説明

パターンドメディア用検査装置及び検査方法

【課題】 特に、簡単な構成にて、パターンドメディアの量産テストが可能なパターンドメディア用検査装置及び検査方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 パターンドメディアには、所定方向に磁化された多数の磁性体8,9が並べられている。前記パターンドメディアのメディア表面に間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置が設けられる。前記検査装置には、外部磁界により電気特性が変化する磁気素子を備えた複数のセンサ部11が設けられている。前記センサ部11は、前記対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディアの内周側から外周側にわたって配列されるように支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターンドメディアからの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置(HDD)の面記録密度は年々上昇し続けており、従来のように、磁性粒子をメディア表面全体に敷き詰め、一定領域中の複数の磁性粒子に記録を行う方式では、熱揺らぎ(一度記録した情報が熱で失われる現象)の問題が発生した。
【0003】
このような問題を解消すべく、人工的に規則正しくナノサイズの磁性体を並べたパターンドメディア(Patterned Media)が開発されている。各磁性体は、予め、所定方向に磁化されている。
【特許文献1】特開2005−190624号公報
【特許文献2】特開2008−234774号公報
【特許文献3】特開平11−120509号公報
【特許文献4】特開2006−323992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、例えば、MFM像にて、各磁性体の磁化状態を観察していた(例えば特許文献1を参照されたい)。
【0005】
しかしながら、磁気力顕微鏡(MFM)等を用いた方法では、パターンドメディアの量産テストを行うのは難しく、また検査費用も高くなる。
【0006】
このように従来では、パターンドメディアの量産テストが可能な検査装置及び検査方法が無かった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、簡単な構成にて、パターンドメディアの量産テストが可能なパターンドメディア用検査装置及び検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面に間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置において、
外部磁界により電気特性が変化する磁気素子を備えた複数のセンサ部が設けられており、
前記センサ部は、前記対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディアの内周側から外周側にわたって配列されるように支持されていることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成を備えることで、例えばパターンドメディアを回転させる操作を行うだけで、メディア表面に配列された各磁性体の磁化状態を適切且つ簡単に検査でき、パターンドメディアの量産テストを効率よく行うことが出来る。
【0010】
本発明では、前記センサ部は、前記パターンドメディアの略半径方向に沿って配列されていることが好ましい。
【0011】
また本発明では、複数の前記センサ部から成るセンサ列が複数列、周方向あるいはメディア表面垂直方向にずらして設けられるとともに、
異なる前記センサ列に設けられた夫々の前記センサ部の少なくとも一部は、前記周方向、あるいは前記メディア表面垂直方向にて一致しないように、前記パターンドメディアの略半径方向にずらして配置されていることが好ましい。
これにより、より確実に、各磁性体の磁化状態を検査できる。
【0012】
また本発明では、各センサ部は、前記磁性体に対して一対一で対向していることが好ましい。これにより、各センサ部の出力が各磁性体の磁化状態と一対一で対応するので、前記磁化状態を簡単に検査できる。
【0013】
また本発明では、前記磁気素子はTMR素子であることが好ましい。これにより、特に、センサ部と磁性体とを一対一で対応させやすい。
【0014】
または本発明は、所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面に間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置において、
外部磁界により電気特性が変化する磁気素子を備えた複数のセンサ部が設けられており、
前記センサ部は、前記磁性体が周方向に向けて所定のパターン配置の繰り返しであるときと同じ前記パターン配置に並べられていることを特徴とするものである。
【0015】
これにより、例えばパターンドメディアを回転させる操作を行うだけで、メディア表面に配列された各磁性体の磁化状態を適切且つ簡単に検査でき、パターンドメディアの量産テストを効率よく行うことが出来る。
【0016】
また本発明では、各センサ部は共通の基板に支持されており、前記基板の周囲の少なくとも一部に、信号処理回路が設けられていることが好ましい。信号処理回路は各センサ部と接続されており、信号処理回路にて、各センサ部の磁気素子の電気特性変化に基づき、各磁性体の磁化状態の検知信号を生成することができる。
【0017】
また本発明は、所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面にパターンドメディア用検査装置を間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出する検査方法において、
前記パターンドメディア用検査装置は、外部磁界に対して電気特性が変化する磁気素子を備える複数のセンサ部が、前記対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディアの内周側から外周側にわたって配列されるように支持されており、
前記パターンドメディア用検査装置及び前記パターンドメディアのうち、どちらか一方を回転させて、各センサ部を構成する前記磁気素子の電気特性変化に基づき、各磁性体の磁化状態を検査することを特徴とするものである。
【0018】
本発明によれば、例えば、パターンドメディアを回転させる操作を行うだけで、メディア表面に配列された各磁性体の磁化状態を適切且つ簡単に検査することができ、パターンドメディアの量産テストを効率よく行うことが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパターンドメディア用検査装置を用いることで、例えばパターンドメディアを回転させる操作を行うだけで、メディア表面に配列された各磁性体の磁化状態を適切且つ簡単に検査でき、パターンドメディアの量産テストを効率よく行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1(a)は、パターンドメディアの模式図、図1(b)は本実施形態のパターンドメディア用検査装置の模式図、図2は、パターンドメディア用検査装置の部分平面図、図3は、パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図、図4は、図3と異なる構成の、パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図、である。
【0021】
図1(a)に示すようにディスク状のパターンドメディア1には規則的に並べられた(図1(a)では一列のみ表示)多数の磁性体8,9が設けられている。各磁性体8,9は、例えばメディア表面1aに埋め込まれた単磁区構造のナノ粒子である。図1(a)に示す各磁性体8,9は、メディア表面1aに現れる平面形態を示しており、例えば円形状であるが形状は特に限定されるものでない。各磁性体8,9の直径は数十nmである。また各磁性体8,9間の間隔は数百nmである。図1(a)では、磁性体8と磁性体9とでは磁化方向が異なっている。例えば磁性体8,9はメディア表面垂直方向に向いており、一方が上方向、他方が下方向である。図1(a)やその他の図面でも磁性体8と磁性体9とが交互に並べられているが、並び方はパターンドメディア1の製造時に決定される事項であり、当然、並び方が限定されているわけでない。
【0022】
本実施形態のパターンドメディア用検査装置5は、前記磁性体8,9の磁化状態が決められた磁化状態と一致しているか否かを検査するためのものである。
【0023】
図1(b)に示すパターンドメディア用検査装置5は、ディスク状の基板6(例えばシリコン基板)に形成された複数のセンサ部11(図2参照)と、信号処理回路7とを有して構成される。例えば前記信号処理回路7は基板6の外周に形成される。
【0024】
図2は、前記信号処理回路7を除いた基板6の表面6aを示す。図2に示すように表面6aには、一列にセンサ部11が配列されている。図2に示す表面6aの中心O1は、パターンドメディア1と、パターンドメディア用検査装置5とを対向配置した時、図1(a)のパターンドメディア1の中心O2と高さ方向にて一致しており、図2に示す各センサ部11は、前記パターンドメディア1の内周側から外周側にわたる半径方向に沿って配列されている。
【0025】
検査のとき、図1(a)に示すパターンドメディア1の中心O2と、図1(b)、図2に示すパターンドメディア用検査装置5の中心O1とを高さ方向にて一致させ、前記パターンドメディア1とパターンドメディア用検査装置5との間に所定の間隔を空けた状態で対向配置する。そして、パターンドメディア1あるいは、パターンドメディア用検査装置5のどちらか一方を回転させる。
【0026】
図3は、検査時における各センサ部11と、磁性体8,9との平面視での位置関係を示している。
【0027】
図3に示す矢印Aは周方向(回転方向)を示す。よって矢印Aは円を描くように実際は曲線となるが、ここでは便宜上、直線で示している。
【0028】
図3に示すように、パターンドメディア1の半径方向に沿って一列に配列された各センサ部11は、磁性体8,9と一対一で対向している。図3に示す実施形態では、メディア表面1aに規則的に並べられた多数の磁性体8,9を半径方向に見てみると、複数の磁性体8,9が前記半径方向に所定の間隔を空けて配列されている。そして、図3に示すように、半径方向に配列された磁性体8、9の磁性体列10が、多数列、周方向(回転方向)(矢印A方向)に間隔を空けて並べられている。さらに、これら異なる磁性体列10に形成された磁性体8,9同士は、周方向(回転方向)(矢印A方向)に一致する(対向する)位置関係となっている。
【0029】
各センサ部11には外部磁界に対して電気特性が変化する磁気素子が設けられている。図3に示すように、各センサ部11と各磁性体8,9とが高さ方向にて対向する位置関係になると、各磁性体8,9から各センサ部11に作用する外部磁界により、各センサ部11の磁気素子の電気特性が変化する。各センサ部11が磁化方向が異なる磁性体8,9に高さ方向にて対向したとき、磁性体8と対向したセンサ部11に作用する外部磁界の方向と、磁性体9と対向したセンサ部11に作用する外部磁界の方向は夫々異なるため、磁性体8と対向配置したセンサ部11の磁気素子の電気特性と、磁性体9と対向配置したセンサ部11の磁気素子の電気特性は、夫々異なった変化を示す。各センサ部11は、図1(b)に示す信号処理回路7に接続されている。そして各センサ部11からの出力が、前記信号処理回路7にて信号処理されて、各磁性体8,9の磁化状態の検知信号が生成される。検知信号は、センサ部11が磁性体8に対向したときと、磁性体9に対向したときとで、例えば正負が異なっている。よって検知信号から、各磁性体8,9の磁化状態を検知することができる。
【0030】
図3の状態から例えばパターンドメディア1が矢印A方向に回転すると、各センサ部11は、図3の一番下側に図示された磁性体列10の各磁性体8,9と対向した状態になる。そして、上記したように、各センサ部11の出力に基づいて、図3の一番下側に図示された各磁性体8,9の磁化状態を検査することができる。図3の形態では、例えばパターンドメディア1を一回転させるだけで、パターンドメディア1に並べられた全ての磁性体8,9の磁化状態を検査することが可能である。
【0031】
図3に示す実施形態では、各センサ部11が、パターンドメディア1の略半径方向に一列に整列した形態であったが、図4に示すように、略半径方向に配列された各センサ部のセンサ列12,13が2列以上、設けられていてもよい。
【0032】
図4では、センサ列12とセンサ列13とが周方向(矢印A方向)にずらして配置されている。センサ列12を構成するセンサ部11は、計6個であるが、センサ列13を構成するセンサ部13は計5個であり、センサ列12を構成するセンサ部11とセンサ列13を構成するセンサ部11は、互いに周方向(矢印A方向)にて一致しないように、半径方向にずらして配置されている。
【0033】
図1(a)に示すメディア表面1aに形成される磁性体8,9が図3のように半径方向且つ周方向に規則正しく配列されているとは限らない。このため、磁性体8,9の配列状態に応じて、図4のように、センサ列12,13を複数列設け、これらセンサ列12,13の少なくとも一部のセンサ部11同士を半径方向にずらして配置することで、メディア表面1aに形成される磁性体8,9が半径方向且つ周方向に規則正しく配列されていなくても、各磁性体8,9の磁化状態をより確実に検査することが可能である。
【0034】
あるいは図4では、パターンドメディア1に並べられた多数の磁性体8,9は、周方向(矢印A方向)に向けて所定のパターン配置40の繰り返しとなっている。
【0035】
そして換言すれば、図4の実施形態は、複数のセンサ部11が、前記パターン配置40と同じパターン配置で並べられた形態となっている。
【0036】
図5,図6に示す他の実施形態は、図4に示すセンサ列12,13をメディア表面垂直方向に立てた状態を示している。図5は、図4の平面視にて、パターンドメディア検査装置5が、半径方向に6個の磁性体8,9が配列された磁性体列と高さ方向にて対向配置した状態、図6は、図5の状態から周方向に移動して、図4の平面視にて、パターンドメディア検査装置5が、半径方向に5個の磁性体8,9が配列された磁性体列と高さ方向にて対向配置した状態である。
【0037】
図5の状態では、下段にあるセンサ列12を構成する各センサ部11にて、パターンドメディア1の磁性体8,9の磁化状態を検査でき、図6の状態では、上段にあるセンサ列12を構成する各センサ部11にて、パターンドメディア1の磁性体8,9の磁化状態を検査できる。図5,図6の形態では、センサ列12とセンサ列13とではメディア表面1aからの高さ方向への距離が異なるので、センサ列12を構成する各センサ部11の出力値と、センサ列13を構成する各センサ部11の出力値とは異なる値になるが、磁性体8,9の磁化状態の検知信号は例えば正負の違いがわかれば足りるため、センサ列12を構成する各センサ部11とセンサ列13を構成する各センサ部11とで出力値が変わっても検査精度への影響は小さい。また、信号処理回路7にて、センサ列12を構成する各センサ部11の出力及び、センサ列13を構成する各センサ部11の出力に対して、各磁性体8,9の検知信号を生成する際の基準値を別々に設定することも出来る。
【0038】
図7にはセンサ部11に設けられる磁気素子20の平面形態が示されている。例えば磁気素子20は、TMR素子(トンネル型磁気抵抗効果素子)である。図8のようにTMR素子から成る磁気素子20は、例えば下から下地層21、反強磁性層22、固定磁性層23、絶縁障壁層24、フリー磁性層25及び保護層26の順に積層された構成である。
【0039】
図8では固定磁性層23は下から第1磁性層27、非磁性中間層28及び第2磁性層29の順に積層された積層フェリ構造である。ただし固定磁性層23の構成は前記積層フェリ構造以外の構成であってもよい。また、フリー磁性層25は単層構造であるが、例えば磁性層の積層構造であってもよい。反強磁性層22は例えばIr−Mn、第1磁性層27、第2磁性層29は例えばCo−Fe、非磁性中間層28は例えばRu、絶縁障壁層24は例えばAl−OやTi−O、フリー磁性層25は例えばNi−Fe、下地層21及び保護層26は例えばTaである。
【0040】
固定磁性層23は所定の方向に磁化固定されている。この実施形態では、第1磁性層27と第2磁性層29とが反平行に磁化固定されている。
【0041】
また、フリー磁性層25は磁化固定されておらず外部磁界に対して磁化変動可能である。
【0042】
磁気素子20が外部磁界を受けると、前記フリー磁性層25の磁化が変動し、電気抵抗が変化する。前記磁気素子20は、磁化方向が異なる磁性体8と磁性体9とに夫々対向したとき、フリー磁性層25の磁化方向が異なる方向へ変動するため磁気素子20の電気抵抗変化も異なる。図8のTMR素子からなる磁気素子20は、固定磁性層23(図8の実施形態では第2磁性層29の磁化方向)と、フリー磁性層25の磁化方向とが同じ方向になると最小抵抗値になり、固定磁性層23(図8の実施形態では第2磁性層29の磁化方向)と、フリー磁性層25の磁化方向とが反対方向になると最大抵抗値になる。よって、磁性体8に対向したときに磁気素子20の抵抗値が最大抵抗値に近づけば、磁性体9に対向したときに磁気素子20の抵抗値が最小抵抗値に近づくように、磁性体8,9に対する磁気素子20の向き(図8でいえば各膜界面の向き及び固定磁性層23の固定磁化方向)を規制する。
【0043】
図9のようにセンサ部11に2個の磁気素子30,31が形成されてもよい。前記磁気素子30,31を用いることで差動出力が可能な回路構成を形成できる。
【0044】
図10の形態では、センサ部11に形成される磁気素子32,33がミアンダ形状で形成されている。これら磁気素子32,33は図7と異なって例えばCIP−GMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)である。このCIP−GMR素子では、素子端部に電極が設けられた構成であり、電気抵抗値を大きくするには例えばミアンダ形状のように素子長さを長く形成することが必要である。
【0045】
一方、TMR素子や、あるいは、図8の絶縁障壁層24を非磁性導電材料で形成したCPP−GMR素子からなる磁気素子20では、素子上下面に電極が配置された構成であり、図7のように平面形状のアスペクト比を小さくしても(図7のように平面形状を円形状で形成しても)高い素子抵抗を備え、また抵抗変化率を非常に大きくできる。
【0046】
よってTMR素子あるいはCPP−GMR素子とした磁気素子20では、素子面積を小さくできナノオーダーでの形成が可能であり、磁気素子20と磁性体8,9とを一対一で対向させやすい。
【0047】
上記の実施形態では、いずれもセンサ部11と磁性体8,9とが一対一で対向する形態であった。
【0048】
これに対し図11の実施形態では、センサ部11を構成する磁気素子34に2つの磁性体が対向している。例えば図11の実施形態における各センサ部11は、図2のように、パターンドメディア1の半径方向に配列しているが、図11では、このうち、一つのセンサ部を示している。
【0049】
図11では、磁気素子34に磁化方向が同じ磁性体9,9が対向している。よって磁気素子34を備えるセンサ部11からは、正か負かどちらかの出力が得られ、しかもその出力は、1個の磁性体9が対向するときよりも大きい値である。よって、センサ部11の出力から、センサ部11が2個の磁性体9,9と対向していると判別できる。磁気素子34に磁化方向が同じ磁性体8,8が対向したときも同様である。磁気素子34に磁化方向が異なる磁性体8,9が対向したとき、抵抗変化が相殺されることで、センサ部11からの出力はほとんど変化しない。よって磁化方向が異なる磁性体8,9と対向していることを判別できるが、この時点では、どちらが磁性体8か磁性体9かの区別まで出来ない。そこで、磁気素子34に対向する磁性体8,9が1個ずつ周方向(矢印A方向)へ送られていくように移動させ、次々に2個ずつ磁性体の磁化状態を検査していき、各検査結果から算出すれば、全ての磁性体8,9の磁化状態をほぼ確実に検査することが出来る。
【0050】
なお、本実施形態では磁気素子としてホール素子を選択することも出来る。
本実施形態のパターンドメディア用検査装置5は、複数のセンサ部11が、前記検査装置5とパターンドメディア1とを対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディア1の内周側から外周側にわたって配列されるように支持されており、好ましくは図2のように各センサ部11がパターンドメディア1の半径方向に配列された構成である。あるいは、図4で説明したように、複数のセンサ部11が、磁性体8,9が周方向に向けて所定のパターン配置40の繰り返しであるときと同じ前記パターン配置40に並べられた構成である。そして、パターンドメディア用検査装置5あるいはパターンドメディア1の一方を回転させることで(パターンドメディア1を回転させ、パターンドメディア用検査装置5を固定支持しておくほうが機構的に簡単にできる)、各磁性体8,9の磁化状態を簡単且つ適切に検査することが可能である。したがって本実施形態のパターンドメディア用検査装置5を用いることで、パターンドメディア1に対する大量テストを効率よく行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は、パターンドメディアの模式図、(b)は本実施形態のパターンドメディア用検査装置の模式図、
【図2】パターンドメディア用検査装置の部分平面図、
【図3】パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図(部分平面図)、
【図4】図3と異なる構成の、パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図(部分平面図)、
【図5】図3、図4とは異なる形態の、パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図(部分断面図)、
【図6】図3、図4とは異なる形態の、パターンドメディア用検査装置に搭載されるセンサ部の配置とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図(部分断面図)、
【図7】本実施形態のセンサ部の平面図、
【図8】磁気素子の部分拡大断面図、
【図9】図7と異なるセンサ部の平面図、
【図10】図7及び図9と異なるセンサ部の平面図、
【図11】他の実施形態を示し、磁気素子とパターンドメディアの磁性体との関係を示す模式図(部分拡大平面図)、
【符号の説明】
【0052】
1 パターンドメディア
5 パターンドメディア用検査装置
6 基板
7 信号処理回路
8、9 磁性体
11 センサ部
12、13 センサ列
20、30、31、32、33、34 磁気素子
22 反強磁性層
23 固定磁性層
24 絶縁障壁層
25 フリー磁性層
40 パターン配置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面に間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置において、
外部磁界により電気特性が変化する磁気素子を備えた複数のセンサ部が設けられており、
前記センサ部は、前記対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディアの内周側から外周側にわたって配列されるように支持されていることを特徴とするパターンドメディア用検査装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記パターンドメディアの略半径方向に沿って配列されている請求項1記載のパターンドメディア用検査装置。
【請求項3】
複数の前記センサ部から成るセンサ列が複数列、周方向あるいはメディア表面垂直方向にずらして設けられるとともに、
異なる前記センサ列に設けられた夫々の前記センサ部の少なくとも一部は、前記周方向、あるいは前記メディア表面垂直方向にて一致しないように、前記パターンドメディアの略半径方向にずらして配置されている請求項1又は2に記載のパターンドメディア用検査装置。
【請求項4】
各センサ部は、前記磁性体に対して一対一で対向している請求項1ないし3のいずれかに記載のパターンドメディア用検査装置。
【請求項5】
前記磁気素子はTMR素子である請求項1ないし4のいずれかに記載のパターンドメディア用検査装置。
【請求項6】
所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面に間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出するためのパターンドメディア用検査装置において、
外部磁界により電気特性が変化する磁気素子を備えた複数のセンサ部が設けられており、
前記センサ部は、前記磁性体が周方向に向けて所定のパターン配置の繰り返しであるときと同じ前記パターン配置に並べられていることを特徴とするパターンドメディア用検査装置。
【請求項7】
各センサ部は共通の基板に支持されており、前記基板の周囲の少なくとも一部に、信号処理回路が設けられている請求項1ないし6のいずれかに記載のパターンドメディア用検査装置。
【請求項8】
所定方向に磁化された多数の磁性体が並べられたパターンドメディアのメディア表面にパターンドメディア用検査装置を間隔を空けて対向配置して、前記メディア表面からの磁界分布を検出する検査方法において、
前記パターンドメディア用検査装置は、外部磁界に対して電気特性が変化する磁気素子を備える複数のセンサ部が、前記対向配置したときの平面視にて、前記パターンドメディアの内周側から外周側にわたって配列されるように支持されており、
前記パターンドメディア用検査装置及び前記パターンドメディアのうち、どちらか一方を回転させて、各センサ部を構成する前記磁気素子の電気特性変化に基づき、各磁性体の磁化状態を検査することを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−134972(P2010−134972A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307034(P2008−307034)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】