説明

パイプコンベヤ

【課題】重合部の両側端部の入れ替わりを確実に検知することができるパイプコンベヤを提供する。
【解決手段】パイプ状に丸められたときに互いに重合する搬送ベルト3の重合部Aにおける一方のベルト側端部3aに、N極が搬送ベルト3の外側を向くようにした永久磁石6を設け、かつ重合部Aにおける他方のベルト側端部3bに、S極が搬送ベルト3の外側を向くようにした永久磁石7を、一方のベルト側端部3aに設けた永久磁石6から搬送ベルト3の長手方向に離間させて設け、搬送ベルト3が通過する箇所における固定体に、両永久磁石6,7が通過するときの搬送ベルト3の外側に現れる永久磁石6,7の極性を検出する極性検出手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環走行する無端の帯状搬送ベルトの一部分をパイプ状に丸め、その内部に被搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトをパイプ状に丸めたとき、ベルトの幅方向の両側端部が互いに内外に重なるようにし、その重合部におけるベルトの両側端部の対向部に、互いに磁着する磁性体を埋設して、ベルトの開きを防止するようにしたパイプコンベヤがある(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開平2004−26384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載されているような従来のパイプコンベヤにおいては、重合部におけるべルトの両側端部の重合関係が逆になる、すなわち内外が入れ替わることがあり、この入れ替わりが発生すると、べルトに蛇行が生じ易くなることが確認されている。
【0004】
従来、このような重合部の入れ替わりを検知する手段がなかったため、それに起因する蛇行を防止することができなかったのが現状である。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、重合部の両側端部の内外の入れ替わりを、簡単かつ確実に検知することができるようにしたパイプコンベヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1)循環走行する無端の帯状搬送ベルトの一部分をパイプ状に丸め、その内部に被搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤにおいて、パイプ状に丸められたときに互いに重合する前記搬送ベルトの重合部における一方のベルト側端部に、N極が前記搬送ベルトの外側を向くようにした永久磁石を設け、かつ前記重合部における他方のベルト側端部に、S極が前記搬送ベルトの外側を向くようにした永久磁石を、前記一方のベルト側端部に設けた永久磁石から搬送ベルトの長手方向に離間させて設け、前記搬送ベルトが通過する箇所における固定体に、前記両永久磁石が通過するときの前記搬送ベルトの外側に現れる永久磁石の極性を検出する極性検出手段を設ける。
【0007】
(2)上記(1)項において、極性検出手段が、永久磁石が通過するときの磁力の強さの変化を検出しうる磁気センサと、この磁気センサによって検出された1個の永久磁石の出力波形の最初に現れるピーク値が、プラスかマイナスかにより、その永久磁石の極性を判別する極性判別手段とを備えている。
【0008】
(3)上記(2)項において、磁気センサにより検出した永久磁石のピーク値の大小を比較し、ピーク値が大のときは、その永久磁石が設けられているベルト側端部が、丸められた搬送ベルトの重合部の外側に、またピーク値が小のときは、その永久磁石が設けられているベルト側端部が、丸められた搬送ベルトの重合部の内側に位置することを判別するようにした内外判別手段を備えるものとする。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、極性検出手段が、両ベルト側端部の重合関係が逆になったことを検出したとき、警報装置または作動停止装置のいずれかを作動させるようにする。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、各ベルト側端部に、互いに極性の向きを同一とした複数の永久磁石を、搬送ベルトの長手方向に離間させて、かつ他方のベルト側端部に設けた永久磁石に対しても搬送ベルトの長手方向に離間するようにして設ける。
【0011】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、磁気センサとして、ループコイルを用いる。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)項のいずれかにおいて、永久磁石を、ゴムマトリックス内に磁石粉を混合したボンド磁石とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
請求項1記載の発明によると、側端部の重合状態が入れ替わると、丸められたベルトの外側に現れる永久磁石の極性が変化することを利用し、これを検知することにより、重合部におけるベルトの両側端部の内外の入れ替わりを、簡単かつ確実に検知することができ、これにより、べルトの蛇行を未然に防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、磁気センサの出力波形の最初に現れるピーク値がプラスかマイナスかにより、その永久磁石の極性を、簡単かつ迅速に判別することができ、ひいては、重合部におけるベルトの両側端部の内外の入れ替わりを簡単に判別することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によると、磁気センサにより検出した永久磁石のピーク値の大小を比較することにより、その永久磁石が設けられているベルト側端部が、丸められた搬送ベルトの重合部の外側に位置しているか、内側に位置しているかを、簡単かつ迅速に判別することができ、ひいては、重合部におけるベルトの両側端部の内外の入れ替わりを簡単に判別することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によると、極性検出手段により、両ベルト側端部の重合関係が逆になったことが検知されると、警報装置または作動停止装置が作動させられるので、即座に異常状態を確認することができ、迅速な対応を図ることができるとともに、蛇行を未然に防止することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によると、複数の永久磁石を、搬送ベルトの長手方向に離間するようにして設けてあるので、べルトのどの箇所で入れ替わりが生じたかを、正確に検知することができる。
【0018】
請求項6記載の発明によると、磁気センサとして、ループコイルを用いているので、永久磁石の極性変化をアナログ出力として検出し、ピーク値を確実に検出することができる。
【0019】
請求項7記載の発明によると、ボンド磁石を用いることにより、べルトの変形に永久磁石を追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明の第1の実施形態を示す。
図1に示すように、このパイプコンベヤは、前部プーリ(1)と後部プーリ(2)とに、無端帯状の搬送ベルト(3)を掛け回し、前部プーリ(1)と後部プーリ(2)とのいずれか一方を、モータ等の駆動手段(図示略)により回転させることによって、搬送ベルト(3)を循環走行させ、搬送ベルト(3)の上側走行部分であるキャリヤ側と、下側走行部分であるリターン側の中間部を、複数の案内ローラをほぼ環状または樋状に配設してなる多数の案内枠(いずれも図示略)の内部を通過させることにより、搬送ベルト(3)を、その一方の側端部(3a)の表面(搬送面)が、他方の側端部(3b)の裏面(非搬送面)に接触するようにして、両側端部(3a)(3b)が互いに重合するパイプ状に丸め、その中に、後部プーリ(2)寄りの上方に配設したホッパー(4)から供給された被搬送物(5)を、包み込んで搬送するようになっている。
【0021】
パイプ状に丸められたときに互いに重合する搬送ベルト(3)の一方(外側)の側端部(3a)の裏面と、他方(内側)の側端部(3b)の裏面には、厚さ方向に磁化された複数の永久磁石(6)(7)が、以下のように埋設されている。
【0022】
すなわち、パイプ状に丸められたときに互いに重合する搬送ベルト(3)の重合部(A)における一方のベルト側端部(3a)の裏面には、N極が搬送ベルト(3)の外側を向くようにした複数の永久磁石(6)が、搬送ベルト(3)の長手方向に互いに離間するようにして設けられ、またこの重合部(A)における他方のベルト側端部(3b)の裏面には、S極が搬送ベルト(3)の外側を向くようにした複数の永久磁石(7)が、搬送ベルト(3)の長手方向に互いに離間するとともに、一方のベルト側端部(3a)に設けた永久磁石(6)からも搬送ベルト(3)の長手方向に離間するようにして設けられている。
【0023】
各永久磁石(6)(7)は、ゴムマトリックス内に磁石粉を混合したボンド磁石とし、それらをベルト側端部(3a)(3b)の裏面に貼設して実施してもよいが、搬送ベルト(3)内に埋設して実施するのが好ましい。
また、一方のベルト側端部(3a)の裏面に現れる永久磁石(6)の極性をS極とし、かつ他方のベルト側端部(3b)の裏面に現れる永久磁石(7)の極性をN極としてもよい。
【0024】
搬送ベルト(3)が通過する箇所における固定体(図示せず)には、永久磁石(6)(7)が通過するときの、搬送ベルトの外側に現れる永久磁石(6)(7)の磁力の変化を検出する磁気センサ(8)が設けられている。この磁気センサ(8)は、例えばループコイルとするのが好ましい。
【0025】
図4に示すように、磁気センサ(8)には、極性判別手段(9)が接続され、この磁気センサ(8)と極性判別手段(9)とにより、各永久磁石(6)(7)が通過するときの搬送ベルト(3)の外側に現れる永久磁石(6)(7)の極性を検出する極性検出手段(10)が形成されている。
【0026】
磁気センサ(8)により、永久磁石(7)が通過するときの磁力の変化を検出し、これによって検出された出力信号波形は、極性判別手段(9)に接続されたデイスプレイ(11)に表示されるようになっている。
【0027】
この磁気センサ(8)によって検出された1個の永久磁石(6)(7)の出力波形の最初に現れるピーク値がプラスかマイナスかを、極性判別手段(9)により判別することにより、その永久磁石(6)(7)の極性を判別することができる。
【0028】
すなわち、この例では、ディスプレイ(11)に示すように、プラスのピーク値(P1)が最初に現れた後、マイナスのピーク値(P2)が現れたときは、N極が外側となっている永久磁石(6)が通過したことを判別することができ、また、マイナスのピーク値(P3)が最初に現れた後、プラスのピーク値(P4)が現れたときは、S極が外側となっている永久磁石(6)が通過したことを判別することができる。
【0029】
そして、永久磁石(6)が設けられた一方のベルト側端部(3a)が、丸められた搬送ベルト(3)の重合部(A)の外側に位置している正常状態では、極性検出手段(10)は、常に永久磁石(6)のみを検出し(重合部(A)の内側に位置している他方のベルト側端部(3b)に設けられた永久磁石(7)の磁力は磁気センサ(8)に届きにくく、その検出出力は小さいので、それをローパスフィルタでカットし、無視する)、永久磁石(7)を検出したときは、重合部(A)において、他方のベルト側端部(3b)が一方のベルト側端部(3a)の外側に位置したこと、すなわち入れ替わりが生じたことを検出することができる。
【0030】
極性検出手段(10)には、例えばブザーや赤色灯等の警報装置(12)および作動停止装置(13)が接続されており、極性検出手段(10)が、異常状態、すなわち、丸められた搬送ベルト(3)の重合部(A)に入れ替わりが生じたことを判別したときは、警報装置(16)が作動し、光または音により警報を発し、また作動停止装置(17)が作動し、パイプコンベヤの運転を停止するようになっている。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、ベルト側端部(3a)(3b)の重合状態が入れ替わると、永久磁石(6)(7)の極性が変化するので、これを検知することにより、入れ替わりを検知することができ、これにより、べルトの蛇行の要因となる入れ替わりを確実に検知し、蛇行を有効に予防することが可能となる。
【0032】
図5は、極性判別手段(9)に、内外判別手段(14)を組み込んだ例を示す。
内外判別手段(14)は、磁気センサ(8)により検出した永久磁石(6)(7)のピーク値(P1)〜(P4)を、予め設定した閾値±Mと比較し、閾値±Mより大のときは、その永久磁石(6)(7)が設けられているベルト側端部(3a)(3b)が、丸められた搬送ベルト(3)の重合部(A)の外側に、またピーク値(P1)〜(P4)が閾値±Mより小のときは、その永久磁石(6)(7)が設けられているベルト側端部(3a)(3b)が、重合部(A)の内側に位置していると判別するようになっている。
【0033】
したがって、正常時には、永久磁石(6)は重合部の外側、永久磁石(7)は重合部の内側に位置しているいるので、図5のデイスプレイ(11)の上段に示すように、磁気センサ(8)により検出した永久磁石(6)のピーク値(P1)(P2)は、絶対値が閾値±Mより大となり、永久磁石(7)のピーク値(P3)(P4)は、絶対値が閾値±Mより小となる。
【0034】
図5のデイスプレイ(11)の下段に示すように、磁気センサ(8)により検出した永久磁石(6)のピーク値(P1)(P2)が、絶対値が閾値±Mより小となったり、または永久磁石(7)のピーク値(P3)(P4)が、絶対値が閾値±Mより大となったときは、永久磁石(6)が設けられているベルト側端部(3a)が、丸められた搬送ベルト(3)の重合部(A)の内側に、また永久磁石(7)が設けられているベルト側端部(3b)が、重合部(A)の外側に位置した、すなわち、重合部(A)に入れ替わりが生じたことを判別することができる。
【0035】
このような異常状態、すなわち、丸められた搬送ベルト(3)の重合部(A)に入れ替わりが生じたことを判別したときは、図4に示す装置と同様に、警報装置(16)および作動停止装置(17)を作動させる。
【0036】
なお、磁気センサ(8)の近くに、搬送ベルト(3)の部位を検出するためのリニアエンコーダ等を設け、それと上記極性検出手段(10)とを組み合わせることにより、重合部(A)に入れ替わりが生じた部位を特定しうるようにすることもできる。
【0037】
また、本発明は、特許請求の範囲を逸脱することなく、幾多の変形した形態での実施が可能である。
例えば、極性検出手段(10)を、搬送ベルト(3)が通過する箇所に、永久磁石(図示略)を搬送ベルト(3)の走行方向と直交する方向に移動可能として、かつ中立位置に復帰するようにばね等により付勢して設け、上記永久磁石における搬送ベルト(3)に対向する端部の極性と同極の永久磁石が、搬送ベルト(3)とともに近づ
いたときは、搬送ベルト(3)から離れる方向に移動し、異極の永久磁石が近づいたときは、搬送ベルト(3)に接近する方向に移動し、その移動の方向と移動量とを検出することにより、搬送ベルト(3)のベルト側端部(3a)(3b)に設けられた永久磁石(6)(7)と、ベルト側端部(3a)(3b)の重合関係とを判別するようにしたものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態の概要を示す斜視図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】極性検出手段等のブロック図である。
【図5】極性検出手段等の変形例のブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
(1)前部プーリ
(2)後部プーリ
(3)搬送ベルト
(3a)(3b)ベルト側端部
(4)ホッパ
(5)被搬送物
(6)(7)永久磁石
(8)磁気センサ
(9)極性判別手段
(10)極性検出手段
(11)ディスプレイ
(12)警報装置
(13)作動停止装置
(14)内外判別手段
(A)重合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環走行する無端の帯状搬送ベルトの一部分をパイプ状に丸め、その内部に被搬送物を包み込んで搬送するようにしたパイプコンベヤにおいて、
パイプ状に丸められたときに互いに重合する前記搬送ベルトの重合部における一方のベルト側端部に、N極が前記搬送ベルトの外側を向くようにした永久磁石を設け、かつ前記重合部における他方のベルト側端部に、S極が前記搬送ベルトの外側を向くようにした永久磁石を、前記一方のベルト側端部に設けた永久磁石から搬送ベルトの長手方向に離間させて設け、前記搬送ベルトが通過する箇所における固定体に、前記両永久磁石が通過するときの前記搬送ベルトの外側に現れる永久磁石の極性を検出する極性検出手段を設けたことを特徴とするパイプコンベヤ。
【請求項2】
極性検出手段が、永久磁石が通過するときの磁力の強さの変化を検出しうる磁気センサと、この磁気センサによって検出された1個の永久磁石の出力波形の最初に現れるピーク値が、プラスかマイナスかにより、その永久磁石の極性を判別する極性判別手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載のパイプコンベヤ。
【請求項3】
磁気センサにより検出した永久磁石のピーク値の大小を比較し、ピーク値が大のときは、その永久磁石が設けられているベルト側端部が、丸められた搬送ベルトの重合部の外側に、またピーク値が小のときは、その永久磁石が設けられているベルト側端部が、丸められた搬送ベルトの重合部の内側に位置することを判別するようにした内外判別手段を備えていることを特徴とする請求項2記載のパイプコンベヤ。
【請求項4】
極性検出手段が、両ベルト側端部の重合関係が逆になったことを検出したとき、警報装置または作動停止装置のいずれかを作動させるようにしたことを特徴とする請求項3記載のパイプコンベヤ。
【請求項5】
各ベルト側端部に、互いに極性の向きを同一とした複数の永久磁石を、搬送ベルトの長手方向に離間させて、かつ他方のベルト側端部に設けた永久磁石に対しても搬送ベルトの長手方向に離間するようにして設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパイプコンベヤ。
【請求項6】
磁気センサとして、ループコイルを用いたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパイプコンベヤ。
【請求項7】
永久磁石を、ゴムマトリックス内に磁石粉を混合したボンド磁石としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のパイプコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−154970(P2009−154970A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109637(P2006−109637)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】