説明

パケット交換局、サービングゲートウェイ装置及びPDNコネクション変更方法

【課題】複数PDNコネクションを切断する際にパケット交換局装置とサービングゲートウェイ装置との間で送受信される信号量を減らし、パケット交換局装置及びサービングゲートウェイ装置の処理負荷を軽減すること。
【解決手段】第1通信方式の移動通信システムにおいてUEが在圏していたエリアのS-GW15に対して、第2通信方式の移動通信システムにおいて前記UEが在圏するエリアのSGSN22から、S-GW15を起点にしてUEに対して設定しているPDNコネクションの変更を要求する方法であり、変更対象のPDNコネクション情報と切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な変更信号をSGSN22からS-GW15へ送信し、S-GW15においてタイマ起動要求を受けてタイマを起動し、タイマが満了したら変更信号に設定された切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象PDNコネクションを切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信ネットワークにおけるパケット交換局、サービングゲートウェイ装置及びPDN(Packet Data Network)コネクションの変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、通信方式の異なる複数の移動通信ネットワークが互いのサービスエリアを重複してサービス提供し、端末(UE:User Equipment)が通信方式を適宜切り替えて双方の移動通信ネットワークからサービス提供を受ける通信システムが検討されている。たとえば、既存通信方式であるUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式の移動通信ネットワークと次世代通信方式であるLTE(Long Term Evolution)方式の移動通信ネットワークとのコアネットワークを融合し、UMTS方式のみ対応のUEに対してもコアネットワーク経由でサービス提供を可能にする。また、LTE方式(及び既存方式)対応のUEに対してUMTS方式とLTE方式のどちらのネットワークにも接続できるようにして、LTE方式の移動通信ネットワークが未整備のエリアを、UMTS方式のサービスエリアで補完することもできる。
【0003】
UEがPDNからサービスを受ける場合、LTE方式であればeNodeB(基地局)とP-GW(外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置)との間にPDNコネクションを設定する。PDNコネクションは提供サービス毎に設定されるので、PDN(例えば、外部ネットワーク)から複数のサービス提供を受けていれば同時に複数のPDNコネクションが設定される。現状の3GPP仕様ではLTE方式は最大許容数PDNコネクション数が7である。一方、UMTS方式の無線アクセスネットワークに接続しているUEがPDNからサービス提供を受ける場合、RNC(制御局装置)とSGSN(パケット交換局装置)との間にPDNコネクションが設定され、さらにSGSNからS-GWを経由してP-GWとの間にPDNコネクションが設定される。3GPP仕様ではUMTS方式は最大許容数PDNコネクション数が2である。
【0004】
上記した通り、LTE方式とUMTS方式とで最大許容数PDNコネクション数が異なる。このため、LTE方式からUMTS方式へのInter RAT HO(Inter RAT Handover)やRAU(Routing Area Update)において、接続を継続できないPDNコネクションは切断する必要がある。
【0005】
図7は、複数PDNコネクションを切断する際の手順を示す概念図である。
UEがE−UTRANからUTRANへInter RAT HOする際のPDNコネクション切断手順を例示している。対象移動機UEがE-UTRANのeNodeBに接続しており、PDNから複数のサービス提供を受けている。同図では、対象移動機UEが4つのPDNコネクションにてPDNに接続していて、4種類のサービス提供を受けている。図8に1つのPDNコネクションの概念図を示す。PDN接続時において、最初にデフォルトベアラ(Default Bearer)が設定される。デフォルトベアラは、PDN接続中は常に設定されていて、常時接続機能を提供する。デフォルトベアラが切断されると、PDNコネクションが切断される。デフォルトベアラ設定後の任意のタイミングで、QoS制御を必要とするアプリケーション等により、必要に応じてデディケイテッドベアラ(Dedicated Bearer)が設定される。PDNコネクションは、デフォルトベアラと、当該デフォルトベアラに対してQoS単位で追加的に設定されるデディケイテッドベアラとで構成されているということができる。
【0006】
図7に示すように、対象移動機UEがE−UTRANからUTRANへ移動してInter RAT HOが発生した場合、対象移動機UEが接続しているeNodeBでハンドオーバープロセスが起動される。ハンドオーバープロセスが起動されたeNodeBは、接続しているMME(移動制御装置)に対して対象移動機UEが接続中の全PDNコネクション情報(PDNコネクション接続中に維持されるデフォルトベアラのID)やTarget RNC番号を含むハンドオーバーリクエストを送出する。MMEはTarget RNC情報からその上位となるSGSNを導出し、受信した全PDNコネクション情報をTarget SGSNへ送出する。Target SGSNは受信した全PDNコネクションの中から引継ぎ対象とするベアラを選出し、Target RNCに無線区間のセットアップ要求を送出する。同図には、Target SGSNが全部で4つのPDNコネクション情報を受信し、その中から1つのPDNコネクションだけを引継ぎ対象とした例が示されている。Target SGSNは引継ぎ対象としなかった3つのPDNコネクションを切断する。そのため、3つのPDNコネクションの切断要求をSource S-GWに対して送出する。3GPP仕様(TS29.274)では、PDNコネクションの切断にはGTPv2信号を用いるよう規定されているが、GTPv2信号にはPDNコネクションを複数設定できない。そのため、図7に示すように、複数PDNコネクションを切断する場合、Source S-GWに対して切断信号を3回繰り返し送信する。Source S-GWは、切断信号を受けたPDNコネクションを切断する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS29.274 7.2.9.1 “Delete Session Request”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数PDNコネクションを切断する場合、Target SGSNからSource S-GWに対して切断対象の個々のPDNコネクションに対応して切断信号を繰り返し送信する必要があるので、切断PDNコネクション数の増加に応じて信号量が増えることによる処理能力上の課題がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数PDNコネクション切断時の一括切断を実現でき、複数PDNへの同時接続時のハンドオーバやRAU処理における信号処理を削減し、複数PDNコネクションサービスの提供時のコアネットワークへの負荷を軽減できるパケット交換局、サービングゲートウェイ装置及びPDNコネクション変更方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のPDNコネクション変更方法は、第1通信方式の移動通信システムにおいて対象移動機が在圏していたエリアのサービングゲートウェイ装置に対して、第2通信方式の移動通信システムにおいて前記対象移動機が在圏するエリアのパケット交換局から、前記サービングゲートウェイ装置を起点にして対象移動局に対して設定しているPDNコネクションの変更を要求するPDNコネクション変更方法であり、変更対象のPDNコネクション情報と切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な構造を有する変更信号を前記パケット交換局から前記サービングゲートウェイ装置へ送信する工程と、前記変更信号を受信した前記サービングゲートウェイ装置が前記変更信号に設定された前記タイマ起動要求を受けてタイマを起動する工程と、前記タイマが満了したら前記変更信号に設定された前記切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象PDNコネクションを切断する工程と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、変更処理の中で切断対象PDNコネクション情報とタイマ起動要求を設定した変更信号をサービングゲートウェイ装置へ送信することで、サービングゲートウェイ装置でタイマ満了後に切断対象PDNコネクション情報に基づいて切断対象PDNコネクションを切断することができ、従来方式のように全ての切断対象PDNコネクションの数だけ切断要求を繰り返し送信するのに比べて、信号量を削減でき、パケット交換局及びサービングゲートウェイ装置の処理負荷を軽減できる。
【0012】
本発明のPDNコネクション変更方法は、前記サービングゲートウェイ装置が前記タイマ起動要求を受けて起動させたタイマのタイマ起動結果が含まれた変更応答信号を、前記サービングゲートウェイ装置から前記パケット交換局へ送信する工程を、具備したことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、サービングゲートウェイ装置がタイマ起動要求を受けて起動させたタイマのタイマ起動結果が含まれた変更応答信号が変更応答として送られるので、サービングゲートウェイ装置がタイマ起動機能をサポートしているか否か判断でき、タイマ起動機能をサポートしていない場合、自動的に従来方式に動作を切り替えることができ、後方互換性を確保できる。
【0014】
本発明のPDNコネクション変更方法は、前記パケット交換局が前記変更信号を用いてPDNコネクションの変更要求した後、前記サービングゲートウェイ装置から受信した変更応答信号に、タイマ起動結果が明示されていない場合、変更処理後の切断処理において、切断対象のPDNコネクションを1つだけ設定した切断信号を、切断対象のPDNコネクション数だけ繰り返し送信することを特徴とする。
【0015】
これにより、サービングゲートウェイ装置がタイマ起動機能をサポートしていない場合、自動的に従来方式に動作を切り替えることができ、後方互換性を確保できる。
【0016】
本発明は、上記PDNコネクション変更方法において、前記前記パケット交換局から前記変更信号を受信した前記サービングゲートウェイ装置が、外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置毎に前記変更信号を転送することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置に切断対象PDNコネクション情報と変更対象PDNコネクション情報とタイマ起動要求とを含んだ変更信号を送信するので、外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置でタイマ満了後に切断対象PDNコネクションを切断でき、サービングゲートウェイ装置との間の信号量を削減でき、外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置とサービングゲートウェイ装置の処理負荷を軽減できる。
【0018】
本発明のPDNコネクション変更方法は、第1通信方式の移動通信システムにおいて対象移動機が在圏していたエリアのサービングゲートウェイ装置に対して、第2通信方式の移動通信システムにおいて前記対象移動機が在圏するエリアのパケット交換局から、前記サービングゲートウェイ装置を起点にして対象移動局に対して設定しているPDNコネクションの変更を要求するPDNコネクション変更方法であり、前記パケット交換局から変更要求を受けたサービングゲートウェイ装置が、変更対象のPDNコネクション情報と切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な構造を有する変更信号を外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置へ送信する工程と、前記変更信号を受信した前記外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置がタイマ満了後に前記変更信号に設定された前記切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象のPDNコネクションを切断する工程と、と具備したことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、サービングゲートウェイ装置と外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置との間に設定されている複数PDNコネクション切断時の一括切断を実現でき、複数PDNへの同時接続時のハンドオーバやRAU処理における信号処理を削減し、複数PDNコネクションサービスの提供時のコアネットワークへの負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数PDNコネクション切断時の一括切断を実現でき、複数PDNへの同時接続時のハンドオーバやRAU処理における信号処理を削減し、複数PDNコネクションサービスの提供時のコアネットワークへの負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動通信システムの概略を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるS-GWおよびSGSNの機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるPDNコネクションの変更及び切断処理のシーケンス図である。
【図4】GTPv2信号を拡張した変更信号の主に拡張部分のフォーマットを示す図である。
【図5】GTPv2信号を拡張した変更応答信号の主に拡張部分のフォーマットを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるS-GWの動作を示すフローチャートである。
【図7】複数PDNコネクションを切断する際の手順を示す概念図である。
【図8】PDNコネクションとベアラとの関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る通信システムの概略的なシステム構成図であり、通信方式の異なる第1通信システム及び第2通信システムが示されている。第1通信システムは、LTE方式の移動通信ネットワークであり、無線アクセスネットワークはE−UTRAN(Evolved−UTRAN)11で構成されている。また、第2通信システムは、UMTS方式の移動通信ネットワークであり、無線アクセスネットワークはUTRAN20で構成されている。移動機UEは第1通信システムと第2通信システムの双方に対応可能な端末であり、携帯電話機、パソコン、その他の情報機器である。
【0023】
コアネットワークは、主にEPC(Evolved Packet Core)で構成されているが、UMTS/GPRS(General Packet Radio Service)の機能エンティティ(SGSN)と一部で連携している。
【0024】
MME(移動制御装置)14は、移動機UEの位置を位置登録エリア単位で補足し、移動機UEの呼び出し制御を実施する機能エンティティである。MME(移動制御装置)14が移動機UE−ネットワーク間の信号(NAS信号)を終端し、NAS信号のセキュリティー機能を提供し、PDNへのアクセス認証/承認機能を提供する。
【0025】
S−GW15は、LTE無線内及びLTE−UMTS/GPRS無線間の経路切替えにおけるアンカーポイント機能を提供する機能エンティティである。移動機UEがIDLE状態の場合、移動機UE宛のパケットをバッファリングし、MME14へ呼び出し依頼を実施する。eNodeB13−S-GW15間のPDNコネクション並びに、S-GW15−P-GW16間のPDNコネクションの設定及び切断は、S-GW15が行う。
【0026】
P-GW16は、インターネット等の外部網(PDN17)への接続機能を提供し、移動機UEにIPアドレスを割り当てる機能エンティティである。また、P-GW16は、受信パケットを分析して、EPC内ベアラへのマッピングを実施する。
【0027】
SGSN22は、UMTS/GPRSの機能エンティティであり、UMTS/GPRSのUTRAN20に接続される移動機UEを、EPCの機能エンティティであるS−GW15に接続してEPC経由でPDN17へ接続する。SGSN22は、MME14から渡される複数PDNコネクションの中から引き継ぐべきPDNコネクションを選定する。UMTS/GPRSでは同時設定可能なPDNコネクション数は2である。
【0028】
E−UTRAN11からeNodeB13に接続しているUEに対しては、eNodeB13から直接S−GW15にベアラが設定されるが、UTRAN20から無線基地局に接続しているUEに対して、当該無線基地局を管理するRNC21からSGSN22にベアラが設定される。そして、SGSN22からS−GW15との間にベアラが設定され、S−GW15とP-GW16との間にベアラが設定される。すなわち、SGSN22からS−GW15−P-GW16経由でPDN17と接続する。
【0029】
ここで、S-GW15およびSGSN22におけるPDNコネクションの変更処理及び切断処理に関する機能について説明する。GTPv2の変更要求で使用される変更信号には、変更対象となるPDNコネクションを複数設定できる既存情報要素が用意されている。本発明は、変更信号(GTPv2)に切断PDNコネクションリストとPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定する拡張パラメタを追加する。SGSN22は、変更信号(GTPv2)の既存情報要素に変更対象となるPDNコネクション(引継ぎ対象PDNコネクションと一致)を設定し、拡張パラメタとして切断PDNコネクションリストとPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定してS-GW15へ送信する。また、SGSN22は、切断PDNコネクションリスト及びタイマ起動要求を設定した変更信号を送信した後、後述するタイマ起動機能に未対応であることを示す変更応答信号を受け取った場合、変更処理後に相手S-GWの処理能力に合わせて、PDNコネクションの切断信号をPDNコネクション数分だけ個別に送信する既存切断方式に切り替える機能を備える。S-GW15は、PDNコネクションの変更処理の中でPDNコネクション切断用のタイマを起動するタイマ起動機能を有すると共に、変更応答にPDNコネクション切断用にタイマ起動したことを示す情報ビットを設定する機能を有する。S-GW15は、PDNコネクション切断用のタイマ満了後に切断対象PDNコネクションをそれぞれ切断する機能を備える。S-GW15は、切断処理の実行後に、切断成功した複数のPDNコネクション情報を切断応答信号に一括で設定してSGSN22へ送信する機能を備えても良い。
【0030】
図2はS-GW15およびSGSN22の機能ブロック図であり、主に変更処理及び切断処理に関する機能ブロックの概略を示している。SGSN22は、S-GW15を起点にして設定している複数PDNコネクションのうち所定数のPDNコネクションを引き継ぎ、残りのPDNコネクションを切断対象にする引き継ぎ処理部22a、SGSN22が引継いだ変更対象PDNコネクション情報を設定可能であると共に切断PDNコネクションリスト及びPDNコネクション切断用のタイマ起動要求を設定可能な構造を有する変更信号をS-GW15へ送信する変更要求部22bと、S-GW15からPDNコネクション切断用のタイマを起動したことを明示する情報ビットが含まれた変更応答信号を受信する受信部22cと、を具備する。受信部22cが変更応答信号で受信したタイマ起動の有無に関する情報は変更要求部22bへ渡される。変更要求部22bはタイマ起動の有無が明示されていない場合はモードを通常処理のモードへ切替えることができる。
【0031】
また、S-GW15は、切断PDNコネクションリスト及びPDNコネクション切断用のタイマ起動要求を設定可能な構造を有する変更信号を受信する受信部15aと、受信部15aで受信された変更信号に設定されたタイマ起動要求に応じてPDNコネクション切断のためのタイマを起動するタイマ起動部15bと、PDNコネクション切断用のタイマ満了時に切断対象PDNコネクションの切断処理を実行する切断処理部15cと、変更応答信号にPDNコネクション切断用のタイマを起動したことを示す情報ビットを設定してSGSN22へ送信する変更応答部15dと、変更要求に応じて変更対象PDNコネクションをSGSN22へ接続する変更処理を実行する変更処理部15eと、を具備している。なお、切断処理部15cは、切断PDNコネクションリストに基づいて切断対象PDNコネクション特定する。
【0032】
次に、PDNコネクションの変更処理の中で実行されるPDNコネクション切断用のタイマ起動及び複数PDNコネクションの一括切断動作について具体的に説明する。
図1に示すように、移動機UEがE−UTRA11を介してeNodeB13に接続していて、移動機UEに対してS−GW15が7つのPDNコネクション#1〜#7を設定しているものとする。そして、移動機UEがE−UTRA11からUTRAN20へInter RAT HOし、SGSN22が1つだけPDNコネクションを引き継ぐと判断した場合について説明する。
【0033】
図3はS-GW15とSGSN22との間におけるPDNコネクションの変更処理のシーケンス図である。SGSN22は、MME14から移動機UEについて設定している全てのPDNコネクション#1〜#7に関するPDNコネクション情報(各PDNコネクション#1〜#7のデフォルトベアラID)やTarget RNC番号を含むハンドオーバーリクエストを受け取る。SGSN22は、受信した全PDNコネクション情報から引継ぎ対象とするPDNコネクション#1を選出し、RNC21に無線区間のセットアップ要求を送出する。これにより、SGSN22とRNC21との間に引継ぎ対象とするPDNコネクション#1が設定される。
【0034】
一方、SGSN22は、全ての変更対象(引継ぎ対象)PDNコネクション情報(#1)、引き継ぎしないで切断する6つのPDNコネクション(#2から#7)のリストである切断PDNコネクションリスト及びPDNコネクション切断用のタイマ起動要求を含んだ変更信号をS−GW15に対して送出する(ステップS1)。GTPv2信号を拡張して切断PDNコネクションリストとPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な構造にした変更信号を送信することによって変更要求が実行される。S-GW15及びP-GW16は、変更信号から切断PDNコネクションリストを取り出し、タイマ満了後に切断PDNコネクションリストにしたがってPDNコネクションを切断するので、切断処理工程で切断対象PDNコネクション情報を設定した切断信号の送信を繰り返す必要がなくなる。また、切断処理の前段で実行されるPDNコネクションの変更処理の中でPDNコネクション切断用のタイマ起動要求がS-GW15に伝えられるので、PDNコネクションの変更処理後に切断要求を行う必要がなくなる。これにより、複数PDNコネクションを切断するために必要であった信号量の低減を図ることができる。
【0035】
図4にGTPv2信号を拡張した変更信号の信号フォーマットを示す。同図に示すように、変更信号の拡張パラメタとして情報要素F1、F2を追加している。情報要素F1は“切断対象Bearerリスト”であり、切断対象となる各PDNコネクションのデフォルトベアラIDのリストが設定される。情報要素F2は“タイマ起動要求”であり、切断対象PDNコネクションの切断タイミングを定めたタイマの起動を要求する情報ビットが設定される。既存情報要素Fnには、SGSN22が引き継ぐべき変更対象のPDNコネクション情報が設定される情報要素が含まれる。すなわち、変更対象PDNコネクション情報を通知するための変更信号に、切断PDNコネクションリストとPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能にすることで、1つの変更信号を送るだけで、S-GW15において切断対象となる全てのPDNコネクションおよび切断タイミングを1回で通知できる。なお、情報要素F3“Private Extention”はプライベートな拡張領域である。なお、各情報要素に対応して示す符号COは条件付きオプションパラメタ、Oはオプションを示している。図5においても同様である。
【0036】
S-GW15は、SGSN22から変更信号(図4)を受信すると、当該変更信号に設定された変更対象のPDNコネクション情報を取り出し、変更対象のPDNコネクションをSGSN22へ接続する変更処理を実行する。また、S-GW15は、変更信号に設定されたタイマ起動要求を受けてPDNコネクション切断用のタイマを起動する(ステップS2)。変更処理後にSGSN22へ送信する変更応答信号にPDNコネクション切断用のタイマを起動したことを明示する情報ビット設定する。タイマ起動を明示した情報ビットが設定された変更応答信号がSGSN22へ送信される(ステップS3)。
【0037】
図5にGTPv2信号を拡張した変更応答信号の信号フォーマットを示す。変更応答信号は、拡張パラメタとして情報要素F11を含んで構成されている。情報要素F11は“タイマ起動結果”が設定される。
【0038】
S-GW15が変更信号内の“切断対象Bearerリスト”(F1)及び“タイマ起動要求”(F2)を解釈してPDNコネクション切断用のタイマを起動するタイマ起動機能を備えていない場合、当然に変更応答信号内の情報要素F11に“タイマ起動結果”は明示されない。このようなタイマ起動機能非対応のS-GW15は、変更信号内の既存情報要素しか認識しないので、変更対象PDNコネクション情報にしたがってPDNコネクションの変更処理だけを実行する。
【0039】
SGSN22は、S-GW15から変更応答信号(図5)を受信すると、変更応答信号の情報要素F11に“タイマ起動結果”が明示されているか否かチェックすることで、S-GW15がタイマ起動機能を備えているか否か判断する(ステップS4)。S-GW15が変更信号(図4)の拡張パラメタである情報要素F1、F2を認識して、切断対象PDNコネクションをタイマ満了後に切断するタイマ起動機能を搭載していれば、変更応答信号(図5)の情報要素F11に“タイマ起動結果”が明示される。一方、変更応答信号(図5)が既存情報要素のみで情報要素F11に“タイマ起動結果”が明示されていなければ、S-GW15はタイマ起動機能を備えていないと判断できる。S-GW15がタイマ起動機能非対応であることが判明すれば、変更信号に切断PDNコネクションリスト及びタイマ起動要求を設定してタイマ切断するモードから、従来方式のPDNコネクション毎に切断信号を送信するモードに切り替える(図3中の(b)の通常処理)。
【0040】
また、SGSN22は、ステップS4の処理でS-GW15がタイマ起動機能を備えていると判断した場合、自ノード上の変更対象PDNコネクション以外の情報を削除する(ステップS5)。
【0041】
一方、S-GW15は、ステップS2でタイマ起動要求を受けて起動したPDNコネクション切断用のタイマが満了したところで、全ての切断対象PDNコネクションを切断する(ステップS6)。PDNコネクション切断用のタイマは任意の時間を設定可能であり、0秒に設定されていれば即座(ステップS2と並列)に切断処理が開始される。S-GW15は、変更信号に設定されている切断PDNコネクションリストである“切断対象Bearerリスト”(F1)にしたがって切断対象PDNコネクション(デフォルトベアラ)を特定する。
【0042】
なお、無線区間の理由によりハンドオーバコマンド送出後にキャンセルが生じた場合、PDNコネクション切断用のタイマ満了前であれば、切断処理がキャンセルされることになる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、SGSN22とS-GW15との間で切断対象となる複数PDNコネクションに関する切断要求および切断応答を排除して信号量の増大を抑制することができ、SGSN22及びS-GW15の処理負荷を軽減できる。また、タイマ起動機能を備えていないS-GW15に対する後方互換性も確保することができる。
【0044】
次に、S-GW15とP-GW16との間のPDNコネクションの切断処理の内容について説明する。
1つの対象移動機UEに関して複数のPDNコネクションが設定されている場合、幾つかのP-GW16との間に1つ又は複数の切断対象PDNコネクションが接続されている可能性がある。たとえば、第1のP-GW16(1)には切断対象PDNコネクション#2から#4が接続され、第2のP-GW16(2)には切断対象PDNコネクション#5から#7が接続されているケースが想定される。このように、1つのS-GW15と複数のP-GW16との間に切断対象PDNコネクションが設定されている可能性があるので、S-GW15は各P-GW16に対して引継ぎ対象PDNコネクション、切断PDNコネクションリスト及びタイマ起動要求が一括して設定された変更信号を転送する。
【0045】
図6はS-GW15がSGSN22から変更要求を受信してP-GW16との間のPDNコネクションを切断するフロー図である。前提として、SGSN22が、変更信号に対して図4に示す信号フォーマットで変更対象(引継ぎ対象)PDNコネクションリスト(Fn)と切断対象Bearerリスト(F1)とタイマ起動要求(F2)を設定する。
【0046】
S-GW15は、SGSN22から受信した変更信号の拡張パラメタに“タイマ起動要求”(F2)が設定されていれば(ステップS21)、当該変更信号から変更対象PDNコネクションリスト(Fn)と切断対象Bearerリストとを取得する(ステップS22)。S-GW15は、SGSN22から受信した変更信号を各P-GW16に対して転送する(ステップS23)。
【0047】
S-GW15は、P-GW16がタイマ起動機能対応であるか否か判断し(ステップS24)、タイマ起動機能非対応であれば、P-GW16に対して切断対象Bearerリストの各Bearerに関する切断信号を個別に送信する(ステップS25)。そして、S-GW15は、ステップS22で取得した変更対象PDNコネクションリスト(Fn)に基づいて変更対象PDNコネクションについてSGSN22に接続するための変更処理を実行する(ステップS26)。また、S-GW15は、変更信号から取り出したタイマ起動要求に応じてPDNコネクション切断用のタイマを起動する(ステップS27)。タイマ起動した後、変更処理結果及びタイマ起動結果をSGSN22へ通知するための変更応答信号を生成する。図5に示すようにタイマ起動結果(F11)が設定された変更応答信号をSGSN22へ送信する(ステップS28)。
【0048】
S-GW15は、PDN切断用のタイマが満了したら(ステップS29)、“切断対象Bearerリスト”(F1)記載のデフォルトベアラを切断する(ステップS30)。“切断対象Bearerリスト”記載のすべてのデフォルトベアラについて切断処理する(ステップS31,32)。切断処理を切断鑑賞したPDNコネクションの接続情報を削除する(ステップS33)。
【0049】
なお、SGSN22から受信した変更信号の拡張パラメタF2に“タイマ起動要求”(F2)が設定されていなければ(ステップS21)、既存の変更処理を実行し(ステップS34)、タイマ起動結果の含まれない通常の変更応答をSGSN22へ送信する(ステップS35)。
【0050】
このように、S-GW15がSGSN22から受信した変更信号(変更対象PDNコネクションリスト(Fn)と切断PDNコネクションリスト(F1)及びPDN切断用のタイマ起動要求(F2)が設定されている)を、各P-GW16へ転送してP-GW16が引継ぎ対象PDNコネクションリスト(Fn)と切断PDNコネクションリスト(F1)から切断対象PDNコネクションを特定して切断できるようにしたので、S-GW15とP-GW16との間での切断要求と切断応答の送受信回数を削減でき、S-GW15及びP-GW16の処理負荷の軽減を図ることもできる。S-GW15は、SGSN22から受信した変更信号(図4)を各P-GW16へ転送するだけで良いので、S-GW15の処理負荷は大幅に軽減できる。
【0051】
また、S-GW15からP-GW16へ送信される信号は、複数の切断対象PDNコネクションをP-GW16で認識できる信号フォーマットであれば良く、変更信号の拡張パラメタにタイマ起動要求(F2)と変更対象PDNコネクションリスト(Fn)と切断PDNコネクションリスト(F1)とを設定する形式に限定されない。
【0052】
以上のように、本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0053】
11 E-UTRAN
13 eNodeB
14 MME
15 S-GW
15a 受信部
15b タイマ起動部
15c 切断処理部
15d 変更応答部
15e 変更処理部
16 P-GW
17 PDN
20 UTRAN
21 RNC
22 SGSN
22a 引き継ぎ処理部
22b 変更要求部
22c 受信部
UE 移動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信方式の移動通信システムにおいて対象移動機が在圏していたエリアのサービングゲートウェイ装置に対して、第2通信方式の移動通信システムにおいて前記対象移動機が在圏するエリアのパケット交換局から、前記サービングゲートウェイ装置を起点にして対象移動局に対して設定しているPDNコネクションの変更を要求するPDNコネクション変更方法であり、
変更対象のPDNコネクション情報と切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な構造を有する変更信号を前記パケット交換局から前記サービングゲートウェイ装置へ送信する工程と、
前記変更信号を受信した前記サービングゲートウェイ装置が前記変更信号に設定された前記タイマ起動要求を受けてタイマを起動する工程と、
前記タイマが満了したら前記変更信号に設定された前記切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象PDNコネクションを切断する工程と、
を具備したことを特徴とするPDNコネクション変更方法。
【請求項2】
前記サービングゲートウェイ装置が前記タイマ起動要求を受けて起動させたタイマのタイマ起動結果が含まれた変更応答信号を、前記サービングゲートウェイ装置から前記パケット交換局へ送信する工程を、具備したことを特徴とする請求項1記載のPDNコネクション変更方法。
【請求項3】
前記パケット交換局が前記変更信号を用いてPDNコネクションの変更を要求した後、前記サービングゲートウェイ装置から受信した変更応答信号に、タイマ起動結果が明示されていない場合、変更処理の後の切断処理において、切断対象のPDNコネクションを1つだけ設定した切断信号を、切断対象のPDNコネクション数だけ繰り返し送信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のPDNコネクション変更方法。
【請求項4】
前記前記パケット交換局から前記変更信号を受信した前記サービングゲートウェイ装置が、外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置毎に前記変更信号を転送することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のPDNコネクション変更方法。
【請求項5】
第1通信方式の移動通信システムにおいて対象移動機が在圏していたエリアのサービングゲートウェイ装置に対して、第2通信方式の移動通信システムにおいて前記対象移動機が在圏するエリアのパケット交換局から、前記サービングゲートウェイ装置を起点にして対象移動局に対して設定しているPDNコネクションの変更を要求するPDNコネクション変更方法であり、
前記パケット交換局から変更要求を受けたサービングゲートウェイ装置が、変更対象のPDNコネクション情報と切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求とを設定可能な構造を有する変更信号を外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置へ送信する工程と、
前記変更信号を受信した前記外部ネットワーク接続ゲートウェイ装置がタイマ満了後に前記変更信号に設定された前記切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象のPDNコネクションを切断する工程と、
と具備したことを特徴とするPDNコネクション変更方法。
【請求項6】
第1通信方式の移動通信システムにおいてサービングゲートウェイ装置を起点にして対象移動局に対して設定しているPDNコネクションを第2通信方式の移動通信システム側で引き継ぐパケット交換局であり、
前記サービングゲートウェイ装置を起点にして設定している複数PDNコネクションのうち所定数のPDNコネクションを引継ぎ対象に決定する引き継ぎ処理手段と、
引き継ぎ対象とならなかった切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求を設定可能な構造を有する変更信号を前記サービングゲートウェイ装置へ送信する変更要求手段と、
前記サービングゲートウェイ装置から前記タイマ起動要求に対するタイマ起動結果が含まれた変更応答信号を受信する受信手段と、
を具備することを特徴とするパケット交換局。
【請求項7】
第1通信方式の移動通信システムにおいて対象移動局に対して設定しているPDNコネクションの起点となるサービングゲートウェイ装置であり、
前記PDNコネクションを第2通信方式の移動通信システム側で引き継ぐパケット交換局から送信される切断対象のPDNコネクション情報とPDNコネクション切断用のタイマ起動要求を設定可能な構造を有する変更信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された前記変更信号に設定された前記タイマ起動要求に対応してPDNコネクション切断用のタイマを起動させるタイマ起動手段と、
前記タイマが満了したら前記変更信号に設定された前記切断対象のPDNコネクション情報に基づいて切断対象PDNコネクションを切断する切断処理手段と、
を具備したことを特徴とするサービングゲートウェイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−44255(P2012−44255A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180977(P2010−180977)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】