説明

パイプ成形品の製造方法

【課題】欠陥の少ない湾曲部を備えたパイプ成形品を製造する。
【解決手段】パイプ成形品10は、発泡体14をなす発泡原料を樹脂パイプ12の中空部12aに注入する注入工程と、樹脂パイプ12の中空部12aに注入した発泡原料を発泡硬化させて、該樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を生成する発泡体生成工程と、発泡体14を充填した樹脂パイプ12を加熱して、該樹脂パイプ12を軟化する加熱工程と、この加熱工程で軟化した樹脂パイプ12を曲げて、湾曲部10aを形成する曲げ工程とを経て製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湾曲部を有する所要の湾曲形状に成形されたパイプ成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソファーや座椅子等の家具では、金属パイプを三次元的な湾曲形状に湾曲させた金属加工品によって、外郭形状を保持するフレームや肘掛け部等の荷重を受ける部材が構成されている。しかし、金属加工品は重量が嵩む欠点があることから、金属パイプより軽い樹脂パイプを所要形状に湾曲したパイプ成形品で金属加工品に代替することも行なわれている。パイプ成形品では、樹脂パイプとして例えばポリ塩化ビニル等の熱可塑性材料からなるものが採用されている。そして、パイプ成形品は、樹脂パイプを加熱して軟化した後、木型等に入れ込んで所要の湾曲形状に曲げることで成形される。このような製造方法により得られるパイプ成形品は、湾曲部に亀裂や偏肉等の欠陥が発生することがあり、これらの欠陥により湾曲部の外観や必要な強度が損なわれる難点がある。
【0003】
そこで、特許文献1に開示の如く、成形可能なチューブ状プレフォームの両端を夫々結合部材で固定してプレフォームに伸長張力を与えた状態で、プレフォームの中空内部に、プレフォームを支持するのに充分な圧力の加熱流体を充填し、流体充填プレフォームの外表面に機械的圧力を加えることで、プレフォームを所定の三次元蛇行形態に成形する製造方法が提案されている。特許文献1の製造方法では、プレフォームの内部に充填した加熱流体によりプレフォームを軟化させると共に、圧力を付加した加熱流体によってプレフォームを内側から支持した状態で該プレフォームを曲げることで、湾曲部に生じる欠陥の抑制を図っている。
【特許文献1】特表2003−531038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の製造方法では、プレフォームの両端を固定して伸張するための設備と、流体を加熱して加熱流体とするための設備と、プレフォームの内部に加熱流体を充填すると共に該プレフォームに圧力を付加するための設備とが必要とされ、設備全体が重厚になる不都合がある。プレフォームの内部に充填されるのは、流動性を有する加熱流体であるので、加熱流体の圧力を保持するのは難しく、また加熱流体に圧力を付加したままプレフォームを曲げる必要があるので、設備が複雑になる。更に、プレフォームの内部に加熱流体を圧力を付与した状態で充填するため、プレフォームから加熱流体を漏らさない処置を講じる必要があり、大変な手間がかかる欠点がある。そして、特許文献1の製造方法は、プレフォームを伸張する工程、プレフォームに加熱流体を充填する工程、プレフォームに充填した加熱流体を加圧する工程、プレフォームを曲げる工程に加えて、プレフォームを曲げた後に加熱流体をプレフォームから除去する工程も要するので、工程が煩雑になる問題もある。
【0005】
すなわち本発明は、従来の技術に係るパイプ成形品の製造方法に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な設備および工程で湾曲部を備えたパイプ成形品を得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のパイプ成形品の製造方法は、
湾曲部を備えたパイプ成形品の製造方法であって、
熱可塑性を有する合成樹脂材料からなる樹脂パイプの内部に、発泡原料を注入する注入工程と、
発泡原料を発泡硬化させて前記樹脂パイプの内部に発泡体を生成する発泡体生成工程と、
発泡体を充填した樹脂パイプを加熱して、該樹脂パイプを軟化する加熱工程と、
前記加熱工程で軟化した樹脂パイプを曲げて、前記湾曲部を形成する曲げ工程とを有することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、軟化した樹脂パイプを発泡体によって内側から支持した状態で該樹脂パイプを曲げるので、得られたパイプ成形品の湾曲部に欠陥が生じ難い。また、パイプ成形品は、複雑な設備や工程を要さず、簡単に製造することができる。そして、発泡体は軽いので、加熱工程および曲げ工程における取扱い性を損なうことはなく、得られたパイプ成形品の重量増加を最小限に抑え得る。更に、樹脂パイプが軟化した状態であっても、発泡体で内側から樹脂パイプが支持されて曲げ加工した形状が保たれる。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記樹脂パイプは、前記発泡体生成工程における発泡原料の反応熱を残留した状態で、前記加熱工程に供されることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、加熱工程において加熱時間および樹脂パイプに付与する熱量を抑えることができる。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項3に係る発明のパイプ成形品の製造方法は、
湾曲部を備えたパイプ成形品の製造方法において、
熱可塑性を有する合成樹脂材料からなる樹脂パイプの内部に、発泡原料を注入する注入工程と、
発泡原料を発泡硬化させて前記樹脂パイプの内部に発泡体を生成すると共に、発泡原料の反応熱により該樹脂パイプを軟化する発泡体生成工程と、
軟化した前記樹脂パイプを曲げて、前記湾曲部を形成する曲げ工程とを有することを特徴とする。
請求項3に係る発明によれば、軟化した樹脂パイプを発泡体によって内側から支持した状態で該樹脂パイプを曲げるので、得られたパイプ成形品の湾曲部に欠陥が生じ難い。また、パイプ成形品は、複雑な設備や工程を要さず、簡単に製造することができる。そして、発泡体は軽いので、加熱工程および曲げ工程における取扱い性を損なうことはなく、得られたパイプ成形品の重量増加を最小限に抑え得る。更に、発泡原料が発泡体になる過程で発する反応熱を利用して樹脂パイプを軟化しているので、工程および設備をより簡略化することができる。更に、樹脂パイプが軟化した状態であっても、発泡体で内側から樹脂パイプが支持されて曲げ加工した形状が保たれる。
【0009】
請求項4に係る発明では、前記発泡体生成工程において、発泡体として硬質ポリウレタンフォームを生成することを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、発泡体として硬質ポリウレタンフォームを用いることで、得られたパイプ成形品の湾曲部に生じる欠陥を一層抑制し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るパイプ成形品の製造方法によれば、簡単な設備および工程で、欠陥が少ない湾曲部を備えたパイプ成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明に係るパイプ成形品の製造方法について説明する。本発明に係るパイプ成形品の製造方法は、例えば図1に示すような複雑な三次元的湾曲形状に成形されて複数の湾曲部10aを備え、椅子の肘掛け部分および背もたれ部分を一体的に構成するパイプ成形品10を製造する場合に適用される。このパイプ成形品10は、該パイプ成形品10の外郭をなす樹脂パイプ12と、この樹脂パイプ12の中空部(内部)12aに充填された発泡体14とから構成されている(図1または図2参照)。
【0012】
前記樹脂パイプ12は、熱可塑性を有する合成樹脂材料からなり、例えば以下に説明する実施例では軟化点が70℃〜100℃の範囲にあるポリ塩化ビニル樹脂からなるものが採用されている。すなわち、本発明に係るパイプ成形品の製造方法では、軟化点まで加熱した熱可塑性合成樹脂が硬質状態から著しく変形し易くなる軟質状態に変化する性質を利用して、真っ直ぐな樹脂パイプ12を所要の湾曲形状に成形している。ここで、本発明に係るパイプ成形品の製造方法では、ポリエチレンを含むオレフィン樹脂(PE(LD-PE,HD-PE,LL-PE)、TPE(ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリエーテルポリエステル系、スチレン系およびポリアミド系他)、PPおよびTPO)、TPU、ポリアミド、ポリイミドまたはポリアセタールその他、加熱することで軟化する熱可塑性樹脂からなる樹脂パイプであれば、使用可能である。
【0013】
前記発泡体14は、多数の気泡を有するスポンジ状の骨格構造を備えた多孔質体であって、例えばポリウレタンフォームが採用される。発泡体14は、軟化点まで加熱される樹脂パイプ12の中空部12aに充填されるから、樹脂パイプ12の軟化点では燃えない(分解しない)ことが必須である。また発泡体14は、樹脂パイプ12を曲げる際に該樹脂パイプ12を内側から支持する支持材料としての機能が要求されるので、樹脂パイプ12の軟化点においても発泡体14の物性が変化しないあるいは変化が小さいことも求められる。例えばポリウレタンフォームであれば、発火温度(熱分解温度)を100℃以上に設定でき、また樹脂パイプ12を軟化点まで昇温しても該樹脂パイプ12の加熱の影響を受けて物性が変化しない。なお、発泡体としては、ポリウレタン発泡体以外に、ポリエチレン発泡体等のオレフィン系発泡体や、EPDM等のゴム系発泡体も採用することができる。ここで、発泡体としては、架橋構造を有しているものが、加熱時の熱の影響を受け難いので好適である。
【0014】
発泡体14としてポリウレタンフォームを用いる場合、樹脂パイプ12を曲げる際に樹脂パイプ12を内側から発泡体14で適切に支持するという目的により、特に硬質ポリウレタンフォームを用いるのが好適である。また発泡体14は、見掛け密度(測定法:JIS K7222)を0.2〜0.7の範囲に設定したものを用いるのがよい。発泡体14の見掛け密度が、0.2未満になると、発泡体による樹脂パイプ12の支持力が弱く、樹脂パイプ12を曲げた際に湾曲部10aにおける欠陥の抑制作用が小さくなる。一方、発泡体14の見掛け密度が、0.7より大きくなると、発泡体14による樹脂パイプ12の支持力が強く働き過ぎ、樹脂パイプ12が曲げ難くなると共に、樹脂パイプ12と発泡体14とを併せた全体の重量が嵩んで、取扱い性が損なわれる。
【0015】
前記発泡体14としてポリウレタンフォームを用いる場合、ポリウレタンフォームの生成方法としては、化学的発泡法またはメカニカルフロス法の何れの生成方法であってもよい。化学的発泡法は、各種原料に、イソシアネートと反応してガスを発生させる、例えば水の如き化学的発泡剤および/またはフォーム成形時の反応熱で気化する低沸点物質の如き物理的発泡剤を添加し、これらにより気泡を形成しつつ、樹脂の硬化反応とのバランスを取りながらポリウレタンフォームを生成する方法である。一方、メカニカルフロス法は、発泡体をなす各種原料に特定の発泡剤を加えず、該各種原料を攪拌して充分に混合する際に、例えば不活性ガス等の造泡用気体を混入することで気泡を形成し、そのままの状態で加熱・硬化させることによりポリウレタンフォームを生成する方法である。
【0016】
次に、本発明に係るパイプ成形品10の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例1および2のパイプ成形品10の製造方法では、発泡体14として硬質ポリウレタンフォームを、化学的発泡法によって樹脂パイプ12の中空部12aに生成する場合を例示する。
【実施例1】
【0017】
図3に示すように、実施例1に係るパイプ成形品10は、発泡体14をなす発泡原料を樹脂パイプ12の中空部12aに注入する注入工程S1と、樹脂パイプ12の中空部12aに注入した発泡原料を発泡硬化させて、該樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を生成する発泡体生成工程S2と、発泡体14を充填した樹脂パイプ12を加熱して、該樹脂パイプ12を軟化する加熱工程S3と、この加熱工程S3で軟化した樹脂パイプ12を曲げて、湾曲部10aを形成する曲げ工程S4とを経て製造される。なお、注入工程S1に先立って行なわれる準備工程S0において、混合攪拌装置で主原料であるイソシアネートおよびポリオール、発泡剤、触媒(アミン触媒,金属触媒等)および整泡材(界面活性剤)等を混合・攪拌して、発泡原料が準備されている。また、実施例1の製造方法では、曲げ工程S4の後に、パイプ成形品10を冷却する冷却工程S5と、この冷却工程S5で冷却されたパイプ成形品10から余分な部分を切断除去する切断工程S6が行なわれる。
【0018】
前記注入工程S1では、真っ直ぐな樹脂パイプ12が用意され、この樹脂パイプ12の一方の開放端がキャップ等の被覆物で塞がれる。次に、準備工程S0において混合攪拌装置で準備された発泡原料が、樹脂パイプ12の他方の開放端から中空部12aに注入される。ここで、発泡原料は、液状であって流動性を有しているので、樹脂パイプ12を立てた姿勢で上から注ぎ込むことで、特に圧力を加えることなく、樹脂パイプ12の中空部12aに簡単に注入することができる。
【0019】
前記発泡体生成工程S2は、発泡原料が注入された樹脂パイプ12を立てたまま静置して、発泡原料から発泡体14が生成されるまで待機するステップである。樹脂パイプ12の中空部12aに注入された発泡原料は、触媒の作用により反応して骨格をなす樹脂部分を生成すると共に、発泡剤から発生したガスによって形成された気泡により樹脂部分が膨張され、樹脂パイプ12における中空部12aの開放端近傍まで発泡体14が充填される。また発泡体14は、発泡原料から生成する過程で樹脂パイプ12の内周面に接着して、樹脂パイプ12と一体的に取扱い可能となる。すなわち、発泡体生成工程S2より後の工程では、樹脂パイプ12の中空部12aに流動性のある流体を支持材料として充填する場合と異なり、樹脂パイプ12の中空部12aに充填した発泡体14が樹脂パイプ12から流出や脱離等するおそれはない。また発泡体14は、樹脂からなるソリッド体と比較して見掛け密度が小さく、樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を充填することによる全体の重量の増加を最小限に抑えることができ、樹脂パイプ12の取扱い性を損なうことはない。なお実施例1では、発泡体14として化学的発泡法によってポリウレタンフォームを生成しているので、発泡原料が反応する過程で生じる反応熱によって樹脂パイプ12が内側から予熱される。
【0020】
前記加熱工程S3では、中空部12aに発泡体14を充填した樹脂パイプ12を加熱炉等の加熱手段で加熱し、樹脂パイプ12を軟化点まで昇温することで、樹脂パイプ12を変形可能な状態まで軟化する。ここで、加熱工程S3は、発泡体生成工程S2で生じた反応熱が樹脂パイプ12に残っている状態で行なうとよい。具体的には、発泡体生成工程S2において、イソシアネートとポリオールとが反応して発泡体14がある程度充填された後に加熱工程S3を行なう。なぜなら、発泡体生成工程において発泡体14の生成過程で発生する反応熱は、内側から樹脂パイプ12を加熱しており、樹脂パイプ12の外側から加熱する加熱工程S3を補なうことができる。すなわち、加熱工程S3における加熱時間の短縮および省エネルギー化を図ることができる。また、加熱工程S3を行なうことで、発泡体14が均質化して、後の曲げ工程S4において発泡体14による樹脂パイプ12の支持力のばらつきを抑制できる。なお、加熱工程S3では、曲げ工程S4において樹脂パイプ12を曲げる部分だけを加熱して、曲げ加工に際して樹脂パイプを保持する部分は軟化させないのが好ましい。加熱工程S3において樹脂パイプ12が軟化した状態であっても、発泡体14で内側から樹脂パイプ12が支持されて形状が保たれる。すなわち、樹脂パイプ12の変形を考慮することなく、加熱工程S3を十分に行なって樹脂パイプ12を軟化させることができ、後の曲げ工程S4が行ない易くなる。
【0021】
前記曲げ工程S4は、加熱工程S3で軟化した樹脂パイプ12を木型等の成形手段を用いて、所要の三次元湾曲形状に曲げるステップである。そして、曲げ工程S4で所要の湾曲形状とされた樹脂パイプ12を、冷却工程S5において徐熱して固化する。次に、切断工程S6において、樹脂パイプ12の開放端近傍の発泡体14が充填されていない不要な部分を除去することで、所要の湾曲形状が保持されたパイプ成形品10が得られる。ここで、曲げ工程S4を終えた後に樹脂パイプ12が軟化した状態であっても、発泡体14で内側から樹脂パイプ12が支持されて曲げ加工した形状が保たれる。すなわち、成形品10は、樹脂パイプ12が軟化した状態であっても、発泡体14を充填しない中空の樹脂パイプ12と比べて形状保持性に優れているので、曲げ工程S4から冷却工程S5に移行するまでの取扱い性がよく、樹脂パイプ12の形状を保持するために冷却工程S5を急いで行なう必要がない。
【0022】
実施例1の製造方法によれば、樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を充填した状態で、軟化した樹脂パイプ12を曲げることで、樹脂パイプ12が発泡体14により内側から弾力的に支持されるから、湾曲部10aにおける偏肉や亀裂等の欠陥の発生を抑制することができる。ここで、発泡体14は、樹脂パイプ12の内周面に接合しているから、樹脂パイプ12の変形に追随して曲がるので、曲げ工程S4において樹脂パイプ12を内側から適切に支持し得る。このように、実施例1に係る製造方法で得られたパイプ成形品10は、湾曲部10aに欠陥が生じ難いので、樹脂パイプ12本来の強度や外観を損なうことはない。
【0023】
実施例1の製造方法によれば、発泡原料を混合・攪拌するための混合攪拌機および加熱工程S3で用いる加熱手段を備えていれば、樹脂パイプ12に圧力を付加する等の特別の作業を行なうことなく、簡単な設備で手間をかけずにパイプ成形品10が得られる。また、パイプ成形品10には、樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14が充填されているが、発泡体14の見掛け密度が小さいので、パイプ成形品10の重量の増加を最小限に抑えることができ、鉄等の金属材料で構成された同等品と比較して非常に軽くすることができる。すなわち、パイプ成形品10は、取扱い性がよく、湾曲部10aの欠陥を抑制し得るので、仕上げや補修等の余分な工程を省くことができる。
【実施例2】
【0024】
図4に示すように、実施例2に係るパイプ成形品10は、発泡体14をなす発泡原料を樹脂パイプ12の中空部12aに注入する注入工程S1と、発泡原料を発泡硬化させて樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を生成すると共に、発泡原料の反応熱により樹脂パイプ12を軟化する発泡体生成工程S20と、軟化した前記樹脂パイプ12を曲げて、湾曲部10aを形成する曲げ工程S4を経て製造される。実施例2の製造方法では、発泡原料から発泡体14となる際の反応熱のみを利用して樹脂パイプ12を変形可能な程度に軟化させる点で、樹脂パイプ12に対して加熱手段により外側から熱を加えて軟化している実施例1の製造方法と異なっている。実施例2の製造方法は、実施例1の製造方法から加熱工程S3および切断工程S6を省略したフローになっている。
【0025】
実施例2の製造方法では、発泡体14として、発泡原料から発泡体となる過程で反応熱によって樹脂パイプ12を軟化点まで昇温し得るものが採用される。発泡体14として硬質ポリウレタンフォームを用いることで、発泡原料の反応熱によって発泡原料自体の温度が100℃以上になるので、軟化点が100℃未満の塩化ビニル樹脂製の樹脂パイプ12を採用することで、発泡体生成工程S20で樹脂パイプ12を軟化させる加熱を併せて行なうことができる。そして、発泡体生成工程S20で樹脂パイプ12の中空部12aに発泡体14を生成した後に、曲げ工程S4に直ちに移行し、発泡体生成工程S20で軟化した樹脂パイプ12が所要の湾曲形状に曲げられる。
【0026】
実施例2の製造方法によれば、実施例1の製造方法と比べて加熱工程S3を省略することができるので、加熱手段を用意する必要がなく、設備を更に減じることができると共に、作業工程もより簡易にすることができる。そして、実施例2の製造方法で得られるパイプ成形品10であっても、実施例1の製造方法で得られるパイプ成形品10と同様に、湾曲部10aに欠陥が生じ難い。
【0027】
(実験1)
実験1では、発泡体の有無による樹脂パイプへの影響を検討した。実験1では、外径22.0mm、肉厚2.7mm、長さ4000mmの直管(株式会社ヴァンテック製「硬質塩化ビニル管プレーンエンド直管(VP)」,品質規格:JIS K 6741)を50cmにカットした樹脂パイプを用いた。この樹脂パイプに発泡体を充填した実験例1〜4と、発泡体を充填していない比較例1〜4とを用意した。ここで、実験例1〜4では、A液(BASF INOACポリウレタン株式会社製;HM−5912−4A)とB液(BASF INOACポリウレタン株式会社製;HM−5912−4B)とを1:1の比で混合後、すみやかに樹脂パイプに注入して、化学発泡法によって独立気泡構造を有する硬質ポリウレタンフォームを充填した樹脂パイプを得た。なお、発泡完了時の発泡体の見掛け密度(測定法:JIS K7222)は、0.37であった。次に、実験例1〜4および比較例1〜4を、 恒温槽で所定条件で加熱し、恒温槽から取出して曲げ加工を行なった。そして各例について、樹脂パイプを曲げることができるか否かに関して評価した。なお、樹脂パイプを90度(R=50)まで欠陥なく曲げることができた場合を二重丸(◎)とし、樹脂パイプを45度(R=50)まで欠陥なく曲げることができた場合を一重丸(○)とし、45度(R=50)まで曲げたときに樹脂パイプの湾曲部に欠陥(座屈)が生じた場合を×とした。また、恒温槽から樹脂パイプを取出した際に、樹脂パイプの状態を確認し、樹脂パイプの変形の有無を目視により確認した。実験1の結果を以下の表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すように、発泡体が充填されていない中空の樹脂パイプである比較例1〜4は、湾曲部に欠陥が生じるのに対し、発泡体が充填された樹脂パイプである実験例1〜4は、湾曲部に欠陥なく曲げ加工を行ない得ることが判明した。また、比較例4は、樹脂パイプを120℃で20分間に亘り恒温槽で加熱したところ、恒温槽から取出した際に、熱により樹脂パイプ自体が変形している。これに対し、樹脂パイプに発泡体を充填した実験例4では、樹脂パイプを120℃で20分間に亘り恒温槽で加熱した後に取出した際に、樹脂パイプが変形していない。そして実験例4は、樹脂パイプに外力を付加することで、湾曲部を好適に形成することができた。実験例4では、樹脂パイプに発泡体が充填されているので、恒温槽での加熱により樹脂パイプが軟化しても、発泡体により樹脂パイプが内側から支持されて変形が抑制されると考えられる。
【0030】
(実験2)
実験2では、発泡体を充填した樹脂パイプに付与する熱量の曲げ加工への影響を検討した。実験2では、外径22.0mm、肉厚2.7mm、長さ4000mmの直管(株式会社ヴァンテック製「硬質塩化ビニル管プレーンエンド直管(VP)」,品質規格:JIS K 6741)を50cmにカットした樹脂パイプを用いた。ここで、実験例5〜10では、A液(BASF INOACポリウレタン株式会社製;HM−5912−4A)とB液(BASF INOACポリウレタン株式会社製;HM−5912−4B)とを1:1の比で混合後、すみやかに樹脂パイプに注入して、化学発泡法によって独立気泡構造を有する硬質ポリウレタンフォームを充填した樹脂パイプを得た。なお、発泡完了時の発泡体の見掛け密度(測定法:JIS K7222)は、0.37であった。次に、実験例5〜10を、樹脂パイプに発泡原料を注入した後、表2記載の所定の放置時間だけ放置してから恒温槽で表2に記載した温度および加熱時間で夫々加熱し、恒温槽から取出して曲げ加工(R=50)を行なった。そして、各例について、樹脂パイプを曲げることができるか否かについて評価した。実験2の結果を以下の表2に示す。なお、樹脂パイプを90度(R=50)まで曲げることができた場合を二重丸(◎)とし、樹脂パイプを45度(R=50)まで曲げることができた場合を一重丸(○)とし、45度(R=50)まで曲げることができなかった場合を×とした。
【0031】
【表2】

【0032】
表2に示すように、発泡原料を樹脂パイプに注入してから24時間以上放置しても、十分な熱量を付与することで、樹脂パイプを好適に曲げることができることが判明した。また、曲げることができた場合(評価:◎,○)は勿論のこと、曲げることができなかった場合(評価:×)であっても、樹脂パイプに欠陥は生じなかった。
【0033】
(変更例)
(1)発泡体生成工程で発泡原料または樹脂パイプを加熱をしてもよい。
(2)実施例1の製造方法では、化学的発泡法によって発泡体を生成する場合を説明したが、メカニカルフロス法により発泡体を生成してもよい。
(3)実施例1の製造方法において、切断工程を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好適な実施例に係る製造方法を用いて、所要形状に屈曲形成された樹脂パイプの一例を、一部切り欠いて示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】実施例1のパイプ成形品の製造方法を示すフローチャート図である。
【図4】実施例2のパイプ成形品の製造方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0035】
10 パイプ成形品,10a 湾曲部,12 樹脂パイプ,14 発泡体,
S1 注入工程,S2,S20 発泡体生成工程,S3 加熱工程,S4 曲げ工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲部を備えたパイプ成形品の製造方法であって、
熱可塑性を有する合成樹脂材料からなる樹脂パイプの内部に、発泡原料を注入する注入工程と、
発泡原料を発泡硬化させて前記樹脂パイプの内部に発泡体を生成する発泡体生成工程と、
発泡体を充填した樹脂パイプを加熱して、該樹脂パイプを軟化する加熱工程と、
前記加熱工程で軟化した樹脂パイプを曲げて、前記湾曲部を形成する曲げ工程とを有する
ことを特徴とするパイプ成形品の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂パイプは、前記発泡体生成工程における発泡原料の反応熱を残留した状態で、前記加熱工程に供される請求項1記載のパイプ成形品の製造方法。
【請求項3】
湾曲部を備えたパイプ成形品の製造方法において、
熱可塑性を有する合成樹脂材料からなる樹脂パイプの内部に、発泡原料を注入する注入工程と、
発泡原料を発泡硬化させて前記樹脂パイプの内部に発泡体を生成すると共に、発泡原料の反応熱により該樹脂パイプを軟化する発泡体生成工程と、
軟化した前記樹脂パイプを曲げて、前記湾曲部を形成する曲げ工程とを有する
ことを特徴とするパイプ成形品の製造方法。
【請求項4】
前記発泡体生成工程において、発泡体として硬質ポリウレタンフォームを生成する請求項1〜3の何れか一項に記載のパイプ成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208306(P2009−208306A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52321(P2008−52321)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【出願人】(503054030)株式会社東日本イノアック (2)
【出願人】(501318556)株式会社イノアックリビング (10)
【Fターム(参考)】