説明

パターン形成方法、電子機器の製造方法および電子機器

【課題】レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現する新規な技術を提供する。
【解決手段】下地上にレジスト膜を形成し、その上から選択的に露光および現像を行い、その後メッキ処理またはウエットエッチング処理することを含んでなるパターン形成方法において、メッキ処理またはウエットエッチング処理前に、下地表面を水溶性ポリマーおよび水を少なくとも含んでなる表面処理剤を用いて処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッド、半導体装置等の多層配線装置、マスク等の電子機器の製造プロセスにおいて、メッキやウエットエッチングを行う際に利用できる新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッド、多層配線装置、マスク等の製造プロセスにおいては、下地の表面にレジストを用いてパターニングを行い、その部分をメッキ処理またはウエットエッチングする場合に、レジストの表面改質および下地の表面の汚染除去による被処理表面の濡れ性向上を目的としてO2プラズマ、オゾン、UV等を利用したアッシング等の処理がなされている。この事前処理により、メッキやウエットエッチングにおいてメッキの異常成長やエッチング異常の原因となる、処理液のはじきや処理表面での気泡発生を引き起こすことなく、所望の加工が実現される(引用文献1〜3参照)。
【0003】
しかしながら、上記の従来技術を用いた場合、レジスト表面の濡れ性は向上する一方、レジスト自体に必ず酸化や感光が生じるため、レジストの硬化やヒビ割れ、または開口幅が拡大するといった問題が起こる。また、レジストの開口部においては、下地の酸化が起こり、微細パターンの電解メッキの際の通電不良によると思われるめっき速度の低下やめっき不良の問題が生じる。ウエットエッチングにおいては、上記アッシングによるレジストのヒビ割れや下地の酸化等により、エッチングによるパターン形成が不良になる場合があるという問題も生じる。
【0004】
このため、上記問題を抑制すべく、界面活性剤を含有した処理液にてレジスト表面を処理する方法が検討されているが、レジスト表面の濡れ性を向上させる効果は十分では無く、微細なパターンのメッキやウエットエッチングを実現するためには、上記アッシング処理との併用が必須であった。
【特許文献1】特開平5−182259号公報(請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−120514公報(請求の範囲)
【特許文献3】特開2002−212779公報(請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現する新規な技術を提供することを目的とする。本発明の更に他の目的および利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、下地上にレジスト膜を形成し、その上から選択的に露光および現像を行い、その後メッキ処理またはウエットエッチング処理することを含んでなるパターン形成方法において、当該メッキ処理またはウエットエッチング処理前に、当該下地表面を水溶性ポリマーおよび水を少なくとも含んでなる表面処理剤を用いて処理することを含むパターン形成方法が提供される。
【0007】
本発明により、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現することができる。
【0008】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、フェノール性水酸基含有樹脂、これらの任意の誘導体およびそれらのコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類の材料からなること、前記表面処理剤中に前記水溶性ポリマーが0.1〜40重量%含まれていること、前記表面処理剤が、更に、アルコール系、鎖状エステル系、環状エステル系、ケトン系、鎖状エーテル系および環状エーテル系からなる群から選ばれた少なくともいずれか一種の有機溶媒を含むこと、前記レジスト表面のぬれ性、前記メッキ処理における寸法精度および前記ウエットエッチング処理における寸法精度の少なくともいずれか一つに応じて、前記水溶性ポリマーおよび溶媒のそれぞれについての、種類、量、量比および溶液濃度からなる群から選ばれた少なくとも一つの因子を変更すること、前記レジストを構成する材料が、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂、COMA系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、イミド系樹脂またはアミド系樹脂であること、および、前記露光を、紫外線または荷電粒子線による照射で行うこと、が、好ましい。
【0009】
上記発明により、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現することができるため、電子機器、特に磁気ヘッド、多層配線装置や、それらに用いられるマスクの製造に好ましく適用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現する新規な技術が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を図、表、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図、表、実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0012】
検討の結果、下地上にレジスト膜を形成し、その上から選択的に露光および現像を行い、その後メッキ処理またはウエットエッチング処理することを含んでなるパターン形成方法において、メッキ処理またはウエットエッチング処理前に、この下地表面を水溶性ポリマーおよび水を少なくとも含んでなる表面処理剤を用いて処理することにより、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくともどれかを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現するパターン形成方法が達成されることを見出した。なお、これらの操作を行う環境は酸化の起こりにくい環境(例えば酸素が存在せずあるいは酸素濃度が少ない雰囲気)に置かれる方が有利である場合もあるが、他の理由により要求される場合を除いて、特にそのような配慮をしなくてもよいことが多い。
【0013】
これは、恐らく、レジスト表面や場合によっては下地表面に上記水溶性ポリマーが吸着または、レジスト表面や下地表面を形成する樹脂と水溶性ポリマーとが部分的に相溶することにより、レジスト表面や下地表面がより親水性に改質されるためであろうと考えられる。
【0014】
この目的のための水溶性ポリマーとしては、結果として本発明の効果が得られる限りどのようなものでもよく、公知の水溶性ポリマーと呼ばれるものから適宜選択することができるが、溶解性の観点からは、室温で水に対し0.1重量%以上の溶解性を持つものと考えることができる。0.1重量%未満では本発明の効果が発揮されにくくなるという問題も生じる。実用上、室温で水に対し0.5重量%以上の溶解性を持つものがより好ましく、室温で水に対し1重量%以上の溶解性を持つものが更に好ましい。
【0015】
水溶性ポリマーの水溶液における濃度の上限については特に制限はないが、40重量%を超えると処理液の粘性が高くなり、表面処理自体が困難となることが多いので40重量%以下が一般的には好ましい。なお、使用状態における水溶性ポリマーの水溶液は、必ずしも全ての水溶性ポリマーが水に溶解している必要はなく、懸濁液や乳濁液の状態になっていてもよい場合がある。
【0016】
水溶性ポリマーの分子量についても特に制限はないが、数平均分子量で500を切ると本発明の効果が小さくなるようである。水溶性ポリマーの分子量の上限については特に制限はない。いわゆる樹脂と呼ばれるものもこの意味でのポリマーに入り得る。
【0017】
上記水溶性ポリマーは、たとえば金属イオン等の不純物が残存するとか、錆の原因になるとかの用途に応じて生じ得る問題を惹起しない限り、その化学的構造の上からは特に制限はない。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドおよびフェノール性水酸基含有樹脂を例示することができる。これらは単独で使用しても混合物で使用してもよい。ここで、フェノール性水酸基含有樹脂とは、ベンゼン核にOHが直接結合した構造を含む樹脂を意味し、ポリフェノール、ポリビニルフェノール、ノボラック樹脂を例示することができる。
【0018】
これらは、全て、一部改質したり、末端基を特別な基で封止したりした誘導体であってもよい。更に誘導体を含め、それらの任意のコポリマーでもよい。コポリマーは、上記ポリマーを構成するモノマー同士のコポリマーであることが好ましいが、水溶性の条件を満たす限り他のモノマーとのコポリマーでもよい。このようなコポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシドおよびフェノール性水酸基含有樹脂のいずれかを総量で60モル%以上含むものが一般的に好ましい。
【0019】
より好ましい水溶性ポリマーとしては、レジスト基材樹脂との親和性が特に高いポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドンを挙げることができる。
【0020】
本発明に係る表面処理剤による処理とは、本発明に係る表面処理剤をレジスト表面や下地表面に触れさせる操作を意味し、レジスト表面や下地表面を有する対象物を本発明に係る表面処理剤中に浸漬するディップ処理や、レジスト表面や下地表面に本発明に係る表面処理剤を噴霧するスプレー処理やスピンコーティングなどが含まれる。この処理は複数回行ってもよい。現像とメッキ処理またはウエットエッチング処理との間に他の処理がある場合は、実情に応じてその処理の前後を適宜選択すればよい。一般的にはメッキ処理またはウエットエッチング処理の直前に行うことが好ましい。なお、処理中や処理後に加温して、レジスト表面や下地表面との相互作用を更に促進してもよい。この加温における温度としては、25〜150℃が好ましい。
【0021】
本発明に係る表面処理剤には、水溶性ポリマーとともに、水溶性ポリマーを溶解するための水が使用される。この水に対しては特に制限はないが、不純物を含まない観点からは純水が好ましい。
【0022】
本発明に係る表面処理剤には、更に、アルコール系、鎖状エステル系、環状エステル系、ケトン系、鎖状エーテル系および環状エーテル系の内の少なくともいずれか一種の有機溶媒を含めることができ、好ましい場合がある。これは、恐らく、溶媒により、更なる処理効果が期待できることのほか、レジスト表面や下地表面への上記水溶性ポリマーの吸着等が促進されるためでもあろうと考えられる。水溶性ポリマーの溶解性を向上させることができ、また、レジスト表面や下地表面への上記水溶性ポリマーの影響を調整することが可能となる利点も得られる。
【0023】
アルコール系、鎖状エステル系、環状エステル系、ケトン系、鎖状エーテル系、環状エーテル系の有機溶媒としては、それぞれ、アルコール、鎖状エステル、環状エステル、ケトン、鎖状エーテルおよび環状エーテルと呼ばれる有機物質で使用温度で液体であるものであれば特に制限はない。
【0024】
アルコール系有機溶媒としてはイソプロピルアルコールを、鎖状エステル系有機溶媒としては、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を、環状エステル系有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン系有機溶媒を、ケトン系有機溶媒としては、アセトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン等を、鎖状エーテル系有機溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテル等を、環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を好ましく例示することができる。これらは、表面処理液の保存安定性を向上させる上で特に好ましい。
【0025】
本発明の趣旨に反しない限り、本発明の表面処理液に他の任意の薬剤を含めてもよい。例えば、その処理性(すなわち、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大、下地の酸化を抑制する度合い等)や本発明の表面処理の処理能力をより高めることを目的として、界面活性剤を添加してもよい。
【0026】
なお、一般的に水溶性ポリマーが界面活性剤の機能を有している場合も考えられるが、その場合には、この水溶性ポリマーを界面活性剤でもあると考えればよい。また、界面活性剤としての機能を発揮させたくない場合には、界面活性剤としての機能を有する水溶性ポリマーは本発明に係る水溶性ポリマーではないと考えてもよい。
【0027】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、金属イオンを含有しない点でノニオン界面活性剤が好ましい。
【0028】
前記ノニオン界面活性剤としては、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、およびエチレンジアミン系界面活性剤から選択されるものが好適に挙げられる。これらの具体例としては、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物系ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン誘導体系ノニオン界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル系ノニオン界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル系ノニオン界面活性剤、第1級アルコールエトキシレート系ノニオン界面活性剤、フェノールエトキシレート系ノニオン界面活性剤、等が挙げられる。
【0029】
前記カチオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4級カチオン系界面活性剤、エステル型4級カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0030】
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミンオキサイド系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
本発明に係るパターン形成方法を実施するに際しては、レジスト表面のぬれ性、メッキ処理における寸法精度、ウエットエッチング処理における寸法精度等の特性を観察して、それらのいくつか(所望に応じて一つの特性でもよい)を所望の範囲に維持するように、上記の水溶性ポリマーおよび溶媒のそれぞれについての、種類、量、量比、溶液濃度を適宜変更することが好ましい。これは、モデル的な試験によっても、生産工程において直接行ってもよい。このようにすれば、生産過程における上記特性の変動に素早く応じることができ、生産効率の向上につながる。なお、これらの寸法精度等の特性観察は、事前処理を含めた前後の特性の比較によって行うことができるが、寸法精度等の特性は、O2プラズマ、オゾン、UV等を利用したアッシング等の事前処理による影響が主体であるので、そのような事前処理の前後の特性の比較によって行うことも可能である。
【0032】
上記特性は、実際のニーズに応じて適宜定めればよいが、一般的には、レジスト表面のぬれ性についてはレジスト表面の水に対する接触角、メッキ処理やウエットエッチング処理における寸法精度については開口幅のばらつきや拡大の度合、観察によるメッキ性やウエットエッチング性の良否等を例示することができる。
【0033】
本発明における下地は、その上にレジストを形成するための基礎となる部材を
意味する。この部材の機能や材料については特に制限はないが、電解メッキを施す場合には、一般的に、その際に通電するための、銅やその他の金属である。ウエットエッチングを施す場合には、半導体ウエハの上に生じた酸化膜や、マスクの開口パターン形成前の、開口パターンを形成すべき位置にあるマスク材料(マスク材料が酸化され得る場合にはその酸化物も含む)が該当する。半導体ウエハの上に生じた酸化膜をウエットエッチングで除去する作業は、半導体ウエハにゲート層を設ける場合に、しばしば行われ、強酸や強塩基が使用される場合が多い。
【0034】
本発明におけるレジスト膜を形成する材料は、膜を形成した後その一部を溶解等により除去してパターンを形成できるものであれば、用途に応じて、ポジティブ型であれ、ネガティブ型であれ、任意の材料を使用することができる。具体的には、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂、COMA系樹脂(シクロオレフィン-無水マレイン酸系樹脂、Cycloolefin-maleic anhydride)、シクロオレフィン系樹脂、PHS(ポリヒドロキシスチレン)系樹脂、イミド系樹脂またはアミド系樹脂を例示することができる。
【0035】
本発明における選択的露光および現像には、公知の任意の方法、機器、材料等を使用できる。すなわち、露光には、水銀ランプのg線、i線、エキシマレーザのKrFやArF、EUV等の紫外線や軟X線、電子線、イオンビーム等の荷電粒子線のいずれにおいても濡れ性向上の効果が発揮される。なお、ここで「選択的露光」とは、所望のパターンを得るため対象物表面の所定の個所のみを露光することを意味する。本発明における現像には、選択的露光の種類に応じて公知の任意の現像方法を採用することができる。
【0036】
本発明に係るメッキとしては、化学メッキ、電解メッキ等どのような方法を採用してもよい。
【0037】
本発明に係るウエットエッチングとしては、半導体ウエハ上の酸化膜の除去や、マスク形成の際の金属や光透過層(マスク材料が酸化され得る場合にはその酸化物も含む)の除去等を例示することができる。
【0038】
本発明により、従来のように、アッシング等の処理を施さなくても、レジストの表面改質や下地の表面の汚染除去による被処理表面の濡れ性向上が可能になる。ただし、アッシング等の処理と組み合わせて更なる効果が得られる場合には、それらの処理と組み合わせてもよい。
【0039】
本発明に係るパターン形成については特に制限はなく、本発明は任意のパターンに適用可能であるが、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大および下地酸化の少なくとも一つを抑制しつつ、微細パターンのメッキやウエットエッチングを実現することができるため、電子機器、特に磁気ヘッド、多層配線装置や、それらに用いられるマスクの製造に好ましく適用できる。これらの用途は、パターン幅やパターン間隔が500nm以下と狭く、レジストの硬化やヒビ割れ、開口幅の拡大、下地の酸化の問題を抱えており、本発明の効果を発揮させることができる。
【実施例】
【0040】
次に本発明の実施例および比較例を詳述する。まず、ポジ型レジスト材料として下記レジスト1,2を調製した。
【0041】
<レジスト1の組成>
基材樹脂:ヒドロキシ基の30モル%をt−Boc(t−ブトキシカルボニル)化したポリp−ヒドロキシスチレン(Mw=11000)、100重量部
光酸発生剤:ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、2重量部
添加剤(クエンチャー):トリエタノールアミン、0.05重量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、600重量部
<レジスト2の組成>
基材樹脂:メバロニックラクトンメタクリレート/2−アダマンチルメタクリレート(モル比1/1)、100重量部
酸発生剤:トリフェニルスルフォニウムノナフルオロブタンスルホネート、2重量部
添加剤:トリエタノールアミン、0.02重量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、700重量部
次に、表1に示すように表面処理液A〜Iを調製した。表1中カッコ内は重量部を示す。表面処理液G以外は全て、本発明に係る水溶性ポリマーを含んでなる表面処理剤である。表1中、PVAはポリビニルアルコール、PVPはポリビニルピロリドン、PHSはポリヒドロキシスチレンをそれぞれ示す。TN−80は旭電化製界面活性剤を表す。
【0042】
各処理における、レジスト表面のぬれ性、メッキ処理における寸法精度は次のようにして評価した。
【0043】
<レジスト表面のぬれ性>
レジスト表面に対する水の接触角を、接触角計にて測定した。
【0044】
<メッキ処理における寸法精度>
メッキ処理における寸法精度の評価として、その事前処理であるプラズマ処理による、開口部幅の広がり(拡大)とメッキ性の良否判断を採用した。
【0045】
(1)開口部幅の広がり
パターン開口後、めっき事前処理後のそれぞれにおいて、レジスト開口幅を走査型電子顕微鏡により計測し、めっき事前処理による開口幅の広がりを求めた。
【0046】
(2)メッキ性の良否判断
めっきの成長速度は、めっき時間、めっき膜厚(段差計により計測)より算出した。めっき状態は、めっき表面を光学顕微鏡により観察し、次のように評価した。
【0047】
メッキ不良(成長せず):メッキが成長しなかったもの。
【0048】
レート低下:通常に比べメッキの成長速度が目視でも明らかに低下したもの。
【0049】
メッキ不良(光沢不良):メッキは成長したが、表面に金属光沢がなかったもの。
【0050】
良好:上記の何れにも該当せず。
【0051】
[比較例1〜4]
上記のレジスト1を用いて下記のプロセスを実施した。
【0052】
1.Si基板上にメッキシード層(Cu)を0.1μmスパッタする。
【0053】
2.1の基板上にレジスト1をスピンコートの上、100℃で60秒間ベークする。
【0054】
3.KrFエキシマレーザ露光機を用いて0.2μm幅のラインを描画する。
【0055】
4.露光後、100℃で90秒間ベーク{PEB(ポストエクスポージャーベーク)}する。
【0056】
5.2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像する。
【0057】
6.RIE{Reactive Ion Etching(反応性イオンエッチング)}装置にてO2プラズマ処理(処理時間0,5,10,20,40,80秒)を行う。
【0058】
7.FeNi2元系磁性メッキを施す。
【0059】
上記プロセスの結果における、O2プラズマ処理時間とレジスト開口幅の広がり量、レジストの表面接触角およびメッキ性との関係を表2に示す。表2より、レジスト表面の接触角が30°以下となった場合において、良好にメッキがなされるが、比較例4〜6に示されるように開口部の広がりがおおきくなり、また目視観察では、レジストの未露光部においてひび割れが生じ、メッキ液の染み込みによるメッキの異常成長(樹枝状メッキ)が発生したことが見出された。また、比較例5,6ではCuの酸化により、メッキ速度の低下がみられた。
【0060】
[実施例1〜8、比較例7]
上記のレジスト1および表面処理液A〜Iを用いて下記のプロセスを実施した。
【0061】
1.Si基板上にメッキシード層(Cu)を0.1μmスパッタする。
【0062】
2.1の基板上にレジスト1をスピンコートの上、100℃で60秒間ベークする。
【0063】
3.KrFエキシマレーザ露光機を用いて0.2μm幅のラインを描画する。
【0064】
4.露光後、100℃で90秒間ベーク(PEB)する。
【0065】
5.2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像する。
【0066】
6.表面処理液A〜Iを用いてスピン処理(60秒)後、水洗する。
【0067】
7.FeNi2元系磁性メッキを施す。
【0068】
各表面処理液を用いた場合のレジスト開口幅の広がり量、レジストの表面接触角、メッキ性の関係を表3に示す。
【0069】
以上の結果から明らかなように、本発明の表面処理液を用いることにより、レジストの開口幅の広がりを10nm以下に抑えた上で、レジストの硬化やヒビ割れ、または下地酸化を起こすことなく、微細パターンのメッキを形成することができることが見出された。なお、いずれの実施例でもメッキ速度の低下は観測されなかった。
【0070】
[実施例9,10]
上記のレジスト2および表面処理液Cを用いて下記のプロセスを実施した。
【0071】
1.Si基板上にメッキシード層(Cu)を0.1μmスパッタする。
【0072】
2.1の基板上にレジスト1をスピンコートの上、100℃で60秒間ベークする。
【0073】
3.電子線露光機(加速電圧50keV)を用いて0.2 μm幅のラインを描画する(実施例9)。
【0074】
または、ArFエキシマレーザ露光機を用いて0.2 μm幅のラインを描画する(実施例10)。
【0075】
4.露光後、100℃で90秒間ベーク(PEB)する。
【0076】
5.2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像する。
【0077】
6.表面処理液Cを用いてスピン処理(60秒)後、水洗する。
【0078】
7.FeNi2元系磁性メッキを施す。
【0079】
各露光機を用いた場合のレジスト開口幅の広がり量、レジストの表面接触角、メッキ性の関係を表4に示す。いずれも良好な結果を示した。メッキ速度の低下も見出されなかった。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

[実施例11]
以下に、本発明を適用した複合型磁器ヘッドの製造について概説する。
【0084】
図1は、複合型磁気ヘッドの要部を示す分解斜視図である。この分解斜視図では、磁気ヘッドの内部を明らかにするため、最上位層の保護層を省略し、また、記録ヘッドWRの図で見て左半分を削除している。
【0085】
図1に示す複合型磁気ヘッドは、基板101と、当該基板101の上に形成された基板保護膜102と、当該基板保護膜102の上に形成された再生ヘッドREと、当該再生ヘッドREの上に形成された記録ヘッドWRと、当該記録ヘッドWRの上に形成された保護層117(図示せず)とを備えている。
【0086】
再生ヘッドREは、再生下側磁気シールド層103と、当該下側磁気シールド層103の上に形成された第一の非磁性絶縁層(再生下側ギャップ層)104と、当該第一の非磁性絶縁層104上に形成された磁気トランスデューサ105と、当該磁気トランスデューサ105の両端に形成された一対の端子106aおよび106b(一方のみ図示)と、これら磁気トランスデューサ105、並びに一対の端子106aおよび106bの上に形成された第二の非磁性絶縁層(再生上側ギャップ層)107と、当該第二の非磁性絶縁層107の上に形成された再生上側磁気シールド層108と、を有している。すなわち、再生ヘッドREは、磁気トランスデューサ105、並びに端子106aおよび106bのZ方向両面を、第一の非磁性絶縁層104および第二の非磁性絶縁層107で覆い、更に第一の非磁性絶縁層104および第二の非磁性絶縁層107の両側を、下側磁気シールド層103および上側磁気シールド層108で覆う構造を有している。
【0087】
再生上側磁気シールド層108は、後述する記録ヘッドWRの下部磁極と兼用されているマージ型であり、再生上側磁気シールド層兼記録下部磁極となっている。したがって、再生上側磁気シールド層兼記録下部磁極108は、以下、(再生)上側磁気シールド層または(記録)下部磁極と称することがある。
【0088】
記録ヘッドWRは、記録下部磁極108と、記録ギャップ層109と、当該記録ギャップ層109に配置された渦巻き状の記録コイル112と、当該記録コイル112を覆う第三の非磁性絶縁層110および第四の非磁性絶縁層111と、当該第三の非磁性絶縁層110および第四の非磁性絶縁層111の上に形成された記録上部磁極116とを有している。すなわち、記録ヘッドWRは、記録コイル112を挟み込んだギャップ層109、並びに第三の非磁性絶縁層110および第四の非磁性絶縁層111の両面を、記録下部磁極108および記録上部磁極116で覆う構造を有している。
【0089】
なお、記録コイル112の渦巻き状の中心部領域113には、記録コイル112は存在しておらず、この中心部領域113において、記録上部磁極116は凹んで記録下部磁極108に対して接続している。また、記録上部磁極116は、磁気記録媒体120に向かって先細り形状となっており、この部分を特にポール116aと称している。
【0090】
このように、図1に示す複合型磁気ヘッドは、再生ヘッドREの背部に記録ヘッドWRを付加するピギーバック構造となっている。なお、磁気ヘッドの各要素の位置関係を明確にするため、図示するように、磁気ヘッドの積層方向をZ方向、これと直交する、記録上部磁極116のABS(Air Bearing Surface)面をXZ面、ABS面から見て磁気ヘッドの奥行き方向またはX,Zに直交する方向をY方向とする。
【0091】
次に、このような複合型磁気ヘッドを構成する各要素について説明する。
【0092】
基板101は、例えば、アルミナ・チタン・カーバイド(Al23TiC)、フェライト、チタン酸カルシウム等の材料からなる、略円盤形状のウェハである。
【0093】
基板保護層102、第一の非磁性絶縁層104および第二の非磁性絶縁層107、並びに記録ギャップ層109はいずれも、例えば、Al23から形成されている。ギャップ層109は、膜厚約0.2〜0.6μm程度であり、ギャップ層109の両側に位置する記録上部磁極116のポール116aと記録下部磁極108のABS面で、記録媒体120に書き込むための記録磁界が発生する。
【0094】
再生下側磁気シールド層103、再生上側磁気シールド層兼記録下部磁極108、および記録上部磁極116は、いずれも、例えば、NiFe合金等から形成されている。代替的に、例えばCoNiFe、CoZr等のCo系合金、例えばFeN、FeNZr等のFe系合金等を使用することもできる。また、記録上部磁極116の膜厚としては、数μm程度である。
【0095】
磁気トランスデューサ105としては、例えば、異方性磁気抵抗効果素子(MR素子)、典型的にはスピンバルブ磁気抵抗効果素子のような巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)等を使用することができる。磁気トランスデューサ105の両端には、一対の端子106aおよび106bが接続され、読み取り動作時には一定電流(センス電流)がこの端子を介して磁気トランスデューサ105に対して流されるようになっている。
【0096】
複合型磁気ヘッドは、磁気ディスクのような記録媒体120に対して僅かな距離(浮上量)だけ離れて対向して位置決めされ、記録媒体120に対してトラック長手方向に向かって相対的に移動しながら、再生ヘッドREによって磁気記録媒体120に記録されている磁気記録情報を読み取り、また、記録ヘッドWRによって記録媒体120に対して情報を磁気的に書き込んでいる。
【0097】
なお、磁気ヘッドの磁気記録媒体120に対向する面は、ABSまたは浮上面と呼ばれている。
【0098】
図2Aは、記録媒体側から見た磁気ヘッドのABS面に平行な断面図であり、また、図2Bは、記録コイルの中心を通るY−Z断面図である。なお、図2Aは、図2BのA−A線に沿った断面図に相当する。
【0099】
図2Aおよび図2Bに示すように、磁気ヘッドは、下から順に、基板101と、基板101の上に形成された保護層102と、保護層102の上に形成された下側磁気シールド層103と、第一の非磁性絶縁層104と、当該第一の非磁性絶縁層104の上に形成された磁気トランスデューサ105、並びに一対の端子106aおよび106bと、これら磁気トランスデューサ105、並びに一対の端子106aおよび106bを覆うようにして、第一の非磁性絶縁層104の上に形成された第二の非磁性絶縁層107と、第二の非磁性絶縁層107の上に形成された上側磁気シールド層兼下部磁極108と、当該下部磁極108の上に形成されたギャップ層109と、当該ギャップ層109の上に形成された第三の非磁性絶縁層110と、当該第三の非磁性絶縁層110の上に形成された渦巻状の記録コイル112と、当該記録コイル112を覆っている第四の非磁性絶縁層111と、第四の非磁性絶縁層111の上に形成されたメッキベース層114と、当該メッキベース層114の上に形成された上部電極116と、当該上部電極116の上に形成された保護層117とを備えている。
【0100】
ここで、図2Aの下の方にある部分拡大図で示すように、第一の非磁性絶縁層104と第二の非磁性絶縁層107との間には、磁気トランスデューサ105が挟まれて配置され、磁気トランスデューサ105の両端には、一対の端子106aおよび106bが夫々接続されている。
【0101】
図2Bに示すように、磁気ヘッドは、ABSで、上部磁極116は先細り形状のポール116aとなっている。また、その詳細については後述するが、下部電極108の上部磁極116に対向する面は、このポール116aの真下部分の両側に、一対の溝または凹部108aおよび108bが形成されている。
【0102】
次に、本発明のレジスト組成物を用いた複合型磁気ヘッドの製造を行った例について、以下に説明する。
【0103】
図3A〜図3Cおよび図4A〜図4Cは、これらの全図を通して、各製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行なX−Z断面図である。図5A〜図5Cおよび図6A〜図6Cは、これらの全図を通して、各製造工程における、記録コイルの中心を通るY−Z断面図である。
【0104】
まず、再生下側磁気シールド層103を形成した。具体的には、基板101を用意し、当該基板101の上に基板保護膜102を形成し、当該基板保護膜102の上に下側磁気シールド層103を形成した。
【0105】
次に、下側磁気シールド層103の上に、第一の非磁性絶縁層(再生下側ギャップ層)104を形成した。
【0106】
次いで、磁気トランスデューサ105、並びに一対の端子106aおよび106bを形成した。具体的には、第一の非磁性絶縁層104の上に、MR膜、GMR膜等を成膜し、パターニングして磁気トランスデューサ105を形成した。次に、磁気トランスデューサ105の両端に、一対の端子106aおよび106bを夫々形成した。
【0107】
そして、磁気トランスデューサ5、並びに一対の端子106aおよび106bを覆うようにして、第一の非磁性絶縁層104の上に、第二の非磁性絶縁層(再生上側ギャップ層)107を形成した。
【0108】
次いで、第二の非磁性絶縁層107の上に、再生上側磁気シールド層兼記録下部磁極108を形成した。当該下部磁極108は、メッキ法またはスパッタリング法により形成することができる。下部電極108をメッキ法で形成する場合には、NiFe合金、またはCoNiFe等のCo系合金等を使用し、予めスパッタまたは蒸着法にてメッキベース層114を形成した後、電解メッキ法にて数μm程度の膜厚にした。
【0109】
次に、記録下部磁極108の上に、記録ギャップ層109を形成した。記録ギャップ層109は、例えば、Al23、SiO2等を用いて形成した。
【0110】
ただし、記録ギャップ層109として、例えばSiO2等のエッチングレートの速い膜を単独で用いると、後工程の第三の非磁性絶縁層、記録コイルおよび第四の非磁性絶縁層の形成過程にて、記録ギャップ層109の膜厚の減少を生じることがある。このため、当該記録ギャップ層109の膜厚減少を回避するため、所望により、記録ギャップ層109の上にキャップ保護層を設けてもよい。
【0111】
次に、ギャップ層109の上に、第三の非磁性絶縁層110を形成した。当該第三の非磁性絶縁層110は、レジストをスピンコート法で塗布し、パターニングして渦巻き状の記録コイル112の中心領域に相当する部分を除去し、その後、熱硬化して形成した。
【0112】
次いで、記録コイル112を電解めっき法で形成した。まず、記録コイル112を覆うようにして、第三の非磁性絶縁層110の上に第四の非磁性絶縁層111を形成した。図3Aおよび図5Aは、この段階における磁気ヘッドの形状を示している。第四の非磁性絶縁層111も、第三の非磁性絶縁層110と同様にレジストをスピンコート法で塗布し、パターニングして渦巻き状の記録コイル112の中心領域に相当する部分を除去し、その後、熱硬化して形成した。こうして、記録コイル112の中心領域には、下部磁極108に達する穴113が形成された。なお、穴113の形成は、第三の非磁性絶縁層110および第四の非磁性絶縁層111を形成した後、一度に行ってもよい。
【0113】
次に、図3Bおよび図5Bに示すように、メッキベース層114を形成した。具体的には、NiFeからなるメッキベース層114を、穴113の内面を含んで、第四の非磁性絶縁層111およびギャップ層109の上に、スパッタリング法または蒸着法等によって薄く形成した。
【0114】
次いで、上部磁極116を電解メッキにより形成した。具体的には、メッキベース層114の上に、本発明の実施例で調製したレジスト1を塗布してレジスト膜115を形成し、これを露光および現像して、上部磁極形成箇所に開口部115aを形成した(図3B)。
【0115】
次に、本発明の実施例3の表面処理液を用いて、レジスト表面をスピン処理、水洗した後、図3Cおよび図5Cに示すように、レジスト膜115の開口部115aの中に、NiFeからなる上部磁極116を、電解メッキ法により数μmの厚さに形成した。上部磁極116は、磁気記録媒体120の近傍では、磁気記録媒体120に向かって先細りになり、磁気記録媒体に対向する領域では、細長いポール形状116aとなっている。また、上部磁極116は、渦巻き状の記録コイル112の中心領域に位置する穴113を通して、下部磁極108と接続している。
【0116】
次いで、図4Aおよび図6Aに示すように、上部電極116のポール116aおよび下部電極108の上層部を、イオンミリング法により部分的にトリミングして、所定形状に整形した。具体的には、基板101を分断する前に、イオンミリング法により、上部磁極116の内のギャップ層109に接しているポール116aの両側部をトリミングして、所定形状に整形した。同時に、このポール116aの下方に位置する下部磁極108を部分的にトリミングして、下部磁極108の上層部に所定形状の溝または凹部108aを形成した。
【0117】
このトリミング作業を終了した後、図4Bおよび図6Bに示すように、上部磁極116以外で露出しているメッキベース層114をイオンミリング法によって、除去した。このとき、上部磁極116もメッキベース層114に相当する厚さだけ減少するが、メッキベース層114と上部磁極116とは同じ材料から形成されているので、上部磁極116の下に残ったメッキベース層114は、上部磁極116の一部として取り込まれて、上部磁極116は実質的に形成当初の厚さになる。その後、トランスデューサ105の両端の端子に接続する電極パッド(図示せず)、記録コイル112の両端の電極パッド等(図示せず)を形成した。
【0118】
このトリミング処理は、上部磁極形成後から保護層成膜前までの期間内であれば、任意のときに実施することができる。
【0119】
次いで、図4Cおよび図6Cに示すように、上部磁極116の略全体に、例えばAl23 からなる保護層117を形成した。このとき、ポール116aの両側に位置する下部磁極108における溝108aは、保護層117によって埋め込まれた。
【0120】
次に、基板101を分割し、スライダを形成した。これまでの工程は、基板101を分割せずに一体として各工程の処理が行われていた。したがって、図7Aに示すように、複合型磁気ヘッド118が、基板101の上に縦横に複数個(5インチウェハで約10,1000個)並んで形成された状態となっていた。図7Bに示すように、基板101を複数個の棒状体101aに切断して分割した。次に、図7Cに示すように、分割された棒状体101aに対して、レール面101bおよび101cを形成し、その後、更に棒状体101aを分割して、スライダ119の形状に仕上げた。
【0121】
その結果、図1に示す、再生ヘッドREと記録ヘッドWRとを備えた複合型磁気ヘッドが製造された。
【0122】
本実施例においては、前記上部磁極等の形成の際に、本発明の表面処理液を用いて表面改質を行ったレジストパターンを使用したので、寸法精度よく磁気ヘッドを製造することができた。開口部の広がりは2nm程度であった。上記上部磁極用の電解メッキの速度は、本発明に係る処理に代えてアッシングを採用した場合と同様であった。
【0123】
なお、上記に開示した内容から、下記の付記に示した発明が導き出せる。
【0124】
(付記1) 下地上にレジスト膜を形成し、その上から選択的に露光および現像を行い、その後メッキ処理またはウエットエッチング処理することを含んでなるパターン形成方法において、当該メッキ処理またはウエットエッチング処理前に、当該下地表面を水溶性ポリマーおよび水を少なくとも含んでなる表面処理剤を用いて処理することを含むパターン形成方法。
【0125】
(付記2) 前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、フェノール性水酸基含有樹脂、これらの任意の誘導体およびそれらのコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類の材料からなる、付記1に記載のパターン形成方法。
【0126】
(付記3) 前記表面処理剤中に前記水溶性ポリマーが0.1〜40重量%含まれている、付記1または2に記載のパターン形成方法。
【0127】
(付記4) 前記表面処理剤が、更に、アルコール系、鎖状エステル系、環状エステル系、ケトン系、鎖状エーテル系および環状エーテル系からなる群から選ばれた少なくともいずれか一種の有機溶媒を含む、付記1〜の3いずれかに記載のパターン形成方法。
【0128】
(付記5) 前記表面処理剤が更に界面活性剤を含む、付記1〜4のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0129】
(付記6) 前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレン誘導体系、ソルビタン脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、第1級アルコールエトキシレート系、フェノールエトキシレート系のノニオン界面活性剤からなる群の中から選ばれた少なくともいずれか一種のノニオン界面活性剤である、付記5に記載のパターン形成方法。
【0130】
(付記7) 前記レジスト表面のぬれ性、前記メッキ処理における寸法精度および前記ウエットエッチング処理における寸法精度の少なくともいずれか一つに応じて、前記水溶性ポリマーおよび、存在する場合には溶媒およびノニオン界面活性剤の、それぞれについての、種類、量、量比および溶液濃度からなる群から選ばれた少なくとも一つの因子を変更する、付記1〜6のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0131】
(付記8) 前記レジストを構成する材料が、ノボラック系樹脂、アクリル系樹脂、COMA系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、イミド系樹脂またはアミド系樹脂である、付記1〜7のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0132】
(付記9) 前記露光を、紫外線または荷電粒子線による照射で行う、付記1〜8のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0133】
(付記10) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を含む、電子機器の製造方法。
【0134】
(付記11) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を含む、磁気ヘッドの製造方法。
【0135】
(付記12) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて製造された電子機器。
【0136】
(付記13) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて製造された磁気ヘッド。
【0137】
(付記14) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて製造された多層配線装置。
【0138】
(付記15) 付記1〜9のいずれかに記載のパターン形成方法を用いて製造されたマスク。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】複合型磁気ヘッドの要部を示す分解斜視図である。
【図2A】記録媒体側から見た磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図2B】記録コイルの中心を通るY−Z断面図である。
【図3A】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図3B】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図3C】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図4A】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図4B】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図4C】磁気ヘッドの製造工程における磁気ヘッドのABS面に平行な断面図である。
【図5A】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図5B】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図5C】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図6A】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図6B】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図6C】磁気ヘッドの製造工程における、記録コイルの中心を通る磁気ヘッドのY−Z断面図である。
【図7A】複合型磁気ヘッド118が基板101の上に縦横に複数個並んで形成された状態を示す斜視図である。
【図7B】図7Aの基板を棒状体101aに切断して分割した様子を示す斜視図である。
【図7C】ヘッドスライダの斜視図である。
【符号の説明】
【0140】
101 基板
102 基板保護膜
103 再生下側磁気シールド層
104 第一の非磁性絶縁層(再生下側ギャップ層)
105 磁気トランスデューサ
106a,b 端子
107 第二の非磁性絶縁層(再生上側ギャップ層)
108 再生上側磁気シールド層(記録下部磁極)
108a,108b 溝または凹部
109 記録ギャップ層
110 第三の非磁性絶縁層
111 第四の非磁性絶縁層
112 記録コイル
114 メッキベース層
113 渦巻き状の中心部領域
115 レジスト膜
115a 開口部
116 記録上部磁極
116a ポール
117 保護層
118 複合型磁気ヘッド
119 スライダ
120 磁気記録媒体
RE 再生ヘッド
WR 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上にレジスト膜を形成し、その上から選択的に露光および現像を行い、その後メッキ処理またはウエットエッチング処理することを含んでなるパターン形成方法において、当該メッキ処理またはウエットエッチング処理前に、当該下地表面を水溶性ポリマーおよび水を少なくとも含んでなる表面処理剤を用いて処理することを含むパターン形成方法。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、フェノール性水酸基含有樹脂、これらの任意の誘導体およびそれらのコポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種類の材料からなる、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記表面処理剤中に前記水溶性ポリマーが0.1〜40重量%含まれている、請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記レジスト表面のぬれ性、前記メッキ処理における寸法精度および前記ウエットエッチング処理における寸法精度の少なくともいずれか一つに応じて、前記水溶性ポリマーおよび、存在する場合には溶媒の、種類、量、量比および溶液濃度からなる群から選ばれた少なくとも一つの因子を変更する、請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のパターン形成方法を含む、磁気ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2008−203442(P2008−203442A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38248(P2007−38248)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】