説明

パターン形成方法

【課題】 ブロックコポリマーの自己組織化を利用し、低コストで周期パターンと非周期パターンを形成できるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 実施形態のパターン形成方法では、被加工膜上でブロックコポリマーを自己組織化させて第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを形成する。また、第1の条件で露光と現像を行い第1の領域に存在するブロックコポリマー全体を除去し、第1の領域以外の領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させる。また、第2の条件で露光と現像を行い第2の領域に存在する第1のブロック相を選択的に除去し、第1の領域以外の領域と第2の領域以外の領域との重なり領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させる。また、重なり領域を除く第2の領域に第2のブロック相のパターンを残存させ、残存したパターンをマスクとして被加工膜をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体のパターニングは以下のようにして行われている。すなわち、被加工膜上にレジストを塗布し、レジストを露光して露光領域を現像液可溶または不溶にした後に現像してレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして被加工膜を加工する。
【0003】
しかし、パターンサイズの微細化に伴い、露光装置の高額化やランニングコストの高騰で、高コストが問題となっている。
【0004】
そこで、ブロックコポリマー(BCP)を加熱してミクロ相分離すなわち自己組織化(DSA)させた後、ブロックコポリマーのトリミングを行って周期パターンを形成する領域を画定し、その後ブロックコポリマーの一方のブロックのみを除去して所望の領域にのみ周期パターンを形成することが行われている。しかし、さらに非周期パターンを形成するには、多くの追加の工程が必要となり、製造コストが高くなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Li et al., Chem. Mater., 26, 3800(2004)
【非特許文献2】P. Du et al., Adv. Mater., 16, 953(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ブロックコポリマーの自己組織化を利用し、低コストで周期パターンと非周期パターンを形成できるパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のパターン形成は、自己組織化する第1のブロックおよび第2のブロックを含むブロックコポリマーであって、第1の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって当該ブロックコポリマー全体が除去される。また、第2の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって自己組織化した第1のブロック相が選択的に除去される性質を有するブロックコポリマーを用意する。さらに、被加工膜上に当該ブロックコポリマーを塗布し、当該ブロックコポリマーを自己組織化させて第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを形成する。また、当該ブロックコポリマーに対して選択的に第1の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第1の領域に存在するブロックコポリマー全体を除去する。また、第1の領域以外の領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、残存した当該ブロックコポリマーに対して選択的に第2の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第2の領域に存在する第1のブロック相を選択的に除去する。また、第1の領域以外の領域と第2の領域以外の領域との重なり領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、当該重なり領域を除く第2の領域に第2のブロック相のパターンを残存させる。また、残存したパターンをマスクとして当該被加工膜をエッチングする。
【0008】
他の実施形態のパターン形成方法は、自己組織化する第1のブロックおよび第2のブロックを含むブロックコポリマーであって、第3の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって自己組織化した第1のブロック相が選択的に除去される。また、第4の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第2のブロック相が選択的に除去される性質を有するブロックコポリマーを用意する。さらに、被加工膜上に当該ブロックコポリマーを塗布し、当該ブロックコポリマーを自己組織化させて第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを形成する。また、当該ブロックコポリマーに対して選択的に第3の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第3の領域に存在する第1のブロック相を選択的に除去する。また、残存した当該ブロックコポリマーに対して選択的に第4の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって、第3の領域に含まれる第4の領域に残存する第2のブロックを除去する。さらに、第3の領域以外の領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、第3の領域中第4の領域以外の領域に第2のブロックを残存させる。また、残存したパターンをマスクとして当該被加工膜をエッチングする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態によるパターン形成方法を示す平面図。
【図2】第1の実施形態によるパターン形成方法に用いられるレチクルを示す平面図。
【図3】第2の実施形態によるパターン形成方法を示す平面図。
【図4】第2の実施形態によるパターン形成方法に用いられるレチクルを示す平面図。
【図5】第3の実施形態によるパターン形成方法を示す平面図。
【図6】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図7】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図8】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図9】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図10】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図11】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図12】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図13】第5の実施形態におけるデバイスパターンの例を示す平面図。
【図14】第5の実施形態において、1つのラインパターンの途中に狭スペースを形成する方法を示す平面図。
【図15】第5の実施形態において、ライン幅およびラインパターンの途中のスペース幅を狭く形成する方法を説明する平面図。
【図16】第6の実施形態におけるレチクルのパターンデータ生成のためのフローチャート。
【図17】第6の実施形態における設計パターンデータを示す平面図。
【図18】第6の実施形態において生成したレチクルパターンを示す平面図。
【図19】第6の実施形態において生成したブロックコポリマーパターンを示す平面図。
【図20】第6の実施形態において生成したレチクルパターンを示す平面図。
【図21】第7の実施形態におけるレチクルのパターンデータ生成のためのフローチャート。
【図22】比較例のパターン形成方法を示す平面図。
【図23】比較例のパターン形成方法に用いられるレチクルを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1(a)〜(f)を参照して、第1の実施形態におけるパターン形成方法を説明する。図1(f)に、目的とする被加工膜のパターンに対応するエッチングマスクのパターンを示す。被加工膜のパターンは、周期的なラインアンドスペース(L&S)パターンからなるセル部、周辺回路部、およびセル部と周辺回路部とを接続する引き出し線を含んでいる。周辺回路部はセル部のラインアンドスペース(L&S)パターンのハーフピッチよりも大きな寸法を有する。引き出し線のラインはセル部のラインと同じ幅であるが、引き出し線は非周期パターンである。
【0012】
第1の実施形態においては2回の露光および現像を行う。1回目の露光および現像により、一部の領域でブロックコポリマー全体を除去(トリミング)し、それ以外の領域に所望の周期パターンと所望の非周期パターンを含むブロックコポリマーを残す。2回目の露光および現像により、一部の領域で第1のブロックのみを除去して所望の周期パターンを形成する。
【0013】
第1の実施形態においては、第1のブロックとしてポリp−t−ブトキシカルボニルオキシ−α−メチルスチレン、第2のブロックとしてポリt−ブチルアクリレートを含むブロックコポリマーB1を用いる。このブロックコポリマーB1を下記化学式に示す。
【化1】

【0014】
ブロックコポリマーB1の塗布液には光酸発生剤(photoacid generator,PAG)が添加されている。第1のブロックはt−ブトキシカルボニル基によりスチレン側鎖のヒドロキシル基が保護されている。第2のブロックはt−ブチル基によりカルボキシル基が保護されている。これらの保護基が結合している状態では、第1および第2のブロックともテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液からなる現像液に不溶である。
【0015】
ブロックコポリマーB1をArF光で露光すると、光酸発生剤から酸が発生する。その後、ベーカーで加熱すると、酸が触媒として作用し、t−ブトキシカルボニル基およびt−ブチル基が脱離し、ブロックコポリマーB1全体がTMAH水溶液に可溶になる。このためArF光が照射された領域ではブロックコポリマーB1全体がTMAH水溶液に溶解して除去される。
【0016】
また、ブロックコポリマーB1をArF光で露光すると、第1のブロックは主鎖が切断されて低分子量のポリヒドロキシスチレンになる。このため、たとえばイソプロピルアルコールで現像すると、第1のブロックのみが除去される。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、ウエハ上の被加工膜11上にブロックコポリマー20を塗布する。ブロックコポリマーB1の組成は、第1のブロックと第2のブロックの比率が約7:3であるものを用いる。この組成のブロックコポリマーB1をアニールすると、第1のブロック相および第2のブロック相がそれぞれシリンダー状に自己組織化(ミクロ相分離)してほぼ1:1の幅で交互に配列する。図示しないが、自己組織化した2種のブロック相を配向させるために、被加工膜11上に予め物理ガイドパターンを形成している。
【0018】
また、図1(b)に示すように、無酸素オーブンを用いて窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーB1を自己組織化させ、物理ガイドの側面に沿ってシリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。
【0019】
次に、図2(a)に示すように、1回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板111上に遮光膜(またはハーフトーン膜)112のパターンを形成した第1のレチクル110を用意する。第1のレチクル110上のパターンサイズはウエハ上のパターンサイズの4倍になっている。ウエハ上にレンズを介して第1のレチクル110を配置する。
【0020】
また、図1(c)に示すように、第1のレチクル110の透光部(クォーツ基板111)を透過したArF光で、自己組織化したブロックコポリマーB1を縮小投影露光する。第1のレチクル110の透光部(クォーツ基板111)に対応した露光領域31を第1の領域、第1のレチクル110の遮光膜112に対応した未露光領域32を第1の領域以外の領域という。未露光領域32(第1の領域以外の領域)は、セル部、周辺回路部のラインを含む。
【0021】
ベーカーで加熱した後、TMAH水溶液で現像すると、図1(d)に示すように、第1の領域で第1のブロック相21および第2のブロック相22を含むブロックコポリマーB1全体が除去(トリミング)される。こうして、第1の領域以外の領域に所望の周期パターンと所望の非周期パターンを含むブロックコポリマーB1を残す。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、2回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板121上に遮光膜(またはハーフトーン膜)122のパターンを形成した第2のレチクル120を用意する。第2のレチクル120上のパターンサイズは、ウエハ上のパターンサイズの4倍になっている。ウエハ上にレンズを介して第2のレチクル120を配置する。
【0023】
また、図1(e)に示すように、第2のレチクル120の透光部(クォーツ基板121)を透過したArF光で、1回目の露光および現像を経たブロックコポリマーB1を縮小投影露光する。第2のレチクル120の透光部(クォーツ基板121)に対応した露光領域41を第2の領域、第2のレチクル120の遮光膜122に対応した未露光領域42を第2の領域以外の領域という。第2の領域は、セル部および引き出し線のパターンが形成される領域に対応する。こうして、第1のブロック相21の主鎖を切断して分解させる。
【0024】
イソプロピルアルコールで現像すると、図1(f)に示すように、第2の領域で第1のブロック相21のみが除去される。この結果、セル部の周期的なラインアンドスペース(L&S)パターンおよび引き出し線に対応するパターンが残る。また、1回目の露光時の未露光領域32(第1の領域以外の領域)と2回目の露光時の未露光領域42(第2の領域以外の領域)との重なり領域に、周辺回路部に対応して第1のブロック相21および第2のブロック相22を含むパターンが残る。
【0025】
これにより、エッチングマスクとなるブロックコポリマーB1のパターンが形成される。このブロックコポリマーB1のパターンをマスクとして被加工膜をエッチングする。ブロックコポリマーB1のパターンを除去すると、所望の被加工膜パターンが得られる。
【0026】
図1(c)および(d)からわかるように、引き出し線のパターンを形成するための第1のレチクル110の遮光膜112の幅は、1回目の露光時の未露光領域32が1つの第2のブロック相22の幅をカバーするが、隣接する第2のブロック相22にかからないように設計される。すなわち、遮光膜112の幅は、未露光領域32の幅が第1および第2のブロック相のピッチの0.5倍(ハーフピッチ)よりも大きく、第1および第2のブロック相のピッチの1.5倍よりも小さく、通常は第1および第2のブロック相のピッチと同程度になるように設計される。
【0027】
つまり、露光装置でパターニングされるラインパターンの幅の約半分の幅で、最終的な引き出し線を形成することができる。このことは、解像性能の低いより安価な露光装置を使用できること、およびパターン形成のためにダブルパターニングなどの付加プロセスも不要であることを意味し、コスト削減に有利である。
【0028】
(比較例)
次に、第1の実施形態の方法と対比するための比較例として、従来のパターン形成方法の一例を説明する。ここでは、従来の方法で図1(f)と同じエッチングマスクのパターンを形成するために、セル部および引き出し線のパターンに対応してハードマスクに転写したパターンを形成し、周辺回路部のパターンに対応してレジストパターンを形成することを想定する。
【0029】
最初に、図22(a)に示すように、ウエハ上の被加工膜11上にハードマスク12を形成する。図22(b)に示すように、ハードマスク12上に第1の実施形態で用いたのと同じブロックコポリマー20を塗布する。第1の実施形態と同様に、図22(c)に示すように、無酸素オーブン中でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させ、物理ガイドの側面に沿ってシリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。
【0030】
次に、図23(a)に示すように、1回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板211上に遮光膜(またはハーフトーン膜)212のパターンを形成した第1のレチクル210を用意する。比較例で用いる第1のレチクル210は、遮光膜212のパターンのないクォーツ基板211からなる透光部が周辺回路部に対応する領域、遮光膜212のパターンがセル部および引き出し線に対応する領域となっており、第1の実施形態で用いる第1のレチクル110とは異なるパターンを有する。
【0031】
図22(d)に示すように、第1のレチクル210の透光部(クォーツ基板211)を透過したArF光で、自己組織化したブロックコポリマーB1を縮小投影露光する。ベーカーで加熱した後、TMAH水溶液で現像すると、周辺回路部でブロックコポリマー全体が除去され、セル部および引き出し線にブロックコポリマーが残る。
【0032】
図22(e)に示すように、残ったブロックコポリマーを再びArF光で露光し、第1のブロック相21の主鎖を切断して分解させる。イソプロピルアルコールで現像すると、第1のブロック相21のみが除去され、セル部および引き出し線に第2のブロック相22からなるパターンが残る。
【0033】
図22(f)に示すように、第2のブロック相22のパターンをマスクとして、ハードマスク12をエッチングする。第2のブロック相22をアッシングにより除去すると、ハードマスク12のパターンが得られる。
【0034】
図22(g)に示すように、露出した被加工膜11およびハードマスク12のパターン上にレジスト200を塗布する。
【0035】
次に、図23(b)に示すように、2回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板221上に遮光膜(またはハーフトーン膜)222のパターンを形成した第2のレチクル220を用意する。比較例で用いる第2のレチクル220は、遮光膜222のパターンからなる遮光部が周辺回路部に対応する領域、遮光膜222のパターンのないクォーツ基板221からなる透光部が周辺回路部以外に対応する領域となっており、第1の実施形態で用いる第2のレチクル120とは異なるパターンを有する。
【0036】
図22(h)に示すように、第2のレチクル220の透光部(クォーツ基板221)を透過したArF光で、レジスト200を縮小投影露光する。現像液で現像すると、周辺回路部以外の領域でレジスト200が除去され、周辺回路部にレジスト200のパターンが残る。
【0037】
レジスト200のパターンおよびハードマスク12のパターンをマスクとして被加工膜11をエッチングする。レジスト200のパターンおよびハードマスク12のパターンを除去すると、所望の被加工膜パターンが得られる。
【0038】
第1の実施形態の方法は、比較例の方法と対比して、ハードマスクの形成、ハードマスクのエッチング、レジストの塗布、レジストの露光・現像を行う必要がない。したがって、第1の実施形態の方法は、比較例の方法よりも、コストを抑えることができる。
【0039】
(変形例)
第1の実施形態では、露光光として2回ともArF光を用いたが、露光光はArF光に限定されない。また、1回目の露光波長と2回目の露光波長を変えてもよい。この場合、一方の露光光でのみ酸を発生する酸発生剤を用いれば、1回目の露光と2回目の露光のいずれかで選択的に酸を発生させることができる。
【0040】
ブロックコポリマー全体を除去するためには、酸発生剤から酸を発生させて、これを触媒にしてブロックコポリマーの保護基を脱離させて現像液可溶にできればよい。従って他の波長の光を使用することが可能である。また、露光は光に限定されず、電子ビーム、イオンビームを用いることもできる。さらにレチクルを用いる必要はなく、レーザー光、電子ビーム、イオンビームを予め作成したデータに従って走査させたり、アパーチャーで成形してもよい。
【0041】
また、必ずしもブロックコポリマーの両方のブロックに極性を変化させる目的で保護基を導入する必要はなく、一方のブロックの極性を変化させればブロックコポリマー全体が現像液可溶になるのであれば、一方のブロックのみに保護基を導入してもよい。また、一方のブロックは極性の変化により現像液可溶になり、他方のブロックは主鎖が切断されて現像液可溶になるようにしてもよい。
【0042】
アルカリ現像液はTMAH水溶液に限定されず、他のアルカリ水溶液であってもよい。現像液として有機溶媒を用いてもよく、この場合には水溶液を用いる場合と可溶部および不溶部が逆転する。第1の実施形態では露光後に加熱し、酸を触媒にしてブロックコポリマーの保護基を脱離させたが、アセタールのように室温で保護基の脱離反応が起こる場合には露光後に必ずしも加熱する必要はない。
【0043】
ヒドロキシ基やカルボキシル基をt−ブトキシカルボニル基やt−ブトキシ基のような保護基で保護している側鎖を持つブロックコポリマーに対して、熱酸発生剤(thermal acid generator、TAG)を添加し、加熱することによって、ブロックコポリマーの極性を変化させることもできる。加熱によりTAGから酸が発生し、この酸が触媒となって、t−ブトキシカルボニル基やt−ブトキシ基のような保護基がブロックコポリマーから脱離すると、ヒドロキシ基やカルボキシル基が生成するため、ブロックコポリマーの極性が変化する。この場合、ブロックコポリマーにレーザー光を照射して局所加熱する。こうして、一部の領域でブロックコポリマー全体を選択的に除去することができる。
【0044】
ブロックコポリマーの一方のブロックのみを除去するには、一方のブロックで主鎖の切断を起こすようにする。露光によりブロックの主鎖を切断する場合、ブロックに吸収される波長を有し、ブロックの主鎖の切断に必要なエネルギーをもつ露光光が使用される。加熱によりブロックの主鎖を切断させてもよい。このような熱分解性ポリマーは、たとえば特開2001−151834号公報に記載されている。光照射により光酸発生剤から酸を発生させた後、加熱して酸を触媒としてブロックの主鎖を切断させてもよい。
【0045】
一方のブロックのみを除去するために用いられる現像液はイソプロピルアルコールに限定されない。ブロックの主鎖が切断されることにより生成した低分子ポリマーが溶解すればよく、イソプロピルアルコール以外の有機溶媒を使用することもできる。
【0046】
一方のブロックを除去する際に、必ずしも現像を行う必要はない。たとえば、真空中で光を照射し、照射領域で一方のブロックの主鎖を切断するとともに除去することもできる。
【0047】
1回目の露光と2回目の露光で反応を変えるには、露光光の波長を変えたり、一方の露光光でのみ酸を発生させる酸発生剤を用いてもよい。こうして、1回目の露光と2回目の露光で酸の発生量を変えることができる。
【0048】
1回目の現像および2回目の現像のいずれでも現像液としてアルカリ現像液を用い、両者の濃度を変えることにより、選択的に除去領域を変えてもよい。たとえば、ブロックコポリマー全体を除去する際には高濃度のアルカリ現像液を用い、一方のブロックのみを除去する際には低濃度のアルカリ現像液を用いて露光によりブロックの主鎖が切断されたことにより生成する低分子量のポリマーだけを除去してもよい。また、1回目の現像および2回目の現像のいずれでも現像液として有機溶媒を用い、両者の極性を変えることにより、選択的に除去領域を変えてもよい。
【0049】
一方のブロックのみを除去するためにドライエッチングで行ってもよい。この場合、露光領域と未露光領域とでエッチング選択比が取れ、未露光の第1のブロックと第2のブロックとの間でもエッチング選択比がとれるようにする。たとえば、第1のブロックとしてネガ型レジストのように露光により架橋するポリマーを用いる。周辺回路部を露光し、セル部を未露光として、ドライエッチングを行うと、セル部で第1のブロックがエッチングされる。
【0050】
ドライエッチングの選択比を変える方法としては次のようなものがある。エッチングガスとしては、酸素、フルオロカーボン(たとえばCFやCHF等)、HO、CO、Ar等が用いられる。これらのガスを単独で用いるか、または混合比が調整された混合ガスとして用いることにより、第1のブロックおよび第2のブロックのエッチング速度を変化させることができ、エッチング選択比を調整することができる。また、バイアス電圧を変化させてイオンのエネルギーを変化させることにより、第1のブロックおよび第2のブロックでスパッタリングと化学反応の比率を調整でき、エッチング選択比を調整することができる。
【0051】
ここでは化学式1で示したブロックコポリマー材料を用いたが、一方のポリマーが酸化物の蒸気圧が低い元素、たとえばSi、を含むようにし、もう一方のポリマーが有機物のみでその酸化物の蒸気圧が高く、酸素によりエッチングされやすくなるようにすると、効果的である。
【0052】
第1の実施形態では、ブロックコポリマーの構造がシリンダーとなるようにブロックコポリマーの組成を選択したが、ブロックコポリマーがラメラとなる組成を用いても良い。この場合にはポリマー1とポリマー2の組成がほぼ1:1となる。この場合にはラメラが表面に平行でなく、表面に垂直となるように配向させるために、被加工膜とブロックコポリマーの表面にエネルギーを調整するための中間膜を形成する必要がある。
【0053】
第1の実施形態では、ブロックコポリマーを配向させるガイドとして物理ガイドを用い、いわゆるグラフォエピタキシー(graphoepitaxy)を行っている。しかし、ブロックコポリマーを配向させる方法はこれに限定されない。たとえば、表面エネルギーの異なるパターンを形成し、それに従ってブロックコポリマーを配向させてもよい。また、電場を印加してブロックコポリマーを配向させてもよい。これらの方法は、D. Sundrani et al. Langmuir, 20, 5091 (2004); J. Y. Cheng et al., Adv. Mater., 20, 3155 (2008);T. L. Morkved, Science, 273, 931 (1996) 等に記載されている。これらの方法により、露光装置でパターニングされるパターンより寸法の小さいパターンを形成することができる。
【0054】
上述したように、第1の実施形態では、ブロックコポリマー全体を除去して所望の周期パターンと所望の非周期パターンを含む領域を残すことと、ブロックコポリマーの一方のブロックのみを除去して所望の領域にのみ周期パターンを形成することにより、周期パターンと非周期パターンを形成する。この方法を実現できるブロックコポリマーの材料、ブロックコポリマーを配向させるガイド、リソグラフィー条件、ドライエッチング条件については上記以外にも種々の変形が可能である。
【0055】
(第2の実施形態)
図3(a)〜(d)を参照して、第2の実施形態におけるパターン形成方法を説明する。図3(d)に、目的とする被加工膜のパターンに対応するエッチングマスクのパターンを示す。図3(d)のパターンは図1(f)のパターンと同様である。
【0056】
第2の実施形態においては2回の露光および現像を行う。1回目の露光および現像により、周辺回路部以外の領域で第1のブロックのみを除去する。2回目の露光および現像により、一部の領域で、残存している第2のブロックの不要部分を除去する。
【0057】
第2の実施形態においては、第1のブロックとしてポリα−メチルスチレン、第2のブロックとしてポリアダマンチルメチルエチルアクリレートを含むブロックコポリマーB2を用いる。このブロックコポリマーB2を下記化学式に示す。
【化2】

【0058】
ブロックコポリマーB2の塗布液には光酸発生剤(PAG)が添加されている。ブロックコポリマーB2をArF光で露光すると、第1のブロックであるポリα−メチルスチレンは主鎖が切断されて低分子量になる。このため、たとえばイソプロピルアルコールで現像すると、第1のブロックのみが除去される。第2のブロックはアダマンチルメチルエチル基によりカルボキシル基が保護されている。保護基が結合している状態では、第2のブロックはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液からなる現像液に不溶である。ブロックコポリマーB2をArF光で露光すると、光酸発生剤から酸が発生する。その後、ベーカーで加熱すると、酸が触媒として作用し、アダマンチルメチルエチル基が脱離し、第2のブロックがポリアクリル酸となり、TMAH水溶液に可溶になる。このためArF光が照射された領域では第2のブロックがTMAH水溶液に溶解して除去される。
【0059】
なお、1回目の露光量では第2のブロックで十分な脱保護反応が起きずに一定割合のアダマンチルメチルエチル基が残り、2回目に露光されたときに第2のブロックで十分な脱保護反応が起き、第2のブロックがTMAH現像液に可溶になるように、材料設計を行う。
【0060】
まず、被加工膜11上に図示しない物理ガイドを形成し、被加工膜11上にブロックコポリマー20を塗布する。次に、無酸素オーブンを用いて窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーB2を自己組織化させ、物理ガイドの側面に沿ってシリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。ここまでの工程は、図1(a)および(b)と同一である。
【0061】
次に、図4(a)に示すように、1回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板131上に遮光膜(またはハーフトーン膜)132のパターンを形成した第3のレチクル130を用意する。第3のレチクル130上のパターンサイズはウエハ上のパターンサイズの4倍になっている。ウエハ上にレンズを介して第3のレチクル130を配置する。
【0062】
また、図3(a)に示すように、第3のレチクル130の透光部(クォーツ基板131)を透過したArF光で、自己組織化したブロックコポリマーB2を縮小投影露光する。第3のレチクル130の透光部(クォーツ基板131)に対応した露光領域51を第3の領域、第3のレチクル130の遮光膜132に対応した未露光領域52を第3の領域以外の領域という。第3の領域は周辺回路部のラインパターン以外の領域に対応する。こうして、第1のブロック相21の主鎖を切断して分解させる。
【0063】
イソプロピルアルコールで現像すると、図3(b)に示すように、第3の領域で第1のブロック相21のみが除去される。この結果、セル部の周期的なラインアンドスペース(L&S)パターンおよび引き出し線に対応するパターンが残る。また、未露光領域52(第3の領域以外の領域)に、周辺回路部に対応して第1のブロック相21および第2のブロック相22を含むパターンが残る。
【0064】
次に、図4(b)に示すように、2回目の縮小投影露光を行うために、クォーツ基板141上に遮光膜(またはハーフトーン膜)142のパターンを形成した第4のレチクル140を用意する。第4のレチクル140上のパターンサイズは、ウエハ上のパターンサイズの4倍になっている。ウエハ上にレンズを介して第4のレチクル140を配置する。
【0065】
また、図3(c)に示すように、第4のレチクル140の透光部(クォーツ基板141)を透過したArF光で、1回目の露光および現像を経たブロックコポリマーB2を縮小投影露光する。第4のレチクル140の透光部(クォーツ基板141)に対応した露光領域61を第4の領域、第4のレチクル140の遮光膜142に対応した未露光領域62を第4の領域以外の領域という。第4の領域は引き出し線のパターンを除去する領域に対応する。
【0066】
ベーカーで加熱した後、TMAH水溶液で現像すると、図3(d)に示すように、第4の領域で第2のブロック相22が除去される。こうして、第4の領域以外の領域62に、セル部の周期パターンと、周辺回路部の非周期パターンが残り、セル部と周辺回路部が引き出し線のパターンで接続される。このブロックコポリマーB2のパターンをマスクとして被加工膜をエッチングする。ブロックコポリマーB2のパターンを除去すると、所望の被加工膜パターンが得られる。
【0067】
図3(c)および(d)からわかるように、引き出し線のパターンを形成するための第4のレチクル140の遮光膜142の幅は、2回目の露光時の未露光領域62が1つの第2のブロック相22の幅をカバーするが、隣接する第2のブロック相22にかからないように設計される。すなわち、この領域の遮光膜142の幅は、未露光領域62の幅が第1および第2のブロック相のピッチの0.5倍(ハーフピッチ)よりも大きく、第1および第2のブロック相のピッチの1.5倍よりも小さく、通常は第1および第2のブロック相のピッチと同程度に設定される。つまり、露光装置でパターニングされるラインパターンの幅の約半分の幅で、最終的な引き出し線を形成することができる。このことは、解像性能の低いより安価な露光装置を使用できること、およびパターン形成のためにダブルパターニングなどの付加プロセスも不要であることを意味し、コスト削減に有利である。
【0068】
第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、種々の変形例を適用できる。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の方法を用いるが、図1(c)に対応する1回目の露光・現像において、図5に示す第5のレチクル150を用いて露光を行い、有機現像液(たとえばアニソール)を用いて現像することにより露光領域にブロックコポリマーB1を残す。第5のレチクル150は、クォーツ基板151上に形成される遮光膜152のパターンが、図2(a)の第1のレチクル110と反転している。したがって、遮光膜152のパターンからなる遮光部に対応した未露光領域が第1の領域、遮光膜152のパターンのないクォーツ基板151からなる透光部に対応した露光領域が第1の領域以外の領域となる。このように第3の実施形態ではブロックコポリマーB1をネガ型レジストとして用いる。
【0070】
まず、図1(a)および(b)と同様に、被加工膜11上に図示しない物理ガイドを形成し、被加工膜11上にブロックコポリマー20を塗布する。次に、無酸素オーブンを用いて窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーB1を自己組織化させ、物理ガイドの側面に沿ってシリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。
【0071】
第5のレチクル150の透光部(クォーツ基板151)を透過したArF光で、自己組織化したブロックコポリマーB1を縮小投影露光する。
【0072】
その後、ベーカーで加熱する。この結果、露光領域(第1の領域以外の領域)のブロックコポリマーB1は保護基が脱離して極性になって有機現像液に不溶となり、未露光領域(第1の領域)のブロックコポリマーB1は有機現像液に可溶なままである。アニソールで現像すると、図1(d)に示すように、未露光領域(第1の領域)で第1のブロック相21および第2のブロック相22を含むブロックコポリマーB1全体が除去(トリミング)される。こうして、第1の領域以外の領域に所望の周期パターンと所望の非周期パターンを含むブロックコポリマーB1を残す。
【0073】
その後、図1(e)と同様に、第2のレチクル120の透光部(クォーツ基板121)を透過したArF光で、1回目の露光および現像を経たブロックコポリマーB1を縮小投影露光する。こうして、第2の領域において第1のブロック相21の主鎖を切断して分解させる。イソプロピルアルコールで現像すると、図1(f)と同様に、セル部の周期的なラインアンドスペース(L&S)パターン、引き出し線に対応するパターン、および周辺回路部に対応するパターンが残る。なお、イソプロピルアルコールで現像する代わりに、真空中でエネルギー線を照射して第1のブロック相の分解生成物を気化させてもよい。
【0074】
これにより、エッチングマスクとなるブロックコポリマーB1のパターンが形成される。このブロックコポリマーB1のパターンをマスクとして被加工膜をエッチングする。ブロックコポリマーB1のパターンを除去すると、所望の被加工膜パターンが得られる。
【0075】
第3の実施形態で用いられる材料、リソグラフィー条件、照射エネルギー線は特に限定されない。1回目の露光でブロックコポリマー全体がネガ型レジストとして作用し、2回目の露光で第1のブロックの主鎖が切断され現像により除去されるような、ブロックコポリマーと現像液との組み合わせを用いればよい。
【0076】
また、1回目の露光で第1のブロックおよび第2のブロックの両方を架橋させ、2回目の露光で第1のブロックのみが吸収をもち1回目の露光光よりも高エネルギーのエネルギー線を照射して第1のポリマーの主鎖を切断してもよい。
【0077】
第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、種々の変形例を適用できる。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第2の実施形態と同様の方法を用いるが、図3(c)に対応する2回目の露光・現像において、図5に示す第5のレチクル150を用いて露光を行い、有機現像液(たとえばアニソール)を用いて現像する。
【0079】
まず、図3(a)と同様に、第3のレチクル130の透光部(クォーツ基板131)を透過したArF光で、自己組織化したブロックコポリマーB2を縮小投影露光する。イソプロピルアルコールで現像すると、図3(b)に示すように、セル部の周期的なラインアンドスペースパターン、引き出し線に対応するパターン、および周辺回路部に対応するパターンが残る。
【0080】
次に、図5に示す第5のレチクル150の透光部(クォーツ基板151)を透過したArF光で、1回目の露光および現像を経たブロックコポリマーB2を縮小投影露光する。ベーカーで加熱すると、露光領域の第2のブロックは保護基が脱離して極性になって有機現像液に不溶になり、未露光領域の第2のブロックは有機現像液に可溶のままである。アニソールで現像すると、図3(d)と同様に、セル部の周期パターンと、周辺回路部の非周期パターンが残り、セル部と周辺回路部が引き出し線のパターンで接続される。このブロックコポリマーB2のパターンをマスクとして被加工膜をエッチングする。ブロックコポリマーB2のパターンを除去すると、所望の被加工膜パターンが得られる。
【0081】
第4の実施形態で使用する材料も特に限定されないが、たとえばブロックコポリマーB2に添加する光酸発生剤として、1回目の露光では酸を発生させず、2回目の露光で酸を発生させるものを用いる。この場合、2回目の露光により酸が発生して第2のブロックがポリアクリル酸に変化して有機現像液に不溶となる。また、2回目の露光で発生した酸により架橋する材料を用いてもよい。
【0082】
第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、種々の変形例を適用できる。
【0083】
(第5の実施形態)
第5の実施形態においては、第1の実施形態〜第4の実施形態で説明したパターン形成方法により形成されるデバイスパターンの変形例について説明する。
【0084】
第1の実施形態〜第4の実施形態では、エッチングマスクがラインパターンになっている。一方、被加工膜にトレンチ(溝)を形成し、トレンチ内にバリアメタルおよびシードCuをスパッタした後、めっきによりCu配線を埋め込む場合、エッチングマスク間のスペースがラインパターンに対応する。
【0085】
図6に、このような方法で形成されるデバイスパターンの例を示す。セル部ではCu配線が埋め込まれるトレンチパターンが周期パターンになっている。周辺回路部は非周期パターンになっており、その線幅およびスペース幅がセル部の周期の2倍以上である。セル部の周期パターンは第1のブロックのみを除去することによって形成される。周辺回路部のパターンはブロックコポリマー全体を除去することによって形成される。
【0086】
また、エッチングマスクがラインパターンとなっている場合でも、セル部と周辺回路部との接続は図1(f)に示す例に限定されない。
【0087】
図7に、セル部からの引き出し線をパッド105に接続するデバイスパターンの例を示す。この場合にはパッドが周辺回路部に相当する。
【0088】
図8に、セル部、周辺回路部を、コンタクトホール(C/H)を介して異なるレベルにある配線と接続するデバイスパターンの例を示す。セル部と周辺回路部が異なるレベルの配線と接続されていても良い。図8に示したセル部および周辺回路部を被加工膜に転写した後、この上に図示しない絶縁層を堆積し、破線で示すコンタクトホールを開口し、上層の配線で接続する。
【0089】
リソグラフィーで形成されるコンタクトホールの径は、セル部のハーフピッチより大きいことが多い。この場合、各引き出し線上のコンタクトホールが互いに重ならないように、複数の引き出し線の端部を斜めに配置される。このようなラインのパターンは、ブロックコポリマー全体を斜めにトリミングした後、セル部および引き出し線で第1のブロックのみを除去することによって形成される。この後、パターンに基づいて被加工膜を加工して金属からなるラインを形成し、絶縁膜を堆積してコンタクトホールを開口し、絶縁膜上の配線を形成しコンタクトホールを介してセル部と周辺回路部とを接続する。
【0090】
図9を参照して、ブロックコポリマーの自己組織化を利用してコンタクトホールを形成する方法を説明する。図8と同様なパターンに基づいて金属からなるラインを形成し、絶縁膜を堆積した後、ブロックコポリマーを塗布する。このブロックコポリマーは、自己組織化させたときに、シリンダー状の第1のブロック相21が膜面に垂直に配向するような条件で形成されている。窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させる。このとき、シリンダー状の第1のブロック相21が膜面に垂直に配向し、ブロックコポリマー層の表面においてシリンダーの円形端面が2次元六方格子を形成して配列する。図9の破線で囲まれた領域を選択的に露光し、加熱した後、イソプロピルアルコールで現像すると、第1のブロック相21のみが除去され、開口部が形成される。この開口部を通して下地の絶縁膜をエッチングすることによりコンタクトホールを形成できる。
【0091】
なお、図9の破線で囲まれた領域以外のコンタクトホールを形成しない領域を露光して加熱し、その領域で第1のブロックを架橋させた後に現像して、破線で囲まれた領域の第1のブロック相21のみを除去してもよい。
【0092】
図9に示したように、第1のブロックからなるシリンダーは、ブロックコポリマー層の表面において円形端面が2次元六方格子を形成して配列するのが最も安定である。この場合、図8に示す金属からなるラインの先端を結ぶ直線が、ラインの方向に対して±60°の角度をなすように、金属層を加工しておく。
【0093】
ブロックコポリマーの自己組織化を利用してコンタクトホールを形成する場合、必ずしもコンタクトホール径がライン幅より大きくなるわけではない。この場合、図8に示したように各引き出し線の端部を斜めに形成する必要はない。
【0094】
図10に、各引き出し線の端部を横並びに形成し、各引き出し線の端部に対応してコンタクトホールを形成したパターンの例を示す。また、図10では、周辺回路部に複数のコンタクトホールを設けている。これは、周辺回路部では電流値が高くなるため、複数のコンタクトホールを設けて抵抗を下げるためである。
【0095】
図11を参照して、ブロックコポリマーの自己組織化を利用して図10に示したコンタクトホールを形成する方法を説明する。図10に示したパターンに基づいて金属からなるラインを形成し、絶縁膜を堆積した後、ブロックコポリマーを塗布する。窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させる。シリンダー状の第1のブロック相21が膜面に垂直に配向し、ブロックコポリマー層の表面においてシリンダーの円形端面が2次元六方格子を形成して配列する。図11の破線で囲まれた領域を選択的に露光し、加熱した後、イソプロピルアルコールで現像すると、第1のブロック相21のみが除去され、開口部が形成される。この開口部を通して下地の絶縁膜をエッチングすることによりコンタクトホールを形成できる。図11では、周辺回路部に対応して複数個のシリンダーを含む三角形や長方形の領域で露光し、現像してシリンダーを除去して開口部を形成する。この開口部を通して下地の絶縁膜をエッチングすることによりトリプルホールやツインホールを形成する。
【0096】
ここで、シリンダーを膜面に平行に配向させる場合と、膜面に垂直に配向させる場合の条件の違いについて述べる。
【0097】
シリンダーを膜面に平行に配向させた場合、ラインアンドスペース(L&S)パターンを形成するためのエッチングマスクとして用いることができる。一方、シリンダーを膜面に垂直に配向させた場合、コンタクトホールパターン(除去されるポリマーがシリンダー、除去されるポリマーの体積分率は約30%)またはドットパターン(除去されるポリマーがシリンダー以外のマトリックス、除去されるポリマーの体積分率は約70%)を形成するためのエッチングマスクとして用いることができる。
【0098】
シリンダーの配向が膜面に平行または垂直のいずれかは、物理ガイドまたはケミカルガイドを用いて配向させる場合にはガイドの表面エネルギー、電場や温度勾配で配向させる場合には電場や温度勾配の方向、およびブロックコポリマーの膜厚やアニール条件等に依存する。
【0099】
ガイドの表面エネルギーを、ブロックコポリマーのマトリックスの表面エネルギーに近づけると、表面にマトリックスのポリマー層が形成され、シリンダーが膜面に平行に配向する。物理ガイド(graphoepitaxy)の場合には、ガイドパターンの側壁および底面の表面エネルギーを、マトリックスの表面エネルギーに近づけるようにする。ケミカルガイドの場合は、一方のポリマーをピニングする領域とそれ以外の領域で表面エネルギーを変える。具体的には、シリンダーをピニングする領域の表面エネルギーをシリンダーの表面エネルギーに近づけ、それ以外の領域の表面エネルギーをマトリックスの表面エネルギーに近づけるように調整する。このときケミカルガイドパターンの周期はブロックコポリマーの周期の整数倍にする。
【0100】
ガイドの表面エネルギーを、2つのブロックの表面エネルギーの中間の値にすると、シリンダーが膜面に垂直に配向する。物理ガイド(graphoepitaxy)の場合には、ガイドパターンの底面の表面エネルギーを、2つのブロックの表面エネルギーの中間の間になるように調整する。ガイドパターンの側壁の表面エネルギーをマトリックスの表面エネルギーにあわせると、側壁にマトリックス層が1層形成された状態で配向する。側壁のエネルギーを2つのブロックの中間の値にすると、ガイドパターンの全領域で底面での周期性を保ちながらシリンダーが配向する。ケミカルガイドの場合には、一方のポリマーをピニングする領域とそれ以外の領域で表面エネルギーを変えるが、ピニング領域以外の領域の表面エネルギーを2つのブロックの表面エネルギーの中間の値になるようにし、ピニング領域の表面エネルギーを一方のブロックの表面エネルギーに近づけるように調整する。
【0101】
電場で配向させる場合には、電場をかける方向と平行にシリンダーが配向するので、シリンダーを膜面に平行に配向させる場合および垂直に配向させる場合に、それぞれ所定の方向に電場をかける。
【0102】
ブロックコポリマーの膜厚もシリンダーの配向にとって重要な要因である。シリンダーを膜面に平行に配向させる場合には、ブロックコポリマーの膜厚を自己組織化後の周期の半分程度にすることが好ましい。一方、シリンダーを膜面に垂直に配向させる場合には、ブロックコポリマーの膜厚を自己組織化後の周期の1.7倍程度にすることが好ましい。
【0103】
ブロックコポリマーを配向させる際に、偏光を照射しながらアニールすると偏光の方向により配向が変わる。また、アニール時の雰囲気、時間によっても、配向が変わる。
【0104】
次に、コンタクトホールやゲートなどを形成するために周期パターンの一部を除去する変形例について説明する。
【0105】
図12に、2つのラインパターンの間に、上層と下層の配線層を接続するコンタクトホール100を有するパターンの例を示す。この場合、コンタクトホール100を貫通させる領域で最初にブロックコポリマー全体を除去し、その後に第1のブロック21のみを除去してラインパターンを形成する。
【0106】
図13に、1つのラインパターンの途中に、スペースを有するパターンの例を示す。スペース部にはゲートを形成することができる。図13のパターンも、図12のパターンと同様な方法で形成することができる。ただし、図13におけるスペースをリソグラフィーによりパターニングすると、スペース幅は露光装置の性能に依存する。また、パターンサイズが小さくなって露光装置の解像限界に近くなると、光の回折によりライン端がラウンディングを起こし、スペース幅がマスク寸法より広くなるおそれがある。
【0107】
これを解決するための方法として、図14(a)〜(d)を参照して、ブロックコポリマーの自己組織化を利用して、1つのラインパターンの途中に、狭スペースを形成する方法を説明する。
【0108】
図14(a)に示すように被加工膜11の上にブロックコポリマー20を塗布し、窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させ、シリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。図14(b)に示すように、第1のブロック相21および第2のブロック相22をシリンダーの長さ方向に直交する領域を露光し、現像してブロックコポリマー全体を除去することにより、ラインアンドスペース(L&S)パターンを形成する。図14(c)に示すように、クォーツ基板161上に遮光膜(またはハーフトーン膜)162のパターンを形成したレチクル160を用いて、透光部を通してスペース部を露光する。イソプロピルアルコールで現像してスペース部で第1のブロック相21のみを除去すると、図14(d)に示すように1つのラインパターンの途中にスペースが形成される。
【0109】
この方法では、ラインパターンの途中のスペースを、ブロックコポリマーの一方のブロック相を除くことによって形成するため、露光装置を用いた場合のようにラインパターンのラウンディングおよびスペース幅の広がりを招くおそれがなく、狭スペースを形成することができる。
【0110】
ブロックコポリマーの自己組織化を利用して、さらに、ライン幅およびラインパターンの途中のスペース幅を狭く形成する方法を図15(a)〜(g)を参照して説明する。この方法は、ハードマスクへのパターンの転写を含む。
【0111】
図15(a)に示すように、被加工膜11の上にハードマスク12を形成する。図15(b)に示すように、ハードマスク12上にブロックコポリマー20を塗布し、窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させ、シリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。図15(c)に示すように、第1のブロック相21のパターンを含む領域を露光し、イソプロピルアルコールで現像して第1のブロック相21のみを除去すると、第2のブロック相22の間でハードマスク12が露出した状態になる。図15(d)に示すように、第2のブロック相22をマスクとして露出したハードマスク12をエッチングした後、第2のブロック相22を除去して、被加工膜11とハードマスク12とが交互に配列したパターンを形成する。
【0112】
次に、図15(e)に示すように、被加工膜11およびハードマスク12の上に再びブロックコポリマー20を塗布し、窒素雰囲気下でアニールしてブロックコポリマーを自己組織化させ、シリンダー状の第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22を交互に配列させる。このとき、第1のブロック相21およびシリンダー状の第2のブロック相22の配列方向を、図15(b)における配列方向と直交する方向に設定する。これは、図15(b)と図15(e)とで、物理ガイドの方向を直交させることによって実現することができる。次いで、図14(c)で用いたのと同様に、スペース部において1つの第1のブロック相21の幅より広く、隣接する第1のブロック相21にかからない露光領域に対応する透光部をもつレチクルを用いて、透光部を通してスペース部を露光する。イソプロピルアルコールで現像してスペース部で第1のブロック相21のみを除去すると、図15(f)に示すように1つのラインパターンの途中に開口部が形成され、ハードマスク12の一部が露出する。残存している第1のブロック相21および第2のブロック相22をマスクとしてハードマスク12をエッチングする。残存するブロックコポリマーのパターンを剥離すると、図15(g)に示すようにハードマスク12のパターンが形成される。その後、ハードマスク12をマスクとして被加工膜11をエッチングした後、ハードマスク12を剥離すると、所望の被加工膜11のパターンが得られる。
【0113】
この方法では、自己組織化したブロックコポリマーのサイズをもつエッチングマスクを形成することにより、微細なラインとライン途中の狭スペースとを形成することができる。
【0114】
(第6の実施形態)
第6の実施形態においては、第1の実施形態で説明したように、一部の領域でブロックコポリマー全体を除去(トリミング)した後、他の領域で第1のブロック相を除去するパターン形成方法を実施するために用いられるレチクルのパターンデータの生成方法を説明する。デバイスパターンは、第1の実施形態で説明した図1(f)と同様である。また、使用する露光装置は、ブロックコポリマーの一周期(1つの第1のブロック相21および1つの第2のブロック相22を含む)の幅に相当する解像度を有するが、半周期は解像しないものとする。
【0115】
図16にレチクルのパターンデータ生成のためのフローチャートを示す。最初に、設計パターンデータが与えられる(S11)。図17に設計パターンデータの平面図を示す。これは図1(f)に対応するパターンである。設計パターンは、周期パターンが並んでいるセル部(C)、セル部の周期よりも大きいスペース幅およびライン幅をもつ周辺回路部(P)、両者をつなぐ引き出し線(W)のパターンに対応するパターンを含む。
【0116】
設計パターンデータを、セル部、周辺回路部、引き出し線に分類する(S12)。図17では、セル部を一点鎖線、周辺回路部を破線、引き出し線を実線で囲んでいる。
【0117】
ブロックコポリマーをパターニングするには、セル部のラインおよび引き出し線のラインの上に第2のブロック相22が形成されるように設計する。引き出し線のライン幅はセル部の半周期とほぼ同一である。
【0118】
設計パターンデータと整合が取れるようにブロックコポリマー(BCP)の配置を割り付ける(S13)。両者の間に矛盾がある場合には、設計パターンデータを修正し、矛盾がなくなるまでブロックコポリマーの配置割付と設計パターンデータの修正を繰り返す。
【0119】
以下、ブロックコポリマーの配置割付に基づいて、レチクルによる露光パターン(レチクルパターン)を生成させる。なお、ブロックコポリマーを配向させるためのガイドパターンも別途生成させるが、ガイドパターンの種類に依存するのでここでは説明しない。
【0120】
一部の領域でブロックコポリマー全体を除去(トリミング)するための、1回目の露光パターンを生成させる(S14)。
【0121】
1回目の露光・現像により、セル部および周辺回路部のラインパターン部分を残すので、これらに対応する領域が遮光部となるようにデータを生成する。引き出し線では、ラインとなる第2のブロック相のみを残すが、隣接するラインの第2のブロック相からなる領域ではブロックコポリマー全体を除去する。ここで、露光装置はブロックコポリマーの半周期を解像できないので、データ上引き出し線に残すラインの幅を広げる。ブロックコポリマーが分子全体で除去される場合、理想的には、最終的なライン幅に対して両側でブロックコポリマーの1/4周期ずつ広げる。実際には、ブロックコポリマーの露光・現像特性や光学像に依存してブロックコポリマー分子が残存するか除去されるかが決まるので、不要なブロックコポリマー分子が除去され、残すべきブロックコポリマー分子が残ればよい。また、第1の実施形態で用いたブロックコポリマーのように1回目の露光の際に同時に第1のブロック相の主鎖切断が起こっている場合には、分子1個を除去するわけではない。このため、引き出し線に残すラインの幅は、最終的なライン幅に対して両側で半周期ずつ広げた幅を越えない範囲となる。
【0122】
上記のように、セル部、周辺回路部、幅を広げた引き出し線が1回目の未露光領域となるよう、レチクルパターンのデータを生成する(S14)。図18に、生成したレチクルパターンの平面図を示す。セル部を一点鎖線、周辺回路部を破線、引き出し線を実線で囲み、ハッチングで遮光部を示している。図18のレチクルパターンは、図2(a)の第1のレチクル110に対応している。
【0123】
こうして生成されたレチクルパターンのデータに基づいて、電子ビーム描画装置またはレーザービーム描画装置のビーム照射位置が決定される。ビームを走査するか、またはビームを成形してクォーツ基板を動かすことにより、クォーツ基板上の遮光膜(またはハーフトーン膜)上に塗布されたレジストをパターニングする。このレジストパターンをマスクとして遮光膜(またはハーフトーン膜)を加工することにより、第1のレチクル110が作製される。
【0124】
次に、1回目のパターニングで形成される被加工膜上のブロックコポリマーのパターンデータを生成させる(S15)。図19に、生成したブロックコポリマーパターンの平面図を示す。
【0125】
図17の設計パターンデータと図19のブロックコポリマーパターンとを比較して、除去すべき第1のブロック相21の領域を抽出する(S16)。
【0126】
次いで、2回目の露光パターンを生成させる(S17)。前記のステップで抽出された除去すべき領域に対応して、露光装置の解像度以上のパターンを生成する。このとき、第2のブロック22は、露光・現像によって除去されないので、露光領域に含めてよい。一方、第1のブロック相21を残す周辺回路部のライン部分は未露光領域とする。抽出された除去すべき領域を含み、かつこれらの条件を満たすように、レチクルパターンのデータを生成する。具体的には、周辺回路部のライン部分以外の領域に、除去すべき第1のブロック相領域を含むようにパターンを発生させる。このパターンを透光部(露光領域)とする。
【0127】
図20に、生成したレチクルパターンの平面図を示す。遮光膜領域に対応する周辺回路部を破線で示している。図20のレチクルパターンは、図2(b)の第2のレチクル120に対応している。生成したレチクルパターンのデータに基づいて第2のレチクル120が作製される。
【0128】
上記のようにして作製された第1のレチクルおよび第2のレチクルを用い、第1の実施形態で説明した方法により、最終的には図1(f)のようなブロックコポリマーのパターンが被加工膜11上に形成される。
【0129】
上記の説明では、未露光領域を遮光膜としたが、ハーフトーン膜でもよい。
【0130】
上記の説明では、設計パターンデータと1回目のパターニング後の被加工膜上のブロックコポリマーのパターンデータとを比較して、2回目の露光・現像によって除去すべき第1のブロック相21の領域を決定した。除去すべき第1のブロック相21は、セル部と引き出し線を広げた部分として決定することもできるので、必ずしもデータを比較する必要はない。上記第6の実施形態では、引き出し線がある場合を説明した。しかし、引き出し線がない場合には、1回目の未露光領域(遮光部)はセル部と周辺回路部のライン部分となるようにパターンを発生させ、2回目の露光領域(透光部)は、周辺回路部のライン部分以外の領域に、セル部が含まれるパターンを発生させることになる。この場合にはS15、S16の工程は不要となる。
【0131】
上記の説明では、作成したレチクルパターンのデータに基づいてレチクルを作製し、作製されたレチクルを通して露光している。しかし、レチクルを使用せずに、直接ブロックコポリマーに露光することもできる。すなわち、作成したレチクルパターンのデータに基づいてビーム照射位置を決定し、ビームを走査するか、またはビームを成形してウエハを動かすことにより、ウエハ上のレジストを露光する。露光装置としては、レーザー描画装置、電子ビーム描画装置、イオンビーム描画装置を用いることができる。
【0132】
第3の実施形態で説明したパターン形成方法では、1回目の露光での遮光部が透光部となるだけなので、図16を参照して説明したレチクルのパターンデータの生成方法をそのまま適用できる。
【0133】
(第7の実施形態)
第7の実施形態においては、第2の実施形態で説明したように、一部の領域で第1のブロック相21を除去した後、残った第2のブロック相22のうち、不要な領域を除去するパターン形成方法を実施するために用いられるレチクルのパターンデータの生成方法を説明する。デバイスパターンは、第2の実施形態で説明した図3(d)、したがって第1の実施形態で説明した図1(f)と同様である。また、使用する露光装置は、ブロックコポリマーの一周期(1つの第1のブロック相および1つの第2のブロック相を含む)の幅に相当する解像度を有するものとする。
【0134】
図21にレチクルのパターンデータ生成のためのフローチャートを示す。第6の実施形態と同様に、最初に、設計パターンデータが与えられる(S21)。設計パターンデータの平面図は図17と同じであり、図3(d)および図1(f)に対応するパターンである。設計パターンデータを、セル部、周辺回路部、引き出し線に分類する(S22)。設計パターンデータと整合が取れるようにブロックコポリマー(BCP)の配置を割り付ける(S23)。両者の間に矛盾がある場合には、設計パターンデータを修正し、矛盾がなくなるまでブロックコポリマーの配置割付と設計パターンデータの修正を繰り返す。
【0135】
一部の領域で第1のブロック相21を除去するための、1回目の露光パターンを生成させる(S24)。このとき、第2のブロック相は露光されてもよい。したがって、1回目の露光パターンは、周辺回路部のライン部分が遮光部となるレチクルパターンである。このレチクルパターンは、図4(a)の第3のレチクル130に対応している。こうして生成されたレチクルパターンのデータに基づいて、第3のレチクル130が作製される。
【0136】
次に、1回目のパターニングで形成される被加工膜上のブロックコポリマーのパターンデータを生成させる(S25)。このデータは、図3(b)のブロックコポリマーのパターンに対応する。
【0137】
図17の設計パターンデータと、1回目のパターニング後の被加工膜上のブロックコポリマーパターンとを比較して、除去すべき第2のブロック相22の領域を抽出し、残すべき引き出し線を抽出する(S26)。
【0138】
次いで、2回目の露光パターンを生成させる(S27)。引き出し線では、ラインとなる第2のブロック相22を残すが、これと隣接する第2のブロック相22からなるラインを除去する。ここで、露光装置はブロックコポリマーの半周期を解像できないので、引き出し線を形成するための遮光膜の幅を、最終的な引き出し線のライン幅に対して両側で半周期ずつを越えない範囲まで広げる。2回目の露光パターンは、セル部、周辺回路部のライン部分、幅を広げた引き出し線からなるパターンを発生する。発生されたパターンは遮光部(未露光部)となる。このレチクルパターンは、図4(b)の第4のレチクル140に対応している。こうして生成されたレチクルパターンのデータに基づいて、第4のレチクル140が作製される。
【0139】
上記のようにして作製された第3のレチクルおよび第4のレチクルを用い、第2の実施形態で説明した方法により、最終的には図3(d)のようなブロックコポリマーのパターンが被加工膜11上に形成される。
【0140】
上記の説明では、未露光領域を遮光膜としたが、ハーフトーン膜でもよい。
【0141】
上記の説明では、設計パターンデータと1回目のパターニング後の被加工膜上のブロックコポリマーのパターンデータとを比較して、2回目の露光・現像によって除去すべき第2のブロック相22の領域を決定した。除去すべき第2のブロック相22は、引き出し線の不要な領域でとして決定することもできるので、必ずしもデータを比較する必要はない。
【0142】
上記第7の実施形態では、引き出し線がある場合を説明した。しかし、引き出し線がない場合には、1回目の未露光領域(遮光部)は周辺回路部のライン部分となるようにパターンを発生させ、2回目の未露光領域(遮光部)は、周辺回路部のライン部分、セル部となるパターンを発生させることになる。この場合にはS15、S16の工程は不要となる。
【0143】
上の説明では、作成したレチクルパターンのデータに基づいてレチクルを作製し、作製されたレチクルを通して露光している。しかし、レチクルを使用せずに、直接ブロックコポリマーに露光することもできる。すなわち、作成したレチクルパターンのデータに基づいてビーム照射位置を決定し、ビームを走査するか、またはビームを成形してウエハを動かすことにより、ウエハ上のレジストを露光する。露光装置としては、レーザー描画装置、電子ビーム描画装置、イオンビーム描画装置を用いることができる。
【0144】
第4の実施形態で説明したパターン形成方法では、2回目の露光での遮光部が透光部となるだけなので、図21を参照して説明したレチクルのパターンデータの生成方法をそのまま適用できる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0146】
11…被加工膜、12…ハードマスク、20…ブロックコポリマー、21…第1のブロック相、22…第2のブロック相、31、41、51、61…露光領域、32、42、52、62…未露光領域、100…コンタクトホール、105…パッド、110…第1のレチクル、120…第2のレチクル、130…第3のレチクル、140…第4のレチクル、150…第5のレチクル、111、121、131、141、151…クォーツ基板、112、122、132、142、152…遮光膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己組織化する第1のブロックおよび第2のブロックを含むブロックコポリマーであって、第1の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって前記ブロックコポリマー全体が除去され、第2の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって自己組織化した第1のブロック相が選択的に除去される性質を有するブロックコポリマーを用意し、
被加工膜上に前記ブロックコポリマーを塗布し、前記ブロックコポリマーを自己組織化させて第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを形成し、
前記ブロックコポリマーに対して選択的に第1の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第1の領域に存在するブロックコポリマー全体を除去し、第1の領域以外の領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、
残存した前記ブロックコポリマーに対して選択的に第2の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第2の領域に存在する第1のブロック相を選択的に除去し、第1の領域以外の領域と第2の領域以外の領域との重なり領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、前記重なり領域を除く第2の領域に第2のブロック相のパターンを残存させ、
残存したパターンをマスクとして前記被加工膜をエッチングする
ことを含むパターン形成方法。
【請求項2】
自己組織化する第1のブロックおよび第2のブロックを含むブロックコポリマーであって、第3の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって自己組織化した第1のブロック相が選択的に除去され、第4の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第2のブロック相が選択的に除去される性質を有するブロックコポリマーを用意し、
被加工膜上に前記ブロックコポリマーを塗布し、前記ブロックコポリマーを自己組織化させて第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを形成し、
前記ブロックコポリマーに対して選択的に第3の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって第3の領域に存在する第1のブロック相を選択的に除去し、
残存した前記ブロックコポリマーに対して選択的に第4の条件でエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングとを行うことによって、第3の領域に含まれる第4の領域に残存する第2のブロックを除去し、第3の領域以外の領域に第1のブロック相および第2のブロック相を含むパターンを残存させ、第3の領域中第4の領域以外の領域に第2のブロックを残存させ、
残存したパターンをマスクとして前記被加工膜をエッチングする
ことを含むパターン形成方法。
【請求項3】
前記第1ないし第4の条件は互いに、エネルギー線の波長、加熱温度、現像条件またはドライエッチング条件が異なる請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーは酸発生剤を含有し、前記第1または第4の条件はエネルギー線の照射または加熱によって酸発生剤から酸を発生させて前記ブロックコポリマーまたは前記第2のブロックをアルカリ可溶または有機溶媒不溶に変化させる請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記第2または第3の条件は、エネルギー線の照射または加熱によって第1のブロック相の主鎖を切断する請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像条件は、現像液の種類または濃度が異なる請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記ドライエッチング条件は、ガス種またはプラズマエネルギーが異なる請求項3に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記残存させた第2のブロック相のパターンは、自己組織化後のブロックコポリマーの周期と同一の周期をもつ周期パターンを形成し、前記残存させた第1のブロック相および第2のブロック相からなるパターンは、前記自己組織化後のブロックコポリマーの周期よりも大きな寸法を持つ非周期パターンを形成する請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記残存させた第2のブロック相のパターンは自己組織化後のブロックコポリマーの半周期と略同一の幅を持つ非周期パターンも含み、
前記第2のブロックの周期パターンと、前記第1のブロック相および第2のブロック相を含む非周期パターンは、前記第2のブロックからなる非周期パターンにより接続される請求項8に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記残存した第2のブロック相パターンは前記残存した第1のブロック相および第2のブロック相パターンと接続しており、第1のブロック相を除去したことにより、スペースを形成する請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記残存した第2のブロックの周期パターンを被加工膜に転写して得られるパターンと、前記残存した第1のブロック相および第2のブロック相からなる非周期パターンを非加工膜に転写して得られパターンは、コンタクトホールを介して他のレベルの配線と接続されるように形成される請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記コンタクトホールは、
前記転写された被加工膜からなるパターンの上に絶縁膜を形成し、
絶縁膜の上にブロックコポリマーを塗布し、前記ブロックコポリマーの第1のブロック相からなるシリンダーが膜面に垂直に配向するよう自己組織化させ、
前記ブロックコポリマーに対して選択的にエネルギー線の照射または加熱と現像またはドライエッチングを行うことによって、所望の第1ブロック相からなるシリンダーのみを除去し、
残存した第1のブロック相と第2のブロック相をマスクとして絶縁膜をエッチングすることで形成する請求項11記載のパターン形成方法。
【請求項13】
前記コンタクトホールは二次元六方格子からなるグリッド上に中心が配置されている請求項12記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−108369(P2012−108369A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258009(P2010−258009)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】