説明

パイプ支持金具

【課題】1種類のパイプ支持金具によって大小2種類のパイプに適合し得る、使い勝手のきわめて良好なパイプ支持金具を提供する。
【解決手段】パイプの下端部を受ける円形カップ状の支持部5の中央部に、小径のパイプの内周面に係合可能な外径を有する円形断面からなる突起部8を設けるとともに、支持部5を形成する円形カップの内径を大径のパイプの外周面に係合可能な直径に設定し、それらの突起部8の外周面又は円形カップの内周面に対して、大小2種類のパイプの下端部を選択的に係合させることにより安定的に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧版やベタ基礎へのコンクリート打設用の足場の支柱や、寒冷地における雪養生用などの支柱として使用されるパイプの下端部を支持するためのパイプ支持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパイプ支持金具に関しては、高さ調整可能に構成された支持軸部の上端部に円形カップ状の支持部を設け、その円形カップ状の支持部に対して足場パイプの下端部を嵌入して支持する足場用のパイプ支持金具が従来から知られている(特許文献1)。ところで、この種の足場パイプは、一般的にその使用形態に応じて、例えば外径が42.7mmの小径タイプの鋼管や、外径が48.6mmの大径タイプの鋼管が広く使用されている。したがって、従来のパイプ支持金具の場合には、それらの足場パイプの外径に適合し得る複数種類のパイプ支持金具を用意しておき、使用する足場パイプの外径に応じてパイプ支持金具を選択的に使用する必要があった。
【特許文献1】実公平1−9884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑み、1種類のパイプ支持金具によって大小2種類のパイプに適合し得る、使い勝手のきわめて良好なパイプ支持金具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、本発明に係るパイプ支持金具では、パイプの下端部を受ける円形カップ状の支持部の中央部に、小径のパイプの内周面に係合可能な外径を有する円形断面からなる突起部を設けるとともに、前記支持部を形成する円形カップの内径を大径のパイプの外周面に係合可能な直径に設定し、それらの突起部の外周面又は円形カップの内周面に対して、大小2種類のパイプの下端部を選択的に係合させることにより安定的に支持し得るように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)円形カップ状の支持部の中央部に小径の円形断面からなる突起部を設けるという簡単な構成によって、その小径の円形断面からなる突起部の外周面あるいは円形カップ状の支持部の内周面に対して大小2種類のパイプの下端部を選択的に係合させることにより、2種類のパイプを簡便かつ安定的に支持することができる。
(2)円形カップ状の支持部と中央部の突起部とを一体的に形成することにより、その突起部のリブ的効果によって支持部全体を強化することが可能であり、延いてはパイプに対するより的確な支持が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、耐圧版やベタ基礎へのコンクリート打設用足場の支柱や、寒冷地における雪養生のための支柱などの支持に使用されるパイプ支持金具として広く適用することができる。前記円形カップ状の支持部の内周部の直径や、その支持部の中央部に設ける円形断面からなる突起部の外周面の直径の大きさは、使用する大小2種類のパイプの外径あるいは内径の大きさに応じて適宜設定することが可能である。なお、円形カップ状の支持部と中央部の突起部とを一体的に形成すれば、その突起部のリブ的効果によって支持部全体の強化が可能であり、延いてはパイプに対するより的確な支持が可能で、支持部の薄肉軽量化にも有効である。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の一実施例の全体を示した片側断面図である。図中、1は中空状の支持金具本体であり、下部には取付板2を備えており、その取付板2に形成した挿通孔を介して釘等の固定手段によって捨コンクリートなどの上面に固定できるように構成されている。この支持金具本体1の上部には小径部3が形成され、その内周面には雌ねじが形成されており、棒状の支持軸部4がその外周面に形成した雄ねじを前記小径部3の雌ねじに対して螺合することにより、高さ調整可能に支持されている。前記支持軸部4の上端部には円形カップ状の支持部5が固定されており、この円形カップ状の支持部5によってパイプの下端部を係合支持するように構成されている。なお、図中、6は支持軸部4に螺合したロック用ナット、7は止水材を示したものである。
【0008】
図2は円形カップ状からなる前記支持部5を拡大して示した断面図である。図示のように、円形カップ状の支持部5の中央部には、小径のパイプの内周面に係合可能な外径を有する円形断面からなる突起部8が形成されている。そして、その突起部8の外周面に対して小径のパイプ9の下端部内周面を係合させることによって小径パイプを安定的に支持する支持形態、あるいは前記支持部5を形成する円形カップの内周面に対して大径のパイプ10の下端部外周面を係合させることによって大径パイプを安定的に支持する支持形態のいずれかを選択することにより、大小2種類のパイプ9,10を選択的かつ安定的に支持し得るように構成した点で特徴を有している。なお、本実施例に係る支持部5では、その側面の対向した位置に回転工具挿通用の2個の貫通孔11を設けている。
【0009】
図3は円形カップ状の前記支持部5を低く調整した場合を示した片側断面図である。図示のように、本実施例では、円形カップ状の支持部5の高さを設置場所の形態に応じて図1や図3のように高さを調整することができる。その高さ調整は、ロック用ナット6を弛めた上、前記支持軸部4を回転して支持部5の高さを所期の高さに調整し、しかる後ロック用ナット6を支持金具本体1の上部に形成した小径部3の上端面に対して締付固定することによって可能である。
【0010】
次に、本発明に係るパイプ支持金具を適用する場合の施工手順に関して説明する。図4〜図6は円形カップ状の支持部5をコンクリート中に埋設したまま残す場合の施工手順の要点を示した作業説明図である。本例の場合には、図4に示したように、先ず支持金具本体1の下部に設けた取付板2を介して目的のパイプ支持金具を捨コンクリート12などの所定位置に固定する。しかる後、選択した小径あるいは大径のパイプの下端部を円形カップ状の支持部5に係合支持して足場パイプなどとして使用し(図面では大径のパイプ10を選択した場合を例示した。以下、同じ。)、適宜のタイミングで所期のコンクリート13を打設する。その後、図5及び図6に示したように、使用したパイプ10を支持部5から外して、その支持部5の内部にモルタル14等を充填することにより本作業が終了する。因みに、本例の場合には、コンクリート13の打設面の高さに応じて円形カップ状の支持部5の上端面の高さを一致するように予め調整しておくことになる。
【0011】
図7及び図8は円形カップ状の支持部5をコンクリート中に埋設せずに回収して再使用する場合の作業手順の要点を示した作業説明図である。本例の場合においても、支持金具本体1の下部に設けた取付板2を介して目的のパイプ支持金具を捨コンクリート12などの所定位置に固定し、しかる後、選択した小径あるいは大径のパイプの下端部を円形カップ状の支持部5に係合支持して足場パイプなどとして使用して、適宜のタイミングで所期のコンクリート15を打設する点では、前記施工例と同様である。ただ異なるところは、図7に示したように、円形カップ状の支持部5の高さをコンクリート15の打設面より上方に露出する高さに予め調整しておく点である。そして、本例の場合には、コンクリート15の打設作業の終了後、図8に示したように、支持軸部4を回転してその外周面に形成した雄ねじを前記小径部3の雌ねじから外して引抜くことにより、円形カップ状の支持部5を回収して再使用することになる。この場合、止水材7をロックナット6の近傍まで下げ、その上方の支持軸部4に対してプラスチックチューブ等の養生カバーを予め被覆しておけば、取外しが容易になる。因みに、ロック用ナット6による締付け状態は、この取外しの際の支持軸部4の回転を許容する程度のものとすることはいうまでもない。しかして、その後残った空間部にモルタル16等を充填することにより本作業が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例の全体を示した片側断面図である。
【図2】円形カップ状からなる支持部を拡大して示した断面図である。
【図3】同支持部を低く調整した場合を示した片側断面図である。
【図4】施工手順の要点を示した作業説明図である。
【図5】施工手順の要点を示した作業説明図である。
【図6】施工手順の要点を示した作業説明図である。
【図7】施工手順の要点を示した作業説明図である。
【図8】施工手順の要点を示した作業説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1:支持金具本体、2:取付板、3:小径部、4:支持軸部、5:支持部、6:ロック用ナット、7:止水材、8:突起部、9,10:パイプ、11:貫通孔、12:捨コンクリート、13:コンクリート、14:モルタル、15:コンクリート、16:モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの下端部を受ける円形カップ状の支持部の中央部に、小径のパイプの内周面に係合可能な外径を有する円形断面からなる突起部を設けるとともに、前記支持部を形成する円形カップの内径を大径のパイプの外周面に係合可能な直径に設定し、それらの突起部の外周面又は円形カップの内周面に対して、大小2種類のパイプの下端部を選択的に係合させることにより安定的に支持し得るように構成したことを特徴とするパイプ支持金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112050(P2010−112050A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284911(P2008−284911)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)