パターンの製造方法
【課題】本発明は、パターンの製造方法に関し、特に、レーザーを用いてパターンを製造する方法に関する。
【解決手段】パターンの製造方法は、基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階;前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階;前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階、および、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階を含む。
【解決手段】パターンの製造方法は、基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階;前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階;前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階、および、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの製造方法に関し、特に、レーザーを用いてパターンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の光産業、ディスプレイ産業、半導体産業、バイオ産業では、製品の薄膜化、高性能化のニーズが増している。こうした要求を満たすためには、それぞれの部品を成す配線や機能性薄膜層により小さくて均一なパターンが形成されている必要がある。したがって、微細パターンの製造方法は、これらの産業の基盤となる重要な技術ともいえる。
【0003】
従来から非露光微細パターン化方法に基づく、ナノ粒子インクを用いたLDW方法に関する研究が数多く行われてきた。
【0004】
しかし、大きさ数十nmのナノ粒子インクにレーザーを直接照射してパターンを形成しようとするとき、大量の溶剤の使用やナノ粒子の高い融点(300〜400℃)のため、長時間に及ぶパターン形成時間が要る。もちろん、ナノ粒子インクにおけるナノ粒子をより小さく製造すればよいことであるが、それに伴って製造コストが増加する欠点がある。このため、インクの焼結が悪くなり、金属電極の抵抗も増加する現象も起きる。
【0005】
そして、レーザー照射時の熱拡散のため、レーザーの焦点サイズよりパターンの線幅が相対的に大きくなり、10μm以下のパターンを形成するためにはスキャナをも使用することができず、スキャナでは、高精度の多様なパターンの製造に限界がある。したがって、回析限界(diffraction limit)に近く焦点を合わせられる高価な対物レンズを使用しなければならない欠点がある。
【0006】
また、液体インクにレーザーを照射するときに、表面張力勾配(surface tension gradient)によって誘発されるマルランゴニ流動(マランゴニ流)が生じ、それによって、パターンの縁部は厚くなるが、パターンの中心部は薄くなるので、パターンの断面が、まるで火山の噴火口の断面の形状のようになってしまう。
【0007】
前述の欠点又は問題を解決するために、焼結が容易で、より低い温度でも焼結され、導電性に優れた透明な金属有機インク(transparent organometallic ink)を使用する必要がある。しかし、通常、これらのインクは、ナノ粒子インクとは異なり、その中に金属粒子を含んでないため透明であり、それにより、レーザーの吸収率が低くてパターン化に大量の光エネルギーを必要とし、そして、パターンの線幅が増加する、といった、問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前述した透明な金属有機インクにおけるパターン化の問題を解決するために、本発明は、透明な金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、金属イオンが、既存のナノ粒子よりも微細なナノ粒子に還元され、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少し、微細パターンを高速かつ容易に実装できる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、パターンの縁部を厚くし、かつ、パターンの中心部を薄くするマランゴニ流の影響を少なくして、均一な厚さのパターンを形成することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、レーザーの吸収率が向上するとともに、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるので、低出力レーザーでも急速にパターニングすることができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、金属有機インクが、低温焼結されるため、フレキシブル基板に適合した、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、低価のインクを使用して製造コストを抑えた、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、基板上の残留物を除去して、パターンの伝導度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係るパターンの製造方法は、基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階;前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階;前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階;および、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階を含む。
【0015】
したがって、請求項1に係るパターン製造方法によれば、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるため、光吸収率が良くなり、レーザー照射時に熱拡散が減少するので、微細パターンをより簡単に加工できる。また、こうした半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響をあまり受けずに流体力学的流動の影響を大きく受けるため、均一な厚さのパターンを形成することができ、かつ、パターンが厚くなるので導電性が向上する。また、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるので、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。
【0016】
また、金属有機インクは、低温でも焼結されるので、フレキシブル基板においても、本発明のパターンの製造方法を応用することができる。また、金属有機インクは、安価であるため、製造コストを下げることができる。
【0017】
請求項2に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第2の段階において、加熱用ランプを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることを特徴とする。
【0018】
したがって、請求項2に係るパターン製造方法によれば、光吸収率が増加し、レーザー照射時の熱拡散が減少するので、微細パターンを容易に実装することができる。また、こうした半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響をあまり受けずに流体力学的流動の影響を大きく受けるため、均一な厚さのパターンを形成することができる。また、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。また、連続工程が可能で、均一な温度にて加熱することができる。
【0019】
請求項3に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第2の段階において、ホットプレートまたは対流オーブンを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることを特徴とする。
【0020】
したがって、請求項3に係るパターン製造方法によれば、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少するため、微細パターンを容易に加工できる。また、半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響を避けられるので、均一な厚さのパターンを形成することができる。また、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。また、所望の温度を設定し、その温度を維持したまま加熱することも可能である。
【0021】
請求項4に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第4の段階において、前記基板を洗浄液に浸すか、超音波洗浄をするか、又は、洗浄液を噴射することで、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
したがって、請求項4に係るパターン製造方法によれば、レーザーが照射されていない部分は洗浄液によって除去されないため、固体状態に硬化したパターンだけを基板上に残すことができる。
【0023】
請求項5に係るパターンの製造方法は、請求項4に係るパターンの製造方法における前記第4の段階において、前記パターンが形成された基板を加熱する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
したがって、請求項5に係るパターン製造方法によれば、パターンが形成された基板を加熱するため、基板上の残留物を除去して、パターンの導電性を向上させることができ、そして、パターンに浸透した有機溶媒を除去してパターンを再硬化・乾燥させることができる。結果的に、パターンをより確実に焼結させ、パターンが形成された基板の完成度を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、透明な金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、金属イオンが、既存のナノ粒子よりも微細なナノ粒子に還元され、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少して微細パターンを高速かつ容易に実装できる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明は、パターンの縁部を厚くし、かつ、パターンの中心部を薄くするマランゴニ流の影響を極力受けないため、均一な厚さのパターンを形成することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0027】
また、本発明は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、レーザーの吸収率が向上し、かつ、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるため、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0028】
また、本発明は、金属有機インクが低温でも焼結されるので、フレキシブル基板にも適した、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、低価格のインクを使用して製造コストを抑えた、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0030】
また、本発明は、基板上の残留物を除去して、パターンの伝導度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、請求項1に記載されたパターンの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図2は、パターンを製造する一連の過程を示す図面である。
【図3】図3は、予備加熱時間に応じて被覆された金属有機インクの厚さと吸収率(532nm)が大きく変わることを示す図面である。
【図4】図4は、90秒間予備加熱後、そこに生成された銀ナノ粒子の粒径分布および透過電子顕微鏡像を統計的に分析した結果を示す図面である。
【図5】図5は、マランゴニ流の影響により、パターンの縁部が厚く、かつ、パターンの中心部が薄く形成された状態を示す図面である。
【図6】図6は、ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターンの断面図である。
【図7】図7は、マランゴニ流を説明する図面である。
【図8】図8は、流体力学的流動の影響により、パターンの厚さが均一に形成された状態を示した図面である。
【図9】図9は、流体力学的流動を説明する図面である。
【図10】図10は、ガルバノメーター・スキャンを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図11】図11は、コンタクトマスクを用いたパターンの製造方法を示した図面である。
【図12】図12は、マスクプロジェクションを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図13】図13は、SLMを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図14a】図14aは、1000 rpmで90秒間予備加熱する間にスピンコーティングされたパターン幅のレーザー(λ=1070 nm)の出力とスキャン速度(scan rate)に対する依存性を示す図面である。
【図14b】図14bは、AFMプロファイルとレーザー処理された銀線形パターン(1000 rpm、スピンコーティング、200 mWのレーザー出力、25 mm/ sのスキャン速度)の画像を示す図面である。
【図14c】図14cは、2D AFM表面粗さの画像とそれに対応するレーザー処理パターンのプロファイルを示す図面である。
【図14d】図14dは、E-ビーム蒸着パターンの表面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施例について、添付された図面に基づいて詳細に説明していく。ただし、添付された図面は、本発明の内容をよりよく理解してもらうために設けたものであり、本発明の範囲は、添付された図面に限定されるものではない。本発明の利点および特徴、および、それらを達成するための方法は、添付される図面、後述する実施例から明らかになるであろう。明細書を通して同じ符号は同じ構成要素又は部品を指す。マランゴニ流と流体力学的流動については、従来のパターン製造方法における問題点と、本発明の効果を説明するために言及する必要がある。
【0033】
本発明に対する理解を深めるために、論文"Bongchul Kang、Seunghwan Ko、Jongsu Kim and Minyang Yang *、"Microelectrode fabrication by laser direct curing of tiny nanoparticle self - generated from organometallic ink、"31 January 2011/Vol. 19、No.3/OPTICS EXPRESS 2573〜2579"を参照することとする。
【0034】
図1は、パターンの製造方法の手順を示すフローチャートである。図1によれば、本発明のパターン製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を取り除いて、前記パターン(21)だけを残す第4の段階を含む。
【0035】
図2は、パターンを製造する一連の過程を示す図面である。図1及び図2に基づいて、パターンの製造方法を説明する。
【0036】
第1の段階は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する段階で、ガラスのような軽質の基板(以下、「基板」という。)に液体状態の金属有機インクを被覆する段階である(S100)。したがって、図2の(a)において、下部が基板(10)を表し、上部が、基板(10)上に形成された金属有機インク層(20)を表す。ここで、第1の段階で使用される金属有機インク層(20)の形成方法としては、スピンコーティング(spin coating)、ブラードコーティング(blading coating)、スプレー(spray)、インクジェット(ink jet)、ロールツーロール(roll to roll)等がある。
【0037】
第2の段階は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるステップである(S200)。金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化可能な方法であれば特に限定されない。半固体状態とは、完全に硬化した固体よりは流動性が高く、斜面に沿って流れる液体よりは流動性がはるかに少ない状態をいい、所定以上の力を加えたときに破裂するのではなく、多少形状が変形したままその形状を維持している状態をいう。また、金属有機インクの内部で還元により固体粒子が形成され始める状態ともいえる。液体状態の金属有機インクよりも半固体状態の金属有機インクのほうが薄いが、それは、金属有機インクが液体状態から半固体状態に変化する際に、金属有機インクの大部分を成している有機溶媒(23)が蒸発するからである。しかし、有機溶媒が完全に蒸発し、金属有機インク層(20)が固体状態になっておらず、有機溶媒のほとんどが蒸発し、金属有機インク層(20)が半固体状態にならなければならない。
【0038】
本発明の実施例において、金属有機インクは透明であるが、こうした透明な金属有機インクをパターン化するために用いる所定波長のレーザーは、透明な金属有機インクをほとんど透過することになる。したがって、透明な金属有機インクを透過して残った少ない光エネルギーのみがパターン化加工に用いられるため、パターン化のためには高出力のレーザーを使用しなければならない問題があった。また、従来のパターン化加工では、有機溶媒(23)系インクが基板(10)上に厚く被覆される状態でレーザーが照射されるので、パターン(21)の幅が薄く形成されず、厚く形成されてしまう問題があった。これに対し、本発明では、透明な金属有機インクが基板(10)に塗布するとすぐにレーザーが照射されるのではなく、透明な金属有機インクの大部分を占める有機溶媒(23)が揮発し、インク層(20)が薄くなった状態でレーザーが照射されるので、パターン(21)を薄く形成できるという利点がある。
【0039】
本発明では、第2の段階を経ると、透明な金属有機インクが茶色に変わる。前述したように、透明な金属有機インクを用いた場合、パターン化に使用されるレーザーのほとんどがインクを透過してしまうが、茶色になると、透明な金属有機インクに比べて、レーザーの吸収率が高まり、結果的に透過率が著しく低下する。したがって、レーザーによる金属有機インクのパターン加工の効率が高まる。金属有機インクの色も透明ではなく茶色であり、かつ、金属有機インクの状態も液状ではなく半固体状態であるため、透明な金属有機インク層(20)にレーザーを照射すると、全体的には金属有機インクの光吸収率が増すことになる。基板(10)の加熱によって金属有機インク中の多量の有機溶媒(23)、特に、M‐C結合をしない有機溶媒(23)が除去された状態であるので、レーザー照射時に熱拡散が減少し、微細パターン(21)の加工が可能になり、かつ、パターン(21)を形成するための熱拡散距離が短いため、低出力レーザーでも急速なパターン化が可能となる。
【0040】
前述したように、本発明のパターンの製造方法では、透明な金属有機インク(transparent organometallic ink)が使用され、特に、金属の中でも"銀(Ag)"を含有する透明な金属有機銀インク(transparent organometallic Ag ink)を使用する場合を例に挙げて説明する。有機金属銀インクは、有機溶媒に銀イオンが溶け込んでいる構造を有するので、常温では透明な液体として存在する。ただ、金属として銀が用いられているが、銀以外にも、伝導度の高い銅、金など他の金属を用いても良い。金属有機銀インクについては、第2の段階においてさらに詳細に説明する。
【0041】
第2の段階において、有機金属銀インクに熱を加えて、銀イオンの還元と有機溶媒の蒸発が同時に起こるようになり、銀イオンは、固体の金属に還元され、析出される。ここで注意すべきことは、インクに含まれていた銀イオンが固体の金属として析出されるのであり、インク自体は固体ではないということである。前述したとおり、インク自体は半固体状態となる。有機金属銀インクは、ナノ粒子インクとは異なり、焼結温度は150℃〜200℃と低い。
【0042】
フレキシブル基板は、通常ポリマーで構成され、例えば、PIフィルムで構成される。これらのポリマー材料は、350℃程度の温度でほとんど溶けてしまう。ところが、液体状態のナノ粒子インクを焼結させるためには、300℃〜400℃の温度が必要となる。銀(Ag)をナノ粒子の状態にしようとしても、ナノ粒子の銀(Ag)を焼結するにはやはり300〜400℃の温度が必要になるので、これまではフレキシブル基板に(従来の)ナノ粒子インクを用いたパターン化方法を適用するのが難しかった。通常のナノ粒子インクの粒子よりも微細な粒子を含むナノ粒子インクを使用すると、焼結温度が低くなってフレキシブル基板に適用することは可能だが、インクの単価が急激に上昇するので、量産に適していない。これに対し、金属有機銀インクは、銀イオンがナノ粒子に還元されて固体の銀粒子になるが、還元されたナノ粒子の大きさが一般的なナノ粒子インクの粒子よりも小さいため、光吸収率が増加し、低い温度でも容易に焼結されるようになる。したがって、インクが低温で焼結されるので、本発明のパターン化方法は、フレキシブル基板に対しても利用可能である。ナノ粒子の粒度分布については、後述する(図4)。
【0043】
第2の段階を経て、半固体状態の金属有機インクの中で還元された金属粒子が多くなると、金属有機インク中に固体金属粒子が存在するため、第3の段階では金属有機インク層(20)にレーザー光を照射すると、金属有機インクは、レーザーをよりよく吸収するようになる。したがって、レーザー照射時に熱拡散がさらに減少され、微細パターン(21)の加工が容易になり、そして、レーザー照射による熱拡散距離がより短くなって、低出力レーザーにおいても速いパターン加工が可能になる。また、インクが低価格であるため、パターン(21)の製造にコストが軽減されるメリットもある。
【0044】
第3の段階は、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される段階である(S300)。第3の段階において、レーザーとして、転写材料と基板(10)の特性に基づいてCWレーザー(continuous wave laser)またはパルスレーザー(pulsed laser)を使用することができる。レーザーは、金属有機インク層(20)におけるパターン(21)が形成されるべき領域に照射され、その照射された部分を固体状態に硬化させる。第3の段階については、図2(c)に基づいて説明する。図2(c)は、ネガティブ型を採用してレーザー光が照射された部分がパターン(21)に形成されることを表す。ここで、第2の段階が完了すると、金属有機インク層(20)は、半固体状態で、金属有機インク層(20)が完全に硬化する前に、レーザーを用いて局所的に、かつ、選択的に硬化させる。このとき、レーザー光の出力、移送速度、ビームのサイズなどによって硬化を制御する。
【0045】
第4の段階は半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)のみを残す段階である(S400)。金属有機インク層(20)から固体状態に硬化されてパターン(21)が形成された所定領域のインク層(20)以外の半固体状態の金属有機インク層(20)を取り除くと、固体状態のパターン(21)だけが基板(10)上に残る。図2(f)は第4の段階が終わり、最終的な完成されたパターン(21)が形成された基板(10)を表す。
【0046】
ここで、第2の段階についてより具体的に検討する。このパターンの製造方法は、基板(10)上にインク層(20)を形成する第1の段階、加熱用ランプを用いて、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱して金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残す第4のステップを含む。
【0047】
図1および図2によれば、第2の段階において、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱用ランプで加熱する。図2(b)は、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱する方法の一例として、ホットプレート(hot plate)で加熱することを示しているが、加熱用ランプの輻射熱を用いて金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱することは、当業者にとって明らかであろう。この第2の段階では、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるために、加熱用ランプを用いて金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱し、基板(10)上に塗布されたインク層(20)の大部分の有機溶媒(23)を蒸発させることができる。加熱用ランプで加熱することは、輻射熱を利用するものである。この方法は、所望の温度を設定し、その温度を保ったまま加熱することは難しいが、後述するホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)によって加熱する方法に比べて、連続工程が可能で、均一な温度に加熱することができる。
【0048】
これから第2の段階についてさらに検討していく。このパターンの製造方法は、基板(10)上にインク層(20)を形成する第1の段階、ホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)により、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱して、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、その照射された部分が固体状態に硬化されて、パターン(21 )が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)のみを残す第4のステップを含む。
【0049】
図1および図2に基づいて、第2の段階についてさらに具体的説明することにする。金属有機インク層(20)が形成された基板(10)をホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)にて加熱する。図2(b)は、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱する方法の一例で、ホットプレートを用いて加熱することを示している。パターンの製造方法の第2の段階において、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるために、ホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)により、金属有機インク層(20)が形成された基板( 10)を加熱して、基板(10)上に塗布されたインク層(20)中のほとんどの有機溶媒(23)を蒸発させることができる。ホットプレートによる基板(10)の加熱は伝導(conduction)を利用したことであり、対流オーブン(convection oven)による基板(10)の加熱は、対流を利用したものである。この方法は、連続工程と、均一な温度での加熱という点からは劣るが、輻射熱を利用した加熱用ランプにて加熱する方法に比べて所定の温度に設定し、その温度を保ったまま加熱するのに有利である。
【0050】
次に、第4の段階について、より具体的に説明する。このパターンの製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30 )を噴霧することにより半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残す第4のステップを含む。
【0051】
図1及び図2に基づいて説明する。図2(d)によれば、金属有機インク層(20)の一部は、パターン(21)に硬化され、一部は半固体状態になったまま、基板(10)上に形成されていて、こうした基板(10 )が洗浄液(30)入りの容器内に存在している。図面には、基板(10)を洗浄液(30)に浸けて半固体状態のインク層(20)を除去する過程のみが示されている。しかし、このパターンの製造方法における第4の段階は、これだけではなく、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30)を噴射したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去することを含むが、これらのうちいずれの方法をとっても、このパターンの製造方法の第4の段階に相当するといえる。また、超音波洗浄または洗浄剤(30)噴射によるパターン(21)以外のインク層(20)を除去する方法については、当業者に知られているであろう。
【0052】
ここで、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去するための有機溶媒には、例えば、もとの金属有機銀インクのベースとなった有機溶媒(23)、アセトン、ヘキサン、又は、IPAなどがある。第4の段階は、有機溶媒を用いて、形成されたパターン(21)以外の層を洗い流す。通常、有機金属インクのベースとなった有機溶媒(23)、アセトン、ヘキサン、又は、IPAなどに満たされた容器にパターン(21)が形成されている基板(10)を丸ごと入れて洗い流す。したがって、固体状態に硬化されたパターン(21)だけが基板(10)上に残る。超音波洗浄は、基板(10)を洗浄液(30)に浸した状態で超音波振動を加える方法であり、洗浄剤(30)を噴射する方法は、洗浄液(30)を基板(10)に直接スプレーして、パターン(21)だけを残す方法である。
【0053】
次に、第4の段階についてより具体的に検討する。このパターンの製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、その照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、および、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、又は、洗浄液(30 )を噴霧したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残し、かつ、基板(10)を加熱する第4のステップを含む。
【0054】
図1及び図2に基づいてこのパターンの製造方法を説明する。図2(e)には、基板(10)上にパターン(21)だけが残された基板(10)をオーブンに入れて加熱することが示されている。これは、基板(10)を加熱する方法の一例を示すものであり、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30)を噴射したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を削除してパターン(21)だけを残すほか、さらに基板(10)を加熱する。
【0055】
こうした更なる手順(即ち、加熱)が必要な理由は、第4の段階において、基板(10)を洗浄した場合、洗浄工程中に硬化したパターン(21)に有機溶媒が浸透して、パターン(21)が再び液化される恐れがあるので、そのパターン(21)の再硬化や乾燥を行うためであり、それを通して、パターン(21)をしっかり焼結させるためである。また、基板(10)を加熱する段階は、基板(10)上にパターン(21)を形成するために必ず必要な手順とはいえないが、パターン(21)だけを残して半固体状態の金属有機インク層(20 )を洗浄液(30)で洗い流した後、基板(10)上に残留する有機溶媒などの残留物を除去するとともに、伝導度を向上させるなど、パターン(21)が形成された基板(10)の完成度を高めるために必要な段階である。
【0056】
図3は、予備加熱時間に応じて被覆された金属有機インクの厚さと吸収率(532nm)が様々に変わることを示す図面である。半固体状態とは、金属有機インクが、傾斜面に沿って流れる液体よりもはるかに低い粘度を有し、かつ、完全な固体よりも粘度が高い状態をいう。有機金属化合物インクをソーダライムガラス基板上に1000rpmの速度でスピンコーティングし、100℃の温度にて時間をかけて厚さの変化と光吸収率の変化を観察した。予備加熱温度である100℃にて加熱すると、均一な厚さのコーティングが得られ、また、ナノ粒子の凝集が生じない。これより温度が高くなると、インクの厚さが場所によって異なるので、厚さにばらつきが出る。 60秒間予備加熱した後、その厚さはますます減少し、約0.33μmに収束するようになり、光吸収率は予備加熱時間に応じて直線的に増加する。光吸収率の増加によって、有機金属インク中ほとんどの有機物が蒸発し、ナノ粒子の自己生成量が増加する。
【0057】
図4は、90秒間予備加熱後、透過電子顕微鏡を用いて、自己生成された銀ナノ粒子の粒子生成状態を統計的に分析した結果を示す。予備加熱温度が焼結温度よりも低いにもかかわらず、銀ナノ粒子は、ナノ粒子どうしの凝集などなく、均一に生成された。透過電子顕微鏡の統計分析結果、自己生成されたナノ粒子の平均粒径は2.54nmで、標準偏差は0.67nmであり、3nm以下のナノ粒子の割合が88%とあり、非常に均一な超微細粒子が生成された。 2〜3nmの極微細粒子が、銀と有機物とが結合された物質の中で均一に自己生成していることが確認できた。予想通り、超微細粒子は、ナノ粒子の微熱分解と未成長現象の結果生じたものである。
【0058】
図5は、マランゴニ流の影響により、パターンの縁部は厚く、パターンの中心部は薄く形成された状態を示す図面であり、図6は、ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターンの断面図であり、そして、図7は、マランゴニ流を説明する図面である。
【0059】
図5〜7に基づいて、既存のナノ粒子インクを使用したパターニングにおけるマランゴニ流の影響を説明する。図5の左図は、基板(10)上に塗布されたインクに作用する力を示したものであり、右図は、これらの力が働いて形成されたパターン(21)の断面形状を示す。左図では、インクの上方からインクと遠ざかる方向に向かう2つの矢印がマランゴニ流による力を表し、インクの下方からインクの中心に向かう2つの矢印が流体力学的流動による力を表す。そして、この二つの力の大きさは、矢印の大きさに比例する。流体力学的流動については、後述する。
【0060】
図5に示した基板(10)上のインクに、上から下に向かってレーザーが照射されると仮定すれば、レーザーが、インクの上に均一に照射されるのではなく、レーザーの中心部の温度が高くなる。このため、インクの縁ではなく中央部においてより多く蒸発され、この時に蒸発されるのは主に有機溶媒である。このとき、レーザーが強く照射されるインクの中央部よりも、レーザーが弱く照射されるインクの縁部のほうの表面張力が高くなる。このため、表面張力が低いところから高いところへの流れが生じ、結果として、パターン化されたインクの断面が、まるで火山の噴火口のようになる。この原因となるのが、マランゴニ流による力である。もちろん、基板(10)と、インクが接するところにも流体力学的流動による力が働くものの、マランゴニ流による力より小さいため、わずかな影響しか受けない。したがって、マランゴニ流による力がインクに作用する支配的な力となるので、図5の右図のように、パターン(21)の中央部がくぼんでしまう。こうした形状は、パターン(21)の上に他の物質を被覆する際に不均一の問題を引き起こすだけでなく、 伝導度が低下する原因ともなる。
【0061】
図6は、中央部が陥没したパターン(21)の特定の数値が示されている。ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターン(21)の中央部は、約400nmの厚さになり、その縁部は、約600〜800nmの厚さになることが分かる。ただし、これはあくまで例示のために挙げたもので、図6と同様にその断面が噴火口の形状を有するが、異なる数値を有するパターン(21)もあり得る。
【0062】
図7に基づいてマランゴニ流についてさらに説明する。インクに上から下に向けてレーザーが照射され、レーザーの中心部の温度が高くなるため、レーザーの中心部に照射されるインクからその周辺へ熱が拡散され、この熱により有機溶媒(23)の蒸発が起こる。図面における巻線の矢印は、有機溶媒(23)が蒸発されることを示す。続いて、レーザーの中心部から離れたインクは、レーザーの中心部が照射されるインクに比べて表面張力が高いため、表面張力勾配(surface tension gradient)が生じる。すると、レーザーの中心部に照射されるインクから、レーザーの中心部から離れた側のインクに向かうインクの流動が生じる。このような流れをマランゴニ流と呼ぶが、この流れに起因して、パターン(21)の縁部は厚く、その中心部は薄くなる。
【0063】
図8は、流体力学的流動によってパターンの厚さが均一に形成された状態を示す図面であり、図9は、流体力学的流動を説明する図面である。図5および図8を比較すると理解しやすいだろう。図8の左図は、基板(10)上に塗布されたインクに作用する力を表し、そして、右図は、これらの力の作用により形成されたパターンの断面形状を示す。左図では、インクの上方からインクと遠ざかる方向に向かう2つの矢印がマランゴニ流による力を表し、インクの下方からインクの中心に向かう2つの矢印が流体力学的流動による力を表す。そして、この二つの力の大きさは、矢印の大きさに比例する。図8は、透明な金属有機インクを使ったパターン化によって形成されたパターン(21)を示す。図6とは異なり、マランゴニ流による力が働くものの、インクに働く流体力学的流動による力がはるかに大きいため、パターン(21)の厚さは縁部から中心部端を通して均一なものとなる。
【0064】
図9は、流体力学的流動を説明する図である。図面において、上向きの矢印は、有機溶媒(23)が蒸発されることを示す。前述したように、レーザーの中心部に近いほど光が強く、かつ、温度が高いため、レーザーの中心部が照射されるインクからの有機溶媒(23)の揮発がよりよく起こる。図9において、左側が、レーザーの中心部に照射されるパターン(21)の中心部で、右側がパターン(21)の縁部となる。図9によれば、パターン(21)の中心部における有機溶媒(23)の高さがパターン(21)の縁部における有機溶媒(23)の高さより低いため、有機溶媒(23)の高さを合わせるためにパターン(21)の縁部からパターン(21)の中心部に向かっての有機溶媒(23)の流れが生じ、この流れに沿って還元された状態の固体金属粒子がパターン(21)の中心部へ移動する。よって、パターン(21)が形成されるべき部分に固体金属粒子が集中されるので、薄いパターン(21)を加工できる。もちろん、ナノ粒子インクを使用したパターン加工においても流体力学的流動は存在する(図5(左図)では、流体力学的流動が、2つの小さな矢印で表示されている)。しかし、ナノ粒子が有機溶媒(23)の流れに沿って動くにはその粒子があまりにも大きく、またナノ粒子間の力のほうが流体力学的流動よりもはるかに大きい。
【0065】
以上、図5ないし図9に基づいてマランゴニ流と流体力学的流動の原理を説明したが、これにより、レーザーを用いたパターンの製造方法の各段階(特に、第2および第3の段階)がより明確になったであろう。パターンの製造方法において、ナノ粒子インクにレーザーを照射すると、マランゴニ流の効果は強くなるが、流体力学的流動の効果は弱くなる。一方で、半固体状態の金属有機インクにレーザーを照射すると、マランゴニ流の効果は弱くなるが、流体力学的流動の効果は強くなる。したがって、均一な厚さのパターン(21)を形成でき、かつ、パターン(21)が厚くなるため、導電性が向上するメリットがある。
【0066】
前述したパターンの製造方法において、レーザーを照射する方法として、図10ないし図13に示した方法をも用いることができる。
【0067】
図10は、ガルバノメーター・スキャンを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図10によれば、レーザービーム(laser beam)を、AOD(Advanced Optical Disk)、コレクション(correction)、ガルバノメーター(galvanometer)、スキャンレンズ(scan lens)、円柱レンズ(cylindrical lens)を順番に通過させて、基板に透過させる。レーザーを動かさずに、基板を動かしてパターンを形成する方法である。この方法は、10m / s以上の高速スキャンが可能である。
【0068】
図11は、コンタクトマスクを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図11によれば、レーザーがバンドル(bundle)、ホモジナイザー(homogenizer)、ラインビーム発生器(Line Beam Generator)の順に通過すると、マルチホモジナイズされたラインビーム(Multi homogenized line beam)が発生し、基板を被覆させ、マスクが直接に接触して1:1で投影(projection)されるというパターン形成方法である。この方法は、スキャンの精度が低くても良いという長所がある。
【0069】
図12は、マスクプロジェクションを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図12によれば、レーザービームホモジナイザー(beam homogenizer)とシェーピング(shaping)を通り、マスク(mask)を通過すると、 所定形状のビームがプロジェクション・レンズ(projection lens)を通過するようになり、その距離の比率に応じて画像が縮小されて投影される。コンタクトマスク(contact mask)と異なる点は、コンタクトマスク(contact mask)は、投影光学系からマスクへレーザーが照射されるのに対し、マスク投影(mask projection)は、マスクから投影光学系へ照射される。
【0070】
図13は、SLMを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図13によれば、SLM(Spatial Light Modulator)は、光を空間的に多様に変化させる変調器で、光がその変調器を通過すると、所定の(形状の)光に変わることを用いるパターン化法である。 SLMは、コンピュータを介して制御されるので、マスクが必要なく、所望の形状の光に容易にパターン化することができる。
【0071】
本発明は、前述した4つのレーザー照射方法に限定されるものではなく、それ以外のレーザー照射方法をも使用することもできる。
【0072】
図14aは、1000 rpmで90秒間スピン被覆されたパターン幅のレーザー出力(λ= 1070 nm)とスキャン速度(scan rate)に対する依存性を示す。図14bは、AFM形状とレーザー処理された線形パターン(1000 rpm、スピンコーティング、200 mWのレーザー出力、25 mm / sのスキャン速度)を示す。図14cは、2D AFM表面粗さの画像とそれに対応するレーザー処理パターンのプロファイルを示す。図14dは、E -ビーム蒸着パターンの表面を示す。
【0073】
図14aは、パターン幅のレーザー出力と硬化率(curing rate)に対する依存性を示す。これは、現在の有機金属インクに基づくLDCのアプローチが25mm / s (従来のナノ粒子インクに基づくLDC法(0.2mm /s )に比べて、はるかに高速である。)においてもパターン形成が可能であることを示す。パターン速度だけでなく、解像度も簡単に制御することができる。図4aに示すように、同じ焦点サイズのレーザーにおいて、出力を変えるだけで様々な範囲のパターンサイズ(20〜100 μm)も実現できる。照射されたレーザーの焦点サイズよりも小さなパターンは、相対的に低い吸水率に基づく軽減された(均一の)熱拡散によって得られる。通常、パターン幅は、特に、従来のナノ粒子インク系LDC工程において、金属ナノ粒子の高い熱伝導度に基づく熱拡散のため、焦点サイズよりも大きくなる。熱拡散効果は、有機金属インク系LDC工程では予備加熱されたインク(pre - baked ink)の高い熱的感度と銀-有機物複合体の低い熱伝導度によって軽減され得る。本発明では、10 μmの焦点サイズのレーザービームで解像度を10 μmまで改善することができた。しかし、パターンの解像度は、より高精度光学系を用いてビームサイズを減らすことにより、さらに改善することができる。レーザーの波長(1070nm)の熱拡散を考慮すると、 実質的に最低2〜5μm程度の解像度を得ることができると考えられる。
【0074】
図14bにおけるパターンのプロファイルは、既存のナノ粒子インクベースのLDC工程ではよく見られなかった(Fig. 6参照)丸型の凸形状が端部に現れることを示す。これは、予備加熱過程において、インクの粘度が相対的に増えたことと、相対的に低い吸収率を持つ波長のビームを使用したことによって、高環状構造をもたらすマランゴニ流動が抑制されて、表面張力勾配(surface tension gradient)が減少されたからである。これは、次のマルランゴニ数の定義式によって支持される。
【0075】
【数1】
【0076】
Δσは、表面張力勾配、dは、特性長(characteristic length)、Dは、特性寸法(characteristic dimension)、μは、動的粘度である。高環状構造の部材と滑らかな表面は多層回路構造の作製における短絡の問題を解決する上で極めて重要である。図14cは、レーザー処理された金属パターンの表面粗さ(Ra)のRMS値は、約6.0nmで、従来のナノ粒子インク系LDC方法によって得られた値と比較するとはるかに小さい値であることが分かる。こうした滑らかな表面は、非常に微細な粒子の均一な分散と低吸収率のレーザー源を利用して、爆発的な気化を取り除くことによる厚さ方向に均一な硬化によって得られる。用意されたパターンの光学的に高い反射率は、図14cおよび図14dに示すように、表面粗さ(値)が電子ビーム蒸着されたAg膜の値(約2.9 nm)よりも二倍程度高いだけで可視光線の波長よりもはるかに小さいため、表面粗さと正反射(specular reflectance)との理論的な関係によって容易に導き出すことができる。本発明のLDC方法によって用意された銀表面は、電子ビーム蒸着によって得られた表面(反射率96%)と同程度の良い反射率(反射率94%)を示す。
【0077】
ポリマー基板上に導電性を持つパターンの製造における低価で、かつ、便利な手段は、柔軟な電子素子や光素子の開発に要求されている。一方、本発明に関連する製造コストは、次のように説明できる。
【0078】
これまでの研究は、レーザー硬化、インクジェット印刷に基づく金属ナノ粒子インクをベースにした製造工程についてされてきたが、こうした技術は、5nmのナノ粒子インクを製造するのにUS $ 30,000 / Kg程度とかなり高価である。そして、真空蒸着した電極と比較して、低生産速度、低解像度、不均一な断面形状、および、低表面水準といった問題が存在していた。
【0079】
本発明に係るマイクロ電極形成技術に用いられる有機金属インクは、kg当たりUS $ 300程度と安価で、ナノ粒子インクよりも良いクオリティの電極を形成することができる。
【0080】
このように、本発明の技術的な構成は、本発明の属する技術分野における当業者が本発明のその技術的思想や必須の特徴を変更しないで別の形態で実施され得る。
【0081】
したがって、前述の実施例はあくまで例示的なものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は、後述する特許請求の範囲によって定まり、そして、特許請求の範囲の記載から導き出されるすべての変更や変形形態が本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10:基板
20:インク層
21:パターン
23:固体金属粒子
30:洗浄液
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンの製造方法に関し、特に、レーザーを用いてパターンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の光産業、ディスプレイ産業、半導体産業、バイオ産業では、製品の薄膜化、高性能化のニーズが増している。こうした要求を満たすためには、それぞれの部品を成す配線や機能性薄膜層により小さくて均一なパターンが形成されている必要がある。したがって、微細パターンの製造方法は、これらの産業の基盤となる重要な技術ともいえる。
【0003】
従来から非露光微細パターン化方法に基づく、ナノ粒子インクを用いたLDW方法に関する研究が数多く行われてきた。
【0004】
しかし、大きさ数十nmのナノ粒子インクにレーザーを直接照射してパターンを形成しようとするとき、大量の溶剤の使用やナノ粒子の高い融点(300〜400℃)のため、長時間に及ぶパターン形成時間が要る。もちろん、ナノ粒子インクにおけるナノ粒子をより小さく製造すればよいことであるが、それに伴って製造コストが増加する欠点がある。このため、インクの焼結が悪くなり、金属電極の抵抗も増加する現象も起きる。
【0005】
そして、レーザー照射時の熱拡散のため、レーザーの焦点サイズよりパターンの線幅が相対的に大きくなり、10μm以下のパターンを形成するためにはスキャナをも使用することができず、スキャナでは、高精度の多様なパターンの製造に限界がある。したがって、回析限界(diffraction limit)に近く焦点を合わせられる高価な対物レンズを使用しなければならない欠点がある。
【0006】
また、液体インクにレーザーを照射するときに、表面張力勾配(surface tension gradient)によって誘発されるマルランゴニ流動(マランゴニ流)が生じ、それによって、パターンの縁部は厚くなるが、パターンの中心部は薄くなるので、パターンの断面が、まるで火山の噴火口の断面の形状のようになってしまう。
【0007】
前述の欠点又は問題を解決するために、焼結が容易で、より低い温度でも焼結され、導電性に優れた透明な金属有機インク(transparent organometallic ink)を使用する必要がある。しかし、通常、これらのインクは、ナノ粒子インクとは異なり、その中に金属粒子を含んでないため透明であり、それにより、レーザーの吸収率が低くてパターン化に大量の光エネルギーを必要とし、そして、パターンの線幅が増加する、といった、問題を抱えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、前述した透明な金属有機インクにおけるパターン化の問題を解決するために、本発明は、透明な金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、金属イオンが、既存のナノ粒子よりも微細なナノ粒子に還元され、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少し、微細パターンを高速かつ容易に実装できる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、パターンの縁部を厚くし、かつ、パターンの中心部を薄くするマランゴニ流の影響を少なくして、均一な厚さのパターンを形成することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、レーザーの吸収率が向上するとともに、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるので、低出力レーザーでも急速にパターニングすることができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、金属有機インクが、低温焼結されるため、フレキシブル基板に適合した、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、低価のインクを使用して製造コストを抑えた、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、基板上の残留物を除去して、パターンの伝導度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係るパターンの製造方法は、基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階;前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階;前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階;および、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階を含む。
【0015】
したがって、請求項1に係るパターン製造方法によれば、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるため、光吸収率が良くなり、レーザー照射時に熱拡散が減少するので、微細パターンをより簡単に加工できる。また、こうした半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響をあまり受けずに流体力学的流動の影響を大きく受けるため、均一な厚さのパターンを形成することができ、かつ、パターンが厚くなるので導電性が向上する。また、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるので、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。
【0016】
また、金属有機インクは、低温でも焼結されるので、フレキシブル基板においても、本発明のパターンの製造方法を応用することができる。また、金属有機インクは、安価であるため、製造コストを下げることができる。
【0017】
請求項2に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第2の段階において、加熱用ランプを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることを特徴とする。
【0018】
したがって、請求項2に係るパターン製造方法によれば、光吸収率が増加し、レーザー照射時の熱拡散が減少するので、微細パターンを容易に実装することができる。また、こうした半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響をあまり受けずに流体力学的流動の影響を大きく受けるため、均一な厚さのパターンを形成することができる。また、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。また、連続工程が可能で、均一な温度にて加熱することができる。
【0019】
請求項3に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第2の段階において、ホットプレートまたは対流オーブンを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることを特徴とする。
【0020】
したがって、請求項3に係るパターン製造方法によれば、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少するため、微細パターンを容易に加工できる。また、半固体状態の硬化によって、マランゴニ流の影響を避けられるので、均一な厚さのパターンを形成することができる。また、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる。また、所望の温度を設定し、その温度を維持したまま加熱することも可能である。
【0021】
請求項4に係るパターンの製造方法は、請求項1に係るパターンの製造方法における前記第4の段階において、前記基板を洗浄液に浸すか、超音波洗浄をするか、又は、洗浄液を噴射することで、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
したがって、請求項4に係るパターン製造方法によれば、レーザーが照射されていない部分は洗浄液によって除去されないため、固体状態に硬化したパターンだけを基板上に残すことができる。
【0023】
請求項5に係るパターンの製造方法は、請求項4に係るパターンの製造方法における前記第4の段階において、前記パターンが形成された基板を加熱する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
したがって、請求項5に係るパターン製造方法によれば、パターンが形成された基板を加熱するため、基板上の残留物を除去して、パターンの導電性を向上させることができ、そして、パターンに浸透した有機溶媒を除去してパターンを再硬化・乾燥させることができる。結果的に、パターンをより確実に焼結させ、パターンが形成された基板の完成度を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、透明な金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、金属イオンが、既存のナノ粒子よりも微細なナノ粒子に還元され、光吸収率が増加し、レーザー照射時に熱拡散が減少して微細パターンを高速かつ容易に実装できる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0026】
また、本発明は、パターンの縁部を厚くし、かつ、パターンの中心部を薄くするマランゴニ流の影響を極力受けないため、均一な厚さのパターンを形成することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0027】
また、本発明は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させることにより、レーザーの吸収率が向上し、かつ、レーザーの照射による熱拡散距離が短くなるため、低出力レーザーでも急速にパターン化することができる、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0028】
また、本発明は、金属有機インクが低温でも焼結されるので、フレキシブル基板にも適した、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明は、低価格のインクを使用して製造コストを抑えた、レーザーを用いたパターンの製造方法を提供することができる。
【0030】
また、本発明は、基板上の残留物を除去して、パターンの伝導度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、請求項1に記載されたパターンの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】図2は、パターンを製造する一連の過程を示す図面である。
【図3】図3は、予備加熱時間に応じて被覆された金属有機インクの厚さと吸収率(532nm)が大きく変わることを示す図面である。
【図4】図4は、90秒間予備加熱後、そこに生成された銀ナノ粒子の粒径分布および透過電子顕微鏡像を統計的に分析した結果を示す図面である。
【図5】図5は、マランゴニ流の影響により、パターンの縁部が厚く、かつ、パターンの中心部が薄く形成された状態を示す図面である。
【図6】図6は、ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターンの断面図である。
【図7】図7は、マランゴニ流を説明する図面である。
【図8】図8は、流体力学的流動の影響により、パターンの厚さが均一に形成された状態を示した図面である。
【図9】図9は、流体力学的流動を説明する図面である。
【図10】図10は、ガルバノメーター・スキャンを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図11】図11は、コンタクトマスクを用いたパターンの製造方法を示した図面である。
【図12】図12は、マスクプロジェクションを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図13】図13は、SLMを用いたパターンの製造方法を示す図面である。
【図14a】図14aは、1000 rpmで90秒間予備加熱する間にスピンコーティングされたパターン幅のレーザー(λ=1070 nm)の出力とスキャン速度(scan rate)に対する依存性を示す図面である。
【図14b】図14bは、AFMプロファイルとレーザー処理された銀線形パターン(1000 rpm、スピンコーティング、200 mWのレーザー出力、25 mm/ sのスキャン速度)の画像を示す図面である。
【図14c】図14cは、2D AFM表面粗さの画像とそれに対応するレーザー処理パターンのプロファイルを示す図面である。
【図14d】図14dは、E-ビーム蒸着パターンの表面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施例について、添付された図面に基づいて詳細に説明していく。ただし、添付された図面は、本発明の内容をよりよく理解してもらうために設けたものであり、本発明の範囲は、添付された図面に限定されるものではない。本発明の利点および特徴、および、それらを達成するための方法は、添付される図面、後述する実施例から明らかになるであろう。明細書を通して同じ符号は同じ構成要素又は部品を指す。マランゴニ流と流体力学的流動については、従来のパターン製造方法における問題点と、本発明の効果を説明するために言及する必要がある。
【0033】
本発明に対する理解を深めるために、論文"Bongchul Kang、Seunghwan Ko、Jongsu Kim and Minyang Yang *、"Microelectrode fabrication by laser direct curing of tiny nanoparticle self - generated from organometallic ink、"31 January 2011/Vol. 19、No.3/OPTICS EXPRESS 2573〜2579"を参照することとする。
【0034】
図1は、パターンの製造方法の手順を示すフローチャートである。図1によれば、本発明のパターン製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を取り除いて、前記パターン(21)だけを残す第4の段階を含む。
【0035】
図2は、パターンを製造する一連の過程を示す図面である。図1及び図2に基づいて、パターンの製造方法を説明する。
【0036】
第1の段階は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する段階で、ガラスのような軽質の基板(以下、「基板」という。)に液体状態の金属有機インクを被覆する段階である(S100)。したがって、図2の(a)において、下部が基板(10)を表し、上部が、基板(10)上に形成された金属有機インク層(20)を表す。ここで、第1の段階で使用される金属有機インク層(20)の形成方法としては、スピンコーティング(spin coating)、ブラードコーティング(blading coating)、スプレー(spray)、インクジェット(ink jet)、ロールツーロール(roll to roll)等がある。
【0037】
第2の段階は、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるステップである(S200)。金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化可能な方法であれば特に限定されない。半固体状態とは、完全に硬化した固体よりは流動性が高く、斜面に沿って流れる液体よりは流動性がはるかに少ない状態をいい、所定以上の力を加えたときに破裂するのではなく、多少形状が変形したままその形状を維持している状態をいう。また、金属有機インクの内部で還元により固体粒子が形成され始める状態ともいえる。液体状態の金属有機インクよりも半固体状態の金属有機インクのほうが薄いが、それは、金属有機インクが液体状態から半固体状態に変化する際に、金属有機インクの大部分を成している有機溶媒(23)が蒸発するからである。しかし、有機溶媒が完全に蒸発し、金属有機インク層(20)が固体状態になっておらず、有機溶媒のほとんどが蒸発し、金属有機インク層(20)が半固体状態にならなければならない。
【0038】
本発明の実施例において、金属有機インクは透明であるが、こうした透明な金属有機インクをパターン化するために用いる所定波長のレーザーは、透明な金属有機インクをほとんど透過することになる。したがって、透明な金属有機インクを透過して残った少ない光エネルギーのみがパターン化加工に用いられるため、パターン化のためには高出力のレーザーを使用しなければならない問題があった。また、従来のパターン化加工では、有機溶媒(23)系インクが基板(10)上に厚く被覆される状態でレーザーが照射されるので、パターン(21)の幅が薄く形成されず、厚く形成されてしまう問題があった。これに対し、本発明では、透明な金属有機インクが基板(10)に塗布するとすぐにレーザーが照射されるのではなく、透明な金属有機インクの大部分を占める有機溶媒(23)が揮発し、インク層(20)が薄くなった状態でレーザーが照射されるので、パターン(21)を薄く形成できるという利点がある。
【0039】
本発明では、第2の段階を経ると、透明な金属有機インクが茶色に変わる。前述したように、透明な金属有機インクを用いた場合、パターン化に使用されるレーザーのほとんどがインクを透過してしまうが、茶色になると、透明な金属有機インクに比べて、レーザーの吸収率が高まり、結果的に透過率が著しく低下する。したがって、レーザーによる金属有機インクのパターン加工の効率が高まる。金属有機インクの色も透明ではなく茶色であり、かつ、金属有機インクの状態も液状ではなく半固体状態であるため、透明な金属有機インク層(20)にレーザーを照射すると、全体的には金属有機インクの光吸収率が増すことになる。基板(10)の加熱によって金属有機インク中の多量の有機溶媒(23)、特に、M‐C結合をしない有機溶媒(23)が除去された状態であるので、レーザー照射時に熱拡散が減少し、微細パターン(21)の加工が可能になり、かつ、パターン(21)を形成するための熱拡散距離が短いため、低出力レーザーでも急速なパターン化が可能となる。
【0040】
前述したように、本発明のパターンの製造方法では、透明な金属有機インク(transparent organometallic ink)が使用され、特に、金属の中でも"銀(Ag)"を含有する透明な金属有機銀インク(transparent organometallic Ag ink)を使用する場合を例に挙げて説明する。有機金属銀インクは、有機溶媒に銀イオンが溶け込んでいる構造を有するので、常温では透明な液体として存在する。ただ、金属として銀が用いられているが、銀以外にも、伝導度の高い銅、金など他の金属を用いても良い。金属有機銀インクについては、第2の段階においてさらに詳細に説明する。
【0041】
第2の段階において、有機金属銀インクに熱を加えて、銀イオンの還元と有機溶媒の蒸発が同時に起こるようになり、銀イオンは、固体の金属に還元され、析出される。ここで注意すべきことは、インクに含まれていた銀イオンが固体の金属として析出されるのであり、インク自体は固体ではないということである。前述したとおり、インク自体は半固体状態となる。有機金属銀インクは、ナノ粒子インクとは異なり、焼結温度は150℃〜200℃と低い。
【0042】
フレキシブル基板は、通常ポリマーで構成され、例えば、PIフィルムで構成される。これらのポリマー材料は、350℃程度の温度でほとんど溶けてしまう。ところが、液体状態のナノ粒子インクを焼結させるためには、300℃〜400℃の温度が必要となる。銀(Ag)をナノ粒子の状態にしようとしても、ナノ粒子の銀(Ag)を焼結するにはやはり300〜400℃の温度が必要になるので、これまではフレキシブル基板に(従来の)ナノ粒子インクを用いたパターン化方法を適用するのが難しかった。通常のナノ粒子インクの粒子よりも微細な粒子を含むナノ粒子インクを使用すると、焼結温度が低くなってフレキシブル基板に適用することは可能だが、インクの単価が急激に上昇するので、量産に適していない。これに対し、金属有機銀インクは、銀イオンがナノ粒子に還元されて固体の銀粒子になるが、還元されたナノ粒子の大きさが一般的なナノ粒子インクの粒子よりも小さいため、光吸収率が増加し、低い温度でも容易に焼結されるようになる。したがって、インクが低温で焼結されるので、本発明のパターン化方法は、フレキシブル基板に対しても利用可能である。ナノ粒子の粒度分布については、後述する(図4)。
【0043】
第2の段階を経て、半固体状態の金属有機インクの中で還元された金属粒子が多くなると、金属有機インク中に固体金属粒子が存在するため、第3の段階では金属有機インク層(20)にレーザー光を照射すると、金属有機インクは、レーザーをよりよく吸収するようになる。したがって、レーザー照射時に熱拡散がさらに減少され、微細パターン(21)の加工が容易になり、そして、レーザー照射による熱拡散距離がより短くなって、低出力レーザーにおいても速いパターン加工が可能になる。また、インクが低価格であるため、パターン(21)の製造にコストが軽減されるメリットもある。
【0044】
第3の段階は、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される段階である(S300)。第3の段階において、レーザーとして、転写材料と基板(10)の特性に基づいてCWレーザー(continuous wave laser)またはパルスレーザー(pulsed laser)を使用することができる。レーザーは、金属有機インク層(20)におけるパターン(21)が形成されるべき領域に照射され、その照射された部分を固体状態に硬化させる。第3の段階については、図2(c)に基づいて説明する。図2(c)は、ネガティブ型を採用してレーザー光が照射された部分がパターン(21)に形成されることを表す。ここで、第2の段階が完了すると、金属有機インク層(20)は、半固体状態で、金属有機インク層(20)が完全に硬化する前に、レーザーを用いて局所的に、かつ、選択的に硬化させる。このとき、レーザー光の出力、移送速度、ビームのサイズなどによって硬化を制御する。
【0045】
第4の段階は半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)のみを残す段階である(S400)。金属有機インク層(20)から固体状態に硬化されてパターン(21)が形成された所定領域のインク層(20)以外の半固体状態の金属有機インク層(20)を取り除くと、固体状態のパターン(21)だけが基板(10)上に残る。図2(f)は第4の段階が終わり、最終的な完成されたパターン(21)が形成された基板(10)を表す。
【0046】
ここで、第2の段階についてより具体的に検討する。このパターンの製造方法は、基板(10)上にインク層(20)を形成する第1の段階、加熱用ランプを用いて、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱して金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残す第4のステップを含む。
【0047】
図1および図2によれば、第2の段階において、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱用ランプで加熱する。図2(b)は、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱する方法の一例として、ホットプレート(hot plate)で加熱することを示しているが、加熱用ランプの輻射熱を用いて金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱することは、当業者にとって明らかであろう。この第2の段階では、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるために、加熱用ランプを用いて金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱し、基板(10)上に塗布されたインク層(20)の大部分の有機溶媒(23)を蒸発させることができる。加熱用ランプで加熱することは、輻射熱を利用するものである。この方法は、所望の温度を設定し、その温度を保ったまま加熱することは難しいが、後述するホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)によって加熱する方法に比べて、連続工程が可能で、均一な温度に加熱することができる。
【0048】
これから第2の段階についてさらに検討していく。このパターンの製造方法は、基板(10)上にインク層(20)を形成する第1の段階、ホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)により、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱して、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、その照射された部分が固体状態に硬化されて、パターン(21 )が形成される第3の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)のみを残す第4のステップを含む。
【0049】
図1および図2に基づいて、第2の段階についてさらに具体的説明することにする。金属有機インク層(20)が形成された基板(10)をホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)にて加熱する。図2(b)は、金属有機インク層(20)が形成された基板(10)を加熱する方法の一例で、ホットプレートを用いて加熱することを示している。パターンの製造方法の第2の段階において、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させるために、ホットプレート(hot plate)または対流オーブン(convection oven)により、金属有機インク層(20)が形成された基板( 10)を加熱して、基板(10)上に塗布されたインク層(20)中のほとんどの有機溶媒(23)を蒸発させることができる。ホットプレートによる基板(10)の加熱は伝導(conduction)を利用したことであり、対流オーブン(convection oven)による基板(10)の加熱は、対流を利用したものである。この方法は、連続工程と、均一な温度での加熱という点からは劣るが、輻射熱を利用した加熱用ランプにて加熱する方法に比べて所定の温度に設定し、その温度を保ったまま加熱するのに有利である。
【0050】
次に、第4の段階について、より具体的に説明する。このパターンの製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30 )を噴霧することにより半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残す第4のステップを含む。
【0051】
図1及び図2に基づいて説明する。図2(d)によれば、金属有機インク層(20)の一部は、パターン(21)に硬化され、一部は半固体状態になったまま、基板(10)上に形成されていて、こうした基板(10 )が洗浄液(30)入りの容器内に存在している。図面には、基板(10)を洗浄液(30)に浸けて半固体状態のインク層(20)を除去する過程のみが示されている。しかし、このパターンの製造方法における第4の段階は、これだけではなく、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30)を噴射したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去することを含むが、これらのうちいずれの方法をとっても、このパターンの製造方法の第4の段階に相当するといえる。また、超音波洗浄または洗浄剤(30)噴射によるパターン(21)以外のインク層(20)を除去する方法については、当業者に知られているであろう。
【0052】
ここで、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去するための有機溶媒には、例えば、もとの金属有機銀インクのベースとなった有機溶媒(23)、アセトン、ヘキサン、又は、IPAなどがある。第4の段階は、有機溶媒を用いて、形成されたパターン(21)以外の層を洗い流す。通常、有機金属インクのベースとなった有機溶媒(23)、アセトン、ヘキサン、又は、IPAなどに満たされた容器にパターン(21)が形成されている基板(10)を丸ごと入れて洗い流す。したがって、固体状態に硬化されたパターン(21)だけが基板(10)上に残る。超音波洗浄は、基板(10)を洗浄液(30)に浸した状態で超音波振動を加える方法であり、洗浄剤(30)を噴射する方法は、洗浄液(30)を基板(10)に直接スプレーして、パターン(21)だけを残す方法である。
【0053】
次に、第4の段階についてより具体的に検討する。このパターンの製造方法は、基板(10)上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、その照射された部分が固体状態に硬化されてパターン(21)が形成される第3の段階、および、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、又は、洗浄液(30 )を噴霧したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、パターン(21)だけを残し、かつ、基板(10)を加熱する第4のステップを含む。
【0054】
図1及び図2に基づいてこのパターンの製造方法を説明する。図2(e)には、基板(10)上にパターン(21)だけが残された基板(10)をオーブンに入れて加熱することが示されている。これは、基板(10)を加熱する方法の一例を示すものであり、基板(10)を洗浄液(30)に浸したり、超音波洗浄をしたり、洗浄液(30)を噴射したりして、半固体状態の金属有機インク層(20)を削除してパターン(21)だけを残すほか、さらに基板(10)を加熱する。
【0055】
こうした更なる手順(即ち、加熱)が必要な理由は、第4の段階において、基板(10)を洗浄した場合、洗浄工程中に硬化したパターン(21)に有機溶媒が浸透して、パターン(21)が再び液化される恐れがあるので、そのパターン(21)の再硬化や乾燥を行うためであり、それを通して、パターン(21)をしっかり焼結させるためである。また、基板(10)を加熱する段階は、基板(10)上にパターン(21)を形成するために必ず必要な手順とはいえないが、パターン(21)だけを残して半固体状態の金属有機インク層(20 )を洗浄液(30)で洗い流した後、基板(10)上に残留する有機溶媒などの残留物を除去するとともに、伝導度を向上させるなど、パターン(21)が形成された基板(10)の完成度を高めるために必要な段階である。
【0056】
図3は、予備加熱時間に応じて被覆された金属有機インクの厚さと吸収率(532nm)が様々に変わることを示す図面である。半固体状態とは、金属有機インクが、傾斜面に沿って流れる液体よりもはるかに低い粘度を有し、かつ、完全な固体よりも粘度が高い状態をいう。有機金属化合物インクをソーダライムガラス基板上に1000rpmの速度でスピンコーティングし、100℃の温度にて時間をかけて厚さの変化と光吸収率の変化を観察した。予備加熱温度である100℃にて加熱すると、均一な厚さのコーティングが得られ、また、ナノ粒子の凝集が生じない。これより温度が高くなると、インクの厚さが場所によって異なるので、厚さにばらつきが出る。 60秒間予備加熱した後、その厚さはますます減少し、約0.33μmに収束するようになり、光吸収率は予備加熱時間に応じて直線的に増加する。光吸収率の増加によって、有機金属インク中ほとんどの有機物が蒸発し、ナノ粒子の自己生成量が増加する。
【0057】
図4は、90秒間予備加熱後、透過電子顕微鏡を用いて、自己生成された銀ナノ粒子の粒子生成状態を統計的に分析した結果を示す。予備加熱温度が焼結温度よりも低いにもかかわらず、銀ナノ粒子は、ナノ粒子どうしの凝集などなく、均一に生成された。透過電子顕微鏡の統計分析結果、自己生成されたナノ粒子の平均粒径は2.54nmで、標準偏差は0.67nmであり、3nm以下のナノ粒子の割合が88%とあり、非常に均一な超微細粒子が生成された。 2〜3nmの極微細粒子が、銀と有機物とが結合された物質の中で均一に自己生成していることが確認できた。予想通り、超微細粒子は、ナノ粒子の微熱分解と未成長現象の結果生じたものである。
【0058】
図5は、マランゴニ流の影響により、パターンの縁部は厚く、パターンの中心部は薄く形成された状態を示す図面であり、図6は、ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターンの断面図であり、そして、図7は、マランゴニ流を説明する図面である。
【0059】
図5〜7に基づいて、既存のナノ粒子インクを使用したパターニングにおけるマランゴニ流の影響を説明する。図5の左図は、基板(10)上に塗布されたインクに作用する力を示したものであり、右図は、これらの力が働いて形成されたパターン(21)の断面形状を示す。左図では、インクの上方からインクと遠ざかる方向に向かう2つの矢印がマランゴニ流による力を表し、インクの下方からインクの中心に向かう2つの矢印が流体力学的流動による力を表す。そして、この二つの力の大きさは、矢印の大きさに比例する。流体力学的流動については、後述する。
【0060】
図5に示した基板(10)上のインクに、上から下に向かってレーザーが照射されると仮定すれば、レーザーが、インクの上に均一に照射されるのではなく、レーザーの中心部の温度が高くなる。このため、インクの縁ではなく中央部においてより多く蒸発され、この時に蒸発されるのは主に有機溶媒である。このとき、レーザーが強く照射されるインクの中央部よりも、レーザーが弱く照射されるインクの縁部のほうの表面張力が高くなる。このため、表面張力が低いところから高いところへの流れが生じ、結果として、パターン化されたインクの断面が、まるで火山の噴火口のようになる。この原因となるのが、マランゴニ流による力である。もちろん、基板(10)と、インクが接するところにも流体力学的流動による力が働くものの、マランゴニ流による力より小さいため、わずかな影響しか受けない。したがって、マランゴニ流による力がインクに作用する支配的な力となるので、図5の右図のように、パターン(21)の中央部がくぼんでしまう。こうした形状は、パターン(21)の上に他の物質を被覆する際に不均一の問題を引き起こすだけでなく、 伝導度が低下する原因ともなる。
【0061】
図6は、中央部が陥没したパターン(21)の特定の数値が示されている。ナノ粒子インクをレーザーパターン化したパターン(21)の中央部は、約400nmの厚さになり、その縁部は、約600〜800nmの厚さになることが分かる。ただし、これはあくまで例示のために挙げたもので、図6と同様にその断面が噴火口の形状を有するが、異なる数値を有するパターン(21)もあり得る。
【0062】
図7に基づいてマランゴニ流についてさらに説明する。インクに上から下に向けてレーザーが照射され、レーザーの中心部の温度が高くなるため、レーザーの中心部に照射されるインクからその周辺へ熱が拡散され、この熱により有機溶媒(23)の蒸発が起こる。図面における巻線の矢印は、有機溶媒(23)が蒸発されることを示す。続いて、レーザーの中心部から離れたインクは、レーザーの中心部が照射されるインクに比べて表面張力が高いため、表面張力勾配(surface tension gradient)が生じる。すると、レーザーの中心部に照射されるインクから、レーザーの中心部から離れた側のインクに向かうインクの流動が生じる。このような流れをマランゴニ流と呼ぶが、この流れに起因して、パターン(21)の縁部は厚く、その中心部は薄くなる。
【0063】
図8は、流体力学的流動によってパターンの厚さが均一に形成された状態を示す図面であり、図9は、流体力学的流動を説明する図面である。図5および図8を比較すると理解しやすいだろう。図8の左図は、基板(10)上に塗布されたインクに作用する力を表し、そして、右図は、これらの力の作用により形成されたパターンの断面形状を示す。左図では、インクの上方からインクと遠ざかる方向に向かう2つの矢印がマランゴニ流による力を表し、インクの下方からインクの中心に向かう2つの矢印が流体力学的流動による力を表す。そして、この二つの力の大きさは、矢印の大きさに比例する。図8は、透明な金属有機インクを使ったパターン化によって形成されたパターン(21)を示す。図6とは異なり、マランゴニ流による力が働くものの、インクに働く流体力学的流動による力がはるかに大きいため、パターン(21)の厚さは縁部から中心部端を通して均一なものとなる。
【0064】
図9は、流体力学的流動を説明する図である。図面において、上向きの矢印は、有機溶媒(23)が蒸発されることを示す。前述したように、レーザーの中心部に近いほど光が強く、かつ、温度が高いため、レーザーの中心部が照射されるインクからの有機溶媒(23)の揮発がよりよく起こる。図9において、左側が、レーザーの中心部に照射されるパターン(21)の中心部で、右側がパターン(21)の縁部となる。図9によれば、パターン(21)の中心部における有機溶媒(23)の高さがパターン(21)の縁部における有機溶媒(23)の高さより低いため、有機溶媒(23)の高さを合わせるためにパターン(21)の縁部からパターン(21)の中心部に向かっての有機溶媒(23)の流れが生じ、この流れに沿って還元された状態の固体金属粒子がパターン(21)の中心部へ移動する。よって、パターン(21)が形成されるべき部分に固体金属粒子が集中されるので、薄いパターン(21)を加工できる。もちろん、ナノ粒子インクを使用したパターン加工においても流体力学的流動は存在する(図5(左図)では、流体力学的流動が、2つの小さな矢印で表示されている)。しかし、ナノ粒子が有機溶媒(23)の流れに沿って動くにはその粒子があまりにも大きく、またナノ粒子間の力のほうが流体力学的流動よりもはるかに大きい。
【0065】
以上、図5ないし図9に基づいてマランゴニ流と流体力学的流動の原理を説明したが、これにより、レーザーを用いたパターンの製造方法の各段階(特に、第2および第3の段階)がより明確になったであろう。パターンの製造方法において、ナノ粒子インクにレーザーを照射すると、マランゴニ流の効果は強くなるが、流体力学的流動の効果は弱くなる。一方で、半固体状態の金属有機インクにレーザーを照射すると、マランゴニ流の効果は弱くなるが、流体力学的流動の効果は強くなる。したがって、均一な厚さのパターン(21)を形成でき、かつ、パターン(21)が厚くなるため、導電性が向上するメリットがある。
【0066】
前述したパターンの製造方法において、レーザーを照射する方法として、図10ないし図13に示した方法をも用いることができる。
【0067】
図10は、ガルバノメーター・スキャンを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図10によれば、レーザービーム(laser beam)を、AOD(Advanced Optical Disk)、コレクション(correction)、ガルバノメーター(galvanometer)、スキャンレンズ(scan lens)、円柱レンズ(cylindrical lens)を順番に通過させて、基板に透過させる。レーザーを動かさずに、基板を動かしてパターンを形成する方法である。この方法は、10m / s以上の高速スキャンが可能である。
【0068】
図11は、コンタクトマスクを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図11によれば、レーザーがバンドル(bundle)、ホモジナイザー(homogenizer)、ラインビーム発生器(Line Beam Generator)の順に通過すると、マルチホモジナイズされたラインビーム(Multi homogenized line beam)が発生し、基板を被覆させ、マスクが直接に接触して1:1で投影(projection)されるというパターン形成方法である。この方法は、スキャンの精度が低くても良いという長所がある。
【0069】
図12は、マスクプロジェクションを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図12によれば、レーザービームホモジナイザー(beam homogenizer)とシェーピング(shaping)を通り、マスク(mask)を通過すると、 所定形状のビームがプロジェクション・レンズ(projection lens)を通過するようになり、その距離の比率に応じて画像が縮小されて投影される。コンタクトマスク(contact mask)と異なる点は、コンタクトマスク(contact mask)は、投影光学系からマスクへレーザーが照射されるのに対し、マスク投影(mask projection)は、マスクから投影光学系へ照射される。
【0070】
図13は、SLMを用いたパターンの製造方法を示す図面である。図13によれば、SLM(Spatial Light Modulator)は、光を空間的に多様に変化させる変調器で、光がその変調器を通過すると、所定の(形状の)光に変わることを用いるパターン化法である。 SLMは、コンピュータを介して制御されるので、マスクが必要なく、所望の形状の光に容易にパターン化することができる。
【0071】
本発明は、前述した4つのレーザー照射方法に限定されるものではなく、それ以外のレーザー照射方法をも使用することもできる。
【0072】
図14aは、1000 rpmで90秒間スピン被覆されたパターン幅のレーザー出力(λ= 1070 nm)とスキャン速度(scan rate)に対する依存性を示す。図14bは、AFM形状とレーザー処理された線形パターン(1000 rpm、スピンコーティング、200 mWのレーザー出力、25 mm / sのスキャン速度)を示す。図14cは、2D AFM表面粗さの画像とそれに対応するレーザー処理パターンのプロファイルを示す。図14dは、E -ビーム蒸着パターンの表面を示す。
【0073】
図14aは、パターン幅のレーザー出力と硬化率(curing rate)に対する依存性を示す。これは、現在の有機金属インクに基づくLDCのアプローチが25mm / s (従来のナノ粒子インクに基づくLDC法(0.2mm /s )に比べて、はるかに高速である。)においてもパターン形成が可能であることを示す。パターン速度だけでなく、解像度も簡単に制御することができる。図4aに示すように、同じ焦点サイズのレーザーにおいて、出力を変えるだけで様々な範囲のパターンサイズ(20〜100 μm)も実現できる。照射されたレーザーの焦点サイズよりも小さなパターンは、相対的に低い吸水率に基づく軽減された(均一の)熱拡散によって得られる。通常、パターン幅は、特に、従来のナノ粒子インク系LDC工程において、金属ナノ粒子の高い熱伝導度に基づく熱拡散のため、焦点サイズよりも大きくなる。熱拡散効果は、有機金属インク系LDC工程では予備加熱されたインク(pre - baked ink)の高い熱的感度と銀-有機物複合体の低い熱伝導度によって軽減され得る。本発明では、10 μmの焦点サイズのレーザービームで解像度を10 μmまで改善することができた。しかし、パターンの解像度は、より高精度光学系を用いてビームサイズを減らすことにより、さらに改善することができる。レーザーの波長(1070nm)の熱拡散を考慮すると、 実質的に最低2〜5μm程度の解像度を得ることができると考えられる。
【0074】
図14bにおけるパターンのプロファイルは、既存のナノ粒子インクベースのLDC工程ではよく見られなかった(Fig. 6参照)丸型の凸形状が端部に現れることを示す。これは、予備加熱過程において、インクの粘度が相対的に増えたことと、相対的に低い吸収率を持つ波長のビームを使用したことによって、高環状構造をもたらすマランゴニ流動が抑制されて、表面張力勾配(surface tension gradient)が減少されたからである。これは、次のマルランゴニ数の定義式によって支持される。
【0075】
【数1】
【0076】
Δσは、表面張力勾配、dは、特性長(characteristic length)、Dは、特性寸法(characteristic dimension)、μは、動的粘度である。高環状構造の部材と滑らかな表面は多層回路構造の作製における短絡の問題を解決する上で極めて重要である。図14cは、レーザー処理された金属パターンの表面粗さ(Ra)のRMS値は、約6.0nmで、従来のナノ粒子インク系LDC方法によって得られた値と比較するとはるかに小さい値であることが分かる。こうした滑らかな表面は、非常に微細な粒子の均一な分散と低吸収率のレーザー源を利用して、爆発的な気化を取り除くことによる厚さ方向に均一な硬化によって得られる。用意されたパターンの光学的に高い反射率は、図14cおよび図14dに示すように、表面粗さ(値)が電子ビーム蒸着されたAg膜の値(約2.9 nm)よりも二倍程度高いだけで可視光線の波長よりもはるかに小さいため、表面粗さと正反射(specular reflectance)との理論的な関係によって容易に導き出すことができる。本発明のLDC方法によって用意された銀表面は、電子ビーム蒸着によって得られた表面(反射率96%)と同程度の良い反射率(反射率94%)を示す。
【0077】
ポリマー基板上に導電性を持つパターンの製造における低価で、かつ、便利な手段は、柔軟な電子素子や光素子の開発に要求されている。一方、本発明に関連する製造コストは、次のように説明できる。
【0078】
これまでの研究は、レーザー硬化、インクジェット印刷に基づく金属ナノ粒子インクをベースにした製造工程についてされてきたが、こうした技術は、5nmのナノ粒子インクを製造するのにUS $ 30,000 / Kg程度とかなり高価である。そして、真空蒸着した電極と比較して、低生産速度、低解像度、不均一な断面形状、および、低表面水準といった問題が存在していた。
【0079】
本発明に係るマイクロ電極形成技術に用いられる有機金属インクは、kg当たりUS $ 300程度と安価で、ナノ粒子インクよりも良いクオリティの電極を形成することができる。
【0080】
このように、本発明の技術的な構成は、本発明の属する技術分野における当業者が本発明のその技術的思想や必須の特徴を変更しないで別の形態で実施され得る。
【0081】
したがって、前述の実施例はあくまで例示的なものであり、特許請求の範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は、後述する特許請求の範囲によって定まり、そして、特許請求の範囲の記載から導き出されるすべての変更や変形形態が本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10:基板
20:インク層
21:パターン
23:固体金属粒子
30:洗浄液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、
前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、
前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階、および
前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階
を含むパターンの製造方法。
【請求項2】
前記第2の段階において、加熱用ランプを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項3】
前記第2の段階において、ホットプレートまたは対流オーブンを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項4】
前記第4の段階において、前記基板を洗浄液に浸すか、超音波洗浄をするか、又は、洗浄液を噴射することで、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項5】
前記第4の段階において、前記パターンが形成された基板を加熱する段階をさらに含む、請求項4に記載のパターンの製造方法。
【請求項1】
基板上に金属有機インク層(20)を形成する第1の段階、
前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる第2の段階、
前記半固体状態の金属有機インク層(20)にレーザー光を照射し、照射された部分が固体状態に硬化されてパターンが形成される第3の段階、および
前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去して、前記パターンだけを残す第4の段階
を含むパターンの製造方法。
【請求項2】
前記第2の段階において、加熱用ランプを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項3】
前記第2の段階において、ホットプレートまたは対流オーブンを用いて、前記金属有機インク層(20)が形成された基板を加熱して前記金属有機インク層(20)を半固体状態に硬化させる、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項4】
前記第4の段階において、前記基板を洗浄液に浸すか、超音波洗浄をするか、又は、洗浄液を噴射することで、前記半固体状態の金属有機インク層(20)を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載のパターンの製造方法。
【請求項5】
前記第4の段階において、前記パターンが形成された基板を加熱する段階をさらに含む、請求項4に記載のパターンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【公開番号】特開2012−23380(P2012−23380A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156147(P2011−156147)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】
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