説明

パターンドメディア及びその製造方法

【課題】高密度磁気記録を行うには、磁性体を充填する細孔を微細にする必要があり、その微細な加工を短時間で行い、製造コストの低減ならびにスループットの向上を図る。
【解決手段】加工速度が早い加工装置により、基板に比較的大きな凹パターンを形成した後、その凹パターン内に薄膜を形成することにより、微細で均一なパターンを低コストかつ高スループットのプロセスによって、形成できる。この基板内に磁性体を埋め込むことで、パターンドメディアが形成される。また、この基板をインプリントモールド原版またはインプリントモールドとして用いることにより、磁気特性に優れた磁性層を有するパターンドメディアの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化された磁性層を有する磁気記録媒体であるパターンドメディアの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気記録媒体は主に、潤滑膜、保護膜、記録層、非磁性層、軟磁性裏打ち層、非磁性層、基板から成っており、全ての膜は連続膜である。更なる高密度記録化のためには、信号とノイズの比(SN比)を大きく確保するために、記録層を形成する磁性粒を微細化する必要があるが、磁性粒の微細化は磁化の熱揺らぎの点から好ましくない。熱揺らぎを低減させる方法として、媒体保磁力を大きくする方法が考えられるが、オーバーライト特性が劣化する傾向にある。そこで、近年、記録層の磁性体の形状および寸法を人工的にそろえて、パターン化したパターンドメディアが考案されている。すなわち、ビットを形成する単一磁性体が隣接する他の磁性体と空間的に完全に離隔されているため、単一磁性体の磁性粒を微細化したとしても、隣接する磁性粒の影響をほとんど受けず、熱揺らぎの影響による記録情報の喪失の問題点を回避することが可能となる。
【0003】
これにより磁性粒をあまり微細化することなく高いSN比を確保でき、高密度化が図れることが知られている。
【0004】
1Tbits/inch2超の高密度磁気記録を行うには、パターンの大きさを20nm径程度以下にする必要があり、更なる高密度化に対応するにはパターンのサイズは10nm程度以下が必要となる。このような微小なサイズのパターンをディスク全面に形成することは難しく、現在では作製時間やコストの面から作製方法は限られる。
【0005】
従来のパターンドメディアの製造方法の一例として、インプリントモールドによるインプリントを利用した方法を、図5および図6を参照して説明する。図5はインプリントモールドの製造方法を示す図である。最初に、図5(a)に示すように、インプリントモールド基板500aの上にレジスト層502aを形成する。次に、図5(b)に示すように、レジスト層502aを加熱しながら、ビットの凹凸パターンを形成したパターン原版550を押し付け(インプリント)、パターン原版のパターンをレジスト層502aに転写し、図5(c)に示すようなパターン化レジスト層502bを形成する。次いで、図5(d)に示すように、パターン化レジスト層502bをマスクとして、インプリントモールド基板500aのエッチングを行い、最後にパターン化レジスト層502bを除去して、インプリントモールド500bを得る。この方法で用いられるパターン原版は、電子ビーム描画装置などによりパターンを直接描画し、エッチングにより凹凸を形成したものである。
【0006】
図6は、前述のインプリントモールド500bを用いたパターンドメディアの製造方法を示す図である。最初に、図6(a)に示すように、従来の磁気記録メディアと同様に、支持体600上に、軟磁性層602、シード層604a、および磁性層606aを積層し、さらに磁性層606aの上にレジスト層610aを形成する。次いで、図6(b)に示すように、レジスト層610aを加熱しながらインプリントモールド500bによるインプリントを行い、インプリントモールド500bのパターンをレジスト層610aに転写し、図6(c)に示すようなパターン化レジスト層610bを形成する。次いで、パターン化レジスト層610bをマスクとして、磁性層606aおよびシード層604aをエッチングし、パターン化磁性層606bおよびパターン化シード層604bを形成し、最後にパターン化レジスト層610bを除去して、図6(d)に示すようなパターンドメディアを得ることができる(特許文献1参照)。
【0007】
また、インプリントモールドを作製する際に、電子ビーム描画装置などを用いて100nm程度の幅を有するトラックパターンを形成し、該トラックパターン内に自己組織化材料を用いて20nm径の微粒子を自己組織化させたパターンを形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
あるいはまた、ナノ粒子を自己組織化によって分散させたシード層を用い、その上に形成される磁気記録層中の磁性粒子の寸法および配列を制御することが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−171489号公報
【特許文献2】特開2005−100499号公報
【特許文献3】特開2002−170227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
1Tbits/inch2超の高密度磁気記録を行うには、磁性体を充填する細孔を20nm径程度以下にする必要があり、更なる高密度化に対応するには10nm程度以下が必要となる。現状のパターンドメディアにおいて、1つの磁気ビットとなる単一磁区微粒子の径は20nm程度またはそれ以下であり、パターン原版に20nm径のパターンを形成する手段として電子ビーム描画装置を使用している。しかしながら、パターン原版全面に20nm径のパターンを直接描画するためには極めて長い時間(たとえば数日間)が必要であり、製造コストの増大ならびにスループットの低下を招く。また、単一磁区微粒子の寸法は、今後の記録密度向上の要請にともなってさらなる微細化が必要となることが予想される。そのような微細化が進行した場合、描画自体が困難になる。
【0011】
また、磁性層をエッチングしてパターン化する方法、または磁性粒子そのものを自己組織化する方法においては、磁気特性の劣化の恐れがある。すなわち、現在の磁気記録メディア磁性層中の磁性粒子は、配向成膜されたシード層の結晶構造をテンプレートとしてエピタキシャル的に柱状成長させることによって、所望の磁気特性を実現している。したがって、その結晶性を無視したエッチングないし配列を行った場合には、その磁気特性が劣化することになる。
【0012】
したがって、本発明は上記問題点を解決し、微細で均一なパターンを低コストかつ高スループットのプロセスによって、磁気特性に優れた磁性層を有するパターンドメディアの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、パターンメディア上にパターン化された磁性層を形成するための凹パターン、または、それを形成するためのインプリントモールドやその原版上の凹パターンを、大きな凹部を空け、その内側に薄膜を形成することにより、微細な凹パターンとすることによって製造する。
【発明の効果】
【0014】
前述のような構成を採ることによって、微細で均一なパターンの形成を簡便かつ短時間に行うことによって、コスト低減およびスループット向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例にかかるインプリントモールド原版の製造過程である。
【図2】本発明の実施例にかかるインプリントモールドの製造過程である。
【図3】本発明の実施例にかかるパターンドメディアの製造過程である。
【図4】本発明の実施例にかかるパターンドメディアの製造過程である。
【図5】本発明の実施例にかかるインプリントモールドの製造過程である。
【図6】本発明の実施例にかかるパターンドメディアの製造過程である。
【図7】本発明により形成したパターンを有する評価用構造体の例である。
【図8】本発明により形成したパターンを有する評価用構造体の製造過程の例である。
【図9】本発明により形成したパターンを有する評価用構造体の製造過程の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
本実施例のパターンドメディアの製造方法を、図1、2を用いて説明する。本実施例では、まず、インプリントモールド原版を製造し、このインプリントモールド原版を用いてインプリントモールドを製造し、さらにこのインプリントモールドを用いてパターンドメディアを製造する。図1にインプリントモールド原版の製造方法を示し、図2にインプリントモールドの製造方法を示す。
(1)インプリントモールド原版の製造
本実施例のパターンドメディアの製造方法に用いるインプリントモールド原版の製造過程を、図1を参照して説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、平坦なインプリントモールド原版基板20aの上に、イオンビームを照射することによりパターン径が、100nmの円形の凹パターン21aを形成する。これを図1(b)に示す。なお、パターンは、円形だけでなく、長方形でもよく、特に形状に制限はない。また、パターン径は、100nmを一例としたが、大きさに制限はない。イオンビーム、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなど、従来の技術でパターン形成できる方法であれば、方法に制限はない。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、凹パターン21aを形成した面上に、均一な膜厚を有する第1薄膜層22aを形成する。薄膜22aは、凹パターン21aの底面及び側壁上に形成される。この薄膜層は、基板上に成膜が可能な任意の材料、例えばSiを用いて形成することができる。薄膜の厚さは、任意であり、例えば、40nmの薄膜を形成することにより、径20nmのパターンを形成することができる。薄膜の厚さは、形成後のパターンの径よりも大きいことが、微小径のパターンを作製する上で望ましい。薄膜層の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0020】
次に、図1(d)に示すように、第1薄膜層22aの上に、凹パターン21bを埋めるように充填膜22bを成膜して、パターン内部を充填する。ここで,充填膜22bは、酸化膜や金属膜や金属酸化物である。
【0021】
次に表面を平坦化研磨して、図1(e)のように平坦化する。このとき、凹パターン外の第1薄膜層22a及び充填膜22bは全て除去され、凹パターン内にのみに残る。充填膜22bは、平坦化の際に凹パターン内の第1薄膜層22aのはがれを防止し、凹パターン内に平坦化の際の滓がたまるのを防止するのに役立つ。
【0022】
次に、図1(f)に示すように、凹パターン内の第1薄膜層22aを残しながら充填膜22bを薬液で除去して、凹パターン21bを有するインプリントモールド原版基板20bを得ることができる。ここで、充填膜22bが、酸化膜ならフッ酸等の酸化膜エッチング液で除去する。充填膜22bが、金属であり、例えば、Al、Cu、Wなら塩酸、硝酸、硫酸などの酸で除去する。Auなら王水などで除去する。充填膜22bが金属である場合、除去のための液体が、薄膜層22a上に形成された薄い自然酸化膜(例えば酸化シリコン膜)を除去しないため、微細な加工が容易になる。
【0023】
このように製造することで、イオンビームのような比較的大きな凹パターン21aを製造するための装置を用いて、微細な凹パターン21bを製造することができる。この凹パターン21bの径は、後述するパターンドメディアの磁性領域の大きさに反映される。
【0024】
なお、前述の充填膜22bの成膜と平坦化研磨せず、図1(c)に示す、凹部となったインプリントモールド原版基板20bを得ることもできる。
【0025】
(2)インプリントモールドの製造
次に、本実施例のパターンドメディアの製造方法に用いるインプリントモールドの製造過程を、図2を参照して説明する。
【0026】
図2(a)に示すように、インプリントモールド基板40の上に、均一な膜厚を有する第2レジスト層42aを設けた積層体を準備する。インプリントモールド基板40は、後述するパターンドメディア形成時に用いる第3レジストに対するインプリントを行うのに充分な剛性を有する任意の材料、たとえばSiや石英などを用いて形成することができる。第2レジスト層42aは、室温または加熱条件下で、本実施例のインプリントモールド原版20bのインプリントによってパターン化を行うのに充分な粘度および流動性を有し、インプリントモールド基板40のエッチング条件に耐えることができる任意の材料を用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂を用いて形成することができる。第2レジスト層42aは、スピンコート、ディップコートなどの当該技術において知られている任意の手段によって形成することができる。第2レジスト層42aの膜厚は、インプリントモールド基板40を所定の深さにエッチングする工程に耐えられることを条件として、任意に選択することができる。
【0027】
次に、図2(b)に示すように,本実施例で製造したインプリントモールド原版20bのインプリントによって第2レジスト層42aをパターン化する。本工程は、室温または加熱条件下、好ましくは20℃〜200℃の範囲内の温度で実施することができる。インプリント時に、インプリントモールド原版20bの凸部において第2レジスト層42aが排除され、図2(c)に示すように、インプリントモールド原版20bの凹パターンに対応する部分にパターン化第2レジスト層42bが形成される。
【0028】
次に、パターン化第2レジスト層42bをマスクとして用いて、インプリントモールド基板40をエッチングする。本工程は、たとえば、湿式エッチング、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなど当該技術において知られている任意の手段を用いて実施することができる。エッチングの深さは、後述するパターンドメディア製造過程において所望されるパターン化第3レジスト層60bの膜厚に依存して決定される。エッチングの終了後、溶媒による洗浄、プラズマアッシングなどによってパターン化第2レジスト層42bを除去して、図2(d)に示すような、パターン状磁気ビットが形成される部分が凹部となったインプリントモールド300を得ることができる。このとき、凸部は、インプリントモールド原版20bの凹パターンの径が反映されている。
【0029】
(3)パターンドメディアの製造
本実施例で製造したインプリントモールド300を用いて、パターンドメディアを製造する。具体的には、メディア基板上にレジスト膜を形成する。そして、レジスト膜に本実施例のインプリントモールド300のインプリントによって、レジスト膜をパターン化する。このときのパターンは、インプリントモールドは凸部が小さく凹部が大きいので、パターンの凹部は小さく凸部は大きくなる。このレジスト膜を用いて、メディア基板をエッチングする。出来上がったメディア基板は、小さな凹部を有するものとなる。そして、この凹部に磁性体を埋め込むことにより、微細化されたパターンを有するパターンドメディアが完成する。
【実施例2】
【0030】
パターンドメディアの製造方法における本実施例のインプリントモールドを用いたパターンドメディアの製造過程を、図3を参照して説明する。
【0031】
(1)インプリントモールドの製造
実施例のインプリントモールド原版と同様に、インプリントモールドを製造する。実施例1のインプリントモールド原版と、本実施例のインプリントモールドとは、同一のものであるが、インプリントモールド製造に用いるか、直接パターンドメディアの製造に用いるかで、名称が異なっている。
【0032】
(2)パターンドメディアの製造
まず、図3(a)に示すように、メディア基板50の上に、シード層56aを全面に形成し、その上に均一な膜厚を有する第3レジスト層60aを形成する。メディア基板50は、非磁性基板52のみでもよく、あるいは非磁性基板52の上に必要に応じて非磁性下地層、軟磁性層などを設けた積層基板でもよい。図3においては、メディア基板50が、非磁性基板52と軟磁性層54との積層体である一例を示した。
【0033】
非磁性基板52としては、当該技術において知られている、表面が平滑である様々な基板を用いることができる。例えば、磁気記録媒体用に用いられる、NiPメッキを施したAl合金または強化ガラス、結晶化ガラス等を、非磁性基板52として用いることができる。
【0034】
軟磁性層54としては、FeTaC、センダスト(FeSiAl)合金などの結晶性材料;FeTaC、CoFeNi、CoNiPなどの微結晶性材料;またはCoZrNb、 CoTaZrなどのCo合金を含む非晶質材料を用いることができる。軟磁性層54の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、おおむね10nm以上500nm以下程度であることが、生産性との兼ね合いから望ましい。
【0035】
非磁性基板52と軟磁性層54との間または軟磁性層54上に任意選択的に設けてもよい非磁性下地層(図示せず)は、Ti、またはTiCr合金のようなCrを含む非磁性材料を用いて形成することができる。
【0036】
シード層56aは、NiFeAl、NiFeSi、NiFeNb、NiFeB、NiFeNbB、NiFeMo、NiFeCrなどのようなパーマロイ系材料;CoNiFe、CoNiFeSi、CoNiFeB、CoNiFeNbなどのようなパーマロイ系材料にCoをさらに添加した材料;Co;あるいはCoB,CoSi,CoNi,CoFeなどのCo基合金を用いて形成することができる。シード層56aは、磁性層58の結晶構造を制御するのに充分な膜厚を有することが望ましく、通常の場合、3nm以上50nm以下の膜厚を有することが望ましい。
【0037】
非磁性基板52の上に形成される、シード層56a、非磁性下地層および軟磁性層54の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0038】
第3レジスト層60aは、室温または加熱条件下で、本実施例のインプリントモールドのインプリントによってパターン化を行うのに充分な粘度および流動性を有し、シード層56aのエッチング条件に耐えることができる任意の材料を用いることができ、好ましくは、加熱条件下で行なう熱インプリントにおいては熱可塑性樹脂、室温下でのUVインプリント方式を用いる場合は光硬化性樹脂を用いて形成することができる。第3レジスト層60aは、スピンコート、ディップコートなどの当該技術において知られている任意の手段によって形成することができる。第3レジスト層60aの膜厚は、シード層56aのエッチング工程に耐えられることを条件として、任意に選択することができる。
【0039】
次に、図3(b)に示すように本実施例で製造したインプリントモールド300のインプリントによって、第3レジスト層60aをパターン化する。本工程は、室温または加熱条件下、好ましくは20℃〜200℃の範囲内の温度で実施することができる。インプリント時に、インプリントモールド300の凹部において第3レジスト層60bが残存し、凸部で第3レジスト層が排除され、図3(c)に示すように、パターン化第3レジスト層60bが形成される。
【0040】
次に、パターン化第3レジスト層60bをマスクとして用いて、シード層56aをエッチングする。本工程は、たとえば、湿式エッチング、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなど当該技術において知られている任意の手段を用いて実施することができる。エッチングの終了後、溶媒による洗浄、プラズマアッシングなどによってパターン化第3レジスト層60bを除去して、図3(d)に示すような、パターン状磁気ビットが形成される部分のみにシード層材料が残存しているパターン化シード層56bを得ることができる。
【0041】
図3(e)に示すように、パターン化シード層56bの上に選択的に磁性層58を成膜して、パターンドメディアを得る。
【0042】
磁性層58の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0043】
任意選択的に、磁性層58の上に保護層および/または液体潤滑剤層を設けてもよい。保護層は、下にある磁性層58以下の各構成層を保護するための層であり、たとえば、カーボンを主成分とする薄膜を用いることができる。その他にも、当該技術において磁気記録媒体保護膜用の材料として知られている種々の薄膜材料を使用して、保護層を形成してもよい。保護層は、一般的にスパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法、CVD法などを用いて形成することができる。また、液体潤滑剤層は、記録/読み出し用ヘッドが磁気記録媒体に接触している際の潤滑を付与するための層であり、たとえば、パーフルオロポリエーテル系の液体潤滑剤、または当該技術において知られている種々の液体潤滑剤材料を使用して形成することができる。液体潤滑剤層は、ディップコート法、スピンコート法などの当該技術において知られている任意の塗布方法を用いて形成することができる。
【0044】
本実施例のインプリントモールドは、微小な凹パターンを有している。そのため、パターンドメディア側に形成される第3レジスト層60b及びその上に形成される磁性層58に、凹パターンの大きさが反映され、微小な磁性層パターンを形成することができる。
【実施例3】
【0045】
本実施例のパターンドメディアの製造方法におけるパターンドメディアの製造過程を、図4を参照して説明する。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、平坦面を有するメディア基板50の上に、イオンビームを照射することにより、パターン径が100nmの円形凹パターンを形成する。これを図4(b)に示す。なお、パターンは、円形だけでなく、長方形などでもよく、特に形状に制限はない。また、パターン径は、100nmを一例としたが、大きさに制限はない。イオンビーム、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングなど、従来の技術でパターン形成できる方法であれば、方法に制限はない。
【0047】
次に、図4(c)に示すように、均一な膜厚を有する第1薄膜層22aを準備する。基板上に成膜が可能な任意の材料、例えばSiを用いて形成することができる。薄膜の厚さは、任意であり、例えば、40nmの薄膜を形成することにより、径20nmのパターンを形成することができる。薄膜の厚さは、形成後のパターンの径よりも大きいことが、微小径のパターンを作製する上で望ましい。薄膜層の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0048】
次に、図4(d)に示すように、シード層56aを全面に形成する。
【0049】
メディア基板50は、非磁性基板のみであってもよく、あるいは非磁性基板の上に必要に応じて非磁性下地層、軟磁性層などを設けた積層基板であってもよい。非磁性基板としては、当該技術において知られている、表面が平滑である様々な基板を用いることができる。例えば、磁気記録媒体用に用いられる、NiPメッキを施したAl合金または強化ガラス、結晶化ガラス等を、非磁性基板として用いることができる。軟磁性層としては、FeTaC、センダスト(FeSiAl)合金などの結晶性材料;FeTaC、CoFeNi、CoNiPなどの微結晶性材料;またはCoZrNb、CoTaZrなどのCo合金を含む非晶質材料を用いることができる。軟磁性層54の膜厚は、記録に使用する磁気ヘッドの構造や特性によって最適値が変化するが、おおむね10nm以上500nm以下程度であることが、生産性との兼ね合いから望ましい。
【0050】
任意選択的に設けてもよい非磁性下地層は、Ti、またはTiCr合金のようなCrを含む非磁性材料を用いて形成することができる。
【0051】
シード層56aは、NiFeAl、NiFeSi、NiFeNb、NiFeB、NiFeNbB、NiFeMo、NiFeCrなどのようなパーマロイ系材料;CoNiFe、CoNiFeSi、CoNiFeB、CoNiFeNbなどのようなパーマロイ系材料にCoをさらに添加した材料;Co;あるいはCoB,CoSi,CoNi,CoFeなどのCo基合金を用いて形成することができる。シード層56aは、磁性層58の結晶構造を制御するのに充分な膜厚を有することが望ましく、通常の場合、3nm以上50nm以下の膜厚を有することが望ましい。
【0052】
非磁性基板52の上に形成される、シード層56a、非磁性下地層および軟磁性層54の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0053】
図4(e)に示すように、パターン化シード層56aの上の凹パターン内に選択的に磁性層58を成膜して、パターンドメディアを得る。
【0054】
磁性層58の形成は、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法など当該技術において知られている任意の方法を用いて実施することができる。
【0055】
任意選択的に、磁性層58の上に保護層および/または液体潤滑剤層を設けてもよい。保護層は、下にある磁性層58以下の各構成層を保護するための層であり、たとえば、カーボンを主成分とする薄膜を用いることができる。その他にも、当該技術において磁気記録媒体保護膜用の材料として知られている種々の薄膜材料を使用して、保護層を形成してもよい。保護層は、一般的にスパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法、CVD法などを用いて形成することができる。また、液体潤滑剤層は、記録/読み出し用ヘッドが磁気記録媒体に接触している際の潤滑を付与するための層であり、たとえば、パーフルオロポリエーテル系の液体潤滑剤、または当該技術において知られている種々の液体潤滑剤材料を使用して形成することができる。液体潤滑剤層は、ディップコート法、スピンコート法などの当該技術において知られている任意の塗布方法を用いて形成することができる。
【0056】
以上に説明した本発明のパターンドメディアの製造方法において、パターンを幅100nm程度に形成し、その上に薄膜化することにより直径20nm以下のパターンの形成を可能にしている。また、トラックパターン原版のインプリントによって、複数のインプリントモールド原版を作成することが可能であり、かつ1つのインプリントモールド原版のインプリントによって、複数のインプリントモールドを作成することが可能である。これらの点から、パターンドメディア1枚当たりの直接描画(電子ビーム描画装置を用いる)のコストを低減し、かつ製造工程の並列化によってスループットを向上させることが可能となる。
【0057】
また、本発明のパターンドメディアの製造方法においては、磁性のエッチングではなく、基板をエッチングすることによって所望の精細度のパターンを形成しており、エッチングによって磁性層材料が磁気特性に悪影響を及ぼすようなダメージを受けることがない。したがって、所望の精細度のパターンおよび優れた磁気特性を有する磁性層を提供することができ、高密度記録に対応可能なパターンドメディアを得ることができる。
【実施例4】
【0058】
本実施例では、図7に示す洗浄評価用構造体700について説明する。この構造体700は、基板2上に溝53を形成し、溝53を含む基板2上に透明な膜15を設けたものである。洗浄評価用構造体700の製造方法を述べる。
【0059】
まず、図8(a)に示すように,シリコンの基板2の表面を、ドライエッチング又はエレクトロンビームにより、0.05〜3μmの深さでエッチングして、溝51を形成した。次に、シリコン2aを成膜する。これを図8(b)に示す。なお、ここに示す寸法は一例に過ぎず、シリコン2aに形成された溝51の深さが、作製された構造体700における空洞部53の開口(洗浄液等の浸入口)幅の一辺となる。次に、酸化膜3を充填する。これを図8(c)に示す。次いで、酸化膜3の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により削り取ることにより平坦化させて溝の外部のシリコンの基板2を露出させた。これを図8(d)に示す。これにより、溝51内部を残して、酸化膜3はすべて除去された。
【0060】
最後に、図8(e)に示すように,シリコンの基板2及び溝51内部の酸化膜3を覆うように、Si3N4又はTiN又はSiN等の窒化膜やアモルファスSiなどの透明な膜15を、膜厚が0.05〜0.5μmになるように成膜し、酸化膜3で充填された溝51の両端のうち一方が開口するように、切開した。次に、この構造体700の酸化膜3を、図8(f)に示すように、フッ酸やフッ化アンモニウム等のエッチング液で除去することにより、酸化膜3が充填されていない評価用空洞部53を備える構造体700を得ることができた。
【0061】
空洞部は、基板と透明膜とによって囲われている。この空洞部の深さ方向の全域にわたって、該空洞部を形成する側周壁の一部が、透明膜により形成されていることが望ましい。このようにすれば、空洞部内部を全体にわたって容易に観察することができる。
【0062】
なお、空洞部は、空洞のままでも良く、エッチングなどの表面処理の結果除去される材料をあらかじめ充填しておいてもよい。表面処理の結果除去される材料としては、酸化物や金属などが挙げられる。
【0063】
空洞部が空洞のままであれば、外部から透明膜を介してこの空洞部内を観察することにより、異物・汚染物の付着状況や、洗浄液等の浸入、乾燥による洗浄液・リンス液の除去などの状態を、容易かつ正確に把握することができる。また、空洞部が除去対象材料(酸化物など)によりあらかじめ充填されていれば、外部から透明膜を介してこの空洞部内に残存している除去対象物の量を観察することにより、除去処理の進行度を容易かつ正確に把握することができる。
【0064】
透明膜は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡により膜の下の空洞部(充填されている場合を含む)を観察することができるもの(すなわち、光透過性又は電子透過性のものであって、好ましくは透過率5%以上)であれば特に限定されるものではないが、形成の容易さなどから、Si3N4又はTiN又はSiNやアモルファスSi等の透明な窒化物を含むこと望ましい。
【実施例5】
【0065】
本実施例では、図7に示す洗浄評価用構造体700について説明する。この構造体700は、基板2上に溝53を形成し、溝53を含む基板2上に透明な膜15を設けたものである。洗浄評価用構造体700の製造方法を述べる。
【0066】
まず、図9(a)に示すように,シリコンの基板2の表面を、ドライエッチング又はエレクトロンビームにより、0.05〜3μmの深さでエッチングして、溝51を形成した。次に、基板上の溝の内外にシリコン2aを成膜する。これを図9(b)に示す。なお、ここに示す寸法は一例に過ぎず、シリコンの基板2に形成された溝51の深さが、作製された構造体700における空洞部53の開口(洗浄液等の浸入口)幅の一辺となる。次に、溝内外のシリコン2a上に、密着層4を成膜する。次に、その上に金属膜5を充填する。これを図9(c)に示す。次いで、金属膜3の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により削り取り、溝外部においては密着層4及びシリコン2aも削り取ることにより平坦化させて、溝の外部のシリコンの基板2を露出させた。これを図9(d)に示す。これにより、溝51内部を残して、金属膜5はすべて除去された。
【0067】
最後に、図9(e)に示すように,シリコン2及び溝51内部の金属膜5を覆うように、Si3N4又はTiN又はSiN等の窒化膜やアモルファスSiなどの透明な膜15を、膜厚が0.05〜0.5μmになるように成膜し、金属膜5で充填された溝51の両端のうち一方が開口するように、切開した。次に、この構造体700の金属膜5を、図8(f)に示すように、塩酸、硫酸、硝酸等のエッチング液で除去することにより、金属膜5が充填されていない評価用空洞部53を備える構造体700を得ることができた。
【符号の説明】
【0068】
20a インプリントモールド原版基板
20b インプリントモールド原版
22a 薄膜層
22b 充填膜
40 インプリントモールド基板
42a 第2レジスト層
50 メディア基板
52 非磁性基板
54 軟磁性層
56a シード層
56b パターン化シード層
60a 第3レジスト層
58 磁性層
60b パターン化第3レジスト層
300 インプリントモールド
500a インプリントモールド基板
500b インプリントモールド
502a レジスト層
502b パターン化レジスト層
550 パターン原版
600 支持体
602 軟磁性層
604a シード層
604b パターン化シード層
606a 磁性層
606b パターン化磁性層
610a レジスト層
610b パターン化レジスト層
700 構造体
2 シリコン
3 酸化膜
4 密着層
5 金属膜
15 透明膜
51 溝
53 空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層がパターン化されて埋め込まれたパターンメディアの製造方法において、
インプリントモールド原版を製造する工程と、前記インプリントモールド原版を用いてインプリントモールドを製造する工程と、前記インプリントモールドを用いてパターンドメディアを製造する工程とを含み、
前記インプリントモールド原版を製造する工程では、
基板に凹パターンを形成する工程と、
前記凹パターン内に、薄膜を形成する工程とを含むことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項2】
磁性層がパターン化されて埋め込まれたパターンメディアの製造方法において、
インプリントモールドを製造する工程と、前記インプリントモールドを用いてパターンドメディアを製造する工程とを含み、
前記インプリントモールドを製造する工程では、
基板に凹パターンを形成する工程と、
前記凹パターン内に、薄膜を形成する工程とを含み、
前記パターンドメディアを製造する工程では、
メディア基板上に、薄膜を形成する工程と、
前記メディア基板上の薄膜に、前記インプリントモールドを押し付け、前記凹パターンに対応する位置に凸部を形成するとともに、他の部分に凹部を形成する工程と、
前記凸部の位置に、磁性層を形成する工程とを含む
ことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記インプリントモールド原版または前記インプリントモールドに凹パターンに形成する薄膜の厚さは、当該凹パターン形成後の凹パターンの径よりも大きいことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記薄膜は、前記凹パターン内及び外に形成されるとともに、
前記凹パターン内及び外の薄膜上に、充填膜を形成する工程と、
前記凹パターンの外に形成された薄膜及び充填膜を、研磨により除去する工程と、
前記研磨除去する工程後に、前記凹パターン内の前記充填膜を、液体により除去する工程と、
を含むことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記薄膜は、シリコン膜であり、
前記充填膜は、金属膜であり、
前記充填膜の除去に用いる液体は、前記金属膜用の除去液であることを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項6】
磁性層がパターン化されて埋め込まれたパターンメディアの製造方法において、
基板上に複数の凹パターンを形成する工程と、
前記凹パターン内の底面及び側壁に、非磁性膜を形成する工程と、
前記凹パターン内の前記非磁性膜上に、磁性層を形成する工程と、
を含むパターンドメディアの製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記非磁性膜の厚さは、前記磁性層の面方向の大きさよりも大きいことを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記凹パターンの形成は、イオンビーム、スパッタエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングのいずれかで行うことを特徴とすることを特徴とするパターンドメディアの製造方法。
【請求項9】
磁性層がパターン化されて埋め込まれたパターンメディアの製造に用いるインプリントモールドまたはインプリントモールド原版の製造方法において、
基板に凹パターンを形成する工程と、
前記凹パターン内に、薄膜を形成する工程とを含むことを特徴とするインプリントモールドまたはインプリントモールド原版の製造方法。
【請求項10】
磁性層がパターン化されて埋め込まれたパターンメディアにおいて、
複数の凹パターンが形成された基板と、
当該凹パターン内の底面及び側壁に形成された非磁性膜と、
当該非磁性膜上に形成された磁性層と、
を備えたパターンドメディア。
【請求項11】
請求項10において、
前記非磁性膜の厚さは、前記磁性層の面方向の大きさよりも大きいことを特徴とするパターンドメディア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−58296(P2013−58296A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280710(P2011−280710)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】