説明

パイプ切断機

【解決手段】パイプ1の外周面2に載置される可動台3の載置部4にその外周面2の周方向Rに沿って転動し得る複数の載置ローラ8,10等を支持し、可動台3には電動モータ20により回転するカッター23をパイプ1の外周面2に対し接離可能に支持するとともに、パイプ1の外周面2に巻き掛けられて締め付け可能なローラ付きチェーン11を取り付け、パイプ1の外周面2に対しローラ付きチェーン11をその外周面2の周方向Rに沿って移動させながら可動台3と電動モータ20とカッター23とをその外周面2の周方向Rに沿って移動させて、そのカッター23によりパイプ1の外周壁を切断する際に、各載置ローラ8,10等のうち一つの載置ローラがパイプ1の外周面2の周方向R両側向きRF,RBのうちカッター23の移動向きRFにのみ回転し得るように爪車装置を備えた。
【効果】切断時の安定性を向上させて使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの外周面に可撓索を巻き掛けて締め付けた状態でその外周面に載置した切断機本体のカッターによりパイプの外周壁を切断するパイプ切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1にかかるパイプ切断機では、パイプの外周面にローラ付きチェーンが巻き掛けられて締め付けられた状態でその外周面に切断機本体が載置され、その切断機本体をパイプの外周面の周方向へ回動させてそのカッターによりパイプの外周壁を切断する際に、一対のコロがパイプの外周面を周方向へ転動するとともに、パイプの外周に巻かれたガイドリングを一対のコロが周方向へ転動してパイプの軸線方向の動きを規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−323532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、カッターによるパイプの切断時に切断機本体がパイプの外周面の周方向へ自由に動き得るので、切断時の安定性に欠ける問題があり、使い勝手が悪くなっていた。
【0005】
この発明は、パイプ切断機において切断時の安定性を向上させて使い勝手を良くことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるパイプ切断機は、下記のように構成されている。
パイプ1の外周面2に載置される可動台3の載置部4にその外周面2の周方向Rに沿って転動し得る複数の載置ローラ7,8,9,10を支持している。この可動台3には駆動部20により回転するカッター23をパイプ1の外周面2に対し接離可能に支持するとともに、パイプ1の外周面2に巻き掛けられて締め付け可能な可撓索11を取り付けている。パイプ1の外周面2に対しこの可撓索11をその外周面2の周方向Rに沿って移動させながら前記可動台3と駆動部20とカッター23とをその外周面2の周方向Rに沿って移動させて、そのカッター23によりパイプ1の外周壁を切断する際に、前記各載置ローラ7,8,9,10のうち少なくとも一つの載置ローラ7がパイプ1の外周面2の周方向Rの両側向きRF,RBのうち前記カッター23の移動向きRFにのみ回転し得るように回転向き規制手段27を備えている。
【0007】
請求項1の発明では、固定されたパイプ1の外周面2に対しパイプ切断機全体をその外周面2の周方向Rへ移動させてカッター23によりパイプ1の外周壁を切断する際に、カッター23の移動向きRFにのみ回転し得る載置ローラ7により、パイプ切断機全体が切断時にその移動向きRFとは逆の向きRBへ移動することを抑制して、パイプ切断機全体の周方向Rへの振れを防止することができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記回転向き規制手段は爪車28と爪29とを有する爪車装置27である。請求項2の発明では、簡単且つ安価な回転向き規制手段にすることができる。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記各載置ローラ7,8,9,10は可動台3の載置部4においてパイプ1の周方向Rの両側及び軸線方向Xの両側でそれぞれ支持され、その各載置ローラ7,8,9,10のうち一つの載置ローラ7に前記回転向き規制手段27を備えている。請求項3の発明では、一つの載置ローラ7によりパイプ切断機全体の周方向Rへの振れを防止しながら、固定されたパイプ1の外周面2に対しパイプ切断機全体をその外周面2の周方向Rへ円滑に移動させることができる。
【0010】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記可撓索はチェーン本体12の幅方向の両側にチェーン本体12の長手方向に沿ってチェーンローラ13を並設したローラ付きチェーン11であって、パイプ1の外周面2に巻き掛けられたローラ付きチェーン11を締め付けたり緩めたりすることができる締付手段14を可動台3に設けている。請求項4の発明では、この締付手段14により、パイプ1の外周面2に対するローラ付きチェーン11の着脱を容易に行うことができる。
【0011】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、前記駆動部はカッター23を回転可能に支持する電動モータ20であって、その電動モータ20及びカッター23がパイプ1の外周面2に対する接近位置Qと離間位置Pとを取り得るリンク機構24を可動台3に設けている。請求項5の発明では、このリンク機構24により、パイプ1の外周面2に対するカッター23の接離を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、パイプ切断機において切断時の安定性を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかるパイプ切断機の使用状態を示す一部破断側面図である。
【図2】同じく一部破断正面図である。
【図3】同じく一部破断背面図である。
【図4】同じく一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかるパイプ切断機について図面を参照して説明する。
図1,2に示すように、パイプ1の外周面2に載置される可動台3は枠状に組まれ、その可動台3の下側に設けられた載置部4においてパイプ1の周方向Rの両側には支軸5,6がパイプ1の軸線方向Xへ延びるように架設されている。この可動台3の載置部4の四隅部においてパイプ1の軸線方向Xの両側で両支軸5,6の両端部にはそれぞれ載置ローラ7,8,9,10が支持されている。
【0015】
パイプ1の外周面2に巻き掛けられるローラ付きチェーン11(可撓索)は、チェーン本体12の幅方向両側にチェーン本体12の長手方向に沿って並設されたチェーンローラ13を有している。このローラ付きチェーン11の一端部11aは支軸6に連結され、その他端部11b側は支軸5に巻き掛けられている。前記可動台3に取り付けられた締付手段14においては、操作摘み15を回動させると、その他端部11b側に連結された雄ねじ部16が上下動してローラ付きチェーン11をパイプ1の外周面2に対し締め付けたり緩めたりすることができる。
【0016】
前記可動台3は、前記載置部4のほかに、上側に設けられた固定ガイド17とブラケット18とを有している。この可動台3の固定ガイド17の前側には可動ガイド19が上下動可能に支持されている。この可動ガイド19の前側には電動モータ20(駆動部)が取着されている。この電動モータ20の下半部前側にはカバー21が取着されている。このカバー21内には、圧縮コイルばね(図示せず)の弾性力により下方へ付勢された保護枠22が支持されて下方へ突出しているとともに、電動モータ20により回転するカッター23がこの保護枠22の前側に隣接している。
【0017】
前記可動台3のブラケット18の前側と前記可動ガイド19の前側との間にはリンク機構24が取り付けられている。このリンク機構24においては、回動盤25が軸部25aを中心に回動操作可能に支持され、この軸部25aに対する偏心位置で回動盤25に対しリンク26が軸部26aにより回動可能に支持されているとともに、可動ガイド19の上端部に対しリンク26が軸部26bにより回動可能に支持されている。この回動盤25を回動操作すると、リンク機構24を介して前記可動ガイド19が固定ガイド17に対し上下動して電動モータ20とカバー21と保護枠22とカッター23とが一体となってパイプ1の外周面2に対し接近または離間する。
【0018】
図1,3に示すように、前記可動台3の後側に取り付けられた爪車装置27(回転向き規制手段)においては、載置ローラ7と連動する支軸5の端部5aに爪車28が一体回動可能に支持されているとともに、回動操作可能に支持された爪29がこの爪車28に係合される。この載置ローラ7は、この爪29を爪車28から外すと、他の載置ローラ8,9,10と同様に、パイプ1の外周面2の周方向Rの両側向きRF,RBへ回転し得るが、この爪29を爪車28に係合すると、その両側向きRF,RBのうち一方の向きRFにのみ回転し得る。
【0019】
図1〜3に示すセット状態では、固定されたパイプ1の外周面2にローラ付きチェーン11が巻き掛けられて締付手段14により締め付けられ、可動台3の各載置ローラ7,8,9,10がパイプ1の外周面2に載置されている。そのセット状態で、リンク機構24においては、回動盤25の軸部25aの上下両側にリンク26の上下の軸部26a,26bが位置してそれらの軸部25a,26a,26bが一直線上に並んでロックされているため、カッター23はパイプ1の外周面2に対し離間位置Pにある。また、爪車装置27においては、爪車28に爪29が係合されている。
【0020】
リンク機構24において、図1〜3に示すセット状態から、図4に示すように回動盤25を回動操作すると、回動盤25の軸部25aの下側にリンク26の上下の軸部26a,26bが位置してそれらの軸部25a,26a,26bが一直線上に並んでロックされるため、保護枠22がパイプ1の外周面2に当接して上方へ退避するとともに、電動モータ20により回転するカッター23がパイプ1の外周面2に対し接近位置Qになってパイプ1の外周壁を切断してくい込む。さらに、固定されたパイプ1の外周面2に対しローラ付きチェーン11を爪車28の回転可能な向きRFへ移動させながら、カッター23を電動モータ20やカバー21や保護枠22とともにその向きRFへ所定角度移動させると、パイプ1の外周壁がその所定角度切断される。次に、所定角度切断されたパイプ1の外周面2に対するカッター23の位置を切断終了状態にしたままで、パイプ1及びパイプ切断機全体を向きRFとは逆の向きRBに移動させて戻す。以後、この切断動作を繰り返すと、パイプ1の外周壁全体が切断される。
【0021】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 各載置ローラ7,8,9,10のうち一つの載置ローラ7のみがカッター23の移動向きRFにのみ回転し得るように爪車装置27により規制したので、パイプ切断機全体が切断時にその移動向きRFとは逆の向きRBへ移動することを抑制し、パイプ切断機全体の周方向Rへの振れを防止しながら、固定されたパイプ1の外周面2に対しパイプ切断機全体をその外周面2の周方向Rへ円滑に移動させることができる。従って、切断時の安定性を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【0022】
(2) 操作摘み15を回動させて雄ねじ部16を上下動させるだけの簡単な締付手段14により、既存のローラ付きチェーン11をパイプ1の外周面2に対し締め付けたり緩めたりしてローラ付きチェーン11を容易に着脱することができる。
【0023】
(3) カッター23を回転させる電動モータ20を取着した可動ガイド19を固定ガイド17に対し上下動可能に支持するとともに、可動台3に対し回動盤25を回動操作可能に支持し、その可動ガイド19と回動盤25との間にリンク26を連結しただけの簡単なリンク機構24により、パイプ1の外周面2に対するカッター23の接離を容易に行うことができる。
【0024】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 前記爪車装置27に代えて、一つの載置ローラ7内に既存の一方向クラッチを組み込んでもよい。
【0025】
・ 前記ローラ付きチェーン11に代えて、パイプ1の外周面2に対し周方向Rへ滑らすことができる樹脂帯などの可撓索を採用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…パイプ、2…外周面、3…可動台、4…可動台の載置部、7,8,9,10…載置ローラ、11…ローラ付きチェーン(可撓索)、12…チェーン本体、13…チェーンローラ、14…締付手段、20…電動モータ(駆動部)、23…カッター、24…リンク機構、27…爪車装置(回転向き規制手段)、28…爪車、29…爪、R…周方向、RF,RB…向き、X…軸線方向、P…カッターの離間位置、Q…カッターの接近位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面に載置される可動台の載置部にその外周面の周方向に沿って転動し得る複数の載置ローラを支持し、この可動台には駆動部により回転するカッターをパイプの外周面に対し接離可能に支持するとともに、パイプの外周面に巻き掛けられて締め付け可能な可撓索を取り付け、パイプの外周面に対しこの可撓索をその外周面の周方向に沿って移動させながら前記可動台と駆動部とカッターとをその外周面の周方向に沿って移動させて、そのカッターによりパイプの外周壁を切断する際に、前記各載置ローラのうち少なくとも一つの載置ローラがパイプの外周面の周方向両側向きのうち前記カッターの移動向きにのみ回転し得るように回転向き規制手段を備えたことを特徴とするパイプ切断機。
【請求項2】
前記回転向き規制手段は爪車と爪とを有する爪車装置であることを特徴とする請求項1に記載のパイプ切断機。
【請求項3】
前記各載置ローラは可動台の載置部においてパイプの周方向両側及び軸線方向両側でそれぞれ支持され、その各載置ローラのうち一つの載置ローラに前記回転向き規制手段を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパイプ切断機。
【請求項4】
前記可撓索はチェーン本体の幅方向両側にチェーン本体の長手方向に沿ってチェーンローラを並設したローラ付きチェーンであって、パイプの外周面に巻き掛けられたローラ付きチェーンを締め付けたり緩めたりすることができる締付手段を可動台に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のパイプ切断機。
【請求項5】
前記駆動部はカッターを回転可能に支持する電動モータであって、その電動モータ及びカッターがパイプの外周面に対する接近位置と離間位置とを取り得るリンク機構を可動台に設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載のパイプ切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−35347(P2012−35347A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175494(P2010−175494)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000205052)大見工業株式会社 (27)