パターン化多孔質材料及びその製造方法
【課題】本発明は、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、凹部21が設けられているパターン化多孔質材料1を用いることによって前記課題を解決できる。
【解決手段】生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、凹部21が設けられているパターン化多孔質材料1を用いることによって前記課題を解決できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化多孔質材料及びその製造方法に関する。
本発明は、疾患や事故等の原因で損傷、或いは失われた皮膚、骨や軟骨、靭帯、筋肉、気管、食道、鼻、耳、血管、膵臓、肝臓等の生体組織・臓器を修復、再生する多孔質材料に関する。
より詳細には、これらの生体組織・臓器に分化して組織化する細胞の接着・増殖・分化等の機能を空間的に制御するために、パターン構造を有する多孔質材料及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故や病気等の原因で損傷、或いは失われた皮膚、骨や軟骨、靭帯、筋肉、気管、食道、鼻、耳、血管、膵臓、肝臓等の生体組織・臓器を修復、治療するために、従来は人工臓器や生体臓器の移植が行われてきた。しかしながら、人工臓器の場合は、機能が十分ではないこと、人工物のため磨耗・緩み・破損等の問題点がある。また、生体臓器移植の場合では、ドナーの不足という問題に加え、ドナーが他人の場合、免疫応答に基づく拒絶反応という問題や免疫抑制に伴う合併症等の医学的リスクが少なからずある。
【0003】
このような種々の問題点の存在により、現在では、組織工学の手法で生体組織・臓器を再生することにより、損傷等を修復、治療することは、臓器移植と比較してドナーを必要としないので、理想的な方法であると考えられている。この方法では、生体外で生体の細胞を増殖させ、生体細胞や組織の足場となる足場材料に播種し、生体外で培養し、生体組織が形成した後、生体内に移植する。或いは、生体細胞を足場材料に播種し、生体内に埋め込み、生体組織の再生を生体内で誘導する。
【0004】
そのため、生体組織の形成を誘導、促進し、生体組織の形態を維持する足場材料は非常に重要な役割を果たしている。この足場材料として用いる多孔質材料には、生体に影響を及ぼさない性質としての生体適合性や、新しい生体組織が形成するとともに分解・吸収される生体吸収性等が要求される。
【0005】
生体内では、多種類の細胞が一定の空間的なパターンに従って集積し、組織や臓器を成り立たせている。細胞はそれぞれ適切な場所、適切なタイミングで分化の方向が決定されていく。この過程において、パターン形成を制御する空間的シグナルが細胞に位置情報を与え、細胞がこの情報を記憶したとき、複雑かつ精緻な構造体を形成する。例えば、体内の血管と神経ネットワークはこのパターン情報に制御され、より精緻なパターンが形成される。よって、この空間パターン情報を多孔質材料に印加し、細胞の分布を空間的に制御することは機能性の生体組織・臓器を再生するために非常に重要である。
【0006】
組織再生の足場材料として、生体吸収性をもつ多孔質材料がよく用いられる。
原料としては、ポリ乳酸やポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等の生体吸収性合成高分子、コラーゲンやゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、及びラミニン等の生体吸収性天然高分子が挙げられる。
【0007】
これら生体吸収性高分子の多孔質材料の作製技術として、ポローゲンリーチング法や相分離法、凍結乾燥法、エマルション凍結乾燥法、ファイバー融着法、ニードルパンチング法、エレクトロスピニング法等が挙げられる。
【0008】
しかし、これらの作製技術では、パターン構造を有する多孔質材料の作製は困難であった。例えば、凍結乾燥法では、サンプルの冷却時に温度分布が生じるため、最大の孔径と最小の孔径では、数倍のばらつきが生じることがあった。また、冷却方向を制御することにより空孔の配向を制御しようとする試み(非特許文献1)もあるが、任意の形状の多孔質体に対してはきわめて制御が難しい。
【0009】
図19は、従来の凍結乾燥法を用いて作製した組織再生用コラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真である。形状及び大きさが異なる孔が形成されている。孔の形状及び径のばらつきが大きいため、このコラーゲンスポンジでは、細胞の分布を十分には制御できなかった。孔の大きいところに細胞が接着する傾向が見られた。そのため組織が不均一となり、複雑な臓器の再生が難しいという問題が発生した。
【0010】
このような構造の不均一性のため、細胞の分布を制御することはきわめて困難であった。また、細胞に空間依存的な化学的シグナルを与えることも困難であった。細胞の機能を制御し、生体組織の再生を誘導するためには、これらのファクターを空間的に制御することは不可欠である。
【0011】
なお、非特許文献2は、血管成長因子を化学的に固定化したコラーゲンスポンジに関する文献である。前記血管成長因子は、コラーゲンスポンジの全体にわたって分布しており、パターン状には制御されていない。
【0012】
非特許文献3は、血管成長因子の遺伝子を物理吸着させたコラーゲンベースのスポンジに関する文献である。DNAは前記スポンジ全体の全体にわたって分布しており,パターン状には制御されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Heike Schoof,Jorn Apel,Ingo Heschel,Gunter Rau著,J Biomed Mater Res(Appl Biomater)58,2001年,p.352−7
【非特許文献2】Y.H.Shenら著,Acta Biomaterialia,2008年,4,p.477−89
【非特許文献3】Z.Maoら著,Acta Biomaterialia 2009年,5,p.2983−94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記事情を鑑みて、本発明者は試行錯誤を重ね、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0016】
(1)生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に、凹部が設けられていることを特徴とするパターン化多孔質材料。
(2)前記凹部が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一であることを特徴とする(1)に記載のパターン化多孔質材料。
(3)前記生体吸収性高分子が架橋されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のパターン化多孔質材料。
【0017】
(4)最近傍の凹部同士の間隔が同一とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(5)前記凹部が断面視半円状とされていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0018】
(6)前記凹部が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0019】
(7)前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(8)平面視形状又は/及び面積が前記凹部と異なる別の凹部が前記一面に設けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0020】
(9)前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(10)前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかであることを特徴とする(9)に記載のパターン化多孔質材料。
【0021】
(11)前記凹部に生体吸収性高分子が充填されていることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(12)前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されていることを特徴とする(11)に記載のパターン化多孔質材料。
(13)前記細胞成長因子が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上であることを特徴とする(12)に記載のパターン化多孔質材料。
【0022】
(14)基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、凍結した高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有することを特徴とするパターン化多孔質材料の製造方法。
(15)前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有することを特徴とする(14)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【0023】
(16)前記生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、前記液滴の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液を充填することを特徴とする(14)又は(15)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(17)前記基板として熱伝導性の高い材料を用いることを特徴とする(14)〜(16)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(18)前記液滴の主成分として、水又はt−BuOHを用いることを特徴とする(14)〜(17)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【0024】
(19)前記基板の一面に前記液滴の主成分と逆の親和性を有する層を形成することを特徴とする(18)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(20)インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板を作成することを特徴とする(14)〜(19)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパターン化多孔質材料は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に、凹部が設けられている構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。具体的には、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料により、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0026】
本発明のパターン化多孔質材料は、前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されている構成なので、凹部を生理活性物質又は細胞成長因子とともに高分子で充填することにより、特別な化学組成により規定された領域を、パターン化して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。パターン化多孔質材料とすることができる。
【0027】
本発明のパターン化多孔質材料の製造方法は、基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、凍結した生体吸収性高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有する構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元のパターンに従って制御できる多孔質材料を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。
【図4】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の別の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の別の一例を示す工程図である。
【図8】実施例1により得られた(a):氷微粒子の等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b)、(c):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡像である。
【図9】実施例2により得られた(a):氷微粒子の縦横等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図10】実施例3により得られた(a):氷微粒子の縦横等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図11】実施例4より得られた(a):大小の氷微粒子が縦横等間隔に配列したパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図12】実施例5により得られた(a):大小の氷微粒子が格子状に配列したパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図13】実施例6により得られた(a):氷微粒子が六角形の各辺に沿って配列したパターンの実体顕微鏡像、(b)、(c)、(d)、(e):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡像である。
【図14】実施例7により得られた(a):氷微粒子が六角形の各辺に沿って配列し、かつ中心部に空孔をもつパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図15】実施例8により得られた(a):格子状の溝をもつ氷パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷パターンを鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c):電子顕微鏡像である。
【図16】実施例9により得られた(a):六角形の各辺に沿った溝と中心孔をもつ氷のパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷パターンを鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図17】実施例10により得られた(a):血管新生因子VEGFをコラーゲン水溶液の凍結パターン構造物、(b):VEGFを直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、(c):電子顕微鏡像、(d):免疫染色像である。
【図18】実施例11により得られた(a):神経成長因子NGFを含むコラーゲン水溶液の凍結パターン構造物、(b):NGFの直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、(c):電子顕微鏡像、(d):免疫染色像である。
【図19】従来の生体組織工学用多孔質材料であるコラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の第1の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例を示す模式図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、平面視同一形状及び同一面積の凹部21が複数設けられてパターン化されて概略構成されている。
【0030】
図1では、多孔質材料11は平面視略矩形状であるが、平面視円形状、平面視多角形状等としてもよい。多孔質材料11の大きさは、例えば、縦の長さ10cm、横の長さ8cm及び板厚1mmである。
【0031】
図1では、凹部21は基板の一面11aに12個設けられている。
凹部21の平面視形状は円形に限られるものではなく、四角形状、多角形状又は星形状等でもよい。インクジェット法で平面視円形状の液滴しか吐出できない場合でも、外枠を線状のパターンで形成してから、内部を円形状のパターンで充填することによって、平面視星形状を形成することができる。最近傍の凹部21同士の間隔は同一の長さtとされている。これにより、一定のパターンを限定することができる。長さtは、例えば、0.5mmとする。
【0032】
凹部21は平面視格子状に配置されている。これにより、一定のパターンを限定することができる。
凹部21の配置はこれに限定されるものはなく、平面視六方最密状に配置してもよく、また、凹部21を隣接配置して、平面視線状としてもよい。これらにより、一定のパターンを限定することができる。
凹部21は断面視半円状とされている。断面視半楕円形状としてもよい。いずれにしても、断面視形状は、水、t−BuOH又は高分子水溶液を凍結させ、作成する鋳型形状によって決定される。平面視形状は円形状又は楕円形状となる。
【0033】
生体吸収性高分子は、生体内で吸収されやすく、生体に対する安全性の高い高分子のことである。生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子がある。これにより、容易に、生体吸収性高分子水溶液を作成できるとともに、それを凍結、乾燥、必要に応じて架橋して、多孔質材料11を作成できる。
生体吸収性合成高分子は、ポリ乳酸やポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体又はポリ−ε−カプロラクトン等である。
生体吸収性天然高分子は、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニン等である。
これらの生体吸収性高分子の一種類、或いは数種類を混ぜて用いることもできる。
【0034】
上記の生体吸収性高分子に細胞成長因子などの生理活性物質やナノ粒子等を混合して利用することもできる。細胞成長因子は、上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)等が含まれるが、これらに限定されない。細胞成長因子のうち少なくとも1種類、あるいは2種類以上を組み合わせて使うことができる。また、細胞成長因子をコードする遺伝子DNAを用いることもできる。その他、生理活性作用をもつ合成高分子、DNA、RNAなどの天然高分子、ペプチド、低分子等も1種類、又は2種類以上組み合わせて使うことができる。
これらの生体吸収性高分子は、容易に、板状の多孔質材料11を作成できるとともに、生体組織工学用基板として用いることができる。
【0035】
<パターン化多孔質材料の製造方法>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例について説明する。
図2、3は、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B’線における断面図である。
本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、鋳型基板を作成する工程S1と、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2と、を有する。
【0036】
(鋳型基板を作成する工程S1)
まず、鋳型基板を作成する工程S1において、パターン構造を有する氷の鋳型を予め作製して、多孔質材料における空隙部分を制御する。
具体的には、まず、図2に示すように、基板31の一面に複数の液滴34を凍結配置して鋳型基板41を作成する。また、基板31の外周部に壁状部材33を配置する。
液滴34の配置は、例えば、インクジェット法を用いて、液滴の大きさ及び位置を精密に制御する。この液滴の大きさ及び位置により、最終的に作成するパターン化多孔質材料のパターンが決定される。
このように、あらかじめ多孔質体の第一の溶液を型板に上述の方法と同様にパターン状に塗布して凍結させることにより、支持部となる高分子51の化学組成を制御することができる。
【0037】
液滴34の配置方法として、具体的には、(1)インクジェット法(ディスペンサーロボットで作製する方法)、(2)手動による作製方法、(3)光リソグラフィー法がある。
(1)インクジェット法(ディスペンサーロボットで作製する方法)
インクジェット法は、一定量の微量液体を吐出する装置(ディスペンサーロボット)を用いて、液体の滴下パターンを作製する方法である。ディスペンサーロボットにおいて、液体吐出ノズルを備えたヘッド部分は、コンピュータプログラムによってx−y方向の任意の位置に移動させることができ、型板に向かって液体を吐出することができる。
よって任意の滴下パターンを描画することができる。
まず、高分子フィルムを金属板の上に敷く又は金属板を包み、高分子フィルムを金属板の上に載せる。次に、コンピュータプログラムにしたがって、水、或いは高分子溶液のパターンを描画する。次に、水の氷点以下の温度で凍らせることにより、パターン構造を有する氷の鋳型が得る。
氷のパターンを直接描く場合では、氷に接触する環境を窒素やアルゴン等のガスにして、高分子フィルムを載せた金属板を氷点より低い温度まで冷やしながら、描いた水は直ちに凍結させ氷の鋳型パターンを作製する。
高分子フィルムとして、過フッ化アルコキシフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、テフロンフィルム等を用いる
【0038】
(2)手動による作製方法
手動で作製する方法は、まず、高分子フィルムを金属板の上に敷く又は金属板を包み、高分子フィルムを金属板の上に載せる。
次に、先が鋭いチップで、前記高分子フィルム上に、水、或いは氷のパターンを描く。
次に、氷点以下の温度で凍らせることにより、パターン構造を有する氷の鋳型を得る。
氷のパターンを直接描く場合では、氷に接触する環境を窒素やアルゴン等のガスにして、高分子フィルムを載せた金属板を氷点より低い温度まで冷やしながら、描いた水は直ちに凍結させ氷の鋳型パターンを作製する。
【0039】
(3)光リソグラフィー法
光リソグラフィー法は、まず、上述の高分子からなるフィルムの表面で光反応性のポリマーを塗布する。
次に、フォトマスクを載せて紫外線を照射する。これにより、フォトマスクの透明の部分に光反応性のポリマーがグラフトされて、紫外線が通らない部分の高分子は洗浄により除かれ、光反応性ポリマーのパターンが形成される。
純水をパターン化表面に撒布すると、水は光反応性ポリマーのパターンに従って、パターン構造が形成される。
これを氷点より低い温度下に置くと、パターン構造を有する氷の鋳型が得られる。光反応性のポリマーとして、光反応性のポリエチレングリコールやポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン等の親水性の光反応性ポリマーがある。
【0040】
液滴34の主成分として、水又はt−BuOHを用いる。また、基板31の一面に液滴34の主成分と逆の親和性を有する逆親和性層32を形成する。つまり、液滴34の主成分として水を用いた場合には、逆親和性層32としてテフロンシート等のような撥水性の層を形成し、液滴34の主成分としてt−BuOHを用いた場合には、逆親和性層32として親水性の層を形成する。これにより、液滴34を逆親和性層32に対する接触角が大きくなるように形成でき、断面視半円状又は断面視半楕円形状の液滴を形成できる。平面視形状は円形状又は楕円形状となるが、基板を傾けた状態で液滴を吐射することにより、平面視楕円形状とすることができる。
【0041】
基板31として熱伝導性の高い材料を用いる。熱伝導性の高い材料としては銅等を挙げることができる。また、基板31に冷却機構(図示略)を接続する。例えば、冷却機構により、基板31の温度を−10℃以上−5℃以下とする。これにより、基板31に滴下した液滴34を直ちに凍結配置することができる。
【0042】
(生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2)
次に、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2で、生体吸収性高分子水溶液35eを流し込み、凍結することにより、氷鋳型と生体吸収性高分子を一緒に凍結させる。凍結した構造物を凍結乾燥することにより、氷鋳型と溶媒を除く。
具体的には、まず、生体吸収性高分子水溶液35eを調製し、0℃以下の低温チャンバー内か冷蔵庫内に数時間置き、溶液の温度を0℃以下にする。
冷却温度は、生体吸収性高分子水溶液35eが凍結しなければよく、望ましい温度は0℃から−10℃である。
冷却時間は生体吸収性高分子水溶液35eが十分冷却されればよく、望ましい冷却時間は1時間〜12時間である。
【0043】
次に、凍結配置された複数の液滴34を覆うように生体吸収性高分子水溶液35eを充填する。基板31の外周部に壁状部材33が配置されているので、生体吸収性高分子水溶液35eにより、完全に液滴34を覆うことができる。壁状部材33は、シリコーンゴム等のフレームであり、溶液面の高さを調整できる。
充填の際、生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、液滴34の融解温度未満の範囲に温度制御しすることが好ましい。これにより、生体吸収性高分子水溶液を細部にも充填でき、液滴34の形状を高精度に転写できる。温度条件が上記範囲でない場合には、転写の精度が不十分となる。
充填後、図3(a)に示すように、流し込んだ生体吸収性高分子水溶液35eの上面を平らにし、その上に上記高分子フィルムで覆ったガラスや金属、高分子の板等を配置し、高分子水溶液35eを外部から遮断する。
なお、第一の凍結物である液滴61が融解しないよう、第二の溶液である高分子水溶液35eを加えて凍結させることに留意する。
【0044】
次に、冷凍庫内に配置して、生体吸収性高分子の溶液が凍結する温度より低い温度に設定して、生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する。必要であれば、ドライアイスや液体窒素を用いて、構造物を凍結させることもできる。
図3(b)に示すように、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kは、生体吸収性高分子水溶液に含まれる水が針状や柱状等に凍結された水37kの部分と、凍結された生体吸収性高分子11kとからなる。
【0045】
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出す。
図3(c)は取り出した凍結された生体吸収性高分子水溶液35kの断面図である。液滴34は凍結された生体吸収性高分子水溶液35kの表面に凍結配置されている。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液(凍らせた構造物)35kを減圧乾燥する。
減圧乾燥は真空ポンプに接続した真空容器内で、所定の温度で保持して行う。
減圧乾燥により、凍結された水37kと凍結した液滴34が留去され、生体吸収性高分子のみが残り、除去された部分に孔部11cと凹部21を形成する。
以上の工程により、図1に示す本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1が作成される。
【0046】
なお、更に、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1の生体吸収性高分子を架橋処理してもよい。
具体的には、減圧乾燥した生体吸収性高分子を3次元網目状に架橋処理する。架橋後は、架橋剤を除去、或いはブロッキングすることにより、空隙のパターン構造をもつ生体吸収性高分子の多孔質材料を得る。
細胞外マトリックスを架橋方法としては、細胞外マトリックスを壊さなければ、下記に示す従来公知の方法を使用できる。例えば、(1)放射線による架橋方法、(2)紫外線照射による架橋(光架橋)方法、(3)加熱による架橋(熱架橋)方法、(4)ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法がある。
【0047】
(1)放射線による架橋方法
放射線による架橋反応は、多孔質材料にガンマ線や電子線を照射することにより可溶反応を行う。高分子化合物にガンマ線や電子線など高エネルギーの放射線を照射すると分子鎖の一部が反応性の高いラジカルに変化し、これらがお互いに反応することによって、分子鎖同士が架橋する。ただし、放射線照射は、分子鎖の分解を引き起こすこともある。よって、架橋反応の効率を高める一方、高分子鎖の分解反応をできるだけ抑制する条件で照射されることが望ましい。架橋効率を高めるために多孔質材料が膨潤しない程度に湿潤状態で照射することが好ましい。1.0〜10.0Mradで照射することができるが、分解反応を抑制するためには1.0〜2.0Mradの照射線量が特に好ましい。
【0048】
(2)紫外線照射による架橋方法
紫外線照射による架橋方法は、多孔質材料を一定距離に置いて、紫外線を一定時間照射することにより架橋する。
具体的には、紫外線照射による架橋は、高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、紫外線照射により架橋処理する。
240nm〜280nmの紫外線で10分間から24時間照射するが、望ましいのは250nm〜260nmの紫外線で30分間から10時間照射する。
熱架橋は高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、0.01Torrから1Torrまでの減圧条件下で100℃から140℃までの高温で48時間から96時間加熱することにより行う。
【0049】
(3)加熱による架橋方法
加熱による架橋方法では、減圧下、多孔質材料を加熱して架橋する。
真空度は1×10−4Torr〜50Torr、好ましくは1×10−3〜10Torrとするのがよい。真空度は低くなると、架橋効果は悪くなるし、多孔質材料は変性しやすい。また、温度は5×10〜2×102℃、好ましくは8×10〜1.5×102℃とするのがよい。温度は低くなると、架橋効果は悪くなり、架橋時間も長くなる。一方、温度は高すぎると、多孔質材料は変性してしまう。しかし、真空度と温度は多孔質材料を変性させず、水分を除去できて架橋できればよい。
【0050】
(4)ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法
溶液状の架橋化剤での架橋処理は高分子水溶液を上記の架橋化剤の溶液に30分間から72時間まで浸漬することにより行う。架橋処理温度は4℃から37℃までである。望ましいのは4℃で1時間から48時間、室温で30分間から24時間架橋処理する。
ガス状の架橋化剤を用いる架橋処理は、上記の架橋化剤をガス状にして用いる。
【0051】
ガス状の架橋化剤を用いる架橋処理は、具体的には、上記のコラーゲン、生体吸収性天然高分子、細胞成長因子、細胞分化制御因子又はこれらの誘導体を架橋するに際し、一定温度で一定濃度の架橋剤又はその水溶液で飽和した架橋剤蒸気の雰囲気下で一定時間架橋を行う。
【0052】
溶液状或いはガス状の架橋化剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドのようなアルデヒド類や、エチレンプロピレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル類や、ヘキサメチレンジイソシアネート、α−トリジンイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレン1、5−ジイソシアネート、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4、4、4、−トリイソシアネートのようなイソシアネート類や、メタノールやエタノールのようなアルコール類、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。好ましく使用される架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドのようなアルデヒド類、特にグルタルアルデヒドである。
【0053】
架橋温度は、多孔質材料が溶解せず、かつ架橋剤の蒸気が形成できる範囲内で選定すればよく、通常、2×10〜5×10℃に設定される。望ましくは37℃である。
架橋時間は、架橋剤の種類や架橋温度にもよるが、上記の多孔質材料の親水性や生体吸収性を阻害せず、かつ生体移植時にこのものが溶解しないような架橋固定化が行われる範囲に設定するのが望ましい。
好ましい架橋時間は1/6〜12時間程度である。多孔質体の種類やサイズにもよるが、より好ましくは4時間である。
【0054】
高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、一定温度で一定濃度の架橋化剤水溶液で飽和した架橋化剤の蒸気の雰囲気下で一定時間架橋を行う。架橋温度は通常、20℃〜40℃に設定される。架橋時間は、1時間から12時間である。
なお、ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法では、架橋処理の最終段階で、グリシン水溶液等により架橋化剤を失活させる必要がある。
【0055】
未反応のアルデヒド基を不活性化するためには、過剰量のグリシン、エタノールアミン等のアミン類をクエンチ剤として反応させればよい。
特にグリシンが好適である。その濃度は、0.05〜1.0mol/Lで、好ましくは0.05〜.0.1mol/Lある。
【0056】
架橋生成物を洗浄して、未反応架橋剤、架橋剤により生成したポリマー、及びクエンチした場合は未反応クエンチ剤を除去するために、多孔質体の外体積の少なくとも10倍以上の純水で洗浄する。
以上の工程により、図1に示す本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1が作成される。
【0057】
(本発明の第2の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例について説明する。
図4は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例を示す模式図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は図1(a)のC−C’線における断面図である。
【0058】
図1と図4を比較して分かるように、本発明の第2の実施形態であるパターン化多孔質材料2は、凹部21の代わりに、平面視面積が凹部21よりも小さい凹部22が一面11aに設けられている他は本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1と同様の構成とされている。
【0059】
なお、凹部22としては、平面視形状が凹部21と異なる凹部が一面11aに設けられていてもよく、平面視形状及び面積のいずれもが異なる凹部を一面11aに設けてもよい。
更に、平面視形状又は/及び面積が互いに異なる凹部を3種以上一面11aに設けてもよい。
【0060】
(本発明の第3の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例について説明する。
図5は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例を示す模式図である。図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のD−D’線における断面図である。
【0061】
図1と図5を比較して分かるように、本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に生体吸収性高分子51が充填され、生体吸収性高分子51に孔部51cが形成されるとともに、細胞成長因子55が添加されている他は本発明の第1の実施形態と同一の構成とされている。
【0062】
凹部21に充填される生体吸収性高分子51は、多孔質材料11に用いる生体吸収性高分子と同一の生体吸収性高分子であっても、異なる生体吸収性高分子であってもよい。
異なる生体吸収性高分子を用いた場合には、生体吸収性高分子51自体が凹部と同様に細胞の選択成長領域とされる。
同一の生体吸収性高分子を用いた場合でも、生理活性物質又は細胞成長因子を添加することにより、細胞の選択成長領域にできる。
細胞成長因子としては、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子を挙げることができる。
【0063】
<パターン化多孔質材料の製造方法>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の更に別の一例について説明する。
図6、7は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の更に別の一例を示す工程図である。図6(a)は平面図であり、図6(b)は図6(a)のE−E’線における断面図である。
本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、液滴34の代わりに、細胞成長因子55を添加した生体吸収性高分子水溶液からなる液滴61を用いた他は本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法と同様の構成とされており、鋳型基板を作成する工程S1と、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2と、を有する。
【0064】
(鋳型基板を作成する工程S1)
まず、図6に示すように、基板31の一面に複数の液滴61を凍結配置して鋳型基板42を作成する。液滴61内では、凍結された生体吸収性高分子51kの他に、水分38kも凍結されている。
【0065】
液滴61の主成分は、生体吸収性高分子である。また、基板31の一面に液滴61の主成分と逆の親和性を有する逆親和性層32を形成する。つまり、液滴61の主成分として生体吸収性高分子を用いているので、逆親和性層32としてテフロンシート等のような撥水性の層を形成する。これにより、液滴61を逆親和性層32に対する接触角が大きくなるように形成でき、断面視半円状又は断面視半楕円形状の液滴を形成できる。平面視形状は円形状又は楕円形状となるが、基板を傾けた状態で液滴を吐射することにより、平面視楕円形状とすることができる。
【0066】
(生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2)
まず、生体吸収性高分子水溶液35eを調製する。
次に、凍結配置された複数の液滴61を覆うように、冷却した生体吸収性高分子水溶液35eを充填する。基板31の外周部に壁状部材33が配置されている。充填後、図7(a)に示すように、上部にガラスを配置し、生体吸収性高分子水溶液35eを外部から遮断する。
【0067】
次に、冷凍庫内に配置して、生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する。
図7(b)に示すように、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kは、生体吸収性高分子水溶液に含まれる水が針状や柱状等に凍結された水37kの部分と、凍結された生体吸収性高分子11kとからなる。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出す。
図7(c)は取り出した凍結した高分子水溶液35kの断面図である。液滴61は生体吸収性高分子水溶液35kの表面に凍結配置されている。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを減圧乾燥する。
減圧乾燥は真空ポンプに接続した真空容器内で、所定の温度で保持して行う。
減圧乾燥により、凍結された生体吸収性高分子水溶液35k中の凍結された水37kと凍結した液滴61中の凍結された水38kが除去され、除去された部分に孔部11cと孔部51cを形成する。凹部21には、凝集された生体吸収性高分子51が充填されている。生体吸収性高分子51内には、細胞成長因子55が添加されている。
以上の工程により、図5に示す本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3が作成される。
【0068】
なお、更に、本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3の生体吸収性高分子を架橋処理してもよい。
具体的には、減圧乾燥した生体吸収性高分子を3次元網目状に架橋処理する。このとき、液滴61部分の生体吸収性高分子51も架橋される。
以上の工程により、図5に示す本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3が作成される。
【0069】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、凹部21が設けられている構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。具体的には、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料により、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0070】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一である構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0071】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性高分子が架橋されている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0072】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、最近傍の凹部21同士の間隔が同一とされている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0073】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が断面視半円状とされている構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0074】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0075】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料は、前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0076】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料2は、平面視形状又は/及び面積が前記凹部21と異なる別の凹部22が一面11aに設けられている構成なので、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0077】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子である構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0078】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかである構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0079】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に生体吸収性高分子が充填されている構成なので、凹部内の生体吸収性高分子がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0080】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子55が添加されている構成なので、凹部内の生体吸収性高分子が特別な化学組成によりパターン化された多孔質材料にでき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料とすることができる。
【0081】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、細胞成長因子55が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上である構成なので、凹部内の生体吸収性高分子が特別な化学組成によりパターン化された多孔質材料にでき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料とすることができる。
【0082】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31の一面に複数の液滴34、61を凍結配置して、鋳型基板41、42を作成する工程と、前記基板31の外周部に壁状部材33を配置し、凍結配置された複数の液滴34、61を覆うように生体吸収性高分子水溶液35eを充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する工程と、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出し、減圧乾燥する工程と、減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0083】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有する構成なので、生体吸収性高分子に液滴の情報を転写して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる安定化されたパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0084】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、前記生体吸収性高分子水溶液35eの融解温度以上、液滴34、61の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液35eを充填する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を損なうことなく、生体吸収性高分子水溶液を導入して、生体吸収性高分子に液滴の情報を転写して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0085】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31として熱伝導性の高い材料を用いる構成なので、液滴を直ちに凍結配置して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0086】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、液滴34、61の主成分として、水又はt−BuOHを用いる構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0087】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31の一面に液滴34、61の主成分と逆の親和性を有する層を形成する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0088】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴34、61の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板41、42を作成する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0089】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0090】
実施例1のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ1を作製した。
【0091】
テフロンシートを銅製の型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子パターンを作製した。ここで、各滴下位置に対して滴下回数は1回とし、滴下位置の間隔は1100μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。
次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。
このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0092】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋反応を行った後、純水で5回洗浄した。
さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。
これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ1を作製した。
【0093】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図8(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ1の電子顕微鏡写真を図8(b)、(c)に示す。図8(a)より氷微粒子のドット状パターンがテフロンシートの表面に形成していることが分かった。パターン化コラーゲンスポンジ1の表面には氷微粒子のパターンを反映した大きな空孔が確認され、大きな空孔の間には小さな空孔が存在することが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例2】
【0094】
実施例2のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ2を作製した。
【0095】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。各滴下位置に対して滴下回数は5回とし、滴下位置の間隔は1500μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0096】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ2を作製した。
【0097】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図9(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ2の実体顕微鏡写真を図9(b)、電子顕微鏡写真を図9(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ2の表面には氷微粒子のパターンを反映した大きな空孔が確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例3】
【0098】
実施例3のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ3を作製した。
【0099】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。各滴下位置に対して滴下回数は10回とし、滴下位置の間隔は1700μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0100】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ3を作製した。得られたパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真を図10に示す。パターン化コラーゲンスポンジの表面には空孔間の間隔が一定のパターンを有することが分かった。
【0101】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図10(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ3の実体顕微鏡写真を図10(b)、電子顕微鏡写真を図10(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ3の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例4】
【0102】
実施例4のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、大きな空孔と小さな空孔が交互パターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ4を作製した。
【0103】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。ここで、大きな液滴に対する滴下回数は、各滴下位置に対し10回とし、小さな液滴に対する滴下回数は1回とした。滴下間隔は1250μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0104】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ4を作製した。
【0105】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図11(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ4の実体顕微鏡写真を図11(b)、電子顕微鏡写真を図11(c)、(c)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ4の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例5】
【0106】
実施例5のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔が格子パターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ5を作製した。
【0107】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子のパターンを作製した。ここで、大きな液滴に対する滴下回数は、各滴下位置に対し10回とし、小さな液滴に対する滴下回数は1回とした。滴下間隔は、小液滴間を1000μm、大小の液滴間を1500μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0108】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ5を作製した。
【0109】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図12(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ5の実体顕微鏡写真を図12(b)、電子顕微鏡写真を図12(c)、(d)、e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ5の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例6】
【0110】
実施例6のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔が六角形のパターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ6を作製した。
【0111】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって5℃の純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子のパターンを作製した。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0112】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ6を作製した。
【0113】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図13(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ6の電子顕微鏡写真を図13(b)、(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ6の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例7】
【0114】
実施例7のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、六角形の辺上及び中心に空孔が配置されたパターン化コラーゲンスポンジ7を作製した。
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いてフロン表面に向かって5℃の純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0115】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ7を作製した。
【0116】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図14(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ7の実体顕微鏡写真を図14(b)、電子顕微鏡写真を図14(c)、(d)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ7の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例8】
【0117】
実施例8のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、直交格子パターン状の溝を有するパターン化コラーゲンスポンジ8を作製した。
【0118】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、ディスペンサーロボットテフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷のパターンを作製した。このとき、ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0119】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ8を作製した。
【0120】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図15(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ8の実体顕微鏡写真を図15(b)、電子顕微鏡写真を図15(c)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ8の表面には氷のパターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例9】
【0121】
実施例9のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、六角形の溝と中心部に空孔をもつパターンを有するパターン化コラーゲンスポンジ9を作製した。
【0122】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いてフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷のパターンを作製した。このとき、ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0123】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ9を作製した。
【0124】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図16(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ9の実体顕微鏡写真を図16(b)、電子顕微鏡写真を図16(c)、(d)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ9の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例10】
【0125】
実施例10のパターン化多孔質材料として、血管成長因子(VEGF)を直線パターン状に局在化させたパターン化コラーゲンスポンジ10を作製した。
【0126】
1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)に、ヒトVEGFを5μg/mLになるように添加した。ディスペンサーロボットを用い、この溶液を線幅1mm、線間隔2mmとなるよう、ポリフルオロアルコキシフィルム(厚み25μm)で覆った銅製の型板(100mm×80mm×厚み5mm)表面に塗布した。−30℃の冷凍庫で1時間静置した後、−5℃に設定した低温チャンバーに移して1時間静置した。80mm×65mmにくり抜いた厚み1.0mmのシリコーンゴムフレームを載せ、フレームの内側に1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を7.5mL加えた。ガラス板(100mm×80mm×厚み5mm)を載せて密閉し、過剰量の溶液を除いた後、−5℃で1時間冷却した。冷却後、シリコーンゴムフレーム、ガラス板、PFAフィルム被覆銅型板をはずし、−80℃で6時間冷却した。つづいて、約5パスカルで48時間凍結乾燥することにより、多孔質構造を形成させた。
【0127】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下に静置することにより、37℃、4時間架橋反応を行った。反応後の多孔質体を一辺12mmの正方形に切断した。さらに、未反応アルデヒド基をクエンチするため、多孔質体を0.1Mのグリシン水溶液に入れ、4℃で12時間反応させた。純水100mLで15分間洗浄し、この洗浄を10回くりかえした。
【0128】
図17(a)にVEGFを含有するコラーゲン水溶液凍結物の実体顕微鏡写真、(b)に得られたパターン化コラーゲンスポンジ10の実体顕微鏡像、(d)に電子顕微鏡像、(d)に免疫染色像を示す。電子顕微鏡像より、多孔質構造が観察された。免疫染色像より、描画したパターンに従ってVEGFが可視化されたので、VEGFがパターンに従って局在していることが示された。
【実施例11】
【0129】
例11として、神経成長因子(NGF)を直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジ11を作製した。
【0130】
1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)に、ヒトNGFを50μg/mLになるように添加した。ディスペンサーロボットを用い、この溶液を線幅300μm、線間隔2mmとなるよう、ポリフルオロアルコキシフィルム(厚み25μm)で覆った銅製の型板(100mm×80mm×厚み5mm)表面に塗布した。−30℃の冷凍庫で1時間静置した後、−5℃に設定した低温チャンバーに移して1時間静置した。80mm×65mmにくり抜いた厚み1.0mmのシリコーンゴムフレームを載せ、フレームの内側に1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を7.5mL加えた。ガラス板(100mm×80mm×厚み5mm)を載せて密閉し、過剰量の溶液を除いた後、−5℃で1時間冷却した。冷却後、シリコーンゴムフレーム、ガラス板、PFAフィルム被覆銅型板をはずし、−80℃で6時間冷却した。つづいて、約5パスカルで48時間凍結乾燥することにより、多孔質構造を形成させた。
【0131】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下に静置することにより、37℃、4時間架橋反応を行った。反応後の多孔質体を1辺12mmの正方形に切断した。さらに、未反応アルデヒド基をクエンチするため、多孔質体を0.1Mのグリシン水溶液に入れ、4℃で12時間反応させた。純水100mLで15分間洗浄し、この洗浄を10回くりかえした。
【0132】
図18(a)にNGFを含有するコラーゲン水溶液凍結物の実体顕微鏡写真、(b)に得られたパターン化コラーゲンスポンジ11の実体顕微鏡像、(c)に電子顕微鏡像、(d)に免疫染色像を示す。電子顕微鏡像より、多孔質構造が観察された。免疫染色像より、描画したパターンに従ってNGFが可視化されたので、NGFがパターンに従って局在していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、パターン化多孔質材料及びその製造方法に関するものであり、細胞の接着・増殖・分化等の機能を空間的に制御することができ、再生臓器産業、再生医療産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0134】
1、2、3…パターン化多孔質材料、11…多孔質材料、11a…一面、11c…孔部、11k…凍結された生体吸収性高分子、21、22…凹部、31…基板、32…液滴形成層、33…壁状部材、34…液滴、35e…生体吸収性高分子水溶液、35k…凍結された生体吸収性高分子水溶液、36…ガラス板、37k、38k…凍結された水、41、42…鋳型基板、51…生体吸収性高分子、51c…孔部、51k…凍結された生体吸収性高分子、55…細胞成長因子、61…液滴。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化多孔質材料及びその製造方法に関する。
本発明は、疾患や事故等の原因で損傷、或いは失われた皮膚、骨や軟骨、靭帯、筋肉、気管、食道、鼻、耳、血管、膵臓、肝臓等の生体組織・臓器を修復、再生する多孔質材料に関する。
より詳細には、これらの生体組織・臓器に分化して組織化する細胞の接着・増殖・分化等の機能を空間的に制御するために、パターン構造を有する多孔質材料及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事故や病気等の原因で損傷、或いは失われた皮膚、骨や軟骨、靭帯、筋肉、気管、食道、鼻、耳、血管、膵臓、肝臓等の生体組織・臓器を修復、治療するために、従来は人工臓器や生体臓器の移植が行われてきた。しかしながら、人工臓器の場合は、機能が十分ではないこと、人工物のため磨耗・緩み・破損等の問題点がある。また、生体臓器移植の場合では、ドナーの不足という問題に加え、ドナーが他人の場合、免疫応答に基づく拒絶反応という問題や免疫抑制に伴う合併症等の医学的リスクが少なからずある。
【0003】
このような種々の問題点の存在により、現在では、組織工学の手法で生体組織・臓器を再生することにより、損傷等を修復、治療することは、臓器移植と比較してドナーを必要としないので、理想的な方法であると考えられている。この方法では、生体外で生体の細胞を増殖させ、生体細胞や組織の足場となる足場材料に播種し、生体外で培養し、生体組織が形成した後、生体内に移植する。或いは、生体細胞を足場材料に播種し、生体内に埋め込み、生体組織の再生を生体内で誘導する。
【0004】
そのため、生体組織の形成を誘導、促進し、生体組織の形態を維持する足場材料は非常に重要な役割を果たしている。この足場材料として用いる多孔質材料には、生体に影響を及ぼさない性質としての生体適合性や、新しい生体組織が形成するとともに分解・吸収される生体吸収性等が要求される。
【0005】
生体内では、多種類の細胞が一定の空間的なパターンに従って集積し、組織や臓器を成り立たせている。細胞はそれぞれ適切な場所、適切なタイミングで分化の方向が決定されていく。この過程において、パターン形成を制御する空間的シグナルが細胞に位置情報を与え、細胞がこの情報を記憶したとき、複雑かつ精緻な構造体を形成する。例えば、体内の血管と神経ネットワークはこのパターン情報に制御され、より精緻なパターンが形成される。よって、この空間パターン情報を多孔質材料に印加し、細胞の分布を空間的に制御することは機能性の生体組織・臓器を再生するために非常に重要である。
【0006】
組織再生の足場材料として、生体吸収性をもつ多孔質材料がよく用いられる。
原料としては、ポリ乳酸やポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等の生体吸収性合成高分子、コラーゲンやゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、及びラミニン等の生体吸収性天然高分子が挙げられる。
【0007】
これら生体吸収性高分子の多孔質材料の作製技術として、ポローゲンリーチング法や相分離法、凍結乾燥法、エマルション凍結乾燥法、ファイバー融着法、ニードルパンチング法、エレクトロスピニング法等が挙げられる。
【0008】
しかし、これらの作製技術では、パターン構造を有する多孔質材料の作製は困難であった。例えば、凍結乾燥法では、サンプルの冷却時に温度分布が生じるため、最大の孔径と最小の孔径では、数倍のばらつきが生じることがあった。また、冷却方向を制御することにより空孔の配向を制御しようとする試み(非特許文献1)もあるが、任意の形状の多孔質体に対してはきわめて制御が難しい。
【0009】
図19は、従来の凍結乾燥法を用いて作製した組織再生用コラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真である。形状及び大きさが異なる孔が形成されている。孔の形状及び径のばらつきが大きいため、このコラーゲンスポンジでは、細胞の分布を十分には制御できなかった。孔の大きいところに細胞が接着する傾向が見られた。そのため組織が不均一となり、複雑な臓器の再生が難しいという問題が発生した。
【0010】
このような構造の不均一性のため、細胞の分布を制御することはきわめて困難であった。また、細胞に空間依存的な化学的シグナルを与えることも困難であった。細胞の機能を制御し、生体組織の再生を誘導するためには、これらのファクターを空間的に制御することは不可欠である。
【0011】
なお、非特許文献2は、血管成長因子を化学的に固定化したコラーゲンスポンジに関する文献である。前記血管成長因子は、コラーゲンスポンジの全体にわたって分布しており、パターン状には制御されていない。
【0012】
非特許文献3は、血管成長因子の遺伝子を物理吸着させたコラーゲンベースのスポンジに関する文献である。DNAは前記スポンジ全体の全体にわたって分布しており,パターン状には制御されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Heike Schoof,Jorn Apel,Ingo Heschel,Gunter Rau著,J Biomed Mater Res(Appl Biomater)58,2001年,p.352−7
【非特許文献2】Y.H.Shenら著,Acta Biomaterialia,2008年,4,p.477−89
【非特許文献3】Z.Maoら著,Acta Biomaterialia 2009年,5,p.2983−94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記事情を鑑みて、本発明者は試行錯誤を重ね、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0016】
(1)生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に、凹部が設けられていることを特徴とするパターン化多孔質材料。
(2)前記凹部が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一であることを特徴とする(1)に記載のパターン化多孔質材料。
(3)前記生体吸収性高分子が架橋されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のパターン化多孔質材料。
【0017】
(4)最近傍の凹部同士の間隔が同一とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(5)前記凹部が断面視半円状とされていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0018】
(6)前記凹部が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0019】
(7)前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(8)平面視形状又は/及び面積が前記凹部と異なる別の凹部が前記一面に設けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
【0020】
(9)前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(10)前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかであることを特徴とする(9)に記載のパターン化多孔質材料。
【0021】
(11)前記凹部に生体吸収性高分子が充填されていることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料。
(12)前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されていることを特徴とする(11)に記載のパターン化多孔質材料。
(13)前記細胞成長因子が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上であることを特徴とする(12)に記載のパターン化多孔質材料。
【0022】
(14)基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、凍結した高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有することを特徴とするパターン化多孔質材料の製造方法。
(15)前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有することを特徴とする(14)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【0023】
(16)前記生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、前記液滴の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液を充填することを特徴とする(14)又は(15)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(17)前記基板として熱伝導性の高い材料を用いることを特徴とする(14)〜(16)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(18)前記液滴の主成分として、水又はt−BuOHを用いることを特徴とする(14)〜(17)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【0024】
(19)前記基板の一面に前記液滴の主成分と逆の親和性を有する層を形成することを特徴とする(18)に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
(20)インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板を作成することを特徴とする(14)〜(19)のいずれかに記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明のパターン化多孔質材料は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に、凹部が設けられている構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。具体的には、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料により、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0026】
本発明のパターン化多孔質材料は、前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されている構成なので、凹部を生理活性物質又は細胞成長因子とともに高分子で充填することにより、特別な化学組成により規定された領域を、パターン化して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。パターン化多孔質材料とすることができる。
【0027】
本発明のパターン化多孔質材料の製造方法は、基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、凍結した生体吸収性高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有する構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元のパターンに従って制御できる多孔質材料を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。
【図4】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の別の一例を示す工程図である。
【図7】本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の別の一例を示す工程図である。
【図8】実施例1により得られた(a):氷微粒子の等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b)、(c):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡像である。
【図9】実施例2により得られた(a):氷微粒子の縦横等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図10】実施例3により得られた(a):氷微粒子の縦横等間隔配列パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図11】実施例4より得られた(a):大小の氷微粒子が縦横等間隔に配列したパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図12】実施例5により得られた(a):大小の氷微粒子が格子状に配列したパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d)、(e):電子顕微鏡像である。
【図13】実施例6により得られた(a):氷微粒子が六角形の各辺に沿って配列したパターンの実体顕微鏡像、(b)、(c)、(d)、(e):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡像である。
【図14】実施例7により得られた(a):氷微粒子が六角形の各辺に沿って配列し、かつ中心部に空孔をもつパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷微粒子を鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図15】実施例8により得られた(a):格子状の溝をもつ氷パターンの実体顕微鏡像、(b):本氷パターンを鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c):電子顕微鏡像である。
【図16】実施例9により得られた(a):六角形の各辺に沿った溝と中心孔をもつ氷のパターンの実体顕微鏡像、(b):本氷パターンを鋳型に用いて作製したパターン化コラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、及び(c)、(d):電子顕微鏡像である。
【図17】実施例10により得られた(a):血管新生因子VEGFをコラーゲン水溶液の凍結パターン構造物、(b):VEGFを直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、(c):電子顕微鏡像、(d):免疫染色像である。
【図18】実施例11により得られた(a):神経成長因子NGFを含むコラーゲン水溶液の凍結パターン構造物、(b):NGFの直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジの実体顕微鏡像、(c):電子顕微鏡像、(d):免疫染色像である。
【図19】従来の生体組織工学用多孔質材料であるコラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(本発明の第1の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の一例を示す模式図である。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、平面視同一形状及び同一面積の凹部21が複数設けられてパターン化されて概略構成されている。
【0030】
図1では、多孔質材料11は平面視略矩形状であるが、平面視円形状、平面視多角形状等としてもよい。多孔質材料11の大きさは、例えば、縦の長さ10cm、横の長さ8cm及び板厚1mmである。
【0031】
図1では、凹部21は基板の一面11aに12個設けられている。
凹部21の平面視形状は円形に限られるものではなく、四角形状、多角形状又は星形状等でもよい。インクジェット法で平面視円形状の液滴しか吐出できない場合でも、外枠を線状のパターンで形成してから、内部を円形状のパターンで充填することによって、平面視星形状を形成することができる。最近傍の凹部21同士の間隔は同一の長さtとされている。これにより、一定のパターンを限定することができる。長さtは、例えば、0.5mmとする。
【0032】
凹部21は平面視格子状に配置されている。これにより、一定のパターンを限定することができる。
凹部21の配置はこれに限定されるものはなく、平面視六方最密状に配置してもよく、また、凹部21を隣接配置して、平面視線状としてもよい。これらにより、一定のパターンを限定することができる。
凹部21は断面視半円状とされている。断面視半楕円形状としてもよい。いずれにしても、断面視形状は、水、t−BuOH又は高分子水溶液を凍結させ、作成する鋳型形状によって決定される。平面視形状は円形状又は楕円形状となる。
【0033】
生体吸収性高分子は、生体内で吸収されやすく、生体に対する安全性の高い高分子のことである。生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子がある。これにより、容易に、生体吸収性高分子水溶液を作成できるとともに、それを凍結、乾燥、必要に応じて架橋して、多孔質材料11を作成できる。
生体吸収性合成高分子は、ポリ乳酸やポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体又はポリ−ε−カプロラクトン等である。
生体吸収性天然高分子は、コラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニン等である。
これらの生体吸収性高分子の一種類、或いは数種類を混ぜて用いることもできる。
【0034】
上記の生体吸収性高分子に細胞成長因子などの生理活性物質やナノ粒子等を混合して利用することもできる。細胞成長因子は、上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)等が含まれるが、これらに限定されない。細胞成長因子のうち少なくとも1種類、あるいは2種類以上を組み合わせて使うことができる。また、細胞成長因子をコードする遺伝子DNAを用いることもできる。その他、生理活性作用をもつ合成高分子、DNA、RNAなどの天然高分子、ペプチド、低分子等も1種類、又は2種類以上組み合わせて使うことができる。
これらの生体吸収性高分子は、容易に、板状の多孔質材料11を作成できるとともに、生体組織工学用基板として用いることができる。
【0035】
<パターン化多孔質材料の製造方法>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例について説明する。
図2、3は、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の一例を示す工程図である。図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B’線における断面図である。
本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、鋳型基板を作成する工程S1と、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2と、を有する。
【0036】
(鋳型基板を作成する工程S1)
まず、鋳型基板を作成する工程S1において、パターン構造を有する氷の鋳型を予め作製して、多孔質材料における空隙部分を制御する。
具体的には、まず、図2に示すように、基板31の一面に複数の液滴34を凍結配置して鋳型基板41を作成する。また、基板31の外周部に壁状部材33を配置する。
液滴34の配置は、例えば、インクジェット法を用いて、液滴の大きさ及び位置を精密に制御する。この液滴の大きさ及び位置により、最終的に作成するパターン化多孔質材料のパターンが決定される。
このように、あらかじめ多孔質体の第一の溶液を型板に上述の方法と同様にパターン状に塗布して凍結させることにより、支持部となる高分子51の化学組成を制御することができる。
【0037】
液滴34の配置方法として、具体的には、(1)インクジェット法(ディスペンサーロボットで作製する方法)、(2)手動による作製方法、(3)光リソグラフィー法がある。
(1)インクジェット法(ディスペンサーロボットで作製する方法)
インクジェット法は、一定量の微量液体を吐出する装置(ディスペンサーロボット)を用いて、液体の滴下パターンを作製する方法である。ディスペンサーロボットにおいて、液体吐出ノズルを備えたヘッド部分は、コンピュータプログラムによってx−y方向の任意の位置に移動させることができ、型板に向かって液体を吐出することができる。
よって任意の滴下パターンを描画することができる。
まず、高分子フィルムを金属板の上に敷く又は金属板を包み、高分子フィルムを金属板の上に載せる。次に、コンピュータプログラムにしたがって、水、或いは高分子溶液のパターンを描画する。次に、水の氷点以下の温度で凍らせることにより、パターン構造を有する氷の鋳型が得る。
氷のパターンを直接描く場合では、氷に接触する環境を窒素やアルゴン等のガスにして、高分子フィルムを載せた金属板を氷点より低い温度まで冷やしながら、描いた水は直ちに凍結させ氷の鋳型パターンを作製する。
高分子フィルムとして、過フッ化アルコキシフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、テフロンフィルム等を用いる
【0038】
(2)手動による作製方法
手動で作製する方法は、まず、高分子フィルムを金属板の上に敷く又は金属板を包み、高分子フィルムを金属板の上に載せる。
次に、先が鋭いチップで、前記高分子フィルム上に、水、或いは氷のパターンを描く。
次に、氷点以下の温度で凍らせることにより、パターン構造を有する氷の鋳型を得る。
氷のパターンを直接描く場合では、氷に接触する環境を窒素やアルゴン等のガスにして、高分子フィルムを載せた金属板を氷点より低い温度まで冷やしながら、描いた水は直ちに凍結させ氷の鋳型パターンを作製する。
【0039】
(3)光リソグラフィー法
光リソグラフィー法は、まず、上述の高分子からなるフィルムの表面で光反応性のポリマーを塗布する。
次に、フォトマスクを載せて紫外線を照射する。これにより、フォトマスクの透明の部分に光反応性のポリマーがグラフトされて、紫外線が通らない部分の高分子は洗浄により除かれ、光反応性ポリマーのパターンが形成される。
純水をパターン化表面に撒布すると、水は光反応性ポリマーのパターンに従って、パターン構造が形成される。
これを氷点より低い温度下に置くと、パターン構造を有する氷の鋳型が得られる。光反応性のポリマーとして、光反応性のポリエチレングリコールやポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン等の親水性の光反応性ポリマーがある。
【0040】
液滴34の主成分として、水又はt−BuOHを用いる。また、基板31の一面に液滴34の主成分と逆の親和性を有する逆親和性層32を形成する。つまり、液滴34の主成分として水を用いた場合には、逆親和性層32としてテフロンシート等のような撥水性の層を形成し、液滴34の主成分としてt−BuOHを用いた場合には、逆親和性層32として親水性の層を形成する。これにより、液滴34を逆親和性層32に対する接触角が大きくなるように形成でき、断面視半円状又は断面視半楕円形状の液滴を形成できる。平面視形状は円形状又は楕円形状となるが、基板を傾けた状態で液滴を吐射することにより、平面視楕円形状とすることができる。
【0041】
基板31として熱伝導性の高い材料を用いる。熱伝導性の高い材料としては銅等を挙げることができる。また、基板31に冷却機構(図示略)を接続する。例えば、冷却機構により、基板31の温度を−10℃以上−5℃以下とする。これにより、基板31に滴下した液滴34を直ちに凍結配置することができる。
【0042】
(生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2)
次に、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2で、生体吸収性高分子水溶液35eを流し込み、凍結することにより、氷鋳型と生体吸収性高分子を一緒に凍結させる。凍結した構造物を凍結乾燥することにより、氷鋳型と溶媒を除く。
具体的には、まず、生体吸収性高分子水溶液35eを調製し、0℃以下の低温チャンバー内か冷蔵庫内に数時間置き、溶液の温度を0℃以下にする。
冷却温度は、生体吸収性高分子水溶液35eが凍結しなければよく、望ましい温度は0℃から−10℃である。
冷却時間は生体吸収性高分子水溶液35eが十分冷却されればよく、望ましい冷却時間は1時間〜12時間である。
【0043】
次に、凍結配置された複数の液滴34を覆うように生体吸収性高分子水溶液35eを充填する。基板31の外周部に壁状部材33が配置されているので、生体吸収性高分子水溶液35eにより、完全に液滴34を覆うことができる。壁状部材33は、シリコーンゴム等のフレームであり、溶液面の高さを調整できる。
充填の際、生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、液滴34の融解温度未満の範囲に温度制御しすることが好ましい。これにより、生体吸収性高分子水溶液を細部にも充填でき、液滴34の形状を高精度に転写できる。温度条件が上記範囲でない場合には、転写の精度が不十分となる。
充填後、図3(a)に示すように、流し込んだ生体吸収性高分子水溶液35eの上面を平らにし、その上に上記高分子フィルムで覆ったガラスや金属、高分子の板等を配置し、高分子水溶液35eを外部から遮断する。
なお、第一の凍結物である液滴61が融解しないよう、第二の溶液である高分子水溶液35eを加えて凍結させることに留意する。
【0044】
次に、冷凍庫内に配置して、生体吸収性高分子の溶液が凍結する温度より低い温度に設定して、生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する。必要であれば、ドライアイスや液体窒素を用いて、構造物を凍結させることもできる。
図3(b)に示すように、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kは、生体吸収性高分子水溶液に含まれる水が針状や柱状等に凍結された水37kの部分と、凍結された生体吸収性高分子11kとからなる。
【0045】
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出す。
図3(c)は取り出した凍結された生体吸収性高分子水溶液35kの断面図である。液滴34は凍結された生体吸収性高分子水溶液35kの表面に凍結配置されている。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液(凍らせた構造物)35kを減圧乾燥する。
減圧乾燥は真空ポンプに接続した真空容器内で、所定の温度で保持して行う。
減圧乾燥により、凍結された水37kと凍結した液滴34が留去され、生体吸収性高分子のみが残り、除去された部分に孔部11cと凹部21を形成する。
以上の工程により、図1に示す本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1が作成される。
【0046】
なお、更に、本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1の生体吸収性高分子を架橋処理してもよい。
具体的には、減圧乾燥した生体吸収性高分子を3次元網目状に架橋処理する。架橋後は、架橋剤を除去、或いはブロッキングすることにより、空隙のパターン構造をもつ生体吸収性高分子の多孔質材料を得る。
細胞外マトリックスを架橋方法としては、細胞外マトリックスを壊さなければ、下記に示す従来公知の方法を使用できる。例えば、(1)放射線による架橋方法、(2)紫外線照射による架橋(光架橋)方法、(3)加熱による架橋(熱架橋)方法、(4)ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法がある。
【0047】
(1)放射線による架橋方法
放射線による架橋反応は、多孔質材料にガンマ線や電子線を照射することにより可溶反応を行う。高分子化合物にガンマ線や電子線など高エネルギーの放射線を照射すると分子鎖の一部が反応性の高いラジカルに変化し、これらがお互いに反応することによって、分子鎖同士が架橋する。ただし、放射線照射は、分子鎖の分解を引き起こすこともある。よって、架橋反応の効率を高める一方、高分子鎖の分解反応をできるだけ抑制する条件で照射されることが望ましい。架橋効率を高めるために多孔質材料が膨潤しない程度に湿潤状態で照射することが好ましい。1.0〜10.0Mradで照射することができるが、分解反応を抑制するためには1.0〜2.0Mradの照射線量が特に好ましい。
【0048】
(2)紫外線照射による架橋方法
紫外線照射による架橋方法は、多孔質材料を一定距離に置いて、紫外線を一定時間照射することにより架橋する。
具体的には、紫外線照射による架橋は、高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、紫外線照射により架橋処理する。
240nm〜280nmの紫外線で10分間から24時間照射するが、望ましいのは250nm〜260nmの紫外線で30分間から10時間照射する。
熱架橋は高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、0.01Torrから1Torrまでの減圧条件下で100℃から140℃までの高温で48時間から96時間加熱することにより行う。
【0049】
(3)加熱による架橋方法
加熱による架橋方法では、減圧下、多孔質材料を加熱して架橋する。
真空度は1×10−4Torr〜50Torr、好ましくは1×10−3〜10Torrとするのがよい。真空度は低くなると、架橋効果は悪くなるし、多孔質材料は変性しやすい。また、温度は5×10〜2×102℃、好ましくは8×10〜1.5×102℃とするのがよい。温度は低くなると、架橋効果は悪くなり、架橋時間も長くなる。一方、温度は高すぎると、多孔質材料は変性してしまう。しかし、真空度と温度は多孔質材料を変性させず、水分を除去できて架橋できればよい。
【0050】
(4)ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法
溶液状の架橋化剤での架橋処理は高分子水溶液を上記の架橋化剤の溶液に30分間から72時間まで浸漬することにより行う。架橋処理温度は4℃から37℃までである。望ましいのは4℃で1時間から48時間、室温で30分間から24時間架橋処理する。
ガス状の架橋化剤を用いる架橋処理は、上記の架橋化剤をガス状にして用いる。
【0051】
ガス状の架橋化剤を用いる架橋処理は、具体的には、上記のコラーゲン、生体吸収性天然高分子、細胞成長因子、細胞分化制御因子又はこれらの誘導体を架橋するに際し、一定温度で一定濃度の架橋剤又はその水溶液で飽和した架橋剤蒸気の雰囲気下で一定時間架橋を行う。
【0052】
溶液状或いはガス状の架橋化剤としては、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドのようなアルデヒド類や、エチレンプロピレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル類や、ヘキサメチレンジイソシアネート、α−トリジンイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレン1、5−ジイソシアネート、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタン−4、4、4、−トリイソシアネートのようなイソシアネート類や、メタノールやエタノールのようなアルコール類、グルコン酸カルシウム等が挙げられる。好ましく使用される架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドのようなアルデヒド類、特にグルタルアルデヒドである。
【0053】
架橋温度は、多孔質材料が溶解せず、かつ架橋剤の蒸気が形成できる範囲内で選定すればよく、通常、2×10〜5×10℃に設定される。望ましくは37℃である。
架橋時間は、架橋剤の種類や架橋温度にもよるが、上記の多孔質材料の親水性や生体吸収性を阻害せず、かつ生体移植時にこのものが溶解しないような架橋固定化が行われる範囲に設定するのが望ましい。
好ましい架橋時間は1/6〜12時間程度である。多孔質体の種類やサイズにもよるが、より好ましくは4時間である。
【0054】
高分子水溶液を凍結し、凍結乾燥した後、一定温度で一定濃度の架橋化剤水溶液で飽和した架橋化剤の蒸気の雰囲気下で一定時間架橋を行う。架橋温度は通常、20℃〜40℃に設定される。架橋時間は、1時間から12時間である。
なお、ガス状或いは溶液状の架橋化剤を用いる化学的架橋法では、架橋処理の最終段階で、グリシン水溶液等により架橋化剤を失活させる必要がある。
【0055】
未反応のアルデヒド基を不活性化するためには、過剰量のグリシン、エタノールアミン等のアミン類をクエンチ剤として反応させればよい。
特にグリシンが好適である。その濃度は、0.05〜1.0mol/Lで、好ましくは0.05〜.0.1mol/Lある。
【0056】
架橋生成物を洗浄して、未反応架橋剤、架橋剤により生成したポリマー、及びクエンチした場合は未反応クエンチ剤を除去するために、多孔質体の外体積の少なくとも10倍以上の純水で洗浄する。
以上の工程により、図1に示す本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1が作成される。
【0057】
(本発明の第2の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例について説明する。
図4は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の別の一例を示す模式図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は図1(a)のC−C’線における断面図である。
【0058】
図1と図4を比較して分かるように、本発明の第2の実施形態であるパターン化多孔質材料2は、凹部21の代わりに、平面視面積が凹部21よりも小さい凹部22が一面11aに設けられている他は本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料1と同様の構成とされている。
【0059】
なお、凹部22としては、平面視形状が凹部21と異なる凹部が一面11aに設けられていてもよく、平面視形状及び面積のいずれもが異なる凹部を一面11aに設けてもよい。
更に、平面視形状又は/及び面積が互いに異なる凹部を3種以上一面11aに設けてもよい。
【0060】
(本発明の第3の実施形態)
<パターン化多孔質材料>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例について説明する。
図5は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の更に別の一例を示す模式図である。図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のD−D’線における断面図である。
【0061】
図1と図5を比較して分かるように、本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に生体吸収性高分子51が充填され、生体吸収性高分子51に孔部51cが形成されるとともに、細胞成長因子55が添加されている他は本発明の第1の実施形態と同一の構成とされている。
【0062】
凹部21に充填される生体吸収性高分子51は、多孔質材料11に用いる生体吸収性高分子と同一の生体吸収性高分子であっても、異なる生体吸収性高分子であってもよい。
異なる生体吸収性高分子を用いた場合には、生体吸収性高分子51自体が凹部と同様に細胞の選択成長領域とされる。
同一の生体吸収性高分子を用いた場合でも、生理活性物質又は細胞成長因子を添加することにより、細胞の選択成長領域にできる。
細胞成長因子としては、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子を挙げることができる。
【0063】
<パターン化多孔質材料の製造方法>
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の更に別の一例について説明する。
図6、7は、本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法の更に別の一例を示す工程図である。図6(a)は平面図であり、図6(b)は図6(a)のE−E’線における断面図である。
本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、液滴34の代わりに、細胞成長因子55を添加した生体吸収性高分子水溶液からなる液滴61を用いた他は本発明の第1の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法と同様の構成とされており、鋳型基板を作成する工程S1と、生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2と、を有する。
【0064】
(鋳型基板を作成する工程S1)
まず、図6に示すように、基板31の一面に複数の液滴61を凍結配置して鋳型基板42を作成する。液滴61内では、凍結された生体吸収性高分子51kの他に、水分38kも凍結されている。
【0065】
液滴61の主成分は、生体吸収性高分子である。また、基板31の一面に液滴61の主成分と逆の親和性を有する逆親和性層32を形成する。つまり、液滴61の主成分として生体吸収性高分子を用いているので、逆親和性層32としてテフロンシート等のような撥水性の層を形成する。これにより、液滴61を逆親和性層32に対する接触角が大きくなるように形成でき、断面視半円状又は断面視半楕円形状の液滴を形成できる。平面視形状は円形状又は楕円形状となるが、基板を傾けた状態で液滴を吐射することにより、平面視楕円形状とすることができる。
【0066】
(生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程S2)
まず、生体吸収性高分子水溶液35eを調製する。
次に、凍結配置された複数の液滴61を覆うように、冷却した生体吸収性高分子水溶液35eを充填する。基板31の外周部に壁状部材33が配置されている。充填後、図7(a)に示すように、上部にガラスを配置し、生体吸収性高分子水溶液35eを外部から遮断する。
【0067】
次に、冷凍庫内に配置して、生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する。
図7(b)に示すように、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kは、生体吸収性高分子水溶液に含まれる水が針状や柱状等に凍結された水37kの部分と、凍結された生体吸収性高分子11kとからなる。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出す。
図7(c)は取り出した凍結した高分子水溶液35kの断面図である。液滴61は生体吸収性高分子水溶液35kの表面に凍結配置されている。
次に、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを減圧乾燥する。
減圧乾燥は真空ポンプに接続した真空容器内で、所定の温度で保持して行う。
減圧乾燥により、凍結された生体吸収性高分子水溶液35k中の凍結された水37kと凍結した液滴61中の凍結された水38kが除去され、除去された部分に孔部11cと孔部51cを形成する。凹部21には、凝集された生体吸収性高分子51が充填されている。生体吸収性高分子51内には、細胞成長因子55が添加されている。
以上の工程により、図5に示す本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3が作成される。
【0068】
なお、更に、本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3の生体吸収性高分子を架橋処理してもよい。
具体的には、減圧乾燥した生体吸収性高分子を3次元網目状に架橋処理する。このとき、液滴61部分の生体吸収性高分子51も架橋される。
以上の工程により、図5に示す本発明の第3の実施形態であるパターン化多孔質材料3が作成される。
【0069】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部11cが設けられた板状の多孔質材料11の一面11aに、凹部21が設けられている構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。具体的には、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料により、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0070】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一である構成なので、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0071】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性高分子が架橋されている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0072】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、最近傍の凹部21同士の間隔が同一とされている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0073】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が断面視半円状とされている構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0074】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、凹部21が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0075】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料は、前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされている構成なので、凹部の配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0076】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料2は、平面視形状又は/及び面積が前記凹部21と異なる別の凹部22が一面11aに設けられている構成なので、凹部のサイズ、形状、配置がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0077】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子である構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0078】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料1〜3は、前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかである構成なので、凹部がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0079】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に生体吸収性高分子が充填されている構成なので、凹部内の生体吸収性高分子がパターン化された多孔質材料にでき、細胞へのシグナル分子の分布をトップダウン式に制御して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる。
【0080】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、凹部21に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子55が添加されている構成なので、凹部内の生体吸収性高分子が特別な化学組成によりパターン化された多孔質材料にでき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料とすることができる。
【0081】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料3は、細胞成長因子55が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上である構成なので、凹部内の生体吸収性高分子が特別な化学組成によりパターン化された多孔質材料にでき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料とすることができる。
【0082】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31の一面に複数の液滴34、61を凍結配置して、鋳型基板41、42を作成する工程と、前記基板31の外周部に壁状部材33を配置し、凍結配置された複数の液滴34、61を覆うように生体吸収性高分子水溶液35eを充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液35eを凍結する工程と、凍結された生体吸収性高分子水溶液35kを取り出し、減圧乾燥する工程と、減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0083】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有する構成なので、生体吸収性高分子に液滴の情報を転写して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できる安定化されたパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0084】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、前記生体吸収性高分子水溶液35eの融解温度以上、液滴34、61の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液35eを充填する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を損なうことなく、生体吸収性高分子水溶液を導入して、生体吸収性高分子に液滴の情報を転写して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0085】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31として熱伝導性の高い材料を用いる構成なので、液滴を直ちに凍結配置して、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0086】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、液滴34、61の主成分として、水又はt−BuOHを用いる構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0087】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、基板31の一面に液滴34、61の主成分と逆の親和性を有する層を形成する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0088】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料の製造方法は、インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴34、61の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板41、42を作成する構成なので、液滴の大きさ、形状、配置を精密制御でき、細胞の接着・増殖・分化等の機能を三次元パターンに従って制御できるパターン化多孔質材料を容易に製造できる。
【0089】
本発明の実施形態であるパターン化多孔質材料及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0090】
実施例1のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ1を作製した。
【0091】
テフロンシートを銅製の型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子パターンを作製した。ここで、各滴下位置に対して滴下回数は1回とし、滴下位置の間隔は1100μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。
次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。
このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0092】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋反応を行った後、純水で5回洗浄した。
さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。
これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ1を作製した。
【0093】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図8(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ1の電子顕微鏡写真を図8(b)、(c)に示す。図8(a)より氷微粒子のドット状パターンがテフロンシートの表面に形成していることが分かった。パターン化コラーゲンスポンジ1の表面には氷微粒子のパターンを反映した大きな空孔が確認され、大きな空孔の間には小さな空孔が存在することが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例2】
【0094】
実施例2のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ2を作製した。
【0095】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。各滴下位置に対して滴下回数は5回とし、滴下位置の間隔は1500μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0096】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ2を作製した。
【0097】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図9(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ2の実体顕微鏡写真を図9(b)、電子顕微鏡写真を図9(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ2の表面には氷微粒子のパターンを反映した大きな空孔が確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例3】
【0098】
実施例3のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔間の間隔が一定のパターン化コラーゲンスポンジ3を作製した。
【0099】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。各滴下位置に対して滴下回数は10回とし、滴下位置の間隔は1700μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0100】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ3を作製した。得られたパターン化コラーゲンスポンジの電子顕微鏡写真を図10に示す。パターン化コラーゲンスポンジの表面には空孔間の間隔が一定のパターンを有することが分かった。
【0101】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図10(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ3の実体顕微鏡写真を図10(b)、電子顕微鏡写真を図10(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ3の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例4】
【0102】
実施例4のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、大きな空孔と小さな空孔が交互パターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ4を作製した。
【0103】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。ここで、大きな液滴に対する滴下回数は、各滴下位置に対し10回とし、小さな液滴に対する滴下回数は1回とした。滴下間隔は1250μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0104】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ4を作製した。
【0105】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図11(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ4の実体顕微鏡写真を図11(b)、電子顕微鏡写真を図11(c)、(c)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ4の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例5】
【0106】
実施例5のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔が格子パターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ5を作製した。
【0107】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子のパターンを作製した。ここで、大きな液滴に対する滴下回数は、各滴下位置に対し10回とし、小さな液滴に対する滴下回数は1回とした。滴下間隔は、小液滴間を1000μm、大小の液滴間を1500μmとした。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0108】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ5を作製した。
【0109】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図12(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ5の実体顕微鏡写真を図12(b)、電子顕微鏡写真を図12(c)、(d)、e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ5の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例6】
【0110】
実施例6のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、空孔が六角形のパターン状に配置されたパターン化コラーゲンスポンジ6を作製した。
【0111】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いて、テフロン表面に向かって5℃の純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子のパターンを作製した。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0112】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ6を作製した。
【0113】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図13(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ6の電子顕微鏡写真を図13(b)、(c)、(d)、(e)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ6の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例7】
【0114】
実施例7のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、六角形の辺上及び中心に空孔が配置されたパターン化コラーゲンスポンジ7を作製した。
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いてフロン表面に向かって5℃の純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷微粒子を作製した。ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0115】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ7を作製した。
【0116】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図14(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ7の実体顕微鏡写真を図14(b)、電子顕微鏡写真を図14(c)、(d)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ7の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例8】
【0117】
実施例8のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、直交格子パターン状の溝を有するパターン化コラーゲンスポンジ8を作製した。
【0118】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、ディスペンサーロボットテフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷のパターンを作製した。このとき、ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0119】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ8を作製した。
【0120】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図15(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ8の実体顕微鏡写真を図15(b)、電子顕微鏡写真を図15(c)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ8の表面には氷のパターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例9】
【0121】
実施例9のパターン化多孔質材料として、コラーゲン水溶液を、氷微粒子を形成させたテフロン型板の上に載せ、これを凍結乾燥することにより、六角形の溝と中心部に空孔をもつパターンを有するパターン化コラーゲンスポンジ9を作製した。
【0122】
テフロンシートを金属型板の上に載せ、−5℃で冷却した後、28ゲージのシリンジを備えたディスペンサーロボットを用いてフロン表面に向かって純水を滴下することにより、テフロンシートの表面に氷のパターンを作製した。このとき、ノズルの吐出先端とテフロンシートの表面との距離を2.0mmとした。次に、氷微粒子のパターンを形成させたテフロンシートを−30℃で5時間後置いた。これを−1℃の低温チャンバーに移動し、100mm×60mmの長方形にくり抜いた1.0mm厚のシリコーンゴム板のモールドを重ねた。このモールドに、1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を3mL加えた。これを−80℃で24時間凍結した後、減圧下(0.01Torr)で24時間凍結乾燥し、多孔質構造を形成させた。
【0123】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下で、37℃、4時間架橋処理した後、純水で5回洗浄した。さらに、0.1Mのグリシン水溶液で未反応アルデヒド基のブロッキング処理を24時間行った後、純水で20回洗浄した。これを−80℃で4時間凍結し、24時間凍結乾燥することにより、パターン化コラーゲンスポンジ9を作製した。
【0124】
当該氷微粒子パターンの実体顕微鏡写真を図16(a)、得られたパターン化コラーゲンスポンジ9の実体顕微鏡写真を図16(b)、電子顕微鏡写真を図16(c)、(d)に示す。パターン化コラーゲンスポンジ9の表面には氷微粒子パターンの形状を反映した空孔パターンが確認され、大きな空孔の間には小さな空孔があることが分かった。さらに大きな表面空孔の下に内部のバルク空孔があることが確認できた。スポンジ外表面の大きな空孔は内部のバルク空孔と繋がった漏斗状多孔質構造を示した。
【実施例10】
【0125】
実施例10のパターン化多孔質材料として、血管成長因子(VEGF)を直線パターン状に局在化させたパターン化コラーゲンスポンジ10を作製した。
【0126】
1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)に、ヒトVEGFを5μg/mLになるように添加した。ディスペンサーロボットを用い、この溶液を線幅1mm、線間隔2mmとなるよう、ポリフルオロアルコキシフィルム(厚み25μm)で覆った銅製の型板(100mm×80mm×厚み5mm)表面に塗布した。−30℃の冷凍庫で1時間静置した後、−5℃に設定した低温チャンバーに移して1時間静置した。80mm×65mmにくり抜いた厚み1.0mmのシリコーンゴムフレームを載せ、フレームの内側に1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を7.5mL加えた。ガラス板(100mm×80mm×厚み5mm)を載せて密閉し、過剰量の溶液を除いた後、−5℃で1時間冷却した。冷却後、シリコーンゴムフレーム、ガラス板、PFAフィルム被覆銅型板をはずし、−80℃で6時間冷却した。つづいて、約5パスカルで48時間凍結乾燥することにより、多孔質構造を形成させた。
【0127】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下に静置することにより、37℃、4時間架橋反応を行った。反応後の多孔質体を一辺12mmの正方形に切断した。さらに、未反応アルデヒド基をクエンチするため、多孔質体を0.1Mのグリシン水溶液に入れ、4℃で12時間反応させた。純水100mLで15分間洗浄し、この洗浄を10回くりかえした。
【0128】
図17(a)にVEGFを含有するコラーゲン水溶液凍結物の実体顕微鏡写真、(b)に得られたパターン化コラーゲンスポンジ10の実体顕微鏡像、(d)に電子顕微鏡像、(d)に免疫染色像を示す。電子顕微鏡像より、多孔質構造が観察された。免疫染色像より、描画したパターンに従ってVEGFが可視化されたので、VEGFがパターンに従って局在していることが示された。
【実施例11】
【0129】
例11として、神経成長因子(NGF)を直線パターン状に局在化させたコラーゲンスポンジ11を作製した。
【0130】
1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)に、ヒトNGFを50μg/mLになるように添加した。ディスペンサーロボットを用い、この溶液を線幅300μm、線間隔2mmとなるよう、ポリフルオロアルコキシフィルム(厚み25μm)で覆った銅製の型板(100mm×80mm×厚み5mm)表面に塗布した。−30℃の冷凍庫で1時間静置した後、−5℃に設定した低温チャンバーに移して1時間静置した。80mm×65mmにくり抜いた厚み1.0mmのシリコーンゴムフレームを載せ、フレームの内側に1.0wt%のブタI型アテロコラーゲン酸性水溶液(pH=3.0)を7.5mL加えた。ガラス板(100mm×80mm×厚み5mm)を載せて密閉し、過剰量の溶液を除いた後、−5℃で1時間冷却した。冷却後、シリコーンゴムフレーム、ガラス板、PFAフィルム被覆銅型板をはずし、−80℃で6時間冷却した。つづいて、約5パスカルで48時間凍結乾燥することにより、多孔質構造を形成させた。
【0131】
このようにして多孔質構造を形成させたものを25wt%のグルタルアルデヒド水溶液で飽和したグルタルアルデヒド蒸気下に静置することにより、37℃、4時間架橋反応を行った。反応後の多孔質体を1辺12mmの正方形に切断した。さらに、未反応アルデヒド基をクエンチするため、多孔質体を0.1Mのグリシン水溶液に入れ、4℃で12時間反応させた。純水100mLで15分間洗浄し、この洗浄を10回くりかえした。
【0132】
図18(a)にNGFを含有するコラーゲン水溶液凍結物の実体顕微鏡写真、(b)に得られたパターン化コラーゲンスポンジ11の実体顕微鏡像、(c)に電子顕微鏡像、(d)に免疫染色像を示す。電子顕微鏡像より、多孔質構造が観察された。免疫染色像より、描画したパターンに従ってNGFが可視化されたので、NGFがパターンに従って局在していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、パターン化多孔質材料及びその製造方法に関するものであり、細胞の接着・増殖・分化等の機能を空間的に制御することができ、再生臓器産業、再生医療産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0134】
1、2、3…パターン化多孔質材料、11…多孔質材料、11a…一面、11c…孔部、11k…凍結された生体吸収性高分子、21、22…凹部、31…基板、32…液滴形成層、33…壁状部材、34…液滴、35e…生体吸収性高分子水溶液、35k…凍結された生体吸収性高分子水溶液、36…ガラス板、37k、38k…凍結された水、41、42…鋳型基板、51…生体吸収性高分子、51c…孔部、51k…凍結された生体吸収性高分子、55…細胞成長因子、61…液滴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に凹部が設けられていることを特徴とするパターン化多孔質材料。
【請求項2】
前記凹部が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一であることを特徴とする請求項1に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項3】
前記生体吸収性高分子が架橋されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項4】
最近傍の凹部同士の間隔が同一とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項5】
前記凹部が断面視半円状とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項6】
前記凹部が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項7】
前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項8】
平面視形状又は/及び面積が前記凹部と異なる別の凹部が前記一面に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項9】
前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項10】
前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項11】
前記凹部に生体吸収性高分子が充填されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項12】
前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されていることを特徴とする請求項11に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項13】
前記細胞成長因子が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項12に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項14】
基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、
前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、
凍結した生体吸収性高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有することを特徴とするパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項15】
前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有することを特徴とする請求項14に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項16】
前記生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、前記液滴の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液を充填することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項17】
前記基板として熱伝導性の高い材料を用いることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項18】
前記液滴の主成分として、水又はt−BuOHを用いることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項19】
前記基板の一面に前記液滴の主成分と逆の親和性を有する層を形成することを特徴とする請求項18に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項20】
インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板を作成することを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項1】
生体吸収性高分子が3次元網目状に凝集され、互いに連通する複数の孔部が設けられた板状の多孔質材料の一面に凹部が設けられていることを特徴とするパターン化多孔質材料。
【請求項2】
前記凹部が複数設けられており、平面視形状及び面積が同一であることを特徴とする請求項1に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項3】
前記生体吸収性高分子が架橋されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項4】
最近傍の凹部同士の間隔が同一とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項5】
前記凹部が断面視半円状とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項6】
前記凹部が平面視格子状又は平面視六方最密状に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項7】
前記凹部が隣接配置されており、平面視線状とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項8】
平面視形状又は/及び面積が前記凹部と異なる別の凹部が前記一面に設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項9】
前記生体吸収性高分子が生体吸収性合成高分子又は生体吸収性天然高分子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項10】
前記生体吸収性天然高分子がコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、澱粉、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、又はラミニンのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項11】
前記凹部に生体吸収性高分子が充填されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項12】
前記凹部に充填された生体吸収性高分子に生理活性物質又は細胞成長因子が添加されていることを特徴とする請求項11に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項13】
前記細胞成長因子が上皮細胞成長因子(EGF)、血管細胞成長因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血小板成長由来因子(PDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成誘導タンパク質(BMP)、血管細胞成長因子又は神経細胞成長因子のいずれか1種以上であることを特徴とする請求項12に記載のパターン化多孔質材料。
【請求項14】
基板の一面に複数の液滴を凍結配置して、鋳型基板を作成する工程と、
前記基板の外周部に壁状部材を配置し、凍結配置された複数の液滴を覆うように生体吸収性高分子水溶液を充填してから、前記生体吸収性高分子水溶液を凍結する工程と、
凍結した生体吸収性高分子水溶液を取り出し、減圧乾燥する工程と、を有することを特徴とするパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項15】
前記減圧乾燥した生体吸収性高分子を架橋処理する工程と、を有することを特徴とする請求項14に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項16】
前記生体吸収性高分子水溶液の融解温度以上、前記液滴の融解温度未満の範囲に温度制御して、生体吸収性高分子水溶液を充填することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項17】
前記基板として熱伝導性の高い材料を用いることを特徴とする請求項14〜16のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項18】
前記液滴の主成分として、水又はt−BuOHを用いることを特徴とする請求項14〜17のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項19】
前記基板の一面に前記液滴の主成分と逆の親和性を有する層を形成することを特徴とする請求項18に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【請求項20】
インクジェット法、手動による作製方法又は光リソグラフィー法を用いて、液滴の大きさ及び位置を制御して、鋳型基板を作成することを特徴とする請求項14〜19のいずれか1項に記載のパターン化多孔質材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−59287(P2013−59287A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200013(P2011−200013)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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