説明

パターン化導電性薄膜を形成するための低温法およびそれに由来するパターン化物品

パターン化薄膜を形成する方法は、多孔性メンブレンと、複数の固体成分および該固体成分が懸濁せずに凝集するのを防ぐための少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液とを供給する工程を含む。溶液は、メンブレンの表面に一定量供給される。次に、溶液は、メンブレンを介した濾過によって除去されるが、ここで、該メンブレン上に、複数の主に離間したパターン化領域を含むパターン化膜被覆メンブレンが形成される。一つの態様において、本方法はさらに、メンブレンの選択された部分を液体が通過することを阻止して、一定量供給工程の前に、複数の開放メンブレン部分および複数の閉塞メンブレン部分とを形成する工程を含む。一定量供給工程には、溶液をインクジェットプリントする工程が含まれる。パターン化ナノチューブ含有膜を表面に有する物品は、基板と、該基板の上に配置されたパターン化ナノチューブ含有膜とを含む。膜は、複数の主に離間したパターン化領域を含み、該膜中のナノチューブは、該パターン化領域の長手方向に平行に選択的に位置決めされている。この選択的な位置決めは、一般に、パターン化領域の縁部に向かって最も顕著である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、光透過性とすることもできるパターン化導電性薄膜、およびそのようなパターン化層を含む物品を作り出す低温法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
実質的に光透過性の導電性膜に関する多数の出願が存在する。本発明者らのうちの1人であるRinzlerらに対する米国出願公開第20040197546号(‘546号)(特許文献1)は、「Transparent electrodes from single wall carbon nanotubes」というタイトルである。‘546号は、実質的に光透過性で導電性の単層ナノチューブ(single wall nanotube;SWNT)膜を形成する低温法を開示している。
【0003】
‘546号は、安定剤(例えば、界面活性剤)によって一般に補助される、溶液中でのSWNTの均一な懸濁、およびその後の、大部分のSWNTが通過するには小さすぎる高密度の孔を持つ多孔性濾過メンブレンの表面へのナノチューブの堆積を開示している。液体が濾過されると、一般に、メンブレンの表面にありかつそれに平行になっているSWNTを有する相互接続された均一な層として、ナノチューブ膜が形成される。
【0004】
一つの態様において、溶液は真空濾過され、残りのSWNT膜がフィルタメンブレン表面に形成される。残りの表面安定剤は全て後で洗い流すことができ、膜は、その後、乾燥させることができる。重要なことに、ナノチューブを懸濁するのに用いた安定剤の洗い流しによって、該ナノチューブの、SWNT膜の本体全体にわたる互いとの密着する(強化)が実現できる。このようにして形成されたナノチューブ膜は、一方の面が濾過メンブレンに密着しており、他方の面は被覆されていない。膜を使用するためには、一般に、該膜を所望の基板へ転写し、メンブレンを除去することが必要である。これは、まず、ナノチューブ膜の自由面を、例えば圧力によってクリーンな所望の基板に接着し、その後、濾過メンブレンが溶解可能な溶媒中で該メンブレンを溶解させることによって遂行される。
【0005】
従って、メンブレンの材料は注意深く選択しなければならない。メンブレンは、ナノチューブが当初懸濁されている液体にに対して耐用性でなければならないが、該メンブレンは、理想的にはSWNT膜が付着するべき基板と化学的に反応しない、除去されるべき溶媒中で、溶解性でなければならない。メンブレンのこの溶媒中での溶解により、基板の表面に付着したナノチューブ膜が残る。‘546号のプロセスは、以下であるかぎり、ナノチューブ以外の材料の堆積にも拡大適用することができる:1)材料の成分を溶液中に均一に懸濁することができ;2)液体が、選択された濾過メンブレン材料とは反応しないがそれを通過させ;3)該材料の成分が、膜の形態で該メンブレン表面に保持され;かつ4)所望の膜または該膜が転写されるべき基板を溶解しない溶媒中で該濾過メンブレンを溶解することができる。例えば、このようにして、本方法は、ナノ粒子およびナノワイヤの薄膜も製造することができる。
【0006】
【特許文献1】米国出願公開第20040197546号「Transparent electrodes from single wall carbon nanotubes」
【発明の開示】
【0007】
概要
パターン化薄膜を形成する方法は、多孔性メンブレンと、複数の固体成分および該固体成分が懸濁せずに凝集するのを防ぐための少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液とを供給する工程を含む。溶液は、メンブレンの表面に一定量供給(dispense)される。その後、溶液は、メンブレンを介した濾過によって除去されるが、ここで該メンブレン上に、複数の主に離間したパターン化領域を含むパターン化膜被覆メンブレンが形成される。一つの態様において、本方法はさらに、メンブレンの選択された部分を液体が通過することを阻止して、一定量供給工程の前に、複数の開放メンブレン部分および複数の閉塞メンブレン部分とを形成する工程を含む。本発明の別の態様において、一定量供給工程は、溶液をインクジェットプリントする工程を含む。
【0008】
固体成分は、単層カーボンナノチューブ(single walled carbon nanotube;SWNT)等のナノワイヤを含むことができる。本発明の好ましい態様において、表面安定剤は界面活性剤であり、上記方法はさらに、濾過工程の後にSWNT上に残っている界面活性剤を除去するために、パターン化膜を溶媒で濯ぐ工程を含み、ここで、濯ぎ工程の後、該SWNTは互いに密着する。固体成分は、>99重量%の単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含むことができる。本方法はさらに、パターン化膜被覆メンブレンを処理すべき表面上に配置し、その後、多孔性メンブレンを選択的に溶解して、該処理すべき表面上に該パターン化膜を残す工程を含むことができる。処理すべき表面は、半導体表面を含む様々な固体表面を含むことができる。パターン化領域は、複数の相互貫入(interpenetrated)SWNTを含むことができ、ここで、100nm厚の場合のパターン化領域においては、100オーム/平方未満のシート抵抗および0.4〜5μmの波長範囲にわたる少なくとも30%の光透過(optical transmission)とが提供される。
【0009】
パターン化ナノチューブ含有膜をその表面に有する物品は、基板と、該基板の上に配置されたパターン化ナノチューブ含有膜とを含む。膜は、複数の主に離間したパターン化領域を含み、ここで、該膜中のナノチューブは、該パターン化領域の長手方向に平行に選択的に位置決めされている。この選択的な位置決めは、一般に、パターン化領域の縁部に向かって最も顕著である。
【0010】
基板は、半導体を含むことができる。パターン化領域は、100nm厚の場合、100オーム/平方未満の室温シート抵抗、および0.4〜5μmの波長範囲にわたる少なくとも30%の光透過を提供することができる。パターン化領域は、>99重量%の単層カーボンナノチューブ(SWNT)とすることができる。
【0011】
詳細な説明
パターン化薄膜を形成する方法は、多孔性メンブレンと、複数の固体成分および該固体成分が懸濁せずに凝集するのを防ぐための少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液とを供給する工程を含む。溶液は、メンブレンの表面に一定量供給される。その後、溶液は、メンブレンを介した濾過によって除去され、該メンブレン上に、複数の主に離間したパターン化領域を含むパターン化膜被覆メンブレンが形成される。
【0012】
本発明の第1の態様において、直接書込みインクジェット/濾過プロセスを用いて、界面活性剤が懸濁されたナノスケール成分からミクロンスケールの加工寸法(feature size)パターンを作製するための低温(例えば、室温)プロセスについて説明する。インクは、安定剤(例えば、界面活性剤)を活用して、水性懸濁液中のナノチューブ(または、他の適当な材料)を含む。インクは、インクジェットプリンタまたは同様の一定量供給機器のリザーバ内に配置される。インクジェットプリンタは、ノンインパクトプリンティングと呼ばれる技術を用いる。水性懸濁液は、熱式および圧電式両方の、連続またはドロップオンデマンド(drop on demand;DOD)インクジェットプリンティングに適合する。低温において曇り点を有するこれらの界面活性剤の場合、圧電式液滴形成が好ましい可能性がある。パターンを書くために、該パターンを書き込む基板が好ましくは‘546号に記載されているのと同じ種類などの多孔性濾過メンブレンであることを除いて、インク液滴は、一般的なインクジェットプリント様式でプリントされる。
【0013】
典型的な濾過メンブレンは、100nmオーダーの孔を保有する混合セルロースエステル(mixed-cellulose ester;MCE)メンブレン(例えば、Millipore VCWP)である。この濾過メンブレンは、少なくとも3つの機能を果たす。第一に、その高い多孔性(および、水によるその湿潤性)のため、インクの液状部が濾過メンブレンの本体内に吸収されて固体(例えば、ナノチューブ)が残り、所望の書込みパターンで、すなわち、物理的に連続したドットで、メンブレンの表面に薄層が形成される。第二に、パターンが一旦書き込まれたら、濾過メンブレンを真空または圧力濾過装置内に配置することができ、液滴中の固体を、該固体およびメンブレンを通して安定剤を除去するための適切な溶媒を通過させることによって洗い流すことができる。安定剤の洗い流しによって、ナノチューブ等の膜固体が互いに直接密着でき、したがってパターン化膜が強化される。固体粒子が導電性である(またはそうなることができる)場合、この密着は、固体成分間の接触力により、パターン化固体を介した電気的導通および機械的完全性を実現できる。最後に、パターン化されて強化された膜を、(圧力によって)該膜の自由面を基板につけることにより、所望の基板に転写することができ、その後、濾過メンブレンは、MCEメンブレン用のアセトンなど、該メンブレンが溶解可能な溶媒によって溶解されて除かれる。
【0014】
典型的なインクジェットDOD液滴サイズは、20ピコリットルであり、その直径は約34μmである。(均一であると見なした場合)20nmの厚さを有する34μmナノチューブディスクを形成するには、約7.1×10-9mgのナノチューブを要する。このような厚さを得るのに必要なインク中のナノチューブ濃度は、約0.35mg/mlである。この濃度は、様々な界面活性剤を用いて容易に実現できる(例えば、W. Wenseleers et al. Advanced Functional Materials, Vol. 14, p. 1105(2004)を参照)。1ピコリットル程度の小さい液滴は、(書込み加工寸法に翻訳して)13μm近いドットサイズの可能性を示すことが報告されている。固体の濃度が増加しない(または多数の滴が重層されない)限り、滴サイズが小さいほど、より薄い堆積膜がもたらされる。
【0015】
一般にインクジェット滴は非常に小さいため、ナノチューブを使用する場合、高濃度のナノチューブをインク中に懸濁させなければならない。これには、懸濁が非常に良好であることが必要であり、そうでない場合には、凝集したナノチューブが、非常に小さなインクジェットオリフィスを塞ぐと考えられる。そしてこれには、高濃度の界面活性剤が必要であり、後の洗浄工程中に界面活性剤が除去されることが非常に重要になる。そうでない場合、界面活性剤は、所望の高導電性のパターン化膜の獲得を妨げることになる。
【0016】
上述したように、パターンがメンブレン上に書き込まれ、一般にその後、パターン化ナノチューブ膜が別の基板に転写されるため、本発明の核心は一般に界面活性剤を洗い流す能力に関係しているので、インクジェットベースのシステム以外の堆積システムを本発明と共に用いることができる。例えば、ナノチューブ懸濁液を、単にプロットされたパターンで液体の跡を残すプロッタペン等のデバイスを用いてメンブレン上に堆積させることができる。
【0017】
本発明と共に用いることのできる別の例示的な堆積システムタイプは、Larsonらによる論文(B.J.Larson, S. D. Gillmor, and M. G. Lagally. Controlled deposition of picoliter amounts of fluid using an ultrasonically driven micropipette. Review of Scientific Instruments 75, 832-836(2004))に開示されている、流体を一定量供給するための指向性超音波振動に基づくシステムである。このようなデバイスは、例えば、Madison, WIのSonoPlot LLCによって提供される。ポンピング動作は、高度に制御可能であり、また、非常に鋭い先端部を有するディスペンサと結合した場合、流体のピコリットル液滴の作製につながる可能性がある。それらの液滴は、表面に一定量供給した場合、直径1ミクロン程の小さなスポットとなる。
【0018】
本発明の第2の態様において、メンブレン閉塞を用いた濾過プロセスを介して膜内にミクロンスケールの加工寸法パターンを作製するための低温プロセスについて説明する。このプロセスは、溶液が孔を通じて流れないように膜形成プロセスの前に多孔性濾過メンブレンの選択された領域が塞がれていることを除いて、背景の項で言及した‘546号に開示されているプロセスに基づいている。濾過中、ナノチューブは、閉塞領域に隣接する多孔性領域を除いて、メンブレンの選択された領域上に蓄積しない。
【0019】
本発明のどちらの態様においても、形成されたSWNT膜は通常、個々の領域内で高度に相互接続されている。加えて、両態様において、膜は、通常メンブレン上に広がりかつそれと平行になっているSWNTを含む。
【0020】
所望のパターンを有する膜の製造は、最終的な膜において所望されるパターンと逆のパターンで濾過メンブレンの多孔性を閉塞又は妨害することにより、実現することができる。例えば、(膜形成プロセス中に)ナノチューブが懸濁される液体中で不溶性であるが、メンブレンの溶解中またはその後に、ナノチューブまたはパターン化ナノチューブ膜が転写される基板に影響を及ぼすことなく化学的攻撃によって溶解または破壊することのできる物質を、該メンブレンの孔に充填することによって、該メンブレンの孔を局所的に妨害することができる。
【0021】
ミクロンスケールの特徴は、フォトリソグラフィにより適当な基板上で熱可塑性ポリマーまたはワックス層に逆パターンを形成し、その後、前述のようにメンブレンへ転写することによって、得ることができる。または、逆パターンを有するポリマースタンプを製造してもよく、また、該パターンをスタンプすることによって、孔閉塞媒体をメンブレンに転写することができる。孔閉塞媒体はロウであり得、これは、転写のための熱を必要とするが、または、UV硬化エポキシ樹脂であってもよい。このようなコンタクトプリンティングによって、サブミクロン加工寸法を得ることができる。メンブレンの多孔性により、流体がその本体内に運ばれ、該メンブレンパターンにおける転写された線幅が拡大する。最終的なナノチューブ膜における所望の加工寸法のために、メンブレンに転写される孔閉塞媒体の量の注意深い制御によって、このことを考慮しなければならない。
【0022】
膜を形成する際に濾過されるべき成分の最長線寸法は、作製することのできる特徴間の微細間隔を制限する。例えば、2ミクロンのライン間隔で隣接するラインが所望されると仮定する。メンブレンは、両側の多孔性ライン間に、2ミクロン幅の閉塞領域を有さなければならない。しかし、懸濁物中のかなりの割合のナノチューブ束が5ミクロン長である場合、濾過中に、そのような束が、両端部が両側のクリアな領域に吸い込まれた状態で閉塞領域に横たわる可能性が大きい。ライン間の電気的絶縁が必要な場合、この束は、電気的短絡となる。成分が微細になればなるほど、より微細な加工寸法膜が可能になる。
【0023】
本発明によるSWNT膜は、少なくとも1つのドーパントを含むことができる。例えば、ドーパントは、ハロゲン類およびアルカリ金属類からなる群より選択することができる。
【0024】
製造が簡単でありかつ高温処理の必要性がないため、本発明は、広範なデバイスに電気接触する最良の透明電極を実現できる可能性が高い。例えば、本発明による光透過性および導電性を有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)膜は、100nm厚の膜の場合、200オーム/平方未満のシート抵抗を実現でき、また、0.4〜5μmの波長範囲にわたる少なくとも30%の光透過を提供できる。
【0025】
本発明を用いて、組成物、およびそれから形成された固有の構造局面を有する物品が得られる。また、閉塞孔による方法に関して上述した第1の方法の態様に関して、孔が閉塞した領域から孔が閉塞していない領域へとナノチューブを流し去る濾過処理の際の流体力は、該ナノチューブを、メンブレンまたは他の多孔性支持体の閉塞領域と非閉塞領域の境界線に平行に位置するよう選択的に位置決めする傾向もある。多くの場合、パターニングの目的は電極を画定することであるため、このことは、作製された電極(または、他の構造物)中のナノチューブが、(特に、該電極の縁部に向けて)該電極の長手方向に平行な位置決めの手段を獲得することを意味する。位置決めされたナノチューブは、該位置決めの方向に沿って導電性が高まることが分かっており、また、記載した本発明のプロセスは、電極の長手方向に沿った位置決めを促進するため、電極の導電性は、最も必要とされる方向に沿って高められる。対照的に、ナノチューブ膜の標準的なフォトリソグラフィまたは電子ビームリソグラフィおよびエッチング等のパターン化ナノチューブ膜を形成する代替的方法では、画定された電極の長手方向に沿った選択的位置決めは提供されない。
【0026】
>200℃などの高温処理に耐えられない一つまたは複数の材料を有するデバイスに、高い導電性および高い光透過性を与えることができる。本発明から恩典を得ることが期待される製品には、ラップトップモニタ、パターン化フォトレジスタおよびパターン化電気光学素子等のディスプレイデバイス用にパターニングする透明薄膜トランジスタまたは透明電極が含まれる。
【0027】
実施例
以下に記載した実施例は、単に例示を目的として記載されており、本発明の範囲を定義するものでは決してないことを理解すべきである。
【0028】
原理実験の立証において、最初に、所望のパターンの逆を、固体インクプリンタ(Xerox Phaser 8400)を用いて、図1に示すように、透明シート(Phaser 840/850 Standard Transparency Film)上にプリントした。透明シートは、熱可塑性インクに対応する、紙よりも均一な基板を実現できるため、紙に優っている。そして、プリント面を下にして透明シートを多孔性メンブレン上に置いた状態で、使用する濾過メンブレン(Milipore, VCWP)を(平坦な多孔質フリットを有する)真空濾過ベース上に配置した。真空濾過を始めて、透明シートをメンブレンに密着させた。インクを透明シートからメンブレンに転写するために、溶解に十分な、または、熱可塑性インクが該メンブレンの孔内に吸い込まれる軟化点に達するのに十分な、熱を加えた。そのような熱を加えるための有利な方法は、一般的な濾過の場合のように、透明膜の上面に濾過リザーバを配置した後、該リザーバに、コポリマーインクの溶融温度に加熱された水を充填することである。水は非多孔性透明膜を通過できない。
【0029】
この工程に続いて、水および濾過リザーバが除去され、透明膜をメンブレンから剥がした。冷却時に再凝固するインクはメンブレンの表面孔に浸透し、透明膜上にプリントされたパターンの複製における孔を閉塞し(図2)、複数の開放メンブレン部分と複数の閉塞メンブレン部分とを有するメンブレンを形成することになる。
【0030】
次に、濾過リザーバを元に戻し、ナノチューブ懸濁液を、ナノチューブ膜形成の場合に前述したように、複数の開放メンブレン部分と複数の閉塞メンブレン部分とを有するメンブレンを用いて濾過した(図3)。ナノチューブ層は、複数の開放メンブレン部分によって画定されたパターンで、メンブレン上にのみ形成された。次いで、パターン化膜を水で濡らし、ナノチューブ膜側を基板(この場合、GaAs(半導体)ウェーハ)に対向させて、該基板上に置いた。そして、基板およびメンブレンを2つの平坦な金属プレートの間で吸収紙層の間に挟み、ばねクランプによって圧力を加えた。メンブレンが(オーブン内で80℃に加熱されることによって急速に)ほぼ乾燥されたら、基板およびメンブレンを、アセトン蒸気槽内の凝縮アセトン蒸気にさらした(該基板は、該槽内の冷却器上に置いた)。凝縮アセトンはメンブレンを溶解させて基板から洗い流したが、ナノチューブ膜は基板の背後に残った(ナノチューブは、アセトンには溶けない)。パターン化膜の所望の基板上へのこのような転写時に、メンブレンの孔内の熱可塑性インクも転写される。このインクが、デバイス機能に対して有害である場合には、該インクを適当な溶媒で溶解除去することができる。図4は、ナノチューブ膜の相互嵌合(interdigitated)部分の拡大図を示す。この縮尺では、これらのフィンガは、約100ミクロン幅である。底部電極を貫通するスクラッチは、製造後に行った。
【0031】
本発明を、本発明の好ましい具体的な態様と共に説明してきたが、上記の説明、ならびにそれに続く実施例は、例示することを意図しており、また、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の他の態様、効果および変更は、本発明に関連する当業者には、はっきりと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明ならびにその特徴および利点のより完全な理解は、添付の図面と共に詳細な説明を参照したときに達成されるであろう。
【図1】メンブレンへの転写前の透明シート(左側)上の逆パターンと、該パターンが転写されるメンブレン(右側)とを示す図である。パターンは、相互嵌合電極を有する2つの隣接するナノチューブシートを生じる。(このイメージでは見づらい)相互嵌合パターンは、黒四角内に位置している。この縮尺比では、メンブレンの直径は25mmである。
【図2】メンブレンに転写された逆パターンを示す図である。
【図3】メンブレン上に堆積したナノチューブ膜を示す図である。右側:膜の中央の相互嵌合部分の顕微鏡写真。黒い領域内には、ナノチューブの堆積は見られない。右側の縮尺比では、ナノチューブのフィンガ幅は約100ミクロンである。メンブレン上の相互嵌合ナノチューブ膜間の電気抵抗の測定は、両側に電気的接触がないことを示した。
【図4】ナノチューブ膜の相互嵌合部分の拡大図を示す。この縮尺比では、フィンガは約100ミクロン幅である。底部電極を貫通するスクラッチは、製造後に行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性メンブレンと、複数の固体成分および該固体成分が懸濁せずに凝集するのを防ぐための少なくとも1つの表面安定剤を含む溶液とを供給する工程;
該溶液を、該メンブレンの表面に一定量供給する(dispense)工程;ならびに
該メンブレンを通じた濾過によって該溶液を除去する工程であって、複数の主に離間したパターン化領域をその表面に含む、パターン化膜被覆メンブレンが形成される工程
を含む、パターン化薄膜を形成する方法。
【請求項2】
上記メンブレンの選択された部分を液体が通過することを阻止して、一定量供給工程の前に、複数の開放メンブレン部分および複数の閉塞メンブレン部分とを形成する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記一定量供給工程が、上記溶液をインクジェットプリントする工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記固体成分が、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
上記表面安定剤が界面活性剤であり、方法が、上記濾過工程の後に、上記SWNT上に残っている界面活性剤を除去するための溶媒で上記パターン化膜を濯ぐ工程をさらに含み、かつ該濯ぎ工程の後に該SWNTが互いに密着する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
上記固体成分が、>99重量%の上記単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
上記パターン化膜被覆メンブレンを処理すべき表面に配置した後、上記多孔性メンブレンを選択的に溶解して、上記パターン化膜を該処理すべき表面上に残す工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
上記処理すべき表面が半導体表面を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
上記パターン化領域が、複数の相互貫入(interpenetrated)SWNTを含み、該パターン化領域が100nm厚の場合に、100オーム/平方未満のシート抵抗および0.4〜5μmの波長範囲にわたる少なくとも30%の光透過(optical transmission)とを提供する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
基板、および
複数の主に離間したパターン化領域を含む該基板上に配置されたパターン化ナノチューブ含有膜であって、該膜内のナノチューブが、該パターン化領域の長手方向に平行に選択的に位置決めされている、パターン化ナノチューブ含有膜
を含む、パターン化ナノチューブ含有膜を表面に有する物品。
【請求項11】
上記選択的な位置決めが、上記パターン化領域の縁部に向かって最も顕著である、請求項10記載の物品。
【請求項12】
上記基板が半導体を含む、請求項10記載の物品。
【請求項13】
上記パターン化領域が、100nm厚の場合に、100オーム/平方未満のシート抵抗を提供する、請求項10記載の物品。
【請求項14】
上記パターン化領域が、0.4〜5μmの波長範囲にわたる少なくとも30%の光透過を提供する、請求項13記載の物品。
【請求項15】
上記パターン化領域が、>99重量%の単層カーボンナノチューブ(SWNT)である、請求項10記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−509358(P2009−509358A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532361(P2008−532361)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/036723
【国際公開番号】WO2007/035838
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】