説明

パターン形成方法

【目的】微細なパターニングにとって障害となる光の多重干渉を著しく低減し、製造の歩留まりの向上、および、より微細なパターンの形成に有効な方法を提供する。
【構成】フォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、フォトレジスト表面に反射防止膜を形成して露光を行う方法であり、反射防止膜材料として非晶質含フッ素重合体を採用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体の製造等の微細加工等に有用な、フォトリソグラフィを利用したパターンの形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、フォトリソグラフィによってパターンを形成する際に、フォトレジストと基材との境界面およびフォトレジスト表面において露光した光が反射することにより、光の多重干渉が発生するという現象が、パターニングにおける障害となっていた。この多重干渉を防止するために、フォトレジストと基材との境界面に反射防止膜を施す工夫がなされてきたが、工程数の増加あるいはマスク合わせ検出信号の低下などの問題を抱えている。
【0003】また、特開昭60−38821に見られるように、透明な反射防止膜をフォトレジスト表面に施す方法も有用である。ところが該公開特許においては、反射防止膜の材料について、ポリシロキサン及びポリビニルアルコールが例示されているだけで特に言及されていない。ポリビニルアルコールなどの極性基を有するポリマーを反射防止膜として使用すると高感度フォトレジストを変性させる恐れがある。また、反射防止膜をフォトレジスト表面に施す方法においては、この反射防止膜を現像前に除去する必要があり、この除去には溶剤あるいは水を用いて溶解させるため、時間を要し、また、除去後の乾燥工程を必要とする。
【0004】一方、フォトリソグラフィに用いられる露光光源は、パターンの微細化にともなって短波長の光が使用されるようになりつつある。紫外線、とくにKrFエキシマレーザー(波長248nm)を用いる場合においても、光線透過率に優れ、反射防止膜として使用可能な有機材料が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述のようなフォトリソグラフィによるパターン形成方法において認められる欠点を解消し、微細なパターニングをより正確に行うために有用なパターン形成方法を新規に提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点の認識に基づいて、鋭意検討を重ねた結果、フォトレジスト表面に形成する反射防止膜の材料として、非晶質含フッ素重合体を採用することにより、可視光のみならず紫外線の領域においても、フォトレジスト表面の反射率を著しく低減せしめることが可能であり、また、フォトレジストを変質させずに反射防止膜を除去することが可能であることを新規に見いだすに至った。
【0007】かくして本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、フォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、フォトレジスト表面に非晶質含フッ素重合体からなる反射防止膜を形成して露光を行うことを特徴とするパターンの形成方法を、新規に提供するものである。
【0008】本発明において、反射防止膜は非晶質含フッ素重合体によって形成される。非晶質含フッ素重合体は、フィルム形成性があるため、反射防止膜を除去する際に、機械的手法、すなわち剥離する方法が採用可能である。無機質の反射防止膜は機械的に除去することは困難である。
【0009】非晶質含フッ素重合体は、結晶による光の散乱がないため、透明性に優れる。非晶質含フッ素重合体としては、テトラフルオロエチレン、ビニリデンフルオライドおよびヘキサフルオロプロピレンがそれぞれ37〜48重量%、15〜35重量%および26〜44重量%の3元共重合体などのフルオロオレフィン系の共重合体や、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体などがある。特に、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体が溶剤に対する溶解性に優れるため、反射防止膜の形成および除去に有利である。また、含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、機械的特性および非粘着性に優れるため、反射防止膜を除去するときに機械的に剥離しても、反射防止膜が破れて残ることもなく、またフォトレジストを剥すこともなく、好適である。
【0010】含フッ素脂肪族環構造を有する重合体としては、含フッ素環構造を有するモノマーを重合して得られるものや、少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体が好適である。
【0011】含フッ素環構造を有するモノマーを重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体は、特公昭63−18964等により知られている。即ち、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)等の含フッ素環構造を有するモノマーを単独重合ないし、テトラフルオロエチレンなどのラジカル重合性モノマーと共重合することにより得られる。
【0012】また、少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを環化重合して得られる主鎖に環構造を有する重合体は、特開昭63−238111や特開昭63−238115等により知られている。即ち、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等のモノマーの環化重合、またはテトラフルオロエチレンなどのラジカル重合性モノマーと共重合することにより得られる。
【0013】また、パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)等の含フッ素環構造を有するモノマーとパーフルオロ(アリルビニルエーテル)やパーフルオロ(ブテニルビニルエーテル)等の少なくとも2つの重合性二重結合を有する含フッ素モノマーを共重合して得られる重合体でもよい。
【0014】含フッ素脂肪族環構造を有する重合体は、主鎖に環構造を有する重合体が好適であるが、環構造を全繰り返し単位の20モル%以上含有するものが透明性、溶解性、機械的特性等の面から好ましい。
【0015】本発明で用いるフォトレジストとしては、一般に使われるポジ型、ネガ型のフォトレジストの中から任意に選択でき、所望のパターンの大きさ、要求精度、露光波長、露光装置の特性等により最適のものを選べばよい。例えば、キノンジアジド系感光剤を含むノボラック樹脂系レジストまたはポリビニルフェノール樹脂系レジスト等の従来型ポジレジスト、あるいはこれらの樹脂をベースとしたポジ型およびネガ型の化学増幅型レジスト、あるいはPMMA、PMIPKなどの脂肪族系レジストなどが好適な例である。
【0016】本発明に於て、フォトレジスト表面に非晶質含フッ素重合体からなる反射防止膜を形成せしめる方法としては、通常のコーティングまたはラミネートの方法を適宜用いることができる。例えば、該重合体を、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン等のフッ素系溶剤に溶解し、スピンコートあるいはディップコート等によってフォトレジスト上に溶液を塗布し、溶剤を乾燥することによって該重合体の反射防止膜を形成せしめることができる。あるいは、該重合体のフィルムをフォトレジスト上にラミネートしてもよい。
【0017】本発明に於ける非晶質含フッ素重合体は、フォトレジストとは相互に溶解しないので、フォトレジストを変質させることがない。また、該重合体を溶解する特定のフッ素系溶剤は、フォトレジストに対して不活性であるため、やはりフォトレジストを変質させることがない。
【0018】本発明に於ては、フォトレジストを露光した後に、非晶質含フッ素重合体からなる反射防止膜を除去したうえで、フォトレジストを現像する工程をとる必要があるが、該反射防止膜を除去する方法としては特に制限はない。例えば、該重合体を溶解するフッ素系溶剤を用いて除去する方法、あるいは粘着テープ等を用いて機械的に剥離する方法、あるいはフォトレジストを侵さない溶剤に浸漬して界面剥離させる方法などが挙げられる。該重合体は、表面エネルギーが低いため、非付着性を有し、機械的に剥離する方法を含め、除去がきわめて容易であることが大きな特徴である。
【0019】
【実施例】次に、本発明の実施例について更に具体的に説明するが、この説明が本発明を限定するものでないことは勿論である。
【0020】合成例11,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエンの20g 及びトリクロロトリフルオロエタン(以下R113と略記する)の40g を窒素置換した三ッ口フラスコに入れ、重合開始剤として(C3F7COO)2の20mgを加え、更に系内を窒素置換した後に、18Cで10時間重合した。その結果、重合体Aを 10g得た。この重合体はR113に溶解するポリマーであり、メタキシレンヘキサフルオライド中30Cでの固有粘度[η]は0.96であった。19F NMRおよび 1H NMRにより、主鎖に環構造を有する重合体であることを確認した。また、この重合体は無色透明であり、屈折率はガラス基板に近く、透過率も高い。また、X線回折により、この重合体は非晶質であることが確認された。
【0021】合成例2パーフルオロブテニルビニルエーテルの35g,R113の 5g, イオン交換水の150g, 及び重合開始剤として((CH3)2CHOCOO)2 の90mgを、内容積200ml の耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。系内を3回窒素で置換した後、40Cで22時間懸濁重合を行った。その結果、重合体Bを28g 得た。この重合体の固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30Cで0.50 であった。重合体のガラス転移点は 108Cであり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体である。また10%熱分解温度は465C であり、光線透過率は可視光で95%以上、波長248 nmで 94 %、波長200 nmで92%と高く、屈折率は1.34と小さいものであった。また、X線回折および19F NMRにより、この重合体は、非晶質で主鎖に環構造を有する重合体であることが確認された。
【0022】合成例3パーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とテトラフルオロエチレンをラジカル共重合し、ガラス転移点160℃の重合体Cを得た。この重合体は無色透明であり、屈折率は1.3で屈折率はガラス基板より低く、透過率も高い。また、X線回折および19F NMRにより、この重合体は、非晶質で主鎖に環構造を有する重合体であることが確認された。
【0023】実施例16インチウェハーの表面を黒色の油性インキでマスクした上に、ポジ型フォトレジストTHMR−iP1800(東京応化工業社製)の溶液をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上で乾燥した。このレジスト表面の365nmにおける反射率を測定したところ、5.5%であった。次に、重合体Aをパーフルオロトリブチルアミンに3重量%で溶解した溶液を、このレジスト表面に5000rpmでスピンコートし、ホットプレート上で乾燥して、重合体Aの反射防止膜を形成し、同様に反射率を測定したところ、1.2%であった。
【0024】実施例2重合体Bをパーフルオロトリブチルアミンに3重量%で溶解した溶液を、実施例1と同様に加工したフォトレジスト上に5500rpmでスピンコートし、ホットプレート上で乾燥して、重合体Bの反射防止膜を形成し、365nmにおける反射率を測定したところ、0.5%であった。続いて、この反射防止膜に粘着テープを付着させて、そのテープを静かに引き上げたところ、重合体Bの反射防止膜は除去されており、かつレジストは除去されずウェハー上に残っていた。
【0025】実施例36インチウェハーの表面を黒色の油性インキでマスクした上に、ポジ型フォトレジストFH−EX1(富士ハントエレクトロニクステクノロジー社製)の溶液をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上で乾燥した。このレジスト上の248nmにおける反射率は、6.5%であった。次に、重合体Bをパーフルオロトリブチルアミンに3重量%で溶解した溶液を、このレジスト表面に5500rpmでスピンコートし、ホットプレート上で乾燥して、重合体Bの反射防止膜を形成し、同様に反射率を測定したところ、0.3%であった。続いて、このウェハーをパーフルオロオクタンに30分浸漬したところ、重合体Bの反射防止膜は除去されており、かつ、レジストは除去されずウェハー上に残っていた。
【0026】実施例4重合体Cをパーフルオロトリブチルアミンに2重量%で溶解した溶液を、実施例3と同様に加工したフォトレジスト上に5000rpmでスピンコートし、ホットプレート上で乾燥して、重合体Cの反射防止膜を形成し、248nmにおける反射率を測定したところ、0.3%であった。
【0027】
【発明の効果】本発明は、フォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、非晶質含フッ素重合体で反射防止膜を形成することによって、微細なパターニングにとって障害となる光の多重干渉を著しく低減し、製造の歩留まりの向上、および、より微細なパターンの形成に寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】フォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、フォトレジスト表面に非晶質含フッ素重合体からなる反射防止膜を形成して露光を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】非晶質含フッ素重合体が含フッ素脂肪族環構造を有するポリマーである、請求項1のパターン形成方法。