説明

パイプハウス

【課題】 コンクリート基礎と比較して簡易な構造の基礎であっても、軟弱な地盤に有効であり、強風の環境下であっても横風などに対する強度を確保することができるパイプハウスを提供するものである。
【解決手段】 パイプハウス1は、被覆部材7に当接する外側パイプ21a,22aと、外側パイプ21aの内側に沿って配設される内側パイプ21bと、緊締部材8を係止するための緊締部材止め部91、外側パイプ21a,22aを支持する外側支持部92、及び内側パイプ21bを支持する内側支持部93がそれぞれ立設されるプレート部94からなる基礎固定部90とを備え、プレート部94を地中に埋設し、基礎固定部90を2つで1組のペアをなし、当該1組の基礎固定部90間を外側パイプ21a及び内側パイプ21bで継合し、当該継合した外側及び内側の各パイプ間を支持リブ6で連結して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、植物を栽培する温室や簡易倉庫等に使用されるパイプハウスに関し、特に、軟弱な地盤に有効なパイプハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連棟ハウスにおいては、2本のパイプ継手を並列して配置し、この両パイプ継手の間を連結板で一体に接続したダブルパイプ連結具の前記パイプ継手に、柱又は屋根を構成するパイプの端部を両側から挿着し、パイプ継手の外側からビスで固定して、パイプ継手とこの内側に挿着したパイプとを一体に接続して長手後方に順次継ぎ足して、柱と屋根を組立てることを特徴とするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の大型パイプハウスは、内外二重構造の柱材、屋根材及び内側柱材に支持され前記屋根材と梁材とを支持する斜材を主骨材として構成されるとともに、小屋裏軸組が、梁材と、棟部と前記梁材の中央部とを連結する小屋束と、前記屋根材と前記梁材の中央部とを連結する方丈とにより構成された大型パイプハウス構造用アーチ、及び該アーチが、適宜間隔で配設されるとともに奥行直管に緊締されている大型パイプハウス構造である(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、従来の仮設建築物は、ダブルフレームが、トラスで連結された平行な内方と外方のパイプを正面アーチ状に折曲げて構成され、下端にはベースプレートが取付けられている。また、ダブルフレームのベースプレートは、アンカーボルトなどで左右の基礎単体に固定されている。また、取付けワイヤーは、所定長さのワイヤー本体と、ワイヤー本体の外周を覆うシート保護用合成樹脂パイプと、ワイヤー本体の両端に連結されたワイヤー張り器と、ワイヤー張り器の先端に連結されたフックと、フレームにおけるダブルフレームのベースプレートに植設された取付け用下端係止金具から構成されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開2000−184825号公報(第2頁右欄第43行−第3頁右欄第23行、図1)
【特許文献2】特開2003−306973号公報(第3頁左欄第47行−第4頁右欄第6行、図2)
【特許文献3】特開2002−13318号公報(第4頁右欄第14行−第5頁右欄第32行、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の連棟ハウスは、ダブルパイプの一方の基礎連結用パイプを、地中に埋設したコンクリート基礎の上に立設し、ダブルパイプの他方のパイプを地中に埋設しており、連棟ハウスを施工するには、コンクリートの基礎を作る工程があるため、組み立て作業に手間がかかるという問題点があった。特に、特許文献1の図面に示されるコンクリート基礎は、底面の面積が狭くある程度の高さをもつために、重心の位置が高い。このため、軟弱な地盤に対しては、連棟ハウスが傾斜又は沈下する恐れがあるという問題点があった。
【0006】
また、従来の大型パイプハウスは、外側柱材の下端部が土中挿入パイプ内に嵌合固定され、該土中挿入パイプには内側柱材下端部が接合されて、土中挿入用器具にて外側柱材及び内側柱材が土中に挿入固定されているだけであるので、大型パイプハウスが強風に煽られ、土中挿入パイプが土中から引き抜ける恐れがあり、大型パイプハウスや大型パイプハウス内の植物などに被害があるという問題点があった。
【0007】
また、従来の仮設建築物は、ダブルフレームのベースプレートが、アンカーボルトなどで左右の基礎単体に固定するなどの組み立て作業に手間がかかるという問題点があった。なお、この仮設建築物のフレームを覆うシートは、天井部分を覆う天井シート部と、左右の開口部分を残して覆う側方シート部からなり、対向する妻面にはシートを覆わない建築物である。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、コンクリート基礎と比較して簡易な構造の基礎であっても、軟弱な地盤に有効であり、強風の環境下であっても横風などに対する強度を確保することができるパイプハウスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るパイプハウスにおいては、並設した複数のアーチ状のパイプを骨組みとして被覆部材で被覆し、当該被覆部材を抑えるために緊締部材で周方向に緊締したパイプハウスであって、前記パイプのうち、前記被覆部材に当接する外側パイプと、前記パイプのうち、前記外側パイプの内側に沿って配設される内側パイプと、前記緊締部材を係止するための緊締部材止め部、前記外側パイプを支持する外側支持部、及び前記内側パイプを支持する内側支持部がそれぞれ立設されるプレート部からなる基礎固定部とを備え、前記プレート部を地中に埋設し、前記基礎固定部を2つで1組のペアをなし、当該1組の基礎固定部間を前記外側パイプ及び内側パイプで継合し、当該継合した外側及び内側の各パイプ間を支持リブで連結して構成されるものである。
【0010】
また、この発明に係るパイプハウスにおいては、必要に応じて、1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプが前記妻面の外枠をなし、前記対向する妻面における前記緊締部材止め部間を結ぶ係止部に、前記緊締部材を係止しているものである。
また、この発明に係るパイプハウスにおいては、必要に応じて、1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプ及び内側パイプをほぼ平行に配設しているものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るパイプハウスにおいては、並設した複数のアーチ状のパイプを骨組みとして被覆部材で被覆し、当該被覆部材を抑えるために緊締部材で周方向に緊締したパイプハウスであって、前記パイプのうち、前記被覆部材に当接する外側パイプと、前記パイプのうち、前記外側パイプの内側に沿って配設される内側パイプと、前記緊締部材を係止するための緊締部材止め部、前記外側パイプを支持する外側支持部、及び前記内側パイプを支持する内側支持部がそれぞれ立設されるプレート部からなる基礎固定部とを備え、前記プレート部を地中に埋設し、前記基礎固定部を2つで1組のペアをなし、当該1組の基礎固定部間を前記外側パイプ及び内側パイプで継合し、当該継合した外側及び内側の各パイプ間を支持リブで連結して構成されることにより、所定の深さに掘削した地中にプレート部を配置し、プレート部上に土砂を被せるだけで、基礎固定部としてプレート部と一体となった、外側支持部、内側支持部及び緊締部材止め部を強固に地面に対して支持することができる。また、地中のプレート部上にある土砂の重量によって、外側支持部、内側支持部及び緊締部材止め部の地中からの引き抜けを抑制することができる。特に、外側支持部、内側支持部及び緊締部材止め部は、プレート部と一体となっているために、従来のパイプハウスのように、パイプ及びハウスバンドを係止する杭を単体で地面に突き立てる場合と比較して、緊締部材止め部の引き抜けを抑制している。また、アーチ状のパイプを、外側パイプ及び内側パイプを支持リブで連結して構成しているので、従来のパイプハウスのように、1本で構成されたアーチ状のパイプと比較して、パイプハウスの強度を高めることができる。
【0012】
また、この発明に係るパイプハウスにおいては、必要に応じて、1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプが前記妻面の外枠をなし、前記対向する妻面における前記緊締部材止め部間を結ぶ係止部に、前記緊締部材を係止していることにより、対向する妻面における緊締部材止め部間の任意の位置で、緊締部材を係止することができる。
【0013】
また、この発明に係るパイプハウスにおいては、必要に応じて、1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプ及び内側パイプをほぼ平行に配設していることにより、外側パイプ及び内側パイプを連結する支持リブの形状をほぼ同一とすることができるうえに、外側パイプ及び内側パイプ間の強度を全周に亘ってほぼ一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
図1(a)はこの発明を実施するための第1の実施形態におけるパイプハウスの概略構成を示した正面図、図1(b)は図1(a)に示すパイプハウスの側面図、図2は図1に示すパイプハウスの構成部材である基礎固定部を示す斜視図、図3は図1に示すパイプハウスの二重アーチを説明するための部分拡大図、図4はこの発明を実施するための第1の実施形態における連棟型ハウスを説明するための部分拡大図である。
【0015】
図1乃至図4において、パイプハウス1は、棟方向に並設した複数のアーチ状のパイプ(以下、アーチパイプ20と称す)と、パイプハウス1の屋根面1a及び側面1bにおいてアーチパイプ20と直交し棟方向に延在する複数の直線状のパイプ(以下、第1の直線状パイプ3と称す)と、パイプハウス1の妻面1cにおいて格子状に複数配置した直線状のパイプ(以下、第2の直線状パイプ4と称す)とを骨組みとしている。
【0016】
なお、アーチパイプ20は、複数のパイプを継合することで1つのアーチパイプ20として構成してもよいし、1つのパイプにて構成してもよい。また、第1の直線状パイプ3及び第2の直線状パイプ4も同様である。この第1の実施形態においては、アーチパイプ20は、湾曲した2つのパイプをパイプハウス1の天部で継合部材5によって継合している。
また、アーチパイプ20は、後述する被覆部材7に当接する外側パイプ21a,22aと、この外側パイプ21aの内側に沿って配設される内側パイプ21bとに分類される。
【0017】
なお、この第1の実施形態においては、パイプハウス1は、アーチパイプ20として、外側パイプ21a及び内側パイプ21b間を支持リブ6で連結した外側パイプ21a及び内側パイプ21bからなるダブルアーチパイプ21と、外側パイプ22aのみからなるシングルアーチパイプ22とを併用しているが、パイプハウス1を設置する地域の風速や降雪量などの気候条件を考慮して、ダブルアーチパイプ21及びシングルアーチパイプ22の本数を適宜選択することが好ましい。
【0018】
また、支持リブ6は、対向する2枚のプレートで外側パイプ21a及び内側パイプ21bを挟持し、プレートの中央でボルト締めするものであり、プレートに作製した2つの溝に外側パイプ21a及び内側パイプ21bをそれぞれ嵌合することで、外側パイプ21aと内側パイプ21bとを所定の間隔に保持することができる。なお、支持リブ6は、外側パイプ21aと内側パイプ21bとの間隔を所定の間隔に保持することができれば、この構造に限られるものではない。
【0019】
また、この第1の実施形態においては、図3に示すように、パイプハウス1の天部を対称軸として、パイプハウスの屋根部1aとなる部分に片側3箇所、パイプハウス1の側面1bとなる部分に片側2箇所、それぞれ支持リブ6で連結しているが、外側パイプ21aと内側パイプ21bとの間隔を所定の間隔に保持することができるのであれば、この位置及び個数に限られるものではない。
【0020】
また、図1(b)に示すように、第1の直線状パイプ3は、アーチパイプ20と直交しパイプハウス1の屋根面1aにおいて棟方向に延在するパイプ(以下、天パイプ3aと称す)と、アーチパイプ20と直交しパイプハウス1の側面1b上方において棟方向に延在するパイプ(以下、第1の肩パイプ3bと称す)と、アーチパイプ20と直交しパイプハウス1の側面1b下方において棟方向に延在するパイプ(以下、裾パイプ3cと称す)と、アーチパイプ20と直交し天パイプ3a及び第1の肩パイプ3bからほぼ等間隔に位置し棟方向に延在するパイプ(以下、第2の肩パイプ3dと称す)とから構成している。
また、これらのパイプハウス1の骨組みを被覆部材7で被覆し、被覆部材7が風でばたつくことを抑えるために、緊締部材8でパイプハウス1の周方向に被覆部材7を緊締している。
【0021】
なお、この第1の実施形態においては、被覆部材7として、厚さが0.13mmで、素材がポリエチレン(PE)とエチレン酢酸ビニル(EVA)をベースにした農PO(農業用ポリオレフィン系特殊フィルム)を用いているが、このフィルムに限られるものではない。例えば、他のフィルムに比べ保温性があり、主原料が塩化ビニル(PVC)と可塑剤をベースに製造される農ビ(農業用ポリ塩化ビニル)、ポリエステル樹脂を使用した長期展張が可能な硬質フィルムであるPETフィルム(ポリエステルフィルム)、耐候性が高く汚れも付着しにくい長期展張が可能な軟質フィルムであるFETEフィルム(フッ素フィルム)、農PO及び農ビと比較して保温性は劣るが、エチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂を原料とした光線透過率に優れたフィルムである農サクビ(酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂)などが挙げられる。
また、この第1の実施形態においては、緊締部材8として、ハウスバンド 、紐 、ロープ、ワイヤーなどが挙げられる。
【0022】
基礎固定部90は、図2に示すように、緊締部材8を係止するための緊締部材止め部91、外側パイプ21aを支持する外側支持部92、及び内側パイプ21bを支持する内側支持部93がそれぞれ立設されるプレート部94からなる。ここで、プレート部94の表面において、外側支持部92と内側支持部93とを結んだ直線と直交する外側支持部92を通る直線に対して、緊締部材止め部91を外側に立設することで、緊締部材止め部91が外側パイプ92上に被覆した被覆部材7の内側に位置することがない。
【0023】
なお、この第1の実施形態においては、プレート部94は矩形状の鉄板であるが、緊締部材止め部91、外側支持部92及び内側支持部93を溶接できる面積を確保し、地中に埋没させたプレート部94上の土砂及び基礎固定部90の重量により基礎固定部90の引き抜けを防止できるのであれば、この形状及び材質に限られるものではない。特に、プレート部94の面積を増加するほど、地中に埋没させたプレート部94上の土砂の体積が増加することで、基礎固定部90の引き抜けをより抑制することができるのであるが、その反面、プレート部94を埋めるための掘削面積を広げ、掘削作業に手間がかかることとなる。したがって、これらを考慮して、プレート部94の大きさ及び形状を適宜選択することが好ましい。
【0024】
また、緊締部材止め部91は、プレート部94に溶接するための第1の直線部91aと第1の直線部91aに対してほぼ垂直に屈曲させた第2の直線部91bとからなるL字形状の鉄棒であり、第2の直線部91bの先端に環91cを有している。なお、緊締部材止め部91の形状は、プレート部94に溶接するための面積及びプレート部94と緊締部材止め部91との固着力を確保することができるのであれば、L字形状に限られるものではないが、L字形状であれば屈曲及び溶接などの加工が容易となるので好ましい。また、第2の直線部91bの先端を環91cとしているが、後述する係止部11を係止することができるのであればこの形状に限られるものではなく、例えば、フック形状であってもよい。
【0025】
また、外側支持部92は、ジョイント10を挿嵌できる内径をもつ鉄パイプであり、一端をプレート部94に溶接し、他端をジョイント10によって外側パイプ21aと継合できるように開放している。内側支持部93も同様に、ジョイント10を挿嵌することができる内径をもつ鉄パイプであり、一端をプレート部94に溶接し、他端をジョイント10によって内側パイプ21bと継合できるように開放している。なお、外側支持部92及び内側支持部93は鉄パイプを用いているが、ジョイント10を介して外側パイプ21a及び内側パイプ21bと継合できるのであれば、パイプに限られるものではなく、例えば、プレート部94に溶接しない他端のみに凹部を形成した円柱又は角柱であってもよい。
【0026】
また、ジョイント10は、一端が外側支持部92又は内側支持部93に挿嵌できる外径をもち、他端が外側パイプ21a又は内側パイプ21bに挿嵌できる外径をもつ直円柱形状の部材であるが、外側支持部92又は内側支持部93及び外側パイプ21a又は内側パイプ21bを継合する端部の形状に合わせて、ジョイント10の形状を適宜選択する。
【0027】
なお、この第1の実施形態においては、プレート部94に溶接した外側支持部92又は内側支持部93の内側方向及び外側方向に対する根元の強度を高めるために、外側支持部92及び内側支持部93の長さ方向に直交する補強部95を2箇所で溶接している。
【0028】
係止部11は、棟方向に列設させた複数の基礎固定部90における緊締部材止め部91間を連架する、ワイヤー、銅管、紐 、ロープなどであり、各緊締部材止め部91の環91cに洞貫、繋着又は係着する。
【0029】
つぎに、パイプハウス1の組み立て手順について説明するが、以下の組み立て手順は一例を示したものであり、この組み立て手順に限られるものではない。また、ここでは、棟方向の長さ2000cm、幅600cm、側面1bの高さ210cm、屋根面1aの高さ3400cmのパイプハウス1の組み立て手順を一例として挙げている。
【0030】
まず、基礎固定部90を地中に埋設するための穴を掘削する。具体的には、この第1の実施形態においては、プレート部94の表面の広さ以上であり深さ400mmの穴を、パイプハウス1の棟方向に沿って1m間隔で両側面1b側の位置を揃えて掘削している。なお、この第1の実施形態においては、プレート部94は縦400mm×横400mm×厚さ2.3mmの鉄板であり、緊締部材止め部91は第1の直線部91aの長さ400mm、第2の直線部91bの長さ560mm、及び環91cの内径13mmのL字形状の鉄棒であり、外側支持部92及び内側支持部93は外径25mm、長さ776mmの鉄パイプであり、円柱状の補強部95は外径9mm、長さ30mmの鉄棒であり、プレート部94から2つの補強部95までの間隔はそれぞれ140mm,620mmである。
【0031】
つぎに、基礎固定部90を、プレート部94の表面において、外側支持部92と内側支持部93とを結んだ直線が、パイプハウス1の棟方向に対してほぼ垂直となり、内側支持部93が外側支持部92に対して内側となるように、掘削した穴の中に配置する。
【0032】
つぎに、掘削した穴に土砂を埋め、基礎固定部90を地中に埋設する。この場合に、基礎固定部90のプレート部94には、少なくとも、縦400mm×横400mm×深さ400mmの体積の土砂の重量が掛かることになる。また、緊締部材止め部91の第2の直線部91bの長さは560mmであり、外側支持部92及び内側支持部93の長さは776mmであるので、緊締部材止め部91の環91c、並びに外側支持部92及び内側支持部93の一端は、地面に対して突出した状態である。
【0033】
つぎに、地面に対して突出した外側支持部92及び内側支持部93の一端にジョイント10の一端を挿嵌し、ジョイント10の他端に外側パイプ21a及び内側パイプ21bの一端をそれぞれ挿嵌する。なお、この第1の実施形態においては、外側パイプ21a及び内側パイプ21bは外径25mmの既存の農業用鋼管を用いている。
【0034】
つぎに、外側パイプ21aと内側パイプ21bとを支持リブ6で連結する。なお、この第1の実施形態においては、外側パイプ21aと内側パイプ21bとの間隔をダブルアーチパイプ20の全周に亘ってほぼ同一の間隔30mmとなるように、支持リブ6で連結している。また、ここでは、外側支持部92及び内側支持部93にジョイント10を介して外側パイプ21a及び内側パイプ21bを継合した後に、外側パイプ21aと内側パイプ21bとを支持リブ6で連結しているが、支持リブ6で連結した外側パイプ21a及び内側パイプ21bをジョイント10を介して外側支持部92及び内側支持部93に継合してもよい。
【0035】
つぎに、シングルアーチパイプ22となる外側パイプ22aを、棟方向で隣り合う基礎固定部90間に所定の本数及び間隔で地面に突き立てる。なお、この第1の実施形態においては、棟方向で隣り合う基礎固定部90間の中央に1本の外側パイプ22aを突き立てている。この場合に、外側パイプ22aを地面に突き立てやすいように、ドリルなどによって地面に穴を開けておいてもよい。なお、この第1の実施形態においては、地面に立設したダブルアーチパイプ21の外側パイプ21aとシングルアーチパイプ22の外側パイプ22aとの高さを一致させるために、ドリルで深さ400mmの穴を開けている。また、この第1の実施形態においては、外側パイプ22aは外径25mmの既存の農業用鋼管を用いている。
【0036】
つぎに、パイプハウス1の両側面1b側に配置された対向する外側パイプ21a,22a及び内側パイプ21b同士を天部で継合部材5によって継合することで、アーチパイプ20(ダブルアーチパイプ21、シングルアーチパイプ22)となる。ここで、従来のパイプハウスにおいては、天部で継合する際に、アーチパイプに対して下方に力が加わり、アーチパイプが所望の深さを越えて地中に減り込むことがある。これに対して、この第1の実施形態においては、外側パイプ21a及び内側パイプ21bは、外側支持部92及び内側支持部93を介してプレート部94に繋止しており、外側パイプ21a又は内側パイプ21bから受ける地中に対する圧力をプレート部94によって減少することができるために、地中におけるアーチパイプ20の減り込みを抑制することができる。
【0037】
以下、従来のパイプハウスの骨組みの組み立て手順と同様に、第1の肩パイプ3b、第2の肩パイプ3d、天パイプ3a及び裾パイプ3cを外側パイプ21a,22aに順次取付ける。また、第2の直線状パイプ4及び図示しない骨組みを固定させる金具などの部品を用いて対向する妻面1cを作製することで、パイプハウス1の骨組みが完成する。なお、この第1の実施形態においては、基礎固定部90を2つで1組のペアをなし、この1組の基礎固定部90間を結ぶ外側パイプ21aが、パイプハウス1の妻面1cの外枠をなしている。また、この第1の実施形態に係る基礎固定部90は、緊締部材止め部91を一体として埋設しているために、従来のパイプハウスのように、ハウスバンドを係止するための複数の杭をパイプハウスの側面1b近傍に配設する必要はない。
【0038】
つぎに、従来のパイプハウスの被覆手順と同様に、被覆部材7を張りとめる図示しないスプリングなどの部品を用いて、パイプハウス1の骨組みに被覆部材7を被覆する。
つぎに、パイプハウス1の両側面1b側において、棟方向に列設させた複数の基礎固定部90における緊締部材止め部91間を、係止部11によって各緊締部材止め部91の環91cに洞貫、繋着又は係着することで連架する。なお、この第1の実施形態においては、対向する妻面1cにおける緊締部材止め部91の環91cには係止部11であるパイプを係着し、対向する妻面1cにおける緊締部材止め部91間に配置する残りの緊締部材止め部91の環91cには係止部11であるパイプを洞貫することで、連架している。
【0039】
つぎに、パイプハウス1の周方向に沿った緊締部材8をパイプハウス1の両側面1b側にある係止部11にそれぞれ係止し、被覆部材7を緊締することで、パイプハウス1が完成する。なお、緊締部材8は、隣り合うアーチパイプ20(ダブルアーチパイプ21、シングルアーチパイプ22)間にパイプハウス1の棟方向とほぼ垂直に配設させてもよいし、図1(b)に示すように、1本の緊締部材8によってパイプハウス1の両側面1b間をジグザグに亘るように、両側面1b側の係止部11にそれぞれ係止して配設させてもよい。
【0040】
以上のように、この発明の第1の実施形態においては、外側支持部92、内側支持部93及び緊締部材止め部91をプレート部94と一体とすることで、所定の深さに掘削した地中にプレート部94を配置し、プレート部94上に土砂を被せるだけで、基礎固定部90としてプレート部94と一体となった、外側支持部92、内側支持部93及び緊締部材止め部91を強固に地面に対して支持することができる。
【0041】
また、地中のプレート部94上にある土砂の重量によって、外側支持部92、内側支持部93及び緊締部材止め部91の地中からの引き抜けを抑制することができる。特に、外側支持部92、内側支持部93及び緊締部材止め部91は、プレート部94と一体となっているために、従来のパイプハウスのように、パイプ及びハウスバンドを係止する杭を単体で地面に突き立てる場合と比較して、緊締部材止め部91の引き抜けを抑制している。
また、ダブルアーチパイプ21を、外側パイプ21a及び内側パイプ21bを支持リブ6で連結して構成しているので、従来のパイプハウスのように、1本で構成されたアーチ状のパイプと比較して、パイプハウス1の強度を高めることができる。
【0042】
なお、この第1の実施形態においては、パイプハウス1として単棟型ハウスを用いて説明しているが、図4に示すように、パイプハウス1を連棟型ハウスとしてもよい。この場合には、連棟型ハウスの境界に、複数の谷柱12を棟方向に列設している。また、谷柱12の基礎には、鉄板13とコンクリートブロック14とを用いており、鉄板13に溶接した支柱15に谷柱12をボルト及びナットで接合している。なお、支柱15は長さ600mm、外径42.7mmであり、谷柱12は外径48.6mmであり、谷柱12の下端及び支柱15の上端からそれぞれ長さ60mmの位置まで嵌合している。
【0043】
また、鉄板13は横400mm×縦400mm×厚さ2.3mmである。また、コンクリートブロック14は横400mm×縦400mm×厚さ100mmであり、鉄板13上にコンクリートブロック14を載せることで、谷柱12の地中からの引き抜けを抑制することができる。また、ここでは、棟方向の長さ2000cm、側面1bから谷柱までの幅600cm、側面1bの高さ200cm、屋根面1aの高さ140cmのパイプハウス1を一例として挙げている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明を実施するための第1の実施形態におけるパイプハウスの概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示すパイプハウスの構成部材である基礎固定部を示す斜視図である。
【図3】図1に示すパイプハウスの二重アーチを説明するための部分拡大図である。
【図4】この発明を実施するための第1の実施形態における連棟型ハウスを説明するための部分拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1 パイプハウス
1a 屋根面
1b 側面
1c 妻面
3 第1の直線状パイプ
3a 天パイプ
3b 第1の肩パイプ
3c 裾パイプ
3d 第2の肩パイプ
4 第2の直線状パイプ
5 継合部材
6 支持リブ
7 被覆部材
8 緊締部材
10 ジョイント
11 係止部
12 谷柱
13 鉄板
14 コンクリートブロック
15 支柱
20 アーチパイプ
21 ダブルアーチパイプ
21a,22a 外側パイプ
21b 内側パイプ
22 シングルアーチパイプ
90 基礎固定部
91 緊締部材止め部
91a 第1の直線部
91b 第2の直線部
91c 環
92 外側支持部
93 内側支持部
94 プレート部
95 補強部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設した複数のアーチ状のパイプを骨組みとして被覆部材で被覆し、当該被覆部材を抑えるために緊締部材で周方向に緊締したパイプハウスであって、
前記パイプのうち、前記被覆部材に当接する外側パイプと、
前記パイプのうち、前記外側パイプの内側に沿って配設される内側パイプと、
前記緊締部材を係止するための緊締部材止め部、前記外側パイプを支持する外側支持部、及び前記内側パイプを支持する内側支持部がそれぞれ立設されるプレート部からなる基礎固定部とを備え、
前記プレート部を地中に埋設し、前記基礎固定部を2つで1組のペアをなし、当該1組の基礎固定部間を前記外側パイプ及び内側パイプで継合し、当該継合した外側及び内側の各パイプ間を支持リブで連結して構成されることを特徴とするパイプハウス。
【請求項2】
前記請求項1記載のパイプハウスにおいて、
前記1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプが前記妻面の外枠をなし、
前記対向する妻面における前記緊締部材止め部間を結ぶ係止部に、前記緊締部材を係止していることを特徴とするパイプハウス。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載のパイプハウスにおいて、
前記1組の基礎固定部間を結ぶ前記外側パイプ及び内側パイプをほぼ平行に配設していることを特徴とするパイプハウス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−35809(P2008−35809A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216147(P2006−216147)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】