循環走行する帯状搬送ベルトをパイプ状に変形させ、該パイプ内に被搬送物を包み込んで搬送するパイプコンベアは、搬送中の被搬送物からの粉塵の発生を抑制しつつ、大量の被搬送物を搬送することが可能であり、石炭等の被搬送物を搬送するのに適した搬送手段である。
【0003】
パイプコンベアは、両端の回転ドラムにより、帯状搬送ベルトが循環走行しており、該ベルトはキャリアローラにより搬送方向に走行しながら、帯状搬送ベルトの側端部が変形し、除々に丸められる。さらに、上記搬送ベルトの側端部が閉じて、一部が重なり合うことでパイプ状になる。パイプ状の帯状搬送ベルトは、保形枠を通過させることによって、パイプ形状を維持しながら走行する。パイプコンベアに投入された石炭等の被搬送物は、完成されたパイプ内部に包まれた状態で搬送される。保形枠を通過した帯状搬送ベルトは、パイプ状から帯状に戻され、被搬送物は排出される。帯状となったベルトは、復路においてもパイプ状に丸められ、保形枠によりパイプ状を維持したまま回転ドラム付近まで走行し、帯状に戻され、被搬送物が投入されるのが一般的である。
【0004】
また保形枠は、支持部材を介して、通過する帯状搬送ベルトのパイプ形状に沿って、円周上に配置されるローラ、すなわち円形保持ローラを有する構造が一般的である。パイプ形状の帯状搬送ベルトは、上記円形保持ローラに接触しながら走行することにより、パイプ形状が維持され、かつ円滑に搬送される。
【0005】
ところが、上記パイプコンベアを使用して、石炭等の被搬送物を連続的に搬送する場合、被搬送物中には、稀に、大径の塊状の異物が混入している場合があり、上記パイプ状の帯状搬送ベルトによる搬送中に上記異物が、保形枠に衝突し、保形枠、及び円形保持ローラ等を破損させることが課題となっていた。
【0006】
上記課題の解決策として、保形枠と円形保持ローラとの支持部にばね手段を設けることで、円形保持ローラを遠心方向に変位可能とすることで、過大な塊を通過できるようにしたパイプコンベアが提案されている(特許文献1参照)。この方法により、ある程度の大きさの塊状の異物の通過は可能である。
【0007】
また、上記大径の塊状の異物は、予め格子スクリーン等の篩い操作によって、除去することも可能であり、かかるスクリーンによる前処理が行なわれることが多い。
【0008】
しかしながら、上記解決策を採用したとしても、帯状搬送ベルトが、搬送方向に裂けるという損傷が生じることがあり、パイプコンベアの損傷を防止しつつ、石炭等の被搬送物を円滑に搬送させる点でなお課題があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−248808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本発明は、循環走行する帯状搬送ベルトをパイプ状に丸め、該パイプ内に被搬送物を包み込んで搬送するパイプコンベアにおいて、石炭等の被搬送物によるパイプコンベアの破損を生じることなく、該被搬送物を円滑に搬送することが可能なパイプコンベアを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、石炭等の被搬送物に混入される金属片や木片等の長尺状の異物が原因であることが判明した。すなわち、前記格子スクリーンにより大径の塊状の異物を除去したとしても、木材や鉄筋等の長尺状の異物が、スクリーンを通過して帯状搬送ベルトの受部に投入され、該帯状搬送ベルトがパイプ状への変形が完了した部分を通過する際、長尺状の異物の方向が、搬送方向に対して、ほぼ直角方向で搬送されると、該異物がパイプ状の帯状搬送ベルトに挟まった状態で搬送されること、また、上記異物が挟まった状態で、帯状搬送ベルトが走行して搬送された場合には、帯状搬送ベルトの搬送方向に対する裂傷や、前記円周上の配置された円形保持ローラに長尺状の異物が挟まることによる該円形保持ローラや保形枠の破損が生じることが判明した。このような裂傷や破損により、パイプコンベアのベルトや保形枠等の交換或いは、補修する必要が生じる。
【0012】
本発明者は、上記知見に基づき、長尺状の異物が、パイプ状に変形が完成した帯状搬送ベルトに刺さる状態を回避する回避手段として、帯状搬送ベルトの被搬送物の受部から、該ベルトの側端部が重なる地点に至るまでの間で、搬送ベルト上を搬送方向に対して、ほぼ直角方向で搬送される長尺状の異物の方向を搬送方向に揃える流れ調節部材を付設することによって、簡易に、且つ、極めて効果的に前記現象を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、回転ドラム間を循環走行する無端の帯状搬送ベルトを、上記回転ドラム間における一部の領域で該ベルトの側端部を重なり合わせてパイプ状に成型させ、パイプ状に成形が完成された帯状搬送ベルトを、保形枠を通過させることにより、帯状搬送ベルトのパイプ形状を維持しつつ走行せしめるパイプコンベアにおいて、前記帯状搬送ベルトの被搬送物の受部から、該ベルトの側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に、該帯状搬送ベルトの搬送面の上方より、支持部材により該搬送面に対して垂下される部材であって、被搬送物と共に走行する長尺状の異物と接触することにより、その向きを搬送方向に揃える流れ調節部材を設けたことを特徴とするパイプコンベアである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のパイプコンベアでは、流れ調節部材により、帯状搬送ベルトがパイプ状に変形が完成するまでに、石炭等の被搬送物に混入される木片等の長尺状の異物が、流れ調節部材に接触することにより、該異物の向きを搬送方向に揃えることが可能である。この結果、上記異物が、搬送方向に対して、ほぼ直角方向で搬送された場合でも、その方向をパイプに入る前に変位させることができ、パイプ状の帯状搬送ベルトに挟まることが原因で生じる、帯状搬送ベルトの裂傷や、保形枠、円形保持ローラ等の破損を防止することが可能である。
【0015】
また、上記のとおり、長尺状の異物が混入しても、円滑に搬送することが可能である為、石炭等の被搬送物を、前記格子スクリーン等の簡便な篩い操作等のみで、効率良くパイプコンベアに投入して搬送することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(パイプコンベア)
本発明のパイプコンベアを、添付図面に従って詳細に説明するが、本発明のパイプコンベアは、添付図面に示した態様に限られるものではない。図1は、本発明のパイプコンベアの代表的な態様を示す概略図、図2は、図1に示した回転ドラムから保形枠までを平面視した概略図、図3は、図2a−b面の断面図である。
【0017】
本発明のパイプコンベアの基本的な構造としては、公知の構造が特に制限なく採用される。前記図1に従って説明すれば、回転ドラム2により、帯状搬送ベルト1が循環走行しており、該搬送ベルト1はキャリアローラ3により搬送方向に走行しながら、帯状搬送ベルト1の側端部が変形し、除々に丸められる。さらに、上記搬送ベルト1の側端部が閉じることでパイプ状になる。図1及び図2では、側端部が閉じて重なり合い始める箇所に、ベルトの側端部を確実に重ねるための成形ガイドローラ4が設置することが好ましい。すなわち、成形ガイドローラ4により側端部の一方を下方に押さえることで、帯状搬送ベルト1の側端部が突き合うことなく、確実に、パイプ形状に成形を行うことが可能である。また、上記成形ガイドローラ4の設置により、帯状搬送ベルト1の側端部が接触することによる先端部の磨耗の防止も可能である。
【0018】
上記、側端部が閉じて重なり始めた帯状搬送ベルト1は、搬送方向に走行するにつれて、該ベルトの側端部はさらに重なり合い、パイプ状の帯状搬送ベルト1が最初に通過する保形枠6を通過する時点で、パイプ形状が完成する。さらに、パイプ形状が完成した帯状搬送ベルト1は、複数の保形枠6を通過させることによって、パイプ形状を維持しながら走行する。被搬送物受部10にて、パイプコンベアに投入された被搬送物は、上記の機構により、パイプ内部に包まれた状態で搬送される。保形枠6を通過した帯状搬送ベルト1は、パイプ状から帯状に戻され、被搬送物が排出される。帯状となった帯状搬送ベルト1は、復路においてもパイプ状に丸められ、保形枠6によりパイプ状を維持したまま回転ドラム2付近まで走行し、帯状に戻されて、回転ドラムに至るのが一般的である。
【0019】
また、上記保形枠6には、支持部材7を介して、通過する帯状搬送ベルトのパイプ形状に沿って、円周上に配置されるローラ、すなわち円形保持ローラ5(図1では図示せず)を有する構造が一般的である。パイプ形状の帯状搬送ベルトは、上記円形保持ローラ5に接触しながら搬送されることにより、パイプ形状が維持され、かつ円滑に搬送される。
【0020】
(流れ調節部材)
本発明のパイプコンベアの特徴は、上記パイプコンベアにおいて、前記帯状搬送ベルト1の被搬送物受部10から、該搬送ベルト1の側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に、該帯状搬送ベルト1の搬送面の上方より、支持部材9により該搬送面に対して垂下される流れ調節部材8を設けたことにある。石炭等の被搬送物に混入して投入される長尺状の異物が、帯状搬送ベルト1の搬送方向と異なる方向で搬送される場合には、該異物が、流れ調節部材8と接触し、帯状搬送ベルト1がパイプ形状になるまでに、上記異物の向きを帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えることが可能である。この結果、長尺状の異物が、パイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まることが原因で生じる、帯状搬送ベルト1の裂傷や、キャリアローラ3や円形保持ローラの破損を防止することが可能である。
【0021】
従って、上記流れ調節部材8は、長尺状の異物と接触してその方向を変えるだけの抵抗を有するように支持部材により搬送面に対して垂下されることが必要である。
【0022】
係る支持部材9に垂下される流れ調節部材8の構造としては、流れ調節部材8を固定具11により支持部材9に直接固定する構造や、支持部材9から可撓性の継ぎ手により吊り下げる構造が好適である。これらのうち、確実に長尺状の異物の長手方向を帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えることができるという点で、流れ調節部材8を支持部材8に直接固定する構造が特に好適である。
【0023】
上記本発明のパイプコンベアにおける流れ調節部材8の形状としては、長尺状の異物の向きを搬送ベルトの搬送方向に揃えることが可能であれば、特に制限はなく、種々の形状を採用することが可能である。係る形状としては、板状体、及び立方体や直方体等の角柱や円柱等の棒状体等が挙げられるが、被搬送物の搬送に対する抵抗となり難く、被搬送物の搬送が円滑に行えるという観点から、棒状体が好適である。また、上記流れ調節部材8の帯状搬送ベルト1に対する幅については、長尺状の異物の向きを帯状搬送ベルト1の搬送方向に変えるだけの抵抗を有すれば特に制限されず、後述する流れ調節部材8の材質の種類等を勘案して適宜決定すれば良い。しかしながら、あまり小さすぎると、長尺状の異物と接触してその方向を変えるだけの抵抗が不足するため好ましくなく、また、あまり大きすぎると、被搬送物の搬送に対して抵抗となるため、被搬送物の搬送が円滑に行えなくなるため好ましくない。従って、上記流れ調節部材8の帯状搬送ベルト1に対する幅としては、該流れ調節部材を設置する箇所における帯状搬送ベルト1の幅に対して1/100〜1/10の範囲で適宜決定するのが好ましい。
【0024】
流れ調節部材8を支持部材9に直接固定する構造とする際の上記流れ調節部材8の材質としては、長尺状の異物に対する抵抗となり、かつ長尺状の異物や、被搬送物が接触しても破損しない程度の剛性を有するものであれば良く、被搬送物の種類や、混入する長尺状の異物の種類を勘案して適宜決定すれば良い。係る材質としては、ゴム類、樹脂類、鉄、ステンレス鋼等の金属類が好適である。
【0025】
また、流れ調節部材8を支持部材9から可撓性の継ぎ手により吊り下げる構造である場合には、流れ調節部材8は、長尺状の異物に対する抵抗となるだけの重量を有することが必要である。係る材質としては、ゴム類、樹脂類、鉄、ステンレス鋼等の金属類が好適である。これらの材質のうち、材質自体の比重が高く、小さい形状でも比較的大きな重量を有する鉄、ステンレス鋼等の金属類を採用するのが最も好適である。なお、ゴム類、樹脂類等の材質の比重が比較的小さい材質を採用する場合でも、板状体等の長尺状の異物に対する抵抗となるだけの重量を有するような形状とすることで、流れ調節部材8を支持部材9から可撓性の継ぎ手により吊り下げる構造に採用することが可能である。
【0026】
さらに、上記流れ調節部材8の材質が樹脂類、金属類等である場合には、流れ調節部材8が帯状搬送ベルト1と接触する可能性のある下部をゴム等で保護することも、帯状搬送ベルト1への損傷を防ぐという観点から好ましい。
【0027】
(流れ調節部材の配置箇所)
本発明のパイプコンベアにおける流れ調節部材8は、帯状搬送ベルト1がパイプ形状になるまでに、長尺状の方向を帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えるという観点から、帯状搬送ベルト1の被搬送物受部10から、該搬送ベルト1の側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に設置されることが必要である。
【0028】
なお、上記帯状搬送ベルト1の側端部が重なる地点とは、帯状搬送ベルト1がパイプ状になり始めた地点である。従って、上記図1のとおり、成形ガイドローラ4を有する場合には、帯状搬送ベルト1が初めて成形ガイドローラ4を通過する地点であり、該成形ガイドローラ4を有しない場合には、帯状搬送ベルト1の側端部が閉じた、即ち接触し始めた地点である。
【0029】
上記のとおり、流れ調節部材8は、帯状搬送ベルト1の被搬送物受部10から、該搬送ベルト1の側端部が重なる地点に至るまでの位置であれば任意に設置することが可能である。長尺状の異物の向きを搬送方向に揃える効果が高いという観点から、帯状搬送ベルト1の幅が広い箇所に流れ調節部材8を設置するのが好適である。帯状搬送ベルと1の幅が最も広い箇所は被搬送物受部10であることから、上記流れ調節部材8の位置は、被搬送物をパイプコンベアへ投入する際の障害とならない範囲で、被搬送物受部10又は被搬送物受部10付近に設置するのが好適である。
【0030】
また、上記流れ調節部材8の帯状搬送ベルト1の幅方向に対する配置については、上記異物の方向を搬送方向に揃えることが可能な位置であれば特に制限なく、任意に設置することが可能である。被搬送物は通常、ホッパ等によりパイプコンベアに投入される。従って、パイプコンベアに投入される長尺状の異物は、ホッパの開口部の径よりも小さいため、流れ調節部材8の帯状搬送ベルト1の幅方向に対する設置箇所としては、被搬送物受部10の幅の範囲内(図2、図3における一点鎖線で囲まれた範囲内)に設置することが好適である。特に、上記範囲で、帯状搬送ベルト1がパイプ形状となった場合に中心よりも外側に偏位させた場合が、長尺状の異物を搬送方向に揃える効果が高く、最も好適である
また、上記流れ調節部材8は、複数設置することで、長尺状の異物の長手方向の流れ調節効果が高いため好ましいが、あまり多すぎると石炭等の被搬送物に対する抵抗となって、該被搬送物の搬送に影響が出るため、通常1個〜5個、好ましくは1個〜2個を適宜設置すれば良い。上記、流れ調節部材8を複数設置した場合には、各々の流れ調節部材の帯状搬送ベルト1の搬送方向に対する位置が互いに異なるように複数設置することが好適である。さらに、搬送方向に複数設置した際には、隣り合う流れ調節部材8の帯状搬送ベルト1の幅方向に対する位置が互いに異なるように設置することが最も好適である。
【0031】
上記支持部材8から垂下された流れ調節部材8の下端部の搬送面に対する位置は、帯状搬送ベルト1により搬送される長尺状の異物の向きを、帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えられる位置であれば、特に制限されない。例えば、帯状搬送ベルト1に流れ調節部材8が接触しながら搬送方向に移動するように設置することも、帯状搬送ベルト1の搬送面に対して間隙を開けて設置することも可能であり、被搬送物の種類や形状、搬送量等を勘案して適宜決定すれば良い。
【0032】
さらに具体的には、被搬送物が石炭等である場合、混入される金属片や木片等の長尺状の異物は、被搬送物である石炭等と形状が異なる為、帯状搬送ベルト1に堆積した被搬送物の上方部に位置する傾向にある。従って、係る場合、流れ調節部材8の下端部の搬送面に対する位置は、被搬送物の堆積面に接するように設置すれば、長尺状の異物の向きを変えるのに好都合である。上記のとおり、流れ調節部材8の下端部が、石炭等の被搬送物の堆積面に接するように設置させる為には、被搬送物の堆積面の帯状搬送ベルト1からの高さと、上記流れ調節部材8の下端部の帯状搬送ベルト1の搬送面からの間隙を一致させれば良い。また、被搬送物の搬送量が変化する場合には、最小搬送時の被搬送物の堆積面の帯状搬送ベルト1からの高さと、上記流れ調節部材8の下端部の帯状搬送ベルト1の搬送面からの間隙を一致させれば良い。
【0033】
(本発明のパイプコンベアのその他の態様)
上記のとおり、発明のパイプコンベアは、流れ調節部材8により、石炭等の被搬送物に混入して投入される長尺状の異物の向きを、帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えることが可能となり、長尺状の異物がパイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まることが原因で生じる、帯状搬送ベルト1の裂傷や、キャリアローラ3や円形保持ローラの破損を防止することが可能である。
【0034】
上記長尺状の異物が比較的軽い材質である場合には、まれに、該異物が流れ調節部材8の前方で滞留することがある。係る場合に該異物と共に搬送される被搬送物も流れ調節部材8の前方で滞留し、搬送が滞ることがある。従って、上記流れ調節部材8または、支持部材9に、異物の滞留を検知する検知機構(図示せず)を設置することも可能である。上記検知機構により異物の滞留を検知した場合には、該異物を除去することで被搬送物の滞留を防止することが可能である。係る検知機構としては、上記異物等が、流れ調節部材8に接触した際の流れ調節部材8の振動を検知する加速度センサや振動センサ、支持部材9に設置され、流れ調節部材8の歪みを検知する歪みゲージ等が挙げられる。
【0035】
これらの検知機構により、流れ調節部材8に生じる振動や歪みを常時モニタリングし、一定の閾値を超えた場合、すなわち異物が滞留した状態を検知することができる。異常と判断する閾値は、あまり狭く設定しすぎると、流れ調節部材8に対して定常運転時に生じる振動や歪みのブレも検知して誤作動が多くなる。従って、上記閾値は、長尺状の異物が滞留した際の数値や、定常運転時のブレ等を勘案して適宜決定すれば良い。
【0036】
長尺状の異物がパイプ形状の帯状搬送ベルト1に挟まった状態では、定常運転時のパイプ形状と比較して、膨らみ等の形状異常が発生する。従って、また、さらに安全に且つ円滑に被搬送物の搬送を行うという観点から、帯状搬送ベルト1の側端部が重なる地点から、パイプ状の帯状搬送ベルトが最初に通過する保形枠6に至るまでの何れかの箇所に、パイプ形状の異常を検知する形状異常検知機構を設置し、該検知機構が異常を検知した際には、帯状搬送ベルトの搬送を停止させる非常停止装置を設置することの可能である。上記構造により、長尺状の異物がパイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まった状態を、パイプの形状異常により検知することができ、該異常により帯状搬送ベルト1の走行を停止することが可能である。
【0037】
(形状異常検知機構)
上記形状異常検知機構としては、パイプ形状の異常を検知する機構を有していれば特に制限なく、設置箇所等を勘案して、公知の検知手段を採用することが可能である。前記したとおり、パイプ形状の帯状搬送ベルト1に長尺状の異物が挟まると、パイプ形状に膨らみ等の変形が生じる。従って、上記検知手段としては、変形したパイプ状の帯状搬送ベルト1の変形箇所の接触を検知することで、形状異常を検知する検知手段が挙げられる。また、長尺状の異物がパイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まった状態で、円形保持ローラ等のローラを通過した際には、通過するローラ、又は該ローラの支持部材に対し定常運転時に発生しない歪みや、定常運転時以上の荷重が生じる。従って、かかる歪みや荷重を検知することでも形状異常を検知することが可能である。上記検知手段について、以下詳細に説明する。
【0038】
パイプ状の帯状搬送ベルト1の変形箇所の接触を検知することで、形状異常を検知する検知手段としては、例えば、図4に示すとおりタッチスイッチ12や接触検出式センサ13等が挙げられる。
【0039】
タッチスイッチ12は、パイプ状の帯状搬送ベルト1に対して間隙をあけて配置され、定常運転時には、帯状搬送ベルト1とは接触していないが、形状異常時にパイプが膨らんだ状態で帯状搬送ベルト1と接触し、スイッチのオン又はオフが作動するものである。また、接触検出式センサ13は、帯状搬送ベルト1に接触するローラ、及びローラに対して搬送方向後方に間隙をあけて配置されるマイクロスイッチから形成されるものである。定常運転時には、ローラはマイクロスイッチと間隙が空いた状態で運転されるが、形状異常時には、膨らんだパイプと共にローラが搬送方向後方に押し込まれ、ローラがマイクロスイッチに接触することで、スイッチのオン又はオフが作動するものである。
【0040】
タッチスイッチ12と帯状搬送ベルトとの間隙、及び接触検出式センサ13におけるローラとマイクロスイッチとの間隙は、あまり狭くしすぎると、定常運転時におけるパイプ形状のブレも検知して誤作動が多くなる。従って、上記間隙は、長尺状の異物が挟まった時のパイプの膨らみや、定常運転時のパイプ形状のブレ等を勘案して適宜決定すれば良い。
【0041】
タッチスイッチ12や接触検出式センサ13等の形状異常検知機構は、変形したパイプ状の帯状搬送ベルト1の変形箇所と接触することで形状異常を検知するものである。従って、かかる形状異常検知機構の設置箇所としては、成形ガイドローラ4や円形保持ローラ5が設置されていない箇所、即ち、帯状搬送ベルト1の側端部が重なる地点から、保形枠6までの領域に設置するのが好適である。
【0042】
帯状搬送ベルト1が通過するローラ、又は該ローラの支持部材にかかる歪みや荷重を検知する検知手段としては、例えば図5に示すとおり、歪みゲージ14や荷重計15が挙げられる。長尺状の異物がパイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まった状態で、円形保持ローラ等のローラを通過した際には、通過するローラ、又は該ローラの支持部材に対し定常運転時に発生しない歪みや、定常運転時異常の荷重が生じる。従って、運転時の歪みや荷重を常時モニタリングし、一定の閾値を超えた場合を形状異常とすることで、パイプ状の帯状搬送ベルト1に長尺状の異物が挟まった状態を検知することが可能である。形状異常と判断する閾値は、あまり狭く設定しすぎると、定常運転時におけるパイプ形状のブレも検知して誤作動が多くなる。従って、上記閾値は、長尺状の異物が挟まった時に生じる歪みや荷重、及び定常運転時のパイプ形状のブレ等を勘案して適宜決定すれば良い。
【0043】
上記、歪みゲージ14や荷重計15等の検知手段は、帯状搬送ベルト1が通過するローラ、又は該ローラの支持部材に設置されれば、特に制限されない。しかしながら、精度良く形状異常を検知できるという観点から、パイプ状の形状が最も安定している保形枠6の部分、具体的には、前記保形枠6に円形保持ローラ5を支持する支持部材7に設置することが最も好ましい。
【0044】
これら形状異常検知機構は、パイプ形状の異常を検知するものであるため、パイプ状の帯状搬送ベルト1が通過する、同一円周上に、複数設置することが好適である。長尺状の異物がパイプ状の帯状搬送ベルト1に挟まる場合、パイプ状の帯状搬送ベルト1の幅方向に挟まることが一般的である。従って、図2及び図3に示すように、パイプ状の帯状搬送ベルト1の幅方向に対して挟んで対向するように設置するのが、精度良く異常を検知するという観点から最も好適である。また、形状異常検知機構をパイプ状の帯状搬送ベルト1の同一円周上に複数設置する場合、同じ種類のものを用いることも可能であるし、図2及び図3に示すとおり、複数種類のものを組み合わせて設置することも可能である。
【0045】
また、本発明において、形状異常検知機構の帯状搬送ベルトの走行方向における取り付け位置は、パイプ上に成形された帯状搬送ベルトの形状の異常を、パイプコンベアにおける最初の保形枠に至るまでに検知することができればよく、特に制限されない。しかし、パイプ状の形状が最も安定している保形枠の部分、具体的には、前記保形枠6に円形保持ローラ5を支持する支持部材7に設置することが最も好ましい。
【0046】
(非常停止装置)
本発明の非常停止装置としては、前記形状異常検知機構により形状異常を検知した際に発せられる信号を受けて、帯状搬送ベルト1の走行を停止させる機構を有するものであれば特に制限なく、公知の停止機構を用いることができる。例えば、回転ドラム2の回転を停止させることにより、帯状搬送ベルト1の走行を停止させる非常停止装置等が挙げられる。
【0047】
形状異常を検知した際に発せられる信号としては、公知の信号手段を採用することが可能である。かかる信号手段としては、電気信号等が挙げられる。
【0048】
具体的には、形状異常検知機構がタッチスイッチ12や接触検出式センサ13である場合には、係る形状異常検知機構で作動したスイッチオフの信号を受けて、回転ドラム2の回転を停止させることで、帯状搬送ベルト1の走行を停止させることが可能である。
【0049】
また、形状異常検知機構が歪みゲージ14や荷重計15である場合には、運転時の歪みや荷重を常時モニタリングし、一定の閾値を超えた際に、回転ドラム2やキャリアローラ3に停止信号を送信し回転ドラム2の回転を停止させることで、帯状搬送ベルト1の走行を停止させることが可能である。
【0050】
さらに、本発明の非常停止機構により停止したパイプコンベアに被搬送物が投入され続けると、パイプコンベアに被搬送物が溢れて、再始動が不可能になる。このため、上記非常停止機構と連動して被搬送物の投入を停止する機構を有することも可能である。
【0051】
(本発明のパイプコンベアの作用)
本発明のパイプコンベアでは、被搬送物受部10にて、パイプコンベアに投入された石炭等の被搬送物は、帯状搬送ベルト1の側端部が丸められて形成されたパイプ内部に包まれた状態で搬送される。上記被搬送物中に金属片や木片等の長尺状の異物が混入された場合、該異物の向きと、帯状搬送ベルト1の搬送方向とが揃っている場合には、該異物は帯状搬送ベルト1の搬送に伴って、パイプ形状に包まれた状態で搬送される。また、上記異物の向きが、搬送方向に対して、ほぼ直角方向で搬送された場合等、搬送方向と異なっている場合には、帯状搬送ベルト1の被搬送物受部10から、該搬送ベルト1の側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に、該帯状搬送ベルト1の搬送面の上方より、支持部材8により該搬送面と間隙をあけて垂下される流れ調節部材8に接触し、上記長手方向が、帯状搬送ベルト1の搬送方向に揃えられる。これにより、帯状搬送ベルト1の裂傷を生じさせることなく、被搬送物を上記異物と共に搬送させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のパイプコンベアの代表的な態様を示す概略図である。
【図2】本発明のパイプコンベアの回転ドラムから保形枠までを平面視した概略図である。
【図3】本発明のパイプコンベアの概略図である図2のa−b面の断面図である。
【図4】本発明のパイプコンベアのその他の代表的な態様を示す、成形ガイドローラから保形枠までを平面視した概略図である。
【図5】本発明のパイプコンベアのその他の代表的な態様を示す、成形ガイドローラから保形枠までを平面視した概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1:帯状搬送ベルト
2:回転ドラム
3:キャリアローラ
4:成形ガイドローラ
5:円形保持ローラ
6:保形枠
7:支持部材
8:流れ調節部材
9:支持部材
10:被搬送物受部
11:固定具
12:形状異常検知機構(タッチセンサ)
13:形状異常検知機構(接触検出式センサ)
14:形状異常検知機構(歪みゲージ)
15:形状異常検知機構(荷重計(ロードセル))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラム間を循環走行する無端の帯状搬送ベルトを、上記回転ドラム間における一部の領域で該ベルトの側端部を重なり合わせてパイプ状に成形させ、パイプ状に成形が完成された帯状搬送ベルトを、保形枠を通過させることにより、帯状搬送ベルトのパイプ形状を維持しつつ走行せしめるパイプコンベアにおいて、前記帯状搬送ベルトの被搬送物の受部から、該ベルトの側端部が重なる地点に至るまでの任意の位置に、該帯状搬送ベルトの搬送面の上方より、支持部材により該搬送面に対して垂下される部材であって、被搬送物と共に走行する長尺状の異物と接触してその向きを搬送方向に揃える流れ調節部材を設けたことを特徴とするパイプコンベア。
【請求項2】
前記流れ調節部材が、棒状体である請求項1に記載のパイプコンベア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−95344(P2010−95344A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267982(P2008−267982)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】