説明

パスタの風味改善方法

【課題】風味が改善されたパスタを提供する。
【解決手段】スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことによって、パスタの風味を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパスタの風味改善方法、詳細には、スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことを特徴とする、パスタの風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パスタはイタリアの麺類を総称した言い方で、様々な形状、風味を有するパスタがあり、スパゲティー、マカロニなどがその代表的なものである。
パスタ特有の風味、口当たりを付与するために、バター、バターオイル、マーガリン、ショートニングなどの油脂類を麺原料に添加することが知られている。(特許文献1)。
【0003】
スクラロースやソーマチンは、ショ糖の数百〜数千倍の甘味を有しており、高甘味度甘味料として、種々の食品の甘味付けなどに用いられている。
特許文献2には、スクラロースを添加することで、小麦粉やそば粉などを原料として加工調理される、中華麺やパスタなどの麺製品などの粉加工食品の粉臭をマスキングできることが記載されている。
また、特許文献3には、食塩含有食品にスクラロースを添加することを特徴とする食塩含有食品の風味向上法が記載されており、食塩含有食品としては、パスタソースやスナック麺などが例示されている。
しかしながら、スクラロースをパスタの原料に練り込むことによって、パスタの風味が改善できることはいずれにも記載されていない。
特許文献4には、ソーマチンを添加することで加熱処理臭がマスキングされたレトルト食品が記載され、ソーマチンをレトルト処理したパスタソースに使用することが記載されている。
しかしながら、ソーマチンをパスタの原料に練り込むことによって、パスタの風味が改善できることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−290010号公報
【特許文献2】WO00/24273号公報
【特許文献3】特開平8−205814号公報
【特許文献4】特開2001−112422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のバターなどの油脂類を麺原料に添加する方法では、コストが高くなるだけでなく、麺原料の素材の風味を生かせず、さらに、麺のこしなど物性面にも影響を及ぼす恐れがあり、好ましいものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことにより、パスタの風味を改善できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は下記に掲げるパスタの風味改善方法に関するものである。
項1.スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことを特徴とする、パスタの風味改善方法。
項2.パスタの原料である小麦粉100質量部に対して、スクラロースを1X10−6〜1X10−2質量部練り込む、項1記載のパスタの風味改善方法。
項3.パスタの原料である小麦粉100質量部に対して、ソーマチンを1X10−8〜1X10−3質量部練り込む、項1記載のパスタの風味改善方法。
【発明の効果】
【0008】
スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことにより、パスタの風味を改善することができる。
さらに、パスタソースと絡めたときに、パスタソースの風味も向上することができる効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことを特徴とする、パスタの風味改善方法に関するものである。
本発明に用いるスクラロースは、ショ糖の約600倍の甘味を有する高甘味度甘味料である。本発明で使用するスクラロースは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンスイートSU100等を挙げることができる。
また、本発明に用いるソーマチンは、ソーマトコッカス・ダニエリ(Thaumatococcus danielli BENTH.)という植物の果実から抽出したタンパク質で、ショ糖の約3000〜8000倍の甘味を有する高甘味度甘味料として知られている。
本発明で使用するソーマチンは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のネオサンマルクAG等を挙げることができる。
【0010】
本発明において、パスタの原料に添加するスクラロースやソーマチンの割合は、パスタの原料である小麦粉100質量部に対し、スクラロースであれば1X10−6〜1X10−2質量部、好ましくは1X10−5〜1X10−2質量部、さらに好ましくは5X10−5〜5X10−3質量部、また、ソーマチンであれば1X10−8〜1X10−3質量部、好ましくは5X10−8〜1X10−4質量部、さらに好ましくは7.5X10−8〜7.5X10−5質量部である。
パスタの原料である小麦粉100質量部に対して、スクラロースが1X10−6質量部より少ないか、又はソーマチンが1X10−8質量部より少ないと、パスタの風味の改善効果が十分ではなく、また、スクラロースが1X10−2質量部より多いか、又はソーマチンが1X10−3質量部より多いと、これら高甘味度甘味料の甘味が現れて、本来のパスタの風味が損なわれるので、いずれも好ましくない。
【0011】
パスタとしては、スパゲティー、マカロニなどが挙げられ、そのパスタを製造するための原料としては、小麦粉(強力粉)の他に、各種澱粉、卵などの蛋白素材、食塩、色素、増粘剤、油脂等が挙げられる。
パスタの製造方法の一例を挙げれば、例えば、小麦粉(強力粉が好ましい)に、スクラロース及び/又はソーマチンを添加・混合し、さらに必要に応じて、上記の各種澱粉、卵などの蛋白素材、食塩、色素、増粘剤、油脂等を適宜任意に添加・混合し、水を加えてミキサーによって混練してパスタの生地を作成した後、スクリュー型の押し出し機などによってパスタ生地の押し出しを行い、麺線とする。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の内容を以下の実験例及び実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の記載において、「%」は質量%を、「部」は質量部をそれぞれ示し、「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標をそれぞれ示す。
【0013】
実施例
表1及び表2の処方により、次の製法でパスタを製造した。
製法
(1)表1の材料全部を万能混合機に入れ、フックを用いて63rpmで10分間混合して、表2の高甘味度甘味料をパスタ原料に練り込む。
(2)生地を丸め、ラップをして冷蔵庫にて1時間寝かせる。
(3)ローラーを用いて1mmの厚さまで圧延する。
(4)5mm幅で麺線にする。
(5)沸騰した2Lのお湯に対し、食塩5gと麺100gを入れ、4分間茹でる。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

(注)ソーマチン0.15%含有製剤
【0016】
評価方法
ゆでた麺そのもの(実施例1または2)と、ソース2種(チーズクリーム、トマトガーリック)を絡めたもの(実施例1または2の調味付け品)を、スクラロースやソーマチンの無添加区(比較例1)の麺や、それに上記ソース2種を絡めたものと比較して風味がどのように変わっているか評価を行った。結果を表3に示す。
【0017】
【表3】

【0018】
表3の結果から明らかなように、スクラロースやソーマチンをパスタの原料に練り込むことで、パスタの風味が改善できることが分かる。
【0019】
実施例3
実施例1で使用したスクラロースの添加量を、それぞれ0.05g、2.5g、5gとして同様に麺を製造したところ、比較例1に比べて、実施例1同様、いずれも麺自体の風味が有意に引き立てられていた。
なお、スクラロースを5g添加したものは、若干甘味が感じられた。
【0020】
実施例4
実施例2で使用したネオサンマルクAG(ソーマチン0.15%含有製剤)の添加量を、それぞれ0.05g、25g、50gとして同様に麺を製造したところ、いずれも実施例2同様、比較例1に比べて麺自体はクセが抑えられて、あっさりとした風味になっていた。
なお、ネオサンマルクAGを50g添加したものは、若干甘味が感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明により、パスタの風味改善が図ることができるので、食品工業において有用である。






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラロース又はソーマチンをパスタの原料に練り込むことを特徴とする、パスタの風味改善方法。
【請求項2】
パスタの原料である小麦粉100質量部に対して、スクラロースを1X10−6〜1X10−2質量部練り込む、請求項1記載のパスタの風味改善方法。
【請求項3】
パスタの原料である小麦粉100質量部に対して、ソーマチンを1X10−8〜1X10−3質量部練り込む、請求項1記載のパスタの風味改善方法。