説明

パターニング方法、撮像フィルタ、及び撮像装置

【課題】高温での成膜が必要な厚い膜で、寸法精度良く微細なパターンを形成する。
【解決手段】レジスト42の耐熱温度を超える温度に加熱された後に、除去することができるアルミ膜41をガラス基板26の表面に成膜し、アルミ膜41上にレジスト42を塗布する。その後アルミ膜41上に一様な厚さにレジスト42を塗布し、露光及び現像して、アルミ膜41を部分的に露呈するレジストパターン43を形成する。次に、レジストパターン43をマスクとしてアルミ膜41をエッチングし、ガラス基板26の表面を露呈させ、アルミ膜41上にレジストパターン43を残したままの状態で、アルミ膜41よりも厚く、レジスト42の耐熱温度よりも高温で遮光膜27を成膜する。そして、アルミ膜41を希硝酸で溶解させることにより、焦げ付いたレジストパターン43とレジストパターン43上の遮光膜27を同時に除去し、開口28を有する遮光膜27のパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板等の表面に光学的機能を有する光学膜で所定のパターンを形成するパターニング方法に関するものであり、さらに詳しくは、数μm〜数十μmオーダーの比較的膜厚が厚い膜を成膜してパターンを形成するパターニング方法に関する。また、このパターニング方法によって形成されたパターンを有する撮像フィルタ、及びこの撮像フィルタを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板や半導体基板等の表面にサブミクロンオーダーの微細なパターンを形成する技術としてフォトリソグラフィが知られており、電子回路や光学素子等の製造に利用されている。フォトリソグラフィによるパターニングでは、基板表面に塗布されたレジストをマスクを通して露光し、これを現像することによってマスクに描かれたパターンをレジストに転写する。そして、レジストで形成されたパターン(以下、レジストパターンという)の上から金属薄膜や誘電体薄膜等を成膜した後、レジストパターンを除去することにより成膜した薄膜からなる凸状のパターンを形成したり、レジストパターンをマスクとして基板表面や基板表面に成膜された薄膜等をエッチングして凹状のパターンを形成する。
【0003】
フォトリソグラフィは、上述のように薄膜や浅い溝によってパターンを形成するときには、塗布するレジストの厚さを薄くすることができるので、マスクのパターンを正確な寸法精度でレジストに転写し、寸法精度が良いパターンを形成することができる。しかし、厚い膜や深い溝のパターンを形成しようとすると、形成するパターンの厚さや深さに応じて、基板表面にはレジストを厚く塗布する必要がある。このように厚い膜や深い溝のパターンを形成するときに、形成するパターンの寸法と比較してレジストの膜厚が同程度以上のオーダーになると、マスクでの回折光等の影響が無視できなくなり、レジストパターンの寸法精度が悪化してしまうことが知られている。
【0004】
こうしたことから、近年では、厚い膜や深い溝のパターンを寸法精度良く形成する技術が知られている。例えば、透明な基板の表面に寸法精度良く薄膜のパターンを予め形成し、その上にレジストを厚く塗布し、基板の裏面側から薄膜のパターンを平行光により露光することで、寸法精度良く厚いレジストパターンを形成する例が知られている(特許文献1)。また、深い溝のパターンを形成するときに、まず、基板表面に浅い溝のパターンを有する薄膜を形成し、次いで浅い溝に高い突起状のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして薄膜を複数層に成膜して、突起状のレジストパターンを除去することによって、薄膜の積層構造に深い溝のパターンを形成する方法が知られている(特許文献2)。さらに、フォトリソグラフィに利用する光を散乱する基板上にパターンを形成するときに、基板表面に薄い遮光膜を成膜しておき、その上に厚いレジストを塗布してレジストパターンを形成することによって、基板からの散乱光により所定寸法よりも広範囲のレジストが感光されることを防止し、レジストが厚い場合にも寸法精度良くレジストパターンを形成する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−50573号公報
【特許文献2】特開2005−142237号公報
【特許文献3】特開2001−22090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、フォトリソグラフィによるパターニングは、このレジストパターンをマスクとして基板表面に成膜やエッチング等の加工を施してパターニングを行う。このため、フォトリソグラフィによるパターニングは、レジストが剥離液等で容易に除去できることが前提となっている。しかし、レジストの耐熱温度は概ね100度程度であり、これを超える温度に加熱するとレジストが焦げ付き、剥離液等で除去することができなくなる。このため、レジストパターンをマスクとして金属や誘電体の膜を成膜するときには、これらをレジストの耐熱温度以下の温度で成膜する必要があり、場合によっては基板と膜との密着性が悪くなることがある。
【0007】
このようなレジストの耐熱温度を超える高温での成膜が必要な場合には、まず、フォトリソグラフィによって金属材料からなるパターンを基板表面に形成しておき、これをマスクとして所定の材料を高温で成膜し、そして金属のパターンを薬品で溶解させる等して基板から剥離することで、所定材料からなるパターンを形成することがある。しかしながら、こうして金属材料からなるパターンを基板表面に予め形成しておき、これをマスクとして高温の成膜を行う場合には、前述と同様に、厚い膜で寸法精度良くパターンを形成することが難しい。例えば、成膜する金属材料が厚いと、これをエッチングにより成形するときに、横方向(面方向)へのエッチングが無視できなくなり、金属のパターンを寸法精度良く形成することができなくなり、これをマスクとするパターンも同様に寸法精度が悪化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、高温での成膜が必要な厚い膜で、寸法精度良く微細なパターンを形成するパターニング方法を提供することを目的とする。また、この方法により形成されたパターンを有する撮像フィルタ、及びこの撮像フィルタを備える撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパターニング方法は、後の工程で塗布するレジストの耐熱温度を超える温度に加熱された後に、除去することが可能な可除去薄膜を基板の表面に成膜する可除去薄膜成膜工程と、前記可除去薄膜上に前記レジストを塗布し、一様な厚さのレジスト層を形成した後に、前記レジスト層を露光及び現像して、前記レジスト層を前記可除去薄膜を部分的に露呈するレジストパターンに成形するレジスト成形工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記可除去薄膜をエッチングし、前記基板の表面を前記レジストパターンに応じて部分的に露呈させるエッチング工程と、前記可除去薄膜上に前記レジストパターンを残したままの状態で、前記可除去薄膜よりも厚く、光学的機能を有する光学膜を、前記レジストの耐熱温度よりも高温で前記基板の表面に成膜する光学膜成膜工程と、前記可除去薄膜を所定溶液で溶解させることにより、前記光学膜成膜工程での加熱により剥離液で除去することができなくなった前記レジストパターンと、前記レジストパターン上に成膜された前記光学膜とを同時に除去し、前記基板の表面に、前記光学膜からなり前記レジストパターンを反転したパターンを有する光学膜パターンを形成する光学膜パターン形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記可除去薄膜は、0.2μm以下の厚さに成膜されることを特徴とする。
【0011】
また、前記可除去薄膜は、金属からなる薄膜であることを特徴とする。
【0012】
また、前記可除去薄膜は、アルミニウムからなることを特徴とする。
【0013】
また、前記エッチング工程では、異方性のドライエッチングによって、前記基板の表面に対して垂直に前記可除去薄膜をエッチングすることを特徴とする。
【0014】
前記エッチング工程では、等方性のウェットエッチングによって前記可除去薄膜をエッチングすることを特徴とする。
【0015】
また、前記光学膜は、入射光を反射または吸収する遮光膜であることを特徴とする。
【0016】
本発明の撮像フィルタは、上述のパターニング方法によって形成された前記光学膜パターンを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の撮像装置は、上述の撮像フィルタを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高温での成膜が必要な厚い膜で、寸法精度良く微細なパターンを形成することができる。また、こうして形成されたパターンを有することにより、透過光の輝度分布等、光学的な特性の良好な撮像フィルタ及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】イメージスキャナの構成を示す説明図である。
【図2】入射角度制限フィルタの構成を示す説明図である。
【図3】入射角度制限フィルタの製造工程を示す説明図である。
【図4】アルミ膜の膜厚と光学的特性の関係を示す説明図及びグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、イメージスキャナ11は、被写体12をイメージセンサ13に略密着させて撮像することにより、被写体12の表面(または表層の内部構造)を撮像する近接型の撮像装置であり、イメージセンサ13、カバーガラス14、LED16、ハイパスフィルタ(図示しない)、ローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18等から構成される。
【0021】
イメージセンサ13は、赤外光の波長帯に感度を持つ画素を正方形の撮像領域内に2次元に所定のピッチで配列したCMOS型のエリアイメージセンサであり、カバーガラス14に略密着して配置される。また、イメージセンサ13の前面(被写体12側)には、ローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18、ハイパスフィルタ等、薄い各種光学フィルタが配置される。また、イメージセンサ13の画素はそれぞれ正方形に形成され、所定のピッチで正方格子状に配列されている。なお、図1では、説明のためにイメージセンサ13と各種光学フィルタを分離してあるが、イメージセンサ13と各種光学フィルタは、接着剤や空気等を介して密着するように略一体に形成されている。
【0022】
カバーガラス14は、透明なガラス板であり、下方に配置されるイメージセンサ13やローパスフィルタ17、角度制限フィルタ18等をキズや埃から保護する。また、被写体12は、カバーガラス14の上に密着して配置される。
【0023】
LED16は、波長850nmを中心とした所定波長帯の赤外光を発する光源であり、イメージスキャナ11で被写体12を撮像するときに被写体12を照明する。また、LED16は、イメージセンサ13の周囲に被写体12の方向に向けて複数配置され、被写体12を一様に照明する。イメージセンサ13は、これらのLED16が発する赤外光の反射光を受光することによって被写体12を撮像する。
【0024】
ハイパスフィルタは、可視光や紫外線等、波長850nm近傍の赤外光よりも短波長の光を反射し、波長850nm近傍の赤外光とこれよりも長波長の光を透過する。また、ハイパスフィルタは、ローパスフィルタ17の被写体12側に配置される。このため、イメージスキャナ11には被写体12側から種々の波長帯の光が入射するが、ローパスフィルタ17に入射する光の波長帯は、ハイパスフィルタによって、波長850nm近傍の赤外光とこれよりも長波長の光に制限される。
【0025】
ローパスフィルタ17及び角度制限フィルタ18は、前述のハイパスフィルタとともに、イメージセンサ13の前面に配置され、被写体12からイメージセンサ13に入射する光の波長帯を波長850nm近傍に制限するとともに、その入射角度をイメージセンサ13に対して略垂直な角度に制限する。
【0026】
ローパスフィルタ17は、ハイパスフィルタと角度制限フィルタ18の間に配置され、透明なガラス基板上に複数種類の誘電体材料を積層して形成され、波長850nmよりも短波長帯の光を透過し、波長850nmよりも長波長帯の光を反射するように、透過率が波長850nm近傍の波長帯を境界に急峻に変化するように構成されている。このため、ハイパスフィルタに次いでローパスフィルタ17が配置されていることにより、イメージセンサ13側に透過する光は、波長850nm近傍の波長帯に制限される。また、ローパスフィルタ17は、斜めに入射する光に対しては、その入射角度の大きさに応じて透過率特性が短波長側にシフトする。このため、ローパスフィルタ17を透過する波長帯の光であっても、入射角度が大きくなるにつれてローパスフィルタ17の透過率は急激に減少する。これにより、ローパスフィルタ17は、被写体12からイメージセンサ13側に透過する光の波長帯と入射角度を制限する。
【0027】
図2に示すように角度制限フィルタ18は、被写体12の各部分12a〜12cをイメージセンサ13の画素29に一対一に対応させるとともに、イメージセンサ13に入射する光の角度を制限するフィルタであり、厚さ0.15mm程度の薄く透明なガラス基板26と、このガラス基板26の表面に設けられた遮光膜27とから構成される。遮光膜27は、複数の誘電体薄膜や金属薄膜等を積層して0.4μmの厚さに形成され、波長850nm近傍の波長帯の光を含め、イメージセンサ13の画素29に感度のある全ての波長帯の光を吸収する。また、遮光膜27は、400度の高温で成膜され、下地となるガラス基板26に強固に成膜されている。
【0028】
さらに、遮光膜27には、複数の開口28が設けられている。開口28は、イメージセンサ13の画素29の正方格子状の配列に合わせて、各画素29と一対一に対応するように正方格子状に設けられている。また、開口28の寸法にばらつきがあると、角度制限フィルタ18に一様な光が入射した場合にも透過した開口28によって透過光量にばらつきが生じる。こうして開口28の寸法にばらつきがあると、被写体12の各部分12a〜12cとイメージセンサ13の各画素29が一対一に対応付けられていても、撮影画像には開口寸法のばらつきに応じた陰影が生じることになり、被写体12を正確に撮影することができなくなる。このため、開口28は、全て35μm□に正方形に寸法精度良く形成されている。
【0029】
上述のように、角度制限フィルタ18は、遮光膜27が約400度の高温で成膜されると同時に、開口28(35μm□)に比べて遮光膜27(0.4μm)が厚く、かつ、全ての開口28が寸法精度良く設けられている必要がある。このため、角度制限フィルタ18は、図3に示す手順で製造される。
【0030】
角度制限フィルタ18を製造するときには、まず、図3(A)に示すように、ガラス基板26の表面にアルミニウムの薄膜41(以下、アルミ膜という)を成膜する(可除去薄膜成膜工程)。ここで成膜するアルミ膜41は、0.2μmの厚さに設けられる。また、アルミ膜41は、遮光膜27を成膜する温度(400度)に加熱された後であっても、希硝酸等の所定薬品で溶解し、ガラス基板26上から除去可能である。
【0031】
次いで、図3(B)に示すようにアルミ膜41上に一様な厚さのレジスト42を塗布し、所定のマスク(図示しない)を介して露光し、現像することによって、図3(C)に示すように、レジスト42を成形してレジストパターン43を形成する(レジストパターン形成工程)。ここで塗布するレジスト42は、露光された部分が現像液に溶解するポジ型のレジストであり、遮光膜27の厚さ0.4μmに比べて十分に厚く、2μmの厚さに塗布される。また、レジスト42の耐熱温度は約100度である。このため、レジスト42を耐熱温度よりも高い温度(例えば120度以上)に加熱すると、レジスト42は焦げ付き、感光させても剥離液に溶解し難くなり、除去することができなくなる。
【0032】
また、レジスト42を露光するときに用いるマスクには、遮光膜27と開口28とが反転され、遮光膜27に対応する部分で光を通し、開口28に対応する部分が遮光されるパターンが寸法精度良く描かれている。このため、このマスクを介してレジスト42を露光し、現像して形成されるレジストパターン43は、遮光膜27に対応する部分で下地のアルミ膜41が露呈され、開口28に対応する部分にレジスト42が残されたパターンとなっている。
【0033】
こうしてレジストパターン43が形成されると、図3(D)に示すように、このレジストパターン43をマスクとして、アルミ膜41がエッチングされる(エッチング工程)。このとき、アルミ膜41のエッチングには、希硝酸が用いられる、ガラス基板26の表面の平坦性を損なわずにアルミ膜41だけが選択的にエッチングされる。また、アルミ膜41のエッチングはウェットエッチングであるために、ガラス基板26の表面に対して垂直な方向だけでなく、ガラス基板26の表面に沿った方向(横方向)にも同時に等方的にエッチングが進行する。このため、アルミ膜41は、レジストパターン43の下方に回り込むように、エッチングされる。しかし、アルミ膜41は十分に薄いため、横方向へのエッチングの進行は小さく抑えられ、これによる開口寸法のばらつきは小さく抑えられる。
【0034】
レジストパターン43をマスクとしてアルミ膜41がエッチングされると、図3(E)に示すように、アルミ膜41上にレジストパターン43が残されたままの状態で、アルミ膜41及びレジストパターン43の積層体をマスクとして、遮光膜27が成膜される(光学膜成膜工程)。このとき、遮光膜27は、レジストパターン43の上面と、レジストパターン43及びアルミ膜41の積層体から露呈されたガラス基板26の表面に一様に成膜される。また、遮光膜27は、レジスト42の耐熱温度を大きく上回る約400度の温度で成膜され、アルミ膜41及びレジストパターン43から露呈されたガラス基板26の表面に成膜された遮光膜27は、ガラス基板26と強固に密着される。一方、遮光膜27の成膜温度は、レジスト42の耐熱温度を大きく上回っているので、遮光膜27の成膜時にレジストパターン43はアルミ膜41に焦げ付く。このため、遮光膜27の成膜後に、剥離液によってレジストパターン43を除去することはできなくなる。
【0035】
こうして遮光膜27が成膜されると、アルミ膜41が希硝酸によって溶解され、レジストパターン43とこのレジストパターン43上に成膜された遮光膜27が同時に除去される。これにより、図3(F)に示すように、ガラス基板26の表面には、遮光膜27に開口28が設けられたパターン(光学膜パターン)が形成され(光学膜パターン形成工程)、角度制限フィルタ18となる。このとき、ガラス基板26上に形成されるパターンは、レジストパターン43を反転したものとなっており、レジストパターン43及びアルミ膜41に覆われていた部分は開口28となる。
【0036】
上述のようにして製造された角度制限フィルタ18は、遮光膜27がガラス基板26に強固に接着されるとともに、光学的特性が良好な膜となっている。同時に、遮光膜27は開口28の寸法に比べて厚い膜となっているが、全ての開口28が寸法精度良く形成される。このため、上述のようにして製造された角度制限フィルタ18は、透過光量のムラが極めて小さく抑えられる。したがって、この角度制限フィルタ18を用いるイメージスキャナ11は、被写体12を正確に撮影することができる。
【0037】
なお、上述のようにして製造される角度制限フィルタ18の開口寸法のばらつきは、例えば、以下のように評価される。まず、図4(A)に示すように、上述のようにして製造された角度制限フィルタ18の遮光膜27を正面から撮影し、各開口28の面積を算出する。次に、任意の位置の開口28a〜28eを選び、そのうち一つの開口28を基準として、各開口28の面積の比(%)を算出する。ここでは、例として、最も左端の開口28aの面積を基準に、開口28aを含め、選択した5個の開口28a〜28eの面積の比をそれぞれ算出する。そして、各開口28a〜28eの面積の比のうち最大の値と最小の値の差を、相対PV(%)と称し、開口28の寸法のばらつき具合の目安とする。このように算出した相対PVの値は、0%に近いほど開口28の寸法にばらつきが少なく、相対PVの値が概ね1.5%以下となっていればイメージスキャナ11での使用に問題が生じない程度に透過光量のムラは抑えられる。
【0038】
アルミ膜41の膜厚を変えて、前述の手順で各々個別に製造した複数の角度制限フィルタ18について算出した相対PVの値を図4(B)に示す。ここでは、アルミ膜41の膜厚を0.2μmにして製造した3個の角度制限フィルタ18と、アルミ膜41の膜厚を0.5μmにして製造した4個の角度制限フィルタ18と、アルミ膜41の膜厚を0.7μmにして製造した3個の角度制限フィルタ18について相対PVの値を算出した。図4(B)からわかるとおり、アルミ膜41が薄いほど、相対PVの値は小さくなり、開口28の寸法精度が良くなる傾向がある。特に、アルミ膜41の膜厚を0.2μm以下にして角度制限フィルタ18を製造すれば、イメージスキャナ11での使用に問題がない程度に透過光量のムラが抑えられることが分かる。
【0039】
また、図4(B)からわかるように、アルミ膜41の膜厚が同じ条件の下で製造しても、各々個別に製造すると各々の角度制限フィルタ18の相対PVの値は変化する。このため、アルミ膜41の膜厚が同じ条件の下で製造した角度制限フィルタ18の相対PV値の最大値と最小値の差を、製造ロット間での相対PVの分布の目安として、図4(B)に棒グラフで示す。この棒グラフから分かるとおり、アルミ膜41の膜厚が小さいほど、製造ロットによる相対PVの値のばらつきが小さくなり、開口28の寸法精度が同程度の角度制限フィルタ18を安定して製造することができるようになる。これらのことから、アルミ膜41の膜厚が小さいほど、開口28の寸法精度が良い角度制限フィルタ18を安定して製造することができるようになる。
【0040】
したがって、上述の実施形態では、レジスト42を塗布する前に、膜厚0.2μmのアルミ膜41を成膜して角度制限フィルタ18を製造する例を説明したが、アルミ膜41の膜厚は0.2μm以下とすることが好ましく、製造ロット間での相対PV値のばらつきを考慮して、アルミ膜41の膜厚は0.15μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。一方、アルミ膜41が薄くなりすぎると、希硝酸等の剥離液がアルミ膜41の溶解を進行する隙間がなくなり、浸透し難くなる。このため、レジストパターン43に覆われた状態でのアルミ膜41の剥離に莫大な時間を要してしまう等、事実上、アルミ膜41の除去が困難になってしまうことがある。したがって、アルミ膜41の膜厚は、0.06μm以上であることが好ましく、0.07μm以上であることがさらに好ましい。
【0041】
また、上述の実施形態では、ガラス基板26の厚さを0.15mm、開口28の一辺の長さを35μm、遮光膜27の膜厚を0.4μm、レジスト42の膜厚を2μmとする例を説明したが、これらの寸法は任意に定めて良い。但し、開口28の辺の長さや遮光膜27の厚さ、レジスト42の厚さ等を実際に製造する物に応じて定める場合にも、アルミ膜41の膜厚は上述の条件を満たすものであることが好ましい。また、レジスト42の膜厚は、アルミ膜41とレジスト42の合計の膜厚が、遮光膜27の膜厚以上の厚さになるようにする。
【0042】
なお、上述の実施形態では、レジスト42の塗布前にガラス基板26上にアルミ膜41を成膜する例を説明したが、レジスト42の耐熱温度を超える温度に加熱した後に、レジストパターン43に上面を覆われた状態でガラス基板26の表面から除去することができれば、アルミ膜41の替わりに任意の材料を用いても良い。例えば、酸等の所定薬品で容易に溶解することができる金属薄膜をアルミ膜41の替わりに用いることができる。また、セラミック等の金属以外の無機材料からなる薄膜や、熱硬化性樹脂等の有機材料からなる薄膜等もアルミ膜41の替わりに用いることができる。
【0043】
また、上述の実施形態では、希硝酸を用いた等方性のウェットエッチングによりアルミ膜41をパターニングする例を説明したが、希硝酸以外の酸やアルカリ等の液体状の薬品によりアルミ膜41をパターニングしても良く、イオンミリングやリアクティブイオンエッチング等のドライエッチングによりパターニングしても良い。特に、レジストパターン43の下方へ回り込んでエッチングされず、異方的にアルミ膜41をエッチングすることができるため、レジストパターン43をマスクとしたアルミ膜41をパターニングするときには、ドライエッチングによることが好ましい。この場合、開口28をより寸法精度良く形成することができる。一方、ドライエッチングではレジストパターン43が形成されてから、下地のアルミ膜41がエッチングされることになるので、レジストパターン43及びその上の遮光膜27を除去するときには、希硝酸等の薬品を用いた剥離液によりアルミ膜41を除去することが好ましい。
【0044】
なお、上述の実施形態では、遮光膜27が吸収膜である例を説明したが、これに限らず、遮光膜27をイメージセンサ13の画素29に感度のある全ての波長帯の光を反射する反射膜としても良い。
【0045】
なお、上述の実施形態では、角度制限フィルタ18と、ローパスフィルタ17やハイパスフィルタをそれぞれ個別に製造し組み合わせて用いる例を説明したが、上述の実施形態で説明したように角度制限フィルタ18を製造した後に、角度制限フィルタ18を構成するガラス基板26の表面に、ローパスフィルタ17やハイパスフィルタとして機能する光学薄膜を成膜し、角度制限フィルタ18と、ローパスフィルタ17やハイパスフィルタを一体化しても良い。この場合、遮光膜27と開口28を全て覆うようにローパスフィルタ17やハイパスフィルタとして機能する光学薄膜を設けても良く、遮光膜27を成膜した表面とは反対側の表面にローパスフィルタ17やハイパスフィルタとして機能する光学薄膜を設けても良い。特に、ガラス基板26の反りを低減できるので、遮光膜27とは反対側の表面にこれらの光学薄膜を設けることが好ましい。
【0046】
なお、上述の実施形態では、角度制限フィルタ18を例に寸法精度良く厚い膜でパターンを形成する方法を説明したが、上述の実施形態で説明したパターンの形成方法は、電子回路や他の光学フィルタ等の製造時に、レジストの耐熱温度を超える温度での成膜が必要とされる厚い膜で微細なパターンを寸法精度良く形成することが求められる場合に好適に用いることができる。特に、上述の実施形態で説明したパターン形成方法は、開口28のように複数の同型のパターンを形成し、かつ、各々のパターン間での寸法精度のばらつきを抑える必要がある場合に、特に好適である。
【符号の説明】
【0047】
11 イメージスキャナ(撮像装置)
12 被写体
13 イメージセンサ
14 カバーガラス
16 LED
17 ローパスフィルタ
18 角度制限フィルタ(撮像フィルタ)
26 ガラス基板
27 遮光膜
28 開口
29 画素
41 アルミ膜(可除去薄膜)
42 レジスト
43 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後の工程で塗布するレジストの耐熱温度を超える温度に加熱された後に、除去することが可能な可除去薄膜を基板の表面に成膜する可除去薄膜成膜工程と、
前記可除去薄膜上に一様な厚さに前記レジストを塗布し、前記レジストを露光及び現像して、前記可除去薄膜を部分的に露呈するレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記可除去薄膜をエッチングし、前記基板の表面を前記レジストパターンに応じて部分的に露呈させるエッチング工程と、
前記可除去薄膜上に前記レジストパターンを残したままの状態で、前記可除去薄膜よりも厚く、光学的機能を有する光学膜を、前記レジストの耐熱温度よりも高温で前記基板の表面に成膜する光学膜成膜工程と、
前記可除去薄膜を所定溶液で溶解させることにより、前記光学膜成膜工程での加熱により剥離液で除去することができなくなった前記レジストパターンと、前記レジストパターン上に成膜された前記光学膜とを同時に除去し、前記基板の表面に、前記光学膜からなり前記レジストパターンを反転したパターンを有する光学膜パターンを形成する光学膜パターン形成工程と、
を備えることを特徴とするパターニング方法。
【請求項2】
前記可除去薄膜は、0.2μm以下の厚さに成膜されることを特徴とする請求項1記載のパターニング方法。
【請求項3】
前記可除去薄膜は、金属からなる薄膜であることを特徴とする請求項1または2記載のパターニング方法。
【請求項4】
前記可除去薄膜は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項3記載のパターニング方法。
【請求項5】
前記エッチング工程では、異方性のドライエッチングによって、前記基板の表面に対して垂直に前記可除去薄膜をエッチングすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のパターニング方法。
【請求項6】
前記エッチング工程では、等方性のウェットエッチングによって前記可除去薄膜をエッチングすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のパターニング方法。
【請求項7】
前記光学膜は、入射光を反射または吸収する遮光膜であることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載のパターニング方法。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれかに記載のパターニング方法によって形成された前記光学膜パターンを備えることを特徴とする撮像フィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像フィルタを備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−28032(P2011−28032A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174078(P2009−174078)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】