説明

パターン化導体層の形成方法、回路基板の製造方法および回路基板

【課題】金属微粒子を使用することなく、かつフォトリソグラフィー工程やエッチング工程を削減しながら、微細なパターン化導体層を形成することが可能なパターン化導体層の形成方法を提供する。
【解決手段】パターン化導体層の形成方法は、ポリイミド前駆体樹脂と、金属化合物と、粘度調整剤とを含有する塗布液を、ディスペンサーを用いて絶縁基材表面に塗布し、乾燥して所定のパターンの塗布膜を形成する塗布膜形成工程(S1)と、前記塗布膜中の金属イオンに還元剤を作用させて還元し、前記塗布膜中に粒子状金属を析出させる還元工程(S2)と、前記粒子状金属が析出した前記塗布膜に無電解めっきを施してパターン化導体層となる無電解めっき層を形成する無電解めっき工程(S3)と、熱処理を行って前記塗布膜中の前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化してポリイミド樹脂層を形成するイミド化工程(S4)と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に用いられる絶縁基材に配線となるパターン化導体層を形成するパターン化導体層の形成方法、このパターン化導体層を備えた回路基板の製造方法および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品に使用される回路基板において、パターン化された導体層を形成する方法として、銀などの金属微粒子を含有する導電性金属ペーストを、絶縁基材上に所定のパターンで塗布してパターン化導体層を形成する技術が知られている。導電性金属ペーストを絶縁基材に塗布する方法として、特許文献1には、有機溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物中に、微細な平均粒子径の金属超微粒子を均一に分散してなる導電性金属ペーストをインクジェット方式の印刷技術を利用して基板に塗布する方法が記載されている。特許文献1の方法では、導電性金属ペーストを基板に塗布した後、金属微粒子を焼結させて塗布膜の導通を図るとともに熱硬化性樹脂を硬化させる目的で、150℃〜210℃の温度に加熱する。しかし、特許文献1のように金属微粒子を用いる方法では、金属微粒子の焼結がうまくいかないと、パターン化導体層の導通が図れなくなり、電子部品の電気的特性に悪影響を与える可能性があった。
【0003】
そこで、導電性ペーストを使用しないパターン化導体層の形成方法として、特許文献2には、パラジウムイオン含有化合物とポリイミド前駆体樹脂と低分子有機化合物を含有するポリイミド前駆体樹脂溶液を用いる電子部品用基材の製造方法が記載されている。この特許文献1の方法では、前記ポリイミド前駆体樹脂溶液をバーコーターなどによりポリイミド基材に塗布した後、塗布膜を乾燥させてポリイミド前駆体金属錯体層を形成する。次いで、このポリイミド前駆体金属錯体層に、水素供与体の存在下において紫外線を照射し、めっき下地核を形成した後、無電解めっき処理によりめっき下地金属を形成する。さらに、めっき下地金属層の上に、電気めっきにより電気めっき層を形成した後または形成する前にポリイミド前駆体樹脂を加熱イミド化してポリイミド樹脂層を形成する。
【0004】
【特許文献1】特開2002−324966号公報
【特許文献2】特開2005−154880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載された技術は、金属微粒子を含有する導電性ペーストを使用しないため、金属微粒子の焼結状態に左右されずに導体層を形成できるという利点がある。しかし、特許文献2の技術は、ポリイミド基材の全面にバーコーターなどを用いて塗布する方法(いわゆる「ベタ塗り」)に関するものであるため、絶縁基材に直接微細なパターンでポリイミド前駆体樹脂溶液を塗布することはできない。したがって、特許文献2の技術では、電気めっき後の導体層に対しフォトリソグラフィーとエッチングを行ってパターン形成しなければならず、工程数が多くなってしまうという課題があった。
【0006】
また、最近では、平面(2次元表面)だけでなく、例えば凹凸面や曲面などの従来は対象とされなかった立体的な面(3次元表面)を持つ絶縁基材にもパターン化導体層を形成することが求められている。このような3次元表面へのパターン化導体層の形成は、導体層をベタ塗り方式で形成した後に、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターン形成する特許文献2の技術では困難であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、金属微粒子を使用することなく、かつフォトリソグラフィー工程やエッチング工程を削減しながら、微細なパターン化導体層を形成することが可能なパターン化導体層の形成方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、凹凸面や曲面などの立体的な面を有する絶縁基材に対しても微細なパターン化導体層を形成することが可能なパターン化導体層の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパターン化導体層の形成方法は、
ポリイミド前駆体樹脂と、金属化合物と、粘度調整剤とを含有する塗布液を、ディスペンサーを用いて絶縁基材表面に塗布し、乾燥して所定のパターンの塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜中の金属イオンに還元剤を作用させて還元し、前記塗布膜に粒子状金属を析出させる還元工程と、
前記粒子状金属が析出した前記塗布膜に無電解めっきを施してパターン化導体層となる無電解めっき層を形成する無電解めっき工程と、
熱処理を行って前記塗布膜中の前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化してポリイミド樹脂層を形成するイミド化工程と、
を備えたものである。
【0010】
なお、本発明において、「パターン化導体層」とは、絶縁基材に所定のパターンで形成された無電解めっき層を含む導体層を意味する場合と、絶縁基材に所定のパターンで形成された無電解めっき層および電気めっき層を含む導体層を意味する場合と、の両方の意味で用いる。
【0011】
本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記所定のパターンの塗布膜の線幅が10〜400μmの範囲内であってもよい。
【0012】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記塗布液は、ポリイミド前駆体樹脂、金属化合物及び粘度調整剤の合計の重量部100に対して、前記金属化合物を5〜60重量部の範囲内で含有するものであってもよい。
【0013】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記塗布液の粘度が10〜100,000cpsの範囲内の粘度であってもよい。
【0014】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記金属化合物が、Cu、Ni、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、FeまたはCoから選ばれる金属の塩もしくは有機カルボニル錯体であってもよい。
【0015】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記粘度調整剤が、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルであってもよい。
【0016】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記還元工程では、前記塗布膜を有する前記絶縁基材を0.005〜0.5mol/Lの範囲内の濃度のホウ素化合物の溶液に浸漬してもよい。この場合、前記ホウ素化合物が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはジメチルアミンボランであってもよい。
【0017】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記無電解めっき工程では、pH4〜7の範囲内の次亜燐酸系めっき液またはpH4〜7の範囲内のジメチルアミノボラン系めっき液を用いてもよい。
【0018】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記イミド化工程では、前記塗布膜を有する前記絶縁基材を150〜400℃の範囲内の温度で加熱処理してもよい。
【0019】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記塗布膜形成工程の前に、さらに前記絶縁基材の表面をシランカップリング剤で処理する表面処理工程を備えていてもよく、あるいは、前記塗布膜形成工程の前に、さらに前記絶縁基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程を備えていてもよい。
【0020】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法において、前記無電解めっき工程の後または前記イミド化工程の後に、前記無電解めっき層を核として電気めっきを行って電気めっき層を形成する電気めっき工程を備えていてもよい。
【0021】
本発明の回路基板の製造方法は、
絶縁基材と、該絶縁基材に形成されたパターン化導体層とを備えた回路基板の製造方法であって、
前記パターン化導体層を、上記いずれかのパターン化導体層の形成方法により形成したことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の回路基板は、上記回路基板の製造方法により製造された回路基板である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のパターン化導体層の形成方法では、ディスペンサーを用いて絶縁基材に所定のパターンで塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、該塗布膜中の金属イオンを還元して金属粒子を析出させる構成とした。従って、金属微粒子を用いる従来方法で必要だった焼結工程が不要で、導通不良も発生しにくい。また、パターン化導体層の形成過程で、ディスペンサーを用いて直接所定のパターンに塗布液を塗布することにより、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程を省略することができるという効果を奏する。
【0024】
また、塗布液の塗布にディスペンサーを用いることにより、例えば凹凸面や曲面などの立体的な面に対しても容易にパターン化導体層を形成することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明のパターン化導体層の形成方法を利用した回路基板の製造方法により、少ない工程数で、平板だけでなく立体的な形状の回路基板についても製造できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る回路基板の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1の回路基板の要部断面を拡大して示す説明図である。
【0027】
まず、図1および図2を参照しながら本発明の実施の形態に係る回路基板1について説明する。回路基板1は、絶縁基材3と、該絶縁基材3上で配線となるパターン化導体層5とを備えている。絶縁基材3としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、セラミックス基板などの無機基板や、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂基板を用いることができる。
【0028】
パターン化導体層5は、図2に示すように、絶縁基材3上のポリイミド樹脂層7の上層に形成された無電解めっき層9と、この無電解めっき層9を覆うように形成された電気めっき層11とを有している。なお、本実施の形態では、無電解めっき層9のみ、または無電解めっき層9および電気めっき層11を、それぞれ「パターン化導体層5」とする。なお、パターン化導体層5は、上記各層の間に介在する任意の層を有していてもよい。
【0029】
ポリイミド樹脂層7は、ポリイミド前駆体樹脂であるポリアミック酸を加熱して脱水・環化反応させてイミド化したポリイミド樹脂を主体とするものである。ポリイミド樹脂は、他の合成樹脂例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂に比べて、耐熱性および寸法安定性に優れた性質を有しているため好ましい。本実施の形態のポリイミド樹脂層7は、パターン形成後にポリイミド前駆体をイミド化して形成されたものであり、絶縁基材3との間で高い密着性を有している。このようなポリイミド樹脂層7は、絶縁基材3と無電解めっき層9との間に介在してバインダーの役割を果たしている。
【0030】
無電解めっき層9は、金属被膜であり、金属の種類は問わないが、電気めっき層11を構成する金属とは異なる金属種を用いることが電気めっき層11との間で高い密着性が得られるので好ましい。無電解めっき層9を構成する金属としては、例えばNi、Cu、Cr、Au、Pd、Sn、Rh、Ruなどが好ましく、これらの中でもNi、Cu、Cr、Pdなどが特に好ましい。
【0031】
また、電気めっき層11は、例えばCu、Au、Ni、Sn、Pd、Sn-Cuなどを主体とする金属被膜である。これらの金属の中でも特にCu、Auなどが好ましく挙げられる。
【0032】
[第1の実施の形態]
次に、図3〜図8を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法について説明する。図3は、本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法における主要な工程の概要を示すフロー図である。図4ないし図9は、本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の主要な工程を説明するための説明図である。
【0033】
図3に示すように、本実施の形態のパターン化導体層の形成方法は、主要な工程としてステップS1〜ステップS5までの工程を備えている。
【0034】
ステップS1では、ポリイミド前駆体樹脂と、金属化合物と、粘度調整剤とを含有する塗布液20を、図4に示すようにディスペンサー30を用いて絶縁基材3に所定のパターンで塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する(塗布膜形成工程)。ステップS1の塗布膜形成工程で、絶縁基材3上に塗布された塗布膜40の断面形状を図5に示した。
【0035】
塗布液20に用いられるポリイミド前駆体樹脂としては、ポリイミド樹脂と同じモノマーで成分から得られたポリアミック酸や、分子中に感光性基、例えばエチレン性不飽和炭化水素基を含有するポリアミック酸が用いられる。このようなポリイミド前駆体樹脂は、公知のジアミン化合物と酸無水物とを溶媒の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0036】
ここで、ポリイミド前駆体樹脂の製造に用いられるジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。
【0037】
また、上記以外のジアミン化合物として、例えば、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(4-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4''-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4'-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン等を使用することもできる。
【0038】
ポリイミド前駆体樹脂の製造に用いられる酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物が挙げられる。
また、上記以外の酸無水物として、例えば、2,2',3,3'-、2,3,3',4'-又は3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が好ましく挙げられる。また、3,3'',4,4''-、2,3,3'',4''-又は2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物等を使用することもできる。
【0039】
上記ジアミン化合物および酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。また、上記ジアミン化合物および酸無水物に上記以外のジアミン化合物または酸無水物を併用することもできる。この場合、上記以外のジアミン化合物又は酸無水物の使用割合は90モル%以下、好ましくは50モル%以下とすることができる。ポリイミド前駆体樹脂の製造に際し、ジアミン化合物及び酸無水物の種類や、2種以上のジアミン化合物又は酸無水物を使用する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張性、接着性、ガラス転移点(Tg)等を制御することができる。
【0040】
また、ジアミン化合物と酸無水物との反応は、有機溶媒中で行わせることが好ましい。このような有機溶媒としては特に限定されないが、具体的には、例えばジメチルスルフォキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホルムアミド、フェノール、クレゾール、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、これらは単独で又は混合して用いることができる。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応よって得られるポリイミド前駆体樹脂(ポリアミック酸)溶液の濃度が、5〜30重量%程度の範囲内になるように調整して用いることが好ましい。このように調整した溶液は、金属化合物および粘度調整剤を添加することにより、塗布液20として利用することができる。
【0041】
ポリイミド前駆体樹脂は、イミド化後に熱可塑性のポリイミド樹脂を含むように選定することが好ましい。熱可塑性のポリイミド樹脂を用いることで、イミド化後にポリイミド樹脂層7を絶縁基材3と無電解めっき層9との密着性を高める接着層として機能させることができる。
【0042】
本実施の形態では、ポリアミック酸を含有するポリアミック酸ワニスをポリイミド前駆体樹脂溶液として用いることができる。ポリアミック酸ワニスとしては、例えば新日鐵化学株式会社製の熱可塑性ポリイミドワニスSPI−200N(商品名)、同SPI−300N(商品名)、同SPI−1000G(商品名)、東レ株式会社製のトレニース#3000(商品名)などを挙げることができる。
【0043】
塗布液20に用いられる金属化合物は、還元剤の酸化還元電位より高い酸化還元電位を持つ金属種を含む化合物であれば特に制限無く用いることができる。金属化合物としては、例えばCu、Ni、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、Fe、Co等の金属種を含むものを挙げることができる。金属化合物としては、前記金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属の塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩などを挙げることができる。金属塩は、前記金属がCu、Ni、Pdである場合に好ましく用いられる。金属化合物の好ましい具体例として、Ni(CHCOO)、Cu(CHCOO)、Pd(CHCOO)、NiSO、CuSO、PdSO、NiCO、CuCO、PdCO、NiCl、CuCl、PdCl、NiBr、CuBr、PdBr、Ni(NO)、NiC、Ni(HPO)、Cu(NH)Cl、CuI、Cu(NO)、Pd(NO)、Ni(CHCOCHCOCH)、Cu(CHCOCHCOCH)、Pd(CHCOCHCOCH)などを挙げることができる。
【0044】
また、上記金属と有機カルボニル錯体を形成する有機カルボニル化合物としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸エチル等のβ−ケトカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
【0045】
金属化合物は、ポリイミド前駆体樹脂、金属化合物及び粘度調整剤の合計の重量部100に対して、5〜60重量部の範囲内、好ましくは10〜40重量部の範囲内となるように配合する。この場合、金属化合物が5重量部未満では、還元処理による樹脂表面の金属粒子の析出が少なくなるため、無電解めっき層の厚みのムラが生じることとなり、60重量部を超えると塗布液20に溶解できない金属塩が沈殿することとなるからである。
【0046】
塗布液20に用いられる粘度調整剤は、塗布液20の粘度を調節する目的で配合される。粘度調整剤の添加によって、塗布液20中の金属イオンがポリイミド前駆体樹脂とキレート錯体を形成する代わりに、粘度調整剤と金属イオンがキレート錯体を形成する。このように、粘度調整剤は、ポリイミド前駆体樹脂と金属イオンのキレート錯体形成による塗布液20の粘度上昇又はゲル化を抑制する作用を有する。
【0047】
粘度調整剤としては、金属イオンと反応性の高い(つまり、金属錯体を形成しうる)低分子有機化合物を選定することが好ましい。低分子有機化合物の分子量は50〜300の範囲内が好ましい。このような粘度調整剤の具体例としては、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチルなどを挙げることができる。また、粘度調整剤の添加量は、形成しうるキレート錯体化合物1モルに対して1〜50モルの範囲内、好ましくは2〜20モルの範囲内で添加することが好ましい。
【0048】
塗布液20の粘度は、10〜100,000cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布液20の粘度が10cps未満では、目的とする線幅の制御が困難となるおそれがある。また、塗布液20の粘度が100,000cpsを超えると、ノズルに塗布液20が詰まり、絶縁基材3に塗布できないおそれがある。また、塗布膜40の線幅によって、塗布液20の粘度を調整することができる。例えば、塗布膜40の線幅Lを10〜100μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は10〜100cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布膜40の線幅Lを100〜200μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は100〜500cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布膜40の線幅Lを200〜300μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は500〜50,000cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布膜40の線幅Lを300〜400μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は50,000〜70,000cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布膜40の線幅Lを400〜500μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は70,000〜90,000cpsの範囲内とすることが好ましい。塗布膜40の線幅Lを500〜600μmの範囲内とする場合には、塗布液20の粘度は90,000〜100,000cpsの範囲内とすることが好ましい。
【0049】
なお、塗布液20中には、ポリイミド前駆体樹脂を5〜20重量%、金属化合物を0.1〜20重量%、粘度調整剤を1〜40重量%の濃度範囲内でそれぞれ含有することが好ましい。
【0050】
塗布液20には、上記必須成分以外の任意成分として、例えばレベリング剤、消泡剤、密着性付与剤、架橋剤などを配合することができる。
【0051】
塗布液20は、例えばポリイミド前駆体樹脂、金属化合物、粘度調整剤および上記任意成分を、任意の溶媒例えばピリジン系溶媒、イミダゾール系溶媒などの中で混合することによって調製できる。なお、事前に調製されたポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミック酸ワニス)に、金属化合物および粘度調整剤を添加して混合することにより塗布液20を調製することもできる。
【0052】
ステップS1の塗布膜形成工程において、塗布液20を吐出するディスペンサー30としては、既知の構成のものを利用できる。市販品では、例えばCASTPRO II(商品名;ソニー株式会社製)を使用することができる。ディスペンサー30を使用することで、例えば凹凸面や曲面などの立体的な面に対しても直接所定のパターンで塗布液20を塗布することが可能である。従って、従来の2次元(平面)の回路形成にとどまらず、3次元(立体)の回路形成も可能となる。
【0053】
塗布膜40を形成する際、パターン状の塗布膜40の線幅Lは10〜400μmの範囲内が好ましく、15〜200μmの範囲内がより好ましい。線幅Lは、ディスペンサー30の吐出ノズル30aの径を選択することによって調節することができる。本実施の形態では、前記のように、塗布液20の粘度を10〜100,000cpsの範囲内としたことにより、ディスペンサー30の吐出ノズル30aの目詰まりを防止しながら、所望の線幅で微細なパターンを形成することができる。
【0054】
ステップS1の塗布膜形成工程では、絶縁基材3上に塗布液20を吐出した後、乾燥させて塗布膜40を形成する。乾燥は、絶縁基材3上に吐出された塗布液20を好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜140℃、更に好ましくは100〜120℃の範囲内の温度で3〜10分間程度の時間加熱することにより行うことができる。この場合、加熱温度が150℃を超えると、ポリイミド前駆体樹脂のイミド化が進行し、その後の還元工程における粒子状金属の析出が困難になるので、上記範囲内の温度で乾燥することが好ましい。
【0055】
次に、ステップS2では、塗布膜40を有する絶縁基材3を、還元剤を含む溶液(還元剤溶液)中に浸漬する(還元工程)。これにより、塗布膜40中の金属イオンが還元剤の作用で還元されて金属が粒子状に析出する。図6は、還元工程後の塗布膜40aの状態を示しており、塗布膜40a(好ましくは塗布膜40aの表面)には粒子状金属41が析出している。本工程では、塗布膜40を有する絶縁基材3を還元剤溶液中に浸漬することで、塗布膜40中に還元剤を十分に浸透させることができる。その結果、還元工程における粒子状金属の析出のムラを抑制することができる。
【0056】
ステップS2の還元工程で使用する還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン等のホウ素化合物が好ましい。これらのホウ素化合物は、例えば次亜燐酸ナトリウム、ホルマリン、ヒドラジン類等の溶液(還元剤溶液)にして用いることができる。還元剤溶液中のホウ素化合物の濃度は、例えば0.005〜0.5mol/Lの範囲内が好ましく、0.01〜0.1mol/Lの範囲内がより好ましい。還元剤溶液中のホウ素化合物の濃度が0.005mol/L未満では、塗布膜40中の金属イオンの還元が不十分になることがあり、0.1mol/Lを超えるとホウ素化合物の作用で塗布膜40中のポリイミド前駆体樹脂が溶解してしまうことがある。
【0057】
また、還元工程の処理条件として、塗布膜40が形成された絶縁基材3を、10〜90℃、好ましくは50〜70℃の範囲内の温度の還元剤溶液中に、20秒〜30分、好ましくは30秒〜10分、更に好ましくは1分〜5分の時間で浸漬する。
【0058】
次に、ステップS3では、ステップS2の還元工程後の塗布膜40aに無電解めっきを施す(無電解めっき工程)。無電解めっきは、粒子状金属41が析出した塗布膜40aを有する絶縁基材3を無電解めっき液に浸漬することによって行われる。この無電解めっきにより、図7に示したように、塗布膜40aを覆う無電解めっき層9が形成される。この無電解めっき層9は、後で行われる電気めっきの核となる。
【0059】
ステップS3の無電解めっき工程で用いる無電解めっき液としては、ポリイミド前駆体樹脂への影響を考慮して、中性〜弱酸性の次亜燐酸系のニッケルめっき液や、ホウ素系のニッケルめっき液を選択することが好ましい。次亜燐酸系のニッケルめっき液の市販品として、例えば、トップニコロン(商品名;奥野製薬工業株式会社製)を挙げることができる。また、ホウ素系のニッケルめっき液の市販品として、例えばトップケミアロイB−1(商品名;奥野製薬工業株式会社製)、トップケミアロイ66(商品名;奥野製薬工業株式会社製)を挙げることができる。
【0060】
また、無電解めっき液のpHは4〜7の中性〜弱酸性に調整することが好ましい。この場合、例えば硫酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、酢酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、更に、ホウ酸、炭酸、酢酸、クエン酸等の弱酸と、これらのアルカリ塩を組み合わせて緩衝作用を持たせてもよい。
【0061】
ステップS3の無電解めっき工程の処理温度は、80〜95℃の範囲内とすることができ、好ましくは85〜90℃の範囲内である。また無電解めっき工程の処理温度は、20秒〜10分とすることができ、好ましくは30秒〜5分、より好ましくは1分〜3分である。
【0062】
次に、ステップS4では、塗布膜40aを有する絶縁基材3を熱処理して塗布膜40a中のポリイミド前駆体樹脂をイミド化する(イミド化工程)。熱処理により塗布膜40a中のポリアミック酸を脱水・環化させてイミド化させることによって、図8に示すように絶縁基材3との密着性に優れたポリイミド樹脂層7が形成される。イミド化は、所要の温度まで塗布膜40aを加熱できる熱処理装置を用いて、好ましくは窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことができる。熱処理は、例えば150〜400℃の範囲内の温度条件で1〜60分間行うことができる。熱処理温度が150℃未満ではイミド化が十分に進行せず、また熱処理温度が400℃超では、ポリイミド樹脂の熱分解を起こす恐れがある。
【0063】
次に、ステップS5では、無電解めっき層9を核として電気めっきを施し、電気めっき層11を形成する(電気めっき工程)。電気めっきにより、図9に示すように、無電解めっき層9を覆うように電気めっき層11が形成される。なお、このステップS5の電気めっき工程は任意工程である。電気めっきは、例えば硫酸、硫酸銅、塩酸および光沢剤[例えば、市販品として日本マクダーミット製のマキュスペック(商品名)等]を含有する組成のめっき液中で、絶縁基材3の無電解めっき層9を陰極とし、Cu等の金属を陽極として実施する。電気めっきにおける電流密度は、例えば1〜3.5A/dmの範囲内とすることが好ましい。なお、電気めっきの陽極としては、例えばCu以外にNi、Co等の金属を用いることができる。
【0064】
以上のようにして、絶縁基材3の表面に金属配線となるパターン化導体層5が形成された回路基板1を製造することができる。この回路基板1は、例えば硬質プリント基板、フレキシブルプリント基板、TAB(Tape Automated Bonding)材料やCSP(Chip Size Package)材料、COG(Chip on Glass)材料などの用途に好適に使用できる。
【0065】
以上のように、本実施の形態では、ディスペンサー30を用いて絶縁基材3に所定のパターンで塗布液20を塗布した後、塗布膜40中の金属イオンを還元して粒子状金属41を析出させる構成とした。従って、金属微粒子を用いる従来技術の方法で必要となる焼結工程が不要で、導通不良が発生しにくいという効果を奏する。また、ディスペンサー30を用いて所定のパターンで直接塗布液20を塗布することにより、パターン化導体層5の形成過程で、フォトリソグラフィー工程やエッチング工程を省略することができるという効果を奏する。
また、塗布液20の塗布にディスペンサー30を用いることによって、例えば絶縁基材3の凹凸面や曲面などの立体的な面に対しても容易にパターン化導体層5を形成することができるという効果を奏する。
【0066】
また、本実施の形態のパターン化導体層の形成方法を利用した回路基板の製造方法により、少ない工程数で、平板だけでなく立体的な形状の回路基板1についても製造できるという効果を奏する。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10は、本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の手順の概要を示すフロー図である。本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法は、図10に示すステップS11〜ステップS16の各工程を備えている。本実施の形態では、第1の実施の形態におけるステップS1の塗布膜形成工程に相当するステップS12の塗布膜形成工程の前に、絶縁基材3の表面改質を行うステップS11の表面処理工程を備えている。なお、本実施の形態におけるステップS12〜ステップS16までの工程は、第1の実施の形態のステップS1〜ステップS5までの各工程と同様であるため説明を省略する。
【0068】
本実施の形態において、ステップS11の表面処理工程では、絶縁基材3の材質に応じて、表面改質の内容を選択することが好ましい。絶縁基材3がガラス基板、セラミックス基板などの無機材料により構成されている場合には、絶縁基材3の表面をシランカップリング剤により表面処理することが好ましい。シランカップリング剤による表面処理によって、無機材料の絶縁基材3の表面が疎水化され、塗布液20を塗布した後の液の流動を抑制し、線幅の広がりを抑制できる。また、塗布膜40と絶縁基材3との密着性も向上させることができる。従って、塗布膜40により形成されるパターンの精度を維持するとともに、絶縁基材3からパターン化導体層5が剥離する不良の発生を少なくすることができる。この場合の表面処理は、水との接触角が例えば20〜110°の範囲内となるように行うことが好ましく、より好ましくは30〜100°の範囲内となるように行うことがよい。この場合、水との接触角が20°未満では、塗布液20を塗布した後の液の流動を抑制することが困難となり、また110°超では、塗布膜40と絶縁基材3との密着性が低下する恐れがある。
シランカップリング剤としては、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0069】
また、絶縁基材3がポリイミド基板、PET基板などの合成樹脂材料により構成されている場合、絶縁基材3の表面をプラズマにより表面処理することが好ましい。このプラズマによる表面処理によって、絶縁基材3の表面を粗化させるか、又は表面の化学構造を変化させることができる。これによって、絶縁基材3の表面の濡れ性が向上し、塗布液20との親和性が高まり、該表面上に塗布液20を所定形状で安定的に保持できるようになる。従って、塗布膜40により形成されるパターンの精度を維持することができる。
【0070】
プラズマとしては、例えば大気圧方式のプラズマ処理装置を用い、真空処理室内でアルゴン、ヘリウム、窒素又はこれらの混合ガスのプラズマを生成させる。この際の処理圧力は5000〜200000Paの範囲内、処理温度は10〜40℃の範囲内、高周波(あるいはマイクロ波)出力は50〜400Wの範囲内とすることが好ましい。なお、絶縁基材3の材質がポリイミド樹脂の場合、アルカリ処理によるポリイミドの加水分解も塗布膜40と絶縁基材3との密着性を向上させることができるので有効である。ここで、アルカリとしては、例えばLiOH、KOH、NaOH等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられ、好ましくはKOHまたはNaOHから選ばれる1種以上を用いることができる。
【0071】
以上のように、ステップS11の表面処理工程を行うことにより、塗布液20を塗布した後の液の流動を抑制し、線幅の広がりを抑制できる。また、表面処理によって、塗布膜40と絶縁基材3との密着性も向上させることができる。従って、塗布膜40により形成されるパターンの精度を維持するとともに、絶縁基材3からパターン化導体層5が剥離する不良の発生を少なくすることができる。
本実施の形態のその他の作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0072】
[第3の実施の形態]
次に、図11を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図11は、本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の手順の概要を示すフロー図である。本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法は、図11に示すステップS21〜ステップS26の各工程を備えている。第1の実施の形態(図3)では、ステップS2の還元工程で塗布膜40に粒子状金属41を析出させた後に、ステップS3の無電解めっき工程を実施したが、本実施の形態では、還元工程を繰り返し実施した後無電解めっき工程を実施する。なお、本実施の形態におけるステップS21の塗布膜形成工程は、第1の実施の形態のステップS1の塗布膜形成工程と同様であるため説明を省略する。
【0073】
本実施の形態では、図11に示したように、ステップS21の塗布膜形成工程の後に、ステップS22として、塗布膜40を有する絶縁基材3を、還元剤を含む溶液(還元剤溶液)中に浸漬する(第1の還元工程)。これにより、塗布膜40中の金属イオンが還元剤の作用で還元されて粒子状金属41が析出する。このステップS22の還元工程で使用する還元剤の種類、還元剤の濃度、処理時間、温度等の条件は、第1の実施の形態のステップS2の還元工程と同様であるので説明を省略する。
【0074】
次に、ステップS23では、ステップS22の第1の還元工程後に、粒子状金属41が析出した塗布膜40aを有する絶縁基材3を、金属化合物を含有する溶液(以下、「金属化合物溶液」と記す)に浸漬させる(浸漬工程)。このステップS23の浸漬工程で使用する金属化合物は、還元剤の酸化還元電位より高い酸化還元電位を持つ金属種を含む化合物であれば特に制限無く用いることができる。金属化合物中に含まれる金属としては、例えばCu、Ni、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、Fe、Co等の金属を挙げることができる。これらの金属を含む金属化合物としては、ステップS21で使用する塗布液と同様の金属の塩や有機カルボニル錯体などを用いることができる。金属化合物溶液中に含まれる金属化合物とその金属種は、前記塗布液中に含まれる金属種、金属化合物と同種であっても、異なる種類でもよい。
【0075】
ステップS23の浸漬工程で用いる金属化合物溶液中には、金属化合物を30〜300mM(ミリ・モル/L;以下同様である)の範囲内で含有することが好ましく、50〜100mMの範囲内で含有することがより好ましい。金属化合物の濃度が30mM未満では、金属イオンを塗布膜40a中に含浸させるための時間がかかり過ぎるので好ましくなく、300mM超では、塗布膜40aを構成するポリイミド前駆体樹脂表面が腐食(溶解)して、劣化の原因となる。
【0076】
金属化合物溶液中には、金属化合物のほかに、例えば緩衝液などのpH調整液などの成分を含有してもよい。
【0077】
浸漬工程は、例えば、上記濃度の金属化合物溶液を20〜40℃の範囲内の温度に調整し、そこに絶縁基材3を5分〜5時間程度浸漬させる。
【0078】
次に、ステップS24では、塗布膜40を有する絶縁基材3を、再度還元剤を含む溶液(還元剤溶液)中に浸漬する(第2の還元工程)。この第2の還元工程により、塗布膜40中の金属イオンが還元剤の作用で還元されて、さらに多くの粒子状金属41が析出する。このように粒子状金属41が塗布膜40aを覆うように密に形成されることによって、金属析出層(図示省略)が形成される。この金属析出層は、後で行われるめっき工程の核となる。この第2の還元工程で使用する還元剤の種類、還元剤の濃度、処理時間、温度等の条件は、ステップS22の第1の還元工程と同様である。
【0079】
本実施の形態のパターン化導体層の形成方法では、ステップS23の浸漬工程と、ステップS24の第2の還元工程を、必要に応じて複数回例えば2〜10回程度、好ましくは2〜5回程度繰り返すことができる。これにより、粒子状金属41から構成される金属析出層がより緻密なものとなり、後段のめっき工程において十分な導通を確保することができる。
【0080】
次に、ステップS25では、ステップS24で得られた金属析出層(図示省略)に無電解めっきを施し、前記の金属析出層を覆う無電解めっき層を形成する(無電解めっき工程)。この無電解めっき工程で使用するめっき液の種類、処理時間、温度等の条件は、第1の実施の形態におけるステップS3の無電解めっき工程と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施の形態では、前記金属析出層が形成された絶縁基材3をpH7前後の中性の無電解めっき液に例えば1〜3時間程度の長時間浸漬する方法で無電解めっきを行うことが好ましい。このように中性の無電解めっき液に長時間浸漬を行うことによって、絶縁基材3上の塗布膜40aを構成するポリイミド前駆体樹脂にダメージを与えることなく、電気めっき層と同等の厚みを持つ無電解めっき層を形成することができる。従って、本実施の形態においても、電気めっき工程を省略できる。
【0081】
次に、ステップS26では、塗布膜40aを有する絶縁基材3を熱処理して塗布膜40a中のポリイミド前駆体樹脂をイミド化する(イミド化工程)。このイミド化工程の条件は、第1の実施の形態におけるステップS4のイミド化工程と同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上のように、本実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法では、ポリイミド前駆体樹脂と金属化合物と粘度調整剤を含有する塗布液を絶縁基材3表面にディスペンサー30によって塗布し、乾燥して塗布膜40を形成する塗布膜形成工程と、塗布膜40を有する絶縁基材3を還元剤溶液に浸漬して塗布膜40に粒子状金属41を析出させる第1の還元工程と、粒子状金属41が析出した塗布膜40aを有する絶縁基材3を金属化合物溶液に浸漬する浸漬工程と、浸漬工程後に、塗布膜40aを有する絶縁基材3を再度還元剤溶液に浸漬し、塗布膜40aに粒子状金属41を析出させて金属析出層を形成する第2の還元工程と、金属析出層を有する絶縁基材3に中性無電解めっきを行って無電解めっき層を形成する工程と、熱処理を行って塗布膜40a中のポリイミド前駆体樹脂をイミド化してポリイミド樹脂層7を形成するイミド化工程と、を備えている。これによって、電気めっき工程を必要とせずに、パターン化導体層5を形成できるという効果を奏する。
【0083】
なお、本実施の形態においては、ステップS26のイミド化工程の前(無電解めっき工程の後)またはイミド化工程の後に、電気めっき工程を設けて電気めっき層を形成してもよい。また、ステップS25の無電解めっき工程に替えて、電気めっき工程を実施することも可能である。この場合、電気めっき工程の条件等は、第1の実施の形態におけるステップS5と同様である。さらに、第2の実施の形態と同様に、塗布膜形成工程の前に絶縁基材3の表面改質を行う表面処理工程を設けることもできる。
本実施の形態のその他の作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0084】
次に、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制約を受けるものではない。
【0085】
[参考例]
ポリイミド前駆体ニッケル錯体溶液の調製:
N−メチル−2−ピロリジノン(以下、「NMP」と略す)200mlに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「BPDA」と略す)7.36gと2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と略す)10.26gを加え、室温で4時間攪拌し、ポリイミド前駆体ワニスAを作成した。
【0086】
次に、市販のニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物5.85gをN−メチル−2−ピロリジノン50mlに溶解した溶液を、ポリイミド前駆体ワニスAに添加した。この混合物に、さらに、アセチルアセトン30gを加え、室温で1時間攪拌してポリイミド前駆体ニッケル錯体溶液Bを作成した。この溶液の粘度は、E型粘度計で測定したところ、820cpsであった。
【0087】
[実施例1]
無アルカリガラス(旭硝子株式会社製 AN−100)の試験片10cm×10cm(厚み0.7mm)を50℃の5N 水酸化ナトリウム水溶液により5分間処理した。次に、試験片のガラス基板を純水で洗浄し、乾燥した後、1重量%の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(以下、「γ−APS」と略す)水溶液に浸漬させた。次に、試験片のガラス基板をγ−APS水溶液から取り出した後、乾燥し、150℃、5分間加熱した。このガラス基板上に、ディスペンサー(ソニー株式会社製 CASTPRO II)を使って上記ポリイミド前駆体ニッケル錯体溶液Bを約200μm幅の直線になるように描画した後、130℃で30分間乾燥した。描画、乾燥により形成した塗布膜の厚みは2μmであった。
【0088】
次に、上記ガラス基板を、50℃の100mM水素化ほう素ナトリウム水溶液に3分間浸漬させた。次に、ガラス基板をイオン交換水で洗浄した後、無電解ニッケルめっき浴(奥野製薬工業株式会社製;トップニコロンTOM−S(商品名))に、80℃で30秒間浸漬させることで、電気銅めっきの下地になるニッケル層を形成した。
【0089】
さらに、ガラス基板のニッケル層に対して、電気銅めっき浴中で、3.5A/dmの電流密度で電気めっきを行い、銅膜厚20μmの銅配線を形成した。
【0090】
得られた銅配線形成ガラス基板を、窒素雰囲気中において300℃まで加熱し、300℃で5分間かけてイミド化を行った。その後、窒素雰囲気中で常温まで冷却し、銅配線形成ガラス基板を得た。
【0091】
[実施例2]
東レ・デュポン製のポリイミドフィルム“カプトンEN”(商品名)の試験片10cm×10cm(厚み25μm)を50℃の5N 水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した。次に、試験片のポリイミド基板を1%HCl水溶液に室温で5分間浸漬した後、純水で洗浄し、乾燥した。このポリイミド基板上に、ディスペンサーを使って上記ポリイミド前駆体ニッケル錯体溶液Bを、約200μm幅の直線になるように描画した後、130℃、30分間乾燥した。描画、乾燥により形成した膜の厚みは2μmであった。
【0092】
次に、上記ポリイミド基板を、50℃の50mM水素化ほう素ナトリウム水溶液に3分間浸漬させた。次に、ポリイミド基板をイオン交換水で洗浄した後、無電解ニッケルめっき浴“トップニコロンTOM−S”(商品名;奥野製薬工業株式会社製)に、80℃で30秒浸漬させることで電気銅めっきの下地になるニッケル層を形成した。
【0093】
さらに、ポリイミド基板のニッケル層に対して、電気銅めっき浴中で3.5A/dmの電流密度で電気めっきを行い、銅膜厚20μmの銅配線を形成した。
【0094】
得られた銅配線形成ポリイミド基板を窒素雰囲気中において300℃まで加熱し、300℃で5分間イミド化を行った後、窒素雰囲気中で常温まで冷却し、銅配線形成ポリイミド基板を得た。
【0095】
[実施例3]
無アルカリガラス(旭硝子株式会社製 AN−100)の試験片10cm×10cm(厚み0.7mm)を50℃の5N 水酸化ナトリウム水溶液で5分間処理した。次に、試験片のガラス基板を純水で洗浄し乾燥した後、1重量%のγ−APS水溶液に浸漬させた。この試験片のガラス基板を、γ−APS水溶液から取り出した後、乾燥し、150℃で5分間加熱した。このガラス基板上に、ディスペンサー(ソニー株式会社製;CASTPRO II)を使って上記ポリイミド前駆体ニッケル錯体溶液Bを、約200μm幅の直線に描画した後、130℃で30分間乾燥した。描画、乾燥により形成した膜の厚みは5μmであった。
【0096】
次に、上記ガラス基板を、50℃の100mM水素化ほう素ナトリウム水溶液中に、3分間浸漬させた。次に、ガラス基板をイオン交換水で洗浄後、500mMの酢酸ニッケル水溶液に10分間浸漬させた。次に、ガラス基板を500mMジメチルアミンボラン水溶液に50℃で、3分間浸漬させることで中性無電解銅めっきの下地になるニッケル層を形成した。更に、ニッケル層表面を活性化させるため、塩化パラジウム系アクチベーター[奥野製薬工業株式会社製;ICPアクセラ(商品名)]を用いて処理した。
【0097】
さらに、中性無電解銅めっき浴を用い、浴温度を50℃にした後、上記ニッケル層を有するガラス基板を2時間浸漬させることにより、ニッケル層上に銅膜厚20μmの配線を形成した。なお、この中性無電解銅めっき浴は、室温で、塩化銅(II)(無水)3.36g(0.025mol)、ほう酸3.09g(0.05mol)、EDTA−2Na8.405g(0.025mol)、ジメチルアミンボラン2.945g(0.05mol)を蒸留水500mlに溶解させ、50%水酸化ナトリウムをpH7.0になるように加えることによって調製した。
【0098】
得られた銅配線形成ガラス基板を、窒素雰囲気中において300℃まで加熱し、300℃で5分間かけてイミド化を行った後、窒素雰囲気中で常温まで冷却し、銅配線形成ガラス基板を得た。
【0099】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上記第1の実施の形態および第2の実施の形態では、イミド化工程を無電解めっき工程の後(電気めっき工程の前)に行うようにしたが、電気めっき工程の後にイミド化工程を実施することもできる。
【0100】
また、上記第1の実施の形態および第2の実施の形態において、還元工程の後および無電解めっき工程の後に、それぞれ純水やイオン交換水等による水洗工程(洗浄工程)を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回路基板の構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した回路基板の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の手順の概要を示すフロー図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法における塗布膜形成工程を説明するための説明図である。
【図5】塗布膜形成工程後の塗布膜の状態を説明するための説明図である。
【図6】還元工程後の塗布膜の状態を説明するための説明図である。
【図7】無電解めっき工程後の無電解めっき層の状態を説明するための説明図である。
【図8】イミド化工程後のポリイミド樹脂層の状態を説明するための説明図である。
【図9】電気めっき工程後のパターン化導体層の状態を説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の手順の概要を示すフロー図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るパターン化導体層の形成方法の手順の概要を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0102】
1…回路基板、3…絶縁基材、5…パターン化導体層、7…ポリイミド樹脂層、9…無電解めっき層、11…電気めっき層、20…塗布液、30…ディスペンサー、40,40a…塗布膜、41…粒子状金属。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体樹脂と、金属化合物と、粘度調整剤とを含有する塗布液を、ディスペンサーを用いて絶縁基材表面に塗布し、乾燥して所定のパターンの塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜中の金属イオンに還元剤を作用させて還元し、前記塗布膜に粒子状金属を析出させる還元工程と、
前記粒子状金属が析出した前記塗布膜に無電解めっきを施してパターン化導体層となる無電解めっき層を形成する無電解めっき工程と、
熱処理を行って前記塗布膜中の前記ポリイミド前駆体樹脂をイミド化してポリイミド樹脂層を形成するイミド化工程と、
を備えたことを特徴とするパターン化導体層の形成方法。
【請求項2】
前記所定のパターンの塗布膜の線幅が10〜400μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項3】
前記塗布液は、ポリイミド前駆体樹脂、金属化合物及び粘度調整剤の合計の重量部100に対して、前記金属化合物を5〜60重量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項4】
前記塗布液の粘度が10〜100,000cpsの範囲内の粘度であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項5】
前記金属化合物が、Cu、Ni、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、FeまたはCoから選ばれる金属の塩もしくは有機カルボニル錯体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項6】
前記粘度調整剤が、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項7】
前記還元工程では、前記塗布膜を有する前記絶縁基材を0.005〜0.5mol/Lの範囲内の濃度のホウ素化合物の溶液に浸漬することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項8】
前記ホウ素化合物が、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムまたはジメチルアミンボランであることを特徴とする請求項7に記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項9】
前記無電解めっき工程では、pH4〜7の範囲内の次亜燐酸系めっき液またはpH4〜7の範囲内のジメチルアミノボラン系めっき液を用いることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項10】
前記イミド化工程では、前記塗布膜を有する前記絶縁基材を150〜400℃の範囲内の温度で加熱処理することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項11】
前記塗布膜形成工程の前に、さらに前記絶縁基材の表面をシランカップリング剤で処理する表面処理工程を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項12】
前記塗布膜形成工程の前に、さらに前記絶縁基材の表面をプラズマで処理する表面処理工程を備えたことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項13】
前記無電解めっき工程の後または前記イミド化工程の後に、前記無電解めっき層を核として電気めっきを行って電気めっき層を形成する電気めっき工程を備えたことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法。
【請求項14】
絶縁基材と、該絶縁基材に形成されたパターン化導体層とを備えた回路基板の製造方法であって、
前記パターン化導体層を、請求項1ないし13のいずれかに記載のパターン化導体層の形成方法により形成したことを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載された回路基板の製造方法により製造されたことを特徴とする回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−258293(P2008−258293A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97048(P2007−97048)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】