説明

パターン形成方法

【解決手段】ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン-1-オン、アセナフテンから選ばれる芳香族基含有繰り返し単位を有し、酸によりアルカリに溶解する高分子化合物を含む第1のポジ型レジスト材料を基板上に塗布して第1のレジスト膜を形成する工程と第1のレジスト膜上にアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料を塗布して第2のレジスト膜を形成する工程と高エネルギー線で露光、ベーク後現像液を用いて前記第1,2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成する工程とを含むパターン形成方法。
【効果】第2層のレジスト膜を第1層レジスト膜と組み合わせることにより第2層のレジスト膜単独の場合よりも現像後のレジストパターンをマスクにして基板をエッチング加工したりイオンを打ち込んだりするときの耐性を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に露光波長に高い吸収を有する第1のフォトレジスト膜を形成し、その上に第1のフォトレジスト膜を溶解させない炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のレジスト材料を塗布して第2のフォトレジスト膜を形成し、露光、現像によって第1と第2のレジストパターンを同時に形成するパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOSデバイスのpウエルとnウエルを形成するためKrFレジスト膜をマスクにしてイオンを打ち込んで形成される場合があるが、レジストパターンの微細化の進行と共に高い寸法制御が求められるようになってきた。イオンインプラントのためには、レジスト膜のスペース部分の基板面が現れている必要がある。レジスト膜の下に反射防止膜(BARC)層が存在すると、BARC層によってイオンがトラップされてしまうのである。しかしながら、BARC層無しでフォトレジスト膜をパターニングすると、基板反射による定在波が発生し、現像後のレジストパターンの側壁に強い凹凸が生じてしまう。定在波による凹凸をスムージングによって滑らかにするために、酸の拡散を大きくするための酸拡散し易い分子量の小さい酸が発生する酸発生剤(PAG)や高温PEBの適用が効果的とされている。KrF露光のイオンインプラントにおいて、イオンの斜め照射によってパターンの開口部の外側にもイオンを注入する検討が行われている。イオンの斜め注入のためにはレジスト膜厚を薄膜化する必要がある。薄膜化すると基板からの反射が増大し、定在波による凹凸が増大する。定在波による凹凸をスムーズにするために酸拡散を大きくするとこれによって解像性が劣化したりプロキシミティーバイアスが大きくなったりするため、好ましいことではない。
【0003】
フォトレジスト膜自体に吸収を持たせることによって定在波の発生を防止するダイ入りレジスト材料は、最も古典的な方法であり、i線やg線のノボラックレジスト材料から検討されてきた。KrF露光に用いられる吸収成分としてはアントラセン環がベースポリマーへ導入されたり、アントラセン環を有する添加剤の検討が行われている。しかしながら、吸収成分によって完全に定在波を防止することはできないし、吸収を大きくすると定在波は低減するもののレジストパターンの断面が台形のテーパー形状になってしまう問題が生じる。
【0004】
レジスト膜の上層に反射防止膜(TARC)を設けることも検討されている。TARCは定在波低減には効果があるが基板の凹凸によるハレーションの防止効果が無い。
【0005】
そこで、現像液に溶解するBARCの検討が行われている(非特許文献1,2)。当初、現像液に非等方性に溶解するBARCが検討されたが、溶解が進行しすぎるとレジストパターンの下にアンダーカットが入り、溶解が足りないとスペース部分に残渣が残り、寸法制御性に難があった。次に検討されたのは、感光性のBARCである。BARCとして機能するには、反射防止効果とその上にフォトレジスト材料を塗布したときにフォトレジスト溶液に溶解しないこと、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こさないことが必要である。BARC溶液を塗布後のベーク時に架橋することによってフォトレジスト溶液への溶解とインターミキシングを防止する。BARCにポジ型としての感光性の機能を持たせた場合、露光した領域はフォトレジスト膜と同様に現像液に溶解しなければならない。架橋したBARC膜は酸不安定基の脱保護によっても現像液に溶解しづらく、スペース部分に残渣が残る問題が生じている。
【0006】
従来型の架橋型BARCの場合は、レジスト現像後、ドライエッチングによってレジストパターンをマスクにして基板を加工するが、BARC膜を開けるためにレジストパターンが膜減りしてしまう問題があった。そこでエッチング速度の速いBARCが要求されてきた。BARC膜はエッチング耐性が殆ど期待できないため、基板加工のためのエッチング耐性向上はレジスト膜に要求されてきたが、レジスト膜の薄膜化によりエッチング耐性が低下してきている。基板加工のためのエッチング耐性をBARCに持たせようとすると、BARC膜を開けるときのレジストパターンのダメージが大きくなるジレンマが生じている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5039 p129 (2003)
【非特許文献2】Proc. SPIE Vol. 6153 p51532P (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イオンインプラント工程に用いられるフォトレジスト膜としては、開口した領域にイオンを打ち込むために現像後に露光部分の基板面が開口している必要がある。この場合、基板としてはシリコン基板が用いられるために基板からの反射が大きい。TARCは定在波を抑える効果があるが、定在波を完全に抑える最適な低屈折材料が存在しないために定在波が発生することと、基板に凹凸が存在するときの乱反射(ハレーション)を抑える効果がない。吸収成分入りレジスト膜は、吸収が強いと基板反射を抑える効果が高まるが、テーパー形状になり、テーパー形状が発生しないぐらいの少ない吸収の場合、基板反射を抑える効果が小さく、定在波による凹凸が発生する。BARCは吸収剤による光吸収と、最適な膜厚設定による入射光と反射光の相殺の2つの効果によって反射を抑えるために反射防止効果が非常に高いが、現像後にBARC面が現れてしまい、基板内部にイオンを打ち込むことができない。感光性のBARCはレジスト膜とのミキシングを防止するためにスピンコート後のベーク時の架橋によって露光部分のアルカリ現像液への溶解性が低下し、露光部分の基板面にスカム(残渣)が残る。基板面にスカムが残らない感光性のBARCを開発することが望まれている。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、露光部分の基板面にスカムが残らない寸法制御性に優れた感光性の反射防止膜としての効果が高い第1のフォトレジスト膜と、これの上に組み合わせる第2のフォトレジスト膜を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、下記パターン形成方法を提供するものである。
請求項1:
ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の10モル%以上100モル%以下の範囲で有し、かつ酸によってアルカリに溶解する高分子化合物を含む第1のポジ型レジスト材料を基板上に塗布して、第1のレジスト膜を形成する工程と、第1のレジスト膜上に第1のレジスト膜を溶解させない炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料を塗布して、第2のレジスト膜を形成する工程と、高エネルギー線で露光し、ベーク(PEB)後、現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
請求項2:
第1のレジスト膜の露光波長に対する消光係数(k値)が0.1〜1.1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
請求項3:
露光波長がKrFエキシマレーザーによる248nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
請求項4:
第1のレジスト材料の溶剤が、ケトン類、エーテル基又はエステル基を有するアルコール類、エーテル類、エステル類、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上の混合溶剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
請求項5:
第1のレジスト材料の溶剤が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種単独又は2種以上を混合したものであることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
請求項6:
第2のレジスト材料の炭素数3〜8のアルキルアルコール溶剤として、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、シクロヘキサノール、オクタノールから選ばれる1種を単独で又は2種以上を混合していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
請求項7:
炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料に用いられるベースポリマーが、ヒドロキシフェニル基を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
請求項8:
上記ベースポリマーが、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニル基を持つ繰り返し単位を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基、R3は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、X1は単結合、酸素原子、硫黄原子、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R2は単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基又はフッ素原子を有していてもよく、R3と結合して環を形成してもよい。mは1又は2である。aは0<a<1.0の範囲である。)
請求項9:
下記一般式(2)で示される、ヒドロキシフェニル基を有する繰り返し単位aと、酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を共重合した高分子化合物を第2のポジ型レジスト材料のベースポリマーとする請求項8に記載のパターン形成方法。
【化2】


(式中、R1〜R3、X1、mは前述と同様、R4、R7、R11は水素原子又はメチル基、X2、X3、X4は単結合、又は−C(=O)−O−、R5、R8、R12は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5はエーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよく、X3は−C(=O)−NH−であってもよい。R6、R9、R13は酸不安定基である。R10は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、p、sは1又は2であり、qは0〜4の整数であり、r1、r2は0〜2の整数であり、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
請求項10:
第1のポジ型レジスト材料の高分子化合物におけるナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する繰り返し単位cが、下記一般式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化3】


(式中、R14は水素原子又はメチル基、Yは単結合、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R15は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよい。Zはナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン又はアセナフテン環を有する1価の基を示し、これらがヒドロキシ基を有していてもよい。0<c<1.0の範囲である。)
請求項11:
ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する一般式(3)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の10モル%以上100モル%未満の範囲で有し、酸によってアルカリに溶解する第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物が、下記一般式(4)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【化4】


(式中、R4〜R15、X2、X3、Y、Z、p、q、r1、r2、sは前述の通り、0<c<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
請求項12:
第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物が、更にラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを含有することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン形成方法。
請求項13:
現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成した後にドライエッチングによって基板を加工することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
請求項14:
現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成した後に基板にイオンを打ち込むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【0011】
このようなパターン形成方法を適用することによって、基板からの反射を抑えることで現像後のフォトレジストパターン断面の定在波による凹凸の発生を防ぎ、現像後の露光部の基板面をスカムの発生が無く寸法制御性高く開口させることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも、芳香族基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の10モル%以上100モル%以下、好ましくは20モル%以上100モル%以下の範囲で有し、かつ酸によってアルカリに溶解する高分子化合物を含む第1層目のポジ型レジスト材料を基板上に塗布して第1のレジスト膜を形成し、第1のレジスト膜上に第1のレジスト膜を溶解させない炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料を塗布して、第2のレジスト膜を形成し、露光中に生じる基板からの反射による定在波やハレーションの影響を無くして露光し、ベーク(PEB)後、現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像することによって、現像後に基板面を開口させることができる。
本発明の第1層レジスト膜は芳香族基を多く有しているために、第2層のレジスト膜よりもエッチング耐性が高い。第2層のレジスト膜を第1層レジスト膜と組み合わせることによって、第2層のレジスト膜単独の場合よりも現像後のレジストパターンをマスクにして基板をエッチング加工したり、イオンを打ち込んだりするときの耐性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明のパターン形成方法を表す断面図であり、Aは基板上に被加工層、第1レジスト膜を形成した状態、Bはその上に第2レジスト膜を形成した状態、Cはこのレジスト膜を露光した状態、Dは現像した状態、Eはレジストパターンをマスクにして被加工層をエッチングした状態を示す。
【図2】図2は、本発明のパターン形成方法を表す断面図であり、Aは基板上に第1レジスト膜を形成した状態、Bはその上に第2レジスト膜を形成した状態、Cはこのレジスト膜を露光した状態、Dは現像した状態、Eはレジストパターンをマスクにして基板にイオンを打ち込んだ状態を示す。
【図3】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.3にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図4】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.4にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図5】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.5にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図6】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.6にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図7】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.7にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図8】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.8にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図9】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を1.9にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図10】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を2.0にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図11】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を2.1にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【図12】本発明の第1層目のレジスト膜のn値を2.2にし、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、Si等の高反射基板でパターニングを行うイオンインプランテーション用のフォトリソグラフィーにおいて、基板からの反射を防いでかつ露光部を開口させるために、DBARCを用いたときのような開口部分の残渣が発生しないパターニング方法及びこれに用いるフォトレジスト材料の鋭意検討を行った。
【0015】
本発明者らは、第1のポジ型レジスト材料としては、露光波長に強い吸収を有するポジ型レジスト材料を用い、その上に第1レジスト膜を溶解させない炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料を塗布し、露光と現像によって第1と第2のレジスト膜のパターンを同時に形成し、この時に、基板からの反射と定在波の発生によってレジストパターン側壁に凹凸が発生することを抑え、露光した部分の基板面を残渣の発生無く開口することが可能であることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、第1層目のレジスト膜は、DBARCのように架橋する必要がないため、露光部分にスカムが発生することがない。第1層目のレジスト膜はBARCと同じぐらいの吸収を有するが、架橋がない分だけコントラストを向上させることができ、テーパー形状を防止しスカムの発生を防止することができる。
【0016】
前記第1及び第2のポジ型レジスト材料は、化学増幅ポジ型レジスト材料であり、少なくとも第1のポジ型レジスト膜は、第2のポジ型レジスト材料の溶剤に溶解しないことが必要である。第1のポジ型レジスト材料のベースポリマーとして、ラクトンを主要な密着性基として有している場合、アルコール系の溶剤には溶解しづらくなる。一方、第2のレジスト材料としてアルコール系の溶剤に溶解するようにするためにはベースポリマーとして弱酸性のヒドロキシ基の存在が必須である。弱酸性のヒドロキシ基とは、2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基で表されるヘキサフルオロアルコール基、あるいはフェノール基である。
【0017】
第1のレジスト材料としてはフォトレジスト材料としての機能だけでなく、反射防止膜としての機能が必要である。露光波長が波長248nmのKrFエキシマレーザーの場合、吸収基としてはナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環が有効に用いられ、これらの中でもアントラセン環が最も好ましく用いられる。ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環は酸不安定基として有していてもよいし、密着性基として有していてもよいし、重合性基に直結したスチレンのような形態として共重合していてもよい。ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環を有する繰り返し単位のモル数としては、全繰り返し単位100モル%に対して10モル%以上100モル%以下、好ましくは10モル%以上100モル%未満、より好ましくは15〜90モル%、更に好ましくは20〜80モル%の範囲である。
【0018】
ここで、第1のポジ型レジスト材料のベースポリマー(高分子化合物)としては、下記一般式(3)で示される芳香族基を有する繰り返し単位cを有していることが好ましい。
【化5】


(式中、R14は水素原子又はメチル基、Yは単結合、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R15は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよい。Zはナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン又はアセナフテン環を有する1価の基を示し、これらがヒドロキシ基を有していてもよい。0<c<1.0の範囲である。)
【0019】
また、この場合、酸によってアルカリに溶解する第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物が、下記一般式(4)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を含有することが好ましい。
【化6】


(式中、R14、R15、Y、Z、cは前述の通り、R4、R7、R11は水素原子又はメチル基、X2、X3、X4は単結合、又は−C(=O)−O−、R5、R8、R12は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5はエーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよく、X3は−C(=O)−NH−であってもよい。R6、R9、R13は酸不安定基である。R10は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、p、sは1又は2であり、qは0〜4の整数であり、r1、r2は0〜2の整数であり、0<c<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
【0020】
一方、第2のポジ型レジスト材料のベースポリマー(高分子化合物)は、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニル基を持つ繰り返し単位を有することが好ましい。
【化7】


(式中、R1は水素原子又はメチル基、R3は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、X1は単結合、酸素原子、硫黄原子、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R2は単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基又はフッ素原子を有していてもよく、R3と結合して環を形成してもよい。mは1又は2である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0021】
この場合、下記一般式(2)で示される、ヒドロキシフェニル基を有する繰り返し単位aと、酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を共重合した高分子化合物を第2のポジ型レジスト材料のベースポリマーとすることが好ましい。
【化8】


(式中、R1〜R13、X1、X2、X3、X4、m、p、q、r1、r2、sは前述の通り、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
【0022】
ここで、繰り返し単位cを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
一般式(3)中の繰り返し単位中Zが、9−フルオレン、1−アセナフテン、9−キサントン、9−チオキサントンの場合は、酸不安定基として機能する。このもののモノマーとしては後述する。
【0027】
一方、繰り返し単位b1を得るためのモノマーとしては、下記に示すメタクリレートあるいはアクリレートモノマーである。
【化13】


(式中、R4〜R6、X2は前述の通りである。)
【0028】
b1を得るためのモノマーとしては、具体的には下記に例示される。
【化14】

【0029】
繰り返し単位b2、b3を得るためのモノマーとしては、下記に挙げることができる。
【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
【化17】

【0033】
第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物としては、一般式(4)で示される繰り返し単位c、b1、b2、b3に加えて、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを共重合することができる。これによって、第2のレジスト材料の溶剤として用いる炭素数3〜8のアルキルアルコール溶剤、具体的には、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、シクロヘキサノール、オクタノールから選ばれる溶剤への溶解性がほとんど無くなり、第2のレジスト材料をディスペンスしたときに第1レジスト膜が溶解したり、第2レジスト膜とインターミキシングしたりすることが起こらなくなる。
【0034】
ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを得るためのモノマーは、具体的には下記に例示される。
【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

【0037】
【化20】

【0038】
【化21】

【0039】
【化22】

【0040】
第1及び第2のレジスト材料に用いられる高分子化合物としては、具体的には下記に例示されるフェノール性水酸基を有する繰り返し単位eを共重合することもできる。
特に、第2のレジスト材料のベースポリマー(高分子化合物)は、フェノール性水酸基を共重合することによって炭素数3〜8のアルキルアルコール溶剤への溶解性が向上するために、第2のレジスト材料のベースポリマーの繰り返し単位aを有することが好ましいが、この繰り返し単位aを得るためのモノマーとしては下記のものが例示される。
【0041】
【化23】

【0042】
フェノール性水酸基は、モノマーの段階では酸不安定基やアシル基で保護しておき、重合後に酸やアルカリ水溶液で脱保護してヒドロキシ基にしてもよい。
【0043】
更に、エッチング耐性を向上するために、スチレン、ビニルクリセン、ビニルナフタセン、ビニルペンタセン、ビニルアセナフテン、インデン、アセナフチレン、クマリン、クロモン、無水マレイン酸、マレイミド、ビニルカルバゾール等の繰り返し単位fを共重合することもできる。これは、第1及び第2のレジスト材料の高分子化合物のどちらにも導入することができる。
【0044】
炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料に用いられるベースポリマーとしては、炭素数3〜8のアルキルアルコール溶剤への溶解性を向上させるために2,2,2−トリフルオロ−1−ヒドロキシエチル基を有する繰り返し単位gを共重合することもできる。
【0045】
【化24】


(式中、R20は水素原子又はメチル基、R21は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基又はフッ素原子を有していてもよく、R22と結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜8の非芳香環を形成してもよい。vは1又は2である。)
【0046】
繰り返し単位gを得るためのモノマーとして、具体的には下記に例示される。
【化25】

【0047】
【化26】

【0048】
【化27】

【0049】
【化28】

【0050】
【化29】

【0051】
第2のポジ型レジスト材料におけるベースポリマーとしての高分子化合物は、前述のフェノール性水酸基を有する繰り返し単位aを得るためのモノマーを共重合することが必要である。
【0052】
更には、下記に例示するヒドロキシ基を有する繰り返し単位hを共重合することもできる。これによってもアルコール溶剤への溶解性が向上する。ヒドロキシ基を有する繰り返し単位hは第1のレジスト材料のポリマーに導入しても構わない。ヒドロキシ基を有する繰り返し単位hを導入することによって酸拡散を抑える効果が高くなり、第2層目のレジスト膜だけでなく、第1層目のレジスト膜においても酸拡散制御によるリソグラフィー性能の向上が見込まれる。
【0053】
【化30】

【0054】
【化31】

【0055】
【化32】

【0056】
更には、下記に例示するモノマーに由来するスルホンアミド基を有する繰り返し単位iを共重合することもできる。これは、第2のレジスト材料のベースポリマーに導入することによってアルコール溶剤への溶解性が向上する。
【0057】
【化33】

【0058】
第2のポジ型レジスト材料におけるベースポリマーとしての高分子化合物は、前記一般式(2)で示されるヒドロキシフェニル基を有する繰り返し単位と酸不安定基を有する繰り返し単位以外に、前述のラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを共重合することができる。
【0059】
一般式(2)、(4)中、R6、R9、R13で示される酸不安定基は種々選定されるが、特に下記式(A−1)、(A−2)で示される基、下記式(A−3)で示される3級及び2級エステル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【0060】
【化34】

【0061】
式(A−1)において、R30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の三級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(A−3)で示される基を示し、三級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。a1は0〜6の整数である。
【0062】
式(A−2)において、R31、R32は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0063】
【化35】

【0064】
31とR32、R31とR33、R32とR33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR31、R32、R33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0065】
上記式(A−1)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0066】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【化36】

【0067】
ここで、R37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。
また、R39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。
a1は上記の通りである。
【0068】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−69のものを例示することができる。
【0069】
【化37】

【0070】
【化38】

【0071】
【化39】

【0072】
【化40】

【0073】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が挙げられる。
【0074】
また、下記一般式(A−2a)あるいは(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0075】
【化41】

【0076】
式中、R40、R41は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R40とR41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR40、R41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b1、d1は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、c1は1〜7の整数である。Aは、(c1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0077】
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c1は好ましくは1〜3の整数である。
【0078】
一般式(A−2a)、(A−2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2)−70〜(A−2)−77のものが挙げられる。
【0079】
【化42】

【0080】
次に、式(A−3)においてR34、R35、R36は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アリール基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素、塩素、臭素などのヘテロ原子を含んでもよく、R34とR35、R34とR36、R35とR36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の脂環を形成してもよい。R34、R35、R36の内、2つ以上が水素原子になることはない。
【0081】
式(A−3)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0082】
また、三級アルキル基、二級の酸不安定基としては、下記に示す式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【化43】

【0083】
式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R43は同一又は異種の水素原子、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。R44、R46は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R45は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基、炭素数2〜20のアルケニル基を示す。
【0084】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【化44】

【0085】
式(A−3)−19、(A−3)−20中、R43は前述と同様、R47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。e1は1〜3の整数である。
【0086】
式(A−1)、(A−2)、(A−3)中のR30、R33、R36は、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−メトキシフェニル基等のアルコキシ置換フェニル基等の非置換又は置換アリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等や、これらの基に酸素原子を有する、あるいは炭素原子に結合する水素原子が水酸基に置換されたり、2個の水素原子が酸素原子で置換されてカルボニル基を形成する下記式で示されるようなアルキル基、あるいはオキソアルキル基を挙げることができる。
【0087】
【化45】

【0088】
特に式(A−3)の酸不安定基としては、下記式(A−3)−21に示されるエキソ体構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位が好ましく挙げられる。
【0089】
【化46】


(式中、Rαは水素原子又はメチル基、Rc3は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。Rc4〜Rc9及びRc12、Rc13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示し、Rc10、Rc11は水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい1価の炭化水素基を示す。あるいは、Rc4とRc5、Rc6とRc8、Rc6とRc9、Rc7とRc9、Rc7とRc13、Rc8とRc12、Rc10とRc11又はRc11とRc12は互いに環を形成していてもよく、その場合には炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよい2価の炭化水素基を示す。またRc4とRc13、Rc10とRc13又はRc6とRc8は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0090】
ここで、一般式(A−3)−21に示すエキソ構造を有する繰り返し単位を得るためのエステル体のモノマーとしては特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0091】
【化47】

【0092】
更に、式(A−3)に示される酸不安定基としては、下記式(A−3)−22に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する(メタ)アクリル酸エステルの酸不安定基を挙げることができる。
【0093】
【化48】


(式中、Rαは前述の通りである。Rc14、Rc15はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。Rc14、Rc15は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂肪族炭化水素環を形成してもよい。Rc16はフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。Rc17は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を示す。)
【0094】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位を得るためのモノマーは下記に例示される。なお、Acはアセチル基、Meはメチル基を示す。
【0095】
【化49】

【0096】
【化50】

【0097】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−23で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化51】


(式中、R23-1は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基又はアルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。m23は1〜4の整数である。)
【0098】
式(A−3)−23で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化52】

【0099】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−24で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化53】


(式中、R24-1、R24-2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは水素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を有していてもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、又は炭素数6〜10のアリール基である。R24-3、R24-4、R24-5、R24-6は水素原子、あるいはR24-3とR24-4、R24-4とR24-5、R24-5とR24-6が結合してベンゼン環を形成してもよい。m24、n24は1〜4の整数である。)
【0100】
式(A−3)−24で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化54】

【0101】
【化55】

【0102】
【化56】

【0103】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−25で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化57】


(式中、R25-1は同一又は異種で、水素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、m25が2以上の場合、R25-1同士が結合して炭素数2〜8の非芳香環を形成してもよく、円は炭素CAとCBとのエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタレン基から選ばれる結合を表し、R25-2は炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。円がエチレン基、プロピレン基のとき、R25-1が水素原子となることはない。m25、n25は1〜4の整数である。)
【0104】
式(A−3)−25で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化58】

【0105】
【化59】

【0106】
【化60】

【0107】
【化61】

【0108】
【化62】

【0109】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−26で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化63】


(式中、R26-1、R26-2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。m26、n26は1〜4の整数である。)
【0110】
式(A−3)−26で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化64】

【0111】
【化65】

【0112】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−27で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化66】


(式中、R27-1、R27-2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。m27、n27は1〜4の整数である。Jはメチレン基、エチレン基、ビニレン基、又は−CH2−S−である。)
【0113】
式(A−3)−27で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化67】

【0114】
【化68】

【0115】
【化69】

【0116】
繰り返し単位b1及びb3のカルボキシル基の水素原子を下記一般式(A−3)−28で示される酸不安定基によって置換することもできる。
【化70】


(式中、R28-1、R28-2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ハロゲン原子、又はシアノ基である。Rは前述の通り。m28、n28は1〜4の整数である。Kはカルボニル基、エーテル基、スルフィド基、−S(=O)−、又は−S(=O)2−である。)
【0117】
式(A−3)−28で示される酸不安定基によって置換されたカルボキシル基を有するモノマーは、具体的には下記に例示される。
【化71】

【0118】
【化72】

【0119】
【化73】

【0120】
【化74】

【0121】
【化75】

【0122】
本発明のパターン形成方法に用いる第1、第2のレジスト材料に用いるベースポリマーでは、下記一般式(5)で示されるスルホニウム塩を持つ繰り返し単位j(j1、j2、j3)を共重合することができる。
【化76】


(式中、R020、R024、R028は水素原子又はメチル基、R021はフェニレン基、−O−R0−、又は−C(=O)−Y0−R0−である。Y0は酸素原子又はNH、R0は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R022、R023、R025、R026、R027、R029、R030、R031は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R032−、又は−C(=O)−Z1−R032−である。Z1は酸素原子又はNH、R032は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。j1は0≦j1≦0.3、j2は0≦j2≦0.3、j3は0≦j3≦0.3、0≦j1+j2+j3≦0.3である。)
【0123】
-の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン、トリフレート、1,1,1−トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート、トシレート、ベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5−ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート、メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等のイミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドなどのメチド酸を挙げることができる。
【0124】
更には、下記一般式(K−1)に示されるα位がフルオロ置換されたスルホネート、下記一般式(K−2)に示されるα,β位がフルオロ置換されたスルホネートが挙げられる。
【化77】

【0125】
一般式(K−1)中、R102は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ラクトン環、又はフッ素原子を有していてもよい。
一般式(K−2)中、R103は水素原子、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アシル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又はアリーロキシ基であり、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はラクトン環を有していてもよい。
【0126】
第1のレジスト材料のベースポリマーとしては、炭素数3〜8のアルコール溶剤に溶解しない特性が必要である。これらの溶剤に溶解させないためには、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する必要がある。一方、繰り返し単位aは炭素数3〜8のアルコールへの溶解性を促進させるため、第1のレジスト材料のベースポリマーへ導入しないか、あるいは導入したとしても共重合比として20モル%以下にすることが望まれる。繰り返し単位aを第2のレジスト材料のベースポリマーに導入することによって炭素数3〜8のアルコール溶剤への溶解性を上げているため、第2のレジスト材料のベースポリマーにラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を導入しても構わない。むしろ、これらの密着性基を導入することによって第2レジスト膜の密着性が向上する。
【0127】
第1のレジスト材料のベースポリマーとしては、繰り返し単位b1、b2、b3から選ばれる酸不安定基を有する繰り返し単位と、ラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる1つ以上の基を有する繰り返し単位と、ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環から選ばれる芳香族基を有する繰り返し単位cを共重合する。この1層目のレジスト膜は、反射防止膜(BARC)としての機能も有する。そのために露光波長に対して強い吸収を必要とする。k値としては0.1〜1.1、好ましくは0.2〜1.0の範囲の吸収が必要である。露光波長が248nmのKrFエキシマレーザーの場合、ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環、特にはアントラセン環がこの波長帯に強い吸収を有する。第1のレジスト材料のベースポリマーにナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環から選ばれる1種以上の芳香族基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の10〜100モル%、特に10モル%以上100モル%未満導入する必要がある。
ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテン環は、b1、b2、b3から選ばれる酸不安定基として導入してもよいし、フェノール性水酸基やカルボニル基、ラクトン環を有する密着性基として導入してもよいし、ビニルアントラセンのような非極性の繰り返し単位として導入してもよい。
【0128】
1層目のレジスト膜は、縮合芳香族基を多く含んでいるためにエッチング耐性が高く、イオン打ち込みの時の遮断性が高く、それぞれのマスクとしての高い機能を有する。2層目のレジスト膜は、通常のKrFレジスト並みのエッチング耐性しかないが、1層目のレジスト膜と組み合わせることによって高い耐性を得ることができる。
通常のBARCの場合は、レジストパターンをマスクにしてドライエッチングによってBARC膜を加工するために、エッチング速度が速いことが必要である。よってBARC膜にエッチング耐性はほとんど無い。本発明の1層目のレジスト膜は、BARCと同じ反射防止効果を有し、現像液によってパターンが形成されるためにドライエッチング加工による上層レジスト膜のダメージの心配が無く、しかもエッチング耐性が高い。
【0129】
第1のレジスト材料のベースポリマーの共重合比率としては、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0、0<c<1.0、0≦d<1.0、0≦e<1.0、0≦f<1.0、0≦g<1.0、0≦h<1.0、0≦i<1.0、0≦j<1.0、好ましくは0≦b1≦0.8、0≦b2≦0.8、0≦b3≦0.8、0.1≦b1+b2+b3≦0.8、0.05≦c≦0.8、0≦d≦0.8、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0≦g≦0.5、0≦h≦0.5、0≦i≦0.5、0≦j≦0.5の範囲であり、b1+b2+b3+c+d+e+f+g+h+i+j=1である。
【0130】
第2のレジスト材料のベースポリマーの共重合比率としては、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0、0≦c≦0.6、0≦d≦0.6、0≦e<1.0、0≦f<1.0、0≦g<1.0、0≦h<1.0、0≦i<1.0、0≦j≦1.0、好ましくは0.1≦a≦0.8、0≦b1≦0.8、0≦b2≦0.8、0≦b3≦0.8、0.1≦b1+b2+b3≦0.8、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0≦e≦0.5、0≦f≦0.5、0≦g≦0.6、0≦h≦0.5、0≦i≦0.5、0≦j≦0.5であり、a+b1+b2+b3+c+d+e+f+g+h+i+j=1である。
【0131】
第1のレジスト材料のベースポリマーに用いる酸不安定基を有する繰り返し単位b1、b2、b3と、第2のレジスト材料のベースポリマーに用いる酸不安定基を有する繰り返し単位b1、b2、b3とは同じ構造のものでもよいし、異なっていてもよい。例えば、第1レジスト、第2レジスト材料のベースポリマー共に酸不安定基を有する繰り返し単位がb1であったとしても、第2レジスト材料のベースポリマーの一般式(2)中のR6と第1レジスト材料のベースポリマーの一般式(4)中のR6が同じ構造であってもよいし、異なっていてもよい。また、第1レジスト材料のベースポリマーに繰り返し単位b1を用い、第2レジスト材料のベースポリマーに繰り返し単位b2を用いてもよい。
【0132】
パターン形状に応じて第1レジストと第2レジストの酸不安定基を調整することができる。パターンの基板面が裾引き形状になっている場合は、第1レジスト材料のベースポリマーの酸不安定基が脱保護しにくいことが原因の一つに挙げられる。この場合は、第2レジスト材料のベースポリマーに比べて第1レジスト材料のベースポリマーの保護基を脱保護し易く、脱保護の活性化エネルギーの低い酸不安定基に変えてやることによって裾引き形状を垂直形状に改善することができる。一方、パターンの基板面がアンダーカット形状になっている場合は、上記の場合と逆の調整、即ち第1レジスト材料のベースポリマーの保護基を脱保護しにくくしてやる必要がある。このように第1レジスト材料のベースポリマーと第2レジスト材料のベースポリマーに用いられる酸不安定基の種類を最適化することによって最適な形状を得ることができる。
【0133】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジストのベースポリマーとなる高分子化合物は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料現像後の熱架橋における架橋効率が低下することがあり、大きすぎるとアルカリ溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0134】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベースポリマーとなる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0135】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0136】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位a、b、c、d、e、f、g、h、i、jを得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよく、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後保護化あるいは部分保護化してもよい。なお、上記ベース樹脂を構成する高分子化合物は1種に限らず2種以上を添加することができる。複数種の高分子化合物を用いることにより、レジスト材料の性能を調整することができる。
【0137】
本発明のパターン形成方法に用いる第1層目及び第2層目のポジ型レジスト材料は、化学増幅ポジ型レジスト材料として機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0138】
本発明のレジスト材料は、更に、有機溶剤、塩基性化合物、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類のいずれか一つ以上を含有することができる。
【0139】
第1層目のレジスト材料の有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載されている化合物を用いることができる。
具体的には、第1のレジスト材料の溶剤が、ケトン類、エーテル基又はエステル基を有するアルコール類、エーテル類、エステル類、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上の混合溶剤であることが好ましく、特には、第1のレジスト材料の溶剤が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種単独又は2種以上を混合したものであることが好ましい。
【0140】
第2層目のレジスト材料の有機溶剤として炭素数3〜8のアルコールとしては、具体的にはn−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、シクロヘキサノール、オクタノールを挙げることができる。
【0141】
更に、上記アルコール溶剤に加えて、炭素数6〜12のエーテルを加えることもできる。炭素数6〜12のエーテルとしては、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−t−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、3,5−ジメチルアニソール、3,6−ジメチルアニソール、2,3,4−トリメチルアニソール、2,3,6−トリメチルアニソール、2,4,6−トリメチルアニソール、2,4,5,6−テトラメチルアニソール、2−エチルアニソール、3−エチルアニソール、4−エチルアニソール、2−イソプロピルアニソール、3−イソプロピルアニソール、4−イソプロピルアニソール、4−プロピルアニソール、2−ブチルアニソール、3−ブチルアニソール、4−ブチルアニソール、2−t−ブチルアニソール、3−t−ブチルアニソール、4−t−ブチルアニソール、ペンタメチルアニソール、2−ビニルアニソール、3−ビニルアニソール、4−メトキシスチレン、エチルフェニルエーテル、プロピルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、エチル−3,5−キシリルエーテル、エチル−2,6−キシリルエーテル、エチル−2,4−キシリルエーテル、エチル−3,4−キシリルエーテル、エチル−2,5−キシリルエーテル、メチルベンジルエーテル、エチルベンジルエーテル、イソプロピルベンジルエーテル、プロピルベンジルエーテル、メチルフェネチルエーテル、エチルフェネチルエーテル、イソプロピルフェネチルエーテル、プロピルフェネチルエーテル、ブチルフェネチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、アリルフェニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、アリルベンジルエーテル、ビニルフェネチルエーテル、アリルフェネチルエーテル、4−エチルフェネトール、t−ブチルフェニルエーテルを挙げることができる。
【0142】
第1層目のレジスト材料と第2層目のレジスト材料の塩基性化合物としては特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]、界面活性剤としては段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類としては段落[0179]〜[0182]に記載されている材料を用いることができる。
【0143】
上記塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0144】
なお、酸発生剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。有機溶剤の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量は、ベースポリマー100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
【0145】
ここで、本発明のパターン形成方法について説明する。
図1に示すパターニング方法において、基板10上の被加工層20上に第1レジスト膜31を塗布、形成する(A)。その上に第2レジスト膜32を塗布、形成する(B)。第1、第2レジスト溶液を塗布後、ベークを行うことによって溶剤を乾燥させ、第1と第2レジスト膜間のミキシングと、第2レジスト材料を塗布したときの第1レジスト膜の溶解を防止する。ベーク温度は70〜150℃の範囲が好ましく用いられる。第1レジスト膜の厚みは5〜100nmの範囲であり、反射防止効果の高い膜厚を選択することが好ましい。その後、露光(C)、現像(D)及びエッチング(E)を行う。
【0146】
従来から提案されているDBARCを用いるパターン形成方法の場合は、図1における第1レジスト膜がDBARC膜に相当する。DBARCを用いる場合は、DBARCを塗布後、200℃程度の高温のベークによる架橋反応によってその上にレジスト溶液を塗布したときの溶解やミキシングを防止する。しかしながら、架橋反応によって、現像液への溶解性が著しく低下し、スペース部分の残渣が発生する問題点を有している。
【0147】
BARCを用いたパターン形成方法においては、BARCには感光性がないために、レジスト膜現像後においても露光部が溶解することがない。露光部の被加工基板面を開けるために、現像後のレジストパターンをドライエッチングによって開口させるので被加工基板を加工する前の段階でレジスト膜の膜厚が減少している。
【0148】
図2に示されるパターニング方法においては、現像までは図1と同じである(但し、被加工層は形成しない)が、その後イオンを打ち込み、開口部の基板面にイオンが注入される(E)。BARCを用いたパターン形成方法を用いて、BARCをドライエッチングで開口させようとすると、基板面の表面が酸化されてしまい、イオンを打ち込んでもイオンが酸化膜で止まってしまう。イオン打ち込みのためのパターニングにおいては、現像後に基板面を開口させておく必要がある。
【0149】
図1のパターン形成方法の場合、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工層20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜が挙げられる。
【0150】
本発明においては、上記被加工層に直接又は珪素含有中間層を介して第1のポジ型レジスト材料、その上に第2のポジ型レジスト材料による第1及び第2のレジスト膜を形成するが、第1のレジスト膜の厚さとしては、5〜100nm、好ましくは10〜100nm、特に30〜70nmであることが好ましく、基板反射が最低になる膜厚を選択することが望ましい。第2レジスト膜の膜厚は20〜2,000nm、好ましくは30〜1,500nmの範囲である。第1及び第2レジスト膜は、スピンコート後の露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
【0151】
次いで、露光を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもKrFエキシマレーザーによる248nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。
【0152】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、好ましくは10〜100mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポジュアーベーク(PEB)する。
【0153】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。
【0154】
ここで第1層目のレジスト膜のn値を1.3〜2.2と0.1ステップで変化させ、k値と膜厚を変化させたときのレジスト膜の下方からの反射を計算した結果を図3〜12に示す。露光は波長248nmのKrFドライ露光のNA0.68、2/3輪帯照明である。
第1層目のレジスト膜の露光波長に対する消光係数(k値)と膜厚の最適値はそれぞれのn値毎に異なっている。反射率が1%以下(図中の反射率0〜0.01の白い部分)の最も薄膜の領域は、n値が高い場合ほど薄膜になり、この時のk値は高くなっている。
第1層目のレジスト材料は、反射防止するための吸光剤を多量に含有するために、膜厚が厚くなるとテーパー形状になる。そのために第1層目のレジスト膜の膜厚は、できるだけ薄膜にすることが必要である。例えば図7において、膜厚40〜60nmあるいは110〜140nmの範囲に反射率が1%以下になる領域が存在するが、この場合40〜60nmの領域の膜厚が好ましく用いられる。40〜60nmの範囲の中でもなるべく薄膜側の設定が好ましい。1層目のレジスト膜の屈折率nとしては、高い方がより薄膜で反射率を1%以下にすることができる。
【実施例】
【0155】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)は溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0156】
[合成例]
レジスト材料に添加される高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶剤下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1−1〜1−16、ポリマー2−1〜2−9、比較ポリマー1−1)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0157】
ポリマー1−1
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化78】

【0158】
ポリマー1−2
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.84
【化79】

【0159】
ポリマー1−3
分子量(Mw)=7,600
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化80】

【0160】
ポリマー1−4
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化81】

【0161】
ポリマー1−5
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化82】

【0162】
ポリマー1−6
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.89
【化83】

【0163】
ポリマー1−7
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化84】

【0164】
ポリマー1−8
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化85】

【0165】
ポリマー1−9
分子量(Mw)=9,600
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化86】

【0166】
ポリマー1−10
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.84
【化87】

【0167】
ポリマー1−11
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.85
【化88】

【0168】
ポリマー1−12
分子量(Mw)=8,500
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化89】

【0169】
ポリマー1−13
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.68
【化90】

【0170】
ポリマー1−14
分子量(Mw)=9,900
分散度(Mw/Mn)=2.05
【化91】

【0171】
ポリマー1−15
分子量(Mw)=9,900
分散度(Mw/Mn)=2.05
【化92】

【0172】
ポリマー1−16
分子量(Mw)=9,220
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化93】

【0173】
ポリマー2−1
分子量(Mw)=14,000
分散度(Mw/Mn)=1.45
【化94】

【0174】
ポリマー2−2
分子量(Mw)=10,300
分散度(Mw/Mn)=1.08
【化95】

【0175】
ポリマー2−3
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化96】

【0176】
ポリマー2−4
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化97】

【0177】
ポリマー2−5
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化98】

【0178】
ポリマー2−6
分子量(Mw)=8,700
分散度(Mw/Mn)=1.68
【化99】

【0179】
ポリマー2−7
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.87
【化100】

【0180】
ポリマー2−8
分子量(Mw)=9,500
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化101】

【0181】
ポリマー2−9
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.84
【化102】

【0182】
比較ポリマー1−1
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.89
【化103】

【0183】
[第1レジスト材料の組成]
上記で合成した高分子化合物(ポリマー1−1〜1−16、ポリマー2−1、比較ポリマー1−1)、酸発生剤、アミンクエンチャー、住友スリーエム(株)製界面活性剤;FC−4430が50ppm混合された溶剤を表1の組成で混合し、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した溶液を調製した。
ここで、比較レジスト1−3において、ポリマー1−1は2−メチル−1−ブタノールに溶解しなかった。
【0184】
下記表中の各組成は次の通りである。
酸発生剤:PAG(光酸発生剤)1〜4
【化104】


塩基性化合物(アミンクエンチャー):Quencher1,2
【化105】


有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
EL(乳酸エチル)
【0185】
【表1】

【0186】
[第2レジスト材料の組成]
上記で合成した高分子化合物(ポリマー2−1〜2−9、比較ポリマー1−1)、酸発生剤、アミンクエンチャー、住友スリーエム(株)製界面活性剤;FC−4430が50ppm混合された溶剤を表2の組成で混合し、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した溶液を調製した。
ここで、比較レジスト2−3において、比較ポリマー1−1は2−メチル−1−ブタノールに溶解しなかった。
【0187】
【表2】

【0188】
表1に示される第1レジスト材料を8インチのシリコンウエハーに塗布し、110℃で60秒間ベークし、厚さ50nmの第1レジスト膜を作製した。J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長248nmにおける屈折率(n,k)を求め、その結果を表3に示した。
【0189】
【表3】

【0190】
表1に示される第1レジスト材料を8インチのシリコンウエハーに塗布し、110℃で60秒間ベークし、厚さ50nmの第1レジスト膜を作製した。その上に表4に示す溶剤を20秒間静止ディスペンスし、1,500rpmで振り切った後100℃で60秒間ベークし、再度膜厚を測定し、ディスペンスによる膜減り量を求めた。結果を表4に示す。
【0191】
【表4】

【0192】
[実施例及び比較例]
露光実験
表1に示される第1レジスト材料を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライムしたSi基板にスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを50nmにした。その上に表2に示される第2レジスト材料をスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを200nmにした。これをKrFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−S203B,NA0.68、σ0.75、2/3輪帯照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて150nmライン300nmピッチのパターンを露光し、露光後、直ちに100℃で60秒間ベークし、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液で30秒間現像を行って、150nmラインアンドスペースパターンを得、パターンの断面形状をSEMにて観察した。結果を表5に示す。
【0193】
【表5】

【0194】
実施例1−1〜1−24では、現像後に第1層目と第2層目のレジストのパターンが形成されており、第1層目のレジスト膜の反射防止効果によって第2レジストパターンの側壁に定在波による凹凸の発生が見られなかった。一方、吸収成分を全く含まない比較レジスト1−1を第1層目のレジスト膜に用いた場合、現像後の第2層目のレジスト側壁には、基板反射の定在波による凹凸が発生した。
第1層目のレジスト膜にアルコール溶剤可溶のポリマーを用いた場合、第2層目のレジスト材料を塗布した時点で第1層目のレジスト膜を溶かしてしまい、第1層目と第2層目のレジスト膜の混合のためにパターンが形成しなかった。
第2層目のレジスト膜材料に第1層目のレジスト膜を溶解させるPGMEA系の溶剤を用いた場合も第1層目と第2層目のレジスト膜の混合のためにパターンが形成しなかった。
【0195】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様の作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0196】
10 基板
20 被加工層
31 第1レジスト膜
32 第2レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する繰り返し単位を全繰り返し単位の10モル%以上100モル%以下の範囲で有し、かつ酸によってアルカリに溶解する高分子化合物を含む第1のポジ型レジスト材料を基板上に塗布して、第1のレジスト膜を形成する工程と、第1のレジスト膜上に第1のレジスト膜を溶解させない炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料を塗布して、第2のレジスト膜を形成する工程と、高エネルギー線で露光し、ベーク(PEB)後、現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
第1のレジスト膜の露光波長に対する消光係数(k値)が0.1〜1.1の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
露光波長がKrFエキシマレーザーによる248nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
第1のレジスト材料の溶剤が、ケトン類、エーテル基又はエステル基を有するアルコール類、エーテル類、エステル類、ラクトン類から選ばれる1種又は2種以上の混合溶剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
第1のレジスト材料の溶剤が、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種単独又は2種以上を混合したものであることを特徴とする請求項4に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
第2のレジスト材料の炭素数3〜8のアルキルアルコール溶剤として、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−ジエチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、シクロヘキサノール、オクタノールから選ばれる1種を単独で又は2種以上を混合していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
炭素数3〜8のアルキルアルコールを溶剤とする第2のポジ型レジスト材料に用いられるベースポリマーが、ヒドロキシフェニル基を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
上記ベースポリマーが、下記一般式(1)で示されるヒドロキシフェニル基を持つ繰り返し単位を有することを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【化1】


(式中、R1は水素原子又はメチル基、R3は水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、X1は単結合、酸素原子、硫黄原子、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R2は単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基又はフッ素原子を有していてもよく、R3と結合して環を形成してもよい。mは1又は2である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【請求項9】
下記一般式(2)で示される、ヒドロキシフェニル基を有する繰り返し単位aと、酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を共重合した高分子化合物を第2のポジ型レジスト材料のベースポリマーとする請求項8に記載のパターン形成方法。
【化2】


(式中、R1〜R3、X1、mは前述と同様、R4、R7、R11は水素原子又はメチル基、X2、X3、X4は単結合、又は−C(=O)−O−、R5、R8、R12は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R5はエーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよく、X3は−C(=O)−NH−であってもよい。R6、R9、R13は酸不安定基である。R10は水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、p、sは1又は2であり、qは0〜4の整数であり、r1、r2は0〜2の整数であり、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
【請求項10】
第1のポジ型レジスト材料の高分子化合物におけるナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する繰り返し単位cが、下記一般式(3)で示されるものであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化3】


(式中、R14は水素原子又はメチル基、Yは単結合、−C(=O)−O−、又は−C(=O)−NH−、R15は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよい。Zはナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン又はアセナフテン環を有する1価の基を示し、これらがヒドロキシ基を有していてもよい。0<c<1.0の範囲である。)
【請求項11】
ナフタレン、フルオレン、フルオレノン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾクマリン、フェナレン−1−オン、アセナフテンから選ばれる1種以上の芳香族基を有する一般式(3)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の10モル%以上100モル%未満の範囲で有し、酸によってアルカリに溶解する第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物が、下記一般式(4)で示される酸不安定基を有する繰り返し単位b1〜b3のいずれか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【化4】


(式中、R4〜R15、X2、X3、Y、Z、p、q、r1、r2、sは前述の通り、0<c<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0<b1+b2+b3<1.0の範囲である。)
【請求項12】
第1のレジスト材料に用いられる高分子化合物が、更にラクトン環、カーボネート基、チオカーボネート基、カルボニル基、環状アセタール基、エーテル基、エステル基、スルホン酸エステル基、シアノ基、アミド基、−O−C(=O)−G−(Gは硫黄原子又はNHである。)から選ばれる密着性基を有する繰り返し単位dを含有することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成した後にドライエッチングによって基板を加工することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
現像液を用いて前記第1と第2のレジスト膜を同時に現像してレジストパターンを形成した後に基板にイオンを打ち込むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−108182(P2012−108182A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254760(P2010−254760)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】