説明

パターン加工済みのシリコン上でのテルル化カドミウム水銀の製造

本発明は、パターン加工済みのシリコン上でのテルル化カドミウム水銀(CMT)の製造に関し、特に集積回路を有するシリコン基板上へのCMTの成長に関する。本発明の方法は、最初にMBEによって1つ以上のバッファ層を成長させ、次いでMOVPEによってCMTを成長させることによって、シリコン基板上の選択された成長窓にて成長を行うことを含む。成長窓は、成長窓以外の領域をマスクすることによって定めることができる。成長窓での成長が結晶構造であるのに対し、成長窓の外部での成長は、多結晶であってエッチングで取り除くことができる。本発明は、集積回路上にCMT構造を直接成長させる方法を提供し、ハイブリッド化の必要をなくしている。
【その他】 本願に係る特許出願人の国際段階での記載住所は「イギリス国、ロンドン・エス・ダブリユ・1・イー・6・ピー・デイ、バツキンガム・ゲート・85」ですが、識別番号501352882を付与された国内書面に記載の住所が適正な住所表記であります。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン加工済みのシリコン上でのテルル化カドミウム水銀の製造方法に関し、特にテルル化カドミウム水銀層を集積回路上に直接製造する方法、およびそのように成長させたテルル化カドミウム水銀構造に関する。
【背景技術】
【0002】
テルル化カドミウム水銀Hg1−xCdTeは、検出器、光源、LED、光吸収(negative luminescence)デバイス、などといった赤外線デバイスに使用するための材料としてよく知られている。テルル化カドミウム水銀は、CMTと称される(あるいは、水銀カドミウムテルル(MCT)と称されることもある)が、半導体合金であり、そのバンドギャップを合金の組成、すなわちカドミウムの含有量xを変化させることによって、さまざまに変化させることができる。CMTを短波(SW)、中波(MW)、長波(LW)、および超長波(VLW)の赤外線波長をカバーする赤外線デバイスの範囲において使用することができるよう、バンドギャップを調節することができる。CMTは、多くの赤外線フォーカルプレーンアレイ用途において最適な材料である。少ない漏れ電流および高い担体移動度によって、優れた感度の検出器がもたらされる。CMTは、幅広い範囲の波長をカバーする単一バンドまたはマルチバンドのシステムにとって最適な解答である。なぜならば、適切な組成を選択することによって波長を調節することができるとともに、組成が調節されてなる複数の構造を設計して成長させることができ、したがって単一のデバイスにおいて2つ以上の波長を機能させることができるためである。
【0003】
赤外線デバイスの製造のための一般的原理は、すでに確立されている。結晶基板上へと、CMTのエピタキシャル成長が行われる。次いで、メサエッチング、イオン打ち込み、またはイオンビーム加工によって、デバイスが形成される。次いで、金属コンタクトが形成され、デバイスがシリコン読み出し回路へと接合される。CMTをバルクの結晶として成長させ、そこからイオン打ち込みまたはイオンビーム加工によってデバイスを製作することもあるが、エピタキシャル成長がバルク結晶の成長よりも有利であり得ることに、留意されたい。
【0004】
CMTの製造のために、種々のエピタキシャル成長法が提案されている。有機金属気相成長法(MOVPE)が、幅広い領域にわたって再現性のある均一な成長をもたらす技術として、成功裏に使用されている。米国特許4,650,539号明細書が、MOVPEを使用するCMTの製造を説明している。米国特許第4,566,918号明細書は、この技術の変形であり、CdTeおよびHgTeの薄い層を成長させ、これらの相互拡散によって均一なCMT構造を形成している。米国特許4,950,621号明細書は、CMTを成長させるためのMOVPE技術を説明しており、有機金属化合物の光触媒分解を使用している。
【0005】
CMTを成長させるための他の方法として、分子ビームエピタキシー(MBE)が挙げられる。赤外線デバイスが、MBEプロセスによってテルル化カドミウム亜鉛(Cd1−yZnTe、CZTとしても知られている)の基板上に成長させたCMTから形成されている。例えば、M Zandian、JD Garnett、RE Dewames、M Carmody、JG Pasko、M Farris、CA Cabelli、DE Cooper、G Hildebrandt、J Chow、JM Arias、K Vural、およびDNB Hallの「Mid−wavelength infrared p−on−n Hg1−xCdTe heterostructure detectors:30−120 Kelvin state of the art performance」、J.Electronic Materials 32(7)803(2003年)、あるいはJD Phillips、DD Edwall、およびDL Leeの「Control of very long wavelength infrared HgCdTe detector cut−off wavelength」、J.Electronic Materials 31(7)664(2002年)を参照されたい。
【0006】
赤外線画像化の用途が、長距離の検出および識別のための大領域の2次元検出アレイをますます求めるようになってきている。これらアレイの物理的なサイズが大きくなるにつれて、従来からの基板材料およびCMT成長技術の限界が、明らかになってきている。テルル化カドミウム亜鉛が、CMT成長のための基板として幅広く使用されているが、小さなサイズでしか入手することができず、大きなアレイの製造における有用性が限られている。やはり基板として使用されているテルル化カドミウムも、小さなサイズでしか入手することができない。さらには、CdTeおよびCZTはどちらもきわめて脆く、結晶品質がきわめて良好というわけではない。
【0007】
ガリウムヒ素(GaAs)基板は、比較的大きなサイズで入手可能である。しかしながら、上述のとおり、デバイスは、通常はシリコン読み出し回路へと接合される。動作時、検出器は、熱雑音を低減するため、例えば約80K(他のデバイスは、他の温度で最もうまく機能するかもしれないが)の低温へと冷却されることがしばしばである。このような検出器の動作温度において、シリコン読み出し回路とGaAs基板との間の熱的な不整合によって、赤外線デバイスが回路から剥離する可能性がある。この問題は、基板を薄くすることによって軽減可能であるが、薄化のプロセスはおそらくは複雑であり、歩留まりを下げるとともに製造コストを上昇させる。この熱的不整合の問題は、テルル化カドミウムおよびCZTの基板についても当てはまる。
【0008】
シリコンが基板として提案されている。なぜならば、シリコン基板は、もとより読み出し回路と熱的に一致しているためである。
【0009】
例えば、TJ de Lyon、JE Jensen、MD Gorwitz、CA Cockrum、SM Johnson、およびGM VenzorのJ.Electronic Materials 28、705(1999年)では、シリコン上にCMTを成長させるためにMBE技術が使用されており、CMTの成長に先立ってシリコン上にバッファ層を成長させている。シリコン上へのCMTのMBE成長は、困難な仕事であることがわかっている。第1に、あらゆる基板上において、CMTのMBE成長のためには、成長温度を正確に制御しなければならず、再現性のあるウェハ取り付け技術および精密な基板温度の制御が必要である。第2に、材料欠陥の除去が困難であることがわかっている。それらの欠陥は、中波長の赤外線デバイスについては、その特性に常に深刻な影響を及ぼすわけではない(デバイスによる)が、長波長のデバイスに有害な影響を及ぼす。結果として、MBEによるシリコン上へのCMTの成長は、困難なプロセスであり、中波長の赤外線デバイスおよびアレイのみが、許容範囲として製造されている。
【0010】
実用のデバイスを製造するためのシリコン上へのCMTのMOVPE成長も、やはり困難が多い。J.Electronic Materials 25(8)(1996年)1347頁のK Shigenaka、K Matsushita、L Sugiura、F Nakata、K Hirahara、M Uchikoshi、M Nagashima、およびH Wadaの「Orientation dependence of HgCdTe epitaxial layers grown by MOCVD on silicon substrates」、1353頁のK Maruyama、H Nishino、T Okamoto、S Murakami、T Saito、Y Nishijima、M Uchikoshi、M Nagahima、およびH Wadaの「Growth of(111)HgCdTe on(100)Si by MOVPE using metal organic tellurium absorption and annealing」、または1358頁のH Ebe、T Okamoto、H Nishino、T Saito、Y Nishijima、M Uchikoshi、M Nagashima、およびH Wadaの「Direct growth of CdTe on(100),(211),and(111)Si by metal organic chemical vapour deposition」を参照されたい。
【0011】
より最近では、Defense and Security Symposium 2004(以前のAeroSense)12〜16 April 2004 Gaylord Palms Resort and Convention Center Orlando(Kissimmee),Florida USA,Conference proceedings in pressで公開されたDJ Hall、L Buckle、NT Gordon、J Giess、JE Hails、JW Cairns、RM Lawrence、A Graham、RS Hall、C Maltby、およびT Ashleyの「Long wavelength infrared focal plane arrays fabricated from HgCdTe grown on silicon substrates」、ならびにDJ Hall、L Buckle、NT Gordon、J Giess、JE Hails、JW Cairns、RM Lawrence、A Graham、RS Hall、C Maltby、およびT Ashleyの「High performance long−wavelength HgCdTe infrared detectors grown on silicon substrates」、Applied Physics Letters Volume 85,Issue 11,pp.2113〜2115に、基板上にMBEによってバッファ層を成長させ、その後にMOVPEによってCMTを成長させることで、シリコン基板上にCMTを製造できることが報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この技術によれば、シリコン上へとCMTを成長させることができ、次いでデバイスを形成すべく加工し、読み出し回路へと接合することができる。
【0013】
しかしながら、バンプ接合によるハイブリッド化に先立ち、検出器アレイおよび読み出し集積回路(ROIC)のウェハを、ハイブリッド化に備えた個々の構成部品へと切り分ける必要性が依然として存在する。これは、高価な技術であり、ウェハの切断および接合は、比較的低い歩留まりとなり得る。
【0014】
国際公開第02/084741号パンフレットは、CMT層をシリコンの読み出し回路上に直接成長させてなるモノリシック(monolithic)な赤外線検出デバイスを説明している。この特許出願に記載の方法は、シリコン基板上への成長窓の形成を含んでおり、この成長窓へとテルル化カドミウムのバッファ層を成長させ、次いでMBEによってCMT層を成長させている。しかしながら、これもやはりシリコン上へのCMTのMBE成長に依存しており、付帯する困難を伴っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明によれば、表面に形成された集積回路を有するシリコン基板を持ち込む工程と、分子ビームエピタキシ(MBE)によって少なくとも1つの結晶バッファ層を少なくとも1つの成長窓へと選択的に成長させる工程と、有機金属気相成長法(MOVPE)によって上記バッファ層上に少なくとも1つの結晶CMT層を選択的に成長させる工程と、を含む赤外線デバイスの製造方法が提供される。
【0016】
したがって、本発明の方法は、例えば読み出し回路などの集積回路を有する基板上にCMTを直接成長させてなる赤外線デバイスの製造方法を提供する。これにより、基板層上のCMTを回路層へとハイブリッド化させる必要がなくなる。したがって、この方法は、ハイブリッド化工程の例えば切断および接合といった低歩留まりの技術を回避し、赤外線デバイスのウェハ状態での加工を可能にする。
【0017】
結晶CMT層の成長は、まずは分子ビームエピタキシ(MBE)によってバッファ層を基板上の少なくとも1つの成長窓へと成長させることによって行われる。次いで、CMT層の成長が、有機金属気相成長法によって行われる。
【0018】
このように、本発明は、良好な特性を有し幅広い範囲の波長のデバイスにおいて使用することができるCMTを製造するために、MBEおよびMOVPEの両者を組み合わせている。本発明の方法は、2つの別個の処理工程を必要とし、この方法に複雑さを加えることになるが、2つの技術を混合することによって、優秀なデバイスを生み出す信頼できかつ制御可能なプロセスをもたらすことができる。
【0019】
本明細書において使用されるとき、テルル化カドミウム水銀という用語は、Hg1−xCdTeを意味し、ここで組成xは、1から0(1および0を含む)の間にあるように制御される。xが1であるとき、この物質は実際にはテルル化カドミウムであり、xが0であるとき、この材料は実際にはテルル化水銀であるが、どちらも本発明の目的においては、用語「テルル化カドミウム水銀」または「CMT」に含まれる。
【0020】
シリコン上へのCMTの単結晶成長を達成するためには、基板の方位が重要であり、好ましくは基板の方位は、<110>または<111>に対して数度、すなわち2°〜10°の間でミスアライメントした(001)である。したがって、好ましくは、表面に形成された集積回路を有する基板を持ち込む工程は、<110>または<111>(一般的には、<111>が最も好ましい)に対して、好ましくは2°〜10°の間、または4°〜8°の間でミスアライメントした(001)方位を有する基板を持ち込むことを含む。
【0021】
本発明の成長方法が、MBEおよびその後のMOVPEの両者によって、基板の方位に従った材料の成長をもたらす点に留意されたい。したがって、MBEバッファ層がシリコン基板の(001)方位に従い、基板のミスアライメントが単結晶の成長を保証する。次いで、MOVPE層も(001)方位に従い、したがってCMT層は(001)である。したがって本発明の方法は、少なくとも1つのバッファ層をMBEによって成長させ、少なくとも1つのCMT層をMOVPEによって成長させる工程を含んでおり、バッファ層およびCMT層のそれぞれが、基板の方位に従う結晶方位を有する。
【0022】
また、本発明のようにMBEおよびMOVPEの両者を使用するのではなく、すべてがMBEのプロセスである国際公開第02/084741号パンフレットに開示の技術が、わずか1°のシリコン基板の方位ずれを教示している点に、留意されたい。本発明者らは、この程度の方位ずれでは、本発明にとって十分でない可能性に気が付いた。さらに重要なことには、国際公開第02/084741号パンフレットに開示の方法は、本発明者らが重要なパラメータであることを見出したシリコンの方位ずれの方向について、明確な教示をしていない。この方法は、本発明のように基板の方位に従ったバッファ層およびCMT層ではなく、CdTeの(111)成長を教示している(14頁)ように見受けられ、したがってCMT層も(111)の方位を有しているようである。
【0023】
したがって、本発明の方法は、(001)から<111>に対して2°〜10°の間でミスアライメントしているシリコン基板へと集積回路を製造することを含む。集積回路形成用の通常の基板の方位が、ミスアライメントのない(001)であることに留意されたい。本発明の以前においては、このような程度のミスアライメントを有するシリコンへと集積回路を形成できるか否かが、明らかでなかった。しかしながら、本発明者らは、この様相でミスアライメントしたシリコンを使用して、比較的高い歩留まりが達成できることを見出した。集積回路の製造には、製造される特定の回路に合わせて当業者にとって公知の標準的な技術が使用される。当業者であれば理解できるとおり、集積回路という用語は、基板上に形成される単一の電気回路、ならびにモノリシックなウェハ上の複数の回路(これらの回路が接続されていても、接続されていなくてもよい)の両者を包含する。例えば、複数のピクセル検出器のための読み出し回路(各ピクセルが関連の回路を、他のピクセルの回路には接続せずに有している)は、本明細書の目的において集積回路と考えられるべきである。
【0024】
集積回路は、製造しようとする赤外線デバイスの各素子のための成長窓として所定の領域を有しており、例えば検出器または光源の各ピクセルが、成長窓および関連回路を有することができる。したがって、基板は、複数の成長窓を含むことができる。成長窓は、単純なシリコンの自由領域であってよく、あるいは基板内の異なるレベルにある領域によって定められてもよい。当業者であれば理解できるとおり、集積回路の形成後には、回路アーキテクチャによる表面形状のばらつきが存在する。したがって、成長窓は、回路アーキテクチャに対するピット、すなわち周囲の回路アーキテクチャよりも低い領域を備えることができる。ピットの深さは、単純にピット脇の回路アーキテクチャの高さによって定めることができる。しかしながら、成長窓内または成長窓外のシリコンのエッチングによって、回路アーキテクチャに対するピットの相対的深さを変えることが可能である。ピットの深さを実質的にバッファ層を含むCMT層の高さであるように構成し、完成したデバイスに全体として平坦な構成をもたらすことが可能である。
【0025】
後述するように、MBEバッファ層の成長およびMOVPEによるCMTの成長が、成長窓への結晶の成長をもたらすことができ、成長窓の外、すなわち回路上への多結晶の成長をもたらすことができる。多結晶の材料を、後にエッチングによって取り除くことができる。成長の際に、多結晶の材料が成長窓を覆うように進入する可能性があり、したがってCMTの結晶領域が、成長窓よりも小さくなる。この進入は、成長窓が回路アーキテクチャに比べてピットとして形成されている場合に、回路が成長領域よりも高く、MBEの際に成長窓の上方の陰を生じ得る(MBEは、視線上にて機能する)がために、生じる可能性がある。また、MOVPEの際に、回路がガス流中へとより突き出しており、これが回路上への成長を促進し、多結晶材料が結晶よりも大きい成長速度を有する可能性がある。仕上がったデバイスを絶縁するために、保護された回路の上から多結晶材料を取り除く必要があり、さらには集積回路および結晶のアイランド(island)の側方間に形成された多結晶材料を取り除く必要がある。したがって、多結晶材料が取り除かれるとき、結晶CMTの領域は、窓よりも小さい。このため、ダイオード/検出領域が本来可能であるよりも小さくなり、すなわち占有係数が、回路上においてダイオード/検出領域のために利用可能なすべての領域が検出器材料で覆われた場合に比べ、小さくなる。回路上で成長に利用できるすべての領域、すなわちすべての成長窓が、良好な検出器材料を含む場合、ダイオードをより小さく製作することができ、より小さなピッチのアレイがもたらされる。小さなピッチは、より多くのダイオードをアレイ上に収容できるため、いくつかの用途において有益であり得、アレイ性能にとって有用であり得る。
【0026】
したがって、他の実施形態においては、成長窓を、回路アーキテクチャと同じレベルに配置することができる。これは、成長プロセスが、分子ビームおよびガスの流れに関する限りにおいて基本的に平坦な基板上への成長を呈し、上述したように回路がMBEビームに対して陰を生じるなどといった恐れが少なくなるため、成長プロセスにとって有益である。したがって、成長窓が回路アーキテクチャと同じレベルにあるように保証することで、多結晶材料が成長窓へと進入する可能性が少なくなる。したがって、取り除くべき多結晶材料がより少なくなり、結晶のアイランドの形状/サイズが、成長窓の形状/サイズにより密に一致する。したがって、デバイスの占有係数を改善することが可能である。
【0027】
さらに他の実施形態においては、成長窓を、回路アーキテクチャよりも高く延びる基板の突出部によって形成することができる。そのような構成においては、成長領域が周囲の回路よりも盛り上がり、MBEの陰になることがなく、MOVPEのガス流へと突き出す。使用される成長条件に応じ、突出部の側方に成長する材料の方位/結晶性はさまざまであり得る。突出部の側方に成長した材料は、たとえそれが結晶性であっても、方位、厚さ、組成、およびドーピングが、突出部上に正しい方位を備えて成長する所望の構造と異なっており、したがって異なるデバイス性能をもたらすため、場合によってはエッチングにより取り除かれなければならない。しかしながら、突出部の上部の領域のすべてが、良好な品質の結晶材料となり、所定の成長窓のすべてが有効に使用されることを保証する。したがって、シリコンの突出部上への成長は、デバイスのサイズおよび占有係数に関して利点を有することができる。
【0028】
したがって、基板のうちの成長窓として定められる領域を、基板の残りの領域とは異なるレベルに位置するように処理することができる。さらには、基板のうちの成長窓であるように意図される領域を、基板の残りの領域とは異なる方位を有するように処理することも可能である。これにより、表面に集積回路が製造される基板に標準的な(001)の方位を持たせながら、基板のうちの成長窓に相当する領域を、CMTの単結晶の成長のために必要とされる方位ずれを有するように処理、例えばエッチングすることができる。
【0029】
好ましくは、成長窓の外側の基板は、マスク材料で覆われる。換言すると、成長窓が、マスク材料の不在によって定められる。したがって、本発明の方法は、バッファ層の成長に先立って、成長窓の外側の基板へとマスク材料を適用する工程を含む。マスク材料は、バッファ層およびCMT層のための前処理ならびにバッファ層およびCMT層の成長の際に、集積回路および基板の残りの領域を保護するうえで役に立つ。さらに、マスク材料は、成長窓の定義を助けることができ、バッファ層およびCMT層の選択的な結晶の成長を助けることができる。好都合には、マスク材料を、表面に形成された集積回路を有する基板の全体に適用し、その後に成長窓をあらわにするためにある特定の領域から選択的に取り除くことができる。例えばフォトリソグラフィなど、マスク材料を適用し、その後に選択された部位を除去する方法を、当業者であれば知っているであろう。
【0030】
マスク材料は、CMTの前処理および成長の際に基板および集積回路を保護するために化学的および機械的に丈夫でありながら、CMTの加工が完了したときに下層の回路を露出させるべく取り除くことができる、任意の材料であってよい。好都合なマスク材料の1つは、チタニウムタングステンTi−Wであるが、二酸化ケイ素(SiO)、チッ化ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、または他の耐熱金属など、他の材料を使用することも可能である。
【0031】
好ましくは、成長窓において露出されたシリコンが、バッファ層のMBE成長に先立って、材料の成長のために洗浄される。この洗浄は、望ましくないあらゆる汚染を取り除く。前処理は、溶媒による洗浄、バレルアッシング、および/またはイオンビーム加工のうちの1つ以上を含むことができる。また、基板は、フッ化水素酸(HF)主体のエッチングを使用してエッチングされる。
【0032】
パターンなしの基板への標準的な成長法による材料の成長に先立ち、すなわち例えばMBEによるバッファ層の成長に先立って、シリコン基板の熱洗浄が通常は実行されることに留意されたい。しかしながら、最大800℃の温度を必要とし得る熱洗浄は、集積回路を破壊するであろう。したがって、従来からの熱洗浄を、集積回路を有する基板について実行することはできない。テストによって、集積回路が最大約500℃の処理温度に耐え得ることが示されているが、この温度を大きく超えると、回路の金属配線が溶融し、回路を損なう可能性がある。
【0033】
基板は、MBEバッファの成長に先立って、ある温度、すなわち室温を上回るが集積回路が損傷することがないように十分低い温度のもとで、ヒ素フラックスにさらされる。ヒ素フラックスは、後のMBE成長のために、シリコン基板に水素末端の表面を用意する。ヒ素が洗浄用のフラックスとして好ましい材料であるが、これに代え、あるいはこれに加えて、カドミウム、テルル、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛、アンチモン、またはリンなどといった他の材料およびそれらの組み合わせを使用することができる。
【0034】
したがって、本発明は、良好な洗浄をもたらすが、集積回路を損傷させることがない約450℃での低温の洗浄プロセスを利用する。後続の成長工程は、従来の熱洗浄よりも低い温度で生じるため、集積回路の存続に大きな問題を生じることはない。
【0035】
1つ以上のバッファ層をMBEによって成長させることができる。バッファ層は、MOVPE成長のために正しい方位を設定する(すでに触れたように、MBEバッファ層の成長は基板の方位に従う)とともに、基板内の種によるCMTの化学的汚染を防止する。さらにバッファ層は、後に成長させるCMT層の水銀を基板内の回路から離しておくように機能する。適切なバッファ層としては、テルル化カドミウムおよびテルル化亜鉛が挙げられる。例えばテルル化亜鉛の単層など、ただ1つのバッファ層を設けることができ、あるいは例えば基板上のテルル化亜鉛の層を成長させ、その上にテルル化カドミウムの層を成長させて備えるなど、複数層の組み合わせを設けることができる。テルル化カドミウム亜鉛も、バッファ層として使用することが可能である。他のバッファ層としては、ガリウムヒ素およびゲルマニウムを挙げることができる。
【0036】
テルル化亜鉛を成長させるために、MBEソース材料として、テルル化亜鉛を使用することができ、亜鉛およびテルル元素を使用することができ、あるいは元素材料と化合物材料との組み合わせを使用することができる。同様に、テルル化カドミウムを、カドミウムおよびテルルの元素、またはテルル化カドミウム、または組み合わせを使用して成長させることができる。バッファ層の成長は、当業者にとって公知であろう標準的なMBE成長プロセスを使用して行われる。
【0037】
基板全体がMBE成長にさらされるが、例えば適切なマスク材料が使用され、成長窓が適切に準備されているがゆえ、成長窓においてのみ結晶基板がエピタキシャル成長のための基礎として露出されているため、結晶の成長が成長窓においてのみ生じる。成長窓の外の基板へと堆積する材料は、多結晶材料として堆積する。プロセス条件に応じて、成長窓内のみにおける成長を保証することができ、すなわち成長窓の外には成長が存在せず、成長窓内に結晶の成長が存在する。これは、この業界において「選択領域成長」として知られており、成長したCMTの領域が成長窓の領域に(より近く)等しくなるため、より良好な占有係数をもたらす。しかしながら、今までのところ、成長窓の外での成長を許容し、後のエッチング段階で望ましくない材料を取り除くことが、より好都合であることが判かっている。
【0038】
バッファ層のMBE成長の後に、CMTをMOVPEによってバッファ層上に成長させることができる。しかしながら、MOVPE成長に先立ってバッファ層の表面を洗浄することが、好ましいと考えられる。使用される設備に応じて、場合によってはバッファ層を設けた基板をMBE成長装置からMOVPE反応炉へと移す必要があり、および/または処理工程の間に遅延が存在する可能性がある。バッファ層を設けた基板が、管理された環境に保持されない場合、最上のバッファ層の表面に不純物が蓄積する可能性がある。洗浄は、これらの不純物の少なくともいくらかを取り除くが、基板の前処理と同様、洗浄工程によって集積回路に損傷が生じてはならない。洗浄は、MOVPEの技術分野の当業者であればよく理解しているとおり、バッファ層を設けた基板をエッチングすることによって実行でき、あるいは上述の温度の制約が伴うが、任意の適切な洗浄プロセスによって実行することができる。MBE/MOVPEを組み合わせて、これら2者の間にロードロックを備えているシステムが用意される場合には、洗浄は不要である。
【0039】
少なくとも1つのCMT層の成長に先立って、本発明の方法はさらに、MOVPEによって少なくとも1つのさらなるバッファ層を成長させる工程を含むことができる。このMOVPEバッファ層は、MBEによって成長させたバッファ層材料と同じであっても、異なっていてもよい。上述のとおり、MBEは、シリコン上にMOVPE成長のための正しい方位を有する適切なバッファ層を成長させる、良好な制御可能なやり方をもたらす。しかしながら、CMTのMOVPE成長のための条件をさらに改善するため、MOVPEによるバッファ層を製作することが有用であると考えられる。例えば、MBEバッファ層が、基板上のテルル化亜鉛下部層上に成長させたテルル化カドミウムの上部層を有している場合、本発明の方法は、MBEによるCdTe層の上にMOVPEによってさらなるテルル化カドミウム層を成長させる工程を含むことができる。
【0040】
MOVPEによってさらなるバッファ層を成長させることで、バッファ層の厚さを増すことができ、これはいくつかの実施形態において有益であり得、MOVPEはMBEよりも高速な成長法である。MOVPEバッファ層は、結晶の品質を向上させることができる。さらに、MOVPEバッファ層は、CMTを大気に露出された表面から絶縁するうえでも有用であり、すなわちMOVPEバッファ層を製作することで、酸化などによるMBEバッファ層の表面のわずかな不純物および洗浄プロセス(実行される場合)の残留物を覆うことができる。
【0041】
CMT層の成長は、反応炉へと進入する前駆体の濃度が、それらの蒸気圧および前駆体を含むバブラーを通過するガス流(好都合には、水素)によって制御される(おそらくは、追加の清浄なガス(H)の流れによってさらに希釈される)標準的なMOVPE技術による。このようにして、所望のデバイス特性をもたらすべくxの値を制御して、Hg1−xCdTeを成長させることができる。好都合には、MOVPEプロセスは、米国特許第4,566,918号に記載のCMT成長の相互拡散多層プロセスを使用し、すなわちCMTを成長させる工程が、CdTeおよびHgTeの薄い層を順次に成長させることを含んでおり、これらの層が成長時に相互拡散してCMTの単層をもたらし、CdTeおよびHgTeの層の相対的な厚さが、カドミウムの含有量xを決定する。
【0042】
使用される有機金属前駆体は、カドミウムおよびテルルのアルキルなど、任意の適切な揮発性のテルルおよびカドミウム化合物であってよい。一実施形態においては、テルルの前駆体は、ジ−イソ−プロピルテルライドであり、カドミウムの前駆体は、ジメチルカドミウムである。
【0043】
MOVPEバッファ層およびCMTは、MBEバッファ層上に成長するため、それらからの結晶方位を引き継ぐ。したがって、やはり成長窓内にのみ結晶の成長が存在し、その他の場所には多結晶の成長が存在する。
【0044】
CMT層を、n型またはp型であってよい適切なドーパントでドーピングすることができる。適切なドーパントとしては、ヨウ素、ヒ素、インジウム、およびアンチモンが挙げられるが、他のドーパントも使用可能である。適切な前駆体としては、イソ−ブチルイオダイドおよびトリス(ジメチルアミノ)アルセニックが挙げられる。
【0045】
一般に、本発明の方法は、意図するデバイスの要件に従って2つ以上のCMT層を成長させることを含む。異なる層が、異なる厚さ、組成(Hg1−xCdTeにおけるx)、および/または異なるドーパントおよびドーパント濃度を有することができる。
【0046】
MOVPEによるCMT層の成長に続き、材料を水銀に富んだ環境でアニールすることが好ましい。これは、水銀の空きを満たし、所望の電気的特性を保証する。アニールは、MOVPE反応炉において実行することができ、CMT層の成長の後に直接実行することができ、あるいは任意の適切な装置を使用して後に実行してもよい。
【0047】
バッファ層のMBE成長およびCMTのMOVPE成長は、実質的に、Defense and Security Symposium 2004(以前のAeroSense)12〜16 April 2004 Gaylord Palms Resort and Convention Center Orlando(Kissimmee),Florida USA,Conference proceedings in pressで公開されたDJ Hall、L Buckle、NT Gordon、J Giess、JE Hails、JW Cairns、RM Lawrence、A Graham、RS Hall、C Maltby、およびT Ashleyの「Long wavelength infrared focal plane arrays fabricated from HgCdTe grown on silicon substrates」、ならびにDJ Hall、L Buckle、NT Gordon、J Giess、JE Hails、JW Cairns、RM Lawrence、A Graham、RS Hall、C Maltby、およびT Ashleyの「High performance long−wavelength HgCdTe infrared detectors grown on silicon substrates」、Applied Physics Letters Volume 85,Issue 11,pp.2113〜2115に記載され、さらには英国特許出願第0407804.4号明細書に記載されている方法を使用するが、これらのすべての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
結晶の材料が成長窓へと成長し、多結晶の材料が成長窓の外に成長する場合、望ましくない材料を取り除く必要がある。したがって、本発明の方法は、望ましくないCMTおよび/またはバッファ層材料を取り除く工程を含むことができる。多結晶材料の除去は、エッチングによって達成することができる。好ましくは、エッチングの工程は、乾式エッチング工程およびその後の化学湿式エッチングを含む。エッチングすべき領域を定めるために、フォトリソグラフィを使用することができる。望ましくない材料の除去は、さまざまな段階で実行することができる。例えば、MBEおよびMOVPEの両方の成長段階を完了させた後で、多結晶のバッファおよびCMT材料を取り除くことができる。あるいは、バッファ層のMBE成長を完了させ、この段階で、すなわちMOVPE成長段階に先立って、望ましくない多結晶のバッファ層材料を取り除くことができる。次いで、MOVPE成長を、結晶バッファ層上にのみ結晶を成長させて実行することができる。MOVPE成長段階は、成長領域外のすべてにおいて成長が存在しないよう、選択領域成長を達成することができ、あるいはやはり成長窓における結晶材料の結晶成長および他の場所での多結晶の成長をもたらしてもよく、この場合には、MOVPE成長の後にもエッチング工程が必要になる。
【0049】
さらに、本発明の方法は、CMT層の物理的形状を定めるためのデバイス加工工程を含むことができる。さらに、この工程は、電気的接続のためのランド部を設けることを含むことができる。好都合には、デバイスの加工は、望ましくないCMT/バッファ材料の除去と同時に行われる。
【0050】
デバイスの加工工程は、プレーナ処理技術を含むことができ、例えばイオン打ち込み、イオンビーム加工、およびコーンまたはレンズの形成を含むことができる。イオン打ち込みは、ダイオードまたは他の構造を形成するためにCMTの成長後のp/n型ドーパントの注入を可能にし、したがってCMT材料を、未ドープまたは不完全にドープされたいくつかの層にて成長させ、その後にイオン打ち込みによってドーピングすることができる。
【0051】
さらに本発明の方法は、CMTを少なくとも1つのパッシベーション層で被覆する工程を含むことができる。当業者であれば理解できるとおり、CMT構造の側壁が、デバイスの電気的な安定性を保証するとともに、材料からの水銀の喪失を防止するため、好ましくは1つ以上のパッシベーション層によって被覆される。パッシベーション層は、好都合には、テルル化カドミウムの層であってよい。好都合には、パッシベーション層は、MOVPEによって成長させたエピタキシャル層である。
【0052】
本発明の方法は、さらに、成長窓の外の基板からマスク材料を除去する工程を含むことができる。これは、当技術分野において理解されるとおり、化学湿式エッチングなどのエッチングプロセスによって達成できる。
【0053】
さらに本発明の方法は、CMTと集積回路との間に電気的接続を作成する工程を含むことができる。電気的接続は、当業者にとって周知のとおり、犠牲材料を堆積させ、犠牲材料上に導電材料を堆積させ、次いで犠牲材料を除去することによって、空中ブリッジとして形成することができる。あるいは、CMT材料へとパッシベーション層が適用される場合には、電気的接続を、パッシベーション材料のヴィアによって製作してもよい。明らかであるが、CMT材料と集積回路との間の関係が、どのように電気的接触をなすべきかを決定する。バッファ層/CMTを、回路アーキテクチャに対してピットに成長させる場合には、デバイスの一部を、集積回路と直接接触させることができる。出来上がったデバイスが回路に対して平坦である場合には、電気的接続を、空中ブリッジを必要とすることなく製作することができる。当業者であれば理解できるとおり、必要とされる接続の種類、および必要とされるパッシベーションの程度などは、デバイスの設計に応じてさまざまであろう。
【0054】
英国特許出願第0407804.4号明細書に記載されているように、CMTの成長法が、デバイス加工が加えられたCMT層上へのCMTのさらなるエピタキシャル成長を可能にすることに留意されたい。したがって、本発明の方法は、CMT構造の一部の成長およびその後のデバイス加工、ならびにその後の少なくとも1つの追加のCMT層のMOVPE成長を含むことができる。この少なくとも1つの追加のCMT層は、結晶CMT領域におけるエピタキシャルであろう。デバイスの加工は、エッチングなど、任意の種類の成形工程を含むことができ、あるいは電気コンタクトの製造を含むことができる。具体的には、本発明の方法は、1つ以上のCMT層の成長、構造の当該部位への電気コンタクトの形成、およびその後の少なくとも1つの追加のCMT層のさらなる成長を可能にする。
【0055】
したがって、本発明は、同じ基板上に回路と赤外線活性材料とを有しているモノリシックな赤外線デバイスの形成のための方法を提供する。本発明によって可能になるデバイスとしては、短波の検出器および光源、中波の検出器および光源、長波の検出器および光源、ならびに超長波の検出器および光源が挙げられる。いずれの場合にも、CMT材料を各ピクセルの回路に完全に統合させた完全な2Dアレイを生み出すことができる。デュアルバンド、マルチバンド、ハイパースペクトル、およびアバランシェデバイスを、本発明によるCMT成長を使用して生成することができる。光吸収デバイスならびにLEDを製造することができ、単一光子の光源およびデバイスを、フォーカルプレーンアレイ赤外線検出器からガスセンサまでの技術範囲において使用することができる。トランジスタも、本発明の方法を使用して製造することができる。
【0056】
さらに、少なくとも1つの成長窓に成長させたCMTを、その上に集積回路を製造すべく処理することができる。CMTに製造された集積回路は、シリコン基板上に製造された集積回路とは異なる特性を有すると考えられ、例えばより高速かつ低電力であり得る。したがって、主たるシリコン集積回路内において、CMTのアイランド内に局所的な高速回路を製造することができる。
【0057】
このように、本発明の他の態様によれば、表面に形成された集積回路を有するシリコン基板と、この基板上の少なくとも1つのバッファ層上に形成された少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀の層とを備え、基板が<110>または<111>、好ましくは<111>に対して2°〜10°(2°および10°を含む)によって整列した(001)の方位を有している、モノリシックな赤外線デバイスが提供される。
【0058】
本発明によるデバイスは、本発明の第1の態様の方法によって、この方法に付随するすべての利点を伴って製造することができる。デバイスは、好ましくは、それぞれが自身に関連付けられた固有の回路を有している複数のCMT構造を備えている。好都合には、デバイスが、複数の検出器ピクセルを有する赤外線検出器である。デバイスは、直線アレイであってよく、あるいは2D検出器アレイであってよい。
【0059】
本発明の方法は、集積回路を有するシリコン基板へのCMTの成長に向けられているが、成長窓へのCMTの成長が優秀な表面形態を有することが明らかになっている。従来からの方法によって成長させたCMTにおいては、最大のアレイサイズおよび使用性が、ヒロックとして知られる大きな欠陥によって制約され得る。従来どおりに成長させた高品質材料における典型的な欠陥密度は、パターンなしのシリコン上において約10〜20cm−2であり得る。窓内に成長させた材料の欠陥密度は、これよりもはるかに低い。したがって、成長窓でのCMTの成長は、より大面積、かつ高品質な検出器アレイ、または他の赤外線デバイスの成長方法を提供する。
【0060】
したがって、本発明の他の態様においては、CMT構造のモノリシックなアレイの製造方法であって、定められた複数の成長窓を有するモノリシックな基板材料を持ち込む工程、および結晶テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層を上記成長窓に選択的に成長させる工程、を含む方法が提供される。
【0061】
したがって、本発明の方法は、他の成長技術よりも大面積および/または高品質のCMTデバイスのアレイの成長に適用することができる。成長基板は、任意の適切な結晶材料であってよく、好都合には物理的に丈夫であって大きな面積で入手可能であってよい。基板は、集積回路または他の何らかの表面的特徴を有する基板であってよく、あるいは所定の成長窓を有するパターンなしの基板であってよい。適切な基板材料としては、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛、テルル化カドミウム亜鉛、セレン化カドミウム亜鉛およびセレン化テルルカドミウム亜鉛(これらは一般には大きなサイズでは入手不可能であるが)、ガリウムヒ素、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン化インジウム、アンチモン化インジウムアルミニウム、アンチモン化インジウムガリウム、リン化インジウム、サファイア、アルミナ、またはスピネル(MgAl)が挙げられる。
【0062】
したがって、本発明のこの態様は、高品質のハイブリッド化デバイスの製造に使用することができる。そのような場合、シリコンが、読み出し回路に固有に熱的に一致するため、好ましい基板である。さらに、ハイブリッド化のための選択領域成長が、材料内のひずみが低減されるという利点を提供し、したがって基板/CMTの反りが少なくなる。この効果は、成長が成長窓においてのみ生じる場合に最大である。
【0063】
好ましくは、成長窓は、マスク材料を成長窓の外へと適用して有する基板によって定められる。したがって、この方法は、CMTの成長に先立ち、成長窓の外の基板へとマスク材料を適用する工程を含むことができる。好都合には、基板の全体がマスク材料によって覆われ、その後にマスク材料のうちの選択された領域が、成長窓を露出させるべく除去される。マスク材料を使用して成長窓を定めるために、標準的なフォトリソグラフィ技術を使用することができる。
【0064】
当業者であれば、マスク材料として使用することができるさまざまな材料を知っているであろう。基板が、集積回路が形成されていないパターンなしの基板である場合には、マスク材料は、成長窓以外でのCMTの結晶の成長を防止するだけでよい。適切なマスク材料としては、Ti−W、二酸化ケイ素(SiO)、チッ化ケイ素(Si)、Al、Cr、Pt、Pd、および他の耐熱性金属が挙げられる。
【0065】
好ましくは、少なくとも1つのCMT層を成長させる工程が、少なくとも1つの結晶バッファ層をMBEによってそれぞれの成長窓へと成長させる工程、およびその後に少なくとも1つの結晶CMT層をMOVPEによってバッファ層上に成長させる工程を含む。上述のとおり、このCMTの成長方法は、制御可能な特性を有する高品質のCMTデバイスを生み出す。MBEによるバッファ層の成長およびMOVPEによるCMT層(ならびに追加のバッファ層)の成長に関して上述した実施形態および利点のすべては、本発明のこの態様にも等しく適用可能である。
【0066】
本発明の第1の態様に関して上述したように、正しい材料の成長を保証するために、基板の方位が重要である。方位が、MBEによるバッファ層の正しい成長を可能にしなければならず、バッファ層がMOVPEによるCMTの成長のための正しい方位を有するように保証しなければならない。したがって、基板は、好ましくは、形態{100}から<111>または<110>の方向のどちらかにミスアライメントするように構成される。好ましくは、ミスアライメントの度合いは、2°〜10°の間である。このようにして基板の方位をミスアライメントさせることで、MBEバッファ層における欠陥の構成が防止される。基板がシリコンである場合には、好ましくは基板の方位は、[111]方向に対してミスアライメントした(001)であり、ミスアライメントの度合いは、好ましくは2°〜10°(2°および10°を含む)、より好ましくは4°〜8°(4°および8°を含む)の範囲にある。シリコンは、一般的に表面上への成長がより困難な基板であり、したがって正しい方位が重要である。
【0067】
好ましくは、本発明の方法は、材料の成長に先立って成長窓内の基板を洗浄する工程を含む。これは、上述のとおり、溶媒による洗浄、エッチング、バレルアッシング、およびイオンビーム加工、ならびにHF主体のエッチングの組み合わせを介してよいが、基板が集積回路を有していない場合には、標準的な熱洗浄の技術も使用可能である。
【0068】
CMT材料の成長の後、本発明の方法は、望ましくないCMT材料をエッチングによって取り除く工程を含むことができる。マスク材料が使用される場合、成長窓においてのみ結晶の成長が可能であるが、そのほかの場所には多結晶が成長でき、したがって多結晶の材料を取り除く必要がある。この工程は、必要なデバイスの形状を形成するためのデバイス加工工程を含むことができる。
【0069】
さらに本発明の方法は、デバイスの形成後に、任意のマスク材料を除去する工程を含むことができる。上述のように、これは、標準的なエッチング/フォトリソグラフィの技術によって実行することが可能である。
【0070】
上述の方法は、基板上のバッファ層上にCMTの一連のアイランドを製造するために使用することができる。次いで、この方法は、基板全体を亘って、すなわちCMTのアイランドおよびパターンなしの基板を亘って、材料をさらに成長させることを含むことができる。これは、CMTのアイランドが他の材料に埋められてなるアレイをもたらすことができる。例えば、CMTをCdTeの下方に埋めることができ、長波長での動作に合わせて調節されたCMT材料のアイランドを、中または短波長での動作に合わせて調節されたCMT材料に埋めることができ、あるいはCdTe(または、HgTe)をCMTに埋めることができる。
【0071】
次に、本発明を、以下の図面を参照しつつ、あくまで例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
テルル化カドミウム水銀は、赤外線デバイス、特に赤外線検出器の範囲において使用されている。フォーカルプレーンアレイがますます大きくなるにつれ、従来からの製造方法は限界に直面している。検出器アレイを有する基板の読み出し集積回路(ROIC)へのハイブリッド化は、高価かつ歩留まりの低いプロセスである。本発明は、ROICへの検出器材料の直接成長に関し、ハイブリッド化の必要をなくし、ウェハ状態のプロセスを使用してきわめて大面積かつピクセル数の多いフォーカルプレーンアレイの製造を可能にする。
【0073】
ROIC上へと直接製造される検出器アレイの製造の第1段階は、ROICを製造することにある。パターンなしのシリコン上への単結晶CMTの成長においては、基板の方位が重要であることが分かっている。シリコンの方位は、<111>へ対して数度だけずれた(001)である。したがってROICは、このような方位ずれしたシリコン基板上に製造される。テスト回路を、ミスアライメントしたシリコン上に製造して調査したところ、許容可能な歩留まりが得られ、軸ずれしたシリコン上にROICを製造できることが示された。ROICの製造における業界標準の手法は、ミスアライメントのない(100)の方位への製造である。
【0074】
シリコン基板が、エピタキシャルシリコン(エピシリコン)を含んでよいことに、留意されたい。当業者であれば知っているとおり、集積回路の製造は、回路の形成に先立つバルクシリコンのウェハ上へのシリコンのエピタキシャル成長から出発することができる。本明細書の目的において、シリコン基板はエピシリコンを含む。
【0075】
図1は、本発明の原理を証明するために使用したROICのレイアウトを示している。このROICは、種々のテスト回路、2次元のリードアウト(lead−out)回路、および64×64ピクセルのROICを含む。回路は、検出器材料の成長のためにシリコンへと開けられた窓を有している。中央の領域は、完全に機能する150μmピッチの64×64のピクセルのアレイを含む。ピクセルは、直接注入ゲート、ステアゲート、積分キャパシタ、リセット回路、ならびにバッファ層およびCMTの成長のためにシリコン基板まで開かれた100μmの正方領域を含む標準的な設計のピクセルとした。図2が、基板上の検出器成長窓のSEMを示している。
【0076】
上述のデバイスが完全な2Dアレイであることに留意されたい。64×64のピクセルのそれぞれが、自身の成長窓および関連の回路を有している。これは、ただ1つの成長窓が定められている国際公開第02/084741号パンフレットに記載の方法と対照的である。国際公開第02/084741号パンフレットにおいては、成長窓にCMTを成長させ、その後に直線アレイまたは2つの横並びの直線アレイへと成形している。本発明によれば、複数の別個の成長窓での成長が可能である。
【0077】
ROICへのバッファ層および検出器材料の成長に先立って、保護用Ti−WマスクによってROICを被覆した。Ti−Wは、アルミニウム、クロム、および二酸化ケイ素などといった、検討した他の保護層よりも機械的に丈夫であるため好ましいが、必要であればこれらの材料を使用することが可能である。Ti−Wマスクは、検出器材料の成長、アニール、パッシベーション、デバイスの加工、および赤外線デバイスの物理的構造を定める乾式エッチング処理の際に、ROICを化学的な汚染/化学的な損傷/構造的な損傷から保護する。
【0078】
回路を保護すべくTi−W保護マスクを堆積させた後に、Ti−Wを取り去って窓領域を露出させるべくフォトリソグラフィを使用する。これにより、検出器材料の成長および前処理プロセスに備えて下層のシリコン基板が露出される。
【0079】
前処理の後、赤外線検出器の材料層、すなわちCMT検出器材料およびバッファ層を、ROIC上へと直接成長させる。単結晶の検出器材料を成長窓内のROICへと成長させることが重要である。これらの窓が、窓内への多結晶材料の形成を生じ得る望ましくない汚染を除去するため、注意深く前処理される。窓の前処理としては、溶媒による洗浄、バレルアッシング、イオンビーム加工、および例えばHF/アルコールの混合物などHF主体のエッチングが挙げられる。これらはすべて、比較的低い温度の洗浄工程(室温近辺)であるが、基板を背景の不純物によって影響されることがない材料へと十分に洗浄する。シリコン基板へと材料を成長させるための業界標準のプロセスは、820℃の温度でのシリコンの洗浄を含む。しかしながら、ROICを500℃を超える温度にさらした場合、アルミニウムの相互接続経路に溶融が生じ、ROICが恒久的な損傷を受けることになる。これが、新規なより低温の基板洗浄プロセスを開発することによって克服されている。
【0080】
洗浄/前処理プロセスの一部は、ある温度のもとでの基板のヒ素フラックスへの暴露を含む。これは、基板がMBE反応炉へと導入されるときに好都合に実行される。ヒ素フラックスは、シリコンに水素末端の表面を準備し、後のMBE成長を可能にするために重要である。
【0081】
しかしながら、例えば水素洗浄および/またはP、As、Sb、S、Se、Te、Cd、Znのもとでの加熱など、他の洗浄/前処理方法を使用してもよい。
【0082】
窓を成長のために準備した後、バッファ層を分子ビームエピタキシ(MBE)によって成長させ、続いて有機金属気相成長法(MOVPE)によって赤外線検出器材料を成長させる。バッファは、厚さ約1μmのテルル化亜鉛層および後続のテルル化カドミウム層で構成されるが、代わりにテルル化亜鉛、テルル化カドミウム(cadium)、またはテルル化カドミウム亜鉛のただ1つの層を成長させてもよい。バッファ層の幅は、ZnTe(および、使用される場合にはCdTe)の約1つの単分子層から最大約10μmの総厚さまで、さまざまであり得る。
【0083】
赤外線検出器は、多層CMTダイオード構造である。このダイオード構造は、5μmの中波帯における性能のために理論的にモデル化されて最適化されているが、他のIRデバイスも製造可能であることは明らかである。MBEおよびMOVPE成長段階に関するさらなる詳細を、後述する。
【0084】
バッファ材料および後続のCMT層を、成長窓においては結晶として成長させ、成長窓の外では多結晶材料として選択的に成長させる。成長させた材料のテストにおいて、性能の指標「結晶収率」を、成長した結晶を有する窓のアレイ内のピクセルの総数に対する比として定義した。本発明の方法は、高品質の単結晶材料を100%の結晶収率で生み出すことに完全に成功した。ROIC上の窓へと成長させた検出器材料の背景表面形態は、従来からの基板へと成長させた検出器材料に比肩できるものである。ノマルスキー(Nomarski)および走査型電子顕微鏡の顕微鏡写真が、それぞれ以下の図3および図4に示されている。成長窓の材料は結晶であるが、ほかの場所では材料が多結晶である。
【0085】
大きな欠陥に関する限り、窓内の成長の形態の品質は優秀である。従来の成長においては、最大のアレイサイズおよび作業性は、ヒロックとして知られる大きなピラミッド状の欠陥によって制約され得る。典型的なヒロック密度は、パターンなしのSi上の高品質の層において約10〜20cm−2である。窓内に成長させた材料の欠陥密度は、これよりもはるかに低いように見受けられる。したがって、本発明は、従来からの検出器アレイのための大面積のヒロックなしの材料の製造のために有用な技術としての、窓へのCMTの成長にも関係する。
【0086】
検出器材料の成長プロセスの後に、多結晶材料を除去するためにエッチングレシピが使用される。その結果、結晶の検出器材料が、後続の処理段階に備えた状態になる。最適なエッチングレシピが、乾式および後続の湿式化学エッチングを含むことが、特定されている。
【0087】
乾式エッチングの手順においては、多くはメタンにもとづく多数のプラズマ化学反応が、CMTを乾式エッチングするために確認されている。メタンプラズマ内のラジカルが、CMTのカドミウム、水銀、およびテルルと反応し、MeMが形成される(ここで、MはCd、Te、およびHgであり、MeはCHである)。MeHgは、MeCdのHgおよびCMTとの相互作用によっても形成され、MeTeは、MeCdのTeおよびCMTとの相互作用によっても形成される。水銀のいくらかは、表面からも気化し得る。メタンプラズマは、さらにチャンバ内にポリマーを堆積させ、これを抑制するために通常は追加のガスが加えられる。この手順において使用されるプラズマは、誘導結合プラズマシステムのメタンおよび水素ガスで構成される。
【0088】
次いで、この例においては多結晶材料であるが、エッチングすべき領域を定めるためにフォトリソグラフィ技術が使用される。図3および図4に示されている多結晶材料が、乾式エッチングによって取り除かれる。
【0089】
次に、Ti−W保護マスクが湿式エッチングによって取り除かれ、下層の回路があらわにされる。
【0090】
最後の処理工程は、メタライゼーションを使用して検出器をROICのコンタクトパッドへと接続することにある。接続は、2つのやり方のうちの一方で達成することができる。検出器および金属コンタクトとの短絡回路を防止するため、パッシベーション層を堆積させることができる。検出器コンタクト領域との接触を形成するため、パッシベーション層に穴を開ける必要があるかもしれない。あるいは、空中ブリッジコンタクトを製作し、パッシベーションの必要性および短絡の恐れを回避することができる。
【0091】
空中ブリッジコンタクトは、プレーナ型のデバイスへの接続のために現在使用されている。空中ブリッジは、一時的なレジスト支持構造の使用を必要とし、レジスト支持構造の上にクロム/金の金属電路を堆積させる。レジストを取り除くと、空中に浮いた金属製の相互接続電路があらわになる。この技術は、電気絶縁層が不要であるという利点を有している。
【0092】
より高い性能の抵抗面積製品を、パッシベーションさせたCMT赤外線検出器構造によって得ることができ、パッシベーションは、長波長帯のデバイスにおいて好ましい。しかしながら、パッシベーションを堆積(例えば、CdTe)させていない中波長帯で動作するCMT赤外線ダイオードは、バックグラウンド制限となる十分に高い性能を有している。
【0093】
他のデバイスにおいては、電気コンタクトを、デバイスの成長の種々の段階において製作することができる。本発明の成長方法によれば、いくつかの材料層を成長させた後に、エッチングまたは電気コンタクトの形成など、デバイスの加工工程を続けることができる。例えば、1つ以上のCMTの層を、バッファ層の上へとMOVPEによって成長させ、その後、CMT層へと電気コンタクトを製作する前に、多結晶材料をエッチングによって取り除くことができる(取り除くことが必要である場合)。さらに、CMTのMOVPE成長が、さらなる1つ以上のCMT層のエピタキシャル成長をもたらすであろう。その後、デバイス全体をアニールでき、パッシベーションすることができ、さらなる電気接続を製作することができる。
【0094】
フォーカルプレーン検出器アレイの製造を説明したが、本発明の方法を使用して他の赤外線デバイスを製造できることを、当業者であれば理解できるであろう。
【0095】
上述のように、バッファ層の成長はMBEにより、CMT層の成長はMOVPEによる。
【0096】
MBEは、超高真空で行われるプロセスである。図5を参照すると、液体窒素202の覆いが、真空の維持を補助している。ソース材料は、装置内の噴散セル204の内部のるつぼに収容されている。噴散セル204は、るつぼの開放端が加熱された基板206へと向くように配置されている。材料は、るつぼの端部を覆っているシャッター208を取り去ったときに、るつぼから加熱された基板へと移動する。基板へと移動する材料の量は、るつぼの温度に依存して決まり、温度が高いほど材料の蒸気圧が高くなり、したがってより多くの材料が移動する。加熱コイル210が、るつぼの加熱を制御する。システムが真空下にあるため、低蒸気圧の材料であっても、十分に加熱されたならば気化し、基板へと移動することができる。やはりシステムが真空下にあるため、材料のビームが、周囲のガスからの干渉を受けることなく、噴散セルから試料へと移動する。噴散セルは、通常は、暖かく保たれてはいるが材料を気化させるには十分でないアイドリング温度に保持される。成長の開始に先立ち、セルが、十分な材料がるつぼから気化して所望の層を成長させるよう、成長温度へと加熱される。
【0097】
マスクされてエッチングされたシリコン基板206が、ロードロックを経由してMBEキットへと導入される。基板が、加熱され理想的には回転するホルダ212へと留められる。回転は、層の均一な成長に役立つ。成長時の基板の温度は、堆積した材料が再度気化する温度よりも低いが、原子が表面で動き回って結晶材料を形成できるように十分高い。
【0098】
必要とされるバッファ層を成長させるために先に使用したMBEキットを使用すると、有益であり得ることが分かっている。先に成長を実行することの効果は、後続の高品質の結晶の成長が可能となるように、MBEキットの調子を整えることができる点にある。したがって、清浄なMBEキットについては、調子を整えるための数回の成長を最初に実行することが、有益であると考えられる。
【0099】
次いで、基板が、ヒ素フラックスのもとである温度(すなわち、室温を上回る温度)で洗浄されるが、この温度はROICの損傷を避けるため十分に低い。
【0100】
次いで、どのソースが成長のために使用されるのかによって、必要に応じてテルル化亜鉛、亜鉛、およびテルルのセルの前面からシャッターを取り去ることによって、テルル化亜鉛の成長が開始される。ひとたび必要な厚さのテルル化亜鉛が成長すると、シャッターが再び配置される。同様に、必要に応じてテルル化カドミウム、カドミウム、およびテルルのセルの前面からシャッターを取り去ることによって、テルル化カドミウムの成長が開始される。やはり、CdTeの成長の終了時に、シャッターが再び配置される。成長が完了すると、セルはアイドリング温度まで冷却され、基板が冷却されて装置から取り出される。
【0101】
基板の方位を(001)へと設定するとともに、後に成長させるCdTeバッファ層の付着を改善するため、ROIC内の窓へとZnTeの薄いバッファ層をMBEによって成長させる。CdTeをMBE法によってシリコン上に直接成長させると、より基板から剥離しやすい傾向となる。バッファ層は、約1μmの総厚さを有しているが、いくつかのデバイスにおいては、より厚くてもよく、テルル化亜鉛またはCZTのみであってよい。
【0102】
成長プロセスの一部を、マイグレーション・エンハンスド・エピタキシ(MEE)を使用して行うことができ、本明細書の目的においては、MBEへの言及はMEEへの言及を含む。
【0103】
次いで、基板がMOVPE反応炉へと移され、必要に応じエッチング/洗浄工程が実行される。多層のデバイスを製造するため、種々のCMT層をそれぞれの成長窓へと成長させるが、各層の成長は、米国特許第4,566,918号明細書に記載の相互拡散多層プロセスによって行われる。MBE装置およびMOVPE装置は、多くの場合は別個の設備であるが、それらを2者の間にロードロックまたは搬送機構を備える単一のユニットへと組み合わせることができない理由はない。キットの特有の構成要素を、MBEチャンバおよびMOVPEチャンバとともに配置でき、2者の間にロードロックまたは搬送機構を配置することができる。
【0104】
図6は、MOVPE成長の原理を説明しており、MOVPE成長に適した装置を示しているが、実際に使用される装置はさまざまであってよい。さらに詳しくは米国特許第4,566,918号明細書に説明されているように、水素の供給が、多岐管1からバブラー6、7、および25へと、質量流量コントローラ3、4、および23を介して供給される。バルブ8を閉じ、バルブ10および11を開くと、ガスがバブラー6を通って流れる一方で、バルブ10および11を閉じ、バルブ8を開くと、質量流量コントローラ3からの水素の流れは、バイパス配管14を通ってスクラバーまたはフィルタ31へと導かれる。同様に、バブラー7を、バルブ9、12、および13によって制御することができ、バブラー25を、バルブ26、27、および28によって制御することができる。図3においては、簡単化のためバブラーが3つだけ示されているが、実際にはより多くのバブラーが必要な可能性がある。このようにして、それぞれのバブラーを通過する流れを制御することができる。バブラー6、7、および25からの流れをミキサー15において混合することができ、反応容器16への進入に先立って、ミキサー15においてコントローラ5からのガス流(バルブ32、33によって制御される)で希釈してもよい。しかしながら、他の構成においては、前駆体を別個独立に反応容器へと供給し、反応炉内で混合することが好ましい場合がある。
【0105】
成長窓に結晶バッファ層を有している基板20が、サセプタ21上で反応容器16内に位置している。水銀元素の槽19が、反応炉の壁体24を介して加熱素子17によって、あるいは水銀槽の下方に位置する内部カートリッジヒータなど、任意の適切な加熱手段によって加熱され、水銀蒸気の分圧を維持する。基板は、バブラー6、7、および25からのガス流中の有機金属前駆体が基板の近傍で分解するよう、誘導ヒータ18または他の任意の適切な手段によって加熱される。
【0106】
バブラー6は、ジメチルカドミウムなど、カドミウムの前駆体を含んでおり、バブラー7は、ジ−イソ−プロピルテルライドなど、テルルの前駆体を含む。バブラー6および7から反応チャンバへのガスの流れは、それぞれの成長窓にテルル化水銀およびテルル化カドミウムの薄い層を成長させるため、適切なバルブの制御によって順次に制御され、各層の厚さは、成長プロセスの際に成長窓での各層の相互拡散によって形成される最終のCMT層の全体としてのカドミウム含有量を制御するように制御される。
【0107】
それぞれの成長窓に、例えばpのCMT層であってよい最初のCMT層を製造するため、p型のドーパントを導入しなければならない。適切なp型ドーパントはヒ素であるが、リンおよびアンチモンなどといった他のドーパントも考慮に値する。したがって、ドーパント用のバブラー25は、トリス(ジメチル)アミノアルセニック(他の揮発性のヒ素化合物も使用可能である)など適切な前駆体を含んでおり、バブラーの温度およびこのバブラーを通過するガス流は、適切なドーピングをもたらすように制御される。最初のCMT層を成長させた後、残りのCMT層を順次に成長させることができる。任意のn型の層のための適切なn型ドーパントは、例えばイソ−ブチルイオダイドを前駆体とするヨウ素であるが、他の前駆体も使用可能であり、実際のところインジウムなどといった他のドーパントも使用可能である。上述のように、異なるドーパントが使用される場合には、MOVPE装置は、図6に示したただ1つのドーパント用バブラーよりはむしろ、別個に制御することができる複数のドーパント用バブラーを有することができる。同様に、MOVPEバッファ層を成長させる場合には、装置は、バッファ層の成分のための前駆体を保持するバブラーを含むことができる。
【0108】
MOVPEによるCMT層の成長に続いて、材料を水銀に富んだ環境でアニールすることが好ましい。これは、水銀の空きを満たし、所望の電気的特性を保証する。アニールは、MOVPE反応炉において実行することができ、CMT層の成長の後に直接実行することができ、あるいは任意の適切な装置を使用して後に実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の実証のために設計されたテストROICの概略を示している。
【図2】基板上の成長窓のSEMを示している。
【図3】CMTの成長後の基板のノマルスキー顕微鏡写真を示している。
【図4】CMTの成長後の基板のSEMを示している。
【図5】バッファ層の成長に適したMBE装置の概略を示している。
【図6】CMT層の成長に適したMOVPE装置の概略を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線デバイスの製造方法であって、
表面に形成された集積回路を有するシリコン基板を持ち込む工程と、
分子ビームエピタキシによって、少なくとも1つの結晶バッファ層を少なくとも1つの成長窓へと選択的に成長させる工程と、
有機金属気相成長法によって前記バッファ層上に少なくとも1つの結晶CMT層を選択的に成長させる工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
シリコン基板が、<110>または<111>に対して2°〜10°の間でミスアライメントした(001)の方位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコン基板上に集積回路を形成する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
基板が複数の成長窓を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成長窓またはその各々内の基板が、集積回路アーキテクチャに関して異なるレベルにある、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成長窓またはその各々内の基板が、集積回路アーキテクチャよりも低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
成長窓またはその各々内の基板が、集積回路アーキテクチャよりも高く達している、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
成長窓またはその各々内の基板が、集積回路アーキテクチャと同じレベルにある、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
成長窓またはその各々が、成長窓の外に適用されたマスク材料によって定められている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
成長窓またはその各々の外の基板へとマスク材料を適用する工程を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
マスク材料が、チタニウムタングステンである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
バッファ層の成長に先立ち、成長窓またはその各々内の基板を洗浄する工程をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
洗浄工程が、溶媒による洗浄、バレルアッシング、イオンビーム加工、およびフッ化水素酸主体の液によるエッチングのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板の前処理工程が、実質的に500℃を超えない最高温度で行われるヒ素フラックスのもとでの熱洗浄を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのバッファ層が、テルル化カドミウム、テルル化亜鉛、またはテルル化カドミウム亜鉛のうちの1つから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのバッファ層を成長させる工程が、テルル化亜鉛からなる第1のバッファ層を基板上に成長させること、およびテルル化カドミウムからなる第2のバッファ層を第1のバッファ層上に成長させることを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層の成長に先立ち、分子ビームエピタキシによって成長させた少なくとも1つのバッファ層上に、少なくとも1つのバッファ層を有機金属気相成長法によって成長させる工程を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層を成長させる工程が、相互拡散多層プロセスを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層を、ドープされた層として成長させる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのバッファ層を成長させる工程が、成長窓内に結晶材料を成長させ、他の場所には多結晶材料を成長させることを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層を成長させる工程が、成長窓内に結晶材料を成長させ、他の場所には多結晶材料を成長させることを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層を成長させた後に、望ましくないテルル化カドミウム水銀および/またはバッファ層材料を取り除く工程を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層の形状を定めるためのデバイス加工工程をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層を成長させた後に、望ましくないマスク材料を取り除く工程をさらに含む、請求項10、あるいは請求項10に直接的または間接的に従属する請求項11から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
集積回路と、成長窓またはその各々内の少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層との間に、電気的接続を作成する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項に記載の方法によって製造された、モノリシックな赤外線デバイス。
【請求項27】
表面に形成された集積回路を有するシリコン基板と、前記基板上の少なくとも1つのバッファ層上に形成された少なくとも1つのテルル化カドミウム水銀層とを備え、基板が<111>に向かう2°〜10°だけミスアライメントした(001)の方位を有する、モノリシックな赤外線デバイス。
【請求項28】
それぞれが自身に関連付けられた固有の回路を有する複数のテルル化カドミウム水銀構造を備える、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
赤外線検出器である、請求項27または28に記載のデバイス。
【請求項30】
テルル化カドミウム水銀構造からなるモノリシックなアレイの製造方法であって、
定められた複数の成長窓を有するモノリシックな基板材料を持ち込む工程と、
結晶テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層を、前記成長窓に選択的に成長させる工程と、
を含む、方法。
【請求項31】
基板がシリコンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
シリコン基板の方位が、<111>に対して2°〜10°の間でミスアライメントした(001)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
成長窓が、成長窓の外に適用されたマスク材料によって定められている、請求項30から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
成長窓の外の基板へとマスク材料を適用する工程を含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
材料の成長に先立って、成長窓内の基板を洗浄する工程を含む、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層を成長させる工程が、少なくとも1つの結晶バッファ層を、分子ビームエピタキシによってそれぞれの成長窓へと選択的に成長させる工程と、その後に結晶テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層を、有機金属気相成長法によって少なくとも1つのバッファ層上に選択的に成長させる工程を含む、請求項30から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
テルル化カドミウム水銀からなる少なくとも1つの層の成長に先立ち、分子ビームエピタキシによって前もって成長させたバッファ層上に少なくとも1つのバッファ層を有機金属気相成長法によって成長させる工程を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
成長後に、望ましくないテルル化カドミウム水銀材料を取り除く工程をさらに含む、請求項30から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
材料の成長後に、望ましくないマスク材料を取り除く工程をさらに含む、請求項34、あるいは請求項34に直接的または間接的に従属する請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508741(P2008−508741A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524393(P2007−524393)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003015
【国際公開番号】WO2006/013344
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】