説明

パターン形成方法およびパターン

【課題】インクジェット法を用いて光硬化組成物の適用を行っても超微細パターンが良好に形成できるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】重合性化合物および重合開始剤を含有する光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、該光硬化性組成物をモールドまたは基材で挟んだ状態で光照射することを含むパターン形成方法であって、光硬化性組成物の25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、光硬化性組成物は、液滴を吐出により、基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、前記光硬化性組成物の吐出時の温度が28℃以上である、パターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法に関する。特に、電子デバイスの構成要素を形成するためのパターン形成方法に関する。より詳しくは、半導体集積回路(特に回路)、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、等の作製に用いられる光照射を利用した微細パターン形成であるインプリント法によるパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント法では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro−Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法の適用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術としてナノインプリントリソグラフィ(光ナノインプリント法)が提案された。例えば、下記特許文献1および特許文献3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0007】
ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込みが生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。これらメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリントの応用が提案されている。本用途においても数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリ法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、特許文献4および特許文献5に記載される透明保護膜材料や、特許文献5に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を適用し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
また、一般にモスアイと呼ばれる反射防止構造体の作成にもナノインプリント法を用いることができる。透明性成形品の表面に、透明性素材から成る無数の微細凹凸を光の波長以下のピッチで形成することによって、光の屈折率が厚み方向に変化するようにした反射防止構造が形成できる。このような反射防止構造体は屈折率が厚み方向に連続的に変化するため、屈折率界面が存在せず、理論的には無反射とすることができる。また、波長依存性が小さく、斜め光に対する反射防止能も高いため、多層反射防止膜よりも優れた反射防止性能を備えたものとなる。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリントリソグラフィは有用である。
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。
【0010】
ナノインプリントを産業に利用する上では、良好なパターンが繰り返し形成されることが要求される。
光インプリント法においては、基材または微細パターンを有するモールド上に光硬化性組成物を適用し、光硬化性組成物を基材とモールドではさんだ状態で光照射して光硬化性組成物を硬化させることでモールドのパターンを硬化物に転写する。ここで基材または微細パターンを有するモールド上に光硬化性組成物を適用する方法としてはスピンコート法やスリットコート法などの方法が一般に用いられている。
近年、特に超微細パターンを高精度に形成する用途(例えば、半導体基板加工用エッチングレジスト用途)においてはインクジェット法が注目されている(特許文献9)。インクジェット法はパターンの粗密に応じて硬化組成物の量を調整できるため、超微細パターンを高精度に形成する用途においては有効である。一方でインクジェト吐出が安定に行われないとパターン形成性がむしろ悪化してしまうという問題があった。さらにこれらパターン形成性と基板加工用途におけるドライエッチング耐性やドライエッチング後のラインエッジラフネスなど製品に要求される性能を同時に満たすことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2006−310565号公報
【特許文献8】特開2008−95037号公報
【特許文献9】特表2008−502157号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決することを目的とするものであって、インクジェット法を用いて光硬化組成物の適用を行っても超微細パターンが良好に形成できるパターン形成方法を提供することを目的とする。さらにこれらパターン形成性とドライエッチング後のラインエッジラフネスを同時に満たすパターンを形成可能なパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
インクジェットの吐出の適性粘度は、5〜10mPa・s程度であることが知られている。一方、一般的に粘度の低いものは揮発しやすい。このような揮発は、インク等のインクジェットによる吐出では特に問題にならないが、インプリント用硬化性組成物をインクジェットにより吐出する場合、吐出直後の揮発がパターン形成性やドライエッチング後のラインエッジラフネスに大きな影響を与えることがわかった。かかる状況のもと、25℃における粘度が12〜100mPa・sの光硬化性組成物を28℃以上の温度で、吐出することにより、かかる問題点を解決しうることを見出し、発明を完成するに至った。
具体的には以下の手段により上記課題は解決された。
【0015】
(1)重合性化合物および重合開始剤を含有する光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、該光硬化性組成物をモールドまたは基材で挟んだ状態で光照射することを含むパターン形成方法であって、
光硬化性組成物の25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、
光硬化性組成物は、液滴を吐出により、基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、かつ、前記光硬化性組成物の吐出時の温度が28℃以上である、パターン形成方法。
(2)前記光硬化性組成物の吐出をインクジェット法により行う、(1)に記載のパターン形成方法。
(3)前記光硬化性組成物の吐出時の温度が70℃以下である、(1)または(2)に記載のパターン形成方法。
(4)前記光硬化性組成物の吐出時の粘度が2mPa・s〜30mPa・sである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(5)前記光硬化性組成物の吐出時の粘度が5mPa・s以上12mPa・s未満である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(6)光硬化性組成物中に含まれる重合性化合物であって、25℃における粘度が5mPa・s未満の重合性化合物の含有量が、光硬化性組成物中に含まれる全重合性化合物の30質量%以下である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(7)硬化性組成物の25℃における粘度と、光硬化性組成物の吐出時の粘度の差が、2〜100mPa・sである、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(8)光硬化性組成物は、2種類以上の重合性化合物を含み、かつ、該光硬化性組成物中の配合量が一番多い重合性化合物と二番目に多い重合性化合物の、25℃における粘度の差が、0.1〜120mPa・sである、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(9)硬化性組成物は、25℃における粘度が12mPa・s〜80mPa・sであり、吐出時の粘度が2mPa・s以上12mPa・s未満である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(10)前記光硬化性組成物が脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物を含有する、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
(12)(1)〜(10)のいずれか1項に記載のパターン形成方法を実行する手段を有するパターン形成装置。
(13)光硬化性組成物の温度コントロール部を有する、(12)に記載のパターン形成装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明で用いる光硬化性組成物をインプリント用硬化組成物として用いると、良好なパターン形成性を有し、欠陥が少なく、かつ基板加工用途に用いた際にエッチング後のラインエッジラフネスが良好であるインプリント用硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0018】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。 尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0019】
本発明のパターン形成方法は、重合性化合物および重合開始剤を含有する光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、該光硬化性組成物をモールドまたは基材で挟んだ状態で光照射することを含むパターン形成方法であって、光硬化性組成物の25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、光硬化性組成物は、液滴を吐出により、基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、前記光硬化性組成物の吐出時の温度が28℃以上であることを特徴とする。
【0020】
本発明で用いる光硬化組成物は25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、12〜80mPa・sであることが好ましく、より好ましくは15〜50mPa・s、さらに好ましくは15〜40mPa・s、特に好ましくは15〜30mPa・sである。
また、光硬化性組成物の吐出時の粘度は、2〜30mPa・sであることが好ましく、より好ましくは3〜25mPa・s、さらに好ましくは、3〜20mPa・s、よりさらに好ましくは5mPa・s〜15mPa・s未満、特に好ましくは5〜12mPa・s未満である。このような範囲とすることにより、光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に安定して適用することができ、連続パターン形成性が向上する。ここで、吐出時の粘度とは、吐出時の光硬化性組成物の温度がX℃となるように調整(例えば、加熱)されるとき、X℃における光硬化性組成物の粘度をいう。
また、硬化性組成物の25℃における粘度と、光硬化性組成物の吐出時の粘度の差が、2〜100mPa・sであることが好ましく、3〜80mPa・sであることがより好ましく、3〜50mPa・sであることが更に好ましく、5〜20mPa・sであることが最も好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
さらに、光硬化性組成物は、2種類以上の重合性化合物を含み、かつ、該光硬化性組成物中の配合量が一番多い重合性化合物と二番目に多い重合性化合物の25℃における粘度の差が、0.1〜120mPa・sであることが好ましく、1〜100mPa・sであることがより好ましく1〜50mPa・sでることが更に好ましく、1〜20mPa・sであることが最も好ましい。
【0021】
光硬化性組成物は28℃以上の温度で吐出される。(X℃)としては28℃〜70℃が好ましく、30〜60℃がさらに好ましく、30〜50℃が特に好ましい。このような範囲とすることにより、硬化組成物の吐出安定性が向上し、パターン形成性が向上するとともに装置内でのパーティクル、気泡の発生を抑制できる。
【0022】
本発明で用いる光硬化性組成物は、重合性化合物(A)および重合開始剤(B)を含有する。
本発明に用いるインプリント用硬化性組成物に用いられる重合性化合物の種類は本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;エポキシ化合物、オキセタン化合物;ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができる。
【0023】
重合性化合物(A)
前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0024】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1つ有する重合性不飽和単量体としては具体的に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリジノン、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムが例示される。
【0025】
前記エチレン性不飽和結合を含有する単官能の重合性化合物の中でも、本発明では単官能(メタ)アクリレート化合物を用いることが、光硬化性の観点から好ましい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、前記エチレン性不飽和結合を含有する単官能の重合性化合物で例示した中における、単官能(メタ)アクリレート化合物類を例示することができる。
【0026】
本発明では、重合性化合物として、エチレン性不飽和結合含有基を2つ以上有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2つ有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、o−,m−,p−キシリレンジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジアクリレートノルボルナンジメタノールジアクリレートが例示される。
【0027】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、o−,m−,p−ベンゼンジ(メタ)アクリレート、o−,m−,p−キシリレンジ(メタ)アクリレート、等の2官能(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0028】
エチレン性不飽和結合含有基を3つ以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3官能以上の官能(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0030】
前記エチレン性不飽和結合を2つ以上有する多官能の重合性不飽和単量体の中でも、本発明では多官能(メタ)アクリレートを用いることが、光硬化性の観点から好ましい。なお、ここでいう多官能(メタ)アクリレートとは、前記2官能(メタ)アクリレートおよび前記3官能以上の官能(メタ)アクリレートを総称するもののことである。多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、前記エチレン性不飽和結合を2つ有する多官能重合性不飽和単量体で例示した中、および、前記エチレン性不飽和結合を3つ以上有する多官能重合性不飽和単量体で例示した中における、各種多官能(メタ)アクリレートを例示することができる。
【0031】
前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0032】
本発明に好ましく使用することのできる前記オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0033】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0034】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0036】
本発明で用いることができる重合性化合物として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、本発明で用いることができる重合性化合物としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0039】
本発明で用いられる重合性化合物として芳香族基を有する重合性化合物が好ましい。芳香族基を有する重合性化合物を用いることで、基板加工用エッチングレジストとして用いた際にラインエッジラフネスが良好となる。
【0040】
本発明で用いられる芳香族基を有する重合性単量体として、下記一般式(I)で表される単官能(メタ)アクリレート化合物または後述の一般式(II)で表される多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0041】
【化1】

(一般式中、Zは芳香族基を含有する基を表し、R1は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表す。但し、重合性単量体(Ax)が25℃において液体であるとき、25℃における粘度が500mPa・s以下である。)
1は、好ましくは、水素原子またはアルキル基であり、水素原子またはメチル基が好ましく、硬化性の観点から、水素原子がさらに好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、フッ素原子が好ましい。
Zは、好ましくは置換基を有していても良いアラルキル基、置換基を有していても良いアリール基、または、これらの基が連結基を介して結合した基である。ここでいう連結基は、ヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよく、好ましくは、−CH2−、−O−、−C(=O)−、−S−およびこれらの組み合わせからなる基である。Zに含まれる芳香族基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましい。Zの分子量としては90〜300であることが好ましく、より好ましくは120〜250である。
【0042】
一般式(I)で表される重合性単量体が25℃において液体であるときの25℃における粘度としては2〜500mPa・sが好ましく、3〜200mPa・sがより好ましく、3〜100mPa・sが最も好ましい。重合性単量体は25℃において液体であるか、固体であっても融点が60℃以下であることが好ましく、融点か40℃以下であることがより好ましく、25℃において液体であることが更に好ましい。
Zは−Z1−Z2で表される基であることが好ましい。ここで、Z1は、単結合または炭化水素基であり、該炭化水素基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。Z2は、置換基を有していてもよい芳香族基であり、分子量90以上である。
1は、好ましくは、単結合またはアルキレン基であり、該アルキレン基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。Z1は、より好ましくは、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含まないアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基である。ヘテロ原子を含む連結基としては−O−、−C(=O)−、−S−およびこれらとアルキレン基の組み合わせからなる基などが挙げられる。また、炭化水素基の炭素数は1〜3であることが好ましい。
【0043】
2は、2つ以上の芳香族基が、直接にまたは連結基を介して連結した基であることも好ましい。この場合の連結基も、好ましくは、−CH2−、−O−、−C(=O)−、−S−およびこれらの組み合わせからなる基である。
【0044】
一般式(I)で表される重合性単量体の芳香族基が有していても良い置換基としては、置換基の例としては例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロロ原子、臭素原子、ヨウ素原子)、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ヒドラジノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。また、これらの基によってさらに置換されている基も好ましい。
【0045】
一般式(I)で表される重合性単量体の光硬化性組成物中における添加量は、10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物のうち 芳香環上に置換基を有さない化合物の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルエチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0046】
一般式(I)で表される化合物としては、下記一般式(II)で表される芳香環上に置換基を有する化合物も好ましい。
【化2】

(一般式(II)中、R1は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表し、X1は単結合または炭化水素基であり、該炭化水素基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。Y1は分子量15以上の置換基を表し、n1は1〜3の整数を表す。Arは、芳香族連結基を表し、フェニレン基またはナフチレン基が好ましい。)
【0047】
1は、上記一般式のR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
1は、上記Z1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
1は、分子量15以上の置換基であり、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、シアノ基などが挙げられる。これら置換基は更なる置換基を有していても良い。
n1が2のときは、X1は単結合または炭素数1の炭化水素基であることが好ましい。
特に、好ましい様態としてはn1が1で、X1は炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0048】
一般式(II)で表される化合物は、さらに好ましくは、(IV)(V)のいずれかで表される化合物である。
【0049】
一般式(IV)で表される化合物
【化3】

一般式(IV)中、R1は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表す。X2は単結合、または、炭化水素基であり、該炭化水素基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。Y2は分子量15以上の芳香族基を有さない置換基を表し、n2は1〜3の整数を表す。
1は、上記一般式のR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
2は、炭化水素基である場合、炭素数1〜3の炭化水素基であることが好ましく、置換または無置換の炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、無置換の炭素数1〜3のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基、エチレン基であることがさらに好ましい。このような炭化水素基を採用することにより、より低粘度で低揮発性を有する光硬化性組成物とすることが可能になる。
2は分子量15以上の芳香族基を有さない置換基を表し、Y2の分子量の上限は150以下であることが好ましい。Y2としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などの炭素数1〜6のアルキル基、フロロ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい例として挙げられる。
n2は、1〜2の整数であることが好ましい。n2が1の場合、置換基Yはパラ位にあるのが好ましい。また、粘度の観点から、n2が2のときは、X2は単結合もしくは炭素数1の炭化水素基が好ましい。
【0050】
低粘度と低揮発性の両立という観点から、一般式(IV)で表される(メタ)アクリレート化合物の分子量は175〜250であることが好ましく、185〜245であることがより好ましい。
また、一般式(IV)で表される(メタ)アクリレート化合物の25℃における粘度が50mPa・s以下であることが好ましく、20mPa・s以下であることがより好ましい。
一般式(IV)で表される化合物は、反応希釈剤としても好ましく用いることができる。
【0051】
一般式(IV)で表される化合物の光硬化性組成物中における添加量は、組成物の粘度や硬化後のパターン精度の観点から10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。一方、硬化後のタッキネスや力学強度の観点からは、添加量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
【0052】
以下に、一般式(IV)で表される化合物を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【化4】

【0053】
一般式(V)で表される化合物
【化5】

(一般式(V)中、R1は水素原子、アルキル基またはハロゲン原子を表し、X3は単結合、または、炭化水素基であり、該炭化水素基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。Y3は芳香族基を有する置換基を表し、n3は1〜3の整数を表す。)
1は、上記一般式のR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
3は、芳香族基を有する置換基を表し、芳香族基を有する置換基としては芳香族基が単結合、あるいは連結基を介して一般式(V)の芳香環に結合している様態が好ましい。連結基としては、アルキレン基、ヘテロ原子を有する連結基(好ましくは−O−、−S−、−C(=O)O−、)あるいはこれらの組み合わせが好ましい例として挙げられ、アルキレン基または−O−ならびにこれらの組み合わせからなる基がより好ましい。芳香族基を有する置換基としてはフェニル基を有する置換基であることが好ましい。フェニル基が単結合または上記連結基を介して結合している様態が好ましく、フェニル基、ベンジル基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェニルチオ基が特に好ましい。Y3の分子量は好ましくは、230〜350である。
n3は、好ましくは、1または2であり、より好ましくは1である。
【0054】
一般式(V)で表される化合物の、本発明で用いる光硬化性組成物中における添加量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。一方、硬化後のタッキネスや力学強度の観点からは、添加量は90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
以下に、一般式(V)で表される化合物を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【化6】

【0056】
一般式(II)で表される多官能(メタ)アクリレート化合物
【化7】

式中Ar2は芳香族基を有するn価の連結基を表し、好ましくはフェニレン基を有する連結基である。X1、R1は前述と同義である。nは1〜3を表し、好ましくは1である。
【0057】
一般式(II)で表される化合物は一般式(VI)または(VII)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(VI)で表される化合物
【化8】

(一般式(VI)中、X6は(n6+1)価の連結基であり、R1は、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子である。R2およびR3は、それぞれ、置換基であり、n4およびn5は、それぞれ、0〜4の整数である。n6は1または2であり、X4およびX5は、それぞれ、炭化水素基であり、該炭化水素基は、その鎖中にヘテロ原子を含む連結基を含んでいてもよい。)
【0058】
6は、単結合または(n6+1)価の連結基を表し、好ましくは、アルキレン基、−O−、−S−、−C(=O)O−、およびこれらのうちの複数が組み合わさった連結基である。アルキレン基は、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。また、無置換のアルキレン基が好ましい。
n6は、好ましくは1である。n6が2のとき、複数存在する、R1、X5、R2は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていても良い。
4およびX5は、は、それぞれ、連結基を含まないアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、最も好ましくはメチレン基である。
1は、上記一般式のR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
2およびR3は、それぞれ、置換基を表し、好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基である。アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、フッ素原子が好ましい。アルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。アシル基としては、炭素数1〜8のアシル基が好ましい。アシルオキシ基としては、炭素数1〜8のアシルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基が好ましい。
n4およびn5は、それぞれ、0〜4の整数であり、n4またはn5が2以上のとき、複数存在するR2およびR3は、それぞれ、同一でも異なっていても良い。
【0059】
一般式(VI)で表される化合物は、下記一般式(VIII)で表される化合物が好ましい。
【化9】

(X6は、アルキレン基、−O−、−S−および、これらのうちの複数が組み合わさった連結基であり、R1は、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子である。)
1は、上記一般式のR1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
6がアルキレン基である場合、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。また、無置換のアルキレン基が好ましい。
6としては、−CH2−、−CH2CH2−、−O−、−S−が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる光硬化性組成物中における一般式(VI)で表される化合物の含有量は、特に制限はないが、光硬化性組成物粘度の観点から、全重合性単量体中、1〜100質量%が好ましく、5〜70質量%がさらに好ましく、10〜50質量%が特に好ましい。
【0061】
以下に、一般式(VI)で表される化合物を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。下記式中におけるR1はそれぞれ、一般式(VI)におけるR1と同義であり、好ましい範囲も同義であり、特に好ましくは水素原子である。
【化10】

【0062】
下記一般式(VIII)で表される重合性単量体
【化11】

(式中、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子またはメチル基を表し、nは2または3を表す。)
【0063】
一般式中、前記アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0064】
前記Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。前記Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
【0065】
前記R1は水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
nは2または3であり、好ましくは2である。
【0066】
前記重合性単量体(VIII)が下記一般式(I−a)または(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0067】
【化12】

(式中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子またはメチル基を表す。)
【0068】
前記一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。
前記X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
前記R1は一般式におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0069】
前記重合性単量体は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。
【0070】
一般式(VIII)で表される重合性単量体の具体例を示す。R1は一般式におけるとR1と同義であり、水素原子またはメチル基を表す。なお、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【化13】

【0071】
以下に、本発明で用いる光硬化性組成物で用いられる芳香族基を有する重合性化合物のさらに好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記芳香族基を有する重合性化合物としては、無置換または芳香環上に置換基を有しているベンジル(メタ)アクリレート、無置換または芳香環上に置換基を有しているフェネチル(メタ)アクリレート、無置換または芳香環上に置換基を有しているフェノキシエチル(メタ)アクリレート、無置換または芳香環上に置換基を有している1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、無置換または芳香環上に置換基を有している1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、無置換または芳香環上に置換基を有している1−または2−ナフチルエチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、レゾルシノールジ(メタ)アクリレート、m−キシリレンジ(メタ)アクリレート、ナフタレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレートが好ましく、無置換または芳香環上に置換基を有しているベンジルアクリレート、1または2−ナフチルメチルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、がより好ましい。
【0072】
また、モールドとの剥離性を向上させる目的で、フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物を含有することが好ましい。
本発明における(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、フッ素原子、シリコン原子、または、フッ素原子とシリコン原子の両方を有する基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。重合性官能基としてはメタアクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基が好ましい。
【0073】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、低分子化合物でもポリマーでもよい。
【0074】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物がポリマーである場合、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位と、共重合成分として側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。また、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位が、その側鎖、特に、末端に重合性基を有していてもよい。この場合、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位の骨格については、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、例えばエチレン性不飽和結合含基由来の骨格を有していることが好ましく、(メタ)アクリレート骨格を有している態様がより好ましい。また、シリコン原子を有する繰り返し単位は、シロキサン構造(例えばジメチルシロキサン構造)などのように、シリコン原子自体が繰り返し単位を形成していてもよい。重量平均分子量は2000〜100000が好ましく3000〜70000であることがより好ましく、5000〜40000であることが特に好ましい。
【0075】
本発明のインプリント用硬化性組成物中における(A2)の含有量は、特に制限はないが、硬化性向上の観点や、組成物の低粘度化の観点から、全重合性化合物中、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0076】
フッ素原子を有する重合性化合物
フッ素原子を有する重合性化合物が有するフッ素原子を有する基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。
前記フロロアルキル基としては、炭素数が2〜20のフロロアルキル基が好ましく、4〜8のフロロアルキル基より好ましい。好ましいフロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0077】
本発明では、(A2)フッ素原子を有する重合性化合物が、トリフロロメチル基構造を有するフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本発明の効果が発現するため、他の成分との相溶性が向上し、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する上、繰り返しパターン形成性が向上する。
【0078】
前記フロロアルキルエーテル基としては、前記フロロアルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0079】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物が有する全フッ素原子の数は、1分子当たり、6〜60個が好ましく、より好ましくは9〜40個、さらに好ましくは12〜40個、特に好ましくは12〜20個である。
【0080】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、下記に定義するフッ素含有率が20〜60%のフッ素原子を有する。(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物が重合性化合物である場合、フッ素含有率が20〜60%であることが好ましく、さらに好ましくは35〜60%である。(A2)が重合性基を有するポリマーの場合、フッ素含有率がより好ましくは20〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。フッ素含有率を適性範囲とすることで他成分との相溶性に優れ、モールド汚れを低減でき且つ、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する上、繰り返しパターン形成性が向上する。本明細書中において、前記フッ素含有率は下記式で表される。
【0081】
【化14】

【0082】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物のフッ素原子を有する基の好ましい一例として、下記一般式(I)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、繰り返しパターン転写を行ってもパターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【0083】
一般式(I)
【化15】

一般式(I)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
【0084】
前記(A2)フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物の好ましい他の一例として、下記一般式(II)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(I)で表される部分構造と、一般式(II)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【0085】
一般式(II)
【化16】

一般式(II)中、L1は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、L2は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、m3が2以上のとき、それぞれの、−Cp2p+1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
前記L1およびL2は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、前記アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。前記m3は、好ましくは1または2である。前記pは4〜6の整数が好ましい。
【0086】
以下に、本発明で用いる光硬化性組成物で用いられる前記フッ素原子を有する重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する単官能重合性化合物が挙げられる。また、前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフロロヘキサンジ(メタ)アクリレートなどのフロロアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを有する2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物も好ましい例として挙げられる。
また、含フッ素基、例えばフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物も好ましく用いることができる。
フロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物として好ましくは下記一般式(III)で表される重合性化合物である。
【化17】

(一般式(III)中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
Aは(a1+a2)価の連結基を表し、好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
a1は1〜6の整数を表し、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。
a2は2〜6の整数を表し、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。
2およびR3はそれぞれ単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m3は1〜3の整数を表す。)
a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていても良い。
a2が2以上のとき、それぞれのR2、R3、m1、m2、m3は同一であっても良いし、異なっていても良い。
Rfはフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を表し、好ましくは炭素数1〜8のフロロアルキル基、炭素数3〜20のフロロアルキルエーテル基である。
フッ素原子を有する重合性化合物がポリマーの場合、前記フッ素原子を有する重合性化合物を繰り返し単位として含有するポリマーが好ましい。
【0088】
以下に、本発明で用いる光硬化性組成物で用いられるフッ素原子を有する重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【0089】
【化18】

【0090】
(2)シリコン原子を有する重合性化合物
前記シリコン原子を有する重合性化合物が有するシリコン原子を有する官能基としては、トリアルキルシリル基、鎖状シロキサン構造、環状シロキサン構造、籠状シロキサン構造などが挙げられ、他の成分との相溶性、モールド剥離性の観点から、トリメチルシリル基またはジメチルシロキサン構造を有する官能基が好ましい。
【0091】
シリコン原子を有する重合性化合物としては3−トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロイル基を末端あるいは側鎖に有するポリシロキサン(例えば信越化学工業社製X−22−164シリーズ、X−22−174DX、X−22−2426,X−22−2475)などが挙げられる。
【0092】
本発明では、また、重合性化合物として、水素結合性官能基と含フッ素基を有する重合性単量体(Ax)を含むことも好ましい。
重合性単量体(Ax)が有する重合性官能基としては、CH(R1)=CHC(=O)−(R1は、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基)などのラジカル重合性基、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基などのカチオン重合性基が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル基である。重合性単量体(Ax)中に含まれる重合性基の数としては1または2個が好ましく、より好ましくは1個である。
重合性単量体(Ax)が有する含フッ素基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましく、フロロアルキル基がより好ましい。
フロロアルキル基としては、炭素数が2以上のフロロアルキル基であることが好ましく、4以上のフロロアルキル基であることがより好ましく、上限値としては特に定めるものではないが、20以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。最も好ましくは炭素数4〜6のフロロアルキル基である。フロロアルキル基としては、フロロアルキル基が連結基となったフロロアルキレン基も含まれる。フロロアルキル基は、パーフロロアルキル基であることが好ましい。また、直鎖のフロロアルキル基であることが好ましい。
【0093】
フロロアルキルエーテル基としては、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。末端にトリフロロメチル基構造を有しているものが好ましく、−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
フロロアルキルエーテル基としては、フロロアルキルエーテル基が連結基となったフロロアルキルエーテル連結基も含まれる。
フロロアルキルエーテル基としては炭素数4〜20が好ましく、より好ましくは4〜15である。
含フッ素基として、より好ましくは下記一般式(I−1)(I−2)、より好ましくは一般式(II−1)(II−2)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、パターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【化19】

式中、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、アルキレン基上に置換基を有していてもよいが置換基を有していない方が好ましい。アルキレン基上の置換基として好ましくは、アルキル基、フロロアルキル基、後述する水素結合性官能基を有する置換基が挙げられる。Rfはフロロアルキル基またはフロロアルキルエーテル基を表す。
nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
重合性単量体(Ax)中に存在する含フッ素基の数は他の成分との相溶性の観点から1〜3個が好ましく、より好ましくは1または2個であり、さらに好ましくは1個である。重合性単量体(Ax)が有する全フッ素原子の数は3〜60個が好ましく、より好ましくは5〜20個、さらに好ましくは9〜20個である。
重合性単量体(Ax)は、フッ素含有率が、30〜60%が好ましく、より好ましくは35〜55%であり、さらに好ましくは35〜50%である。フッ素含有率を適性範囲とすることでモールド汚れを低減でき且つ、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する。
【0094】
水素結合性官能基としては、水素結合可能な水素原子を有する官能基が好ましい。水素結合可能な水素原子を有する官能基としてはO−H結合、またはN−H結合を有する官能基が好ましく、−OH、−C(=O)OH、−SO3H、−NH−、−NH2、−NHC(O)−、−NHC(O)O−、−NHC(O)NH−、−SO2NH−、−SO2NHC(=O)−、−SO2NHSO2−で表される部分構造を有していることがより好ましく、−OH、−NHC(O)O−が更に好ましく、−OHが最も好ましい。
【0095】
本発明で用いる水素結合性官能基と含フッ素基を有する重合性単量体(Ax)としては、重合性基と、2価連結基(好ましくは、炭素原子、水素原子および酸素原子のみから構成される基、より好ましくは−CH2−、−O−、−C(=O)−、およびこれらの組み合わせからなる基)と、水素結合性官能基と、含フッ素基のみからなることが好ましい。
重合性単量体(Ax)としては下記一般式で表される重合性単量体が好ましい。
【化20】

(上記式中、R1は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはシアノ基であり、Rfは含フッ素基である。)
1はそれぞれ、水素原子、アルキル基またはシアノ基が好ましく、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が特に好ましく、水素原子が最も好ましい。
1のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられる。
Rfは、パーフロロアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜6のパーフロロアルキル基であることがより好ましい。
【0096】
本発明で用いる重合性単量体(Ax)の分子量は、好ましくは300〜2000であり、より好ましくは300〜1000であり、さらに好ましくは300〜800である。分子量を適切な範囲とすることで、モールドへの充填性が向上し、欠陥が低減できる。
【0097】
以下に、本発明の硬化性組成物で用いられる重合性単量体(Ax)の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【0098】
【化21】

【化22】

【0099】
本発明の硬化性組成物中における水素結合性官能基と含フッ素基を有する(Ax)の含有量は、特に制限はないが、硬化性、組成物粘度の観点から、全重合性単量体中、0.01〜100質量%が好ましく、0.05〜50質量%がより好ましく、0.1〜20質量%がさらに好ましく、0.2〜10質量%が特に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。
【0100】
重合性化合物としては、脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物を含有していることが好ましく、さらに、脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物とシリコン原子および/またはフッ素を含有する重合性化合物とを含むことが好ましい。さらに、本発明における光硬化性組成物に含まれる全重合性成分のうち、脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物とシリコン原子および/またはフッ素を含有する重合性化合物の合計が、全重合性化合物の、30〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
さらに好ましい様態として重合性化合物として芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフチル基、さらに好ましくはナフチル基)を含有する(メタ)アクリレート重合性化合物が、全重合性成分の70〜100質量%であることが好ましく、90〜100質量%であることがより好ましく、95〜100質量%であることが特に好ましい。
特に好ましい様態としては、下記重合性化合物(1)が、全重合性成分の0〜80質量%であり(より好ましくは、20〜70質量%)、下記重合性化合物(2)が、全重合性成分の20〜100質量%であり(より好ましくは、30〜80質量%)である場合である。
(1)芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフチル基、さらに好ましくはナフチル基)と(メタ)アクリレート基を1つ有する重合性化合物
(2)芳香族基(好ましくはフェニル基、ナフチル基、さらに好ましくはフェニル基)を含有し、(メタ)アクリレート基を2つ有する重合性化合物
【0101】
さらに、光硬化性組成物において25℃における粘度が5mPa・s未満の重合性化合物の含有量が全重合性化合物に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。上記範囲に設定することでインクジェット吐出時の安定性が向上し、インプリント転写において欠陥が低減できる。
【0102】
重合開始剤(B)
本発明で用いる光硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性化合物を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。光重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤が好ましく、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0103】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0104】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。この中でもアセトフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。
アセトフェノン系化合物として好ましくはヒドロキシアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、アミノアセトフェノン系化合物が挙げられる。ヒドロキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)が挙げられる。
ジアルコキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)が挙げられる。
アミノアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)379(EG)(2−ジメチルアミノー2ー(4メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、BASF社から入手可能なLucirinTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)が挙げられる。
オキシムエステル系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Irgacure(登録商標)OXE02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0105】
本発明で使用されるカチオン光重合開始剤としては、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、オキシムスルホネート化合物などが好ましく、4−メチルフェニル[4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(ローデア製 PI2074)、4−メチルフェニル[4 −(2−メチルプロピル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(BASF社製IRGACURE250)、IRGACURE PAG103、108、121、203(Ciba社製)などが挙げられる。
【0106】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0107】
(その他成分)
本発明で用いる光硬化性組成物は、上述の重合性化合物および光重合開始剤の他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分、顔料、染料等その他の成分を含んでいてもよい。本発明で用いる光硬化性組成物としては、界面活性剤、並びに、酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0108】
−界面活性剤−
本発明で用いる光硬化性組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。二種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0109】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤、Si系界面活性剤およびフッ素・Si系界面活性剤の少なくとも一種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とSi系界面活性剤との両方または、フッ素・Si系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・Si系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・Si系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明で用いる光硬化性組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のインプリント用硬化性組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0110】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれも大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記Si系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファックペインタッド31(大日本インキ化学工業(株)製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・Si系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、大日本インキ化学工業(株)製)が挙げられる。
【0111】
−酸化防止剤−
さらに、本発明で用いる光硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性化合物に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。二種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0112】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0113】
−重合禁止剤−
さらに、本発明で用いる光硬化性組成物には、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤を含めることにより、経時での粘度変化、異物発生およびパターン形成性劣化を抑制できる傾向にある。重合禁止剤の含有量としては、全重合性化合物に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。重合禁止剤は用いる重合性化合物にあらかじめ含まれていても良いし、組成物にさらに追加してもよい。
本発明に用いうる好ましい重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、フェノチアジン、フェノキサジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、ニトロベンゼン、ジメチルアニリン等が挙げられる。特に酸素が共存しなくても効果が高いフェノチアジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカルが好ましい。
【0114】
−溶剤−
本発明で用いる光硬化性組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が好ましい。
本発明で用いる光硬化性組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、パターン形成性の観点からは全組成物中30質量%以下が好ましく、10質量%がより好ましく、5質量%が更に好ましく、実質的に溶剤を含有していないことが最も好ましい。
【0115】
−ポリマー成分−
本発明で用いる光硬化性組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性化合物よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明で用いる光硬化性組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性化合物との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明で用いる光硬化性組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上の化合物の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上することからは、該成分は、少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0116】
本発明で用いる光硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
本発明における硬化性組成物は、重合性化合物が全体の90質量%以上を占めることが好ましい。
【0117】
本発明で用いる光硬化性組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0118】
パターン形成方法においては、まず、光硬化性組成物を基材または微細パターンを有するモールド上に適用してパターン形成層を形成する。ここで前記光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に適用する工程は、前記光硬化性組成物を25℃より高い温度(X℃)で、前記光硬化性組成物の液滴を吐出する工程である。液滴を吐出する方法としてμL〜nLオーダーの液滴を吐出できるマイクロディスペンス法、更に微小なpLオーダーの液滴を吐出できるインクジェット法等が挙げられ、インクジェット法が好ましい。
【0119】
インクジェット装置
本発明に用いられるインクジェット装置としては、特に制限はなく、市販のインクジェット装置が使用できる(例えばフジフイルムダイマティックス社製DMP−3000、DMP−2831など)。本発明で用いることのできるインクジェット装置としては、例えば、インク供給系、温度センサーを含む。インク供給系は、例えば、本発明に用いられる上記光硬化性組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、0.1〜100pl、好ましくは、0.5〜20plで吐出できるよう駆動することができる。吐出によって設置される液滴は間隔をおいて設置されていてもよいし、液滴が相互に結合するように設置してもよいが、残膜の厚さを均一に且つ薄くする観点から間隔をおいて設置されることが好ましい。液滴の総量は形成されるパターンによって異なり、パターンおよび残膜が適正な厚みになるように調整される。また、パターンの粗密に合わせて液滴の間隔を不均一にすることが好ましい。
【0120】
吐出される光硬化性組成物は(X℃)に設定されることから、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までのいずれかまたは全てにおいて、温度コントロールされることが好ましい。温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立上げ時間を短縮するため、あるいは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
【0121】
基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni,Cu,Cr,Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0122】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0123】
本発明において光透過性の基材を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0124】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0125】
次に、光硬化性組成物を基材と微細パターンを有するモールドではさんだ状態で光照射する。これにより光硬化組成物にモールドの反転パターンが転写され、基材とモールドを剥離することで基材上にパターンが形成される。基材と微細パターンを有するモールドではさむ際の圧力は10気圧以下が好ましい。これによりモールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。モールド圧力は、モールド凸部の硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0126】
光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0127】
本発明で用いる光硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0128】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0129】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要に応じて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明で用いる光硬化性組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【実施例】
【0130】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0131】
(硬化性組成物の調製)
下記表に示す重合性化合物、重合開始剤を混合し、さらに重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性化合物に対して200ppm(0.02質量%)となるように加えて調整した。調整した組成物を、0.1μmのテトラフロロエチレン製フィルターでろ過し、硬化性組成物を得た。さらに、硬化性組成物を吐出時の温度(X℃)まで加熱し、粘度を測定した。
【0132】
(粘度測定方法)
粘度の測定は、回転粘度計(東機産業(株)社製RE−80L)を用い、25℃における粘度は25±0.1℃、X℃における粘度はX℃±0.1℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満の場合は100rpmとし、5mPa・s以上10mPa・s未満の場合は50rpmとし、10mPa・s以上は30mPa・s未満の場合は20rpmとし、30mPa・s以上60mPa・s未満の場合は10rpmとし、60mPa・s以上120mPa・s未満の場合は5rpmとし、120mPa・s以上は1rpmもしくは0.5rpmとしてそれぞれ粘度の測定を行った。
下記表の粘度の単位は、mPa・sである。化合物の配合量は、重量比で示している。
【0133】
【表1】

【0134】
光重合開始剤
P1:IRGACURE379EG(BASF社製)
P2:DAROCURE1173(BASF社製)
【0135】
光硬化性組成物A1〜A12、B1、B2の組成を下記に示す。
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
(評価)
得られた各実施例および比較例の硬化性組成物について以下の評価を行った。結果を下記表に示す。
【0138】
<パターン形成方法>
モールドとして、線幅25nm、溝深さが40nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がオプツールDSX(ダイキン工業社製)で処理された石英モールドで、ラインエッジラフネスは2.5nmである物を用いた。
【0139】
富士フイルムダイマティックス社製、インクジェットプリンターDMP−2831を用いて、シリコンウェハ上にノズルあたり1plの液滴量で、100μm間隔の正方配列となるように、吐出タイミングを制御して光硬化性組成物を吐出した。この際、吐出される硬化組成物の温度が下記表に記載のX℃となるように装置内で加熱した。4インチウェハー10枚全面に連続吐出し、1枚目と10枚目のウェハーに0.1気圧の減圧下前記モールドをのせ、モールド側から水銀ランプを用い300mJ/cm2の条件で露光し、露光後、モールドを離し、パターンを得た。
【0140】
<パターン評価>
得られたパターンのパターン形状およびパターン欠陥を走査型電子顕微鏡で観察し、以下のように評価した。
(形状評価)
A:モールドに忠実な矩形パターンが得られた。
B:パターントップが丸みを帯びていたが、パターン高さは忠実であった。
C:パターントップが丸みを帯び、かつ、パターン高さが低かった。
(欠陥評価)
パターンの剥がれ、かけ、つぶれなどのパターン欠陥を観察した。
a:パターン欠陥が全くみられなかった。
b:一部の領域パターンに欠陥が見られたが、全パターン面積に対し、5%未満であった。
c:全パターン面積に対し、5%以上の領域でパターン欠陥が見られた。
【0141】
<ドライエッチング後のラインエッジラフネス(LER)>
パターン形成性評価で得られた10枚目のパターン付基板を、日立ハイテクノロジー(株)製ドライエッチャーを用いてAr/CF4/O2のガスでプラズマドライエッチングを行い、欠陥のないラインパターン部分の長手方向のエッジが5μmの範囲についてエッジのあるべき基準線からの距離を測長SEMにより50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほどラインエッジラフネスが良好であることを示す。
【0142】
【表4】

【0143】
上記表において、粘度の差とは、光硬化性組成物の25℃における粘度と吐出時の温度における粘度の差(単位:mPa・s)を示している。
【0144】
上記表から明らかなとおり、光硬化性組成物の25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、吐出時の温度が28℃以上である場合、パターン形成性およびドライエッチング後のラインエッジラフネスに優れたパターンが形成できることがわかった。本発明の方法では、光硬化性組成物の組成の種類にかかわらず実行可能であるため、適用範囲が広いという利点もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物および重合開始剤を含有する光硬化性組成物を基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、該光硬化性組成物をモールドまたは基材で挟んだ状態で光照射することを含むパターン形成方法であって、
光硬化性組成物の25℃における粘度が12〜100mPa・sであり、
光硬化性組成物は、液滴を吐出により、基材上または微細パターンを有するモールド上に適用し、かつ、前記光硬化性組成物の吐出時の温度が28℃以上である、パターン形成方法。
【請求項2】
前記光硬化性組成物の吐出をインクジェット法により行う、請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記光硬化性組成物の吐出時の温度が70℃以下である、請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記光硬化性組成物の吐出時の粘度が2mPa・s〜30mPa・sである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記光硬化性組成物の吐出時の粘度が5mPa・s以上12mPa・s未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
光硬化性組成物中に含まれる重合性化合物であって、25℃における粘度が5mPa・s未満の重合性化合物の含有量が、光硬化性組成物中に含まれる全重合性化合物の30質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
硬化性組成物の25℃における粘度と、光硬化性組成物の吐出時の粘度の差が、2〜100mPa・sである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
光硬化性組成物は、2種類以上の重合性化合物を含み、かつ、該光硬化性組成物中の配合量が一番多い重合性化合物と二番目に多い重合性化合物の、25℃における粘度の差が、0.1〜120mPa・sである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
硬化性組成物は、25℃における粘度が12mPa・s〜80mPa・sであり、吐出時の粘度が2mPa・s以上12mPa・s未満である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記光硬化性組成物が脂環炭化水素基および/または芳香族基を有する重合性化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のパターン形成方法を実行する手段を有するパターン形成装置。
【請求項13】
光硬化性組成物の温度コントロール部を有する、請求項12に記載のパターン形成装置。

【公開番号】特開2012−216700(P2012−216700A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81482(P2011−81482)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】