説明

パウダーコーティングされたキャリア

【課題】粒径、トナーの電荷または他の測定基準に悪影響を及ぼさずに、低ζ電位、高ラテックス安定性を示す、キャリアのためのラテックス樹脂を調製する方法を提供する。
【解決手段】界面活性剤を分割することを利用し、コーティングされたキャリアのためのラテックス樹脂を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、キャリア樹脂に関し、具体的には、保存期限が長いコーティングされたキャリアを製造する方法に関し、この方法によって、ラテックスの粒径に影響を及ぼすことなく界面活性剤の保持量が増え、ζ(ゼータ)電位が下がる。また、本開示は、このキャリアとトナーとを含む現像剤、この現像剤を含むデバイス、この現像剤を含む画像化デバイスの構成要素、この現像剤を含む画像化デバイス、画像などに関する。
【背景技術】
【0002】
二成分現像剤は、トナーとキャリアとを含む。キャリアは、例えば、樹脂でコーティングされることが多い。EAトナー粒子とともに添加剤(例えば、界面活性剤)を使用すること(例えば、アクリル酸脂環式エステルおよびアミノによって帯電したモノマーキャリアと、ポリエステル樹脂トナーとの組み合わせ)は、保存期限の分野を含め、最適なトナー性能を実現するのに重要な場合がある。したがって、現像剤を作成する際のキャリアを向上させることが依然として必要なままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、コーティング調製中に界面活性剤の分割を利用し、二成分現像剤用コーティングキャリアのためのラテックス樹脂を調製する方法を記載し、この樹脂は、トナーの電荷または他の測定基準に悪影響を及ぼすことなく、低ζ電位、高ラテックスエマルション安定性、大きなラテックス粒径、またはこれらを合わせて示す。
【0004】
混合容器中で、少なくとも1種類の第1の界面活性剤の溶液を調製することと、これとは別に、少なくとも1種類の第2の界面活性剤および少なくとも1種類のラテックス樹脂生成調合物を一緒に混合して混合物を作成することと、この混合物の一部を混合容器に移し、種ラテックスを作成することと、場合により、この種に開始剤を加えることと、混合容器中で、混合物の残りの部分を合わせることと、混合容器中で合わせた混合物から粒子を作成することとを含む、ラテックス樹脂を調製する方法が開示される。界面活性剤を何回かに分けて加えることにより、界面活性剤を分割して反応混合物に複数回に分けて入れることなく調製されたラテックス樹脂と比較して、ラテックス樹脂の粒径に影響を及ぼすことなく、界面活性剤の保持量が増える。
【0005】
上のラテックス樹脂およびキャリアを接触させ、ここで、キャリアが、コア(例えば、フェライトコア)と場合により顔料(例えば、カーボンブラックのような黒色顔料)と場合によりこのコアの上にベースコーティングを備えていてもよいことと、場合により、樹脂をキャリアコアに融合させることと、場合により、融合したコアおよび樹脂を加熱し、コアの上に樹脂を流すことと、得られたコーティングされたキャリアを冷却することと、冷却したキャリアを回収することとを含む、コーティングされた粒子を調製する方法が開示される。
【0006】
上のコーティングされたキャリアとトナーとを含む現像剤が開示され、ここで、コーティングされたキャリアは、少なくとも1ヶ月間安定である。いくつかの実施形態では、現像剤は、超低融点現像剤である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、界面活性剤の量を分割し、樹脂生成中に、望ましい粒径が得られるように何段階かにわけて導入し、一方、ζ電位は、エマルションの安定な分散物および保存期限を与えるのに十分な値であるような半連続乳化重合を記載している。1種類または複数の界面活性剤を用いることができる。ζ電位は、電圧として測定されることが多い。この電圧は、負の値のことがあり、この場合、電位が低いほど、低い負の電圧値をもつ。したがって、−30mVは、−20mVよりも低い。また、ζ電位は、正の値であってもよい。知られているように、電位は、ゼロ基準点として用いられることが多く、本質的に、符号にかかわらず、測定基準の絶対値である。このように、いくつかの実施形態では、電位が大きいことは、ゼロからの距離が離れていることでもあり、例えば、上の例では、−30mVは、−20mVよりも電位が大きい。
【0008】
第1の混合容器中、水および少なくとも1種類の第1の界面活性剤の溶液を準備することと、水および少なくとも1種類の第2の界面活性剤および少なくとも1種類のラテックス樹脂作成調合物(例えば、重合させると樹脂を形成するモノマー)を合わせ、混合物を作成することと、この混合物の一部を混合容器に移し、種ラテックスを作成することと、場合により、この種を作成した混合容器に開始剤を加えることと、混合容器に、混合物の残りの部分を入れ、粒子を作成することと、場合により、この粒子を乾燥させて粉末形態にすることとを含み、重合反応に界面活性剤を何回かに分けて加えることにより、界面活性剤を分割して粒子生成のさまざまな段階で入れることなく調製されたラテックス樹脂と比較して、ラテックス樹脂の粒径に影響を及ぼすことなく、界面活性剤の保持量が増える、ラテックス樹脂を調製する方法が開示される。
【0009】
本開示の目的のために、「キャリア樹脂」または「キャリアラテックス」は、コア粒子表面の一部に固着するポリマーである。
【0010】
「超低融点」トナーまたは現像剤は、融点が約120℃未満、約110℃未満、約100℃未満のものである。
【0011】
本明細書で使用する場合、量と組み合わせて用いられる修飾語句「約」は、述べられている値を含み、その内容によって示されている意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。ある範囲に関して用いられる場合、修飾語句「約」は、2つの終点値の絶対値によって定義される範囲も開示しているものと考えるべきである。例えば、「約2〜約4」の範囲は、「2〜4」の範囲も開示している。
【0012】
「リファレンスキャリアに対して負に帯電可能な負の添加剤」は、添加剤が存在する状態、存在しない状態で、トナーの摩擦帯電を決定することによって測定されるトナー表面に対し、添加剤が負の帯電性をもつことを意味する。同様に、「キャリアに対して正に帯電可能な正の添加剤」は、添加剤が存在する状態、存在しない状態で、トナーの摩擦帯電を決定することによって測定されるトナー表面に対し、添加剤が正の帯電性をもつことを意味する。
【0013】
キャリアに対して負に帯電可能な負の添加剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子または任意の粒径の小さな粒子(例えば、任意の適切な技術によって決定される容積平均粒径が約7〜約100nm、例えば、ポリマー微小球を含む)が挙げられ、これらは、場合により、粒子を、摩擦電気の接点でキャリアに対し負に帯電可能にする組成物で処理されている。処理する物質は、例えば、フルオロシラン、他のハロゲン含有有機シラン、シラザン、シロキサンなどであってもよい。
【0014】
種々の適切な固体コア材料を本開示のキャリアおよび現像剤に用いてもよい。特徴的なコアの性質としては、トナー粒子が正電荷または負電荷を獲得することができること、電子写真式画像化装置に存在する現像剤容器中で、望ましい流動特性を可能にすることが挙げられる。コアの他の望ましい性質としては、例えば、磁気ブラシ現像プロセスで磁気ブラシを生成可能な適切な磁気特性、望ましい機械エージング特性、キャリアおよび適切なトナーを含む現像剤の高い電気伝導性を可能にする望ましい表面形状が挙げられる。
【0015】
使用可能なキャリアコアの例としては、鉄および/または鋼鉄、例えば、原子状鉄または鋼鉄粉末(Hoeganaes Corporation(スウェーデン)またはPomaton S.p.A(イタリア));フェライト、例えば、約11%の酸化銅と、約19%の酸化亜鉛と、約70%の酸化鉄を含有するCu/Zn−フェライト(D.M.Steward CorporationまたはPowdertech Corporation)、Ni/Zn−フェライト(Powdertech)、例えば、約14%酸化ストロンチウムと、約86%の酸化鉄とを含有するSr(ストロンチウム)−フェライト(Powdertech)およびBa−フェライト;マグネタイト(Hoeganaes);ニッケル、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切なキャリアコアとしては、顆粒状ジルコン、顆粒状ケイ素、ガラス、二酸化ケイ素、これらの組み合わせなどを挙げることができる。いくつかの実施形態では、適切なキャリアコアは、平均粒径が、例えば、直径で約20μm〜約400μmであってもよい。
【0016】
得られたポリマー粒子を用い、種々の既知の方法によって任意の既知の種類のキャリアコアをコーティングし、次いで、このキャリアを既知のトナーに組み込み、電子写真印刷のための現像剤を作成する。
【0017】
本開示のキャリアは、コアを含んでいてもよく、このコアは、粒径が約20μm〜約100μmであり、約0.5重量%〜約10重量%の本開示のポリマーコーティングを含有し、場合により、黒色顔料のような顔料を含んでいてもよい。
【0018】
コア金属のポリマーコーティングは、少なくとも1種類のアクリル酸脂環式エステルと、場合により、酸性アクリレートモノマーと、場合により、顔料(例えば、カーボンブラックのような黒色顔料)とを含んでいてもよい、本明細書に教示するようなラテックスを含む。ポリマーコーティングを作成するときに利用可能な適切なアクリル酸脂環式エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロプロピル、アクリル酸シクロブチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソボルニル、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0019】
電荷制御剤としては、限定されないが、酸性アクリレートおよびジアルキルアミノアクリレートが挙げられる。適切な酸性アクリレートとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。適切なジアルキルアミノアクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0020】
アクリル酸環状エステルを電荷制御剤と組み合わせる場合、アクリル酸環状エステルは、キャリアコアのポリマーコーティングとして利用されるコポリマー中、コポリマーの約95重量%〜約99.9重量%の量で存在していてもよい。電荷制御剤は、このようなコポリマー中、コポリマーの約0.1重量%〜約5重量%の量で存在していてもよい。
【0021】
ポリマーコーティングを製造する方法は、当業者の技術範囲にあり、乳化重合を含む。
【0022】
重合プロセスにおいて、適切な反応器(例えば、混合容器)中、反応剤を水に加えてもよい。適切な量の出発材料を、場合により、溶媒に溶解してもよく、任意要素の開始剤をこの溶液に加え、少なくとも1種類の界面活性剤と接触させてエマルションを作成してもよい。コポリマーをエマルションの状態で作成してもよく、次いで、これを回収し、キャリア粒子のためのポリマーコーティングとして使用してもよい。
【0023】
溶媒を利用する場合、適切な溶媒としては、限定されないが、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、四塩化炭素、クロロベンゼン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘプタン、ヘキサン、塩化メチレン、ペンタン、これらの組み合わせなどを含む有機溶媒が挙げられる。
【0024】
ラテックスを、界面活性剤を含有する水相中、場合により、不活性気体(例えば、窒素)の下で調製してもよく、水および界面活性剤を含有する水相を、重合中に後でさらなる界面活性剤を加えるように、分割する。樹脂と共に利用してラテックス分散物を作成することが可能な界面活性剤は、固形分の約0.01〜約15重量%、いくつかの実施形態では、約0.1〜約10重量%、約0.5重量%〜約8重量%の量のイオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤であってもよい。
【0025】
利用可能なアニオン系界面活性剤としては、サルフェートおよびスルホネート、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルサルフェートおよびジアルキルベンゼンアルキルスルホネート、酸、例えば、Aldrichから入手可能なアビエチン酸、第一工業製薬株式会社から得られるNEOGEN R(商標)およびNEOGEN SC(商標)TM、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切なアニオン系界面活性剤としては、DOWFAX(商標)TM 2A1(Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート)およびテイカ株式会社(日本)製のTAYCA POWER BN2060が挙げられ、これらは、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0026】
カチオン系界面活性剤の例としては、限定されないが、アンモニウム類、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、C12,C15,C17−トリメチルアンモニウムブロミド、これらの組み合わせなどが挙げられる。他のカチオン系界面活性剤としては、臭化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、Alkaril Chemical Companyから入手可能なMIRAPOLおよびALKAQUAT、Kao Chemicalsから入手可能なSANISOL(塩化ベンザルコニウム)、これらの組み合わせなどが挙げられる。適切なカチオン系界面活性剤としては、花王株式会社から入手可能なSANISOL B−50が挙げられ、これは、主に、ベンジルジメチルアルコニウムクロリドである。
【0027】
非イオン系界面活性剤の例としては、限定されないが、アルコール類、酸類およびエーテル類、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、これらの組み合わせなどが挙げられる。Rhone−Poulencから市販されている界面活性剤、例えば、IGEPAL CA−210(商標)、IGEPAL CA520(商標)、IGEPAL CA720(商標)、IGEPAL CO−890(商標)、IGEPAL CO−720(商標)、IGEPAL CO−290(商標)、IGEPAL CA−210(商標)、ANTAROX 890(商標)およびANTAROX 897(商標)を利用してもよい。
【0028】
特定の界面活性剤またはその組み合わせの選択、および使用するそれぞれの量は、当業者の技術範囲内にある。半連続重合プロセスにおいて、合計量の界面活性剤を、種作成段階と粒子成長段階に分割することができる。しかし、界面活性剤を2点より多い時間点で加えてもよく、いくつかの実施形態では、継続的かつ持続的に、反応混合物に秤量して加えてもよい。
【0029】
ラテックスの重合によって、ラテックスの粒径に影響を及ぼすことなく、界面活性剤の保持量が増え、約−55mVより低いか、約−60mVより低いか、約−65mVより低いか、約−70mVより低いζ電位を含め、安定な範囲のζ電位を示してもよい。このことは、ラテックス調製中に複数の時間点(例えば、種粒子を作成しているとき、および/または種粒子を作成した後)でさらなる界面活性剤を加えることができるように、界面活性剤の量を分割することによって達成することができる。粒径は、乳化重合の初期段階に作られた種粒子の数によって決定されてもよい。したがって、二次核形成が存在しない限り、トナーの帯電、コーティング効率、キャリアの導電性などを含む測定基準に悪い影響を与えることなく、ζ電位を下げ、ラテックスの安定性を高めることによって、ラテックスの安定性を高めるために多くの界面活性剤をプロセスの後半で加えてもよい。
【0030】
界面活性剤を何回かに分割し、粒子生成中の複数の時間点で加えることなく、ラテックス樹脂を調製することに比べ、界面活性剤の保持量は、少なくとも約30%、少なくとも約70%、少なくとも約130%、少なくとも約200%またはそれ以上増えてもよい。
【0031】
ポリマーコーティングを作成するときに利用されるラテックスを作成するために、開始剤を加えてもよい。適切な開始剤の例としては、水溶性開始剤(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム)、有機ペルオキシドおよびアゾ化合物を含む有機可溶性開始剤、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0032】
開始剤を、適切な量で、例えば、モノマーの約0.1〜約8重量%の量で加えてもよい。
【0033】
エマルションを作成するとき、出発物質、第1の界面活性剤および水、任意要素の溶媒および任意要素の開始剤を、当業者の技術常識の範囲内にある任意の手段を利用して合わせてもよい。反応混合物を、温度を約10℃〜約100℃に維持しつつ(この範囲から外れた温度を利用してもよい)、約1分〜約72時間混合してもよい(この範囲から外れた時間を利用してもよい)。
【0034】
次いで、粒子作成中の1つ以上の段階で、もっと多くの第1の界面活性剤または第2の界面活性剤またはそれ以上の界面活性剤を重合反応に加えてもよい。
【0035】
得られるラテックス粒子は、粒径が少なくとも約85nm、少なくとも約90nm、少なくとも約95nmである。
【0036】
キャリアのコーティングとして使用されるポリマーまたはコポリマーが得られたら、そのポリマーまたはコポリマーを、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によって粉末形態になるまで乾燥させてもよい。
【0037】
ポリマーまたはコポリマーの粒子は、粒径が約40nm〜約200nm、約50nm〜約150nm、約60nm〜約120nmであってもよい。
【0038】
乾燥したポリマーコーティングの粒径が大きすぎる場合、粒子を微粉化し、均質化し、音波処理などし、粒子をさらに分散させ、凝集物またはゆるく結合した粒子を破壊し、それによって、上述の粒径をもつ粒子を得てもよい。
【0039】
キャリアコーティングとして利用されるポリマーまたはコポリマーは、数平均分子量(M)が、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定する場合、例えば、約60,000〜約400,000であってもよく、重量平均分子量(M)は、例えば、約200,000〜約800,000であってもよい。
【0040】
ポリマーまたはコポリマーは、ガラス転移点(T)が約85℃〜約140℃であってもよい。
【0041】
キャリアコーティングは、導電性成分(例えば、黒色顔料のような顔料)を含んでいてもよい。
【0042】
キャリアに対し、多くの添加剤、例えば、粒状アミン樹脂(例えば、メラミン)および特定のフルオロポリマー粉末(例えば、アルキル−アミノアクリレートおよびアルキル−アミノメタクリレート、ポリアミドおよびフッ素化ポリマーおよびフルオロアルキルメタクリレート)を含む電荷促進添加剤を加えてもよい。利用可能な他の電荷促進添加剤としては、ジステアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート(DDAMS)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、FANAL PINK(登録商標)D4830、これらの組み合わせなどの四級アンモニウム塩、および他の有効な既知の電荷剤または添加剤が挙げられる。電荷添加剤の成分は、種々の有効な量で、例えば、ポリマー/コポリマー、導電性成分および他の電荷添加剤成分の合計重量を基準として約0.5重量%〜約20重量%の量で選択されてもよい。導電性成分を追加すると、トナーに付与される負の摩擦帯電量が増えるように作用するだろう。キャリアコーティングをキャリアコアに融合させてもよい。
【0043】
半導体性磁気ブラシによる現像にとって、導電性が重要である。本開示のポリマーコーティングを、場合により導電性成分(例えば、顔料、例えば、カーボンブラックのような黒色顔料)とともに加えると、相対湿度が約20%〜約90%、いくつかの実施形態では、約40%〜約80%に対する現像剤の静電応答が低下した現像剤を含むキャリアが得られ、相対湿度が変化したときに整合性が高く、したがって、高い相対湿度でも電荷がそれほど減少せず、印刷物の上のバックグラウンドトナーが減り、低い相対湿度で電荷がそれほど増えず、その後の現像の欠損が少なくなり、光学密度が向上するため、画質性能が向上するだろう。
【0044】
ポリマーコーティングを乾燥粉末としてコアキャリアに塗布してもよい。粉末コーティングプロセスは、溶媒への溶解度を必要としないが、樹脂が、粒径が約10nm〜約2μm、約30nm〜約1μm、約50nm〜約400nmの粒状物としてコーティングされることが必要である。
【0045】
ポリマーまたはコポリマーをコアに塗布した後、コーティング材料をキャリアコア表面に流すことができるように加熱を開始してもよい。コーティング材料(いくつかの実施形態では、粉末粒子)の濃度、加熱パラメーターは、キャリアコア表面にコーティングポリマーの連続膜を生成することができるように、またはキャリアコアの選択した領域のみをコーティングすることができるように選択されてもよい。ポリマーコーティングを溶融し、キャリアコアに融合することができるように、ポリマー粉末コーティングを含むキャリアを約170℃〜約280℃の温度まで、例えば、約10分〜約180分かけて加熱してもよい。
【0046】
コーティングの被覆率は、キャリアコアの表面積の約10%〜約100%を包含する。金属キャリアコアの選択した領域がコーティングされないままであるか、または露出している場合、キャリア粒子は、例えば、コア材料が金属である場合、電気導電性を有していてもよい。
【0047】
本開示のトナーを作成するときに、任意のラテックス樹脂を利用してもよい。また、このような樹脂は、任意の適切なモノマーから作られてもよい。
【0048】
樹脂は、Tが約30℃〜約80℃であってもよい。トナーに利用される樹脂は、約130℃での溶融粘度が約10〜約1,000,000Pa*Sであってもよい。
【0049】
樹脂は、ポリエステル、例えば、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、およびこれらの組み合わせであってもよい。また、適切な樹脂は、アモルファスポリエステル樹脂と結晶性ポリエステルの混合物を含んでいてもよい。
【0050】
適切なアモルファス樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィンなどが挙げられる。不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。
【0051】
樹脂は、任意要素の触媒存在下、ジオールと二酸とを反応させることによって作られるポリエステル樹脂であってもよい。
【0052】
二酸またはジエステルは、例えば、樹脂の約40〜約60モル%の量で存在していてもよい。
【0053】
ジオールは、例えば、樹脂の約45〜約50モル%の量で選択される。「結晶性ポリエステル樹脂」は、示差走査熱量測定(DSC)で明らかな吸熱ピークを示す樹脂を示す。結晶性ポリエステル主鎖と少なくとも1種類の他の成分とを共重合させることによって得られるポリマーも、他の成分の量が50重量%以下である場合、結晶性ポリエステルと呼ばれる。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂を、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分から合成してもよい。
【0055】
他の酸は、特に制限はなく、他の酸の例としては、従来から知られている二価のカルボン酸および二価アルコール、例えば、「Polymer Data Handbook Basic Edition」(Soc.Polymer Science、日本編集:培風館)に記載されているものが挙げられる。
【0056】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約5〜約50重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、例えば、約30℃〜約120℃の種々の融点を有していてもよい。結晶性樹脂は、Mが、例えば、約1,000〜約50,000であってもよく、Mが、例えば、約2,000〜約100,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M/M)は、例えば、約2〜約6であってもよい。
【0057】
1種類、2種類、またはそれ以上のトナー樹脂を使用してもよい。2種類以上のトナー樹脂を使用する場合、トナー樹脂は、任意の適切な比率(例えば、重量比)、例えば、約10%(第1の樹脂)/90%(第2の樹脂)〜約90%(第1の樹脂)/10%(第2の樹脂)であってもよい。トナー樹脂は、複数のアモルファス樹脂と、1種類の結晶性樹脂とを含んでいてもよい。
【0058】
トナー組成物を作成するために利用される着色剤、ワックスおよび他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい。さらに、トナー粒子は、樹脂およびトナーの他の構成要素を、1つ以上の界面活性剤が存在する状態におき、エマルションを生成させ、トナー粒子が凝集し、融着し、場合により、これを洗浄し、乾燥させ、回収するような乳化凝集方法によって作られてもよい。
【0059】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。キャリアコアのためのポリマーコーティングとして利用される樹脂を作成するときに使用する上述の任意の界面活性剤を利用してもよい。
【0060】
種々の既知の適切な着色剤(例えば、染料、顔料、染料混合物、顔料混合物、染料と顔料の混合物など)が、トナーに含まれていてもよい。着色剤は、トナー中に、例えば、トナーの約0.1〜約35重量%、トナーの約1〜約15重量%、トナーの約3〜約10重量%の量で含まれていてもよいが、これらの範囲から外れた量を利用してもよい。
【0061】
場合により、トナー粒子を作成するときに、樹脂および任意要素の着色剤とワックスを組み合わせてもよい。ワックスが含まれる場合、ワックスは、例えば、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%、いくつかの実施形態では、トナー粒子の約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよいが、これらの範囲から外れた量を利用してもよい。
【0062】
選択可能なワックスとしては、例えば、重量平均分子量が約500〜約20,000、いくつかの実施形態では、約1,000〜約10,000のものが挙げられるが、これらの範囲から外れた分子量を利用してもよい。
【0063】
トナー粒子は、当業者の技術常識の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよい。トナー粒子の製造に関連する実施形態を、乳化凝集プロセスに関して以下に記載しているが、懸濁およびカプセル化のプロセスのような化学プロセスを含む、トナー粒子を調製する任意の適切な方法を用いてもよい。
【0064】
上の混合物を調製した後、混合物に凝集剤を加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用し、トナーを作成してもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料、例えば、ポリアルミニウムハロゲン化物、例えば、ポリアルミニウムクロリド(PAC)または対応する臭化物、フッ化物またはヨウ化物、ポリアルミニウムシリケート、例えば、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)、水溶性金属塩の水溶液が挙げられる。いくつかの実施形態では、樹脂のTよりも低い温度で、混合物に凝集剤を加えてもよい。
【0065】
トナーを作成するために利用される混合物に、凝集剤を、例えば、混合物中の樹脂の約0.1重量%〜約8重量%、約0.2重量%〜約5重量%、約0.5重量%〜約5重量%の量で加えてもよいが、これらの範囲から外れた量を利用してもよい。
【0066】
トナー粒子の望ましい最終粒径に到達したら、塩基を用いて混合物のpHを約3〜約10、約5〜約9の値になるまで調節してもよいが、これらの範囲から外れたpHを利用し、トナーの成長を凍結させてもよい。トナーの成長を止めるために利用される塩基としては、任意の適切な塩基を挙げることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなどのようなアルカリ金属水酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、pHを上述の望ましい値に調節しやすくするために、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を加えてもよい。
【0067】
所望の粒径になるまで凝集させ、場合により任意のシェルを塗布した後、粒子が所望の最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、例えば、混合物を約45℃〜約100℃、約55℃〜約99℃の温度(これらの範囲から外れる温度を使用してもよい)まで加熱し、この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のT以上の温度であってもよく、および/または、例えば、約1,00rpmから約1000rpmまで、または約200rpmから約800rpmまで撹拌を下げることによって行われてもよい(が、これらの範囲から外れた速度を使用してもよい)。融合した粒子について、例えば、Sysmex FPIA 2100分析機を用い、望ましい形状が得られるまで形状因子または真円度を測定してもよい。
【0068】
融着は、約0.01〜約9時間、または約0.1〜約4時間で達成されてもよい(が、これらの範囲から外れた時間を使用してもよい)。
【0069】
トナー粒子は、所望な場合、または必要な場合に、他の任意要素の添加剤も含んでいてもよい。例えば、トナーは、正電荷制御剤または負電荷制御剤を、例えば、トナーの約0.1〜約10重量%、トナーの約1〜約3重量%の量で含んでいてもよい(が、これらの範囲から外れた量を使用してもよい)。このような電荷制御剤を、上述のシェル樹脂と同時に塗布してもよく、シェル樹脂を塗布した後に塗布してもよい。
【0070】
また、作成した後に、トナー粒子と、外部添加剤(流動補助添加剤を含む)とをブレンドしてもよく、この場合、添加剤はトナー粒子表面に存在することがある。これらの添加剤の例としては、金属酸化物が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示のトナーを超低融点(ULM)トナーとして利用してもよい。
【0072】
本開示のコーティングされたキャリアと合わせることによって、トナー粒子を現像剤組成物に配合してもよい。例えば、トナー粒子をコーティングされたキャリア粒子と混合し、2成分現像剤組成物を得てもよい。キャリア粒子を、種々の適切な組み合わせでトナー粒子と混合してもよい。現像剤中のトナー濃度は、現像剤の約1重量%〜約25重量%、いくつかの実施形態では、現像剤の合計重量の約2重量%〜約15重量%、約3重量%〜約10重量%であってもよく、キャリアは、現像剤の約80重量%〜約96重量%、いくつかの実施形態では、現像剤の約85重量%〜約95重量%の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態では、トナー濃度は、キャリアの約90重量%〜約98重量%であってもよい。しかし、異なる割合のトナーおよびキャリアを使用し、望ましい特徴をもつ現像剤組成物を得てもよい。
【0073】
したがって、例えば、本開示にしたがって、磁気ブラシで通電するセルで決定される場合、抵抗率が10ボルトで約10ohm−cm〜約1014ohm−cm、いくつかの実施形態では、10ボルトで約1010ohm−cm〜約1013ohm−cm、150ボルトで約10ohm−cm〜約1013ohm−cm、いくつかの実施形態では、150ボルトで約10ohm−cm〜約1012ohm−cmである現像剤を配合してもよい。
【0074】
したがって、本開示のキャリアを含むトナーは、摩擦帯電が約15μC/g〜約60μC/g、いくつかの実施形態では、約20μC/g〜約55μC/g、約15μC/g〜約70μC/gであってもよい。
【0075】
キャリアの導電性または抵抗率を測定するために、約50〜約150グラムのキャリアを、ゼログラフィープリンタの現像剤筐体を模倣するように設計された部品に入れてもよい。この導電性部品は、磁気によってロール表面にキャリアまたは現像剤を保持する磁気ロール(またはマグロール)からなっていてもよい。外側のスリーブを回転しつつ、ロールは、トリマーバーを超えてキャリアまたは現像剤を保有し、ロールの上に一定の単位面積質量を秤量する。トリマーバーとロールの間隔は、約0.05インチ〜約0.1インチであってもよい。次いで、ロールの上のキャリアまたは現像剤は、ロールとの間に規定されたギャップをもつ上面電極を超えて取り除かれる。電極内のギャップは、任意の大きさであってもよく、例えば、約0.05インチ〜約0.1インチであってもよい。上面電極とマグロールとの間に約−3000ボルト〜約+3000ボルトの電圧をかけてもよく、得られた電流を測定した。この様式で、磁気ブラシは、SCMBゼログラフィープリンタ内に作られる磁気ブラシに似せて作られていてもよい。
【0076】
単位(ohm cm)−1での導電性は、電流(単位アンペア)と電極間のギャップ(単位センチメートル)を掛け算し、電極の面積(単位m)で割り、加えた電圧で割ることによって得られてもよい。抵抗率は、導電性の逆数として得られてもよく、単位ohm−cmで測定されてもよい。かけられた電圧は、約−3000ボルト〜約+3000ボルトまでさまざまであってもよく、電流−電圧、つまり「I−V曲線」を記録した。
【0077】
本開示にしたがって、キャリアは、トリマーバーと電極間のギャップが0.1インチのとき、750ボルトで測定した抵抗率が約10〜約1014ohm−cmであってもよく、トリマーバーと電極間のギャップが0.05インチのとき、750ボルトで測定した抵抗率が約10〜約1011ohm−cmであってもよい。電流が1mAを超えるとき、かけられた電圧は、絶縁破壊電圧と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、電極間のギャップ0.05インチを用いて測定する場合、絶縁破壊電圧は、3000ボルトを超えるだろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、Aゾーンでの電荷は、約−15〜約−60μC/g、いくつかの実施形態では、約−20〜約−55μC/gであってもよく、一方、Cゾーンでの電荷は、約−15〜約−60μC/g、いくつかの実施形態では、約−20〜約−55μC/gであってもよい。Cゾーンでの電荷に対するAゾーンでの電荷の比率は、本明細書では、時に、いくつかの実施形態では、RH比と呼ばれることもあるが、約0.40〜約1.0、いくつかの実施形態では、約0.6〜約0.8であってもよい。
【0079】
また、部および割合は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。本明細書で使用する場合、「室温」は、約20℃〜約25℃の温度を指す。
【実施例】
【0080】
(コントロールラテックス(界面活性剤を分割していない)の調製)
メタクリル酸シクロヘキシルおよび2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの乳化重合から作られたポリマー粒子で構成されるラテックスエマルションを以下のように調製した。
【0081】
0.75部のラウリル硫酸ナトリウム(アニオン系乳化剤)および381部の脱イオン(DI)水からなる界面活性剤溶液を、ビーカー中で10分間混合することによって調製した。この界面活性剤水溶液を反応器に移した。この反応器に、450rpmで撹拌しつつ、窒素を連続的にパージした。別の容器に、112部のメタクリル酸シクロヘキシルおよび1部の2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを表1に記載するように入れた。この溶液10重量%を、上の界面活性剤の水混合物に種として加えた。次いで、反応器を、速度を制御しつつ65℃まで加熱し、その温度に保持した。別個に、0.47部の過硫酸アンモニウム開始剤を4部のDI水に溶解し、開始剤溶液を作成した。次いで、この開始剤溶液を反応器にゆっくりと入れ、40分後、樹脂混合物の残りを、計量ポンプを用い、0.8重量%/分の速度で連続的に供給した。全てのモノマーエマルションを主要な反応器に入れたら、温度を65℃でさらに2時間保持し、反応を完結させた。次いで、フルに冷却し、反応器の温度を35℃まで下げた。液体サンプルを用い、Nanotrac粒径分析機(Microtac)で粒径を測定し、Zetasizer(Malvern)でζ電位を測定し、一方、生成物の残りを、凍結乾燥器を用いて粉末になるまで乾燥させた。
【0082】
(界面活性剤の分割を利用し、ラテックスを調製)
分割した界面活性剤を用い、メタクリル酸シクロヘキシルおよび2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートの乳化重合から作られたポリマー粒子で構成されるラテックスエマルションを、以下のように調製した。
【0083】
反応器1に、表1に示すような所定量のラウリル硫酸ナトリウムと、25300部のDI水を入れた。反応器1を65℃まで加熱し、450rpmで撹拌した。反応器2に、表1に示すような所定量のラウリル硫酸ナトリウム界面活性剤、12800部のDI水、11200部のメタクリル酸シクロヘキシルモノマー、105部の2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートを入れた。反応器2を1200rpmで撹拌し、モノマー/界面活性剤水溶液を乳化させた。1重量%の反応器2を取り出し、反応器1に種として加えた。次いで、反応器1に、47部の過硫酸アンモニウム開始剤を400部のDI水に溶解したものを加えた。反応器1を65℃、450rpmで40分間撹拌した後、反応器2の内容物を、ポンプを用い、0.8重量%/分の速度で反応器1にゆっくりと秤量して加えた。全てのモノマーエマルションを主要な反応器に入れたら、温度を65℃でさらに2時間保持し、反応を完結させた。次いで、フルに冷却し、反応器の温度を35℃まで下げた。液体サンプルを用い、Nanotrac粒径分析機(Microtrac)で粒径を測定し、Zetasizer(Malvern)でζ電位を測定し、一方、生成物の残りを、凍結乾燥器を用いて粉末になるまで乾燥させた。
【0084】
(キャリアおよび現像剤の調製)
250mlのポリエチレン瓶に、120グラムの35μmフェライトコア粒子、0.912グラムのポリマーラテックスを表1に記載したように入れた。次いで、この瓶を密閉し、CゾーンTURBULAに入れた。TURBULAミキサーを45分間動かし、キャリア粒子に粉末を分散させた。次いで、Haakeミキサーを以下の条件に設定した。温度200℃(すべてのゾーン)、バッチ時間30分、高剪断ローター30rpmに設定。Haakeが適切な温度に達した後、ミキサーの回転を開始し、ブレンドをTURBULAからHaakeミキサーに移した。45分後、ミキサーからキャリアを取り出し、45μmのふるいでふるった。
【0085】
超低融点(ULM)乳化凝集(EA)シアンXerox 700トナーを用い、キャリアの設計を評価した。現像剤をAゾーンおよびCゾーンに一晩かけて慣らし、次いで、TURBULA法を用い、60分間のエージングを行った。帯電性の結果を3種類の異なるコントロールキャリアと比較した。コントロール1およびコントロール2は、100ガロン実験からの乳化重合ラテックスおよび1リットルのベンチトップ実験からの乳化重合ラテックスをそれぞれ用いて製造したキャリアであり、界面活性剤を分割しなかった。このキャリアは、パウダーコーティングされた。帯電性の結果を表2に示す。
【表1】

【0086】
すべてのラテックスは、目標粒径が約90nmであった。SLS界面活性剤の量が増えるにつれて、開始Tが低下した。界面活性剤を分割することを利用しなかったラテックスは、1ヶ月間安定ではなく、空間を満たすゲルに変わってしまった。ラテックスの分割を使用し、過剰な界面活性剤を使用したラテックスは、少なくとも30日以上安定であった。
【0087】
コロイド化学において、安定分散物を得るには、粒子のζ電位が+30mVよりも大きいか、または−30mVよりも小さくなければならないことが知られている。しかし、安定な粒子懸濁に対し、例えば、界面活性剤の種類、樹脂の化学などの他の因子が役割を果たすこともあり得る。上の観点から、界面活性剤を2つの部分に分割することは、(1)多くの界面活性剤を加えても、粒径に影響を及ぼさず、(2)ζ電位を、ラテックスの安定性を与えるのに必要な−60mVよりも低く下げることができることを示していた。また、界面活性剤を分割すると、電荷も向上した。
【表2】

【0088】
このデータは、使用した界面活性剤および試験した量について、配合物中にさらなる36%の界面活性剤があると、満足の行く結果であることを示している。キャリアの750Vでの導電性および電圧破壊データを分析し、36%のキャリアが最も高い電荷を有し、最も抵抗率が大きい(したがって、最もよくコーティングされた)ことがわかった。試験した中で、最良の電圧破壊も、36%SLSキャリアによって示された。36%SLSを用いて作られたキャリアが、最も良い電荷を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアラテックス樹脂を調製する方法であって、
(a)混合容器中で少なくとも1種類の第1の界面活性剤を混合することと、
(b)少なくとも1種類の第2の界面活性剤および少なくとも1種類のキャリアラテックス樹脂生成試薬を合わせて混合物を作成することと、
(c)前記混合物の一部を前記混合容器に移し、種キャリアラテックスを作成することと、
(d)場合により、前記種キャリアラテックスに開始剤を加えることと、
(e)前記混合容器中で、前記混合物の残りの部分を混合し、キャリアラテックス粒子を含むエマルションを作成することと、
ここで、このエマルションは、ζ電位が約−55mV未満であるか、または前記キャリアラテックス粒子は、粒径が約85nmより大きいか、またはその両方であり、前記混合物の一部を工程(e)の前記混合容器に移すことにより、界面活性剤を分割することなく調製したラテックス樹脂と比較して、ラテックス樹脂の粒径に影響を及ぼすことなく、界面活性剤の保持量が増える、方法。
【請求項2】
前記第1の界面活性剤および第2の界面活性剤が、それぞれ、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルサルフェートおよびジアルキルベンゼンアルキルスルホネート、アビエチン酸、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、C12,C15,C17−トリメチルアンモニウムブロミド、臭化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、ベンジルジメチルアルコニウムクロリド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の界面活性剤と前記第2の界面活性剤が同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種類のキャリアラテックス樹脂生成試薬が、少なくとも1種類のアクリル酸脂環式エステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種類のアクリル酸脂環式エステルが、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロプロピル、アクリル酸シクロブチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロプロピル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソボルニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種類のラテックス樹脂生成試薬が、少なくとも1種類の酸性アクリレートまたはジアルキルアミノアクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の酸性アクリレートが、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種類のジアルキルアミノアクリレートが、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって調製されたキャリアラテックス樹脂。
【請求項10】
前記ラテックス樹脂が、約−60mVよりも低いζ電位を示す、請求項9に記載のキャリアラテックス樹脂。

【公開番号】特開2013−105174(P2013−105174A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−233098(P2012−233098)
【出願日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】