説明

パイプラインの中のオブジェクトのための磁力計ベースの検出器

【解決手段】パイプラインの中のオブジェクトの通過を検出するシステム及び方法は、1つ又はそれ以上のシールドされた磁力計センサと、適応閾値検出手段を備えたマイクロコントローラとを収納する非侵入性の検出装置を備える。適応閾値検出手段は、磁束データストリームから異常値データを除去し、その後、4つのローパスフィルタを介して異常のないデータストリームをパスする。平滑化された大きさのデータストリームは、検出制限と比較され、もし通過イベントが起こると、最近の検出が表示され、表示ユニットのカウンタはインクリメントされ、通過時間は記録され、両統計値はディスプレイユニットに表示される。1つのオブジェクトが複数の磁界で生成されるかもしれないので、検出装置を通過しているときに同じオブジェクトの第2の検出を防ぐために、検出器は、通過イベントの後の予め定められた所定時間、ロックアウトされてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にパイプラインモニタリングシステムに係り、そして特に、パイプラインを介して、パイプラインピッグ(pig;金属塊)のような、オブジェクトの通過を検出するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な手段が、パイプラインを介したピッグの通過を検出するために開発されている。
"ダンプビッグ(Dump pigs)"或いは"スマートピッグ(smart pigs)"は、バネ仕掛けのシャフトを備えた糸を通したアダプタのような嵌入機械的装置により検出されてよい。シャフトは、バネ仕掛けのレバー或いはフラグを備えた露出された一端と、パイプの内部スペースに延びている他端とを備えている。嵌入検出装置は、しかしながら、動作中の導管の中に孔或いはホットタッピング(hot-tapping)を作る必要があり、多くの場合、コスト高でパイプラインのオペレータにとって不便なプロセスであった。その結果、パイプラインの外側に完全に配置され、付加的なホットタッピングや溶接を必要としない、非嵌入検出装置は、多くの場合、パイプラインのオペレータに好まれている。
【0003】
2つの主要タイプの非嵌入検出装置として、音の変化を検出する音響/超音波検出器と周囲の磁界の変化を検出する電磁界検出器とがある。パッシブ音響検出器は、パイプラインを介して移動するオブジェクトにより引き起こされる音の変化を検出することができるが、この音の変化と、ポンプや自動車のような周辺ノイズにより引き起こされる音の変化とを簡単に区別することはできない。アクティブ音響検出器は、超音波信号を送信することによってこの問題を回避することができるが、それら装置はコスト高であり、高いレベルの電力、及び、この電力の必要性が理由で、バッテリパワーオプションの制限或いは抑制を必要としていた。
【0004】
電磁界検出器は、経時的な磁束の変化を検出するために、多くの場合、1つ又はそれ以上のコイルを用いている。周囲の磁界の変化は、経時的な磁界の変化に比例してコイル又はコイル群に電圧を誘導する。その結果、ゆっくり移動している強磁性のオブジェクトは検出イベントを発生するためにコイルに十分な電圧を発生しないかもしれない。
【0005】
磁力計は、経時的な瞬間的な磁束を計測することにより磁束の変化を決定するが、オブジェクトのスピードには依存しない。磁力計は、それゆえに、オブジェクトの速度に関わらず、電磁界の変化を引き起こすいくつかのオブジェクトを検出することができる。磁力計は、しかしながら、誤ったアラームの影響を受けやすい可能性がある。それゆえに、ノイズキャンセル、信号処理、及び周辺磁界のシールディングのために適切な方法が用いられなければならない。
【発明の概要】
【0006】
パイプラインの中のオブジェクトの通過を検出するためのシステム及び方法は、1つ又はそれ以上のシールドされた磁力計センサと適応閾値検出手段を備えたマイクロコントローラとを収納する非侵入性の検出装置を備えている。バックアップバッテリ源を備えたAC/DC電源は、装置に電力を供給するために採用されている。バッテリバックアップ電源は、好ましくは周辺環境にさらされる前に電気的な接触が遮断されるように構成されており、それにより検出装置は防爆ゾーンの中で用いるのに適切なものとされている。
【0007】
磁力計センサ群は、好ましくは、直接的に磁束を測定するために様々な透磁性材料を用いた磁束センサ群であり、互いに直交するように配置されている。センサを取り囲む内部シールドは、電気的に絶縁された材料である。外部シールドは、透磁性の材料である。マイクロコントローラと通信するディスプレイユニットは、検出されたオブジェクトの数やそれらの通過時間を含む様々な統計値を表示する。
【0008】
検出装置は、ディスプレイユニットを方向合わせし、パイプラインの外面の近くに磁力計センサを位置決めするための調整可能な端を有してもよい。検出装置をロックアウトするためのリードスイッチ或いは他の手段は、パイプラインに装置を位置決めするとき、或いはそれをパイプラインの異なる位置に移動するときに用いられてよい。検出装置が一旦その適切な位置に置かれ、解除されると、入力磁束データストリームを処理する磁力計センサ及びマイクロコントローラは、検出に信号を送ることができる。
【0009】
適用閾値検出手段は、磁束データストリームから異常値データを除去する第1を採用している。この異常値なしのデータストリームは、その後、4つのローパスフィルタを介してパスされる。第1のローパスフィルタは、磁束データストリームからバイアス値を除去することにより基準を推定し、異常値制限よりも大きくない値にデータストリームを制限する。第2のローパスフィルタは、その後、ノイズ推定値を生成するために基準推定値を用いる。第3のローパスフィルタは、データストリームの平滑化された大きさを提供するボックスカーフィルタ(boxcar filter)である。平滑化された大きさは、上限及び下限検出制限値のセットと比較され、その後、通過イベントの長さを決定するために第4のローパスフィルタを介してパスされる。通過イベントは起こると、ディスプレイユニットのカウンタはインクリメントされ、通過時間は記録される。1つのオブジェクトが複数の検出或いは検出イベントを生成するかもしれないので、検出装置を通過しているときに同じオブジェクトの第2の検出を防ぐために、検出器は、通過イベントの後の予め定められた所定時間、ロックアウトされてよい。この目的のためには、ベイジアンロックアウト推定器が好適である。
【0010】
本発明のより良き理解は、図面及び添付の請求の範囲と共に、以下の好ましい実施形態に係る詳細な説明より得ることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明に従って作られる非嵌入検出器の実施形態の正面図である。マイクロコントローラと少なくとも1つの磁力計センサ("センサ")を備えたセンサ基板(図8〜11B参照)は、センサハウジングの下方の部分に配置される。センサハウジングは、パイプに着脱自在に固定された基部構造の中を通り、ハウジングの底がパイプ表面に接触するまでに至る。ディスプレイハウジングは、導管集合部の上限の端に位置しているが、オブジェクトが検出器の下を通過している時にパイプラインの中のオブジェクトの検出を表示するデジタルディスプレイを収納している。フィールド配線導管ボックスは、検出器とAC/DC電源とを接続し、例えばパイプラインバルブの開口や閉鎖を制御するコントロールルームと通信するための配線に対応するために、提供される。
【図2】図2は図1に図示された実施形態の側面図である。ディスプレイハウジングは、デジタルディスプレイの挿入部分やDC電源(図7及び7参照)を含む組立部品を収納している。ディスプレイハウジングの後面に貫かれたキャップには、ねじ山がついておらず(unthreaded)、DC電源は接続が断たれており、それによって、防爆ゾーンの中での検出器の使用のために安全な環境を提供する。
【図3】図3は図1のディスプレイパネルの正面図である。パネルの前面に配置されている磁力リードスイッチは、ディスプレイのタイマをリセットする。第2の磁力リードスイッチは、検出器をロック或いはアンロックモードにセットし、オペレータがオブジェクトの検出履歴をスクロールすることを認める。ロックモードのとき、装置はオブジェクトの検出が起こらないようにされ、検出器は、所望とされない検出といった結果なしに、パイプラインのロケーションの間を移動してよい。検出器がバッテリにより電力供給を受けるものである場合には、バッテリアイコンがバッテリ残量を表示する。
【図4】図4は図1のディスプレイパネルの他の正面図であり、検出器がAC/DC電源(例えば24V電源)に強固に配線されており、バッテリがまさに使用されている。ビジュアル表示器(indicators)は、検出されたオブジェクトの数や、過去にいくつかのオブジェクトが検出されたときからの時間、及びリセットからの時間経過等の統計値を表示するために提供されている。
【図5】図5は図2に図示されたディスプレイの挿入部分の等角図である。ディスプレイパネル及びデジタルディスプレイは、組立部品の上端に配置されている。左右対称の溝は、ディスプレイハウジングの中への挿入部分を保持し、ディスプレイの正しい方向付けを確実なものとし、適切な内部の配線経路を提供するために、挿入ボディの外面に提供されている。
【図6】図6は図1に図示された検出器の後方等角図であり、ディスプレイハウジングからリアキャップが取り外されている。バッテリはディスプレイユニットの中でバネ仕掛けのコンタクトと連動するので、バッテリの全ての電気的なコンタクトは、リアキャップが完全に除去されるより前に遮断されている。絶縁パッドのシートは、好ましくはリアキャップの裏面に貼られるが、キャップへの電気的な接触を避けるために、バッテリとキャップとの間に存在する。
【図7】図7は図1に図示されたディスプレイハウジングの部分的な後方等角図である。バッテリは、インサートボディにより受け入れられるクレドール/バッテリ ホルダの中に存在している。
【図8】図8はセンサハウジングの様子を示す。センサハウジングは、マイクロコントローラ及び磁力計センサを備えたセンサ基板を受け入れる。
【図9】図9は図8のセンサ基板のためのシールディングの様子を示す。内部シールドは好ましくは電気的な絶縁材料である。外部シールドは好ましくは透磁性材料である。
【図10】図10は図8のセンサ基板の様子を示す。センサ基板は、ディスプレイ(遠隔に配置されたディスプレイでよい)、或いはコントロールシステム、適応閾値アルゴリズム(図12から19参照)を実行するマイクロコントローラ、及びセンサと通信するためのインタフェースを備えている。センサは、好ましくは、直接的に磁束を測定するために可変透過性材料を用いた磁束センサである。
【図11A】図11A及び11Bは、図8のセンサ基板を代替する実施形態を示す。2つのセンサは、互いに直交するように配置されている。センサ基板は、センサ素子の分類及び方向において異なる、1−D、2−D、3−D或いはn−Dアレイのセンサを用いてよい。直交する方向は、しかしながら、好ましい。
【図11B】図11A及び11Bは、図8のセンサ基板を代替する実施形態を示す。2つのセンサは、互いに直交するように配置されている。センサ基板は、センサ素子の分類及び方向において異なる、1−D、2−D、3−D或いはn−Dアレイのセンサを用いてよい。直交する方向は、しかしながら、好ましい。
【図12】図12はn−Dアレイのセンサにより収集されたデータを処理するためにマイクロコントローラにより実行される信号処理アルゴリズムのフローチャートである。検出スキームは、センサ或いはセンサ群のリアルタイムノイズ評価を利用した適応閾値アルゴリズムである。
【図13】図13は図12に図示されたアルゴリズムの異常値除去ステップのフローチャートである。
【図14】図14は図12に図示されたアルゴリズムの基準評価ステップのフローチャートである。
【図15】図15は図12に図示されたアルゴリズムのノイズ評価ステップのフローチャートである。
【図16】図16は図12に図示されたアルゴリズムのボックスカー或いはスムージングステップのフローチャートである。
【図17】図17は図12に図示されたアルゴリズムの検出ステップのフローチャートである。
【図18】図18は図12に図示されたアルゴリズムの時間弁別器(discriminator)のフローチャートである。
【図19】図19は図12に図示されたアルゴリズムのベイジアンロックアウトステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に詳述される磁力計ベースの検出器は、その出願、構成の詳細、部品のアレンジメント、及び添付図面に図示されているプロセスフローに限定されるものではない。本発明は、他の実施形態でも利用可能であり、様々な方法で実行或いは実施される。ここに採用される表現や専門用語は、説明の目的のものであって、限定されるものではない。
【0013】
最初に図1,10,12を参照すると、パイプライン部Pの外側に配置されている検出器10は、パイプラインの中のオブジェクトの存在を検出するための磁力計センサ60及び検出アルゴリズム100を採用する。オブジェクトは、パイプラインに固定された検出器10を備えたパイプライン部Pの中を動くかもしれない。パイプラインの中のオブジェクトは、パイプラインのメンテナンス或いは検査のために用いられた"ピッグ(pig)"かもしれない。オブジェクトは、検出が認められたかもしれないオブジェクトの磁力源或いは固有の特性を運ぶかもしれない。本質的にマークされるオブジェクトの例は、"ブラッシュ"ピッグ或いはかなり大きな総量の強磁性体材料を含むピッグであろう。
【0014】
磁力計センサ60からの計測は、"通過イベント"を生成するために、適応閾値アルゴリズムである、検出アルゴリズム100により処理される。このイベントは、デジタルディスプレイ70或いは発光ダイオード87により表示及び/又はカウントされてよい。このイベントは、更にパイプラインの中のバルブの開口及び閉鎖を制御するためのコントロールシステムのような信号遠隔装置を用いて出力を引き起こすことができる。
【0015】
図1及び2に図示されているように、検出器10は、センサハウジング20のネジ部25を支える取付基部40を手段としてパイプラインに着脱可能に固定されている。この配置は、(1)センサハウジング20の下端23とパイプライン部Pの外壁表面との間の距離を調整し、(2)ディスプレイハウジング90の方向を方向付けできる、といった機能を提供する。ネジ部25は、好ましくは、ネジ部25の下端23がパイプライン部Pの外壁面に接触するまで、取付基部40の中にネジ込まれる。基部40の2つの対向するブラケット41は、それぞれシャックルピン43及びチェーン47の端を支える。ターンバックル45に沿ったチェーン47は、パイプライン部Pの所望とされる位置の基部40を固定するために用いられる。前述した検出器10の調整可能な特徴は、磁力計センサ60を最大検出能力発揮のために位置決めする性能を提供する。
【0016】
導管集合部30の上端37に配置されているのは、ディスプレイハウジング90である。ディスプレイハウジング90は、好ましくは導管集合部30に着脱自在に固定されている。ディスプレイハウジング90は、様々な表示器及び統計量(図3から5で論じられているテキスト参照)を提供するディスプレイインサート70を支える。インサートボディ72の周囲に配置される左右対称のスロット74は、ディスプレイ71の方向を正確なものとすることを保証し、必要な配線アクセスを提供する。ディスプレイハウジング90のフロンのキャップ91は、ディスプレイインサート70のデジタルディスプレイ71のためのウィンドウを提供する。
【0017】
導管集合部30は、センサハウジング20の上端21に配置されている。導管集合部30は、検出器10をフィールド配線導管ボックス33と接続するためのT字形の接続金具35を備えている。導管ボックス33は、検出器10がAC/DC電源と通信するために置かれるため、検出器10がコントロールルームに強固に配線されるため、或いは遠隔のディスプレイインサート70への配線を提供するための、配線を備える。注入プラグ31は、またパッキング、フィラー、製陶コンパウンド、或いはシーラントを加えるために提供されてもよい。
【0018】
図3乃至5をここで参照すると、デジタルインサート70は、様々なインジケータ及び統計量を表示するデジタルディスプレイ71を備えていてよい。好ましい実施形態では、デジタルディスプレイ71は、オブジェクトカウントインジケータ73、オブジェクト通過ヒストリインジケータ75、オブジェクトアイコン77、最終リセットからの時間インジケータ79、及び過去のオブジェクト通過からの時間インジケータ81を表示する。ディスプレイ71のマクロコントローラ(不図示)は、マイクロコントローラ51及びセンサ基板50(図8参照)に配置されている磁力計センサ60からの情報を受信する。
【0019】
ディスプレイインサート70は、また、検出器10がバッテリ電源(図3)或いはAC/DC電源(図4)のいずれの下で動作しているかを表示する電源インジケータ83を備えている。バッテリ電源のとき、電源インジケータ83は、好ましくはバッテリ残量を示すバッテリアイコン83を表示する。
【0020】
デジタルディスプレイ71は、また、ロック/アンロック ステータスインジケータ85を備えている。磁力リードスイッチ89Bは、検出器10をロック或いはアンロックモードにセットするので、それによって所望とされない検出を制御する機能を提供する。ロックモードのとき、検出器10はオブジェクトの検出を避け、パイプラインの位置の間を移動してよい。リードスイッチ89Bは、またユーザに、統計量に係る情報をやりとりし、インジケータ75及び81により示されたオブジェクト履歴をスクロールすることを認める。第2の磁力リードスイッチ89Aは、タイマ79をリセットする。ディスプレイユニット70は、また、最新の通過が起こったか否かを示す発光ダイオードインジケータ87を備えている。発光ダイオードインジケータ87A及び87Bはリードスイッチ89A及び89Bが始動されたときに、それぞれライトアップされるようになっている。
【0021】
図6及び7に図示されているように、ディスプレイユニット70は、好ましくはバッテリパック94を備えている。バッテリ97が備わっているクレドール/バッテリ ホルダ95は、ディスプレイインサート70の内部スペースに受け入れられる。ディスプレイインサート70の中のバネ仕掛けのコンタクト(不図示)は、バッテリパック94の末端部に対して刺激(urge)し、ゆえにユーザはディスプレイハウジング90のリアキャップの係合をほどいたときに、バッテリパック94はコンタクトから離れて後退しているリアキャップ93に向けて刺激(urge)される。バネ仕掛けのコンタクトとバッテリパック94との間の接続は、それゆえに、リアキャップ93がハウジング90から完全に取り除かれるより先に遮断される。この特徴は、防爆ゾーンの中の検出器の使用のために提供される。絶縁パッド99は、リアキャップ93とバッテリパック94の隣接端との間に提供される。
【0022】
図8から11Bをここで参照すると、センサハウジング0は、センサ基板50を収納している。センサ基板50のマイクロコントローラ51は磁力計センサ60により収集されたデータを受信し、通過イベントが発生したか否かを決定するために検出アルゴリズム100(図12参照)を実行する。従来よく知られたタイプの、マイクロコントローラ51は、コミュニケーションインタフェース55を経由してディスプレイユニット70或いは他のシステムと通信を行う。好ましい実施形態では、インタフェース55はRS485インタフェースである。基板50は、更にコンパレータ、アナログスイッチアレイ及びANDゲートアレイからなるオシレータ53を備えている。
【0023】
検出器10は、互いに関連した方向性、個々のセンサ素子の分離、或いは双方の点において異なる1−D、2−D、3−D或いはn−Dアレイの磁力計センサ60を用いてもよい。図11A及びBに図示されているように、複数のセンサ60が用いられる場合は、直交する方向が好ましい。共通の方向であるがオフセットされているセンサ60は、一致(或いは相関)アルゴリズムを用いた検出プロセスの向上のために用いられてよい。
【0024】
様々な磁力計技術は、センサ60のために採用されてよい。好ましい実施形態においては、センサ60は様々な透磁性材料を用いた磁束センサである。磁束の中の変化は、磁力計の効果的なインダクタンスを変更する。PNIコーポレーションインク(カリフォルニア州 サンタローサ)により製造される磁束センサは、効果的な磁束センサ60である。
【0025】
デジタル信号処理は検出プロセス及びデジタルに必須であり、適応検出アルゴリズムは信号処理アルゴリズムに好適である。図12に図示されているように、検出スキームはセンサ(群)60のためのリアルタイムノイズ評価に基づく適応閾値検出プロセス100である。パラメータ化は、プロセス100が最小限の誤り警告及び検出の高い確率を伴う幅広いアプリケーションのために調整されることを可能とする。クリティカルパラメータの好ましい範囲及び値は、以下のプロセス100の詳述の中に示されている。
【0026】
マイクロコントローラ51により実行される検出プロセス100は、以下の処理ステップの全てを備えてよい:異常値の自動除去、測定オフセットの演算処理及び除去、測定ノイズの評価、ヒステリシスを伴う及びなしの閾値(群)の確立、シーケンシャル検出、及びイベント時間の識別/検出である。センサ(群)60は処理のために磁力計データ101("マグデータ"或いはマグ)を収集し、検出イベント103は、振幅、継続時間、及び前のイベントを含むがこれらに限定されないたくさんの判定基準により決定される。センサ(群)60の応答の微細構造は、パターン認識技術により説明されてもよい。
マグデータ101は処理ステップ110により第1に処理、異常値の除去:
【数1】

【0027】
図13及びサブステップ113−117を見てみよう。測定値からのオフセット(基準値)の除去の後、入力は異常値制限に等しいかそれより小さい値に制限される。サインは処理の間に亘り保持される。関数"signum"は、引数のサインを答える。関数"min"は引数リストの算術最小値を答える。異常値のない磁力計データは、その後、プロセス100にリターンされ、基準値を推定するためにローパスフィルタを介してパスされる。
処理ステップ130、基準値の推定:
【数2】

【0028】
図14及びサブステップ131−137を見てみよう。処理ステップ130は、測定のためにゼロからオフセットを推定するために用いられるローパスフィルタである。ローパスフィルタは、単一の指数関数タイプである。フィルタの伝達関数は:
【数3】

【0029】
時間定数"f"の値は1〜4096の範囲にあってよい。"f"の好ましい値は128である。基準値推定は:
【数4】

【0030】
処理ステップ150は、ノイズ推定を提供する:
【数5】

【0031】
図15及びサブステップ151−163を見てみよう。これは、検出プロセスにより必要とされる適応閾値セレクションのためのノイズ推定を実現するローパスフィルタである。ノイズレベルはいつもポジティブであり、最小値により制限される。フィルタの伝達関数は:
【数6】

【0032】
時間定数"fn"の値は1〜256の範囲にあってよい。"fn"の好ましい値は32である。ノイズ推定値は:
【数7】

【0033】
入力磁力計値は、その後、処理ステップ170において"ボックスカー"ローパスフィルタを用いて平滑化される。図16及びサブステップ171−181を見てみよう。フィルタの構造は:
【数8】

【0034】
このフィルタは、大きさ(magnitude)処理(絶対値)の後に応答を形成するのに用いられる。長方形のウィンドウの長さは、2〜128の範囲内でよい。好ましい構成では、長さは32である。
【0035】
入力の平滑化に続いて、検出処理は処理ステップ190で生じる。図17、サブステップ191−201を見てみよう。検出処理は、検出器の前回の値を含むシーケンシャルな処理である。検出器の最新の値が"オフ"で平滑化された大きさが上限閾値よりも大きい場合には、検出器はスイッチ"オン"される。検出器が"オン"で、平滑化された大きさが低い閾値よりも小さい場合には、検出器はスイッチ"オフ"される。入力の他の状態は、検出器の値を変化しないという結果になる。等式フォームにおいて:
【数9】

【0036】
上限及び下限の検出閾値の決定は:
【数10】

【0037】
p1及びp2の値は、1〜10の範囲にあってよい。p1の好ましい値は3である。p2の好ましい値は1である。
【0038】
検出イベントに続いて、処理ステップ210はイベントの範囲を決定するために時間を用いる。図18、サブステップ211〜221を見てみよう。以下のタイプの1つ又はそれ以上のフィルタは、単一或いは複数のイベントが存在しているか決定するためにイベントを特徴づけるために用いられてよい:
【数11】

【0039】
この伝達関数には、その値が0又は1である、検出された出力が使われる。様々な長さの長方形のウィンドウは、短い及び長いイベントを区別するために用いられることができる。検出制限をパスした、最も長いウィンドウは、単一のイベントの範囲を示す:
【数12】

【0040】
複数の磁場に単一のピッグ又はオブジェクトが存在してよいので、処理ステップ230は、ロックアウト弁別器が、検出器10によりオブジェクトがパスされているときに、複数の通過イベントが単一のオブジェクトのために検出されることを防ぐために採用されてよい。図19及びサブステップ231〜253を見てみよう。好ましい実施形態では、処理ステップ230はベイジアンロックアウト推定器を採用している。通過イベントがあると、その後、検出タイマはインクリメントされ、更に予め定められた時間の期間だけ更なる検出はロックアウトされる。一旦、予め定められた時間の期間が進められると、検出器はアンロックされ、イニシャライズされ、ロックアウトタイマは停止され、次の検出イベントまでクリアされる。リードスイッチ89Bと同様に、処理ステップ230は所望とされない検出を制御するための能力を提供する。
【0041】
検出器10とプロセス100が特徴の特定の程度で記述されたが、多くの変更はこの開示の精神および範囲から逸脱することなく構成の詳細と構成要素またはステップのアレンジメントにおいてなされるかもしれない。発明は、したがって、実例の目的のためにここに述べられる実施例に限定されるものではなく、添付の請求項の範囲だけに制限されることもなく、その各要素が権利を与えられるあらゆる等価なものを含む。
【符号の説明】
【0042】
10 検出器
20 センサ ハウジング/モジュール
21 20の上端
23 20の下端
25 20のネジ部
30 導管集合部
31 注入プラグ
33 フィールド配線導管ボックス
35 T字形の接続金具
37 30の上端
40 取付基部
41 ブラケット
43 シャックルピン
45 ターンバックル
47 チェーン
50 センサボード
51 マイクロコントローラ
53 オシレータ
55 コミュニケーションインタフェース
60 磁力計センサ
61 内部絶縁シールド
63 外部シールド
70 ディスプレイ インサート/モジュール
71 デジタルディスプレイ
72 インサートボディ
73 オブジェクトカウント累積表示器
74 72のスロット
75 オブジェクトカウントヒストリ表示器
77 オブジェクトアイコン
79 最終リセットからの時間表示器
81 過去のオブジェクト通過からの時間表示器
83 パワーステータス表示器
85 ロック/アンロック ステータス表示器
87 発光ダイオード
89 リードスイッチ
90 ディスプレイハウジング
91 フロントキャップ
93 リアキャップ
94 バッテリパック
95 クレドール/バッテリ ホルダ
97 バッテリ
99 絶縁パッド
100 検出アルゴリズム
110 異常値除去アルゴリズム
130 基準線評価アルゴリズム
150 ノイズ評価アルゴリズム
170 入力補整アルゴリズム
190 検出イベントアルゴリズム
210 時間弁別アルゴリズム
230 ロックアウト弁別アルゴリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプラインの中のオブジェクトの通過を検出するためのシステムであって、
パイプラインの外面に配置され、少なくとも一つの磁力計センサを備えた検出器と、
前記少なくとも一つの磁力計センサを取り囲むシールディングと、
前記少なくとも一つの磁力計センサと通信し、適応閾値検出手段を有するマイクロコントローラと、を備えたシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの磁力計センサに直交するように方向合わせされた第2の磁力計センサを更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マイクロコントローラと通信するディスプレイモジュールを更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ローパスフィルタを有する前記適応閾値検出手段を更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数13】

である請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記パラメータfは、1〜4096の範囲にある請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数14】

である請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記パラメータfnは、1〜256の範囲にある請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数15】

である請求項4に記載のシステム。
【請求項10】
長方形のウインドウの長さは2〜128の範囲にある請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数16】

である請求項4に記載のシステム。
【請求項12】
検出を抑制するための手段を更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記抑制手段は、リードスイッチである請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記抑制手段は、ベイジアンロックアウト推定器である請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記パイプラインの外面に関連して前記検出器の位置を調整するための手段を更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記検出器の一部を支えることが可能な分離可能な固定基部を更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
磁力浸透シールディングである前記シールディングを更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
電気絶縁シールディングである前記シールディングを更に備えた請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
バックアップ電源を更に備え、前記バックアップ電源は、周辺環境にさらされるより前に電気的接触を絶縁するよう構成されている請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
パイプラインのオブジェクトの通過を検出する方法であって、
前記パイプラインの外面の近くに少なくとも1つの磁力計センサをポジショニングし、
前記少なくとも1つの磁力計センサからの磁束データストリームを収集し、
適応閾値検出アルゴリズムを介して前記磁束データストリームを処理し、
通過イベントを検出すること、を有する方法。
【請求項21】
前記処理ステップは、少なくとも1つのローパスフィルタを介して磁束データをパスするステップを更に有する請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記処理ステップは、異常のない磁束データストリームを提供するために前記磁束データストリームから異常値データを除去するステップを更に有する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記除去ステップは、前記磁束データストリームから基準値を除去し、前記磁束データストリームを異常制限よりも大きくない値に制限すること、を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
基準を見積もるために第1ローパスフィルタを介して異常のない磁束データストリームをパスするステップを更に備えた請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数17】

である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記パラメータfは、1〜4096の範囲にある請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ノイズ評価を生成するためにローパスフィルタを介して異常のない磁束データストリームをパスするステップを更に備えた請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数18】

である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記パラメータfnは、1〜256の範囲にある請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記異常のない磁束データストリームの平坦化された大きさを生成するためにローパスフィルタを介して異常のない磁束データストリームをパスするステップを更に備えた請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記ローパスフィルタの伝達関数は、
【数19】

である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
長方形のウインドウの長さは2〜128の範囲にある請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
平坦化された大きさの異常のない磁束データストリームと検出制限のセットとを比較するステップを更に備えた請求項22に記載の方法。
【請求項34】
検出イベントの長さを決定するために少なくともローパスフィルタを介して平坦化された大きさをパスするステップを更に備えた請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのローパスフィルタの伝達関数は、
【数20】

である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記検出イベントを受けてカウンタをインクリメントするステップを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記検出イベントを表示するステップを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記通過イベントに基づいて遠隔の装置に信号を送ることを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項39】
非通過イベントの検出を防ぐステップを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも一つの磁力計センサをロックアウトするサブステップを有する前記防ぐステップを更に備えた請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記通過イベントの後の予め定められた所定時間の間、検出器をロックアウトするサブステップを有する前記防ぐステップを更に備えた請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記処理ステップは、ノイズ評価を見積もるサブステップを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項43】
前記処理ステップは、前記磁束データストリームの大きさを平滑化するサブステップを更に備えた請求項20に記載の方法。
【請求項44】
前記処理ステップは、
上限及び下限の検出閾値を決定し、
平滑化された大きさの磁束データストリームを少なくとも1つの上限及び下限の検出閾値と比較し、
前記比較の結果に基づいて検出を更新する、サブステップを備えた
請求項20に記載の方法。
【請求項45】
前記検出閾値のそれぞれは、ノイズ評価のpの倍数であり、pは1〜10の範囲にある請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記検出イベントの時間の長さを決定するサブステップを有する前記処理ステップを更に備えた請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−527623(P2012−527623A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511983(P2012−511983)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/035361
【国際公開番号】WO2010/135400
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511280906)ティーディーダブル デラウェア,インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】