説明

パターンめっき方法

【課題】各種電子機器、通信機器などに用いられるプリント配線板のパターンめっき方法に関するものであり、セミアディティブ法のプロセスにおいて、パターン密度の不均一なパターンにおいて、パターン密度の疎密に起因して、めっき膜厚が不均一になるという課題を有していた。
【解決手段】めっきにより配線パターンを形成する工程において、カソード電極7のアノード電極3と対向する面にめっきレジストパターンが形成された配線パターン基板4を配置し、前記アノード電極3と前記配線パターン基板4との間に前記配線パターンを疎部10に対応する箇所に絶縁シート6が形成されたメッシュ状のネット5を、前記配線パターン基板4全体を覆うように装着し、電解めっきを行なうことを特徴とするパターンめっき方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ等の配線パターン製造時におけるパターンめっき工程において、特に、基板内のパターンめっきエリアの電流分布を制御し、パターンめっき膜厚を均一化する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BGAなどの半導体パッケージ基板の製造プロセスにおいては、配線の狭ピッチ化が進められており、ライン/スペースが25/25μm以下の配線パターンの要望が強くなってきている。このような狭ピッチ配線パターン形成は、基板表面を全面銅めっきして、エッチングを行なうサブトラクティブ法では、エッチング時のサイドエッチングにより25/25μm以下のパターン形成が不可能である。このため、基板表面を薄い銅被膜等で導電化処理してめっきシート層を形成し、めっきシート層上にめっきレジストパターンを形成して、めっき液に浸漬し、めっきシート層をカソード電極にして電解めっきを行ない、めっきを析出させて配線パターンを形成するセミアディティブ法が注目されてきている。
【0003】
ところが、上記パターンめっき工程では、パターン密度の低い部分でめっき膜厚が増加し、逆に、パターン密度の高い部分ではめっき膜厚が低下するという課題があった。
【0004】
これは、電解めっきにおける電流分布が、パターン密度の低い部分に集中しやすいということによるものである。このような、膜厚のバラツキが発生するとめっきレジストの厚みを厚くしないとめっきレジストの厚み以上にめっきが成長し、めっきレジストの表面でブリッジし、レジスト剥離ができない。そのため、めっき厚の厚くなる部分のめっきを可能にする為レジストの厚みを厚くすると、レジストの解像度が劣り、ライン/スペースが25/25μm以下のめっきレジスト形成が困難となる。また、膜厚のバラツキが大きいと多層基板を作製するとき層間の絶縁性が確保できないという課題が生じる。
【0005】
このため、パターンのめっき膜厚均一化のために、いろいろな工夫がなされてきている。その主なものは、パターン内に、パターン密度が低い部分にダミーパターンを導入し、パターン密度を均一化させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、別のめっき膜厚均一化の方法としては、セミアディティブ法のプロセスにおいて、めっきレジストパターン形成後、パターンめっき工程において、単一または複数のブロック化された配線パターンからなるパターンめっきエリアの端部または端部より外側に補助電極を3次元的に配置して、電解めっきを行ない、パターンのめっき膜厚を均一化させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、さらに別のめっき膜厚均一化の方法としては、リング状の補助電極と遮蔽板を用いた方法がある(例えば、特許文献3参照)。この方法は、基板表面の周縁部の上方外側にリング状の補助電極を配置し、この周縁部の所定の位置に遮蔽板を配置して、基板周縁のめっき膜厚の増加を抑制している。
【特許文献1】特開2000−323525号公報
【特許文献2】特開2004−263218号公報
【特許文献3】特開平8−36711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の方法では、パターンの設計の段階で、あらかじめダミーパターンを導入しておかねばならず、半導体パッケージ基板の設計者において、対応できるものではない。さらに、ダミーパターンの多くは、配線としては不要であるにもかかわらず基板内に残存するものであり、半導体パッケージに使用した場合には、電気信号の伝搬特性に対しては少なからず悪影響を及ぼす可能性があるため、容易に使用できる方法ではない。
【0009】
また、前記特許文献2の方法では、パターンがブロック化された配線パターンで、規則的に配置された配線パターンであれば補助電極を3次元的に配置して電解めっきを行なうことは可能であるが、不規則な配線パターンブロックに対しては、補助電極の作製と設置が不可能なパターンがあり、パターン密度の疎密に起因するめっき膜厚の不均一性を改善するのは困難であった。
【0010】
さらに、前記特許文献3の方法では、基板全体に関して、その周縁部の膜厚のコントロールは可能であるが、基板内に複数のパターンが配置された場合、その個々のパターン内でのパターン密度の疎密に起因するめっき膜厚の不均一性は改善されないという課題を有していた。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、基板内に複数のパターンが配置されていても、その個々のパターン内でのパターン密度の疎密に起因するめっき膜厚の不均一性を改善するパターンめっき法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記、従来の課題を解決するために、本発明は配線パターン基板をめっき治具に装着した後、治具の全面に基板を覆うようにメッシュ状のネットを装着する。メッシュ状のネット上にはパターンの疎な部分(めっき面積:小)に対応する箇所に絶縁シートを形成しており、このことによりパターン疎部の電流線が絶縁シートで遮断される為、電流線は絶縁シートの外側から裏側に回り込み、絶縁シートの下の疎なパターン部分に到達する。このため、めっきパターン部に至るめっき電流線の経路は絶縁シートがない部分よりも長くなり、めっき液の電気抵抗も増加し、結果的に疎な部分の電流線が密な部分の電流線に比べ弱められることによりパターン疎部の電流密度を抑制することができるので、パターン密度の疎密にかかわらずめっき膜厚を均一に電解めっきを行なうことが可能となる。
【0013】
また、メッシュ状のネットと被めっき物の距離による電流密度の抑制効果は、距離が離れる程、また、絶縁シートのサイズが小さくなる程減少する。従って、メッシュ状のネットと被めっき物の距離、ならびに絶縁シートのサイズを制御すれば、最適値において、被めっき物の面内の電流密度を極めて高度に均一化でき、結果として、被めっき物上に形成されるめっき被膜を実用上の要求を満足するレベルまで、均一化することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明のパターンめっき方法は、パターン密度の疎密にかかわらずめっき膜厚を均一に電解めっきを容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態におけるパターンめっき法のめっき装置の外観図である。
【0017】
パターンめっきを行なうためのめっき装置は図1に示すように、めっき液1が満たされためっき槽2内に、アノード電極3と、カソード電極7と、このカソード電極7のアノード電極3と対向する面上に絶縁基板を配置しこの絶縁基板表面にめっきシート層を形成して前記めっきシート層上にめっきレジストパターンを形成した配線パターン基板4とで構成し、この配線パターン基板4を覆うようにメッシュ状のネット5を配置し、さらにこのメッシュ状のネット5上に、前記配線パターン基板4の表面に配線パターンが疎に形成される部分に相当する箇所に絶縁シート6を形成している。本発明におけるカソード電極7は、配線パターン基板4を装着する基板保持用金属治具からなる。また、電解めっき時に流れる電流線8は、図1に示すような流れとなっている。
【0018】
本発明におけるパターンめっき工程は、まず、絶縁基板表面にめっき触媒付与及び無電解銅めっきを行なって、めっきシート層を形成する。次に、めっきシート層上に感光層を形成し、単一または複数の疎、密部が混在する配線パターンを用いてパターン露光、現像など一連のパターンニング処理を行なって、図2に示すようなパターン疎部10とパターン密部11とが混在しためっきレジストパターンを形成する。シート層の形成は、スパッタによる金属層の形成、あるいは、2〜3μmの極薄銅箔などで形成しても良い。
【0019】
次に本発明における電解めっき時の電流線をコントロールするためのメッシュ状のネット5の構成を図面を用いて説明する。
【0020】
配線パターン基板4を基板保持用金属治具であるカソード電極7に装着した後、配線パターン基板4の全面を覆うようにメッシュ状のネット5を装着する。図2、図3に示すように、メッシュ状のネット5上にはパターン疎部(めっき面積:小)10に対応する箇所に絶縁シート6が形成されている。このことにより図4に示すようにパターン疎部10の電流線9が絶縁シート6で遮断される為、電流線9は絶縁シート6の外側から裏側に回り込みながら、絶縁シート6の下のパターン疎部10に到達する。このため、絶縁シート6がない部分の電流線8よりも電流線9の経路が長くなるため、めっき液の電気抵抗も増加し、結果的にパターン疎部10への電流線9がパターン密部11への電流線8に比べて弱められることになるので、これによってパターン疎部10の電流密度を抑制することができ、パターン密度の疎密にかかわらずめっき膜厚が均一になるように電解めっきを行なうことができる。
【0021】
また、メッシュ状のネット5と配線パターン基板4の距離による電流密度の抑制効果は、距離が離れる程、また、絶縁シート6のサイズが小さくなる程減少する。従って、メッシュ状のネット5と配線パターン基板4の距離、ならびに絶縁シート6のサイズを制御すれば、最適値において、被めっき物の面内の電流密度を極めて高度に均一化でき、結果として、被めっき物上に形成されるめっき被膜を実用上の要求を満足するレベルまで、均一化することが可能となる。
【0022】
以上、本実施の形態において、配線パターン基板の片面にめっきを行なう方法について説明したが、両面同時にめっきを行なっても良い。配線パターン基板の両面にめっきを行なう方法について以下に説明する。
【0023】
両面同時にめっきを行なう場合、図5(a)に示すように、カソード電極7は、基板保持用金属治具13に給電と配線パターン基板4の外周部に電流が集中するのを防止するための給電および電流集中対策部14が取り付けられ、さらに図5(b)に示すように、めっきを行なうための配線パターン基板4を給電および電流集中対策部14と基板押さえ治具15の間に挟み込み、それぞれを給電用のクリップ16でとめた構成となっている。ここでは両面同時にめっきを行なうので、給電および電流集中対策部14と基板押さえ治具15は配線パターン基板4のめっきされるべき部分が開口されている。電流集中対策部は、配線パターン基板4の外周部に電流が集中するのを防止するとともに配線パターン基板4に給電する機能を有している。なお、基板押さえ治具15も電流集中対策部14と同様、給電および電流集中対策の機能を有している。
【0024】
両面同時にめっきを行なう場合の本発明におけるめっき装置は、図6に示すように、カソード電極7の両側にアノード電極3を配置し、さらにカソード電極7と両側のアノード電極3との間に、配線パターン疎部10に対応する箇所に絶縁シート6が形成されたメッシュ状のネット5を、カソード電極7に設置された配線パターン基板4を覆うように配置する。これにより、効率よく配線パターン基板4の両面に同時に均一なめっきを行なうことが可能となる。
【0025】
以下、実際に実験を行なった結果を説明する。
【0026】
カソード電極7は配線パターン基板4を装着、固定できるようになっている。また、被めっき物の外周は電流線が集中し、めっき厚が厚くなるためカソード電極7の大きさは配線パターン基板4の端部より10mm大きくしている(図は省略)。配線パターン基板4上には無電解銅めっきで0.3〜1μm厚のシート層を形成した。その後、ライン/スペース50/50μm、25/25μm、20/20μmを含む配線パターンを含む配線ブロックをパターン疎部10とパターン密部11からなるめっきパターンレジスト(レジスト厚み25μm)を形成した。
【0027】
前記めっきレジストを形成した配線パターン基板4をカソード電極7に装着し、めっき槽にセットする。一方、電解めっき時の電流線をコントロールするためのメッシュ状のネット5を配線パターン基板4より3mm離れた位置にセットした。その後、めっき厚10μm狙いで電解銅めっきを行なった。その結果パターン密部11で9〜11μm、パターン疎部10で8〜10μmの厚みであり、以上の条件でめっきするとパターンの疎密にほとんど影響されずにめっきすることが可能であることがわかった。従来のメッシュ状のネット5を用いない方法では、めっき厚10μm狙いに対し、密部で9〜11μm、疎部で25〜30μmであり、メッシュ状のネット5の効果が実証された。
【0028】
実験に際して、メッシュ状のネット5は4メッシュのテフロン(登録商標)製ネットを用いた。メッシュ状のネット5は、耐めっき性を有する絶縁物であれば使用可能であり、メッシュのサイズも各種実験を行なったが電流線の流れに影響ないことを確認した。前記メッシュ状のネット5上に絶縁シート6として、耐めっき性のポリエステル粘着テープ(例えば、(株)スリオンテック製スリオンテープ)を用い、配線パターン疎部10の配線端から5mm以内はみ出す範囲でパターン疎部10を覆うようにテープを貼りつけた。テープのはみ出しが5mmを超えると電流線が遮蔽されるようになり、パターン疎部10のめっき厚が極端に薄くなることが分かった。配線パターン疎部10の配線端から5mm以内はみ出す範囲で常に効果が得られる。また、絶縁シート6として、テープの代わりに感光性レジストを用い、スクリーン印刷用スクリーン印刷製版技術により作製したものを用いても同様の効果が得られた。スクリーン印刷用のメッシュとしては、テフロン(登録商標)、ポリエステル繊維が耐酸性であり良好であった。
【0029】
また、基板表面上へパターンめっきを行なう工程において、カソード電極7に配線パターン基板4を保持する基板固定部と配線パターン疎部10に対応する部分に絶縁シートを形成したメッシュ状のネット5を、前記配線パターン基板4全体を覆うようにカソード電極7に固定し実験を行ったが同様な効果が得られた。
【0030】
以上のように、本発明のパターンめっき方法では、配線パターンのパターン密度が異なっても、パターン密度の状態に応じて、配線パターンの疎部がいかなる位置にあってもその配線パターン疎部上に対応する位置に絶縁シートを形成したメッシュ状のネットを用いることにより、電流線を制御でき、均一な膜厚の配線パターンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかるパターンめっき方法は、パターン密度の疎密にかかわらずめっき膜厚を均一に電解めっきを行なうことができるので、L/S=25/25μm以下のファインパターン形成が可能となり、半導体パッケージ等各種電子機器、通信機器等の配線基板の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法におけるめっき装置を示す図
【図2】本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法における絶縁基板を示す平面図
【図3】本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法におけるメッシュ状のネットを示す平面図
【図4】本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法における絶縁基板とメッシュ状のネットを示す断面図
【図5】(a)本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法のカソード電極の正面図、(b)本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法のカソード電極の断面図
【図6】本発明の実施の形態におけるパターンめっき方法のめっき装置を示す図
【符号の説明】
【0033】
1 めっき液
2 めっき槽
3 アノード電極
4 配線パターン基板
5 メッシュ状のネット
6 絶縁シート
7 カソード電極
8 電流線
9 パターン疎部の電流線
10 パターン疎部
11 パターン密部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板表面にめっきシート層を形成する工程と、前記めっきシート層上にめっきレジストパターンを形成する工程と、前記めっきシート層をカソード電極にして電解めっきを行ない、必要な部分のみにめっき被膜を析出させ配線パターンを形成する工程とを少なくとも備えたパターンめっき方法であって、前記配線パターンを形成する工程において、前記カソード電極のアノード電極と対向する面に前記めっきレジストパターンが形成された配線パターン基板を配置し、前記アノード電極と前記配線パターン基板との間に前記配線パターン疎部に対応する箇所に絶縁シートが形成されたメッシュ状のネットを前記配線パターン基板全体を覆うように装着し、電解めっきを行なうことを特徴とするパターンめっき方法。
【請求項2】
配線パターン基板全体を覆うように配置されたメッシュ状のネットがカソード電極を通して固定された請求項1に記載のパターンめっき方法。
【請求項3】
メッシュ状のネットが耐めっき性を有する絶縁物からなる請求項1に記載のパターンめっき方法。
【請求項4】
メッシュ状のネット上に形成された絶縁シートが粘着剤付の耐めっき性テープからなる請求項1に記載のパターンめっき方法。
【請求項5】
メッシュ状のネット上に形成された絶縁シートが感光性レジスト被膜からなる請求項1に記載のパターンめっき方法。
【請求項6】
メッシュ状のネット上に形成された絶縁シートの大きさが配線パターン疎部の配線端部から5mm以内の範囲ではみ出す状態で形成された請求項1に記載のパターンめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−88522(P2008−88522A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272470(P2006−272470)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】