パターン形成方法
【課題】微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても高い精度でパターンを形成することができるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】微細なパターンのパターン形成方法であって、基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、パターン形成領域に第2の膜を形成し、第2の膜が乾燥してパターンを形成する工程とを有する。第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下である。
【解決手段】微細なパターンのパターン形成方法であって、基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、パターン形成領域に第2の膜を形成し、第2の膜が乾燥してパターンを形成する工程とを有する。第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性を制御して、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するパターン形成方法に関し、特に、電気配線もしくは半導体用の電極、またはこれらのプレカーサの形成に利用されるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の配線、および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成する技術が注目されている。この微細パターンの形成には、例えば、インクジェット方式の液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)が用いられる。この場合、金属粒子または樹脂粒子を拡散させた液体をインクジェットヘッドから打滴してパターンを描画し、加熱等により硬化させて、電気配線パターンが形成される。
また、現在、PETまたはPEN等のフレキシブルな基板(支持体)上に撥液性の膜を形成し、その上に、上述の電子回路の配線および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成することもなされている。
【0003】
特許文献1には、平均面粗さが1.2nm以上5nm以下、表面凹凸の最大高さが0.1μm以上1.0μm以下である基材上に有機樹脂溶液を塗布した後に加熱して平均面粗さが1nm以下、表面凹凸の最大山高さが30nm以下である有機樹脂層を形成する工程と、有機樹脂層を紫外線照射、電子線照射、コロナ放電あるいはオゾン処理して有機樹脂層表面の少なくとも一部に親液性領域を形成する工程と、この親液性領域に導電層を形成する工程を有する導電性基板の製造方法が開示されている。
導電層の形成には、ディッピング法、滴下法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、オフセットもしくはスクリーンなどの印刷法、またはインクジェット法などが用いられることが開示されている([0096])。
【0004】
また、特許文献1には、樹脂基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、有機半体層を有する有機電界効果トランジスタの製造方法が開示されている。この有機電界効果トランジスタの製造方法においては、疎水性有機層を形成し、この疎水性有機層に表面改質処理を施して親液化し、親液化部分に、インクジェット法などを用いて導電性高分子、金属コロイド、有機金属などを塗布し、その後、加熱処理して、ソース電極、ドレイン電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−289054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、有機樹脂層に、紫外線照射、電子線照射、コロナ放電あるいはオゾン処理して、有機樹脂層表面に親液性領域を形成した後、この親液性領域に、インクジェット法などを用いて導電層が形成されている。
また、特許文献1においては、有機電界効果トランジスタの製造方法が開示されている。有機電界効果トランジスタのソース電極−ドレイン電極間距離は10μm程度であり、ソース電極およびドレイン電極は、その位置精度に関してミクロンオーダーで精度が要求される。このように、所定の機能を発現するためにパターンには、ミクロンオーダーでの位置精度が要求される。
【0007】
ここで、「2007インクジェット技術大全(出版者:電子ジャーナル、出版年月日:2007.6)」によれば、インクジェット法において、一般的なインク液滴は、16〜30μmの直径を有し、体積が2ピコリットルである。このインク液滴で描画できる線幅は30μmである。また、印刷法でも、ソース電極−ドレイン電極間距離の精度を実現することは困難である。このように、インクジェット法、印刷法を単独で用いて、上記ミクロンオーダーの精度を達成することは極めて困難であり、例え、可能となったとしても極めて効率が悪い。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても高い精度でパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、微細なパターンのパターン形成方法であって、基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、前記パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、前記パターン形成領域に第2の膜を形成し、前記第2の膜が乾燥して、前記パターンを形成する工程とを有し、前記第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下であることを特徴とするパターン形成方法を提供するものである。
なお、微細なパターンとは、線幅が50μmよりも小さいパターンのことをいう。
【0010】
記第1の膜は、紫外線により親疎水性が変化するものであり、前記パターン形成領域は、紫外線露光により形成され、前記第2の膜は、非パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第1の表面間力が、−50Pa〜−10Paであり、前記パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第2の表面間力が、前記第1の表面間力の90%以下であるとともに、負の値であることが好ましい。
【0011】
前記紫外線露光により、前記パターン形成領域に10nm以上の凹部を形成することが好ましい。
例えば、前記第2の膜は、インクジェット法または印刷法により形成される。
例えば、前記パターンは、電気配線もしくは半導体用の電極、または電気配線もしくは半導体用の電極のプレカーサである。
なお、前記第2の表面間力は、前記第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても高い精度でパターンを形成することができる。
このため、本発明によれば、例えば、ソース電極−ドレイン電極間の距離の精度を高くでき、高い精度で薄膜トランジスタを形成することができる。これにより、薄膜トランジスタをディスプレイに適用した場合、各画素のドレイン電流値のバラツキを軽減することができ、結果として輝度バラツキを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】(a)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的平面図であり、(b)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、パターン形成方法を工程順に示す模式的断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、パターン形成方法を工程順に示す模式的平面図であり、図3(a)〜(d)の各工程に対応するものである。
【図5】(a)は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を用いて形成される薄膜トランジスタを示す模式図であり、(b)は、図5(a)のH−H線に相当する断面図である。
【図6】液粘度とハジキ時間との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は、ハジキを説明するための模式図であり、(b)は、ハジキの解析モデルを示す模式的斜視図であり、(c)は、解析モデルのハジキによる膜厚の変化を示す模式的斜視図である。
【図8】ハジキの解析に用いられる膜厚変化と流量の関係を示す模式図である。
【図9】ヤングの式を説明するための模式図である。
【図10】(a)は、解析により得られた膜厚分布を示すグラフであり、(b)は、解析により得られた表面間力を示すグラフであり、(c)は、膜厚分布を示す模式的斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、解析により得られた膜厚分布を示すグラフであり、(a)は、非ハジキ状態を示し、(b)は、中立状態を示し、(c)は、ハジキ状態を示す。
【図12】表面間力とハジキとの関係を示すグラフである。
【図13】(a)は、非ハジキ状態の解析モデルを示す模式的斜視図であり、(b)は、ハジキ状態の解析モデルを示す模式的斜視図である。
【図14】膜厚と限界表面間力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のパターン形成方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。図2(a)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的平面図であり、(b)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的断面図である。
【0015】
図1に示すパターン形成装置10(以下、単に、形成装置10という)は、例えば、基板Zを長手方向に搬送しつつ、種々の処理を行う、ロール・ツー・ロール方式の装置である。この形成装置10は、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するものである。
形成装置10は、マーク形成部12と、検出部14と、露光部16と、パターン形成部18とを有する。さらに、形成装置10は、入力部30、描画データ作成部32と、記憶部34と、画像処理部36と、制御部38とを有する。制御部38により、形成装置10における各構成部の動作が制御される。
【0016】
形成装置10では、基板Zは、回転軸40に巻き回されてロール状に取り付けられる。この回転軸40は、基板Zを連続的に送り出すものであり、回転軸40には、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータによって基板Zが搬送方向Dに連続的に送り出される。
また、マーク形成部12、検出部14、露光部16、パターン形成部18を経た基板Zを巻き取る巻取り軸42が設けられている。この巻取り軸42は、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取り軸42が回転されて基板Zが巻取り軸42にロール状に巻き取られる。これにより、基板Zが搬送方向Dに搬送される。
【0017】
本実施形態において、図2(b)に示すように、基板Zには第1の膜50が形成されている。第1の膜50は、撥液剤により構成されている。撥液剤は、所定の波長の光、例えば、紫外光(UV光)により、親液性の程度が変化する機能を有する。この親液性の程度が変化する機能とは、例えば、親疎水性変換機能のことである。第1の膜50は、親液性の程度が変化する機能(親疎水性変換機能)を有する。
図2(a)に示すように、第1の膜50の表面50aに、矩形状の形成領域Sの外縁の四隅にアライメントマークM(マークパターン)を形成して、パターン形成がなされる。
【0018】
以下、基板Zについて、具体的に説明する。
本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるため、基板Zとしては、生産性、フレキシビリティなどの観点から、樹脂フィルムが用いられる。この樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0019】
形成装置10により、薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、これをディスプレイ等の用途に用いる場合には、基板Zとしては、透明樹脂フィルムが好ましく、可視域の波長における光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであればよい。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0020】
なお、形成装置10は、後述するように枚葉式でもよいが、この場合、基板Zとして、Siウエハ、石英ガラス、ガラス、プラスチック、金属板など各種のものを用いることができ、基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが積層成形できるものであれば、特に限定されるものではない。
基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜等の各種膜、機能材料からなる膜、機能素子が形成されたものを、基板として用いることができる。
【0021】
次に、第1の膜50を構成する撥液剤の具体例について説明する。第1の膜50は、上述のように親疎水性変換機能材料として機能し、撥液性剤で構成されるものである。この第1の膜50の厚さ(膜厚)は、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
第1の膜50は、エネルギー照射していない部分(非パターン形成領域)と、エネルギー照射した部分(パターン形成領域)とは、後に詳細に説明するように、第2の膜との間に作用する表面間力が異なる。
このため、第1の膜を構成する撥液性剤は、第2の膜との間に作用する表面間力が後に詳細に説明する条件を満たす必要がある。
【0022】
撥液性剤において、無機材料としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)など酸化物を上げることが出来る。これら酸化物を1種または2種以上選択して用いることができ、例えば、二酸化チタンであれば、アナターゼ型とルチル型がありいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。
【0023】
撥液性剤において、バインダーとしては、主骨格が酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものを使用することがよく、酸化物の作用により濡れ性を変化させる機能をバインダーに持たせる場合には、バインダーの主骨格が前記の酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、酸化物の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
また、前記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダーに混合してもよい。
また、エネルギー照射に酸化物の作用により分解され、これにより酸化物含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を酸化物含有層中に含有させることもできる。このような分解物質としては、酸化物の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。
【0024】
具体的には、フッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
そのほか、親液性化する化合物としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードオニウム塩等のオニウム塩、O−ニトロベンジルスルホネ―ト化合物、増感剤と併用したP−ニトロベンジルスルホンネ―ト化合物、1,2,3−トリスベンゼン、N―イミドスルホネ―ト化合物、オキシムスルホネ―ト化合物、α―ケトスルホネ―ト化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホネ―ト化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、ケトスルホン化合物、O−ニトロベンジルエステル化合物、m―アルコキシベンジルエステル化合物、O−ニトロベンジルアミド化合物、ベンゾイソエステル化合物、フェナシルエステル化合物、2,4−ジニトロベンゼンスルフォニルエステル、2−ジアゾー1,3ジケトン化合物、フェノールエステル化合物、O−ニトロベンジルフェノール化合物、2,5−シクロヘキサジエノン化合物、スルホン化ポリオレフィン、アリールジアゾスルホネート塩などがある。
【0025】
マーク形成部12は、上記親疎水性変換機能を有する第1の膜50に、例えば、図2(a)に示すように、基板Z上の第1の膜50の表面50aに、矩形状の形成領域Sの外縁の四隅にアライメントマークM(マークパターン)を形成するものである。
マーク形成部12は、例えば、マーク露光部と、マーク印刷部とを有し、マーク露光部が搬送方向Dの上流側に設けられている。
【0026】
マーク露光部は、第1の膜50に対して、撥液性から親液性に変化させることができる波長の光を照射することができる光源(図示せず)と、マスク(図示せず)と、マーク印字部(図示せず)とを備える。光源には、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能なものが用いられる。
マスクには、例えば、図2(a)に示す円形のアライメントマークMを形成するものが用いられる。なお、アライメントマークMの形状は、円形に限定されるものではない。
【0027】
マーク印刷部は、アライメントマークMとなるマークパターンが露光された露光領域に可視化インクを印刷し、アライメントマークMを形成するものである。
なお、マーク印刷部は、マークパターンが露光された露光領域に可視化インクを供給することができれば、特に、印刷方式は限定されず、ベタに印刷してもよい。また、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷を用いることができる。
アライメントマークMを形成するための可視化インクは、アライメントマークMを検出する際に、第1の膜50に不要な親疎水変換を生じさせないように、第1の膜50の親疎水性が変化しない波長の光を吸収または反射するインクが用いられる。このため、第1の膜50の親疎水変換が生じる波長に応じて、可視化インクは適宜選択されるが、例えば、波長が500nm以上の光を反射または吸収するインクが用いられる。なお、可視化インクとして、例えば、水溶性インクまたは金属インクが用いられる。
【0028】
検出部14は、アライメントマークMを検出し、このアライメントマークMの位置情報を得るものであり、この検出部14は、画像処理部36に接続されている。検出部14は、歪みセンサ(図示せず)とアライメント検出部(図示せず)を有する。
歪みセンサは、第1の膜50が親疎水性の変化を起こさない波長の光を用いて、アライメントマークMを検出するものであり、例えば、LED等の光源と、CMOS、CCDなどの撮像素子とを備える光学式のものが用いられる。なお、可視化インクが、波長500nm以上の光を反射または吸収するものである場合、光源には、波長が500nm以上の光を照射するものが用いられる。具体的には、光源の波長としては、例えば、633nm、660nm、590nm、赤外(IR)が用いられる。
歪みセンサにおいては、アライメントマークMに、波長が500nm以上の光を照射し、図2(a)に示す形成領域Sの外縁部の4隅に予め設けられているアライメントマークMを撮像し、例えば、4つのアライメントマークMの画像データを得る。4つのアライメントマークMの画像データを組として、アライメント検出部に出力する。
【0029】
アライメント検出部は、歪みセンサで得られた各アライメントマークMの画像データに基づいて、例えば、各アライメントマークMの位置、アライメントマークMの大きさ、向き、およびアライメントマークM間の距離等を算出し、アライメントマークMの大きさ、配置位置等の設計値と比較することにより、基板Zの歪み情報(アライメントマークMの位置情報)を作成するものである。基板Zの歪み情報は、例えば、基板Zの伸縮の方向、基板Zの伸縮量である。この基板Zの歪み情報は、具体的には、4つのアライメントマークMで囲まれる形成領域Sの伸縮方向、伸縮量、形成領域Sの回転方向、回転量、さらには形成領域Sの既定の大きさからの拡大量または縮小量、および台形状等の歪み量のことである。この基板Zの歪み情報が、画像処理部36に出力される。なお、後述するように、画像処理部36においては、基板Zの歪み情報に基づいて、露光用の補正データ(補正露光データ)および打滴用の補正データ(補正打滴パターンデータ)を作成する。
【0030】
なお、歪みセンサによるアライメントマークMの撮像方式は、特に限定されるものではなく、例えば、歪みセンサを二次元的に移動させながら、固定された基板ZのアライメントマークMを撮像する形態、基板Zを移動させながら、基板ZのアライメントマークMを撮像する方式等がある。
【0031】
露光部16は、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するためのものであり、パターンが形成されるパターン形成領域を、上述の線幅以下に形成できるものである。
パターン形成方法により、形成されるパターンは、例えば、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサである。
【0032】
露光部16は、基板Zに形成された第1の膜50において、パターン形成部18により、パターンが形成されるパターン形成領域を親液性に変える処理(以下、単に親液化処理という)を施すものである。この露光部16には、露光ユニット(図示せず)とガス供給ユニット(図示せず)とが設けられている。露光部16は、画像処理部36に接続されている。
なお、「親液性に変える」とは、第1の膜50に対する液滴の接触角が相対的に小さい状態にすることである。すなわち、撥液性に差が生じる状態のことをいう。
具体的には、上述の第1の表面間力が−50Pa〜−10Paであり、第2の表面間力が、負の値であって、第1の表面間力の90%以下である状態のことである。
【0033】
露光ユニットは、基板Zの第1の膜50の表面50aにおいて、例えば、パターンになるパターン形成領域に、第1の膜50を親液性に変換できる光を照射する(露光する)ものである。露光ユニットにおいて光源としては、マーク露光部の光源と同じ波長のものが用いられ、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能な光源が用いられ、レーザ光源を用いることもできる。
露光ユニットにおいて、紫外光の出力としては、例えば、1〜数10(mJ/cm2)である。なお、基板の組成によっては、紫外光の出力が高いと変質を生じる恐れがある。このため、親液性に変えることができれば、紫外光の出力は低い方が好ましい。
また、露光ユニットにより、第1の膜50に10nm以上の凹部を形成してもよい。これにより、パターンとの第1の膜との密着性が向上する。
【0034】
露光ユニットとしては、レーザ光を用いたデジタル露光方式のもの、およびマスク露光方式のものを用いることができる。
デジタル露光方式では、画像処理部36から出力される、形成するパターンのパターンデータに基づいて、パターンが形成されるパターン形成領域にレーザ光が照射されて、親液化処理され、パターン形成領域が親液性にされる。
【0035】
露光ユニットに、デジタル露光方式のものを用いる場合、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向に露光ユニットを走査させて、例えば、パターン形成領域のうち、同方向における一回の走査で露光処理が可能な領域について親液化処理を実行する。この走査方向における一回の親液化処理が終了すると、基板Zを搬送方向Dに所定量移動させて、同じパターン形成領域の次の領域について親液化処理を実行し、この動作を繰り返すことで、パターン形成領域の全てに親液化処理を施すシリアル方式を用いることができる。
また、露光ユニットにおいて、レーザ光を走査する走査光学部(図示せず)を設け、親液化処理に際して、露光ユニットを走査させることなく、レーザ光を走査させてもよい。
さらには、露光ユニットにおいて、基板Zの搬送方向Dと直交する幅方向について、多数のレーザ光を照射可能としたアレイタイプのものでもよい。
【0036】
ガス供給ユニットは、必要に応じて基板Zのパターン形成領域を親液性にするための反応ガスを、光を照射する際に供給するものである。ガス供給ユニットにより、基板Zにおける反応ガスの濃度(充填量)、供給タイミング等が調整される。反応ガスとしては、例えば、酸素を含むもの、または窒素を含むものが用いられる。
なお、ガス供給ユニットは、紫外光の照射だけで、第1の膜50を親液化処理することができれば、必ずしも設ける必要はない。
【0037】
パターン形成部18は、親液性化されたパターン形成領域に、乾燥してパターンとなる第2の膜を形成するものである。
パターンとなる第2の膜は、例えば、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサとなるものである。この第2の膜については、後に詳細に説明する。
パターン形成部18においては、パターン形成領域に第2の膜を形成することができれば、その形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、印刷法、インクジェット法を用いることができる。印刷法を用いた場合、パターン形成領域によっては、ベタに第2の膜を形成する。
【0038】
インクジェット法としては、ピエゾ式、サーマル方式などが適宜利用可能である。また、インクジェット法に用いられるインクジェットヘッドには、シリアルタイプまたはフルラインタイプを用いることができる。
インクジェットヘッドを用いたインクジェット方式を用いた場合、親液性化されたパターン形成領域の位置を示す打滴パターンデータにより、親液性化されたパターン形成領域に、インク滴を打滴してパターンを形成する。インクジェットヘッドから打滴されるインク滴の大きさは、16〜30μm程度である。
なお、インクジェット方式を用いた場合、打滴パターンデータによりインク滴が打滴されるため、この打滴パターンデータを変更することによりインク滴の打滴位置を容易に変えることができる。
【0039】
入力部30は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置(図示せず)と、表示部(図示せず)とを有する。入力装置には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態のものが用いられる。
オペレータは、入力部30を介して、マーク形成部12と、検出部14と、露光部16と、パターン形成部18とにおける各種の処理条件、運転条件を記憶部34に入力し、記憶させることができるとともに、形成するTFTの各構成部の位置情報(配置情報)およびTFTの各構成部の大きさ等の形状情報を含むTFTのパターンデータ(設計データ)、基板ZのアライメントマークMの位置情報、アライメントマークMの大きさ等の形状情報を記憶部34に入力し、記憶させることができる。
また、オペレータは、入力部30の表示部を介して、マーク形成部12、検出部14、露光部16、パターン形成部18の状態等を知ることができる。この表示部はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。なお、表示部は、異常を知らせる報知手段として機能も果たす。
【0040】
描画データ作成部32は、入力部30から入力されたパターンデータ、例えば、TFTの各構成部の位置情報(配置情報)およびTFTの各構成部の大きさ等の形状情報を含むCADデータを、露光部16でパターン形成領域にUV光を照射するために利用可能なデータ形式にデータ変換し、露光部16において利用可能な露光データを、パターンデータ、例えば、TFTの各構成部について作成するものである。露光部16では、露光データに基づいて、パターン形成領域にUV光を照射する。
描画データ作成部32においては、例えば、ベクター形式(ベクトルデータ)で記述されたTFTのパターンデータを、ラスター形式(ラスターデータ)に変換するものである。なお、入力されるデータ形式が露光部16で利用可能であれば、データ変換は、必ずしも必要がない。この場合、描画データ作成部32で、データ変換しないか、または描画データ作成部32を経由することなく、直接画像処理部36に、TFTなどのパターンデータを入力するようにしてもよい。
【0041】
記憶部34は、形成装置10において、パターンデータ、例えば、TFTのパターンに必要な種々の情報が記憶されるものである。例えば、形成装置10に入力部30を介して入力される情報として、TFTのパターンデータ等がある。また、検出部14で作成された基板の歪み情報が、どのパターンデータに対応するものであるか、例えば、TFTのどの構成部を作製しているかを含めて記憶される。さらには、形成装置10の各構成部の設定条件、処理条件等が記憶される。
【0042】
画像処理部36は、検出部14、露光部16、パターン形成部18、描画データ作成部32および記憶部34に接続されており、検出部14で作成された基板Zの歪み情報が入力される。
画像処理部36は、検出部14から出力された基板Zの歪み情報に基づいて、第1の膜50に形成するパターンの形成位置を変えるためのものであり、パターン形成のための調整部として機能するものである。
画像処理部36では、基板Zの歪み情報を許容範囲と比較し、基板Zの歪みが許容範囲を超える場合には、基板Zの歪み情報に応じて、UV光の照射位置を変更するために、露光データを補正する補正露光データを作成するものである。
【0043】
画像処理部36は、露光部16がデジタル露光機である場合、基板Zの歪み情報に基づいて、パターン形成領域の位置を表すパターンデータを補正する補正露光パターンデータを作成する。この補正露光パターンデータを露光部16に出力し、露光部16で、補正露光パターンデータにより、UV光をパターン形成領域に照射し、パターン形成領域を親液性化させる。これにより、適正な位置を親液化できる。
また、画像処理部36は、パターン形成部18がインクジェット方式である場合、露光位置の変更に合わせてインク滴の打滴位置を変更するため、基板Zの歪み情報に基づいて、打滴パターンデータを補正する補正打滴パターンデータを作成する。この補正打滴パターンデータをパターン形成部18に出力し、パターン形成部18で、補正打滴パターンデータにより、親液性化されたパターン形成領域に第2の膜を形成する。これにより、適正な位置に第2の膜を形成することができる。
【0044】
なお、画像処理部36において、基板Zの歪み情報を許容範囲と比較し、基板Zの歪みが許容範囲内である場合には、補正露光データを作成しない。このため、画像処理部36に入力された露光データが、補正されることなくそのまま露光部16に出力される。露光部16では、露光データに基づいて、UV光がパターン形成領域に照射される。
【0045】
なお、本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるが、これに限定されるものではない。形成装置10は、例えば、基板Zを1枚ずつ処理する枚葉式でもよい。
【0046】
本実施形態においては、例えば、図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)に示すようにして、パターンを形成することができる。
図3(a)、図4(a)に示すように、基板Zの表面に第1の膜50が形成されたものを用意する。
次に、露光データに基づいて露光部16により、図3(b)、図4(b)に示すように第1の膜50の表面50aにおいて、微細なパターンが形成されるパターン形成領域52にUV光を照射する。パターン形成領域52の幅は、50μmよりも小さい。
次に、パターン形成領域52に、図3(c)、図4(c)に示すように、第2の膜54を、例えば、インクジェット法を用いて形成する。
この第2の膜54を、例えば自然乾燥させることにより、第2の膜54の膜厚が減少していき、最終的に乾燥して、図3(d)、図4(d)に示すようにパターン56を形成することができる。
【0047】
本実施形態の形成装置10は、例えば、図5(a)に示すように複数のTFT60を、1つの形成領域S(図2(a)参照)に形成することができる。
【0048】
図5(a)および(b)に示すTFT60は、ゲート電極62と、半導体層64と、ソース電極66a・ドレイン電極66bとを有し、これらは、第2の膜により形成されるものである。
基板Z上に膜80が形成されており、この膜80上にTFT60が形成されている。膜80は、例えば、ゲート電極62を形成するために所定の平坦度を得ることと、電気絶縁性を向上させるために設けられている。この膜80は、第1の膜50に相当する。
【0049】
TFT60においては、膜80の表面80aにゲート電極62が形成されており、このゲート電極62および膜80を覆うように、ゲート絶縁層82が形成されている。このゲート絶縁層82の表面82aに、活性層として機能する半導体層64が形成されている。この半導体層64上にチャネル領域68として所定の隙間をあけて、ソース電極66aとドレイン電極66bとが形成されている。さらに、ソース電極66aとドレイン電極66bを覆うようにして保護層84が形成されている。
なお、ゲート絶縁層82および保護層84は、膜80と同じ撥液剤で構成される場合を含め、その厚さは、例えば、膜80の厚さ(膜厚)と同じく、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
【0050】
TFT60は、形成装置10の露光部16で、膜80の表面80aにゲート電極62が形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された形成領域にパターン形成部18によりゲート電極62が形成される。
形成装置10は、絶縁層を形成する機能がないため、他の装置を用いてゲート絶縁層82を形成する。このゲート絶縁層82も、膜80と同様に、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される。
その後、ゲート絶縁層82の表面82aに、形成装置10の露光部16で、半導体層64が形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された領域にパターン形成部18により半導体層64が形成される。
【0051】
次に、形成装置10の露光部16で、ソース電極66aとドレイン電極66bが形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された領域にパターン形成部18によりソース電極66aとドレイン電極66bが形成される。
そして、他の装置を用いて、例えば、樹脂製の保護層84を形成する。保護層84は、その上に何も形成されないため、膜80のような、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される必要はない。
本実施形態のパターン形成方法によれば、チャネル領域の長さが変わらないため、TFTの特性のばらつきを抑制することができる。
【0052】
本実施形態においては、パターンとなる第2の膜54は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下である。
第2の膜54が厚さの0.1μmのときの粘度を規定することにより、図6に示すように、ハジキ時間を、2秒程度にすることができることを見出した。
これにより、第2の膜54を形成した後、第2の膜54が乾燥する前に、撥液性領域ではじかれる。このため、第2の膜54が非パターン形成領域(撥液性領域)に形成されたとしても、乾燥してパターンになる前に、パターン形成領域に収まって、パターンを形成することができる。なお、図6は、表面間力が−20Paで、厚さが0.1μmの条件で求めたものである。
【0053】
本実施形態においては、パターンとなる第2の膜54を、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下とすることにより、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても、第2の膜54が乾燥してパターンになる前に、線幅が50μmよりも小さいパターン形成領域に収まって、パターンとすることができる。
【0054】
また、第2の膜54は、非パターン形成領域で第1の膜50との間で働く第1の表面間力が−50Pa〜−10Paであり、第2の膜54は、パターン形成領域で第1の膜50との間で働く第2の表面間力が第1の表面間力の90%以下であるとともに、第1の表面間力および第2の表面間力のいずれもが、負の値であることが好ましい。
より好ましくは、第2の表面間力は、第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値である。
このように、本発明においては、非パターン形成領域とパターン形成領域との表面間力の差を、非パターン形成領域の表面間力の10%以上とすることにより、非パターン形成領域とパターン形成領域との間で第2の膜をハジクことができることを見出した。すなわち、非パターン形成領域の第2の膜を、パターン形成領域側に移動できることを見出した。
【0055】
表面間力の差が、非パターン形成領域の表面間力の10%程度であってもよいことから、パターン形成領域を必ずしも親液化する必要はなく、非パターン形成領域とパターン形成領域とが共に撥液状態であってもよい。非パターン形成領域とパターン形成領域との撥液性の程度を変えることにより、パターンを形成することができる。このため、パターン形成領域を形成する際に、第1の膜50に付与するエネルギー小さくすることができ、第1の膜50に、親液化以外の変質等の悪影響の発生を抑制することができる。
【0056】
本発明においては、上述の非パターン形成領域とパターン形成領域との表面間力の差等について、以下に示すように解析を行い検証した。
具体的には、図7(a)に示すように、第2の膜の初期表面Cの状態が所定時間経過後にどのように変化するのかを解析するものである。ここで、初期表面とは、第2の膜を形成した時点での表面のことである。
図7(a)の解析には、図7(b)に示す解析モデル100を用いた。この解析モデル100は、第1の膜50に相当する支持体102の表面を、親液部104と撥液部106とに分けており、支持体102上に第2の膜54に相当する厚さが均一な液膜108が形成されたものである。なお、符号Bは、親液部104と撥液部106との境界を示す。
例えば、撥液部106で液膜108がはじかれると、液膜108が流動し、図7(c)に示すように、液膜109の状態が変化する。このように、親液部104および撥液部106によって生じる液膜108の流動をシミュレーションにより解析した。
なお、図7(b)に示す解析モデル100において、幅方向Lの親液部104の端から撥液部106の端までを1ピッチとする。1ピッチは50μmである。
【0057】
液膜108の流動の解析には、以下に示す数式1〜数式3を組み合わせて、液膜108の表面位置hの4階の偏微分方程式を形成する。この偏微分方程式を数値的に、例えば、周期境界条件で解くことで、初期状態の平坦な液膜の表面間力による薄膜化とハジキを求めることができる。なお、下記数式1は、液膜108の液面の時間変化を示すものであり、下記数式2は、図8に示す膜厚変化と流量の関係を示すものである。
【0058】
【数1】
【0059】
【数2】
【0060】
【数3】
【0061】
ここで、表面間力Πは、下記数式4により求めることができる。なお、上記数式2および下記数式4のaHは、ハマカー定数である。このハマカー定数は、A.Sharma,G.Reiter(1996)によると下記数式5で表わされる。
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
上記数式5のd0は、カットオフ距離であり、0.158nmが与えられている。Sdは下記数式6により表わされ、下記数式6のγLd、γSdは接触角を測定することにより得られる。
【0065】
【数6】
【0066】
ここで、図9に示すように、固体100表面上に液滴112があり、液滴112が平衡状態にある場合、固体の表面張力(γS)、固体と液体の界面張力(γSL)、液体の表面張力(γL)は、下記数式7に示すヤング式の関係にある。なお、θは接触角である。
【0067】
【数7】
【0068】
D. K. Owens and R. C. Wendt, J. Appl. Polym. Sci., 13, 1741(1969).によれば、下記数式8が得られる。下記数式8から、接触角θを測定することにより、γLd、γSdを求めることができ、これにより、上記数式5で表わされるハマカー定数aHを求めることができる。
【0069】
【数8】
【0070】
数値解析においては、計算領域を1/2ピッチとして、端を撥液部106中央とした。すなわち、解析範囲は、解析モデル100において、境界Bを中心として、幅方向Lにおける親液部104の中央から撥液部106の中央までとした。
計算アルゴリズムには、差分法(時間Euler法)を用いた。三次微係数を7点差分とし、一次微係数を5点差分とした。領域分割を40分割とした。
また、基本計算条件は、粘度を1mPa・s〜10mPa・sとし、密度を1000kg/m3とし、表面張力を20mN/mとし、膜厚を0.1μmとし、計算領域を25μmとした。また、液膜108の流動は、初期状態から2秒までの変化を計算した。
本実施形態においては、上記偏微分方程式を解くにあたり、例えば、以上の条件が用いられる。なお、上記偏微分方程式を解くための条件は、以上の条件に限定されるものではない。
【0071】
数値解析の結果の一例を図10(a)〜(c)に示す。図10(a)に示す符号Cは、初期表面を示すものであり、図10(a)、(b)では、親液部104と撥液部106の境界Bに対して右側が撥液部106であり、左側が親液部104である。また、符号wは、計算の経時方向を示す。また、図10(a)には、初期表面Cの状態から2秒後の液面の位置の変化を示しており、図10(b)には初期状態から2秒後の表面間力の変化を示している。図10(a)の図中の線は時刻0から等間隔の時間における変位量を示す。
図10(a)に示すように、初期表面から時間経過とともに、液面の位置が変化しており、右側(撥液部106)では膜厚が減少し、左側(親液部104)では膜厚が増加している。最終的な液膜109の状態を示したのが、図10(c)に示す解析モデル100aである。また、図10(b)に示すように、表面間力は時間経過とともに、撥液部106側の表面間力が高くなっている。この表面間力の変化は、親液部104と撥液部106の境界Bに対して対称に生じるものの、撥液部106側の表面間力が高く撥液部106から親液部104への流れが生じる。
【0072】
また、ハマカー定数aHを変えた場合の数値解析の結果の一例を図11(a)〜(c)に示す。
また、図11(a)〜(c)において、親液部104と撥液部106の境界Bに対して右側が撥液部106であり、左側が親液部104である。符号Bは親液部104と撥液部106の境界を示し、符号Cは初期表面を示し、符号wは計算の経時方向を示す。また、初期表面Cの状態から2秒後の液面の位置を計算している。
【0073】
数値解析の結果を図11(a)〜(c)に示す。なお、図11(a)は、ハマカー定数aHが−1.6×10−19(Nm)であり、(b)は、ハマカー定数aHが−1.9×10−19(Nm)であり、(c)は、ハマカー定数aHが−2.2×10−19(Nm)である。
図11(a)〜(c)の図中の線は時刻0から等間隔の時間における変位量を示している。
図11(a)〜(c)に示すように、ハマカー定数aHの絶対値を増やすと、非ハジキ、中立安定、ハジキ進行と変わることが、数値解析によりわかる。
なお、図11(a)の非ハジキ状態であっても、液面は変化し、親液部104側の膜厚が増加し、撥液部106の膜厚が減少し、液面が屈曲した状態で安定する。
【0074】
なお、図11(a)に示すように、時間と共に液面の凹凸が発生するものの変化が次第にゆるやかになって、一定の形状に収束していく。図11(a)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、一定の値に漸近するため、下に凸なカーブになるか、または変位量の時間微分がゼロに近づく。これを非ハジキとする。
【0075】
また、上述のように、図11(b)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、最右端の変位量は時刻の経過とともに単調に減少する。常に、表面張力と表面間力がわずかにずれて、液膜の薄膜化が進むものの、破綻をきたさない。これを中立安定とする。
【0076】
さらに、上述のように、図11(c)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、急速に薄膜化が進んでいるので、加速度的に変位量の時間微分は大きくなり膜厚はゼロに到達する。これをハジキ進行とする。
このように、非ハジキ、中立安定、ハジキ進行は、最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットし、この最右端の変位量の時間変化により、判定することができる。
【0077】
次に、図7(b)に示す解析モデル100、および図7(b)に示す解析モデル100において撥液部106と親液部104との配置位置を入れ替えた他の解析モデル(図示せず)を用いて、表面間力を変えて解析を行い、上述の図11(a)〜(c)に示すような非ハジキ状態、中立安定状態、ハジキ状態のいずれになるかを求めた。その結果を図12に示す。この場合においても、上述の偏微分方程式を解くための条件で解析されており、粘度は1mPa・s〜10mPa・sとしている。
【0078】
図12に示すように、斜線αよりも上側の領域α1は、右側よりも左側が親液的で右側がハジク場合である。例えば、図7(a)に示す解析モデル100に相当する。一方、斜線αよりも下側の領域α2は、左側よりも右側が親液的で左側がハジク場合である。例えば、上述の他の解析モデルに相当する。
非ハジキであっても、多少薄膜化が起こり、そこで表面張力とバランスして安定化するため、安定であっても、液膜の表面は完全に平坦ではない。領域α1における非ハジキを、例えば、図13(a)に示す解析モデル110のように、親液部104側の液膜109が厚くなり、撥液部106側の液膜109の厚さが薄くなっている。撥液部106は露出していない。
【0079】
また、領域α1におけるハジキを、解析モデルを用いて示せば、例えば、図13(b)に示す解析モデル112のように、撥液部106の一部が露出し、親液部104の液膜109の厚さが厚くなっている。
なお、解析モデル110、112は、解析モデル100と同一構成物には同一符号を付し、その詳細な説明は省略している。
【0080】
図12に示すように、領域α1および領域α2においては、いずれも表面間力が−50Pa〜−10Paの範囲で、表面間力の差を、表面間力が高い方の表面間力の10%以上とすることによりハジクものとなっている。すなわち、上述の表面間力の規定により、非パターン形成領域の第2の膜がパターン形成領域側に移動されることが示されている。
【0081】
さらに、液膜108の膜厚と、ハジキ状態になる表面間力との関係を、液膜108の粘度を変えて、上述の図7(b)に示す解析モデルを用い、上述の偏微分方程式を上述の条件で解いて調べた。このため、解析についての詳細な説明は省略する。液膜108の膜厚と、ハジキ状態になる表面間力との関係を図14に示す。
【0082】
図14においては、直線F1〜F3は各粘度でのハジキと非ハジキとの境界を示すものであり、図12において中立状態となるものをプロットしたものである。
なお、中立状態となる表面間力、すなわち、ハジキと非ハジキとの境界の表面間力を限定表面間力という。
図14において、直線F1〜F3の上側の領域β1がハジキ領域であり、直線F1〜F3の下側の領域β2が非ハジキ領域である。
図14に示すように、膜厚が0.1〜0.3μmの範囲で、低粘度(1mPa・s、3mPa・s)であれば、現実的な表面間力(−50Pa〜−10Pa)でハジキが発生する。
このことからも、本発明で規定する表面間力(−50Pa〜−10Pa)であり、かつ粘度が3mPa・sと低ければ、ハジクことは明らかである。しかも、図6に示すように、2秒程度でハジクため、液膜が乾燥する前に、非パターン形成領域の第2の膜をパターン形成領域側に移動させることができる。
【0083】
以下、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサの形成に用いられる第2の膜の材料について具体的に説明する。
【0084】
第2の膜の導電性材料としては、導電性微粒子を含み、この導電性微粒子の粒径が1nm以上、100nm以下であることが好ましい。導電性微粒子の粒径が100nmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、インクジェット法による吐出が困難になることによる。また、導電性微粒子の粒径が1nm未満であると、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多になることによる。
分散質濃度は、1質量%以上、80質量%以下であり、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができる。分散質濃度が80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜を得にくい。
【0085】
導電性微粒子の分散液の表面張力は、20mN/m以上、70mN/m以下の範囲に入ることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が20mN/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70mN/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
【0086】
導電性材料としては、例えば、銀の微粒子が含まれるものである。銀以外の他の金属微粒子としては、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。さらには、ハロゲン化銀を用いてもよい。ただし、銀ナノ粒子が好ましい。金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いてもよい。
導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えば、キシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
【0087】
使用する分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、又はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、インクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、更に好ましい分散媒としては水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0088】
また、バインダー(添加剤)としては、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン化油、ウレタン樹脂、ロジン樹脂、ロジン化油、マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、ポリブテン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルオリゴマー、鉱物油、植物油、ウレタンオリゴマー、(メタ)アリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(この共重合体は他のモノマー(例えば、スチレン等)を共重合成分として加えてもよい)等を1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。また、本発明の金属ペーストには、添加剤として、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、地汚れ防止剤、ゲル化剤、シリコンオイル、シリコン樹脂、消泡剤、可塑剤等を適宜選択して添加してもよい。
また、溶媒としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、アルキルベンゼン類を用いることもできる。
【0089】
また、導電材料としては、導電性有機材料を用いることもでき、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
金属の微粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニルフォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀錯体、銅ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
導電性微粒子の他の例としては、レジスト、線状絶縁材料としてのアクリル樹脂、加熱してシリコンになるシラン化合物(例えば、トリシラン、ペンタシラン、シクロトリシラン、1,1’−ビスシクロブタシラン等)、金属錯体等が挙げられる。これらは液体中に微粒子として分散されていても良く、溶解されて存在してもよい。
【0090】
さらには、導電性有機材料を含有する液体として、導電性高分子であるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PPS(ポリスチレンスルホン酸)の水溶液、ドープドPANI(ポリアニリン)、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を用いることができる。
【0091】
半導体層64を構成するための材料として、CdSe、CdTe、GaAs、InP、Si、Ge、カーボンナノチューブ、シリコン、ZnO等の無機半導体、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。
【0092】
なお、ゲート絶縁層82を膜80と同様の組成としない場合、または保護層84のような層間絶縁膜を構成する電気絶縁性の大きな材料としては、以下のもの用いることができる。具体的には、有機材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリビニルブチラールなどが挙げられ、ポリビニルフェノールやポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。ポリフッ化キシレン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(α、α、α’、α’―テトラフルオロ―パラキシレン)、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレン共重合体の様なフッ素化高分子、ポリオレフィン系高分子、その他、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α―ビニルナフタレン)、ポリビニルトルエン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(4―メチル―1―ペンテン)、ポリ(2―メチル―1、3―ブタジエン)、ポリパラキシレン、ポリ[1、1―(2―メチルプロパン)ビス(4―フェニル)カルボネート]、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリクロロスチレン、ポリ(2、6―ジメチル―1、4―フェニレンエーテル)、ポリビニルシクロヘキサン、ポリアリレンエーテル、ポリフェニレン、ポリスチレン―コ―α―メチルスチレン、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2、4―ジメチルスチレン)などが挙げられる。
多孔質の絶縁膜としては、二酸化珪素にリンを添加したリンシリケートガラス、二酸化珪素にリン及びボロンを添加したホウ素リンリシケートガラス、ポリイミド、ポリアクリルなどの多孔質の絶縁膜が挙げられる。また、多孔質メチルシルセスキオキサン、多孔質ハイドロシルセスキオキサン、多孔質メチルハイドロシルセスキオキサン等のシロキサン結合を有する多孔質の絶縁膜を形成することができる。
【0093】
次に、第1の膜50に用いられる材料について説明する。
例えば、第1の膜50として、光触媒含有材料を用いることができる。この場合、この光触媒含有材料中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有材料表面のフッ素含有量が、光触媒含有材料からなる第1の膜(光触媒含有層)に対しエネルギーを照射した際に、光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するものである。また、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むよう光触媒含有層であってもよい。
このような光触媒含有材料の光触媒、バインダ、およびその他の成分について、以下に説明する。
【0094】
まず、光触媒について説明する。本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0095】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0096】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0097】
次に、バインダについて説明する。光触媒含有層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う第1の形態と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させることにより変化させる第2の形態と、これらを組み合わせることにより行う第3の形態の3つの形態に分けることができる。第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0098】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0099】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤として後述するエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層中に含有させることが必須となる。
【0100】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0101】
上述のゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサンの場合、一般式:YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0102】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、金属ペーストの付着を妨げる機能を発現する。
【0103】
また、上述の撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0104】
【化1】
【0105】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0106】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0107】
次に、分解物質について説明する。
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0108】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0109】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0110】
また、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0111】
また、第1の膜50としては、有機分子膜などからなる自己組織化膜を用いることもできる。基板表面を処理するための有機分子膜は、一端側に基板に結合可能な官能基を有し、他端側に基板の表面性を撥液性等に改質する(表面エネルギーを制御する)官能基を有すると共に、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成するものである。
【0112】
自己組織化膜とは、基板など下地層等構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性等を付与することができる。
【0113】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いた場合には、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0114】
自己組織化膜を形成する化合物としては、例えば、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」と表記する)を挙げることができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組合せて使用しても、本発明の所期の目的を損なわなければ制限されない。また、本発明においては、前記の自己組織化膜を形成する化合物として、前記FASを用いるのが、基板との密着性及び良好な撥液性を付与する上で好ましい。
【0115】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここで、nは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子等の加水分解基である。また、Rはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここで、xは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでも良いし、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF3)等のフルオロ基を有するため、基板等の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0116】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は2〜3日程度の間放置すると基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。以上に述べたのは、気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜は形成可能である。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が得られる。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、前処理を施すことが望ましい。
【0117】
第1の膜50は、エネルギーの付与によって臨界表面張力が大きく変化する材料で構成することができる。このような材料としては、側鎖に疎水性基を含む高分子材料が挙げられ、この高分子材料としては、ポリイミド、(メタ)アクリレート等の骨格を有する主鎖に直接、または結合基を介して疎水性基を有する側鎖が結合しているものを挙げることができる。
【0118】
疎水性基としては、末端構造が−CF2CH3、−CF2CF3、−CF(CF3)2、−C(CF3)3、−CF2H、−CFH2等である基が挙げられる。分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。さらには、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロアルキル基(以下、「Rf基」と記す)が好ましく、特に炭素数4〜20のRf基が好ましく、とりわけ、炭素数6〜12のRf基が好ましい。Rf基には直鎖構造あるいは分岐構造があるが、直鎖構造の方が好ましい。さらに、疎水性基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基はCnF2n+1−(ただし、nは4〜16の整数)で表わされる基が好ましく、特に、nが6〜12の整数である場合の該基が好ましい。パーフルオロアルキル基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、直鎖構造が好ましい。
【0119】
上記材料については特許2796575号公報等に詳しく記載されて周知であり、加熱状態で液体又は固体と接触させたときに親液性となり、空気中で加熱すると疎液性となる性質を有する。即ち、(接触媒体の選択と)熱エネルギーの付与によって臨界表面張力を変化させることができる。
【0120】
さらに、疎水性基としては、フッ素原子を含まない−CH2CH3、−CH(CH3)2、−C(CH3)3等の末端構造を有する基を挙げることができる。この場合にも、分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。疎水性基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。上記アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又は炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。Rの結合部位が多いほど表面エネルギーが低く(臨界表面張力が小さく)、疎液性となると考えられる。紫外線照射等によって、結合の一部が切断されるか、または配向状態が変化するために臨界表面張力が増加し、親液性になるものと推察される。
【0121】
これ以外にも疎水性基としては、−SiR3で表すことができるオルガノシリコン基を上げることができる。ここでRはシロキサン結合を含む有機基である。
上述の疎水性基において、特にメチレン基を有する疎水性基は、C−Hの結合エネルギー(338kJ/mol)がフッ素系材料のC−F結合(552kJ/mol)やシリコーン系材料のSi−C結合(451kJ/mol)に比較して小さい。このため紫外線照射等のエネルギー付与によって結合の一部を容易に切断することが可能である。
【0122】
側鎖に疎水性基を有する高分子材料としては、ポリイミドを含む高分子材料が挙げられる。ポリイミドは電気絶縁性、耐薬品性、耐熱性に優れているため、絶縁性濡れ変化層上に電極層等を形成する際に、溶媒や焼成による温度変化によって、膨潤やクラックが入るといったことがない。従って積層構造体1において、電気絶縁性に優れ且つ作製プロセス中に損傷を受けず、信頼性の高い絶縁性濡れ変化層2を形成することが可能となる。また、絶縁性濡れ変化層2を2種類以上の材料から構成する場合においては、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料以外の材料もポリイミドからなることが望ましい。
【0123】
さらに一般的にポリイミド材料の比誘電率は、絶縁材料として一般的なSiO2の比誘電率よりも低く、層間絶縁膜として好適である。側鎖に疎水性基を有するポリイミドの疎水性基は、例えば、以下に示す化学式の何れかである。
【0124】
【化2】
【0125】
ここで、Xは−CH2−または−CH2CH2−であり、A1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、A2、A3およびA4はそれぞれ独立して単結合、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、B1、B2、B3はそれぞれ独立して単結合または−CH2CH2−であり、B4は炭素数1〜10までのアルキレンであり、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して炭素数が1〜10までのアルキルであり、pは1以上の整数である。
【0126】
【化3】
【0127】
上記化学式において、T、UおよびVはそれぞれ独立してベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環上の任意のHは炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のフッ素置換アルキル、F、ClまたはCNで置換されていてもよく、mおよびnはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、hは0〜5の整数であり、RはH、F、Cl、CNまたは1価の有機基であり、mが2の場合の2個のUまたはnが2の場合の2個のVはそれぞれ同じでも異なっていても良い。
【0128】
【化4】
【0129】
上記化学式において、連結基ZはCH2、CFH、CF2、CH2CH2またはCF2Oであり、環Yは1,4−シクロへキシレンまたは1〜4個のHがFまたはCH3で置換られてもよい1,4−フェニレンであり、A1〜A3はそれぞれ独立して単結合、1,4−シクロへキシレンまたは1〜4個のHがFまたはCH3で置換られてもよい1,4−フェニレンであり、B1〜B3はそれぞれ独立して単結合、炭素数1〜4のアルキレン、酸素原子、炭素数1〜3のオキシアルキレンまたは炭素数1〜3のアルキレンオキシであり、RはH、任意のCH2がCF2で置換られてもよい炭素数1〜10のアルキル、または1個のCH2がCF2で置換られてもよい炭素数1〜9のアルコキシもしくはアルコキシアルキルであり、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は任意の位置である。但し、ZがCH2である場合には、B1〜B3のすべてが同時に炭素数1〜4のアルキレンであることはなく、ZがCH2CH2であって、環Yが1,4−フェニレンである場合には、A1およびA2がともに単結合であることはなく、またZがCF2Oである場合には、環Yが1,4−シクロへキシレンであることはない。
【0130】
【化5】
【0131】
上記化学式において、R2は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であり、Z1はCH2基であり、mは0〜2であり、環Aはベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、1は0または1であり、各Y1は独立に酸素原子またはCH2基であり、各n1は独立に0または1である。
【0132】
【化6】
【0133】
上記化学式において、各Y2は独立に酸素原子またはCH2基であり、R3、R4は独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはパーフルオロアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数3以上のアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、各n2は独立に0または1である。
【0134】
これらの材料についての詳細は、特開2002−162630号、特開2003−96034号、特開2003−267982号公報等に詳しく記載されている。またこれら疎水性基の主鎖骨格を構成するテトラカルボン酸二無水物については、脂肪族系、脂環式、芳香族系など種々の材料を用いることが可能である。具体的には、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物などである。この他特開平11−193345号、特開平11−193346号、特開平11−193347号公報等に詳しく記載されている材料についても用いることが可能である。
【0135】
上記化学式の疎水性基を含むポリイミドは単独で用いても良いし、他の材料と混合し用いても良い。ただし、混合して用いる場合は、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、混合する材料もポリイミドであることが望ましい。また上記化学式で示されていない疎水性基を含むポリイミドを用いることもできる。
【0136】
なお、第1の膜50は、光重合開始剤と、アクリル酸のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含むものであってもよい。
【0137】
第1の膜50は、濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなるポリイミドと、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなるポリイミドとのブレンド材料、または濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸と、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とのブレンド材料であってもよい。濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなる材料と、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなる材料とのブレンド材料であれば、エポキシ樹脂やフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール、ポリビニルブチラールなどの樹脂であっても、微細なくぼみ(凹凸)を紫外線のようなエネルギーの付与によって形成できる。
【0138】
この場合、第1の膜50には、絶縁性材料として、有機材料では、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリビニルブチラールなどが用いられ、ポリビニルフェノールやポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。無機材料では、TiO2、SiO2などを用いることができる。
【0139】
また、第1の膜50には、有機分子膜などからなる自己組織化単分子膜等を用いることができる。有機分子膜は、一端側に基板に結合可能な官能基を有し、他端側に基板の表面性を撥液性等に改質する(表面エネルギーを制御する)官能基を有する。これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖、あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば、単分子膜を形成するものである。自己組織化膜とは、基板など下地層等構成原子と反応可能な結合性官能基と、それ以外の直鎖分子とからなり、この直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。
【0140】
この自己組織化単分子膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一で、しかも優れた撥液性等を付与することができる。有機分子膜等からなる自己組織化単分子膜は、有機シラン分子などの原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は2〜3日程度の間放置すると基板上に形成される。
【0141】
また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。以上に述べたのは、気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化単分子膜は形成可能である。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化単分子膜が得られる。なお、自己組織化単分子膜を形成する前に、基板の表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、前処理を施すことが望ましい。以上の処理を行うことで基板の表面を均一な撥液性にすることができる。
【0142】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0143】
10 パターン形成装置(形成装置)
12 マーク形成部
14 検出部
16 露光部
18 パターン形成部
30 入力部
32 描画データ作成部
34 記憶部
36 画像処理部
38 制御部
50 第1の膜
52 パターン形成部
54 第2の膜
56 パターン
100 解析モデル
M アライメントマーク
Z 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥液性を制御して、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するパターン形成方法に関し、特に、電気配線もしくは半導体用の電極、またはこれらのプレカーサの形成に利用されるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子回路の配線、および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成する技術が注目されている。この微細パターンの形成には、例えば、インクジェット方式の液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)が用いられる。この場合、金属粒子または樹脂粒子を拡散させた液体をインクジェットヘッドから打滴してパターンを描画し、加熱等により硬化させて、電気配線パターンが形成される。
また、現在、PETまたはPEN等のフレキシブルな基板(支持体)上に撥液性の膜を形成し、その上に、上述の電子回路の配線および基板上に電気配線パターンなどの微細パターンを形成することもなされている。
【0003】
特許文献1には、平均面粗さが1.2nm以上5nm以下、表面凹凸の最大高さが0.1μm以上1.0μm以下である基材上に有機樹脂溶液を塗布した後に加熱して平均面粗さが1nm以下、表面凹凸の最大山高さが30nm以下である有機樹脂層を形成する工程と、有機樹脂層を紫外線照射、電子線照射、コロナ放電あるいはオゾン処理して有機樹脂層表面の少なくとも一部に親液性領域を形成する工程と、この親液性領域に導電層を形成する工程を有する導電性基板の製造方法が開示されている。
導電層の形成には、ディッピング法、滴下法、スプレー塗布法、ドクターブレード法、ダイコーティング法、オフセットもしくはスクリーンなどの印刷法、またはインクジェット法などが用いられることが開示されている([0096])。
【0004】
また、特許文献1には、樹脂基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極、有機半体層を有する有機電界効果トランジスタの製造方法が開示されている。この有機電界効果トランジスタの製造方法においては、疎水性有機層を形成し、この疎水性有機層に表面改質処理を施して親液化し、親液化部分に、インクジェット法などを用いて導電性高分子、金属コロイド、有機金属などを塗布し、その後、加熱処理して、ソース電極、ドレイン電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−289054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、有機樹脂層に、紫外線照射、電子線照射、コロナ放電あるいはオゾン処理して、有機樹脂層表面に親液性領域を形成した後、この親液性領域に、インクジェット法などを用いて導電層が形成されている。
また、特許文献1においては、有機電界効果トランジスタの製造方法が開示されている。有機電界効果トランジスタのソース電極−ドレイン電極間距離は10μm程度であり、ソース電極およびドレイン電極は、その位置精度に関してミクロンオーダーで精度が要求される。このように、所定の機能を発現するためにパターンには、ミクロンオーダーでの位置精度が要求される。
【0007】
ここで、「2007インクジェット技術大全(出版者:電子ジャーナル、出版年月日:2007.6)」によれば、インクジェット法において、一般的なインク液滴は、16〜30μmの直径を有し、体積が2ピコリットルである。このインク液滴で描画できる線幅は30μmである。また、印刷法でも、ソース電極−ドレイン電極間距離の精度を実現することは困難である。このように、インクジェット法、印刷法を単独で用いて、上記ミクロンオーダーの精度を達成することは極めて困難であり、例え、可能となったとしても極めて効率が悪い。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても高い精度でパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、微細なパターンのパターン形成方法であって、基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、前記パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、前記パターン形成領域に第2の膜を形成し、前記第2の膜が乾燥して、前記パターンを形成する工程とを有し、前記第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下であることを特徴とするパターン形成方法を提供するものである。
なお、微細なパターンとは、線幅が50μmよりも小さいパターンのことをいう。
【0010】
記第1の膜は、紫外線により親疎水性が変化するものであり、前記パターン形成領域は、紫外線露光により形成され、前記第2の膜は、非パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第1の表面間力が、−50Pa〜−10Paであり、前記パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第2の表面間力が、前記第1の表面間力の90%以下であるとともに、負の値であることが好ましい。
【0011】
前記紫外線露光により、前記パターン形成領域に10nm以上の凹部を形成することが好ましい。
例えば、前記第2の膜は、インクジェット法または印刷法により形成される。
例えば、前記パターンは、電気配線もしくは半導体用の電極、または電気配線もしくは半導体用の電極のプレカーサである。
なお、前記第2の表面間力は、前記第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても高い精度でパターンを形成することができる。
このため、本発明によれば、例えば、ソース電極−ドレイン電極間の距離の精度を高くでき、高い精度で薄膜トランジスタを形成することができる。これにより、薄膜トランジスタをディスプレイに適用した場合、各画素のドレイン電流値のバラツキを軽減することができ、結果として輝度バラツキを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。
【図2】(a)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的平面図であり、(b)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、パターン形成方法を工程順に示す模式的断面図である。
【図4】(a)〜(d)は、パターン形成方法を工程順に示す模式的平面図であり、図3(a)〜(d)の各工程に対応するものである。
【図5】(a)は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法を用いて形成される薄膜トランジスタを示す模式図であり、(b)は、図5(a)のH−H線に相当する断面図である。
【図6】液粘度とハジキ時間との関係を示すグラフである。
【図7】(a)は、ハジキを説明するための模式図であり、(b)は、ハジキの解析モデルを示す模式的斜視図であり、(c)は、解析モデルのハジキによる膜厚の変化を示す模式的斜視図である。
【図8】ハジキの解析に用いられる膜厚変化と流量の関係を示す模式図である。
【図9】ヤングの式を説明するための模式図である。
【図10】(a)は、解析により得られた膜厚分布を示すグラフであり、(b)は、解析により得られた表面間力を示すグラフであり、(c)は、膜厚分布を示す模式的斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、解析により得られた膜厚分布を示すグラフであり、(a)は、非ハジキ状態を示し、(b)は、中立状態を示し、(c)は、ハジキ状態を示す。
【図12】表面間力とハジキとの関係を示すグラフである。
【図13】(a)は、非ハジキ状態の解析モデルを示す模式的斜視図であり、(b)は、ハジキ状態の解析モデルを示す模式的斜視図である。
【図14】膜厚と限界表面間力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のパターン形成方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るパターン形成方法に用いられるパターン形成装置の一例を示す模式図である。図2(a)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的平面図であり、(b)は、パターン形成方法に用いられる、第1の膜が形成された基板を示す模式的断面図である。
【0015】
図1に示すパターン形成装置10(以下、単に、形成装置10という)は、例えば、基板Zを長手方向に搬送しつつ、種々の処理を行う、ロール・ツー・ロール方式の装置である。この形成装置10は、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するものである。
形成装置10は、マーク形成部12と、検出部14と、露光部16と、パターン形成部18とを有する。さらに、形成装置10は、入力部30、描画データ作成部32と、記憶部34と、画像処理部36と、制御部38とを有する。制御部38により、形成装置10における各構成部の動作が制御される。
【0016】
形成装置10では、基板Zは、回転軸40に巻き回されてロール状に取り付けられる。この回転軸40は、基板Zを連続的に送り出すものであり、回転軸40には、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータによって基板Zが搬送方向Dに連続的に送り出される。
また、マーク形成部12、検出部14、露光部16、パターン形成部18を経た基板Zを巻き取る巻取り軸42が設けられている。この巻取り軸42は、例えば、モータ(図示せず)が接続されている。このモータにより巻取り軸42が回転されて基板Zが巻取り軸42にロール状に巻き取られる。これにより、基板Zが搬送方向Dに搬送される。
【0017】
本実施形態において、図2(b)に示すように、基板Zには第1の膜50が形成されている。第1の膜50は、撥液剤により構成されている。撥液剤は、所定の波長の光、例えば、紫外光(UV光)により、親液性の程度が変化する機能を有する。この親液性の程度が変化する機能とは、例えば、親疎水性変換機能のことである。第1の膜50は、親液性の程度が変化する機能(親疎水性変換機能)を有する。
図2(a)に示すように、第1の膜50の表面50aに、矩形状の形成領域Sの外縁の四隅にアライメントマークM(マークパターン)を形成して、パターン形成がなされる。
【0018】
以下、基板Zについて、具体的に説明する。
本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるため、基板Zとしては、生産性、フレキシビリティなどの観点から、樹脂フィルムが用いられる。この樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0019】
形成装置10により、薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、これをディスプレイ等の用途に用いる場合には、基板Zとしては、透明樹脂フィルムが好ましく、可視域の波長における光線透過率が80%以上である樹脂フィルムであればよい。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0020】
なお、形成装置10は、後述するように枚葉式でもよいが、この場合、基板Zとして、Siウエハ、石英ガラス、ガラス、プラスチック、金属板など各種のものを用いることができ、基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが積層成形できるものであれば、特に限定されるものではない。
基板の表面に、半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜等の各種膜、機能材料からなる膜、機能素子が形成されたものを、基板として用いることができる。
【0021】
次に、第1の膜50を構成する撥液剤の具体例について説明する。第1の膜50は、上述のように親疎水性変換機能材料として機能し、撥液性剤で構成されるものである。この第1の膜50の厚さ(膜厚)は、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
第1の膜50は、エネルギー照射していない部分(非パターン形成領域)と、エネルギー照射した部分(パターン形成領域)とは、後に詳細に説明するように、第2の膜との間に作用する表面間力が異なる。
このため、第1の膜を構成する撥液性剤は、第2の膜との間に作用する表面間力が後に詳細に説明する条件を満たす必要がある。
【0022】
撥液性剤において、無機材料としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)など酸化物を上げることが出来る。これら酸化物を1種または2種以上選択して用いることができ、例えば、二酸化チタンであれば、アナターゼ型とルチル型がありいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。
【0023】
撥液性剤において、バインダーとしては、主骨格が酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものを使用することがよく、酸化物の作用により濡れ性を変化させる機能をバインダーに持たせる場合には、バインダーの主骨格が前記の酸化物の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、酸化物の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
また、前記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダーに混合してもよい。
また、エネルギー照射に酸化物の作用により分解され、これにより酸化物含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を酸化物含有層中に含有させることもできる。このような分解物質としては、酸化物の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。
【0024】
具体的には、フッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
そのほか、親液性化する化合物としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードオニウム塩等のオニウム塩、O−ニトロベンジルスルホネ―ト化合物、増感剤と併用したP−ニトロベンジルスルホンネ―ト化合物、1,2,3−トリスベンゼン、N―イミドスルホネ―ト化合物、オキシムスルホネ―ト化合物、α―ケトスルホネ―ト化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホネ―ト化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、ケトスルホン化合物、O−ニトロベンジルエステル化合物、m―アルコキシベンジルエステル化合物、O−ニトロベンジルアミド化合物、ベンゾイソエステル化合物、フェナシルエステル化合物、2,4−ジニトロベンゼンスルフォニルエステル、2−ジアゾー1,3ジケトン化合物、フェノールエステル化合物、O−ニトロベンジルフェノール化合物、2,5−シクロヘキサジエノン化合物、スルホン化ポリオレフィン、アリールジアゾスルホネート塩などがある。
【0025】
マーク形成部12は、上記親疎水性変換機能を有する第1の膜50に、例えば、図2(a)に示すように、基板Z上の第1の膜50の表面50aに、矩形状の形成領域Sの外縁の四隅にアライメントマークM(マークパターン)を形成するものである。
マーク形成部12は、例えば、マーク露光部と、マーク印刷部とを有し、マーク露光部が搬送方向Dの上流側に設けられている。
【0026】
マーク露光部は、第1の膜50に対して、撥液性から親液性に変化させることができる波長の光を照射することができる光源(図示せず)と、マスク(図示せず)と、マーク印字部(図示せず)とを備える。光源には、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能なものが用いられる。
マスクには、例えば、図2(a)に示す円形のアライメントマークMを形成するものが用いられる。なお、アライメントマークMの形状は、円形に限定されるものではない。
【0027】
マーク印刷部は、アライメントマークMとなるマークパターンが露光された露光領域に可視化インクを印刷し、アライメントマークMを形成するものである。
なお、マーク印刷部は、マークパターンが露光された露光領域に可視化インクを供給することができれば、特に、印刷方式は限定されず、ベタに印刷してもよい。また、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、凸版印刷、凹版印刷を用いることができる。
アライメントマークMを形成するための可視化インクは、アライメントマークMを検出する際に、第1の膜50に不要な親疎水変換を生じさせないように、第1の膜50の親疎水性が変化しない波長の光を吸収または反射するインクが用いられる。このため、第1の膜50の親疎水変換が生じる波長に応じて、可視化インクは適宜選択されるが、例えば、波長が500nm以上の光を反射または吸収するインクが用いられる。なお、可視化インクとして、例えば、水溶性インクまたは金属インクが用いられる。
【0028】
検出部14は、アライメントマークMを検出し、このアライメントマークMの位置情報を得るものであり、この検出部14は、画像処理部36に接続されている。検出部14は、歪みセンサ(図示せず)とアライメント検出部(図示せず)を有する。
歪みセンサは、第1の膜50が親疎水性の変化を起こさない波長の光を用いて、アライメントマークMを検出するものであり、例えば、LED等の光源と、CMOS、CCDなどの撮像素子とを備える光学式のものが用いられる。なお、可視化インクが、波長500nm以上の光を反射または吸収するものである場合、光源には、波長が500nm以上の光を照射するものが用いられる。具体的には、光源の波長としては、例えば、633nm、660nm、590nm、赤外(IR)が用いられる。
歪みセンサにおいては、アライメントマークMに、波長が500nm以上の光を照射し、図2(a)に示す形成領域Sの外縁部の4隅に予め設けられているアライメントマークMを撮像し、例えば、4つのアライメントマークMの画像データを得る。4つのアライメントマークMの画像データを組として、アライメント検出部に出力する。
【0029】
アライメント検出部は、歪みセンサで得られた各アライメントマークMの画像データに基づいて、例えば、各アライメントマークMの位置、アライメントマークMの大きさ、向き、およびアライメントマークM間の距離等を算出し、アライメントマークMの大きさ、配置位置等の設計値と比較することにより、基板Zの歪み情報(アライメントマークMの位置情報)を作成するものである。基板Zの歪み情報は、例えば、基板Zの伸縮の方向、基板Zの伸縮量である。この基板Zの歪み情報は、具体的には、4つのアライメントマークMで囲まれる形成領域Sの伸縮方向、伸縮量、形成領域Sの回転方向、回転量、さらには形成領域Sの既定の大きさからの拡大量または縮小量、および台形状等の歪み量のことである。この基板Zの歪み情報が、画像処理部36に出力される。なお、後述するように、画像処理部36においては、基板Zの歪み情報に基づいて、露光用の補正データ(補正露光データ)および打滴用の補正データ(補正打滴パターンデータ)を作成する。
【0030】
なお、歪みセンサによるアライメントマークMの撮像方式は、特に限定されるものではなく、例えば、歪みセンサを二次元的に移動させながら、固定された基板ZのアライメントマークMを撮像する形態、基板Zを移動させながら、基板ZのアライメントマークMを撮像する方式等がある。
【0031】
露光部16は、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンを形成するためのものであり、パターンが形成されるパターン形成領域を、上述の線幅以下に形成できるものである。
パターン形成方法により、形成されるパターンは、例えば、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサである。
【0032】
露光部16は、基板Zに形成された第1の膜50において、パターン形成部18により、パターンが形成されるパターン形成領域を親液性に変える処理(以下、単に親液化処理という)を施すものである。この露光部16には、露光ユニット(図示せず)とガス供給ユニット(図示せず)とが設けられている。露光部16は、画像処理部36に接続されている。
なお、「親液性に変える」とは、第1の膜50に対する液滴の接触角が相対的に小さい状態にすることである。すなわち、撥液性に差が生じる状態のことをいう。
具体的には、上述の第1の表面間力が−50Pa〜−10Paであり、第2の表面間力が、負の値であって、第1の表面間力の90%以下である状態のことである。
【0033】
露光ユニットは、基板Zの第1の膜50の表面50aにおいて、例えば、パターンになるパターン形成領域に、第1の膜50を親液性に変換できる光を照射する(露光する)ものである。露光ユニットにおいて光源としては、マーク露光部の光源と同じ波長のものが用いられ、例えば、波長が300(nm)、365(nm)、405(nm)などの紫外線領域の光を照射可能な光源が用いられ、レーザ光源を用いることもできる。
露光ユニットにおいて、紫外光の出力としては、例えば、1〜数10(mJ/cm2)である。なお、基板の組成によっては、紫外光の出力が高いと変質を生じる恐れがある。このため、親液性に変えることができれば、紫外光の出力は低い方が好ましい。
また、露光ユニットにより、第1の膜50に10nm以上の凹部を形成してもよい。これにより、パターンとの第1の膜との密着性が向上する。
【0034】
露光ユニットとしては、レーザ光を用いたデジタル露光方式のもの、およびマスク露光方式のものを用いることができる。
デジタル露光方式では、画像処理部36から出力される、形成するパターンのパターンデータに基づいて、パターンが形成されるパターン形成領域にレーザ光が照射されて、親液化処理され、パターン形成領域が親液性にされる。
【0035】
露光ユニットに、デジタル露光方式のものを用いる場合、例えば、基板Zの搬送方向Dと直交する方向に露光ユニットを走査させて、例えば、パターン形成領域のうち、同方向における一回の走査で露光処理が可能な領域について親液化処理を実行する。この走査方向における一回の親液化処理が終了すると、基板Zを搬送方向Dに所定量移動させて、同じパターン形成領域の次の領域について親液化処理を実行し、この動作を繰り返すことで、パターン形成領域の全てに親液化処理を施すシリアル方式を用いることができる。
また、露光ユニットにおいて、レーザ光を走査する走査光学部(図示せず)を設け、親液化処理に際して、露光ユニットを走査させることなく、レーザ光を走査させてもよい。
さらには、露光ユニットにおいて、基板Zの搬送方向Dと直交する幅方向について、多数のレーザ光を照射可能としたアレイタイプのものでもよい。
【0036】
ガス供給ユニットは、必要に応じて基板Zのパターン形成領域を親液性にするための反応ガスを、光を照射する際に供給するものである。ガス供給ユニットにより、基板Zにおける反応ガスの濃度(充填量)、供給タイミング等が調整される。反応ガスとしては、例えば、酸素を含むもの、または窒素を含むものが用いられる。
なお、ガス供給ユニットは、紫外光の照射だけで、第1の膜50を親液化処理することができれば、必ずしも設ける必要はない。
【0037】
パターン形成部18は、親液性化されたパターン形成領域に、乾燥してパターンとなる第2の膜を形成するものである。
パターンとなる第2の膜は、例えば、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサとなるものである。この第2の膜については、後に詳細に説明する。
パターン形成部18においては、パターン形成領域に第2の膜を形成することができれば、その形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、印刷法、インクジェット法を用いることができる。印刷法を用いた場合、パターン形成領域によっては、ベタに第2の膜を形成する。
【0038】
インクジェット法としては、ピエゾ式、サーマル方式などが適宜利用可能である。また、インクジェット法に用いられるインクジェットヘッドには、シリアルタイプまたはフルラインタイプを用いることができる。
インクジェットヘッドを用いたインクジェット方式を用いた場合、親液性化されたパターン形成領域の位置を示す打滴パターンデータにより、親液性化されたパターン形成領域に、インク滴を打滴してパターンを形成する。インクジェットヘッドから打滴されるインク滴の大きさは、16〜30μm程度である。
なお、インクジェット方式を用いた場合、打滴パターンデータによりインク滴が打滴されるため、この打滴パターンデータを変更することによりインク滴の打滴位置を容易に変えることができる。
【0039】
入力部30は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置(図示せず)と、表示部(図示せず)とを有する。入力装置には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態のものが用いられる。
オペレータは、入力部30を介して、マーク形成部12と、検出部14と、露光部16と、パターン形成部18とにおける各種の処理条件、運転条件を記憶部34に入力し、記憶させることができるとともに、形成するTFTの各構成部の位置情報(配置情報)およびTFTの各構成部の大きさ等の形状情報を含むTFTのパターンデータ(設計データ)、基板ZのアライメントマークMの位置情報、アライメントマークMの大きさ等の形状情報を記憶部34に入力し、記憶させることができる。
また、オペレータは、入力部30の表示部を介して、マーク形成部12、検出部14、露光部16、パターン形成部18の状態等を知ることができる。この表示部はエラーメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。なお、表示部は、異常を知らせる報知手段として機能も果たす。
【0040】
描画データ作成部32は、入力部30から入力されたパターンデータ、例えば、TFTの各構成部の位置情報(配置情報)およびTFTの各構成部の大きさ等の形状情報を含むCADデータを、露光部16でパターン形成領域にUV光を照射するために利用可能なデータ形式にデータ変換し、露光部16において利用可能な露光データを、パターンデータ、例えば、TFTの各構成部について作成するものである。露光部16では、露光データに基づいて、パターン形成領域にUV光を照射する。
描画データ作成部32においては、例えば、ベクター形式(ベクトルデータ)で記述されたTFTのパターンデータを、ラスター形式(ラスターデータ)に変換するものである。なお、入力されるデータ形式が露光部16で利用可能であれば、データ変換は、必ずしも必要がない。この場合、描画データ作成部32で、データ変換しないか、または描画データ作成部32を経由することなく、直接画像処理部36に、TFTなどのパターンデータを入力するようにしてもよい。
【0041】
記憶部34は、形成装置10において、パターンデータ、例えば、TFTのパターンに必要な種々の情報が記憶されるものである。例えば、形成装置10に入力部30を介して入力される情報として、TFTのパターンデータ等がある。また、検出部14で作成された基板の歪み情報が、どのパターンデータに対応するものであるか、例えば、TFTのどの構成部を作製しているかを含めて記憶される。さらには、形成装置10の各構成部の設定条件、処理条件等が記憶される。
【0042】
画像処理部36は、検出部14、露光部16、パターン形成部18、描画データ作成部32および記憶部34に接続されており、検出部14で作成された基板Zの歪み情報が入力される。
画像処理部36は、検出部14から出力された基板Zの歪み情報に基づいて、第1の膜50に形成するパターンの形成位置を変えるためのものであり、パターン形成のための調整部として機能するものである。
画像処理部36では、基板Zの歪み情報を許容範囲と比較し、基板Zの歪みが許容範囲を超える場合には、基板Zの歪み情報に応じて、UV光の照射位置を変更するために、露光データを補正する補正露光データを作成するものである。
【0043】
画像処理部36は、露光部16がデジタル露光機である場合、基板Zの歪み情報に基づいて、パターン形成領域の位置を表すパターンデータを補正する補正露光パターンデータを作成する。この補正露光パターンデータを露光部16に出力し、露光部16で、補正露光パターンデータにより、UV光をパターン形成領域に照射し、パターン形成領域を親液性化させる。これにより、適正な位置を親液化できる。
また、画像処理部36は、パターン形成部18がインクジェット方式である場合、露光位置の変更に合わせてインク滴の打滴位置を変更するため、基板Zの歪み情報に基づいて、打滴パターンデータを補正する補正打滴パターンデータを作成する。この補正打滴パターンデータをパターン形成部18に出力し、パターン形成部18で、補正打滴パターンデータにより、親液性化されたパターン形成領域に第2の膜を形成する。これにより、適正な位置に第2の膜を形成することができる。
【0044】
なお、画像処理部36において、基板Zの歪み情報を許容範囲と比較し、基板Zの歪みが許容範囲内である場合には、補正露光データを作成しない。このため、画像処理部36に入力された露光データが、補正されることなくそのまま露光部16に出力される。露光部16では、露光データに基づいて、UV光がパターン形成領域に照射される。
【0045】
なお、本実施形態の形成装置10は、ロール・ツー・ロール方式であるが、これに限定されるものではない。形成装置10は、例えば、基板Zを1枚ずつ処理する枚葉式でもよい。
【0046】
本実施形態においては、例えば、図3(a)〜(d)、図4(a)〜(d)に示すようにして、パターンを形成することができる。
図3(a)、図4(a)に示すように、基板Zの表面に第1の膜50が形成されたものを用意する。
次に、露光データに基づいて露光部16により、図3(b)、図4(b)に示すように第1の膜50の表面50aにおいて、微細なパターンが形成されるパターン形成領域52にUV光を照射する。パターン形成領域52の幅は、50μmよりも小さい。
次に、パターン形成領域52に、図3(c)、図4(c)に示すように、第2の膜54を、例えば、インクジェット法を用いて形成する。
この第2の膜54を、例えば自然乾燥させることにより、第2の膜54の膜厚が減少していき、最終的に乾燥して、図3(d)、図4(d)に示すようにパターン56を形成することができる。
【0047】
本実施形態の形成装置10は、例えば、図5(a)に示すように複数のTFT60を、1つの形成領域S(図2(a)参照)に形成することができる。
【0048】
図5(a)および(b)に示すTFT60は、ゲート電極62と、半導体層64と、ソース電極66a・ドレイン電極66bとを有し、これらは、第2の膜により形成されるものである。
基板Z上に膜80が形成されており、この膜80上にTFT60が形成されている。膜80は、例えば、ゲート電極62を形成するために所定の平坦度を得ることと、電気絶縁性を向上させるために設けられている。この膜80は、第1の膜50に相当する。
【0049】
TFT60においては、膜80の表面80aにゲート電極62が形成されており、このゲート電極62および膜80を覆うように、ゲート絶縁層82が形成されている。このゲート絶縁層82の表面82aに、活性層として機能する半導体層64が形成されている。この半導体層64上にチャネル領域68として所定の隙間をあけて、ソース電極66aとドレイン電極66bとが形成されている。さらに、ソース電極66aとドレイン電極66bを覆うようにして保護層84が形成されている。
なお、ゲート絶縁層82および保護層84は、膜80と同じ撥液剤で構成される場合を含め、その厚さは、例えば、膜80の厚さ(膜厚)と同じく、0.001μm〜1μmであることが好ましく、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。
【0050】
TFT60は、形成装置10の露光部16で、膜80の表面80aにゲート電極62が形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された形成領域にパターン形成部18によりゲート電極62が形成される。
形成装置10は、絶縁層を形成する機能がないため、他の装置を用いてゲート絶縁層82を形成する。このゲート絶縁層82も、膜80と同様に、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される。
その後、ゲート絶縁層82の表面82aに、形成装置10の露光部16で、半導体層64が形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された領域にパターン形成部18により半導体層64が形成される。
【0051】
次に、形成装置10の露光部16で、ソース電極66aとドレイン電極66bが形成される形成領域を親液性化し、その親液性化された領域にパターン形成部18によりソース電極66aとドレイン電極66bが形成される。
そして、他の装置を用いて、例えば、樹脂製の保護層84を形成する。保護層84は、その上に何も形成されないため、膜80のような、例えば、紫外光により親疎水性が変化する親疎水性変換機能を有する撥液剤により構成される必要はない。
本実施形態のパターン形成方法によれば、チャネル領域の長さが変わらないため、TFTの特性のばらつきを抑制することができる。
【0052】
本実施形態においては、パターンとなる第2の膜54は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下である。
第2の膜54が厚さの0.1μmのときの粘度を規定することにより、図6に示すように、ハジキ時間を、2秒程度にすることができることを見出した。
これにより、第2の膜54を形成した後、第2の膜54が乾燥する前に、撥液性領域ではじかれる。このため、第2の膜54が非パターン形成領域(撥液性領域)に形成されたとしても、乾燥してパターンになる前に、パターン形成領域に収まって、パターンを形成することができる。なお、図6は、表面間力が−20Paで、厚さが0.1μmの条件で求めたものである。
【0053】
本実施形態においては、パターンとなる第2の膜54を、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下とすることにより、微細なパターン、例えば、線幅が50μmよりも小さいパターンであっても、第2の膜54が乾燥してパターンになる前に、線幅が50μmよりも小さいパターン形成領域に収まって、パターンとすることができる。
【0054】
また、第2の膜54は、非パターン形成領域で第1の膜50との間で働く第1の表面間力が−50Pa〜−10Paであり、第2の膜54は、パターン形成領域で第1の膜50との間で働く第2の表面間力が第1の表面間力の90%以下であるとともに、第1の表面間力および第2の表面間力のいずれもが、負の値であることが好ましい。
より好ましくは、第2の表面間力は、第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値である。
このように、本発明においては、非パターン形成領域とパターン形成領域との表面間力の差を、非パターン形成領域の表面間力の10%以上とすることにより、非パターン形成領域とパターン形成領域との間で第2の膜をハジクことができることを見出した。すなわち、非パターン形成領域の第2の膜を、パターン形成領域側に移動できることを見出した。
【0055】
表面間力の差が、非パターン形成領域の表面間力の10%程度であってもよいことから、パターン形成領域を必ずしも親液化する必要はなく、非パターン形成領域とパターン形成領域とが共に撥液状態であってもよい。非パターン形成領域とパターン形成領域との撥液性の程度を変えることにより、パターンを形成することができる。このため、パターン形成領域を形成する際に、第1の膜50に付与するエネルギー小さくすることができ、第1の膜50に、親液化以外の変質等の悪影響の発生を抑制することができる。
【0056】
本発明においては、上述の非パターン形成領域とパターン形成領域との表面間力の差等について、以下に示すように解析を行い検証した。
具体的には、図7(a)に示すように、第2の膜の初期表面Cの状態が所定時間経過後にどのように変化するのかを解析するものである。ここで、初期表面とは、第2の膜を形成した時点での表面のことである。
図7(a)の解析には、図7(b)に示す解析モデル100を用いた。この解析モデル100は、第1の膜50に相当する支持体102の表面を、親液部104と撥液部106とに分けており、支持体102上に第2の膜54に相当する厚さが均一な液膜108が形成されたものである。なお、符号Bは、親液部104と撥液部106との境界を示す。
例えば、撥液部106で液膜108がはじかれると、液膜108が流動し、図7(c)に示すように、液膜109の状態が変化する。このように、親液部104および撥液部106によって生じる液膜108の流動をシミュレーションにより解析した。
なお、図7(b)に示す解析モデル100において、幅方向Lの親液部104の端から撥液部106の端までを1ピッチとする。1ピッチは50μmである。
【0057】
液膜108の流動の解析には、以下に示す数式1〜数式3を組み合わせて、液膜108の表面位置hの4階の偏微分方程式を形成する。この偏微分方程式を数値的に、例えば、周期境界条件で解くことで、初期状態の平坦な液膜の表面間力による薄膜化とハジキを求めることができる。なお、下記数式1は、液膜108の液面の時間変化を示すものであり、下記数式2は、図8に示す膜厚変化と流量の関係を示すものである。
【0058】
【数1】
【0059】
【数2】
【0060】
【数3】
【0061】
ここで、表面間力Πは、下記数式4により求めることができる。なお、上記数式2および下記数式4のaHは、ハマカー定数である。このハマカー定数は、A.Sharma,G.Reiter(1996)によると下記数式5で表わされる。
【0062】
【数4】
【0063】
【数5】
【0064】
上記数式5のd0は、カットオフ距離であり、0.158nmが与えられている。Sdは下記数式6により表わされ、下記数式6のγLd、γSdは接触角を測定することにより得られる。
【0065】
【数6】
【0066】
ここで、図9に示すように、固体100表面上に液滴112があり、液滴112が平衡状態にある場合、固体の表面張力(γS)、固体と液体の界面張力(γSL)、液体の表面張力(γL)は、下記数式7に示すヤング式の関係にある。なお、θは接触角である。
【0067】
【数7】
【0068】
D. K. Owens and R. C. Wendt, J. Appl. Polym. Sci., 13, 1741(1969).によれば、下記数式8が得られる。下記数式8から、接触角θを測定することにより、γLd、γSdを求めることができ、これにより、上記数式5で表わされるハマカー定数aHを求めることができる。
【0069】
【数8】
【0070】
数値解析においては、計算領域を1/2ピッチとして、端を撥液部106中央とした。すなわち、解析範囲は、解析モデル100において、境界Bを中心として、幅方向Lにおける親液部104の中央から撥液部106の中央までとした。
計算アルゴリズムには、差分法(時間Euler法)を用いた。三次微係数を7点差分とし、一次微係数を5点差分とした。領域分割を40分割とした。
また、基本計算条件は、粘度を1mPa・s〜10mPa・sとし、密度を1000kg/m3とし、表面張力を20mN/mとし、膜厚を0.1μmとし、計算領域を25μmとした。また、液膜108の流動は、初期状態から2秒までの変化を計算した。
本実施形態においては、上記偏微分方程式を解くにあたり、例えば、以上の条件が用いられる。なお、上記偏微分方程式を解くための条件は、以上の条件に限定されるものではない。
【0071】
数値解析の結果の一例を図10(a)〜(c)に示す。図10(a)に示す符号Cは、初期表面を示すものであり、図10(a)、(b)では、親液部104と撥液部106の境界Bに対して右側が撥液部106であり、左側が親液部104である。また、符号wは、計算の経時方向を示す。また、図10(a)には、初期表面Cの状態から2秒後の液面の位置の変化を示しており、図10(b)には初期状態から2秒後の表面間力の変化を示している。図10(a)の図中の線は時刻0から等間隔の時間における変位量を示す。
図10(a)に示すように、初期表面から時間経過とともに、液面の位置が変化しており、右側(撥液部106)では膜厚が減少し、左側(親液部104)では膜厚が増加している。最終的な液膜109の状態を示したのが、図10(c)に示す解析モデル100aである。また、図10(b)に示すように、表面間力は時間経過とともに、撥液部106側の表面間力が高くなっている。この表面間力の変化は、親液部104と撥液部106の境界Bに対して対称に生じるものの、撥液部106側の表面間力が高く撥液部106から親液部104への流れが生じる。
【0072】
また、ハマカー定数aHを変えた場合の数値解析の結果の一例を図11(a)〜(c)に示す。
また、図11(a)〜(c)において、親液部104と撥液部106の境界Bに対して右側が撥液部106であり、左側が親液部104である。符号Bは親液部104と撥液部106の境界を示し、符号Cは初期表面を示し、符号wは計算の経時方向を示す。また、初期表面Cの状態から2秒後の液面の位置を計算している。
【0073】
数値解析の結果を図11(a)〜(c)に示す。なお、図11(a)は、ハマカー定数aHが−1.6×10−19(Nm)であり、(b)は、ハマカー定数aHが−1.9×10−19(Nm)であり、(c)は、ハマカー定数aHが−2.2×10−19(Nm)である。
図11(a)〜(c)の図中の線は時刻0から等間隔の時間における変位量を示している。
図11(a)〜(c)に示すように、ハマカー定数aHの絶対値を増やすと、非ハジキ、中立安定、ハジキ進行と変わることが、数値解析によりわかる。
なお、図11(a)の非ハジキ状態であっても、液面は変化し、親液部104側の膜厚が増加し、撥液部106の膜厚が減少し、液面が屈曲した状態で安定する。
【0074】
なお、図11(a)に示すように、時間と共に液面の凹凸が発生するものの変化が次第にゆるやかになって、一定の形状に収束していく。図11(a)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、一定の値に漸近するため、下に凸なカーブになるか、または変位量の時間微分がゼロに近づく。これを非ハジキとする。
【0075】
また、上述のように、図11(b)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、最右端の変位量は時刻の経過とともに単調に減少する。常に、表面張力と表面間力がわずかにずれて、液膜の薄膜化が進むものの、破綻をきたさない。これを中立安定とする。
【0076】
さらに、上述のように、図11(c)の最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットすると、急速に薄膜化が進んでいるので、加速度的に変位量の時間微分は大きくなり膜厚はゼロに到達する。これをハジキ進行とする。
このように、非ハジキ、中立安定、ハジキ進行は、最右端(撥液部106中央に相当する部分)の変位量を時刻に対してプロットし、この最右端の変位量の時間変化により、判定することができる。
【0077】
次に、図7(b)に示す解析モデル100、および図7(b)に示す解析モデル100において撥液部106と親液部104との配置位置を入れ替えた他の解析モデル(図示せず)を用いて、表面間力を変えて解析を行い、上述の図11(a)〜(c)に示すような非ハジキ状態、中立安定状態、ハジキ状態のいずれになるかを求めた。その結果を図12に示す。この場合においても、上述の偏微分方程式を解くための条件で解析されており、粘度は1mPa・s〜10mPa・sとしている。
【0078】
図12に示すように、斜線αよりも上側の領域α1は、右側よりも左側が親液的で右側がハジク場合である。例えば、図7(a)に示す解析モデル100に相当する。一方、斜線αよりも下側の領域α2は、左側よりも右側が親液的で左側がハジク場合である。例えば、上述の他の解析モデルに相当する。
非ハジキであっても、多少薄膜化が起こり、そこで表面張力とバランスして安定化するため、安定であっても、液膜の表面は完全に平坦ではない。領域α1における非ハジキを、例えば、図13(a)に示す解析モデル110のように、親液部104側の液膜109が厚くなり、撥液部106側の液膜109の厚さが薄くなっている。撥液部106は露出していない。
【0079】
また、領域α1におけるハジキを、解析モデルを用いて示せば、例えば、図13(b)に示す解析モデル112のように、撥液部106の一部が露出し、親液部104の液膜109の厚さが厚くなっている。
なお、解析モデル110、112は、解析モデル100と同一構成物には同一符号を付し、その詳細な説明は省略している。
【0080】
図12に示すように、領域α1および領域α2においては、いずれも表面間力が−50Pa〜−10Paの範囲で、表面間力の差を、表面間力が高い方の表面間力の10%以上とすることによりハジクものとなっている。すなわち、上述の表面間力の規定により、非パターン形成領域の第2の膜がパターン形成領域側に移動されることが示されている。
【0081】
さらに、液膜108の膜厚と、ハジキ状態になる表面間力との関係を、液膜108の粘度を変えて、上述の図7(b)に示す解析モデルを用い、上述の偏微分方程式を上述の条件で解いて調べた。このため、解析についての詳細な説明は省略する。液膜108の膜厚と、ハジキ状態になる表面間力との関係を図14に示す。
【0082】
図14においては、直線F1〜F3は各粘度でのハジキと非ハジキとの境界を示すものであり、図12において中立状態となるものをプロットしたものである。
なお、中立状態となる表面間力、すなわち、ハジキと非ハジキとの境界の表面間力を限定表面間力という。
図14において、直線F1〜F3の上側の領域β1がハジキ領域であり、直線F1〜F3の下側の領域β2が非ハジキ領域である。
図14に示すように、膜厚が0.1〜0.3μmの範囲で、低粘度(1mPa・s、3mPa・s)であれば、現実的な表面間力(−50Pa〜−10Pa)でハジキが発生する。
このことからも、本発明で規定する表面間力(−50Pa〜−10Pa)であり、かつ粘度が3mPa・sと低ければ、ハジクことは明らかである。しかも、図6に示すように、2秒程度でハジクため、液膜が乾燥する前に、非パターン形成領域の第2の膜をパターン形成領域側に移動させることができる。
【0083】
以下、電子回路の配線、薄膜トランジスタ(以下、TFTという)等の電子素子の構成部、または電子回路の配線、TFT等の電子素子の構成部のプレカーサの形成に用いられる第2の膜の材料について具体的に説明する。
【0084】
第2の膜の導電性材料としては、導電性微粒子を含み、この導電性微粒子の粒径が1nm以上、100nm以下であることが好ましい。導電性微粒子の粒径が100nmより大きいと、ノズルの目詰まりが起こりやすく、インクジェット法による吐出が困難になることによる。また、導電性微粒子の粒径が1nm未満であると、導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多になることによる。
分散質濃度は、1質量%以上、80質量%以下であり、所望の導電膜の膜厚に応じて調整することができる。分散質濃度が80質量%を超えると凝集をおこしやすくなり、均一な膜を得にくい。
【0085】
導電性微粒子の分散液の表面張力は、20mN/m以上、70mN/m以下の範囲に入ることが好ましい。インクジェット法にて液体を吐出する際、表面張力が20mN/m未満であると、インク組成物のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じ易くなり、70mN/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量、吐出タイミングの制御が困難になるためである。
【0086】
導電性材料としては、例えば、銀の微粒子が含まれるものである。銀以外の他の金属微粒子としては、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。さらには、ハロゲン化銀を用いてもよい。ただし、銀ナノ粒子が好ましい。金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などを用いてもよい。
導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えば、キシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。
【0087】
使用する分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、又はエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、更にプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を挙げることができる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また、インクジェット法への適用のし易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、更に好ましい分散媒としては水、炭化水素系化合物を挙げることができる。これらの分散媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0088】
また、バインダー(添加剤)としては、アルキッド樹脂、変性アルキッド樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン化油、ウレタン樹脂、ロジン樹脂、ロジン化油、マレイン酸樹脂、無水マレイン酸樹脂、ポリブテン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルオリゴマー、鉱物油、植物油、ウレタンオリゴマー、(メタ)アリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体(この共重合体は他のモノマー(例えば、スチレン等)を共重合成分として加えてもよい)等を1種、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。また、本発明の金属ペーストには、添加剤として、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、地汚れ防止剤、ゲル化剤、シリコンオイル、シリコン樹脂、消泡剤、可塑剤等を適宜選択して添加してもよい。
また、溶媒としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、アルキルベンゼン類を用いることもできる。
【0089】
また、導電材料としては、導電性有機材料を用いることもでき、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
金属の微粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニルフォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀錯体、銅ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
導電性微粒子の他の例としては、レジスト、線状絶縁材料としてのアクリル樹脂、加熱してシリコンになるシラン化合物(例えば、トリシラン、ペンタシラン、シクロトリシラン、1,1’−ビスシクロブタシラン等)、金属錯体等が挙げられる。これらは液体中に微粒子として分散されていても良く、溶解されて存在してもよい。
【0090】
さらには、導電性有機材料を含有する液体として、導電性高分子であるPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)/PPS(ポリスチレンスルホン酸)の水溶液、ドープドPANI(ポリアニリン)、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)にPSS(ポリスチレンスルホン酸)をドープした導電性高分子の水溶液等を用いることができる。
【0091】
半導体層64を構成するための材料として、CdSe、CdTe、GaAs、InP、Si、Ge、カーボンナノチューブ、シリコン、ZnO等の無機半導体、ペンタセン、アントラセン、テトラセン、フタロシアニン等の有機低分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体等のポリフェニレン系導電性高分子、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体等の複素環系導電性高分子、ポリアニリン及びその誘導体等のイオン性導電性高分子等の有機半導体を用いることができる。
【0092】
なお、ゲート絶縁層82を膜80と同様の組成としない場合、または保護層84のような層間絶縁膜を構成する電気絶縁性の大きな材料としては、以下のもの用いることができる。具体的には、有機材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリビニルブチラールなどが挙げられ、ポリビニルフェノールやポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。ポリフッ化キシレン、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリアリルエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(α、α、α’、α’―テトラフルオロ―パラキシレン)、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン)、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレン共重合体の様なフッ素化高分子、ポリオレフィン系高分子、その他、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α―ビニルナフタレン)、ポリビニルトルエン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(4―メチル―1―ペンテン)、ポリ(2―メチル―1、3―ブタジエン)、ポリパラキシレン、ポリ[1、1―(2―メチルプロパン)ビス(4―フェニル)カルボネート]、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリクロロスチレン、ポリ(2、6―ジメチル―1、4―フェニレンエーテル)、ポリビニルシクロヘキサン、ポリアリレンエーテル、ポリフェニレン、ポリスチレン―コ―α―メチルスチレン、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2、4―ジメチルスチレン)などが挙げられる。
多孔質の絶縁膜としては、二酸化珪素にリンを添加したリンシリケートガラス、二酸化珪素にリン及びボロンを添加したホウ素リンリシケートガラス、ポリイミド、ポリアクリルなどの多孔質の絶縁膜が挙げられる。また、多孔質メチルシルセスキオキサン、多孔質ハイドロシルセスキオキサン、多孔質メチルハイドロシルセスキオキサン等のシロキサン結合を有する多孔質の絶縁膜を形成することができる。
【0093】
次に、第1の膜50に用いられる材料について説明する。
例えば、第1の膜50として、光触媒含有材料を用いることができる。この場合、この光触媒含有材料中にフッ素が含有され、さらにこの光触媒含有材料表面のフッ素含有量が、光触媒含有材料からなる第1の膜(光触媒含有層)に対しエネルギーを照射した際に、光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するものである。また、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を含むよう光触媒含有層であってもよい。
このような光触媒含有材料の光触媒、バインダ、およびその他の成分について、以下に説明する。
【0094】
まず、光触媒について説明する。本実施態様で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば二酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
特に二酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本実施態様ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0095】
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0096】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0097】
次に、バインダについて説明する。光触媒含有層上の濡れ性の変化をバインダ自体に光触媒が作用することにより行う第1の形態と、エネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させることにより変化させる第2の形態と、これらを組み合わせることにより行う第3の形態の3つの形態に分けることができる。第1の形態および第3の形態において用いられるバインダは、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる機能を有する必要があり、第2の形態では、このような機能は特に必要ない。
【0098】
上記第2の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を特に必要としないバインダとしては、主骨格が上記光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、有機置換基を有しない、もしくは多少有機置換基を有するポリシロキサンを挙げることができ、これらはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解、重縮合することにより得ることができる。
【0099】
このようなバインダを用いた場合は、添加剤として後述するエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層中に含有させることが必須となる。
【0100】
次に、上記第1の形態および第3の形態に用いられる、光触媒の作用により光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能を必要とするバインダについて説明する。このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものであって、光触媒の作用により分解されるような有機置換基を有するものが好ましく、例えば、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0101】
上述のゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサンの場合、一般式:YnSiX(4−n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0102】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層のエネルギー未照射部の撥液性が大きく向上し、金属ペーストの付着を妨げる機能を発現する。
【0103】
また、上述の撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0104】
【化1】
【0105】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0106】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0107】
次に、分解物質について説明する。
上記第2の形態および第3の形態においては、さらにエネルギー照射による光触媒の作用により分解され、これにより光触媒含有層上の濡れ性を変化させることができる分解物質を光触媒含有層に含有させる必要がある。すなわち、バインダ自体に光触媒含有層上の濡れ性を変化させる機能が無い場合、およびそのような機能が不足している場合に、上述したような分解物質を添加して、上記光触媒含有層上の濡れ性の変化を起こさせる、もしくはそのような変化を補助させるようにするのである。
【0108】
このような分解物質としては、光触媒の作用により分解し、かつ分解されることにより光触媒含有層表面の濡れ性を変化させる機能を有する界面活性剤を挙げることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0109】
また、界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を挙げることができる。
【0110】
また、光触媒含有層がフッ素を含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていることが好ましい。
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量が、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0111】
また、第1の膜50としては、有機分子膜などからなる自己組織化膜を用いることもできる。基板表面を処理するための有機分子膜は、一端側に基板に結合可能な官能基を有し、他端側に基板の表面性を撥液性等に改質する(表面エネルギーを制御する)官能基を有すると共に、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成するものである。
【0112】
自己組織化膜とは、基板など下地層等構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性等を付与することができる。
【0113】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いた場合には、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
【0114】
自己組織化膜を形成する化合物としては、例えば、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」と表記する)を挙げることができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組合せて使用しても、本発明の所期の目的を損なわなければ制限されない。また、本発明においては、前記の自己組織化膜を形成する化合物として、前記FASを用いるのが、基板との密着性及び良好な撥液性を付与する上で好ましい。
【0115】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここで、nは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子等の加水分解基である。また、Rはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここで、xは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでも良いし、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF3)等のフルオロ基を有するため、基板等の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0116】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は2〜3日程度の間放置すると基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。以上に述べたのは、気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜は形成可能である。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が得られる。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、前処理を施すことが望ましい。
【0117】
第1の膜50は、エネルギーの付与によって臨界表面張力が大きく変化する材料で構成することができる。このような材料としては、側鎖に疎水性基を含む高分子材料が挙げられ、この高分子材料としては、ポリイミド、(メタ)アクリレート等の骨格を有する主鎖に直接、または結合基を介して疎水性基を有する側鎖が結合しているものを挙げることができる。
【0118】
疎水性基としては、末端構造が−CF2CH3、−CF2CF3、−CF(CF3)2、−C(CF3)3、−CF2H、−CFH2等である基が挙げられる。分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。さらには、アルキル基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロアルキル基(以下、「Rf基」と記す)が好ましく、特に炭素数4〜20のRf基が好ましく、とりわけ、炭素数6〜12のRf基が好ましい。Rf基には直鎖構造あるいは分岐構造があるが、直鎖構造の方が好ましい。さらに、疎水性基は、アルキル基の水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましい。パーフルオロアルキル基はCnF2n+1−(ただし、nは4〜16の整数)で表わされる基が好ましく、特に、nが6〜12の整数である場合の該基が好ましい。パーフルオロアルキル基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、直鎖構造が好ましい。
【0119】
上記材料については特許2796575号公報等に詳しく記載されて周知であり、加熱状態で液体又は固体と接触させたときに親液性となり、空気中で加熱すると疎液性となる性質を有する。即ち、(接触媒体の選択と)熱エネルギーの付与によって臨界表面張力を変化させることができる。
【0120】
さらに、疎水性基としては、フッ素原子を含まない−CH2CH3、−CH(CH3)2、−C(CH3)3等の末端構造を有する基を挙げることができる。この場合にも、分子鎖同士を配向し易くするためには炭素鎖長の長い基が好ましく、炭素数4以上のものがより好ましい。疎水性基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよいが、直鎖構造の方が好ましい。上記アルキル基はハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基又は炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。Rの結合部位が多いほど表面エネルギーが低く(臨界表面張力が小さく)、疎液性となると考えられる。紫外線照射等によって、結合の一部が切断されるか、または配向状態が変化するために臨界表面張力が増加し、親液性になるものと推察される。
【0121】
これ以外にも疎水性基としては、−SiR3で表すことができるオルガノシリコン基を上げることができる。ここでRはシロキサン結合を含む有機基である。
上述の疎水性基において、特にメチレン基を有する疎水性基は、C−Hの結合エネルギー(338kJ/mol)がフッ素系材料のC−F結合(552kJ/mol)やシリコーン系材料のSi−C結合(451kJ/mol)に比較して小さい。このため紫外線照射等のエネルギー付与によって結合の一部を容易に切断することが可能である。
【0122】
側鎖に疎水性基を有する高分子材料としては、ポリイミドを含む高分子材料が挙げられる。ポリイミドは電気絶縁性、耐薬品性、耐熱性に優れているため、絶縁性濡れ変化層上に電極層等を形成する際に、溶媒や焼成による温度変化によって、膨潤やクラックが入るといったことがない。従って積層構造体1において、電気絶縁性に優れ且つ作製プロセス中に損傷を受けず、信頼性の高い絶縁性濡れ変化層2を形成することが可能となる。また、絶縁性濡れ変化層2を2種類以上の材料から構成する場合においては、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、側鎖に疎水性基を有する高分子材料以外の材料もポリイミドからなることが望ましい。
【0123】
さらに一般的にポリイミド材料の比誘電率は、絶縁材料として一般的なSiO2の比誘電率よりも低く、層間絶縁膜として好適である。側鎖に疎水性基を有するポリイミドの疎水性基は、例えば、以下に示す化学式の何れかである。
【0124】
【化2】
【0125】
ここで、Xは−CH2−または−CH2CH2−であり、A1は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、A2、A3およびA4はそれぞれ独立して単結合、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたは1〜4個のフッ素で置換された1,4−フェニレンであり、B1、B2、B3はそれぞれ独立して単結合または−CH2CH2−であり、B4は炭素数1〜10までのアルキレンであり、R3、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して炭素数が1〜10までのアルキルであり、pは1以上の整数である。
【0126】
【化3】
【0127】
上記化学式において、T、UおよびVはそれぞれ独立してベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、これらの環上の任意のHは炭素数1〜3のアルキル、炭素数1〜3のフッ素置換アルキル、F、ClまたはCNで置換されていてもよく、mおよびnはそれぞれ独立して0〜2の整数であり、hは0〜5の整数であり、RはH、F、Cl、CNまたは1価の有機基であり、mが2の場合の2個のUまたはnが2の場合の2個のVはそれぞれ同じでも異なっていても良い。
【0128】
【化4】
【0129】
上記化学式において、連結基ZはCH2、CFH、CF2、CH2CH2またはCF2Oであり、環Yは1,4−シクロへキシレンまたは1〜4個のHがFまたはCH3で置換られてもよい1,4−フェニレンであり、A1〜A3はそれぞれ独立して単結合、1,4−シクロへキシレンまたは1〜4個のHがFまたはCH3で置換られてもよい1,4−フェニレンであり、B1〜B3はそれぞれ独立して単結合、炭素数1〜4のアルキレン、酸素原子、炭素数1〜3のオキシアルキレンまたは炭素数1〜3のアルキレンオキシであり、RはH、任意のCH2がCF2で置換られてもよい炭素数1〜10のアルキル、または1個のCH2がCF2で置換られてもよい炭素数1〜9のアルコキシもしくはアルコキシアルキルであり、ベンゼン環に対するアミノ基の結合位置は任意の位置である。但し、ZがCH2である場合には、B1〜B3のすべてが同時に炭素数1〜4のアルキレンであることはなく、ZがCH2CH2であって、環Yが1,4−フェニレンである場合には、A1およびA2がともに単結合であることはなく、またZがCF2Oである場合には、環Yが1,4−シクロへキシレンであることはない。
【0130】
【化5】
【0131】
上記化学式において、R2は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基であり、Z1はCH2基であり、mは0〜2であり、環Aはベンゼン環またはシクロヘキサン環であり、1は0または1であり、各Y1は独立に酸素原子またはCH2基であり、各n1は独立に0または1である。
【0132】
【化6】
【0133】
上記化学式において、各Y2は独立に酸素原子またはCH2基であり、R3、R4は独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基またはパーフルオロアルキル基であり、少なくとも一方は炭素数3以上のアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、各n2は独立に0または1である。
【0134】
これらの材料についての詳細は、特開2002−162630号、特開2003−96034号、特開2003−267982号公報等に詳しく記載されている。またこれら疎水性基の主鎖骨格を構成するテトラカルボン酸二無水物については、脂肪族系、脂環式、芳香族系など種々の材料を用いることが可能である。具体的には、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物などである。この他特開平11−193345号、特開平11−193346号、特開平11−193347号公報等に詳しく記載されている材料についても用いることが可能である。
【0135】
上記化学式の疎水性基を含むポリイミドは単独で用いても良いし、他の材料と混合し用いても良い。ただし、混合して用いる場合は、耐熱性、耐溶剤性、親和性を考慮すると、混合する材料もポリイミドであることが望ましい。また上記化学式で示されていない疎水性基を含むポリイミドを用いることもできる。
【0136】
なお、第1の膜50は、光重合開始剤と、アクリル酸のモノマーおよび/またはオリゴマーとを含むものであってもよい。
【0137】
第1の膜50は、濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなるポリイミドと、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなるポリイミドとのブレンド材料、または濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸と、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなるポリイミドの前駆体であるポリアミック酸とのブレンド材料であってもよい。濡れ性を制御する側鎖をもたない、主鎖のみからなる材料と、主鎖と、濡れ性を制御しエネルギーの付与前には低表面エネルギーをもたらす側鎖からなる材料とのブレンド材料であれば、エポキシ樹脂やフッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール、ポリビニルブチラールなどの樹脂であっても、微細なくぼみ(凹凸)を紫外線のようなエネルギーの付与によって形成できる。
【0138】
この場合、第1の膜50には、絶縁性材料として、有機材料では、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、シルセスキオキサン、ポリビニルフェノール、ポリカーボネート、フッ素系樹脂、ポリパラキシリレン、ポリビニルブチラールなどが用いられ、ポリビニルフェノールやポリビニルアルコールは適当な架橋剤によって、架橋して用いてもよい。無機材料では、TiO2、SiO2などを用いることができる。
【0139】
また、第1の膜50には、有機分子膜などからなる自己組織化単分子膜等を用いることができる。有機分子膜は、一端側に基板に結合可能な官能基を有し、他端側に基板の表面性を撥液性等に改質する(表面エネルギーを制御する)官能基を有する。これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖、あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば、単分子膜を形成するものである。自己組織化膜とは、基板など下地層等構成原子と反応可能な結合性官能基と、それ以外の直鎖分子とからなり、この直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。
【0140】
この自己組織化単分子膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一で、しかも優れた撥液性等を付与することができる。有機分子膜等からなる自己組織化単分子膜は、有機シラン分子などの原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は2〜3日程度の間放置すると基板上に形成される。
【0141】
また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。以上に述べたのは、気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化単分子膜は形成可能である。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化単分子膜が得られる。なお、自己組織化単分子膜を形成する前に、基板の表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、前処理を施すことが望ましい。以上の処理を行うことで基板の表面を均一な撥液性にすることができる。
【0142】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のパターン形成装置およびパターン形成方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0143】
10 パターン形成装置(形成装置)
12 マーク形成部
14 検出部
16 露光部
18 パターン形成部
30 入力部
32 描画データ作成部
34 記憶部
36 画像処理部
38 制御部
50 第1の膜
52 パターン形成部
54 第2の膜
56 パターン
100 解析モデル
M アライメントマーク
Z 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細なパターンのパターン形成方法であって、
基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、前記パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、
前記パターン形成領域に第2の膜を形成し、前記第2の膜が乾燥して、前記パターンを形成する工程とを有し、
前記第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第1の膜は、紫外線により親疎水性が変化するものであり、
前記パターン形成領域は、紫外線露光により形成され、
前記第2の膜は、非パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第1の表面間力が、−50Pa〜−10Paであり、前記パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第2の表面間力が、前記第1の表面間力の90%以下であるとともに、負の値である請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記紫外線露光により、前記パターン形成領域に10nm以上の凹部を形成する請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記第2の膜は、インクジェット法または印刷法により形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記パターンは、電気配線もしくは半導体用の電極、または電気配線もしくは半導体用の電極のプレカーサである請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記第2の表面間力は、前記第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値である請求項2〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項1】
微細なパターンのパターン形成方法であって、
基板上に形成された、親疎水性変換機能を有する第1の膜において、前記パターンが形成されるパターン形成領域を親疎水性に変化させる工程と、
前記パターン形成領域に第2の膜を形成し、前記第2の膜が乾燥して、前記パターンを形成する工程とを有し、
前記第2の膜は、厚さが0.1μmになったときの粘度が3mPa・s以下であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記第1の膜は、紫外線により親疎水性が変化するものであり、
前記パターン形成領域は、紫外線露光により形成され、
前記第2の膜は、非パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第1の表面間力が、−50Pa〜−10Paであり、前記パターン形成領域で前記第1の膜との間で働く第2の表面間力が、前記第1の表面間力の90%以下であるとともに、負の値である請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記紫外線露光により、前記パターン形成領域に10nm以上の凹部を形成する請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記第2の膜は、インクジェット法または印刷法により形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記パターンは、電気配線もしくは半導体用の電極、または電気配線もしくは半導体用の電極のプレカーサである請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記第2の表面間力は、前記第1の表面間力の0〜90%であるとともに、負の値である請求項2〜5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−105797(P2013−105797A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247100(P2011−247100)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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