説明

パイプ切断装置

【解決手段】パイプ31の外周部に挿嵌されてパイプ31の外周部に当てがわれるパイプガイド9を内周部に有するとともに外周部には大歯車26を有する回転リング1を備えている。カッター支持体5は回転リング1及びパイプガイド9とともに回転し得る。固定ブラケット22においては、回転リング1を吊下して支持するリングガイド23を設けている。回転リング1がカッター支持体5及びパイプガイド9とともに回転してパイプガイド9がパイプ31の外周部を移動しながら、駆動回転軸24の回転により小歯車25と大歯車26とを介してカッター支持体5及びパイプガイド9とともに回転する回転リング1の一回転毎に、回転体15が間欠駆動部27により間欠回転し、刃体18が半径方向へ移動してパイプ31を切り込んで切断する。
【効果】コンパクトな構造のパイプ切断装置によりパイプ31の切断作業を簡単にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば樹脂パイプを切断する際に利用するパイプ切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパイプ切断装置においては、把持部に設けられた二又状の腕部の内側に挿入したパイプの外周部に当てがうガイド部と円形刃体とが略180度間隔で設けられ、把持部に設けられた摘みにより円形刃体をパイプに切り込みながらパイプに対し腕部を回動させてパイプを切断していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような手動操作によるパイプ切断装置では、腕部の回動操作や摘みによる切込操作が大変面倒であった。
この発明は、パイプの切断作業を簡単にするパイプ切断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
後記実施形態の図面(図1〜3)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかるパイプ切断装置は下記のように構成されている。
パイプ31の外周部に挿嵌されてパイプ31の外周部に当てがわれるパイプガイド9を内周部に有するとともに外周部には回転方向の全体で大歯車26を有する回転リング1を備えている。その回転リング1に取着されて回転リング1の回転中心線8を中心に回転リング1及びパイプガイド9とともに回転し得るカッター支持体5には、刃体18をこの回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能に支持するとともに、回転体15を回転可能に支持し、この回転体15の回転によりこの刃体18を回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動させる連動部16,17を設けている。前記回転リング1をその回転中心線8を中心に回転可能に吊下して支持するリングガイド23を設けた固定ブラケット22には、駆動回転軸24を回転可能に支持するとともに、この駆動回転軸24により回転する小歯車25を支持して前記回転リング1の大歯車26に噛合し、駆動回転軸24の回転により小歯車25と大歯車26とを介してカッター支持体5及びパイプガイド9とともに回転する回転リング1の一回転毎にカッター支持体5が固定ブラケット22のリングガイド23を通過する際にこのカッター支持体5の回転体15を間欠回転させる間欠駆動部27を設けている。前記回転リング1がカッター支持体5及びパイプガイド9とともに回転してパイプガイド9がパイプ31の外周部を移動しながら回転体15が間欠駆動部27により間欠回転し、刃体18が連動部16,17により半径方向へ移動してパイプ31を切り込んで切断する。例えば、この回転リング1において複数または一つのパイプガイド9と一つのカッター支持体5とは回転リング1の回転方向で分離配置されている。
【0005】
請求項1の発明では、小歯車25と大歯車26との噛合により駆動回転軸24の回転を回転リング1に対し伝動し、回転リング1の一回転毎に間欠駆動部27により間欠回転する回転体15により半径方向へ移動する刃体18がパイプ31を切り込んで切断することができる。その際、パイプガイド9により回転リング1をパイプ31の外周部に沿って安定的に案内することができる。また、固定ブラケット22に回転リング1をリングガイド23により吊下して支持するので、固定ブラケット22と回転リング1とが上下に分かれてパイプ切断装置をコンパクトな構造にすることができる。
【0006】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記リングガイド23は回転リング1の内周部を着脱可能に載せて吊下支持する。請求項2の発明では、回転リング1の内周部をリングガイド23に対し単に載せて着脱するだけであるため、固定ブラケット22に対し回転リング1を必要に応じて着脱したり交換したりする作業を簡単に行うことができ、そのような着脱構造でもリングガイド23により回転リング1をパイプガイド9と相俟って安定的に案内することができる。
【0007】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明にかかる回転リング1において、前記パイプガイド9を支持したガイド支持体6を回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能にする調節手段10を設けている。請求項3の発明では、パイプ31のサイズ変化に応じてパイプガイド9を半径方向へ移動させることにより回転リング1をパイプ31の外周部に沿って安定的に案内することができる。
【0008】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記カッター支持体5を刃体18と回転体15と連動部16,17とともに回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能にする調節手段19を設けている。請求項4の発明では、パイプ31のサイズ変化に応じてカッター支持体5を半径方向へ移動させることにより刃体18をパイプ31の外周部に接触させて刃体18による切込基準位置を回転体15を回転させることなく設定することができる。
【0009】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、前記回転リング1における周方向の一部にはパイプ31を挿脱可能に開くとともに環状に閉じることができる開閉可能な挿脱口3を設けている。請求項4の発明では、パイプ31を回転リング1に対し挿脱口3から容易に挿脱することができる。
【0010】
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記固定ブラケット22にはパイプ31の外周部に当てがわれる固定支持体28を回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能に設けている。請求項6の発明では、パイプ31のサイズ変化に応じて固定支持体28を半径方向へ移動させることによりパイプ31を安定的に支持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、コンパクトな構造のパイプ切断装置によりパイプ31の切断作業を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかるパイプ切断装置について図1〜3を参照して説明する。
回転リング1においては、半円弧状に延びる一対のリング片1a,1bの周方向両端部のうち、一方のリング片1aの一端部と他方のリング片1bの一端部とがヒンジ2により支軸2aを中心に回動可能に連結されているとともに、一方のリング片1aの他端部と他方のリング片1bの他端部とが挿脱口3で止めピン4により周方向へ開閉可能に連結されている。図示しないが、この止めピン4は、リング片1bの他端部側で圧縮コイルばねにより付勢されて支持され、リング片1aの他端部側に形成された係止孔に対し係脱可能になっており、この止めピン4が係止孔から圧縮コイルばねの弾性力に抗して離脱されると、環状の回転リング1を挿脱口3で周方向へ開くことができ、この止めピン4が係止孔に対し圧縮コイルばねの弾性力により係入されると、回転リング1を挿脱口3で周方向へ環状に閉じることができるようになっている。
【0013】
環状に閉じられた回転リング1の両リング片1a,1bうち、一方のリング片1aにはカッター支持体5が周方向両端部間中央で取り付けられ、他方のリング片1bには複数(一対)のガイド支持体6が周方向両端部に対し略等角度をなすように互いに分離配置されるとともにカッター支持体5に対し分離配置されて取り付けられ、カッター支持体5に対する一方のガイド支持体6の周方向角度と他方のガイド支持体6の周方向角度とが互いに略等しくなっている。
【0014】
前記両ガイド支持体6において、可動体7の外側には回転リング1の内周部側で回転リング1の回転中心線8の方向の両側に配置されたパイプガイドローラ9がその回転中心線8に沿う軸心9aを中心に回動可能に支持され、このガイド支持体6を回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能にする雌雄ねじ機構による調節手段10が設けられている。この調節手段10においては、可動体7を半径方向へ案内するレール11が回転リング1に設けられ、可動体7で半径方向へ延設された案内孔12に調節ねじ13が挿入されて回転リング1に螺着されている。この調節ねじ13を可動体7に対し締め付けると、ガイド支持体6が回転リング1に位置決めされ、この調節ねじ13を可動体7に対し緩めると、ガイド支持体6を案内孔12に沿って半径方向へ移動調節することができる。なお、図示しないが、可動体7とレール11との間には位置調節のための目盛が付されている。
【0015】
前記カッター支持体5において、可動体14の外側には回転体としてのゴムタイヤ15が回転リング1の回転中心線8を通る軸心15aを中心に回転可能に支持され、この可動体14内にはこのゴムタイヤ15の軸心15a上で連動部としての雄ねじ部16が設けられているとともにその軸心15aに沿って移動可能に支持された連動部としての雌ねじ部17が設けられてこの雄ねじ部16と螺合され、この可動体14の外側で円形状の刃体18がこの雌ねじ部17に対し回転リング1の回転中心線8に沿う軸心18aを中心にフリー回転可能に支持されてパイプ当て板14aから突出している。このゴムタイヤ15が回転すると、刃体18が雄ねじ部16及び雌ねじ部17を介して回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動する。この可動体14を刃体18とゴムタイヤ15と雄ねじ部16及び雌ねじ部17とともに回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能にする雌雄ねじ機構による調節手段19が設けられている。この調節手段19においては、可動体14で半径方向へ延設された一対の案内孔20に調節ねじ21が挿入されて回転リング1に螺着されている。この調節ねじ21を可動体14に対し締め付けると、カッター支持体5が回転リング1に位置決めされ、この調節ねじ21を可動体14に対し緩めると、カッター支持体5を両案内孔20に沿って半径方向へ移動調節することができる。
【0016】
固定ブラケット22においては、回転リング1をその回転中心線8を中心に回転可能に吊下支持するリングガイド23が設けられている。このリングガイド23においては、回転リング1の内周部が着脱可能に載せられる載置部23aと、回転リング1の回転中心線8に沿う方向でこの載置部23aの両側に形成された両側壁部23bとを有する溝部が回転リング1の回転方向へ円弧状に延設されている。この固定ブラケット22においては、図示しない電動モータに連結された駆動回転軸24が軸心24aを中心に回転可能に支持されているとともに、図示しないかさ歯車列を介してこの駆動回転軸24により軸心25aを中心に回転する小歯車25が支持されて、その小歯車25が前記回転リング1の外周部に形成された大歯車26に噛合されている。この駆動回転軸24の回転により小歯車25と大歯車26とを介して回転リング1が前記カッター支持体5及び両ガイド支持体6とともに回転する。この固定ブラケット22には、このカッター支持体5がこの固定ブラケット22を回転リング1の一回転毎に通過する際、このカッター支持体5のゴムタイヤ15と接触してそのゴムタイヤ15を間欠回転させる板状の間欠駆動部27が設けられている。また、この固定ブラケット22には、雌雄ねじ機構による調節手段として、一対のパイプ当接部28aを有する板状の固定支持体28が一対の案内孔29に沿って回転リング1の回転中心線8に対する半径方向へ移動可能に設けられ、両案内孔29に挿入された止めねじ30により固定支持体28が位置決めされるようになっている。
【0017】
さて、切断前においては、環状の回転リング1を挿脱口3の開閉により固定パイプ31の外周部に挿嵌して固定ブラケット22のリングガイド23に吊下支持するとともに、両ガイド支持体6で調節手段10により固定パイプ31のサイズに対応する目盛に合わせてパイプガイドローラ9を位置調節して固定パイプ31の外周部に当てがい、その後に固定ブラケット22で固定支持体28を位置調節してその両パイプ当接部28aを固定パイプ31の外周部に当てがう。さらに、カッター支持体5の刃体18をゴムタイヤ15の回転と調節手段19により位置調節して固定パイプ31の外周部に当てがう。そのセット状態から、固定ブラケット22で駆動回転軸24が回転すると、小歯車25及び大歯車26を介して回転リング1がカッター支持体5及び両ガイド支持体6とともに回転してパイプガイドローラ9が固定パイプ31の外周部を移動しながらゴムタイヤ15が間欠駆動部27により間欠回転し、刃体18が雄ねじ部16及び雌ねじ部17より半径方向へ移動して固定パイプ31を切り込んで切断する。
【0018】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 固定ブラケット22の駆動回転軸24の回転を固定ブラケット22の小歯車25と回転リング1の大歯車26との噛合により回転リング1に対し確実に伝動し、回転リング1の一回転毎に固定ブラケット22の間欠駆動部27により間欠回転するカッター支持体5のゴムタイヤ15により刃体18が半径方向へ移動して固定パイプ31を切り込んで切断することができる。従って、固定パイプ31の切断作業を簡単にすることができる。
【0019】
* 固定パイプ31に対する切断作業時、両ガイド支持体6のパイプガイドローラ9により回転リング1を固定パイプ31の外周部に沿って安定的に案内することができる。
* 固定ブラケット22に対し回転リング1をリングガイド23により吊下して支持するので、固定ブラケット22と回転リング1とが上下に分かれてパイプ切断装置をコンパクトな構造にすることができる。
【0020】
* 回転リング1の内周部をリングガイド23に対し単に載せて着脱するだけであるため、固定ブラケット22に対し回転リング1を必要に応じて着脱したり交換したりする作業を簡単に行うことができる。そのような着脱構造でもリングガイド23により回転リング1をパイプガイドローラ9と相俟って安定的に案内することができる。
【0021】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 固定ブラケット22の駆動回転軸24を手動ハンドルにより回動させてもよい。
・ パイプガイドローラ9を有するガイド支持体6を回転リング1に一つのみ設ける。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態にかかるパイプ切断装置において使用状態を示す正面図である。
【図2】同じく別の使用状態を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線で切断して見た一部切欠き側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…回転リング、3…回転リングの挿脱口、5…カッター支持体、6…ガイド支持体、8…回転リングの回転中心線、9…ガイド支持体のパイプガイドローラ、10…ガイド支持体の調節手段、15…カッター支持体の回転体としてのゴムタイヤ、16…カッター支持体の連動部としての雄ねじ部、17…カッター支持体の連動部としての雌ねじ部、18…カッター支持体の刃体、19…カッター支持体の調節手段、22…固定ブラケット、23…固定ブラケットのリングガイド、24…固定ブラケットの駆動回転軸、25…固定ブラケットの小歯車、26…回転リングの大歯車、27…固定ブラケットの間欠駆動部、28…固定ブラケットの固定支持体、31…固定パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周部に挿嵌されてパイプの外周部に当てがわれるパイプガイドを内周部に有するとともに外周部には回転方向全体で大歯車を有する回転リングを備え、
その回転リングに取着されて回転リングの回転中心線を中心に回転リング及びパイプガイドとともに回転し得るカッター支持体には、刃体をこの回転リングの回転中心線に対する半径方向へ移動可能に支持するとともに、回転体を回転可能に支持し、この回転体の回転によりこの刃体を回転リングの回転中心線に対する半径方向へ移動させる連動部を設け、
前記回転リングをその回転中心線を中心に回転可能に吊下して支持するリングガイドを設けた固定ブラケットには、駆動回転軸を回転可能に支持するとともに、この駆動回転軸により回転する小歯車を支持して前記回転リングの大歯車に噛合し、駆動回転軸の回転により小歯車と大歯車とを介して前記カッター支持体及びパイプガイドとともに回転する回転リングの一回転毎にカッター支持体が固定ブラケットのリングガイドを通過する際にこのカッター支持体の回転体を間欠回転させる間欠駆動部を設け、
前記回転リングがカッター支持体及びパイプガイドとともに回転してパイプガイドがパイプの外周部を移動しながら回転体が間欠駆動部により間欠回転し、刃体が連動部により半径方向へ移動してパイプを切り込んで切断する
ことを特徴とするパイプ切断装置。
【請求項2】
前記リングガイドは回転リングの内周部を着脱可能に載せて吊下支持することを特徴とする請求項1に記載のパイプ切断装置。
【請求項3】
前記回転リングにおいてパイプガイドを支持したガイド支持体を回転リングの回転中心線に対する半径方向へ移動可能にする調節手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパイプ切断装置。
【請求項4】
前記カッター支持体を刃体と回転体と連動部とともに回転リングの回転中心線に対する半径方向へ移動可能にする調節手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のパイプ切断装置。
【請求項5】
前記回転リングにおける周方向の一部にはパイプを挿脱可能に開くとともに環状に閉じることができる開閉可能な挿脱口を設けていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載のパイプ切断装置。
【請求項6】
前記固定ブラケットにはパイプの外周に当てがわれる固定支持体を回転リングの回転中心線に対する半径方向へ移動可能に設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載のパイプ切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115747(P2010−115747A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290851(P2008−290851)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000205052)大見工業株式会社 (27)