説明

パイロット型制御弁

【課題】弁開度を任意にきめ細かく調整でき、騒音低減、優れた応答性、動作安定性、制御特性等が得られるパイロット型制御弁。
【解決手段】流体が導入導出される弁室13が形成された弁本体10内に摺動自在に嵌挿されて、主弁口14を開閉する大径部20Aと小径部20Bとを有する断面逆凸字状の主弁体とを有する主弁5、及び、弁本体の上面開口を塞ぐように取り付けられて主弁体との間に背圧室33を画成する画成部材32と、主弁体に設けられたパイロット弁口27を開閉するパイロット弁体35とを有する電動式パイロット弁7を備えたパイロット型制御弁で、弁室と背圧室とを連通する均圧通路24が設けられ、主弁体が圧縮コイルばね25により常時開弁方向に付勢されており、パイロット弁体の開弁方向の移動に追従するように主弁体が開弁方向に移動するようにされ、また、主弁体の大径部20Aの外径Daが主弁口14の口径Dbの1.5〜3倍とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機等の冷凍サイクルに使用するのに好適な制御弁に係り、特に、弁開度(開口面積)を任意にかつきめ細かく調整することができるパイロット型制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一台の室外機に対して複数台の室内機を有するマルチエアコンにおいて、室外機と室内機との間に配在するのに好適な制御弁としては、下記特許文献1等にも見られるように、パイロット弁として電磁弁を用いたパイロット型制御弁が知られている。
【0003】
かかるパイロット型制御弁は、通常、主弁と電磁式パイロット弁とを備え、前記主弁は、冷媒が導入導出される弁室が形成される弁本体とこの弁本体内に摺動自在に嵌挿されて前記弁本体に設けられた主弁座に接離する主弁体とを有し、前記主弁体は、圧縮コイルばねにより常時上方(開弁方向)に付勢されている。また、前記電磁式パイロット弁(の画成部材)は、前記弁本体の上面開口を塞ぐようにその上部に密閉固定される。
【0004】
前記弁本体内において主弁体と主弁座との間に前記弁室が形成され、主弁体と前記電磁式パイロット弁(の画成部材)との間に背圧室が画成される。
【0005】
前記主弁体には、上下に貫通するようにパイロット通路が形成され、このパイロット通路の上端部に設けられたパイロット弁座(弁口)に前記電磁式パイロット弁の弁体が接離するようにされている。加えて、前記弁室と背圧室とを連通するように、前記主弁体あるいは弁本体等に均圧通路が形成されている。
【0006】
このような構成とされたパイロット型制御弁では、電磁式パイロット弁に通電されていないときには、パイロット弁内の閉弁ばねの付勢力により、パイロット弁の弁体がパイロット弁座を閉じるとともに、パイロット弁の弁体が主弁体を下方(閉弁方向)に押圧するので、主弁も閉状態にされる。したがって、このときは、弁室に導入された高圧の冷媒が出口へは導出されないが、この高圧冷媒が前記均圧通路を通じて背圧室に導入されるので、背圧室も高圧となり、主弁体が主弁座に強く押し付けられる。
【0007】
一方、前記閉状態から電磁式パイロット弁に通電されると、パイロット弁体が引き上げられてパイロット弁座から離れ、パイロット弁が開く。これにより、背圧室の冷媒がパイロット通路を通じて出口へ導出され、背圧室の圧力が低下して、圧縮コイルばねの付勢力等の主弁体を押し上げる力(開弁させる力)が主弁体を押し下げる力(閉弁させる力)に打ち勝ち、主弁体が押し上げられて、主弁が開く。
【0008】
【特許文献1】特開昭64−3177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記した如くの従来のパイロット型制御弁では、小口径のパイロット弁を開けば、それに応動して大口径の主弁を開くことができるので、大口径の主弁の開閉を小さな駆動力で行える等の利点を有しているが、パイロット弁として電磁弁を用いているので、次のような短所があった。すなわち、実質的に全閉状態と全開状態の二位置しかとることができず、弁開度(開口面積)をきめ細かく調整することはできない。また、主弁が開弁するまでパイロット弁の開口面積分しか開いていないので、弁全体の開口面積が小さく、均圧に時間がかかり、応答性が良いとは言えない。さらに、主弁が開弁するとき、開口面積が一気に増大するので、流量が急激に変化して耳障りな騒音が発生する。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、弁開度を任意にかつきめ細かく調整することができるとともに、騒音の発生を効果的に抑えることができ、さらに、優れた応答性、動作安定性、制御特性等が得られるパイロット型制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成すべく、本発明に係るパイロット型制御弁は、基本的には、電動モータによりパイロット弁体を開閉駆動し、このパイロット弁体に応動して主弁口を主弁体で開閉するようにされ、前記主弁体は、大径部と小径部とを有する断面逆凸字状のピストン型とされるとともに、前記パイロット弁体の開弁方向の移動に追従するように、前記主弁体が開弁方向に移動するようにされる。
【0012】
より具体的な好ましい態様では、本発明に係るパイロット型制御弁は、主弁と電動式パイロット弁とを備えたパイロット型制御弁であって、前記主弁は、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、該弁本体内に摺動自在に嵌挿されて前記弁本体に設けられた主弁口を開閉する大径部と小径部とを有する断面逆凸字状のピストン型の主弁体とを有し、電動式パイロット弁は、前記弁本体の上面開口を塞ぐように取り付けられて前記主弁体との間に背圧室を画成する画成部材と、前記主弁体に設けられたパイロット弁口を開閉するパイロット弁体とを有し、前記主弁には、前記弁室と前記背圧室とを連通する均圧通路が設けられるとともに、前記主弁体が圧縮コイルばねにより常時開弁方向に付勢されており、かつ、前記パイロット弁体の開弁方向の移動に追従するように、前記主弁体が開弁方向に移動するようにされる。
【0013】
好ましい態様では、前記主弁体の大径部の外径が前記主弁口の口径の1.5〜3倍とされる。すなわち、図6に、主弁を開弁させるために必要なパイロット弁(の弁口の)開口面積が例示されているように、主弁体の大径部の外径が主弁口の口径の1.5倍程度未満では、その倍率が小さいほど、必要とされるパイロット弁の開口面積が急勾配で大きくなる。これは前記倍率が小さいほど、より大きなパイロット弁、より大きな開弁駆動力が必要となることを意味している。また、前記倍率が3倍を越えると、必要とされるパイロット弁の開口面積はさほど小さくはならなくなる。したがって、前記倍率を3倍以上にしても、パイロット弁のサイズや開弁駆動力をさほど小さくすることはできないので、無駄である。
【0014】
他の好ましい態様では、前記電動式パイロット弁の開度を略一定に保った状態で、前記パイロット弁体及び主弁体が一緒に開弁方向に移動するようにされる。
【0015】
前記電動式パイロット弁は、好ましくは、キャンと、該キャンの内周に配在されるロータと、該ロータを回転駆動すべく前記キャンに外装されたステータと、前記ロータと前記パイロット弁体との間に配在され、前記ロータの回転を利用して前記パイロット弁体を軸方向に移動させる駆動機構と、を備える。
【0016】
他の好ましい態様では、前記主弁体の大径部の外径が前記ロータの外径より大きくされ、また、前記主弁口の口径は、好ましくは、前記パイロット弁口の口径の3〜9倍とされる。これにより、小口径のパイロット弁を開けば、それに応動して大口径の主弁を開くことができるので、大口径の主弁の開閉を小さな駆動力で行える。
上記に加え、本発明に係るパイロット型制御弁の好ましい態様では、前記弁本体は、前記主弁体が摺動自在に嵌挿される弁室筒体と、該弁室筒体の下部に設けられた段付き円筒状部を持つ弁座部材と、を有し、前記圧縮コイルばねは、前記主弁体の大径部に設けられた下向き突出部付き下端面部と前記弁座部材の段丘面部との間に介装されるとともに、その上下端部が前記主弁体の下向き突出部と前記弁座部材の円筒状部にそれぞれ外挿される。
【0017】
この場合、好ましくは、前記弁座部材の円筒状部に、前記圧縮コイルばねの下端部を固定保持する係止部がが設けられる。
【0018】
前記係止部は、好ましくは、前記圧縮コイルばねの下端部が螺合せしめられる雄ねじ状部で構成される。
【0019】
他の好ましい態様では、前記主弁体の下向き突出部に円錐面部が設けられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るパイロット型制御弁では、パイロット弁として、電磁式ではなく電動式のものを用いているので、パイロット弁に供給するパルス数等に応じて弁開度(開口面積)を滑らかに変化させることができるとともに、均圧時間を早くすることができる。そのため、弁開度(開口面積)を任意にかつきめ細かく調整することができるとともに、騒音の発生を効果的に抑えることができ、さらに、優れた応答性、動作安定性、制御特性等が得られる。また、主弁体の大径部の外径を主弁口の口径の1.5〜3倍とすることにより、パイロット弁を必要最小限の大きさとすることができ、その結果、弁開閉に必要とされる消費電力等を抑えることができるとともに、モータ部分を含めた弁全体のコンパクト化を図れ、さらには、主弁体の摺動が安定するので、より優れた制御特性及び動作安定性が得られる。
【0021】
上記に加え、弁座部材の円筒状部に、圧縮コイルばねの下端部を固定保持するための雄ねじ状部等の係止部が設けられることにより、圧縮コイルばね(の下端部)が前記弁座部材(の段丘面部等のばね受け部)から浮き上がる、前記円筒状部から抜け出る等の不所望な挙動を起こし難くなり、その結果、動作不良を確実に防止することができるとともに、一層優れた動作安定性、制御特性等が得られ、さらには、騒音低減化等も図ることができる。
【0022】
また、前記主弁体の下向き突出部に円錐面部を設けることにより、前記圧縮コイルばねの上端部が前記主弁体の大径部の下端面部(ばね受け部)から離れて下向き突出部上に乗り上げても、直ちに元の下端面部(ばね受け部)に戻すことができ、これにより、動作不良を一層確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のパイロット型制御弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るパイロット型制御弁の一実施形態を示す縦断面図である。
【0025】
図示実施形態のパイロット型制御弁1は、マルチエアコン等の空調機において、室外機と室内機との間に配在するのに好適なもので、型式としては電動式パイロット型とされ、主弁5と該主弁5の上側に設けられた電動式パイロット弁7とからなっている。
【0026】
前記主弁5は、穴付き底部を有する円筒状の弁室筒体11とこの弁室筒体11の底部穴に溶接等により密封固定された弁座部材12とからなる弁本体10を有し、該弁本体10には、弁室13が形成され、また、周側部には高圧の冷媒を弁室13に導入するための入口導管(継手)41が連結され、底部(弁座部材12)には弁室13から冷媒を導出するための出口導管(継手)42が連結され、さらに、弁本体10(弁室筒体11)の上面開口を塞ぐように、台座状の画成部材32が溶接等により密封固定されている。
【0027】
前記主弁5の弁座部材12には円錐面の主弁座14a付き主弁口14が設けられ、弁本体10(弁室筒体11)内における弁座部材12上には、断面逆凸字状のピストン型の主弁体20が摺動自在に嵌挿され、この主弁体20(の大径部20A)と前記画成部材32との間には背圧室33が画成されている。
【0028】
前記主弁体20には、その下端部(小径部20B)に前記主弁座14aに接離する主弁部21が設けられ、また、主弁体20の大径部20Aには、前記弁室13と背圧室33とを連通するように小径の均圧孔24が形成され、また、大径部20Aと弁室筒体11との間にはシール材70が配在されている。
【0029】
そして、前記主弁体20は、その大径部20Aの下端面部20aと前記弁座部材12との間に縮装された圧縮コイルばね25により常時開弁方向(上方)に付勢されている。詳細には、前記圧縮コイルばね25の上端部25aを受ける、前記主弁体20における大径部20Aの下端面部20a(上側ばね受け部)には、前記上端部25aの不所望な挙動を抑えるべく、該上端部25aが外挿される短円柱状の下向き突出部20bが設けられている。
【0030】
また、前記弁座部材12は、主弁座14a付き主弁口14が形成されている小径円筒部12Aと、前記出口導管(継手)42が内挿連結されている大径円筒部12Bと、前記弁室筒体11の下端部が連結される段付き鍔状部12Cとを有し、該段付き鍔状部12Cの段丘面部(上面)12cが前記圧縮コイルばね25の下端部25bを受ける下側ばね受け部とされ、前記圧縮コイルばね25の下端部25bの不所望な挙動を抑えるべく、前記小径円筒部12Aに前記下端部25bが外挿されている。
【0031】
さらに、前記主弁体20には、その中央を上下に貫通するようにパイロット通路28が形成されている。詳細には、前記主弁体20の上面部中央には、後述するパイロット弁体35の下端部に設けられたパイロット弁部36が接離するパイロット弁座部材22が圧入固定されている。パイロット弁座部材22は、パイロット弁座27a付きのパイロット弁口27が設けられ、このパイロット弁口27が前記パイロット通路28の上端部となっている。
【0032】
前記主弁5の上側に設けられた電動式パイロット弁7は、前記した画成部材32及びパイロット弁座27aに接離するパイロット弁部36を有する段付きニードル状のパイロット弁体35の他、前記画成部材32にその下端部が溶接により密封接合されたキャン34と、このキャン34の内周に所定の間隙をあけて配在されて、回転軸線O回りに回転せしめられるロータ55と、該ロータ55を回転駆動すべくキャン34に外装されたステータ50Aと、を備えている。
【0033】
前記ステータ50Aは、磁性材からなるヨーク51と、このヨーク51にボビン52を介して巻回される上下のステータコイル53,53と、樹脂モールドカバー56とからなり、ロータ55とステータ50Aによりステッピングモータ50が構成されている。
【0034】
前記キャン34は、ステンレス等の非磁性の金属板を素材として、深絞り加工等により天井を有する円筒状に形成されたもので、その下端部(開口端縁部)が、画成部材32の上部段差部に突き合わせ溶接により密封接合され、内部は気密状態に保たれている。
【0035】
前記パイロット弁体35(のパイロット弁部36)をパイロット弁座27aに接離させる駆動機構は、パイロット弁体35が摺動自在に嵌挿された筒状のガイドブッシュ37とその外周に配在された下方開口の筒状の弁体ホルダ40とに形成されるねじ送り機構60とされる。すなわち、前記ガイドブッシュ37は、画成部材32にその下端部が圧入(又は螺合)固定されるとともに、その中央部付近に雄ねじ部62が形成され、前記弁体ホルダ40は、ガイドブッシュ37の雄ねじ部(固定ねじ部)62に螺合する雌ねじ部(移動ねじ部)61が形成され、また、その天底中央部にパイロット弁体35の上部小径部が相対回転及び相対移動可能に挿通せしめられている。パイロット弁体35の上部小径部の上端部は、弁体ホルダ40の天底上面(凹部)に乗せられたナット44に圧入固定されている。
【0036】
また、前記パイロット弁体35は、弁体ホルダ40の天底とパイロット弁体35の中間段差部との間に縮装された緩衝用のコイルばね38によって常時下方に付勢されている。ガイドブッシュ37の側面には背圧室33とキャン34内の均圧を図る均圧孔37aが形成されている。
【0037】
弁体ホルダ40の天底上には、コイルばねからなる復帰ばね45が設けられている。復帰ばね45は、ガイドブッシュ37の固定ねじ部62と弁体ホルダ40の移動ねじ部61との螺合が外れたときに、キャン34の天井に当接して固定ねじ部62と移動ねじ部61との螺合を復帰させるように働く。
【0038】
弁体ホルダ40とロータ55とは支持リング43を介して結合されており、支持リング43に弁体ホルダ40の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ55、支持リング43及び弁体ホルダ40が一体的に連結されている。
【0039】
前記ガイドブッシュ37には、ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)66が固着され、弁体ホルダ40にはストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)67が固着されている。
【0040】
そして、本実施形態では、前記主弁体20の大径部20Aの外径Daは、主弁口14の口径Dbの1.5〜3倍とされるとともに、前記ロータ55の外径Dcよりも大きくされ、また、主弁口14の口径は、パイロット弁口27の口径の3〜9倍とされ、パイロット弁口27の口径は、均圧孔24の孔径(最小部)より大きくされている。
【0041】
ここで、前記のように、主弁体20の大径部20Aの外径Daが主弁口14の口径Dbの1.5〜3倍とされている理由を説明する。すなわち、図6に、主弁5を開弁させるために必要なパイロット弁7(の弁口27の)開口面積が例示されているように、主弁体20の大径部20Aの外径Daが主弁口14の口径Dbの1.5倍程度未満では、その倍率が小さいほど、必要とされるパイロット弁の開口面積が急勾配で大きくなる。これは前記倍率が小さいほど、より大きなパイロット弁、より大きな開弁駆動力が必要となることを意味している。また、前記倍率が3倍を越えると、必要とされるパイロット弁の開口面積はさほど小さくはならなくなる。したがって、前記倍率を3倍以上にしても、パイロット弁のサイズや開弁駆動力をさほど小さくすることはできないので、無駄である。
【0042】
また、主弁口14の口径は、パイロット弁口27の口径の3〜9倍とされることにより、小口径のパイロット弁7を開けば、それに応動して大口径の主弁5を開くことができるので、大口径の主弁5の開閉を小さな駆動力で行える。
【0043】
前記のような構成とされた本実施形態の電動式パイロット型のパイロット型制御弁1にあっては、前記主弁5が閉状態(図1、図2に示されるように、主弁体20の主弁部21が主弁座14aに着座している状態)にあり、かつ、電動式パイロット弁7が開状態(パイロット弁体35がパイロット弁座27aから離れている状態)のとき、ステッピングモータ50(ステータコイル53,53)に例えば順位相でパルス供給を行って、ロータ55をガイドブッシュ37に対して一方向に回転させると、ガイドブッシュ37の固定ねじ部62と弁体ホルダ40の移動ねじ部61とのねじ送りにより、弁体ホルダ40が下方に移動してパイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aに着座圧接して閉状態となる。
【0044】
この時点では、上ストッパ体67は未だ下ストッパ体66に当接しておらず、パイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aに着座したまま弁体ホルダ40はさらに回転下降する。このときは、パイロット弁体35に対して弁体ホルダ40が下降するため、緩衝用のコイルばね38が圧縮せしめられることにより弁体ホルダ40の下降力は吸収される。その後、ロータ55がさらに回転して弁体ホルダ40が下降すると、上ストッパ体67が下ストッパ体66に衝接し、ステータコイル53,53に対するパルス供給が続行されても弁体ホルダ40の下降は強制的に停止される。
【0045】
上記のように主弁5及び電動式パイロット弁7が閉状態(図1に示される状態)にあるときには、入口導管41から弁室13に導入された高圧の冷媒は、均圧孔24を介して背圧室33に導入され、背圧室33が高圧となるので、主弁体20の主弁部21が主弁座14aに強く押し付けられる。このときの、当該パイロット型制御弁1における弁開度=開口面積(主弁口14の実効開口面積+パイロット弁口27の実効開口面積)は、縦軸に開度=開口面積、横軸にパルス数(ロータ55の回転量)をとった図5に示される如くに、0(パルス数が0からTaまで)となり、弁室13から出口導管42へ流出する冷媒流量も0となる。
【0046】
前記主弁5及び電動式パイロット弁7が閉状態(図1に示される状態)にあるときから、ステッピングモータ50(ステータコイル53,53)に例えば逆位相でパルス供給を行って、ロータ55をガイドブッシュ37に対して前記とは逆方向に回転させると、ガイドブッシュ37の固定ねじ部62と弁体ホルダ40の移動ねじ部61とのねじ送りにより、図2及び図5に示される如くに、パルス数(回転量)がTaとなったとき、弁体ホルダ40の上方移動に伴ってパイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aから離れ始めてパイロット弁7が開き始め、図5に示される如くに、パルス数がTbになるまで、当該パイロット型制御弁1における弁開度=開口面積が徐々に微増して、背圧室33の冷媒がパイロット通路28を通じて出口導管42に流出し、背圧室33の圧力が徐々に減圧される。
【0047】
そして、パルス数(回転量)がTbになると、図2に示される如くに、パイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aから所定距離αだけ離れてパイロット弁口27の実効開口面積(当該パイロット型制御弁1における開口面積)がSaとなり、圧縮コイルばね25のばね力等の主弁体20を押し上げる力(開弁させる力)が主弁体20を押し下げる力(閉弁させる力)に打ち勝ち、主弁体20が押し上げられて、主弁部21が主弁座14aから離れ始め、主弁5が開き始める。
【0048】
続いて、パルス数をさらに増加させていくと、パルス数がTcになるまで、図3に示される如くに、パイロット弁体35の上昇移動に追従するように、主弁体20が押し上げられる。詳細には、パイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aから前記所定距離αだけ離れた状態、つまり、電動式パイロット弁7の開度を略一定に保った状態で、前記パイロット弁体35及び主弁体20が一緒に上方(開弁方向)に移動する。これにより、図5に示される如くに、パルス数(回転量)がTbからTcの間は、当該パイロット型制御弁1における開口面積(開度)が一定の勾配をもって滑らかに増加していく。すなわち、本実施形態では、パルス数がTbからTcになるまでは、パイロット弁体35のパイロット弁部36がパイロット弁座27aから所定距離αだけ離れた状態を維持したまま、パイロット弁体35と主弁体20とがパルス数(回転量)に対して同距離ずつ上昇するように、各部の寸法仕様等が設定されている。
【0049】
そして、パルス数がTcになると、図4に示される如くに、主弁体20の上面ストッパ部29が画成部材32の下面に設けられた固定ストッパ39に接当し、主弁体20の上昇が阻止される。したがって、パルス数がTcを越えても、当該パイロット型制御弁1における弁開度=開口面積は、パルス数がTcのときのSbよりは大きくならず、このときの開度(最大開度)を維持することになる。
【0050】
以上のように、本実施形態のパイロット型制御弁1では、パイロット弁として、電磁式ではなく電動式のものを用いているので、パイロット弁7に供給するパルス数に応じて弁開度(開口面積)を滑らかに変化させることができるとともに、均圧時間を早くすることができる。そのため、弁開度(開口面積)を任意にかつきめ細かく調整することができるとともに、騒音の発生を効果的に抑えることができ、さらに、優れた応答性、動作安定性、制御特性等が得られる。また、主弁体20の大径部20Aの外径Daを主弁口14の口径Dbの1.5〜3倍とすることにより、パイロット弁7を必要最小限の大きさとすることができ、その結果、弁開閉に必要される消費電力等を抑えることができるとともに、ステッピングモータ50部分を含めた弁全体のコンパクト化を図れ、さらには、主弁体20の摺動が安定するので、より優れた制御特性及び動作安定性が得られる。
【0051】
次に、本実施形態のパイロット型制御弁1を空調機の冷凍サイクルに組み込んだ例を図7を参照しながら説明する。ここで、空調機においては、暖房時に室外熱交換器に霜が付くと、暖房性能が低下するため、霜取りのため、デフロスト運転が不可欠であるが、デフロスト運転時は、暖房運転ができないため、室温が低下し、快適性が損なわれる。また、この種の冷凍サイクルでは、従来より流路切換弁として四方弁が使用されているが、通常の四方弁では、冷媒音の解消のため、コンプレッサを停止し、高低圧の均圧をとってから暖房→デフロスト、デフロスト→暖房の切換を行っているため、その切換に時間がかかる。したがって、均圧待ち時間を含めたデフロスト時間の短縮が望まれるところであり、かかる要望に応えるべく、図7に示される冷凍サイクル100では、前記四方弁に代えて本実施形態のパイロット型制御弁1が使用されている。
【0052】
図7に示される冷凍サイクル100は、コンプレッサ110と、室内熱交換器130と、室外熱交換器150と、電動弁(膨張弁)140と、前記実施形態のパイロット型制御弁1(符号210、220)と、三方弁160とが備えられており、前記パイロット型制御弁210、220と三方弁160とで従来の冷凍サイクルに用いられていた四方弁の役目を果たすようになっている。前記パイロット型制御弁210、220においては、ポートa、ポートbがそれぞれ前記実施形態のパイロット型制御弁1における入口導管(継手)41、出口導管(継手)42となっており、また、三方弁160は、二つの入口ポートc、eと出口ポートdを有している(なお、この三方弁160自体は、本発明とは直接関係がないので、その詳細な説明はここでは省略する。三方弁160の詳細は、必要なら特開2004-92802号公報等を参照されたい)。
【0053】
図7に示される冷凍サイクル100では、冷房時の冷媒の流れが実線矢印で示され、暖房時の冷媒の流れが破線矢印で示されている。
【0054】
すなわち、 (1)暖房時には、パイロット型制御弁210:開、パイロット型制御弁220:閉とされ、三方弁160のポートc→ポートd流れとなる。(2)暖房からデフロストへ切換途中1には、パイロット型制御弁210:開、パイロット型制御弁220:徐々に開弁し全開させる。このときには、三方弁160のポートeの圧力が上昇し、ポートcとポートeが同じ圧力となり、ポートc→ポートd、ポートe→ポートd流れが生じる。(3)暖房からデフロストへ切換途中2には、パイロット型制御弁210:徐々に閉弁し全閉させ、パイロット型制御弁220:開とする。このときには、三方弁160のポートcの圧力が低下することで、ポートe→ポートd流れとなる。(4)デフロスト運転時(冷媒の流れは冷房と同じ)は、パイロット型制御弁210:閉、パイロット型制御弁220:開とし、徐々に閉弁し全閉させる。(5)デフロストから暖房へ切換途中1には、パイロット型制御弁210:徐々に開弁し全開させ、パイロット型制御弁220:開とする。このときは、ポートcの圧力が上昇し、ポートeとポートcが同じ圧力となり、ポートe→ポートd、ポートc→ポートd流れが生じる。(6)デフロストから暖房へ切換途中2には、パイロット型制御弁210:開、パイロット型制御弁220:徐々に開弁し全開させる。このときには、ポートeの圧力が低下することでポートc→ポートd流れとなる。
【0055】
このように、前記実施形態のパイロット型制御弁1(210、220)を使用することにより、弁の開閉を任意に調整、すなわち、開口面積=流量を徐々に変化させることができるので、コンプレッサ110を停止させることなく、暖房→デフロスト、デフロスト→暖房の切換が可能となり、冬場のデフロスト時間の短縮が可能となる。
【0056】
次に、前記した図1〜図4に示されるパイロット型制御弁1の改良例を、図8(A)、(B)を参照しながら説明する。なお、図8に示される改良例のパイロット型制御弁1’において、前記パイロット型制御弁1の各部に対応する部分には同一の符号を付して重複説明を省略し、以下においては相違点を重点的に説明する。
【0057】
図8に示されるパイロット型制御弁1’は、前記実施形態のパイロット型制御弁1に対し、圧縮コイルばね25の上端部25a及び下端部25bの不所望な挙動を抑えて動作不良を起こし難くしたものである。
【0058】
すなわち、本改良例では、前記した実施形態と同様に、前記弁座部材12の段丘面部12cは、前記圧縮コイルばね25の下端部25bを受ける下側ばね受け部とされるとともに、該下端部25bは、その不所望な挙動を抑えるべく、前記弁座部材12の小径円筒部12A’に所定の態様(後述)で外挿されており、また、前記主弁体20の大径部20Aの下端面部20a(上側ばね受け部)には、前記圧縮コイルばね25の上端部25aの不所望な挙動を抑えるべく、該上端部25aが外挿される所定形状(後述)の下向き突出部20b’(前記実施形態の下向き突出部20bは短円柱状)が設けられている。
【0059】
そして、本改良例では、図8(B)を参照すればよくわかるように、前記圧縮コイルばね25の下端部25bが外挿される前記弁座部材12の小径円筒部12A’の外周部に、前記下端部25bを固定保持する係止部としての、前記下端部25bが螺合せしめられる2〜3ピッチの雄ねじ状部12dが設けられている。
【0060】
また、前記主弁体20の下向き突出部20b’には、短円柱状部20dに連なって円錐面部20cが設けられている。
【0061】
このように、弁座部材12の小径円筒部12A’外周部に、圧縮コイルばね25の下端部25bを固定保持するための雄ねじ状部12dが設けられることにより、圧縮コイルばね25の下端部25bが前記弁座部材12の段丘面部12cから浮き上がる、前記小径円筒部12A’から抜け出る等の不所望な挙動を起こし難くなり、その結果、動作不良を確実に防止することができるとともに、一層優れた動作安定性、制御特性等が得られ、さらには、騒音低減化等も図ることができる。
【0062】
また、前記主弁体20の下向き突出部20b’に円錐面部20cが設けられていることにより、前記圧縮コイルばね25の上端部25aが前記主弁体20の大径部20Aの下端面部20a(ばね受け部)から離れて下向き突出部20b’上に乗り上げても、直ちに元の下端面部20a(ばね受け部)に戻すことができ、これにより、動作不良を一層確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るパイロット型制御弁の一実施形態を示す縦断面図であり、パイロット弁:閉状態、主弁:閉状態を示している。
【図2】図1に示されるパイロット型制御弁の動作説明に供される縦断面図であり、パイロット弁:開状態、主弁:閉状態を示している。
【図3】図1に示されるパイロット型制御弁の動作説明に供される縦断面図であり、パイロット弁:開状態、主弁:開状態(小開度)を示している。
【図4】図1に示されるパイロット型制御弁の動作説明に供される縦断面図であり、パイロット弁:開状態、主弁:開状態(最大開度)を示している。
【図5】図1に示されるパイロット型制御弁の動作説明に供されるグラフ。
【図6】主弁を開弁させるために必要なパイロット弁の開口面積の説明に供されるグラフ。
【図7】図1に示されるパイロット型制御弁を空調機の冷凍サイクルに組み込んだ例を示す回路図。
【図8】図1〜図4に示されるパイロット型制御弁の改良例を示し、(A)は全体の縦断面図、(B)は(A)のZ部の詳細を示す拡大図。
【符号の説明】
【0064】
1 パイロット型制御弁
5 主弁
7 電動式パイロット弁
10 弁本体
12 弁座部材
12A 小径円筒部
12B 大径円筒部
12C 段差鍔状部
12c 段丘面部(下側ばね受け部)
12d 雄ねじ状部(係止部)
13 弁室
14 主弁口
14a 主弁座
20 主弁体
20A 大径部
20B 小径部
20a 下端面部(上側ばね受け部)
20b 下向き突出部
20c 円錐面部
24 均圧孔
25 圧縮コイルばね
27 パイロット弁口
27a パイロット弁座
28 パイロット通路
32 画成部材
33 背圧室
35 パイロット弁体
40 弁体ホルダ
50 ステッピングモータ
55 ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータによりパイロット弁体を開閉駆動し、このパイロット弁体に応動して主弁口を主弁体で開閉するようにされたパイロット型制御弁であって、
前記主弁体は、大径部と小径部とを有する断面逆凸字状のピストン型とされるとともに、前記パイロット弁体の開弁方向の移動に追従するように、前記主弁体が開弁方向に移動するようにされていることを特徴とするパイロット型制御弁。
【請求項2】
主弁と電動式パイロット弁とを備えたパイロット型制御弁であって、
前記主弁は、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、該弁本体内に摺動自在に嵌挿されて前記弁本体に設けられた主弁口を開閉する大径部と小径部とを有する断面逆凸字状のピストン型の主弁体と、を有し、
前記電動式パイロット弁は、前記弁本体の上面開口を塞ぐように取り付けられて前記主弁体との間に背圧室を画成する画成部材と、前記主弁体に設けられたパイロット弁口を開閉するパイロット弁体と、を有し、
前記主弁には、前記弁室と前記背圧室とを連通する均圧通路が設けられるとともに、前記主弁体が圧縮コイルばねにより常時開弁方向に付勢されており、かつ、前記パイロット弁体の開弁方向の移動に追従するように、前記主弁体が開弁方向に移動するようにされていることを特徴とするパイロット型制御弁。
【請求項3】
前記主弁体の大径部の外径が前記主弁口の口径の1.5〜3倍とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパイロット型制御弁。
【請求項4】
前記電動式パイロット弁の開度を略一定に保った状態で、前記パイロット弁体及び主弁体が一緒に開弁方向に移動するようにされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパイロット型制御弁。
【請求項5】
前記電動式パイロット弁は、キャンと、該キャンの内周に配在されるロータと、該ロータを回転駆動すべく前記キャンに外装されたステータと、前記ロータと前記パイロット弁体との間に配在され、前記ロータの回転を利用して前記パイロット弁体を軸方向に移動させる駆動機構と、を備えていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のパイロット型制御弁。
【請求項6】
前記主弁体の大径部の外径が前記ロータの外径より大きくされていることを特徴とする請求項5に記載のパイロット型制御弁。
【請求項7】
前記主弁口の口径は、前記パイロット弁口の口径の3〜9倍とされていることを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のパイロット型制御弁。
【請求項8】
前記弁本体は、前記主弁体が摺動自在に嵌挿される弁室筒体と、該弁室筒体の下部に設けられた段付き円筒状部を持つ弁座部材と、を有し、前記圧縮コイルばねは、前記主弁体の大径部に設けられた下向き突出部付き下端面部と前記弁座部材の段丘面部との間に介装されるとともに、その上下端部が前記主弁体の下向き突出部と前記弁座部材の円筒状部にそれぞれ外挿されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のパイロット型制御弁。
【請求項9】
前記弁座部材の円筒状部に、前記圧縮コイルばねの下端部を固定保持する係止部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のパイロット型制御弁。
【請求項10】
前記係止部は、前記圧縮コイルばねの下端部が螺合せしめられる雄ねじ状部で構成されていることを特徴とする請求項9に記載のパイロット型制御弁。
【請求項11】
前記主弁体の下向き突出部に円錐面部が設けられていることを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載のパイロット型制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−64301(P2008−64301A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333412(P2006−333412)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】