説明

パターン形成方法

【解決手段】酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位と酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位の両方を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶媒を含むレジスト組成物、あるいは酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶媒を含むレジスト組成物を基板上に塗布して、加熱処理後に高エネルギー線でレジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像とアルカリ水溶液による現像の2回の現像を行うパターン形成方法。
【効果】本発明によれば、有機溶剤とアルカリ水による2回の現像によって1本のラインを2本に分割し、マスクパターンの2倍の解像力を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光後、酸と熱によって脱保護反応を行い、特定の有機溶剤とアルカリ水溶液による2回の現像によって露光の多い部分と未露光部分を溶解させ、中間露光領域を溶解させないことによって2倍の解像力を得るためのパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々の問題により、F2リソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入され、これによって高速スキャンが可能となり、NA1.3級のレンズによって45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
32nmノードのもう一つの候補の高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光し、ハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
ダブルパターニングの問題点は、2回露光の重ね合わせ精度が十分に確保できない点と、2回露光によるスループット低下や2枚のマスクを用いることによるパターンの分割の複雑さとマスクコストの上昇などである。
【0008】
現像後のレジストパターンをハードマスクに転写し、ハードマスクの側壁に珪素酸化膜などを形成して1本のラインの側壁に2本のラインを形成するサイドウォールスペーサー法は、1回の露光で解像力を倍加することが可能である。露光が1回で済むので、上記ダブルパターニングの問題点は解消される。しかしながら、珪素酸化膜のCVDによる作製と、ラインの上とスペースの不要な珪素酸化膜の除去等、CVDとエッチングを繰り返しながら形成される複雑で長いプロセスであるため、リソグラフィー以外のコストが高くなる問題点がある。
1回の露光で現像後のレジストパターンの解像力を倍加できる技術が最もコスト的に有利である。
【0009】
特許文献1:特許第3943741号公報には、ヒドロキシスチレンベースのKrFレジスト組成物を用い、有機溶剤現像とアルカリ水現像の2回の現像を行うことによって、1本のラインを2本に分割し、2倍の解像力を得る方法が例示されている。
有機溶剤によるネガティブトーン現像とアルカリ水によるポジティブトーン現像を組み合わせたArFレジスト組成物としては、従来型のポジ型ArFレジスト組成物を用いた例が、特許文献2〜7(特開2008−281974号公報、特開2008−281975号公報、特開2008−281980号公報、特開2009−53657号公報、特開2009−25707号公報、特開2009−25723号公報)に示されている。前記方法を用いてArFレジストを1本のラインを2本に分割した例が、非特許文献1(Proc. SPIE Vol.6923 p69230F−1)に示されている。
【0010】
これらの出願において、ヒドロキシアダマンタンメタクリレートを共重合、ノルボルナンラクトンメタクリレートを共重合、あるいはカルボキシル基、スルホ基、フェノール基、チオール基等の酸性基を2種以上の酸不安定基で置換したメタクリレートを共重合、環状の酸安定基エステルを有するメタクリレートを共重合した有機溶剤現像用レジスト組成物及びこれを用いたパターン形成方法が提案されている。
有機溶剤現像によるネガパターンの作製は古くから用いられている手法である。環化ゴム系のレジスト組成物はキシレン等のアルケンを現像液として用いており、ポリ−t−ブトキシカルボニルオキシスチレンベースの初期の化学増幅型レジスト組成物はアニソールを現像液としてネガパターンを得ていた。
特許文献8(特許第4445860号公報)には、カリックスアレーンをEB描画し、酢酸n−ブチルあるいは乳酸エチルで現像してネガパターンを得ている。
しかしながら、非特許文献1に示されるように、従来型のフォトレジスト組成物をアルカリ水現像と有機溶剤現像を行った場合、解像力を倍にすることは可能であるが、通常の方法の1回の露光で解像できる限界解像力を凌ぐ解像力を得ることは難しいのが現状である。
【0011】
カルボキシル基等の酸性ユニットを酸不安定基で置換した繰り返し単位を有するポリマーをベースとした従来型のArFレジスト組成物の場合、保護基の脱保護によってアルカリ溶解性が向上すると共に有機溶剤現像液への溶解性が低下する。アルカリ溶解性が向上する露光量と、有機溶剤に不溶となる露光量とが一致した場合、アルカリと有機溶剤の両方に溶解しない露光量のマージンが存在しないか存在したとしてもマージンが狭いために微細パターンが形成されない。アルカリ溶解性が向上する露光量と、有機溶剤に不溶となる露光量とが異なる露光量となるレジスト組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3943741号公報
【特許文献2】特開2008−281974号公報
【特許文献3】特開2008−281975号公報
【特許文献4】特開2008−281980号公報
【特許文献5】特開2009−53657号公報
【特許文献6】特開2009−25707号公報
【特許文献7】特開2009−25723号公報
【特許文献8】特許第4445860号公報
【0013】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol.6923 p69230F−1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
脱保護反応によって酸性のカルボキシル基などが生成する従来型のポジ型レジスト組成物を用いてアルカリ水溶液現像と有機溶剤現像を行った場合、アルカリに溶解するポジ化の露光量と有機溶剤に不溶となるネガ化の露光量がほぼ一致するか、近い露光量となるために微細なパターンの形成が困難である。微細なパターン形成のためには、アルカリに溶解するポジ化の露光量と有機溶剤に不溶となるネガ化の露光量をある程度離しておく必要がある。
【0015】
本発明は、アルカリ水溶液現像と有機溶剤現像の2回の現像によってマスクピッチの半分のパターンを解像するためのレジスト組成物及びこれに用いるパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を行った結果、酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位とカルボキシル基で置換された繰り返し単位の両方を有するポリマーを用いることによって、アルカリ水溶液現像と有機溶剤現像の2回の現像によってマスクピッチの半分の微細なパターンを解像することが可能であることを見出した。
【0017】
カルボキシル基の保護基の脱離によって、アルカリ水溶液の現像液への溶解性が向上すると同時に有機溶剤現像液への溶解性が低下する。一方、ヒドロキシ基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下するが、アルカリ水溶液の現像液への溶解性は向上しない。注目すべき点は、カルボキシル基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量と、ヒドロキシ基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量とが大きく異なる点である。ヒドロキシ基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量の方が高感度である。
【0018】
従って、本発明は、下記のパターン形成方法を提供する。
請求項1:
酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位と酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位の両方を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶剤を含むレジスト組成物、あるいは酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶剤を含むレジスト組成物を基板上に塗布して、加熱処理後に高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像とアルカリ水溶液による現像の2回の現像を行うことを特徴とするパターン形成方法。
請求項2:
酸不安定基で置換されたヒドロキシ基とカルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位a1又はa2及びbを有するものであることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【化1】


(式中、R1、R4、R6は同一又は異種の水素原子又はメチル基を示す。R2は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の(m+1)価の炭化水素基であり、エーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよい。R3、R5、R7は酸不安定基である。mは1〜3の整数である。Zは単結合又は−C(=O)−O−R8−であり、R8は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよく、あるいはナフチレン基である。a1、a2、bは0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<b<1.0、0<a1+a2<1.0、0<a1+a2+b≦1.0の範囲である。)
請求項3:
有機溶剤の現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プルピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン形成方法。
請求項4:
アルカリ水溶液の現像液が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、モルフォリン、ピペリジンから選ばれるアミンを含有する水溶液であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のパターン形成方法。
請求項5:
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のパターン形成方法。
請求項6:
有機溶剤による現像とアルカリ水溶液による現像の2回の現像によってマスクパターンの半分のピッチのパターンを解像することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の解像力倍加パターン形成方法。
【発明の効果】
【0019】
酸不安定基で置換されたヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する繰り返し単位を含む高分子化合物と酸発生剤とを含むフォトレジスト膜を、露光後、有機溶剤とアルカリ水による2回の現像によって1本のラインを2本に分割し、マスクパターンの2倍の解像力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るパターニング方法を説明するもので、(A)は基板上にフォトレジスト膜を形成した状態の断面図、(B)はフォトレジスト膜に露光した状態の断面図、(C)は有機溶剤で現像した状態の断面図、(D)はアルカリ水溶液で現像した状態の断面図である。
【図2】NA1.35、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクにおける44nmラインアンドスペースの光学像と、従来型のポジ型レジストの現像後のパターンの断面形状である。
【図3】NA1.35、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクにおける44nmラインアンドスペースの光学像と、本発明のフォトレジスト組成物を用いた有機溶剤によるネガ現像と、アルカリ水溶液によるポジ現像を組み合わせた場合のパターンの断面形状である。
【図4】従来型のレジスト組成物を用いた有機溶剤によるネガ現像と、アルカリ水溶液によるポジ現像を組み合わせた露光量とレジスト膜の膜厚の関係を示す説明図である。
【図5】本発明のレジスト組成物を用いた有機溶剤によるネガ現像と、アルカリ水溶液によるポジ現像を組み合わせた露光量とレジスト膜の膜厚の関係を示す説明図である。
【図6】実施例1−1における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図7】比較例1−1における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【図8】比較例1−2における露光量と膜厚との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、上述したように酸不安定基で置換されたヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を有する繰り返し単位を含む高分子化合物をベース樹脂とするフォトレジスト組成物を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成し、高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、アルカリ水溶液現像と有機溶剤現像の2回の現像でマスクパターンの2倍の解像力を得るパターン形成方法を提案するものである。
上記したレジスト膜は、カルボキシル基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量と、ヒドロキシ基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量とが大きく異なるもので、この場合、ヒドロキシ基の保護基の脱離によって有機溶剤現像液への溶解性が低下する露光量の方が高感度である。
【0022】
ここで、酸不安定基で置換されたヒドロキシ基とカルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物としては、下記一般式(1)に示される繰り返し単位a1又はa2及びbを有するものであることが好ましい。
【化2】


(式中、R1、R4、R6は同一又は異種の水素原子又はメチル基を示す。R2は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の(m+1)価の炭化水素基、特にアルキル基の水素原子がm個脱離した基であり、エーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよい。R3、R5、R7は酸不安定基である。mは1〜3の整数である。Zは単結合又は−C(=O)−O−R8−であり、R8は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよく、あるいはナフチレン基である。a1、a2、bは0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<b<1.0、0<a1+a2<1.0、0<a1+a2+b≦1.0の範囲である。)
【0023】
この場合酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位は、上記式(1)中、繰り返し単位a1及びa2である。
繰り返し単位a1、a2を得るためのモノマーは、具体的には下記のもの等を挙げることができる。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】


ここで、R1、R3、R4、R5は前述の通りである。
【0028】
パターン形成方法におけるポジネガ反転を行うための有機溶剤現像に適したレジスト組成物において、ベース樹脂として用いる高分子化合物は、上記酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位a1及び/又はa2に加えて、上記式(1)中、カルボキシル基が酸不安定基で置換された繰り返し単位bが共重合されたものである。
【0029】
ここで、繰り返し単位bを得るためのモノマーMbは、下記式で示される。
【化7】


(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7は酸不安定基、Zは単結合又は−C(=O)−O−R8−であり、R8は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよく、あるいはナフチレン基である。)
【0030】
繰り返しモノマーMbのZを変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。
【化8】


ここで、R6、R7は前述の通りである。
【0031】
一般式(1)中、R3、R5、R7で示される酸不安定基は種々選定され、同一でも異なっていてもよいが、特に下記式(AL−10)、(AL−11)で示される基、下記式(AL−12)で示される三級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【0032】
【化9】

【0033】
式(AL−10)、(AL−11)において、R51、R54は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R52、R53は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、a5は0〜10、特に1〜5の整数である。R52とR53、R52とR54、又はR53とR54はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
55、R56、R57はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR55とR56、R55とR57、又はR56とR57はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
式(AL−10)において、a5が1以上のものが酸不安定基R3、R5に適用されると、脱保護後にカルボキシル基が発生する。酸不安定基R3、R5の場合は、a5=0に限定されるが、酸不安定基R7の場合は0に限定されることはない。
【0034】
式(AL−10)に示される化合物を具体的に例示すると、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等、また下記一般式(AL−10)−1〜(AL−10)−10で示される置換基が挙げられる。
【0035】
【化10】

【0036】
式(AL−10)−1〜(AL−10)−10中、R58は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R59は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R60は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。a5は上記の通りである。
【0037】
前記式(AL−11)で示されるアセタール化合物を(AL−11)−1〜(AL−11)−44に例示する。
【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
また、酸不安定基として、下記一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で表される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0042】
【化14】

【0043】
上記式中、R61、R62は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R61とR62は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR61、R62は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R63は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部がヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0044】
この場合、好ましくはAは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部がヒドロキシ基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0045】
一般式(AL−11a)、(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−45〜(AL−11)−52のものが挙げられる。
【0046】
【化15】

【0047】
次に、前記式(AL−12)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、tert−アミル基等、あるいは下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【0048】
【化16】

【0049】
上記式中、R64は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、R64同士が結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、特に4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。R65、R67は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R66は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0050】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17、(AL−12)−18に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR68を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17、(AL−12)−18のR64は前述と同様、R68は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は1〜3の整数である。(AL−12)−17は酸不安定基R3、R5、R7のすべてに適用されるが、(AL−12)−18はR7のみに適用可能である。
【0051】
【化17】

【0052】
なお、上述したR64、R65、R66、R67は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【0053】
【化18】

【0054】
特に、R7で示される酸不安定基として、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【0055】
【化19】


(式中、R69は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R70〜R75及びR78、R79はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価炭化水素基を示し、R76、R77は水素原子を示す。あるいは、R70とR71、R72とR74、R72とR75、R73とR75、R73とR79、R74とR78、R76とR77、又はR77とR78は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価炭化水素基を示す。またR70とR79、R76とR79、又はR72とR74は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0056】
ここで、一般式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化20】


を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。なお、R111、R112は互いに独立に水素原子、メチル基、−COOCH3、−CH2COOCH3等を示す。
【0057】
【化21】

【0058】
更に、上記式(AL−12)のR7に用いられる酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基を挙げることができる。
【0059】
【化22】


(式中、R80、R81はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。又は、R80、R81は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R82はフランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルから選ばれる2価の基を示す。R83は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。)
【0060】
フランジイル、テトラヒドロフランジイル又はオキサノルボルナンジイルを有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化23】


を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R112は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【0061】
【化24】

【0062】
一般式(1)中の繰り返し単位a1、a2のヒドロキシ基が置換された酸不安定基R3、R5としては、(AL−11)で示されるアセタールや(AL−10)で示されるカーボネート型が好ましく用いられる。bのカルボキシル基が置換された酸不安定基R7としては、(AL−12)で示される3級エステル型、特には環状構造を有する3級エステルを好ましく用いることができる。最も好ましい3級エステルとしては、(AL−12)−1〜(AL−12)−16、(AL−12)−19に示される。低露光量領域でヒドロキシ基置換の酸不安定基が脱保護し、有機溶剤現像でネガティブパターンを形成し、高露光領域でカルボキシル基の酸不安定基が脱保護してアルカリ水溶液現像でポジパターンを形成する。ヒドロキシ基置換の酸不安定基と、カルボキシル基置換の酸不安定基の脱保護速度が異なる現象を利用してポジ化とネガ化の露光量差を付けることが可能となる。
【0063】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベースとなる高分子化合物は、一般式(1)の繰り返し単位a1、a2と、場合によっては繰り返し単位bを有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位cを共重合させてもよい。
【0064】
繰り返し単位cを得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【化25】

【0065】
【化26】

【0066】
【化27】

【0067】
【化28】

【0068】
【化29】

【0069】
【化30】

【0070】
【化31】

【0071】
【化32】

【0072】
【化33】

【0073】
【化34】

【0074】
更に、下記一般式で示されるスルホニウム塩d1〜d3のいずれかを共重合することもできる。
【化35】


(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、フェニレン基又はアルケニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。0≦d1≦0.2、0≦d2≦0.2、0≦d3≦0.2、0≦d1+d2+d3≦0.3の範囲である。)
【0075】
上記繰り返し単位a1、a2、b、c、d1、d2、d3において、繰り返し単位の比率は、0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<b<1.0、0<a1+a2<1.0、0≦c<1.0、0≦d1<0.2、0≦d2<0.2、0≦d3<0.2、好ましくは、0≦a1≦0.8、0≦a2≦0.8、0.1≦b≦0.75、0.1≦a1+a2≦0.8、0≦c≦0.8、0≦d1<0.15、0≦d2<0.15、0≦d3<0.15の範囲である。なお、a1+a2+b+c+d1+d2+d3=1である。
【0076】
ここで、例えばa+b=1とは、繰り返し単位a,bを含む高分子化合物において、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b<1とは、繰り返し単位a,bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa,b以外に他の繰り返し単位c等を有していることを示す。
【0077】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると有機溶剤現像時に膜減りを生じ易くなったり、大きすぎると有機溶剤への溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0078】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト組成物を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
【0079】
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドしたり、酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を含まないポリマーとブレンドすることも可能である。
ヒドロキシ基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を有する高分子化合物と、カルボキシル基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を有する高分子化合物をブレンドすることも可能であるし、ヒドロキシ基を酸不安定基で置換した繰り返し単位と、カルボキシル基を酸不安定基で置換した繰り返し単位の両方を有する高分子化合物にヒドロキシ基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を有する高分子化合物をブレンドしたり、カルボキシル基を酸不安定基で置換した繰り返し単位を有する高分子化合物をブレンドすることも可能である。
【0080】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位a1、a2、b、c、d1、d2、d3を得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0081】
上記ポジ型レジスト組成物は、上述したように、基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線をこのレジスト膜の所用部分に照射、露光し、加熱処理後に有機溶剤の現像液を用いて上記レジスト膜の未露光部分を有機溶剤によるネガティブ現像で溶解、アルカリ水によるポジティブ現像で露光部分を溶解させ、1本のラインを2つに分割したレジストパターンを形成する。
【0082】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物は、有機溶剤、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(酸発生剤)、必要に応じて溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤、アセチレンアルコール、その他の成分を含有することができる。
【0083】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物は、特に化学増幅ポジ型レジスト組成物として機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。この場合、光酸発生剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0084】
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。酸発生剤はブレンドによって添加してもよいが、繰り返し単位a1、a2、bとd1〜d3を共重合することによって導入してもよい。繰り返し単位d1、d2、d3から選ばれる重合性の酸発生剤が共重合されている場合は、必ずしも酸発生剤は添加しなくてもよい。
【0085】
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられ、塩基性化合物としては段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報記載のカルバメート基を有する化合物を挙げることができる。界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。
【0086】
スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この添加剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような添加剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報、特開2008−122932号公報、特開2009−98638号公報、特開2009−276363号公報に例示されている。レジスト組成物に添加される撥水性向上剤は、現像液の有機溶剤に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、現像液への溶解性が良好である。撥水性の添加剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、PEB中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。アミノ基を共重合した撥水性の高分子化合物を添加するレジスト組成物としては、特開2009−31767号公報に、スルホン酸アミン塩の共重合体は特開2008−107443号公報に、カルボン酸アミン塩の共重合体は特開2008−239918号公報に記載されているものを用いることができる。撥水性向上剤の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0087】
なお、有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
【0088】
本発明に係るパターニング方法は、図1に示される。この場合、図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0089】
次いで、図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUVが挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のモノマーから得られるものが挙げられる。保護膜は有機溶剤の現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報、特開2008−81716号公報、特開2008−111089号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0090】
フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0091】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、好ましくは10〜100mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージュアベーク(PEB)する。
【0092】
更に、図1(C)に示されるように有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブレジストパターン40aが基板上に形成される。この時の現像液としては、有機溶剤の現像液が2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノンのケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プルピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルのエステル類が好ましく用いることができる。これらの溶剤は単独で用いてもよいし、混合したものを用いてもよい。単独で好ましく用いることができる現像液としては、2−ヘプタノン、酢酸ブチル、蟻酸イソブチルを挙げることができる。前記溶剤よりも炭素数が多いケトン類として2−オクタノン、エステル類として酢酸アミルを用いた場合、未露光部の溶解性が低下する場合がある。未露光部の溶解性が低下している場合は、未露光部の溶解性が高い溶剤をブレンドする。2−ヘプタノン、酢酸ブチル、蟻酸イソブチルよりも炭素数の少ない2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、酢酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等は未露光部の溶解性が高く、これを適量混合して溶解性の調整を行う。
【0093】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0094】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしてはヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンが挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられ、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールが挙げられる。
【0095】
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
【0096】
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
なお、アルカリ水によるポジ現像と、有機溶剤によるネガ現像の順番には特に制限はない。
【0097】
アルカリ水溶液の現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、コリンヒドロキシド、モルフォリン類、ピペリジン類の0.1〜10質量%の水溶液が好ましく用いられる。
【0098】
図1(D)に示されるようにアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.2〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像し、ポジティブレジストパターン40aを得ることができる。リンス液としては水が好ましく用いられ、リンス液中にアルコールや界面活性剤を添加することもできる。
【0099】
また、アルカリ水によるポジ現像と、有機溶剤によるネガ現像の間にPEBを行うこともできる。アルカリ水によるポジ現像と、有機溶剤によるネガ現像によってパターン分割を行うためには、アルカリ水によるポジ現像と、有機溶剤によるネガ現像の感度差が必要である。本発明のヒドロキシ基とカルボキシル基の両方を酸不安定基で置換したレジスト組成物はポジ現像とネガ現像の感度差を付ける効果があるが、感度差が十分でない場合、2回の現像の間にPEBを行って感度差を広げるための調整を行うことは効果的である。しかしながら、2回のPEBによって酸の拡散が大きくなることによる解像性の低下の懸念がある。
【0100】
図2には、NA1.35、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクにおける44nmラインアンドスペースの光学像と、通常のポジ型レジストの現像後の断面形状が示される。露光量の少ない部分が残り、露光量が多い部分が溶解することによってポジ型のパターンが形成される。
【0101】
図3には、NA1.35、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスクにおける44nmラインアンドスペースの光学像と、本発明のフォトレジスト組成物を用いた有機溶剤によるネガ現像と、アルカリ水溶液によるポジ現像を組み合わせた場合のパターンの断面形状である。露光量の少ない部分が有機溶剤に溶解し、露光量の多い部分がアルカリ水に溶解し、中間領域がパターンとして形成される。
この場合、アルカリ水溶液によるポジ化の感度と、有機溶剤によるネガ化の感度の比率が重要である。
図4に示すように、斜線部分に露光領域のパターンが残る。ここでは、ポジ化の感度E0pとネガ化の感度E0nの違いが余り無く、2回の現像後パターンがほとんど残らない。
一方、図5ではE0pとE0nが離れているため、パターンが残る領域(斜線部分)が広い。E0pとE0nが離れ過ぎている場合ではポジ現像とネガ現像の両方のスペースが同時に解像しない。最適なE0pとE0nの比率はE0pをE0nで割った値が3〜8の範囲内であり、5〜6が最も好ましい。
【0102】
ヒドロキシ基を保護した酸不安定基の割合を多くするとE0nが高感度化し、E0pをE0nで割った値が大きくなる。一方、ヒドロキシ基を保護した酸不安定基の割合を少なくするとE0pをE0nで割った値が小さくなる。ヒドロキシ基保護の酸不安定基の割合と、カルボキシル基保護の酸不安定基の割合を変えることによって、E0pをE0nで割った値を最適な値にすることができる。
【実施例】
【0103】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0104】
[合成例]
レジスト組成物に用いる高分子化合物として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、メタノールに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマー1〜22及び比較ポリマー1,2)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H−NMR、分子量及び分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより確認した。
【0105】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化36】

【0106】
レジストポリマー2
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.73
【化37】

【0107】
レジストポリマー3
分子量(Mw)=7,500
分散度(Mw/Mn)=1.81
【化38】

【0108】
レジストポリマー4
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.86
【化39】

【0109】
レジストポリマー5
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.81
【化40】

【0110】
レジストポリマー6
分子量(Mw)=6,500
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化41】

【0111】
レジストポリマー7
分子量(Mw)=8,730
分散度(Mw/Mn)=1.77
【化42】

【0112】
レジストポリマー8
分子量(Mw)=6,500
分散度(Mw/Mn)=1.79
【化43】

【0113】
レジストポリマー9
分子量(Mw)=9,300
分散度(Mw/Mn)=1.91
【化44】

【0114】
レジストポリマー10
分子量(Mw)=8,100
分散度(Mw/Mn)=1.71
【化45】

【0115】
レジストポリマー11
分子量(Mw)=8,500
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化46】

【0116】
レジストポリマー12
分子量(Mw)=5,300
分散度(Mw/Mn)=1.55
【化47】

【0117】
レジストポリマー13
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化48】

【0118】
レジストポリマー14
分子量(Mw)=5,400
分散度(Mw/Mn)=1.44
【化49】

【0119】
レジストポリマー15
分子量(Mw)=8,200
分散度(Mw/Mn)=1.72
【化50】

【0120】
レジストポリマー16
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化51】

【0121】
レジストポリマー17
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.96
【化52】

【0122】
レジストポリマー18
分子量(Mw)=7,000
分散度(Mw/Mn)=1.92
【化53】

【0123】
レジストポリマー19
分子量(Mw)=6,900
分散度(Mw/Mn)=1.98
【化54】

【0124】
レジストポリマー20
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化55】

【0125】
レジストポリマー21
分子量(Mw)=6,600
分散度(Mw/Mn)=2.03
【化56】

【0126】
レジストポリマー22
分子量(Mw)=6,900
分散度(Mw/Mn)=2.01
【化57】

【0127】
比較レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化58】

【0128】
比較レジストポリマー2
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化59】

【0129】
ポジ型レジスト組成物
高分子化合物(レジストポリマー)を用いて、下記表1又は2に示す組成で溶剤に対して住友スリーエム(株)製フッ素系界面活性剤FC−4430が100ppm溶解した溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した溶液を調製した。
【0130】
下記表中の各組成は次の通りである。
酸発生剤:PAG1,2(下記構造式参照)
【化60】

【0131】
撥水性ポリマー1
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化61】


撥水性ポリマー2
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.54
【化62】

【0132】
塩基性化合物:Quencher1,2(下記構造式参照)
【化63】


有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
【0133】
ArF露光パターニング評価(1)
下記表1に示す組成で調製したレジスト組成物を、シリコンウエハーに日産化学工業(株)製反射防止膜を80nmの膜厚で作製した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを160nmにした。
これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−305B、NA0.68、σ0.73)で0.2mJ/cm2ステップで露光量を変化させながらオープンフレーム露光を行った。露光後110℃で60秒間ベーク(PEB)し、表1に示される有機溶剤で60秒間パドル現像を行った後、表1に示される有機溶剤で500rpmでリンスした後、2,000rpmでスピンドライし、100℃で60秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させ、ネガ現像を行った。PEBまでを前述と同じプロセスを行い、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液でのポジ現像も行った。
PEB後の膜厚、有機溶剤現像後の膜厚、TMAH水溶液現像後の膜厚を光学式膜厚計で測定し、露光量と膜厚の関係(コントラストカーブ)を求めた。結果を図6〜8に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
ArF露光パターニング評価(2)
下記表2に示す組成で調製したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを60nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.05、σ0.98/0.78、ダイポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ100nm、ライン幅50nmのマスク)を用いて露光量を変化させながら露光を行い、露光後、表3に示される温度で60秒間ベーク(PEB)し、現像ノズルから酢酸ブチルを3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、ジイソアミルエーテルでリンス後、スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させ、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間静止パドル現像を行い、純水リンスを行った。
得られたポジパターンとネガパターンのライン幅を測長SEM(電子顕微鏡)で測定した。結果を表3に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0139】
10 基板
20 被加工基板
30 中間介在層
40 レジスト膜
40a レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位と酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位の両方を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶剤を含むレジスト組成物、あるいは酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸不安定基で置換されたカルボキシル基を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物と、酸発生剤と、有機溶剤を含むレジスト組成物を基板上に塗布して、加熱処理後に高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像とアルカリ水溶液による現像の2回の現像を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
酸不安定基で置換されたヒドロキシ基とカルボキシル基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が、下記一般式(1)に示される繰り返し単位a1又はa2及びbを有するものであることを特徴とする請求項1記載のパターン形成方法。
【化1】


(式中、R1、R4、R6は同一又は異種の水素原子又はメチル基を示す。R2は炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の(m+1)価の炭化水素基であり、エーテル基、エステル基又はラクトン環を有していてもよい。R3、R5、R7は酸不安定基である。mは1〜3の整数である。Zは単結合又は−C(=O)−O−R8−であり、R8は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環又はヒドロキシ基を有していてもよく、あるいはナフチレン基である。a1、a2、bは0≦a1<1.0、0≦a2<1.0、0<b<1.0、0<a1+a2<1.0、0<a1+a2+b≦1.0の範囲である。)
【請求項3】
有機溶剤の現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プルピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のパターン形成方法。
【請求項4】
アルカリ水溶液の現像液が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、モルフォリン、ピペリジンから選ばれるアミンを含有する水溶液であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項5】
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【請求項6】
有機溶剤による現像とアルカリ水溶液による現像の2回の現像によってマスクパターンの半分のピッチのパターンを解像することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の解像力倍加パターン形成方法。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−32806(P2012−32806A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145514(P2011−145514)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】