説明

パケット転送システム、パケット送信装置およびパケット受信装置

【課題】
従来は、同一対地回線を流通する異なる要求品質クラスの全サービストラフィックに無瞬断サービスが適用されていた。
【解決手段】
本発明では、送信側装置では、サービス識別子が付加されたパケットを入力して、サービス識別子を識別し、特定のサービス識別子である場合は、パケットの送信順序を識別するためのシーケンス番号を付与して2つの同一パケットにコピーして異なる経路で送信し、特定のサービス識別子でない場合は、いずれか一方の経路に送信し、受信側装置では、異なる経路から受信するパケットのサービス識別子が特定のサービス識別子である場合は、受信バッファにバッファリングしてシーケンス番号が同一のパケットのいずれかを選択し、異なる経路から受信するパケットに付加されたサービス識別子が特定のサービス識別子でない場合は、受信したパケットをそのまま転送することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無瞬断でパケット伝送を行うパケット転送システム、パケット送信装置およびパケット受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパケット無瞬断技術は、送信側の装置で送信パケットをコピーして異なる経路で送信し、受信側の装置で異なる経路から受信したパケットをメモリにバッファリングして両系パケットのいずれかを選択することにより、故障時の無瞬断切り替えを実現していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、NGNのように、音声、映像、インターネットなどネットワークサービスが多様化し、要求品質が異なるサービスを同一のネットワークに収容することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4074268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のパケット無瞬断技術は、同一対地回線の要求品質が異なる全トラフィックに対応する技術であるため、冗長系経路差の増加、回線速度の増加(例えば10Gbpsや40Gbpsから100Gbpsへの増加)に伴う必要メモリ数の増加、メモリ処理速度の高速化などが課題であった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、異なるサービスの全トラフィックが無瞬断レベルの同じ品質を必要としていない点に着目し、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することにより、受信側の装置に求められるメモリ容量や要求性能を低減し、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができるパケット転送システムおよび送信装置並びに受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパケット転送システムは、ネットワーク上でパケット転送を行うパケット転送システムにおいて、送信側装置では、サービス種別を示すサービス識別子が付加されたパケットを入力して、前記パケットに付加された前記サービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別し、入力する前記パケットが前記特定のサービス識別子である場合は、前記パケットの送信順序を識別するためのシーケンス番号を付与して2つの同一パケットにコピーし、コピーされた2つの前記パケットを異なる経路で送信し、入力する前記パケットが前記特定のサービス識別子でない場合は、前記経路のいずれか一方の経路に送信し、受信側装置では、異なる経路から受信する前記パケットに付加された前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子である場合は、受信バッファにバッファリングして前記シーケンス番号が同一のパケットのいずれかを選択して前記シーケンス番号順に下流に転送し、異なる経路から受信する前記パケットに付加された前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子でない場合は、受信したパケットをそのまま下流に転送することを特徴とする。
【0008】
これにより、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、受信側の装置に求められるメモリ容量や要求性能を低減し、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0009】
特に、前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別することを特徴とする。
【0010】
また、前記パケットは、MPLS−TPのPWE3フレームに対応し、前記フレームのコントロールワードに前記シーケンス番号を格納することを特徴とする。
【0011】
さらに、前記VLANタグのCOS値を前記MPLS−TPのLSPラベルにマッピングすることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るパケット送信装置は、サービス種別を示すサービス識別子が付加されたパケットを入力して、前記パケットに付加された前記サービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別子データベースを参照して識別するパケット識別手段と、前記パケットの送信順序を識別するためのシーケンス番号を付与するシーケンス番号付与手段と、前記シーケンス番号が付与されたパケットを2つの同一パケットにコピーして、それぞれのパケットを異なる経路で送信するコピー分岐手段とを有し、前記パケット識別手段で識別されたパケットが前記特定のサービス識別子である場合は、前記シーケンス番号付与手段でシーケンス番号を付与し、前記コピー分岐手段でコピーして異なる経路で送信し、前記パケット識別手段で識別されたパケットが前記特定のサービス識別子でない場合は、前記経路のいずれか一方の経路で送信することを特徴とする。
【0013】
これにより、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、受信側の装置を含むネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0014】
特に、前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、前記パケット識別手段は、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るパケット受信装置は、異なる経路から受信するパケットに付加されたサービス種別を示すサービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別子データベースを参照して識別するパケット識別手段と、前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子である場合は、受信バッファにバッファリングして前記パケットに付与されたシーケンス番号が同一のパケットのいずれかを選択して前記シーケンス番号順に下流に転送し、前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子でない場合は、受信したパケットをそのまま下流に転送するパケット選択手段とを有することを特徴とする。
【0016】
これにより、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、パケット受信装置に求められるメモリ容量や要求性能を低減し、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0017】
特に、前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、前記パケット識別手段は、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別することを特徴とする。
【0018】
これにより、同じネットワーク伝送装置間に複数のリンクが確立された場合でも、コントロールチャネル管理部は、1つのコントロールチャネルに統一してネットワーク伝送装置を制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、受信側の装置に求められるメモリ容量や要求性能を低減し、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るパケット転送システム100の全体構成を示す図である。
【図2】サービス種別毎に冗長伝送を制御する場合のパケット送信例を示す図である。
【図3】サービス種別毎に冗長伝送を制御しない場合のパケット送信例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るパケット送信装置101およびパケット受信装置102の構成例を示すブロック図である。
【図5】IEEE802.3qフレームのフォーマット例を示す図である。
【図6】PWE3フレームのフォーマット例を示す図である。
【図7】パケット選択部304の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係るパケット転送システム、パケット送信装置およびパケット受信装置の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るパケット転送システム100の一例を示す図である。パケット転送システム100では、パケット送信装置101からパケット受信装置102へ2つの経路を介してパケットを転送する。ここで、WP(Working Pass)は運用系のパス、PP(Protection Pass)は予備系のパスである。図1では、WPは中継装置103を経由するパスで、PPは中継装置104を経由するパスである。また、図1の例では1つの中継装置のみが描かれているが、複数の中継装置を経由しても構わない。
【0022】
本実施形態に係るパケット転送システム100は、サービスNWに接続されるサービスノード105から受信するパケットのサービス種別に応じて、冗長送信するか否かを判別する。そして、パケット送信装置101は、予め設定された高品質(無瞬断伝送)が要求されるサービス種別のパケットのみにシーケンシャル番号を付与してコピーし、WPとPPの2つの経路で冗長送信する。また、多少の瞬断を許容できる高品質が求められないサービス種別のパケットはWPまたはPPの1つの経路のみで送信する。一方、パケット受信装置102は、WPとPPの2つの経路から受信するパケットのサービス種別に応じて、パケット送信装置101で冗長送信された高品質パケットの場合は一旦バッファリングし、WPとPPの2つの経路から受信する同じシーケンシャル番号のパケットのいずれかを選択して下流のサービスノード106に転送する。また、高品質が求められないサービス種別のパケットは、そのまま下流のサービスノード106に転送する。
【0023】
このようにして、本実施形態に係るパケット転送システム100は、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの全パケットを冗長送信する必要がなくなり、特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0024】
図2は、VoIPや法人向けのサービスに用いられるEF(Explicit Foward)クラスの高品質パケット(パケットE)と、一般的なインターネットサービスに用いられるBE(Best Effort)クラスの低品質パケット(パケットB)とが混在するパケットをパケット送信装置101からパケット受信装置102に転送する様子を描いた図である。
【0025】
図2において、パケット送信装置101は、サービスNW側からパケットEとパケットBを入力する。そして、パケット送信装置101は、パケットBを経路WPのみに送信し、パケットEは同じシーケンシャル番号nを付与してコピーされたパケットEnを経路WPと経路PPの両方の経路から送信する。この場合、経路WPの中継装置103は、パケットBおよびパケットEnの両方のパケットを中継し、経路PPの中継装置104は、パケットEnのパケットのみを中継する。ここで、nはシーケンシャル番号を示す自然数である。
【0026】
図2の例では、パケット送信装置101で高品質パケットは、パケットE1、パケットE2、パケットE3、パケットE4、パケットE5のようにシーケンシャル番号nが付与されてコピーされ、中継装置103を経由する経路WPと、中継装置104を経由する経路PPとの両方の経路に送信される。
【0027】
そして、パケット受信装置102は、経路WPからのみ受信するパケットBはそのまま下流のサービスNW側に転送し、経路WPと経路PPの両方の経路から受信するパケットEnの同じシーケンシャル番号nのパケットのいずれかを選択して下流のサービスNW側に転送する。ここで、同じシーケンシャル番号nのパケットのいずれかを選択する方式として先着優先方式が知られている。先着優先方式では、経路WPまたは経路PPから受信する同じシーケンシャル番号nのパケットEnのうち先に受信したパケットEnを選択して下流に転送し、遅れて受信したパケットEnは破棄される。
【0028】
このようにして、本実施形態に係るパケット転送システム100では、高品質クラスのパケットEに対して無瞬断伝送を実現し、一般的なインターネットサービスなどに用いられる低品質クラスのパケットBについては、経路WP側が切断された場合に、瞬断を許容する他経路への切り替え等により対応することができ、1+1の経路構成で実現してもよいし、1:1の経路構成で実現してもよい。
【0029】
ここで、本実施形態に係るパケット転送システム100の特徴がわかり易いように、従来のパケット転送システム900におけるパケット転送の様子を図3に示す。図3において、従来のパケット送信装置901は、全ての品質クラスのパケットを経路WPと経路PPの両方の経路から冗長送信していたので、パケットBが経路PPにも流れることになり、経路PPで確保しなければならない帯域が増加するという問題があった。これに対して、図2で説明したように、本実施形態に係るパケット転送システム100におけるパケット送信装置101は、所定の品質クラスのパケットのみをコピーして経路PPから送信するので、経路PPで確保しなければならない帯域を削減することができる。
【0030】
また、従来のように全ての品質クラスのパケットを経路WPと経路PPの両方の経路から冗長送信する場合、図3のパケット受信装置902では、2つの経路から受信するパケットを選択するためにバッファリングしなければならないパケットが多くなり、また処理負荷も増えるので、大容量のバッファメモリの搭載や要求性能が高くなるという問題があった。これに対して、図2で説明したように、本実施形態に係るパケット転送システム100におけるパケット受信装置102は、所定の品質クラスのパケットのみをバッファリングしてパケット選択すればよいので、バッファメモリの削減や要求性能を低減することができる。
【0031】
次に、パケット送信装置101およびパケット受信装置102の構成例について図4を用いて説明する。尚、図4において、図1および図2と同符号のブロックは同じブロックを示す。
【0032】
パケット送信装置101は、パケット識別部201と、識別子DB(データベース)202と、SN(シーケンシャル番号)付与部203と、コピー分岐部204とを基本構成とし、さらにパケット識別部201内の入力順序設定部201aと、順序補正部205とで構成される。ここで、サービスノード105は、識別子付与部151を有し、パケット転送システム100で転送するパケットにサービス種別を示す識別子を付与するものとする。
【0033】
例えば、サービスNWに接続されるサービスノード105から受信するパケットのサービス種別を表す方法として、IEEE802.3qで標準化されたフレームを用いることができる。図5に示すように、IEEE802.3qフレームは、DA(宛先アドレス:Destination Address)と、SA(送信元アドレス:Source Address)と、VLAN(仮想LAN)タグと、Payload(ペイロード)とで構成される。そして、VLANタグの領域には、VLAN ID(VLAN識別子)と、COS(サービスクラス:Class Of Service)とが格納される。特にCOSは3ビットの値で表され、パケットの優先順位やサービス種別などを示す識別子として使用できる。そこで、本実施形態に係るパケット転送システム100では、サービスノード105の識別子付与部151でCOS値を設定する。例えばCOS値が7の場合は高品質パケットEを表し、COS値が6以下の場合は低品質パケットBを表すように予め決めておく。そして、識別子付与部151は、例えばサービスノード105から送信するパケットEに対してCOS値:7を設定し、パケットBに対してCOS値:1を設定する。
【0034】
尚、既存技術であるEthernet(登録商標)のCOS値だけでなく、IPv4対応のフレームの優先順位を記述する領域のDSCP(Differentiated Services Code Point)値、IPv6対応のフレームの優先順位を記述する領域のTC(Traffic Class)値、MPLSフレームのShimヘッダのEXP(Experimental)値などの値を上記の例のようにサービス種別を示す識別子として用いてもよい。或いは、未使用領域やペイロード領域などを利用して独自の識別子を設定してもよい。
【0035】
パケット識別部201は、サービスノード105からサービス種別を示す識別子が付与されたパケットを受信する。そして、識別子DB202を参照して、サービスノード105から受信するパケットが冗長伝送するサービス種別であるか否かを識別する。冗長伝送するサービス種別の場合は当該パケットをSN付与部203に出力し、冗長伝送しないサービス種別の場合は当該パケットを順序補正部205に出力する。ここで、サービスノード105から入力する冗長伝送するサービス種別のパケットと冗長伝送しないサービス種別のパケットとの入力順序を維持するために、入力順序設定部201aにより入力順序を示す番号を設定してSN付与部203または順序補正部205にそれぞれのパケットを出力する。
【0036】
先に図5で説明したVLANタグのCOS値を識別子として使用する場合は、サービスノード105から受信するパケットのCOS値を識別し、例えばCOS値:7の場合は冗長伝送するサービス種別のパケットであると判断し、COS値:6以下の場合は冗長伝送しないサービス種別のパケットであると判断する。
【0037】
識別子DB202は、様々なサービス種別の識別子毎に冗長送信するか否かの設定情報が記憶されている。例えば、VLANタグのCOS値を識別子として使用する場合は、OS値:7は冗長伝送し、COS値:6以下は冗長伝送しないという情報が記憶されている。尚、設定情報は、OpS(オペレーションシステム)の管理装置107から制御網を介して遠隔操作で設定、削除、更新が行われる。例えば図2で説明したように、サービス種別を示す識別子がVoIPや法人向けのサービスに用いられるEFクラスの高品質パケット(パケットE)である場合は冗長送信、一般的なインターネットサービスに用いられるBE(Best Effort)クラスの低品質パケット(パケットB)である場合は冗長送信しない、などの情報が識別子DB202に予め記憶されている。
【0038】
SN付与部203は、パケット識別部201から出力されるパケットEにシーケンシャル番号を付与してコピー分岐部204に出力する。
【0039】
ここで、パケットEにシーケンシャル番号を付与する例として、MPLS TPのPWE3対応のフレームを用いて説明する。図6に示すPWE3フレームは、LSP−Label(Label Switched Pass Label)と、EXP(Experimental)と、PW−Label(PseudoWireーLabel)と、CW(Control Word)とが先に図5で説明したIEEE802.3qフレームに付加されている。本実施形態に係るパケット転送システム100では、図6のPWE3フレームのCW領域をシーケンシャル番号の格納領域として使用する。例えばSN付与部203は、パケット識別部201が出力するパケットEを格納するPWE3フレームのCW領域に、順番にシーケンシャル番号を付与する。例えばCW領域内のSN領域は16ビットで表されるので、0x0001、0x0002、・・・のようにシーケンシャル番号をパケットEの入力順に付与する。
【0040】
尚、先に説明したパケット識別部201の入力順序設定部201aがサービスノード105から入力するパケットEおよびパケットBなど全てのパケットにシーケンシャル番号を付与する領域として、CW領域を使用しても構わない。この場合は、CW領域を入力順序設定用と、パケットEの冗長伝送用とに分けて使用してもよいし、共用してもよい。或いは、シーケンシャル番号を未使用領域やペイロード領域などを利用して独自のシーケンシャル番号を設定してもよい。入力順序設定用のシーケンシャル番号についても同様である。
【0041】
また、図6において、MPLS TP網内の無瞬断パケットの識別子としてCOS値をLSP−Label領域にマッピングして伝送するようにしてもよい。これにより、LSP−Labelを見るだけで無瞬断伝送対応のパケットであるか否かを判別することができる。
【0042】
コピー分岐部204は、SN付与部203から出力されるシーケンシャル番号が付与されたパケットEをコピーして二つの同じパケットEを作成し、一つのパケットEを経路PPから送信し、もう一つのパケットEを順序補正部205に出力する。
【0043】
順序補正部205は、コピー分岐部204から出力されるパケットEと、パケット識別部201から出力されるパケットBとの送信順序を調整する。送信順序の調整は、先に入力順序設定部201aで設定された入力順序を示すシーケンシャル番号を参照して、コピー分岐部204から入力するパケットEと、パケット識別部201から入力するパケットBとをサービスノード105から入力した時と同じ順番にして経路WPから送信する。
【0044】
このようにして、パケット送信装置101は、サービスノード105から入力するパケットのサービス種別に応じて冗長送信するパケットと冗長送信しないパケットとに分けて、冗長送信するパケットを2つの異なる経路から送信し、冗長送信しないパケットをいずれか1つの経路から送信するので、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの全パケットを冗長送信する必要がなくなり、特定種別のパケットのみに無瞬断サービスを適用することができ、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0045】
一方、パケット受信装置102は、パケット識別部301と、識別子DB(データベース)302と、受信バッファ303と、パケット選択部304とを基本構成とし、さらに故障検出部300を有する。ここで、故障検出部300は、パケット送信装置101から送信されたパケットに付与されたシーケンシャル番号により、各経路毎にパケット損失やパケット断などの故障検出を行い、管理装置107に通知する。尚、本実施形態に係るパケット転送システム100の特徴には直接関係しないので、詳細な説明は省略する。
【0046】
パケット識別部301は、故障検出部300を介して経路WPと経路PPから受信するパケットを入力する。そして、識別子DB302を参照して、受信するパケットが冗長伝送するサービス種別の識別子が付与されているパケットEの場合は、当該パケットEを受信バッファ303に出力し、冗長伝送しないサービス種別の識別子が付与されているパケットBの場合は、当該パケットBをパケット選択部304に出力する。先に説明した図2の例では、経路WPから受信するパケットEと経路PPから受信するパケットEを受信バッファ303に出力し、経路WPから受信するパケットBをパケット選択部304に出力する。
【0047】
例えば、先に図5で説明したVLANタグのCOS値を識別子として使用する場合は、パケット識別部301は、パケット送信装置101から経路WPまたは経路PPを介して受信する各パケットのCOS値を識別し、例えばCOS値:7の場合は冗長伝送するサービス種別のパケットEであると判断し、COS値:6以下の場合は冗長伝送しないサービス種別のパケットBであると判断する。
【0048】
識別子DB302は、識別子DB202と同様に、様々なサービス種別の識別子毎に冗長送信するか否かの設定情報が記憶されている。尚、設定情報についても、識別子DB202と同様に、管理装置107から制御網を介して遠隔操作で設定、削除、更新が行われる。
【0049】
受信バッファ303は、パケット識別部201で識別された経路WPのパケットEと経路PPのパケットEとが一時的に保持される。そして、パケット選択部304から選択された一方の経路から受信したパケットEが受信バッファ303から読み出され、読み出されたパケットEと同じシーケンシャル番号の別の経路から受信したパケットEは破棄される。
【0050】
パケット選択部304は、受信バッファ303に一時的に保持されているパケットEnをシーケンシャル番号nの順番に読み出すが、受信バッファ303には経路WPのパケットEnと経路PPのパケットEnとが保持されるので、そのいずれか一方のパケットEnを選択する。ここで、経路WPと経路PPは経路が異なるので同じ時刻にパケット送信装置101から送信されたとしても、パケット受信装置102で同じ時刻に受信されるとは限らない。そこで、パケット選択部304は、例えば時間的に早く受信バッファ303に取り込まれた方のパケットEnを読み出し、遅い方の同じシーケンシャル番号のパケットEnを廃棄する。このような先着優先方式により、二つの経路から受信するパケットEnのいずれかを選択して下流側のサービスノード106に送信する。尚、パケット選択部304は、パケット識別部301から出力されるパケットBと、受信バッファ303から読み出されたパケットEとの順序を調整して下流側のサービスノード106に送信する。
【0051】
図7は、パケット選択部304の構成例を示す図で、パケット選択部304は、高品質パケット選択部351と、順序補正部352とで構成される。図7において、経路WPから受信するパケットEおよびパケットBはパケット識別部301で高品質クラスのパケットEと、低品質クラスのパケットBとに識別される。そして、経路WPから受信したパケットEーWPnと経路PPから受信したパケットEーPPnは、受信バッファ303に一時的に記憶される。そして、高品質パケット選択部351は、受信バッファ303に一時的に記憶されたパケットEーWPnとパケットEーPPnのうち先着した方のパケットEを読み出して順序補正部352に出力する。図7の例では、高品質パケット選択部351は、パケットEーWPnを受信バッファ303から読み出し、パケットEーPPnは受信バッファ303から削除する。
【0052】
また、順序補正部352は、高品質パケット選択部351が出力するパケットEーWPnと、パケット識別部301から出力されるパケットBとの順序を調整して順番にサービスノード106に送信する。ここで、先に図4で説明したように、パケット識別部201の入力順序設定部201aと同様に、パケット受信装置102のパケット識別部301にも入力順序設定部を設けてパケット受信装置102が受信するパケットの順序と同じ順序でサービスノード106側に送信するようにしてもよい。
【0053】
尚、パケット送信装置101の入力順序設定部201aおよび順序補正部205と、パケット受信装置102の順序補正部352を設けずに、各パケットが衝突しないようにするためのバッファで構成しても構わない。
【0054】
このようにして、パケット受信装置102は、経路WPと経路PPから受信するパケットのサービス種別を判別して、冗長送信さてたパケットと冗長送信されていないパケットとに分け、冗長送信されたパケットのみを受信バッファ303に蓄積してパケット選択を行い、冗長送信しないパケットはそのまま下流側のサービスノード106に転送するので、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができ、パケット受信装置102に求められる受信バッファ303のメモリ容量やパケット選択部304に要求される性能を低減し、ネットワークシステムの低コスト化や実装容易性を実現することができる。
【0055】
以上、各実施形態で説明したように、本実施形態に係るパケット転送システム100は、同一対地回線を流通する要求品質クラスの異なるサービストラフィックの中の特定クラスのみに無瞬断サービスを適用することができる。
【0056】
尚、本発明に係るパケット転送システム、パケット送信装置およびパケット受信装置について、各実施形態で例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0057】
100、900・・・パケット転送システム
101、901・・・パケット送信装置
102、902・・・パケット受信装置
103・・・中継装置
104・・・中継装置
105・・・サービスノード
106・・・サービスノード
151・・・識別子付与部
201・・・パケット識別部
201a・・・入力順序設定部
202・・・識別子DB
203・・・SN付与部
204・・・コピー分岐部
205・・・順序補正部
300・・・故障検出部
301・・・パケット識別部
302・・・識別子DB
303・・・受信バッファ
304・・・パケット選択部
351・・・高品質パケット選択部
352・・・順序補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上でパケット転送を行うパケット転送システムにおいて、
送信側装置では、
サービス種別を示すサービス識別子が付加されたパケットを入力して、前記パケットに付加された前記サービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別し、
入力する前記パケットが前記特定のサービス識別子である場合は、前記パケットの送信順序を識別するためのシーケンス番号を付与して2つの同一パケットにコピーし、コピーされた2つの前記パケットを異なる経路で送信し、
入力する前記パケットが前記特定のサービス識別子でない場合は、前記経路のいずれか一方の経路に送信し、
受信側装置では、
異なる経路から受信する前記パケットに付加された前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子である場合は、受信バッファにバッファリングして前記シーケンス番号が同一のパケットのいずれかを選択して前記シーケンス番号順に下流に転送し、
異なる経路から受信する前記パケットに付加された前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子でない場合は、受信したパケットをそのまま下流に転送する
ことを特徴とするパケット転送システム。
【請求項2】
請求項1に記載のパケット転送システムにおいて、
前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別する
ことを特徴とするパケット転送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパケット転送システムにおいて、
前記パケットは、MPLS−TPのPWE3フレームに対応し、前記フレームのコントロールワードに前記シーケンス番号を格納する
ことを特徴とするパケット転送システム。
【請求項4】
請求項3のいずれか一項に記載のパケット転送システムにおいて、
前記VLANタグのCOS値を前記MPLS−TPのLSPラベルにマッピングする
ことを特徴とするパケット転送システム。
【請求項5】
サービス種別を示すサービス識別子が付加されたパケットを入力して、前記パケットに付加された前記サービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別子データベースを参照して識別するパケット識別手段と、
前記パケットの送信順序を識別するためのシーケンス番号を付与するシーケンス番号付与手段と、
前記シーケンス番号が付与されたパケットを2つの同一パケットにコピーして、それぞれのパケットを異なる経路で送信するコピー分岐手段と
を有し、
前記パケット識別手段で識別されたパケットが前記特定のサービス識別子である場合は、前記シーケンス番号付与手段でシーケンス番号を付与し、前記コピー分岐手段でコピーして異なる経路で送信し、前記パケット識別手段で識別されたパケットが前記特定のサービス識別子でない場合は、前記経路のいずれか一方の経路で送信する
ことを特徴とするパケット送信装置。
【請求項6】
請求項5に記載のパケット送信装置において、
前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、
前記パケット識別手段は、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別する
ことを特徴とするパケット送信装置。
【請求項7】
異なる経路から受信するパケットに付加されたサービス種別を示すサービス識別子が予め設定された特定のサービス識別子であるか否かを識別子データベースを参照して識別するパケット識別手段と、
前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子である場合は、受信バッファにバッファリングして前記パケットに付与されたシーケンス番号が同一のパケットのいずれかを選択して前記シーケンス番号順に下流に転送し、前記サービス識別子が前記特定のサービス識別子でない場合は、受信したパケットをそのまま下流に転送するパケット選択手段と
を有することを特徴とするパケット受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパケット受信装置において、
前記サービス識別子としてIEEE802.1qのVLANタグのCOS値を利用し、
前記パケット識別手段は、前記COS値が予め設定された特定のCOS値であるか否かを判別する
ことを特徴とするパケット受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−257136(P2012−257136A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129784(P2011−129784)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】