説明

パウチ容器及びこれに備えるフィルムシート

【課題】引き裂くことで開封する構成のパウチ容器に使用するフィルムシートにおいて、易引裂性及び強度を同時に確保できるようにする。また、パウチ容器の製造コスト増加も防止できるようにする。
【解決手段】基材フィルム層13と、一方向のみに易引裂性を有する直線カットフィルム層15と、シーラントフィルム層19とを順次積層してなり、前記基材フィルム層13の分子配向に関する物性値として、その誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることを特徴とするフィルムシート11を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き裂くことで開封する構成のパウチ容器及びこれに備えるフィルムシートに関する。
【背景技術】
【0002】
食材や薬剤等の内容物、特に液体などの流動性を有する内容物を収容する容器としては、複数のフィルムシートを重ねると共にその外周部を熱シール(熱溶着)し、溶着された部分(シール部)によって囲まれた未シール部の間に内容物が充填されるように構成されたパウチ容器が用いられている。この種のパウチ容器では、シール部から未シール部にわたってフィルムシートを引き裂くことで、はさみやカッター等を使用することなく開封できるように構成されている。
従来のパウチ容器を構成するフィルムシートとしては、例えば特許文献1のように、易引裂性を有する易引裂性フィルム層と、一方向に易引裂性を有する横方向性フィルム層(直線カットフィルム層)と、内容物に応じてガスバリア機能や印刷容易性などの所定の機能を有する基材フィルム層とを順次積層して接着したものがある。
なお、このような積層構造のフィルムシートの易引裂性は、基材フィルム層の厚さにも依存しており、この厚さが薄いほど所望の方向(一方向)に引き裂きやすい。
【特許文献1】特開2008−001406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、パウチ容器には、フィルムシートに対して強度が求められるものもある。例えば、パウチ容器がスタンディングパウチとして形成される場合には、これを自立させるためにフィルムシートの剛性が要求される。また、例えば、パウチ容器を食材の加熱処理(レトルト・ボイル処理)に用いる場合には、破袋しない程度の強度がフィルムシートに要求される。
しなしながら、従来のパウチ容器において易引裂性を重視した場合には、基材フィルム層が薄く形成されることからフィルムシートの強度が弱くなるため、スタンディングパウチの自立性が得られない、また、加熱処理の際にパウチ容器が破袋する虞がある。
【0004】
一方、従来のパウチ容器においてフィルムシートに上述した強度を持たせるためには、例えば基材フィルム層を厚く形成する必要があるが、この場合にはフィルムシートの易引裂性が低下する虞がある。具体的には、フィルムシートを引き裂いて開封する際に、所望の方向に引き裂くことができず、パウチ容器のうち内容物が収容される袋体の開口部分に、パウチ容器の切れ端が残る、あるいは、ヒゲや又裂きが生じる等して内容物が取り出しにくくなってしまう、また、開封時に不意に内容物が漏れてしまう、といった問題が生じる。
なお、レーザー加工等の2次加工を実施して開封部分に位置する基材フィルム層にミシン目線等を形成しておけば、基材フィルム層が厚く形成されていても、フィルムシートの易引裂性を確保することができる。しかしながら、ミシン目線の形成部分におけるフィルムシートの強度が低下するため、パウチ容器の加熱時・落下時に破袋する虞が生じる。さらに、パウチ容器の製造に新たな工程が加わると共にレーザー加工の装置も新たに必要となるため、製造コストが増加する虞もある。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、フィルムシートの易引裂性及び強度を同時に確保できる構成のフィルムシート及びこれを備えるパウチ容器を提供することを第1の目的とする。
また、この発明は、製造コストの増加を防止できる構成のフィルムシート及びこれを備えるパウチ容器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明のフィルムシートは、基材フィルム層と、一方向のみに易引裂性を有する直線カットフィルム層と、シーラントフィルム層とを順次積層してなり、前記基材フィルム層の分子配向に関する物性値として、その誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることを特徴とする。
【0007】
このように基材フィルム層の分子配向に関する物性値を設定することで、基材フィルム層の分子配向を直線カットフィルム層の引き裂き方向(一方向)に対してほぼ平行に設定することができる。したがって、基材フィルム層の厚さ寸法を大きく設定してフィルムシートに強度を持たせても、上記構成のフィルムシートを一方向に引き裂く際には、基材フィルム層と直線カットフィルム層との間で剥離が発生することが無いため、この引き裂き部分を境目としてフィルムシートを2つに分離することができる、また、引き裂き部分にヒゲや又裂きが発生することも防止できる。
また、上記構成のフィルムシートは、従来のようにレーザー加工等の2次加工を実施せずに、複数のフィルム層を積層して製造するだけで、フィルムシートの易引裂性及び強度を同時に確保できるため、その製造コストの増加を防止できる。
【0008】
そして、前記フィルムシートにおいては、前記直線カットフィルム層の引き裂き方向が、フィルムの流れ方向に直交する方向に設定され、前記基材フィルム層として、その材料となる基材フィルムから前記物性値を満たす部分を選択的に切り出して使用することが好ましい。
このように基材フィルム層を形成することで、前述した物性値を容易に得ることができる。
【0009】
さらに、前記フィルムシートにおいては、前記直線カットフィルム層と前記シーラントフィルム層との間に、機械的強度を補強するための強化フィルム層が設けられ、当該強化フィルム層の分子配向に関する物性値として、その誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることがさらに好ましい。
このように強化フィルム層の分子配向に関する物性値を基材フィルムと同様に設定することで、強化フィルム層の分子配向を直線カットフィルム層の引き裂き方向(一方向)に対してほぼ平行に設定することができるため、フィルムシートの機械的強度を補強しても、フィルムシートを一方向に引き裂いた際には、引き裂き部分を境目として当該フィルムシートを2つに分離できると共に、引き裂き部分にヒゲや又裂きが発生することを防止できる。
【0010】
なお、前記フィルムシートにおいては、前記基材フィルム層と前記シーラントフィルム層との間に、ガスバリア性フィルム層が設けられていることがより好ましい。
【0011】
そして、本発明のパウチ容器は、前記フィルムシートを厚さ方向に複数重ねると共に、複数のフィルムシートの面方向の外周部を溶着したシール部を形成することで、当該シール部によって囲まれた未シール部の間に内容物が充填されるように構成され、複数のフィルムシートを構成する複数の直線カットフィルム層の引き裂き方向が互いに一致していることを特徴とする。
【0012】
この発明に係るパウチ容器よれば、そのシール部及び未シール部にわたって複数のフィルムシートを直線カットフィルム層の引き裂き方向(一方向)に引き裂くことで、パウチ容器を開封することができる。このようにフィルムシートを引き裂いた際には、前述したように、基材フィルム層と直線カットフィルム層との間で剥離が発生しないため、パウチ容器を内容物が収容された袋体と、袋体の開口部分から切り離される切れ端とに分離することができる。したがって、パウチ容器の開封後には、内容物を容易に袋体から取り出すことができ、開封時に不意に内容物が漏れてしまうことも容易に防止できる。
さらに、この発明に係るパウチ容器よれば、前述したように、これを構成するフィルムシートの強度を確保できるため、パウチ容器を加熱処理してもその破袋を防止することができる。
【0013】
なお、前記パウチ容器は、前記複数のフィルムシートが、厚さ方向に重ねられる一対の側面部材、及び、当該一対の側面部材の間に二つ折りの状態で介装される底面部材をなし、各側面部材と底面部材とのシール部を底部としたスタンディングパウチとして構成されてもよい。
この場合には、前述したように、パウチ容器を構成するフィルムシートの強度を確保できるため、スタンディングパウチとしての自立性を十分に得ることができる。
【0014】
また、スタンディングパウチとして構成された前記パウチ容器においては、前述したように易引裂性が確保されているため、前記直線カットフィルム層の引き裂き方向が前記底面部材の折り目に直交していても、厚さ方向に重ねられた底面部材及び一対の側面部材を同時かつ容易に引き裂くことができ、特に底面部材の折り目部分を容易に引き裂くことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルムシートやこれを備えるパウチ容器の易引裂性及び強度を同時に確保することができる。
また、フィルムシートやこれを備えるパウチ容器の製造コスト増加も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るパウチ容器1は、シート状に形成された一対の側面部材3,5及び底面部材7を備えており、自立性を有するスタンディングパウチとして構成されている。
すなわち、一対の側面部材3,5は互いに厚さ方向(Z軸方向)に重ねられており、さらに、一対の側面部材3,5の間に底面部材7が二つ折りの状態で介装されている。そして、パウチ容器1は、相互に対向する一対の側面部材3,5の面方向の外周部を溶着したシール部9Aと、相互に対向する各側面部材3,5及び底面部材7の外周部を溶着したシール部9B,9Cとを形成することで、これらシール部9A,9B,9Cによって囲まれた未シール部の間に食材等の内容物が充填されるように構成されている。
【0017】
さらに具体的に説明すると、一対の側面部材3,5及び底面部材7は平面視略矩形状に形成されており、底面部材7はその対向する一辺7aが互いに重なるように折り曲げられている。そして、底面部材7は、直線状の折り目10と平行に延びる底面部材7の一辺7a(以下、平行辺7aと呼ぶ。)が側面部材3,5の底辺3a,5aに重なるように配されており、底面部材7の平行辺7a部分と各側面部材3,5の底辺3a,5a部分とをそれぞれ溶着した部分がシール部9Bをなしている。なお、相互に対向する底面部材7の平行辺7a同士は溶着されない。また、底面部材7の平行辺7aに隣り合う辺7b(以下、側方辺と呼ぶ。)は、側面部材3,5の側辺3b,5bにそれぞれ重なっており、底面部材7の側方辺7b部分及び一対の側面部材3,5の側辺3b,5b部分を一括して溶着した部分がシール部9Cをなしている。
そして、このパウチ容器1は、底面部材7の平行辺7a部分と各側面部材3,5の底辺3a,5a部分とのシール部9Bを底部としたスタンディングパウチとして構成されている。
【0018】
これら一対の側面部材3,5及び底面部材7は、同種のフィルムシートによって構成されており、例えば図3及び図4に示すように、フィルムシート11,21は複数のフィルム層を積層して構成されている。
図3に示すフィルムシート11は、パウチ容器1の外装(表面層)をなす基材フィルム層13と、一方向のみに易引裂性を有する直線カットフィルム層15と、ガスバリア性フィルム層17と、シール部9A,9B,9Cを形成するためのシーラントフィルム層19とを順次積層し、これらフィルム層13,15,17,19の各間に不図示の接着剤を塗布してラミネートしたものである。なお、基材フィルム層13と直線カットフィルム層15との間には、印刷インキ層14が形成されている。
基材フィルム層13としては、印刷インキ層14を容易に印刷可能な印刷容易性を有すると共に印刷インキ層14を外側から視認可能とする透明性を有することが好ましく、具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが挙げられる。
【0019】
また、直線カットフィルム層15としては、これを構成するフィルムがロールから引き出される方向(フィルムの流れ方向)に直交する方向(フィルムの幅方向)に延伸されたもの、すなわち、一軸延伸フィルムが採用される。具体的な直線カットフィルム層15としては、例えば一軸延伸高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(電気化学工業(株)製の「カラリヤンY」や「カラリヤンYA2」)や、一軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東レフィルム加工(株)の「YT」)が挙げられる。
さらに、ガスバリア性フィルム層17としては、少なくともパウチ容器1内へのガスの侵入を防止するガスバリア性を有していればよく、例えばアルミニウム箔を採用することが好ましい。
また、シーラントフィルム層19としては、シール部9A,9B,9Cを形成するためのヒートシール性を有していればよいが、特にパウチ容器1内に食材が充填される場合には、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを採用することが特に好ましい。
【0020】
また、図4に示すフィルムシート21は、パウチ容器1の外装(表面層)をなす透明蒸着フィルム層23と、一方向のみに易引裂性を有する直線カットフィルム層15と、フィルムシート21の機械的強度を補強する強化フィルム層27と、シール部9A,9B,9Cを形成するためのシーラントフィルム層19とを順次積層し、これらフィルム層23,15,27,19の各間に不図示の接着剤を塗布してラミネートしたものである。なお、透明蒸着フィルム層23と直線カットフィルム層15との間には、印刷インキ層14が形成されている。
【0021】
透明蒸着フィルム層23は、基材フィルム層の片面にガスバリア性皮膜層(ガスバリア性フィルム層)を積層して構成されるものであり、印刷インキ層14を外側から視認可能とする透明性を有することが好ましい。そして、この基材フィルム層は、図3に示すフィルムシート11の基材フィルム層13と同様の機能を有しており、例えば二軸延伸PETフィルム等の二軸延伸ポリエステルフィルムとすることが好ましい。また、ガスバリア性被膜層としては、少なくともパウチ容器1内へのガスの侵入を防止するガスバリア性を有していればよく、例えば酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物を採用することが好ましい。
【0022】
強化フィルム層27としては、前述した透明蒸着フィルム層23の特性を考慮して、印刷インキ層14を容易に印刷可能な印刷容易性を有することが好ましく、例えば延伸ナイロン(NY)フィルムを採用することが好ましい。
なお、直線カットフィルム層15及びシーラントフィルム層19は、図3に示す積層構造のフィルムシート11と同様のものである。
【0023】
さらに、上述した2種類のフィルムシート11,21においては、直線カットフィルム層15の易引裂性が十分に発揮されるように、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の分子配向評価に関する物性値として、これらの誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることが好ましい。なお、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の分子配向に関する物性値は、王子計測機器(株)製の分子配向計(MOAシリーズ)によって測定されるものである。
【0024】
そして、上述した物性値を得るためには、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層として、その材料となる基材フィルム(材料フィルム)からこの物性値を満たす部分を選択的に切り出して使用することが好ましい。具体的には、例えば図5に示すように、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の材料となる基材フィルム(材料フィルム)12のフィルムの流れ方向(X軸方向)に直交する幅方向(Y軸方向)の中途部から切り出したもの、すなわち、基材フィルム12からその幅方向端部12bを切り落としたものを選択して使用すればよい。
また、強化フィルム層27において上述した物性値を得るためには、基材フィルム層13等と同様に、その材料となる基材フィルム(材料フィルム)からこの物性値を満たす部分を選択的に切り出して使用することが好ましい。具体的には、例えば強化フィルム層27の材料となる強化フィルム(材料フィルム)26のフィルムの流れ方向に直交する幅方向の中途部から切り出したもの、すなわち、強化フィルム26からその幅方向端部26bを切り落としたものを強化フィルム層27として使用すればよい。
【0025】
上述したフィルムシート11,21によって構成されるパウチ容器1においては、これを製造する際に一対の側面部材3,5及び底面部材7をなす複数のフィルムシート11,21のフィルムの流れ方向を互いに一致させることで、一対の側面部材3,5及び底面部材7を構成する複数の直線カットフィルム層15の引き裂き方向が互いに一致している。図1においては、フィルムの流れ方向がX軸方向に設定されており、これによって、直線カットフィルム層15の延伸方向はY軸方向に設定されることになる。すなわち、図1においては、直線カットフィルム層15の引き裂き方向(一方向)がY軸方向に設定され、底面部材7の折り目10に直交することになる。
【0026】
そして、このパウチ容器1においては、その底部側に位置するシール部9Bに開封の開始箇所となる切り口としてV字形のノッチ30が形成されており、ノッチ30からY軸方向に延びる開封仮想線V1がシール部9A,9B及び未シール部に跨って通ると共に底面部材7の折り目10に直交している。
なお、ノッチ30は、開封仮想線V1が通過するシール部に形成されていればよいため、例えばパウチ容器1の上部側に位置するシール部9Aに形成されていてもよい。また、開始箇所となる切り口の他の具体例としては、半円形、I字形などのノッチや、Y軸方向に延びるように形成されるスリットやミシン目なども挙げられる。
【0027】
次に、前述した構成のフィルムシート11,21の具体的な実施例と、これを用いて製造されたパウチ容器1について試験を行った結果について説明する。
実施例のフィルムシートとして、以下の2つを取り上げる。
(実施例1)
実施例1のフィルムシートは、図3に示す積層構造のフィルムシート11であり、具体的には、以下のように製造される。
基材フィルム層13である厚さ12μmのPETフィルムに対し、印刷インキ層14であるウレタン系2液硬化型グラビアインキの裏刷りを実施する。そして、基材フィルム層13と共に印刷インキ層14を挟み込むように、基材フィルム層13上に直線カットフィルム層15である厚さ18μmのHDPEフィルム(電気化学工業(株)製の「カラリヤンYA2」)、ガスバリア性フィルム層17である厚さ7μmのアルミニウム箔、シーラントフィルム層19である厚さ60μmのCPPフィルム(東レフィルム加工(株)の「ZK100」)を順次重ねると共に、これら各フィルム層13,15,17,19の間にウレタン系2液硬化型接着剤(「三井化学ポリウレタン タケラックA505」)を塗布量4g/m、乾燥状態で塗布し、ドライラミネートを実施することで実施例1のフィルムシート11が得られる。
なお、基材フィルム層13をなすPETフィルムの分子配向に関する物性値については、誘電率の最大値と最小値との差Δεが0.2となっており、誘電率の最大値方位角が20°となっている。
【0028】
(実施例2)
実施例2のフィルムシートは、図4に示す積層構造のフィルムシート21であり、具体的には、以下のように製造される。
透明蒸着フィルム層23である厚さ12μmの透明蒸着PETフィルム(凸版印刷(株)製、「GL−ARH−F」)に対し、印刷インキ層14であるウレタン系2液硬化型グラビアインキの裏刷りを実施する。そして、透明蒸着フィルム層23と共に印刷インキ層14を挟み込むように、透明蒸着フィルム層23上に直線カットフィルム層15である厚さ18μmの一軸延伸HDPEフィルム(電気化学工業(株)製の「カラリヤンYA2」)、強化フィルム層27である厚さ15μmの延伸NYフィルム(ユニチカ(株)製の「ONBC」)、シーラントフィルム層19である厚さ60μmのCPPフィルム(東レフィルム加工(株)の「ZK100」)を順次重ねると共に、これら各フィルム層23,15,27,19の間にウレタン系2液硬化型接着剤(「三井化学ポリウレタン タケラックA505」)を塗布量4g/m、乾燥状態で塗布し、ドライラミネートを実施することで実施例2のフィルムシート21が得られる。
なお、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層をなす二軸延伸PETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.1であり、誘電率の最大値方位角は15°となっている。また、強化フィルム層27である延伸NYフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.1であり、誘電率の最大値方位角は10°となっている。
【0029】
そして、これら実施例1,2のフィルムシート11,21を構成する基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27は、各フィルム層の材料フィルムからそのフィルムの流れ方向に直交する幅方向の中途部を切り出したものであり、これによって、上述した基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の分子配向評価の物性値が得られている。
【0030】
また、参考例のフィルムシートとして、以下の2つを取り上げる。なお、これら参考例のフィルムシートは、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の分子配向評価の物性値が相違する点で、上述した実施例1,2のフィルムシート11,21と大きく異なる。
(参考例3)
参考例3のフィルムシートは、実施例1の基材フィルム層13をなすPETフィルムの配向に関する物性値のみが異なっており、その他の構成については実施例1と同様である。すなわち、参考例3におけるPETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.5であり、誘電率の最大値方位角は50°となっている。
【0031】
(参考例4)
参考例4のフィルムシートは、実施例2の透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層をなす二軸延伸PETフィルム、及び、強化フィルム層27をなす延伸NYフィルムの分子配向に関する物性値のみが異なっており、その他の構成については実施例2と同様である。すなわち、参考例4における二軸延伸PETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.5であり、誘電率の最大値方位角は50°となっている。また、延伸NYフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.3であり、誘電率の最大値方位角は50°となっている。
そして、これら参考例3,4のフィルムシートを構成する基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27は、各フィルム層の材料フィルムからそのフィルム方向の流れ方向に直交する幅方向の端部を切り出したものであり、これによって、上述した基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の分子配向の物性値が得られている。
【0032】
さらに、比較例のフィルムシートとして、以下の3つを取り上げる。なお、これら比較例のフィルムシートは、直線カットフィルム層15を備えない点で、上述した実施例1,2及び参考例3,4と大きく異なる。
(比較例5)
図6に示すように、比較例5のフィルムシート31は、実施例1と同様の基材フィルム層13と、実施例2と同様の強化フィルム層27と、実施例1と同様のガスバリア性フィルム層17及びシーラントフィルム層19とを順次積層すると共に、基材フィルム層13と強化フィルム層27との間に印刷インキ層14を配して構成されるものである。このフィルムシート31は、具体的に以下のように製造される。
【0033】
基材フィルム層13である厚さ12μmのPETフィルムに対し、印刷インキ層14であるウレタン系2液硬化型グラビアインキの裏刷りを実施する。そして、基材フィルム層13と共に印刷インキ層14を挟み込むように、基材フィルム層13上に強化フィルム層27である厚さ15μmの延伸NYフィルム(ユニチカ(株)製の「ONBC」)、ガスバリア性フィルム層17である厚さ7μmのアルミニウム箔、シーラントフィルム層19である厚さ60μmのCPPフィルム(東レフィルム加工(株)の「ZK100」)を順次重ねると共に、これら各フィルム層13,27,17,19の間にウレタン系2液硬化型接着剤(「三井化学ポリウレタン タケラックA505」)を塗布量4g/m、乾燥状態で塗布し、ドライラミネートを実施することで、比較例5のフィルムシート31が得られる。すなわち、比較例5のフィルムシート31は、実施例1のフィルムシート11の直線カットフィルム層15を強化フィルム層27に取り替えた構成となっている。
なお、基材フィルム層13であるPETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.2であり、誘電率の最大値方位角は20°となっている。また、強化フィルム層27である延伸NYフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.1であり、誘電率の最大値方位角は10°となっている。
【0034】
(比較例6)
図7に示すように、比較例6のフィルムシート41は、実施例2と同様の透明蒸着フィルム層23、強化フィルム層27及びシーラントフィルム層19とを順次積層すると共に、透明蒸着フィルム層23と強化フィルム層27との間に印刷インキ層14を配して構成されるものである。このフィルムシート41は、具体的に以下のように製造される。
透明蒸着フィルム層23である厚さ12μmの透明蒸着PETフィルム(凸版印刷(株)製、「GL−ARH−F」)に対し、印刷インキ層14であるウレタン系2液硬化型グラビアインキの裏刷りを実施する。そして、透明蒸着フィルム層23と共に印刷インキ層14を挟み込むように、透明蒸着フィルム層23上に強化フィルム層27である厚さ15μmの延伸NYフィルム(ユニチカ(株)製の「ONBC」)、シーラントフィルム層19である厚さ60μmのCPPフィルム(東レフィルム加工(株)の「ZK100」)を順次重ねると共に、これら各フィルム層23,27,19の間にウレタン系2液硬化型接着剤(「三井化学ポリウレタン タケラックA505」)を塗布量4g/m、乾燥状態で塗布し、ドライラミネートを実施することで、比較例6のフィルムシート41が得られる。すなわち、この比較例6のフィルムシート41は、実施例2のフィルムシート21から直線カットフィルム層15を取り除いた構成となっている。
なお、透明蒸着フィルム層23である透明蒸着PETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.1であり、誘電率の最大値方位角は15°となっている。また、強化フィルム層27である延伸NYフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.1であり、誘電率の最大値方位角は10°となっている。
【0035】
(比較例7)
図8に示すように、比較例7のフィルムシート51は、比較例5のフィルムシート31を製造した後、シール部9A,9B,9Cを形成してパウチ容器1を製造する際に、レーザー加工によりパウチ容器1の開封部分となるフィルムシート51に直線状のミシン目線56を形成したものである。ここで、ミシン目線56は、基材フィルム層13から強化フィルム層27まで到達する深さを有し、平面視での長さ及び間隔が1mmの破線状の溝として形成されている。
なお、基材フィルム層13であるPETフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.5であり、誘電率の最大値方位角は50°となっている。また、強化フィルム層27である延伸NYフィルムの誘電率の最大値と最小値との差Δεは0.3であり、誘電率の最大値方位角は50°となっている。
【0036】
以上の実施例1,2、参考例3,4及び比較例5〜7のフィルムシート11,21,31,41,51によって製造されるパウチ容器1の寸法については、いずれもX軸方向の長さを160mmとし、また、Y軸方向の長さを120mmとする。また、Y軸方向に沿う側面部材3,5の底辺3a,5aから底面部材7の折り目10までの長さを30mmとする。また、パウチ容器1を製造する際には、内容物として蒸留水を200ml充填しておく。
【0037】
そして、これら実施例1,2、参考例3,4及び比較例5〜7のフィルムシートからなるパウチ容器1に対し、その「開封性」、内容物の「臭気」及び「落下強度」について試験を行い、さらに、パウチ容器1の製造に要する「追加コスト」について評価した。その結果を表1にまとめる。
【0038】
【表1】

【0039】
なお、開封性の試験は、図1に示すように、パウチ容器1の底部に形成されたノッチ30からY軸方向に真直ぐ引き裂くことで行われる。そして、表1中における開封性の評価については、パウチ容器1を内容物が収容された袋体とその開口部分から切り離される切れ端とに分離でき、さらに開口部分にヒゲや又裂きが生じない場合を「◎」で示し、パウチ容器1を袋体と切れ端とに分離できるが、開口部分に小さなヒゲや又裂きが生じた場合を「○」で示している。また、パウチ容器1を袋体と切れ端とに分離できず、開口部分に大きなヒゲや又裂きが生じた場合を「○」で示している。
【0040】
また、臭気の試験は、蒸留水の入ったパウチ容器1をレトルト殺菌(121℃×30分)した後に、開封して味覚評価することで行われる。ここで、味覚評価は、従来のレトルト食品に使用されるフィルムシートの積層構造(「PET/NY/AL/CPP」あるいは「透明蒸着PET/NY/CPP」)を基準とする。そして、表1中では、味覚評価の基準に対して差がない場合に「○」で示し、差がある場合に「×」で示している。
さらに、落下強度の試験は、蒸留水の入ったパウチ容器1をレトルト殺菌(121℃×30分)し、さらに4℃で24時間保管した後、高さ1mから10回連続で落下し、蒸留水の漏れや破袋の発生を確認して行われる。
また、追加コストの評価は、従来のレトルト食品に使用するレトルトパウチの製造工程と比較して、新たな装置が必要であるか否かであり、表1中では、新たな装置が不要である場合を「○」、新たな装置が必要な場合を「×」で示している。
【0041】
表1の「開封性」の結果によれば、比較例5,6のフィルムシート31,41では、基材フィルム層13、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、及び、強化フィルム層27の分子配向に関する物性値について、誘電率の差Δεを0.3以下、かつ、誘電率の最大値方位角を±40°以下に設定しているものの、直線カットフィルム層15が設けられていないため、パウチ容器1を袋体と切れ端とに分離することができず、開口部分に大きなヒゲや又裂きが生じる。このため、袋体から内容物が取り出しにくくなってしまう、また、開封時に不意に内容物が漏れてしまう、といった問題が生じる。
一方、実施例1,2及び参考例3,4のフィルムシート11,21は直線カットフィルム層15を備えているため、また、比較例7のフィルムシート51にはミシン目線56が形成されているため、パウチ容器1を袋体と切れ端とに分離することができる。
【0042】
しかしながら、参考例3,4のフィルムシート11,21では、比較例5,6よりも程度が小さいものの、引き裂きの際に袋体の開口部分に小さなヒゲや又裂きが生じるため、依然として袋体から内容物が取り出しにくくなる、あるいは、開封時に不意に内容物が漏れてしまう場合が生じる。これは、基材フィルム層13、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、及び、強化フィルム層27の分子配向に関する物性値について、誘電率の差Δεが0.3よりも大きく、かつ、誘電率の最大値方位角が±40°よりも大きく設定されていることで、基材フィルム層13、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、及び、強化フィルム層27の分子配向が、フィルムの流れ方向に対して斜行する、すなわち、直線カットフィルム層15の引き裂き方向(Y軸方向)に対して斜めとなってしまい、その結果として、引き裂きの際に基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23、強化フィルム層27と直線カットフィルム層15との間で剥離が発生することに起因すると考えられる。
【0043】
これに対し、実施例1,2及び比較例7のフィルムシート11,21,51では、引き裂きの際にヒゲや又裂きも生じないため、袋体から内容物を最も容易に取り出すことができ、また、開封時に不意に内容物が漏れ出すことも確実に防止できる。
実施例1,2のフィルムシート11,21においてヒゲや又裂きが生じない理由としては、直線カットフィルム層15を備えることに加え、基材フィルム層13、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、及び、強化フィルム層27の分子配向に関する物性値について、誘電率の差Δεを0.3以下、かつ、誘電率の最大値方位角を±40°以下に設定することで、基材フィルム層13、透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、及び、強化フィルム層27の分子配向がフィルムの流れ方向にほぼ直交する、すなわち、直線カットフィルム層15の引き裂き方向(Y軸方向)にほぼ平行することが挙げられ、その結果として、引き裂きの際に基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23、強化フィルム層27と直線カットフィルム層15との間で剥離が発生しないことが考えられる。
そして、比較例7のフィルムシート51では、ミシン目線56を形成することで良好な開封性が得られており、フィルムシート51の積層構造や基材フィルム層13及び強化フィルム層27の分子配向に関する物性値は開封性に影響していないと考えられる。
【0044】
なお、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23、強化フィルム層27の厚さ寸法は、実施例1,2、参考例3,4及び比較例5〜7の間で全て同等となっている。したがって、実施例1,2及び比較例7のフィルムシート11,21,51では、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27を薄く形成しなくても、上述した開封性を得ることができる。言い換えれば、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の厚さ寸法を大きく設定してフィルムシート11,21,51に強度を持たせても、良好に開封できることが分かる。
【0045】
また、表1の「臭気」の結果によれば、比較例7のフィルムシート51ではレーザー加工時に焦げが生じるため、この焦げ臭がシーラントフィルム層19を介して内容物である蒸留水に移ってしまう、という問題を生じる。
これに対し、実施例1,2、参考例3,4及び比較例5,6のフィルムシート11,21,31,41は複数のフィルム層を単純に積層して構成されているため、臭気に異常は見られない。
【0046】
さらに、表1の「落下強度」の結果によれば、比較例7のフィルムシート51では、内容物の漏れや破袋が発生しているが、これはミシン目線56によってフィルムシート51の強度が局所的に低下していることに起因する。したがって、比較例7のフィルムシート51は、パウチ容器1としての強度が不足している。
これに対し、実施例1,2、参考例3,4及び比較例5,6のフィルムシート11,21,31,41では、内容物の漏れや破袋が発生しない。これは、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23、強化フィルム層27によってフィルムシート11,21,31,41の強度が確保されているためである。すなわち、実施例1,2、参考例3,4のフィルムシート11,21,31,41は、パウチ容器1としての強度を十分に備えていることが分かる。
【0047】
また、表1の「追加コスト」の結果によれば、比較例7のフィルムシート51によりパウチ容器1を製造する際に、ミシン目線56形成用のレーザー照射装置を新たに設置する必要があるため、結果として、パウチ容器1の製造コストが増加してしまう。
これに対し、実施例1,2、参考例3,4及び比較例5,6のフィルムシート11,21,31,41では、従来のレトルトパウチと同様の製造工程によってパウチ容器1を製造できるため、その製造コスト増加を防止することができる。
【0048】
以上の結果を総合すると、表1の「総合評価」に示すように、パウチ容器1としては、開封の際に袋体と切れ端とに分離できると共にヒゲや又裂きも発生しない実施例1,2のフィルムシートを使用することが最も好ましく(◎)、次いで、袋体と切れ端とに分離できるものの小さなヒゲや又裂きが発生する参考例3,4のフィルムシートを使用することが好ましい(○)。逆に、比較例5,6のフィルムシートについては「開封性」の点で、また、比較例7のフィルムシートについては、「臭気」、「落下強度」、「追加コスト」の点で、パウチ容器として使用することが好ましくない(×)。
【0049】
以上説明したように、上記実施形態のフィルムシート11,21によれば、基材フィルム層13や透明蒸着フィルム層23の基材フィルム層、強化フィルム層27の厚さ寸法を大きく設定してフィルムシート11,21に強度を持たせても、フィルムシート11,21を引き裂く際に、この引き裂き部分を境目としてフィルムシート11,21を2つに分離することができると共に、引き裂き部分にヒゲや又裂きが発生することを防止できる。そして、上記実施形態のパウチ容器1によれば、開封の際に、開口部分を境目として袋体と切れ端とに分離できると共に、開口部分にヒゲや又裂きが発生することを防止できる。したがって、フィルムシート11,21やこれを備えるパウチ容器1の易引裂性及び強度を同時に確保することが可能となる。
【0050】
また、フィルムシート11,21やパウチ容器1の強度を確保できることから、パウチ容器1を加熱処理してもその破袋を防止できると共に、パウチ容器1にスタンディングパウチとしての自立性を十分に持たせることができる。
さらに、パウチ容器1においては易引裂性が確保されているため、厚さ方向に重ねられた一対の側面部材3,5及び底面部材7を同時かつ容易に引き裂くことができ、特に底面部材7の折り目10部分を容易に引き裂くことができる。
また、比較例7のようにレーザー加工等の2次加工を実施せずに、複数のフィルム層を積層して製造するだけで、フィルムシート11,21の易引裂性及び強度を同時に確保できるため、フィルムシート11,21やパウチ容器1の製造コストの増加も防止できる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
すなわち、直線カットフィルム層15の引き裂き方向は、底面部材7の折り目10に直交するとしたが、例えば折り目10に対して斜めに交差していてもよいし、例えば折り目10に平行していてもよい。さらに、直線カットフィルム層15の引き裂き方向は、例えばフィルムの流れ方向(X軸方向)と同一方向となるように設定されてもよい。
これらの場合、開封仮想線V1は、引き裂き方向と同様に折り目10に対して斜めに交差していてもよいが、少なくとも引き裂き方向に延びると共にいずれかのシール部9A,9B,9C及び未シール部に跨って通っていれば、例えば折り目10に対して交差しないように形成されていてもよい。したがって、開封仮想線V1は、例えば一対の側面部材3,5のみを引き裂くように設定されてもよいし、一対の側面部材3,5及び底面部材7の両方を引き裂くように設定されてもよい。
【0052】
また、フィルムシート11,21は、上記実施形態の構成に限らず、少なくとも基材フィルム層13、直線カットフィルム層15及びシーラントフィルム層19を順次積層して構成されていればよい。すなわち、フィルムシート11,21は、例えば印刷インキ層14を含まずに構成されていてもよい。
さらに、フィルムシート11,21は、基材フィルム層13とシーラントフィルム層19との間に配されてパウチ容器1の用途に応じた機能を有する中間層を備えていてもよい。さらに、この中間層としては、上記実施形態のようにガスバリア性フィルム層17や強化フィルム層27のいずれか一方だけを採用してもよいし、ガスバリア性フィルム層17及び強化フィルム層27の両方を採用してもよい。
【0053】
また、直線カットフィルム層15は、上記実施形態のように、基材フィルム層13と中間層との間に配置されることに限らず、少なくとも基材フィルム層13とシーラントフィルム層19との間に配されていればよい。したがって、直線カットフィルム層15は、例えば、中間層とシーラントフィルム層19との間に配されていてもよいし、中間層が複数のフィルム層によって構成される場合には、これら複数のフィルム層の間に配されてもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態のパウチ容器1は、所謂スタンディングパウチの構成となっているが、例えば底面部材7を使用せず、一対の側面部材3,5のみを厚さ方向に重ねると共にこれらの面方向の外周部を互いに溶着してシール部を形成することで構成されてもよい。
また、パウチ容器1は、上記実施形態に記載されたサイズのものに限らず、少なくとも複数のフィルムシートからパウチ容器1を製造する製袋機で製袋可能なサイズであればよく、例えばフィルムの流れ方向に長い形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態に係るパウチ容器を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1のパウチ容器を構成するフィルムシートの積層構造の一例を示す模式図である。
【図4】図1のパウチ容器を構成するフィルムシートの積層構造の他の例を示す模式図である。
【図5】図3,4のフィルムシートに使用する基材フィルム層、強化フィルム層に使用する材料フィルムの領域を示す模式図である。
【図6】フィルムシートの積層構造の比較例を示す模式図である。
【図7】フィルムシートの積層構造の比較例を示す模式図である。
【図8】フィルムシートの積層構造の比較例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 パウチ容器
3,5 側面部材
7 底面部材
9A,9B,9C シール部
10 折り目
12 基材フィルム(材料フィルム)
11,21 フィルムシート
13 基材フィルム層
15 直線カットフィルム層
17 ガスバリア性フィルム層
19 シーラントフィルム層
23 透明蒸着フィルム層
27 強化フィルム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層と、一方向のみに易引裂性を有する直線カットフィルム層と、シーラントフィルム層とを順次積層してなり、
前記基材フィルム層の分子配向に関する物性値として、その誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることを特徴とするフィルムシート。
【請求項2】
前記直線カットフィルム層の引き裂き方向が、フィルムの流れ方向に直交する方向に設定され、
前記基材フィルム層として、その材料となる基材フィルムから前記物性値を満たす部分を選択的に切り出して使用することを特徴とする請求項1に記載のフィルムシート。
【請求項3】
前記直線カットフィルム層と前記シーラントフィルム層との間に、機械的強度を補強するための強化フィルム層が設けられ、
当該強化フィルム層の分子配向に関する物性値として、その誘電率の最大値と最小値との差Δεを0.3以下とし、誘電率の最大値方位角を−40°以上+40°以下とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフィルムシート。
【請求項4】
前記基材フィルム層と前記シーラントフィルム層との間に、ガスバリア性フィルム層が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフィルムシート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフィルムシートを厚さ方向に複数重ねると共に、複数のフィルムシートの面方向の外周部を溶着したシール部を形成することで、当該シール部によって囲まれた未シール部の間に内容物が充填されるように構成され、
複数のフィルムシートを構成する複数の直線カットフィルム層の引き裂き方向が互いに一致していることを特徴とするパウチ容器。
【請求項6】
前記複数のフィルムシートが、厚さ方向に重ねられる一対の側面部材、及び、当該一対の側面部材の間に二つ折りの状態で介装される底面部材をなし、
各側面部材と底面部材とのシール部を底部としたスタンディングパウチとして構成されることを特徴とする請求項5に記載のパウチ容器。
【請求項7】
前記直線カットフィルム層の引き裂き方向が、前記底面部材の折り目に直交することを特徴とする請求項6に記載のパウチ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−291954(P2009−291954A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144824(P2008−144824)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】