説明

パイプハウスの展張器具

【課題】透明樹脂シートを張る作業を軽減させ、着脱が容易且つ安価な展張器具で多少の風が吹いても影響を受けずに透明樹脂シートを屋根部に張る作業を可能にするパイプハウス用の展張器具を提供する。
【解決手段】被覆部材の飛び出しを防止する第一飛出防止部11と、前記被覆部材をパイプハウス内部方向に押し付ける剥離防止体を一時的に掛止保持が可能な掛止保持手段14を設けた被覆部材の飛び出しを防止する第二飛出防止部12と、被覆部材が載置され、該被覆部材の移送を容易とする移送ガイド部13と、から構成され、前記移送ガイド部は、ローラ軸13dにガイドローラを、ガイドローラに移送ローラ13aを回転自在に軸着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用パイプハウスに展張するビニール等の透明樹脂シートを張る展張作業に使用する展張器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用に使用されるパイプハウスは、金属製のパイプ等で骨組みし構成されたもので、骨組み全体を覆うようにビニール等の透明樹脂シート(以下、透明樹脂シートと記す。)を張り、その上から弾性のあるロープ等の弾性体で形成された剥離防止体(以下、マイカー線と記す。)で押え付けて透明樹脂シートが骨組みから剥離することを防止することで、パイプハウスの内部の気密性をあげ、パイプハウス内で作物の栽培を行えるように構成されている。この透明樹脂シートは、毎年、農作物の栽培時期にのみパイプハウスに張られ、栽培が終了すると取り除かれる。
【0003】
農業用のパイプハウスは、アーチ状の屋根部を形成するアーチパイプ(耐腐食性があり、強度に優れた金属素材で形成されている)が長手方向に均等間隔を空けて平行に配置され、アーチパイプに内接され長手方向に水平に設置された梁部によって構成されている。
【0004】
透明樹脂シートをパイプハウスに張る際に用いる器具として、例えば、パイプハウスの
側面部の上端を形成し長手方向に延びる骨組みの梁部に設置する構造のパイプハウスの展
張器具を、本出願人が提案し、下記の特許文献1にて開示している。
【特許文献1】特願2003−433895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特願2003−433895号公報に開示したパイプハウスの展張器具の移送ガイド部の透明樹脂シートを載置する回転ローラは、単に軸棒に嵌挿されているだけの簡単な構造であった。この鉄製の軸棒は、野晒し状態で使用されるにも拘らずコスト面から十分なメッキ等の処理が施されず、或いは腐食性の優れたステンレス材が使用されることもなく、時間経過と共に腐食(錆び)を生じるものであった。そしてこの腐食した軸棒と、透明樹脂シートの重量がかかり撓んだ状態で軸棒と接するローラとの接触面にかかる摩擦によって、ローラの回転が妨げられることとなり、結果、スムーズな透明樹脂シートの移送が行えないものであった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために、透明樹脂シートを張る作業、即ち、透明樹脂シートの移送を容易にする安価なパイプハウス用の展張器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明は、複数のパイプが連設されて構成されたパイプハウスで使用する被
覆部材の展張器具であって、前記被覆部材の飛び出しを防止する第一飛出防止部と、前記
被覆部材をパイプハウス内部方向に押し付ける剥離防止体を一時的に掛止保持が可能な掛
止保持手段を設けた被覆部材の飛び出しを防止する第二飛出防止部と、被覆部材が載置さ
れ、該被覆部材の移送を容易とする移送ガイド部と、から構成され、前記移送ガイド部は、
ローラ軸にガイドローラを、ガイドローラに移送ローラを回転自在に軸着した構成によっ
て達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一飛出防止部と第二飛出防止部移によって移送中の透明樹脂シートの広がりを抑制しながら、プラスチック系の摩擦力が小さな材質のガイドローラと、同様に摩擦力が小さな材質の移送ローラを、ガイドローラに設けて構成したことにより、回転ローラが嵌挿する軸棒を特段高価なものにすることなく、小さな力でスムーズに透明樹脂シートの移送が行えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、各図を参照し、本発明の実施の形態について説明する。 図1は、本発明の展張器具10をパイプハウス1に設置した斜視図である。パイプハウス1は、金属製のパイプ等からなるアーチパイプ2をパイプハウス1長手方向に適宜間隔を空けて連ねて立設させ、アーチパイプ2に内接しパイプハウス1の長手方向に地面と水平に設けられた複数の梁部3(屋根梁部3a、側面梁部3b)とにより骨組みされて構成されている。また、同形状のパイプハウス1の側面部1bを連結して何棟も連設させて設置する場合には、パイプハウス1間に雨樋4が設けられ、透明樹脂シート60の展張作業時には、この雨樋4上に作業者が載り、屋根部1a上の展張作業を行っている。尚、被覆部材として透明樹脂シート60で説明を行っているが、フィルム状の部材、網状の部材等であっても良く、材質においても、ポリエチエン、塩化ビニールやポリプロピレン等の合成樹脂等この限りではない。
【0010】
パイプハウス1には、屋根部1aと側面部1bと出入口面部1cとで形成された骨組みに、透明な樹脂素材(ビニール等)から成る透明樹脂シート60を被覆して使用する。更に、透明樹脂シートが風に煽られてパイプハウス1から剥がれてしまわないように透明樹脂シートの上からパイプハウス1にしっかりと固定するために弾性部材から成る剥離防止体(以下、マイカー線と記す。)でパイプハウス1内部方向に押下する。パイプハウス1の全体を透明樹脂シート60で被覆することで、外部からパイプハウス1内部への雨や風の進入を防ぎ、安定した条件下でパイプハウス1内での農作物の栽培を可能とするものである。
【0011】
展張器具10は、パイプハウス1の屋根部1aに設けられ、パイプハウス1の側面部1b近傍の屋根梁部3aに、移送ガイド部13が地面とほぼ水平になるような角度で、ベース本体部20に設けられた固定部21によりベース本体部20を取り付け、展張本体部15を係合させてから使用するものである。透明樹脂シート60を移送ガイド部13上に誘導し、移送ガイド部13に設けられた移送ローラ等から成る移送手段により、パイプハウス1の長手方向に透明樹脂シート60を移送可能に成している。
【0012】
更に本発明の展張器具10の構造について詳しく説明する。 図2は、展張器具10の外観斜視図で、展張本体部15をベース本体部20に係合した状態図。 図4は、展張本体部15をベース本体部20から取外した状態図。 図6は、第一飛出防止部11と第二飛出防止部12と移送ガイド部13の構成説明図。図8は、展張器具10内に於いて、移送される透明樹脂シート60の状況説明図。パイプハウス1の展張器具10は、第一飛出防止部11と、第二飛出防止部12と、移送ガイド部13と、展張本体部15と、ベース本体部20とから構成されていている。
【0013】
前記移送ガイド部13は、鉄製の軸棒13d(以下、ローラ軸と記す。)に、エンビ材質のガイドローラ13bを、更にその外周に同様のエンビ材質の移送ローラ13aが回転自在に設けられて構成されている。このように構成することにより、たとえ軸棒13dに腐食が生じても、透明樹脂シート60の重量が移送ローラ13bに掛かって撓んだ状態であってもエンビ材質のローラ同士の接触のため摩擦力(摩擦係数)が小さくスムーズな移送が行えるものである。
【0014】
また、第一飛出防止部11、第二飛出防止部12も移送ガイド部13と同様に、ローラ軸11d、12dに、エンビ材質のガイドローラ11b、12bを、そしてその上に移送ローラ11a、12aを設けることで、一段と透明樹脂シート60の移送が容易に行える結果となる。尚、ガイドローラはフランジ状に成した形状のものでも良く、図6に示したものに限定されるものではない。
【0015】
そして、第一飛出防止部11、第二飛出防止部12、移送ガイド部13によって囲まれて形成される空間が、パイプハウス1の長手方向に対して移送路40を形成している。尚、第二飛出防止部12の上部には、ローラ軸12dを湾曲もしくは屈曲させて形成した凹部にマイカー線を一時的に掛止可能に成した掛止保持部14が設けられている。
【0016】
前記移送ガイド部13の移送ローラ13aは、第一飛出防止部11、第二飛出防止部12の移送ローラ11a、12aの下方ガイド面11c、12cよりも多少高い位置にその上面が位置するように設けられている。このことにより、透明樹脂シート60が移送ガイド部13の移送ローラ13aと、第一飛出防止部11、第二飛出防止部12の移送ローラ11a、12aの角部に挟まり込むことが回避、防止される。
【0017】
第二飛出防止部12は、第一飛出防止部11のローラ軸11dに設けられた付勢手段31a(例えば、バネ等)を有した取付部材31を介して係着されると共に、他端は、移送ガイド部13のローラ軸13dに設けられた係止片32の係止欠切32aに、ローラ軸12dが嵌合することで、三角形状の移送路40を形成することができる。そして、前記第二飛出防止部12のローラ軸12dが係止片32の係止欠切32aから外れるとバネの付勢力により第二飛出防止部12が取付部材31を支点に横上方に向かって跳ね起き、第二飛出防止部12と移送ガイド部13間に開口部50が形成される。これにより、透明樹脂シート60の挿入、取外しが容易に行えることとなる(図4)。また、第一飛出防止部11と第二飛出防止部12と移送ガイド部13とで三角形状の移送路40を形成することで、移送中及び風に煽られるような場合の透明樹脂シート60の広がりを抑制することが可能になる。
【0018】
第一飛出防止部11のローラ軸11dと、移送ガイド部13のローラ軸13dは、展張本体部15に接続されており、展張本体部15は、平面体により形成されていて、後述するベース本体部20の係合手段22に設けられた係合案内部22aにスライド挿入することで、ベース本体部20に係合可能(着脱自在)と成す。
【0019】
ベース本体部20は、展張本体部15を係合可能な係合手段22と、ベース本体部20をパイプハウス1の屋根部1aに設けられた屋根梁部3aに取り付けるための固定部21とで構成されている。固定部21の少なくとも内面の一部が屋根梁部3aを外周と面接触するように成していているので、しっかりと屋根梁部3aに固定することができる。また、パイプハウス1の種類により屋根部1aの傾斜角度や形状が異なるので、展張器具10を適切な状態に取り付けするために、固定部21により屋根梁部3aに対してベース本体部20の取り付け位置や角度を自在に調整できるように成している。
【0020】
ベース本体部20に設けられた係合手段22は、略コの字の矩形状を成した係合案内部22aで構成され、上部及び側面の一部が開口し、係合案内部22a内部に展張本体部15がスライド挿入されることでしっかりと係合可能に成している。係合案内部22aにより展張本体部15は上下方向にスライド自在に設けられているので、展張本体部15を取り外す際にも容易に行えるようになっている。また、係合案内部22aにより展張本体部15としっかりと係合しているので、透明樹脂シート60の牽引を行う際に生じるパイプハウス1の長手方向への力によって、ベース本体部20から展張本体部15が外れてしまうようなことはない。
【0021】
次に、以上説明した本発明の展張器具10をパイプハウス1へ取り付ける方法について説明する。パイプハウス1の骨組みであるアーチパイプ2には、パイプハウス1の長手方向に伸びた複数の梁部3がアーチパイプ2に内接されている。本発明の展張器具10は、パイプハウス1の屋根部1aに内接して設置された屋根梁部3aのうち、雨樋4の近傍で作業の行い易い高さに位置する屋根梁部3a、且つアーチパイプ2の近傍に、ベース本体部20を固定した後、前記した展張本体部15をベース本体部20に取付けて、展張器具10の設置が完了する。
【0022】
続いて、本発明の展張器具10を用いた透明樹脂シート60の展張作業について説明する。上記展張器具10の取り付け作業を終了すると図1のような状態になる(図1参照)。透明樹脂シート60の展張作業者は、展張器具10の取り付け後、パイプハウス1の雨樋4上に立ち、マイカー線を持ち上げて展張器具10の掛止保持部14に掛止させる。パイプハウス1の一方側の出入口側面部1cの近傍に取り付けた展張器具10の移送ガイド部13上からマイカー線の下を通すようにして、隣接設置した展張器具10の移送ガイド部13へと順次にパイプハウス1のもう一方の出入口側面部1cの近傍に取り付けた展張器具10まで牽引していく。この場合に透明樹脂シート60の一片を結束し、牽引ロープに接続して、ウインチ等の動力源を用いて自動的に牽引するよう成しても良い。
【0023】
展張器具10の内部において、パイプハウス1の長手方向に牽引された透明樹脂シート60を展張器具10の外部に出して、パイプハウス1の反対側面側へ引き伸ばし、マイカー線を展張器具10の掛止保持部14から掛止状態を解除して、透明樹脂シート60をしっかりと固定する位置に配置する。続いて、展張器具10をベース本体部20より取り外し、作業者が立っている雨樋4側まで透明樹脂シート60を引き伸ばし、それぞれの位置合わせを行って固定することでパイプハウス1の屋根部1aにおける透明樹脂シート60の展張作業は終了する。
【0024】
展張器具10は、従来のようにパイプハウス1から展張器具10を外すためにネジ等を操作するのではなく、展張本体部15をベース本体部20から引き抜くだけで、容易に取り外すことができるので作業の煩わしさがなく、高齢者や女性でも作業が行え、作業時間の短縮に繋がるものである。また、次のパイプハウス1の屋根梁部3aに予め取り付けておき、取り外した展張本体部15をベース本体部20に挿入すれば、次々と作業を進めることが可能になる。一度、取り付けたベース本体部20は取り外す必要がないので、次の作業時には、展張本体部15を挿入するだけで、透明樹脂シート60の展張作業を開始することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る展張器具を設置したパイプハウスの斜視図である。
【図2】本発明の展張器具の外観斜視図であり、展張本体部をベース本体部に係合した使用状態図である。
【図3】図2の背面図である。
【図4】本発明の展張器具の外観斜視図であり、展張本体部をベース本体部から取外した状態で、且つ第二飛出防止部と移送ガイド部間に開口部が形成されている状態図である。
【図5】本発明の展張器具の第一飛出防止部と第二飛出防止部の係着状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の展張器具の第一飛出防止部と第二飛出防止部と移送ガイド部の説明図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】本発明の展張器具内において、牽引中に移送される透明樹脂シートの状況をパイプハウスの出入口面部側から見た説明図である。
【図9】本発明の展張器具内において、透明樹脂シートの挿入又は取外し状態をパイプハウスの出入口面部側から見た説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 パイプハウス 2 アーチパイプ 3 梁部 10 展張器具 11 第一飛出防止部 11a、12a、13a 移送ローラ 11b、12b、13b ガイドローラ 11c、12c 下方ガイド面 11d、12d、13d 軸棒(ローラ軸) 12 第二飛出防止部 13 移送ガイド部 14 掛止保持部 15 展張本体部 20 ベース本体部 21 固定部 22 係合手段 22a 係合案内部 31 取付
部材 31a 付勢手段 32 係止片 32a 係止欠切40 移送路50 開口部 60 被覆部材(透明樹脂シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパイプが連設されて構成されたパイプハウスで使用する被覆部材の展張器具であ
って、
前記被覆部材の飛び出しを防止する第一飛出防止部と、
前記被覆部材をパイプハウス内部方向に押し付ける剥離防止体を一時的に掛止保持が可能
な掛止保持手段を設けた被覆部材の飛び出しを防止する第二飛出防止部と、
被覆部材が載置され、該被覆部材の移送を容易とする移送ガイド部と、から構成され、
前記移送ガイド部は、ローラ軸にガイドローラを、ガイドローラに移送ローラを回転自在
に軸着して設けられたことを特徴とする展張器具。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−87380(P2006−87380A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278610(P2004−278610)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000162906)狭山精密工業株式会社 (162)
【Fターム(参考)】