説明

パターン形成用樹脂組成物及びパターン形成方法

【課題】海島構造の島と島の平均重心間距離が100〜800nm、かつ、島の面積率が35%以上のパターン構造を与えるパターン形成用樹脂組成物の提供。
【解決手段】芳香環含有ポリマー(PS)とポリ(メタ)アクリレート(PMMA)とをブロック部分として含むブロックコポリマー(BP)及び該BPにブロック部分として含まれるPMMAを構成するモノマーからなるホモポリマー(HP)を含むパターン形成用樹脂組成物であって、BP全体に対する、PS部分とPMMA部分の合計の比率が50モル%以上であり、BPにおけるPS部分:PMMA部分の質量比が1:1〜9:1であり、BPにブロック部分として含まれるPS:BPにブロック部分として含まれるPMMA及びHPの質量比が1:1.1〜1:11であり、及びBPにブロック部分として含まれるPMMA部分:HPの数平均分子量比は、1:0.2〜1:2である、前記パターン形用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーを用いて形成される新規な海島構造パターン形成方法及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノオーダーの微細加工方法が注目されており、光取り出し効率向上膜、反射防止膜、透明導電膜など様々な用途に応用されている。ナノオーダーの微細加工方法としては、フォトリソグラフィー法やナノインプリント法を用いる研究開発が盛んに行われているが、装置コストが高いという課題を抱えている。かかる課題を解決する手段として、高額な装置を必要としないブロックコポリマーの自己組織化を利用したナノオーダーの微細加工方法が注目されている。これは、ブロックコポリマー中の2種類のポリマーのエッチング耐性の差を利用して、相分離構造を下地に転写する技術であり、すでに多くの文献が発表されている(例えば、以下の非特許文献1を参照のこと)。
【0003】
しかしながら、ブロックコポリマーの海島構造の島と島の平均重心間距離は、数平均分子量に依存し、100nmより大きくすることは困難である。これはブロックコポリマーを用いて100nmを超える島と島の平均重心間距離を持つ海島構造を形成させるためには、数平均分子量を100万以上にすることが必要であるが、重合することが困難であり、また、かかる数平均分子量を持つブロックコポリマーは、海島構造のパターン形成するために長い時間を要してしまうためである。
【0004】
これに対し、以下の非特許文献2に記載されるように、Nealeyらは、ブロックコポリマーにホモポリマーを添加することで、島と島の平均重心間距離を40nmから100nmまで大きくできることを開示しているが、その海島構造の島の面積率は約20%に留まっている。
【0005】
このように島と島の平均重心間距離を大きくし、かつ、島の面積率の大きい相分離構造を形成させることは困難であるが、島と島の平均重心間距離が大きく(100nm〜800nm)、かつ、島の面積率が大きい(35%以上)構造を得ることができれば、例えば、ナノインプリントのモールドとして有用であろう。このようなモールドを用いた製品用途としては、LED用や有機EL用の輝度向上フィルム、反射防止膜などが挙げられる。また、このような海島構造は、透明導電膜にも応用することができるであろう。例えば、以下の特許文献1には、平均重心間距離が60nmの相分離構造を用いた透明導電膜が開示がある。
【0006】
このように、従来技術においては、自己組織化技術に基づき、島と島の平均重心間距離が大きく(100nm〜800nm)、かつ、島の面積率が大きい(35%以上)海島構造を得ることができるパターン形成用樹脂組成物は、未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−54598号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Christopher Harrison et al., ACS Symposium Series, Vol. 706, p. 2
【非特許文献2】Paul F. Nealey et al., Macromolecules, 2009, 42, 5139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、自己組織化技術に基づき、海島構造の島と島の平均重心間距離が100〜800nmであり、かつ、島の面積率が35%以上である海島構造を与えるパターン形成用樹脂組成物、並びに該組成物を用いて形成した海島構造パターンを用いた、LEDの高輝度化、有機ELの高輝度化、反射防止膜などの用途に用いるインプリントモールド、及び高透過率低抵抗の透明導電膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の技術的手段によりかかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
【0011】
[1]芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートとをブロック部分として含むブロックコポリマー(a)、及び該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマーからなるポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)を含むパターン形成用樹脂組成物であって、以下の要件:
(i)該ブロックコポリマー(a)全体に対する、該芳香環含有ポリマー部分と該ポリ(メタ)アクリレート部分の合計の比率は、50モル%以上であり、
(ii)該ブロックコポリマー(a)における、該芳香環含有ポリマー部分:該ポリ(メタ)アクリレート部分の質量比は、1:1〜9:1であり、
(iii)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び該ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、1:1.1〜1:11であり、及び
(iv)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、1:0.2〜1:2である、
を満たす前記パターン形用樹脂組成物。
【0012】
[2]前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマーは、ポリスチレンである、前記[1]に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0013】
[3]前記ブロックコポリマー(a)は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのジブロックコポリマーである、前記[1]又は[2]に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0014】
[4]前記ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、1万〜50万である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0015】
[5]前記ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、5万〜25万である、前記[4]に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0016】
[6]前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び前記ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、1:2〜1:4である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0017】
[7]前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、1:0.5〜1:1.5である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載のパターン形成用樹脂組成物。
【0018】
[8]前記[1]〜[7]のいずれかに記載パターン形成用樹脂組成物を溶剤に溶解してなるパターン形成用溶液であって、該溶液に対する該樹脂組成物の質量比は、0.1〜30質量%であるパターン形成用溶液。
【0019】
[9]前記[8]に記載のパターン形成用溶液を、基材上に塗付し、塗布後溶剤を揮発させて、厚さ10nm以上500nm以下の薄膜を形成する工程、及び該薄膜を温度130℃以上280℃以下、かつ加熱時間10秒以上1時間で加熱する工程、を含む海島構造パターン形成方法。
【0020】
[10]前記加熱時間が10秒以上30分以下である、前記[9]に記載の海島構造パターン形成方法。
【0021】
[11]海島構造における島部分の面積が35%以上、かつ、島と島との平均重心間距離が100nm〜800nmである海島構造パターン。
【0022】
[12]島と島の平均重心間距離が100〜380nmである、前記[11]に記載の海島構造パターン。
【0023】
[13]前記[9]若しくは[10]に記載の方法により形成された海島構造パターン、又は、前記[11]若しくは[12]に記載の海島構造パターンの島相を選択的に除去する工程、及び海相をエッチングマスクとして用いる工程を含む、パターン転写方法。
【0024】
[14]前記[13]に記載のパターン転写方法を用いて、金属にエッチングでパターンを形成する工程を含む、透明導電膜の製造方法。
【0025】
[15]前記エッチングは、ドライエッチングを含む、前記[14]に記載の透明導電膜の製造方法。
【0026】
[16]前記エッチングは、ドライエッチングによりホールを形成させ、次いでウェットエッチングを行う、前記[15]に記載の透明導電膜の製造方法。
【0027】
[17]前記金属は、アルミニウム、銀、クロム、及び銅からなる群から選ばれる、前記[14]〜[16]のいずれかに記載の透明導電膜の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物を用いることで、島と島の平均重心間距離が100〜800nmであり、かつ、島の面積率が35%以上である海島構造を形成できる。また、特定の海島構造を用いて、反射防止膜、LEDの高輝度化、有機ELの高輝度化などの用途に用いるインプリントモールドが得られ、また、かかる海島構造のホールを金属に転写することにより、高透過率且つ低抵抗の透明導電膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】エッチング法(A)の工程図。
【図2】エッチング法(B)の工程図。
【図3】透明導電膜のSEM画像を示す図面に代わる写真。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のパターン形成用樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明のパターン形成用樹脂組成物は、芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートとをブロック部分として含むブロックコポリマー(a)、及びブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる(メタ)アクリレートを構成するモノマーからなる(ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)を含む樹脂組成物である。
【0031】
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物は、以下の要件(i)該ブロックコポリマー(a)全体に対する、該芳香環含有ポリマー部分と該ポリ(メタ)アクリレート部分の合計の比率は、50モル%以上である、及び(ii)該ブロックコポリマー(a)における、該芳香環含有ポリマー部分:該ポリ(メタ)アクリレート部分の質量比は、1:1〜9:1である、を満たす必要がある。ここで、要件(ii)該ブロックコポリマー(a)における、該芳香環含有ポリマー部分:該ポリ(メタ)アクリレート部分の質量比は、該ポリ(メタ)アクリレート部を島相にするために、1:1以上、好ましくは2:1以上であり、ポリ(メタ)アクリレートポリマー部の面積率を大きくするという観点から、9:1以下、好ましくは5:1以下である。
【0032】
また、本発明に係るパターン形成用樹脂組成物は、以下の要件(iii)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び該ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、1:1.1〜1:11である、及び(iv)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、1:0.2〜1:2である、を満たす必要がある。ここで、要件(iii)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び該ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、ポリ(メタ)アクリレートポリマー部の面積率を大きくするという観点から、1:1.1以上、好ましくは1:2以上であり、ポリ(メタ)アクリレート部が島相にするという観点から、1:11以下、好ましくは1:4以下である。また、要件(iv)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、ポリ(メタ)アクリレートポリマー部の面積率を大きくするという観点から、1:0.2以上、好ましくは1:0.5以上であり、ブロックコポリマーとポリ(メタ)アクリレートホモポリマーがミクロ相分離構造を形成するという観点から、1:2以下、好ましくは1:1.5以下、より好ましくは1:1.2以下である。
【0033】
本発明で用いるブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、島と島の平均重心間距離が100nmより大きい海島構造を得るという観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上であり、一方、ナノオーダーの構造を形成させるために、50万以下、より好ましくは25万以下である。また、透明導電膜用途においては、島と島の平均重心間距離は、100nm〜380nmの範囲であることが好ましく、そのためには該数平均分子量の範囲は5万から25万以下であることが好ましい。
【0034】
本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。本発明に係るパターン形成用樹脂組成物は、芳香環含有ポリマー部分と、ポリ(メタ)アクリレート部分(ブロックコポリマー(a)に含まれるポリ(メタ)アクリレートブロック部分とポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)とから成る)とが自己組織的に相分離を起こし、芳香環含有ポリマー部分が海で、ポリ(メタ)アクリレート部分が島である海島構造パターンを形成する。ここで、海島構造とは、2種類のポリマーが形成する相分離構造を平面的に見た場合、多量成分の連続相(海)の中に少量成分の分散相(島)が点在する構造を意味する。尚、本明細書中、海島構造の海はマトリクス、島はドットともいう。
【0035】
芳香環含有ポリマー部分は、ポリ(メタ)アクリレート部分より耐エッチング性が高いため、海島構造の島の部分のみを選択的にエッチングすることにより、島を形成するポリ(メタ)アクリレート含有ポリマー部分の抜けたパターンを形成することができる。以下に説明するように、こうして得られたパターンをマスクとして、下地をエッチングし、更にそのパターンを下地の下にある金属へ転写することによって、最終的に金属の表面に微細なホールを形成することができる。本発明のパターン形成用樹脂組成物を用いることによって、島と島の平均重心間距離が100〜800nmであり、島の面積率35%以上の海島構造パターンを作製することが可能となる。
【0036】
ここで、島と島の平均重心間距離とは、隣接する島の重心間距離の平均値であり、画像解析ソフト(例えば、A像くん(旭化成エンジニアリング(株)社製))を用いて計算することができる。島の面積率とは、全体の面積に対する島部分の面積の割合であり、例えば、A像くんを用いて計算することができる。解析範囲は2μm×2μmであり、島の面積率と平均重心間距離を計算する。
【0037】
次に、本発明に係るパターン形成用樹脂組成物の構成成分について詳細に説明をする。
まず、ブロックコポリマー(a)について説明する。
本発明で用いるブロックコポリマー(a)を構成するブロックの必須成分の一つである芳香環含有ポリマーは、芳香環又はピリジン環のような複素芳香環を側鎖として有するビニルモノマーの単独重合体であり、例えば、ポリスチレン(以下、PSともいう。)、ポリメチルスチレン、ポリエチルスチレン、ポリt−ブチルスチレン、ポリメトキシスチレン、ポリN、N−ジメチルアミノスチレン、ポリクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリトリフルオロメチルスチレン、ポリトリメチルシリルスチレン、ポリジビニルベンゼン、ポリシアノスチレン、ポリα−メチルスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルビフェニル、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリイソプロペニルナフタレン、ポリビニルピリジン等を挙げることができる。ここで、本発明において最も好ましく用いられる芳香環含有ポリマーは、原料モノマーの入手性、合成の容易性の観点から、ポリスチレン(PS)である。
【0038】
本発明で用いるブロックコポリマー(a)を構成するブロックのもう一つの必須成分であるポリ(メタ)アクリレートとは、下記のアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の単独重合体又は共重合体である。ここで用いることができるアクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーからなる群としては、例えば、メタクリル酸メチル(以下、MMAともいう。)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等を挙げることができる。ここで本発明において最も好ましく用いられるポリ(メタ)アクリレートとしては、原料モノマーの入手性、合成の容易性の観点から、メタクリル酸メチルの単独重合体ポリメタクリル酸メチル(以下、ポリメチルメタクリレート、PMMAともいう。)である。
【0039】
本発明で用いるブロックコポリマー(a)は、上記芳香環含有ポリマーの片末端又は両末端と上記ポリ(メタ)アクリレートの片末端又は両末端が結合した、ジブロック、トリブロック又はそれ以上のマルチブロックコポリマーであり、合成の容易性の観点から、好ましくは、芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートの片末端同士が結合したジブロックコポリマーであり、より好ましくは、ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)のジブロックコポリマーである。
尚、ブロックコポリマー(a)中には、上記芳香環含有ポリマー部分及びポリ(メタ)アクリレート部分以外に、50モル%を超えない割合でその他のポリマー成分のブロックを含むこともできる。すなわち、前記したように、本発明に係るパターン形成用樹脂組成物は、要件(i)該ブロックコポリマー(a)全体に対する、該芳香環含有ポリマー部分と該ポリ(メタ)アクリレート部分の合計の比率は、50モル%以上である、を満たす必要がある。その他のポリマー成分の具体例としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。
【0040】
ブロックコポリマー(a)は、リビングアニオン重合やリビングラジカル重合、又は反応性末端基を有するポリマー同士のカップリング等により合成することができる。例えば、リビングアニオン重合では、ブチルリチウムのようなアニオン種を開始剤として、まず、芳香環含有ポリマーを合成した後、その末端を開始剤として、(メタ)アクリレートモノマーを重合することで芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートのブロックコポリマーを合成することができる。このとき、開始剤の添加量を下げることにより、得られるポリマーの数平均分子量を高めることができ、水や空気等の系内の不純物を取り除くことにより、ポリマーの数平均分子量を設計値通りに制御することができる。また、ポリ(メタ)アクリレート部分を重合する際は、系の温度を0℃以下に下げることにより、副反応を抑えることができる。リビングラジカル重合においては、まず、(メタ)アクリレートモノマーの二重結合に臭素等のハロゲン化合物を付加させ、末端をハロゲン化し、銅錯体を触媒としてポリ(メタ)アクリレートを合成した後、その末端ハロゲンを利用して芳香環含有ポリマーを合成することで芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートのブロックコポリマーを得ることができる。
【0041】
あるいは、リビングアニオン重合で芳香環含有ポリマーを合成し、その末端をハロゲン化した後、(メタ)アクリレートモノマーを銅触媒存在下で反応させ、芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートのブロックコポリマーを合成することもできる。
前記した反応性末端基を有するポリマー同士のカップリングとは、例えば、末端にアミノ基を有する芳香環含有ポリマーと、末端に無水マレイン酸を有するポリ(メタ)アクリレートを反応させて芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートのブロックコポリマーを得る方法であることができる。
【0042】
ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は以下の方法により求める。まず、以下の(1)の方法により芳香環含有ポリマー部分の数平均分子量の測定を行い、次いで、以下の(2)の方法によりポリ(メタ)アクリレート部分の数平均分子量の測定を行う。ブロックコポリマー(a)が芳香環含有ポリマー部分とポリ(メタ)アクリレート部分のみから成る場合には、ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、(1)で得られた芳香環含有ポリマー部分の数平均分子量と、(2)で得られたポリ(メタ)アクリレート部分の数平均分子量の和として計算される。
あるいは、ブロックコポリマー(a)が、芳香環含有ポリマー部分、ポリ(メタ)アクリレート部分、及びその他ポリマー部分を含む場合には、(2)に続いて、(3)その他のポリマー部分の数平均分子量の測定方法により測定を行う。この場合には、ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、(1)で得られた芳香環含有ポリマー部分の数平均分子量と、(2)で得られたポリ(メタ)アクリレート部分の数平均分子量と、(3)で得られたその他のポリマー部分の数平均分子量の和として計算される。
【0043】
(1)ブロックコポリマー(a)中の芳香環含有ポリマー部分の数平均分子量の測定方法
リビングアニオン重合によりブロックコポリマー(a)を合成する場合、一般にまず芳香環含有モノマーを重合し、その末端から(メタ)アクリルモノマーを重合させるが、ここで芳香環含有モノマーの重合が終わった時点でその一部を取り出し、反応を停止させれば、ブロックコポリマー中の芳香環含有ポリマー部分のみを得ることができる。このようにして得られた芳香族ホモポリマーについて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCともいう。)を用いて溶出時間分布を測定する。次に、数平均分子量の異なる数種類の標準ポリスチレンの溶出時間を測定し、溶出時間を数平均分子量に換算する。
尚、測定装置及び条件の例としては以下を挙げることができる。
装置:東ソー(株)製 HLC-8220
溶離液:クロロホルム 40℃
カラム:東ソー(株)製商標名TSKgel SuperHZ2000、TSKgel SuperHZM-N 直列
流速:1.0ml/min
分子量較正用標準物質:東ソー(株)製TSKstandardポリスチレン(12サンプル)
【0044】
(2)ブロックコポリマー(a)中のポリ(メタ)アクリレート部分の数平均分子量の測定方法
ブロックコポリマーを重クロロホルム等の重水素化溶媒に溶解させ、H NMRスペクトルを測定する。そのとき芳香環含有ポリマー由来のプロトン数と、ポリ(メタ)アクリレート由来のプロトンの数を比較することにより、ブロックコポリマー(a)中の芳香環含有ポリマー部分とポリ(メタ)アクリレート部分のモル比を求めることができる。従って、前記したように、予めGPCにより求めた芳香環含有ポリマー部分の数平均分子量から、ポリ(メタ)アクリレート部分の数平均分子量を求めることができる。
【0045】
(3)ブロックコポリマー(a)中のその他のポリマー部分の数平均分子量の測定方法
ブロックコポリマーを重クロロホルム等の重水素化溶媒に溶解させ、H NMRスペクトルを測定する。そのとき芳香環含有ポリマー由来のプロトン数と、その他のポリマー部分由来のプロトンの数を比較することにより、ブロックコポリマー中の芳香環含有ポリマー部分とその他のポリマー部分のモル比が求められる。従って、前記したように、予めGPCにより求めた芳香環含有ポリマーの数平均分子量から、その他のポリマー部分の数平均分子量を求めることができる。
【0046】
次に、ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)について説明する。
ポリ(メタ)アクリレートポリマー(b)は、アニオン重合又はラジカル重合により合成することができる。アニオン重合においては、例えば、ブチルリチウムのようなアニオン種とジフェニルエチレンとを反応させ、ジフェニルエチレン末端を開始剤として、ポリ(メタ)アクリレートモノマーを重合することができる。ラジカル重合においては、例えば、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸ジメチル)を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを用いることで、重合することができる。
【0047】
ポリ(メタ)アクリレートポリマー(b)の数平均分子量は、以下の測定方法により求めることができる。
まず、GPCを用いてポリ(メタ)アクリレートポリマー(b)の溶出時間分布を測定する。次に、数平均分子量の異なる数種類の標準PMMAの溶出時間を測定し、溶出時間を数平均分子量に換算する。この結果から、数平均分子量を求めることができる。
【0048】
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物には、所望の上海島構造の形成を妨げない限り、前記した成分以外にどのようなものを加えてもよい。
【0049】
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物は、溶剤に溶解させて、パターン形成用溶液とすることができる。用いられる溶剤としては、上記パターン形成用樹脂組成物を溶解させることができるものであればいずれでもよく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルイミダゾリノン、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAともいう。)、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、メチル−3−メトキシプロピオネートが挙げられる。これらを単独で又は2種以上混合して溶媒として使用することができる。具体的なより好ましい溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、PGMEAを挙げることができる。該溶液に対する該樹脂組成物の質量比は、薄膜を作るという観点から、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0050】
次に、海島構造パターンの形成方法について述べる。
海島構造パターンの形成に際しては、少なくとも、基材上に前記したパターン形成用溶液を塗布して塗布膜を得る工程、塗布膜を基材ごと加熱する工程を順に行う。
基材上へ塗布する方法としては、上記パターン形成用溶液を、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、インクジェット法で塗布する方法、スクリーン印刷機、グラビア印刷機、オフセット印刷機等で印刷する方法を挙げることができる。
【0051】
次いで、得られた塗布膜を、風乾、オーブン、ホットプレート等により加熱乾燥又は真空乾燥させて溶剤を揮発させる。溶剤を揮発させた後の膜厚は、パターン転写性能の観点から、10nm以上が好ましく、平均重心間距離をナノオーダーにするという観点から、500nm以下が好ましく、より好ましくは10nm〜300nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。
尚、膜厚の測定法としては、膜に傷を付け、端子を表面に接触させてその段差を測る接触法や、エリプソメトリーを用いる非接触法を挙げることができる。
塗布膜を基材ごと加熱する方法としては、大別してホットプレートのように基材の下側から直接伝熱させる方法と、オーブンのように高温の気体を対流させる方法を挙げることができる。直接伝熱させる場合の方が、より短時間で海島構造を得ることができ、好ましい。
【0052】
加熱する工程における加熱温度は、好ましくは130℃以上280℃以下、より好ましくは140℃以上270℃以下、さらに好ましくは150℃以上260℃以下の温度範囲である。加熱時間は、10秒以上100時間以下、好ましくは10時間以下、更に好ましくは1時間以下である。ホットプレートの場合、10秒以上1時間以下が好ましく、10秒以上30分以内がより好ましい。加熱温度が130℃以上ならばTgより高く相分離構造を形成させることができ、280℃以下ならばポリマーの分解が抑えられる。また、ホットプレートの場合、加熱時間が10秒以上ならば相分離構造を形成させることができ、また1時間以下ならばポリマーの分解が抑えられる。加熱温度が高いほど短時間で海島構造パターンが得られる。また、加熱温度が高いほど、島と島の平均重心間距離が長く成り易い。本発明においては、芳香環含有ポリマーが海、ポリ(メタ)アクリレートポリマーが島の海島パターンが得られる。
【0053】
加熱する工程の雰囲気は、Air、窒素、真空など特に限定されない。
次に、海島構造パターンについて説明する。
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物を用いて形成される海島構造においては、島と島との平均重心間距離は、エッチング過程で断線が起こり難く、抵抗が小さくすることができるという観点から、100nm以上であり、反射防止膜を作成する場合に屈折率のグラデーションを形成させるという観点から、800nm以下であり、透明導電膜を作製する場合に可視光の散乱を抑制するという観点から、好ましくは380nm以下である。
【0054】
以下、ブロックコポリマーの相分離構造を利用する透明導電膜の製造方法について述べる。
本発明において用いるポリ(メタ)アクリレートポリマーのエッチング方法としては、ドライエッチング法、UV露光法、電子線露光法などが挙げれるが、エッチングの均一性の観点で、ドライエッチング法が好ましい。
本発明において用いる金属のエッチング方法は、ドライエッチング法及び/又はウェットエッチング法が挙げられるが、開口率を高くするという観点から、ドライエッチング法でホールを形成させた後に、ウェットエッチング法を適用することが好ましい。
【0055】
本発明において電極を構成する金属は、具体的には、アルミニウム、銀、白金、ニッケル、コバルト、金、銀、白金、銅、ロジウム、パラジウム、クロムなどが挙げられるが、導電率の点で、アルミニウム、銀、白金、ニッケル、コバルトが好ましい。
【0056】
以下、本発明におけるエッチング法(A)の概略を図1を参照しながら説明する。
まず、透明基板1上に金属2の層を形成する(2)。次いで、ブロックコポリマー含有組成物を有機溶媒で溶解させた溶液をスピンコート法により塗布し、これをホットプレート上で有機溶媒が蒸発するまで熱処理することで金属2上にブロックコポリマー含有樹脂組成物膜3を形成する(3)。
その後、オーブン内やホットプレート上でブロックコポリマーを構成するポリマー種のガラス転移温度よりも高い温度で熱処理(アニール)することによりブロックコポリマーのミクロ相分離を発生させる(4)。この際、得られる相分離パターンはドットパターンであり、ドット部を構成するポリマー種がマトリクス部を構成するポリマー種よりも耐エッチング性が劣る。そのため、エッチングでドット部を構成するポリマー部を選択的に除去できる(5)。
【0057】
続いて、このポリマーマトリクス部をマスクとして塩素系ガスを用いたRIEにより下地層である金属2のエッチングを行う(6)。そして、ポリマーマトリクス部をマスクとしてアルカリ系の液体でサイドエッチングをすることで、ホールの径を大きくする(7)。その結果、開口率が大きくなる。最後に残存するポリマーマトリクス部を、アッシングを行うことにより除去して、透明基板1上に金属にナノホールを形成させ、本発明に係る透明導電膜の製造が実現される(8)。尚、(6)のプロセスを省き、ポリマーマトリクス部をマスクとしてウェットエッチング法を用いて金属2をエッチングすることでも同様の効果を得られるが、厚い金属をエッチングするという観点から、(6)のプロセスを行った方がより好ましい。
【0058】
以下、本発明における他のエッチング法(B)の概要を図2を参照しながら説明する。
まず、透明基板1上に金属2、無機組成物4の層を順に形成させる(2)。次いで、ブロックコポリマー含有組成物を塗布し、無機組成物層4上にブロックコポリマー含有樹脂組成物膜3を形成する(3)。ここで、無機組成物層4は、O2、Ar又はCl2ガスを用いたRIEに対して、ブロックコポリマーを構成するポリマーや金属よりもエッチング耐性があることが好ましく、無機組成物層4を構成する材料としては、スパッタリング法、真空蒸着法、化学気相成長法によって成膜されたシリコン、チッ化シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。また、回転塗布したシロキセンポリマー、ポリシラン、スピンオングラス(SOG)なども、無機組成物層4を構成する材料として有用な材料である。
【0059】
その後、熱処理(アニール)することによりブロックコポリマーのミクロ相分離を発生させ(4)、ドット部を選択的にエッチングする(5)。続いて、このポリマーマトリクス部をマスクとして、フッ素系ガスを用いたRIEにより下地層である無機組成物層4のエッチングを行う(6)。そして、無機組成物層4をマスクとして塩素系ガスを用いたRIEにより金属層2をエッチングする(7)。その後、無機組成物層4をマスクとして、サイドエッチングをすることでホールの径を大きくする(8)。最後に、残存する無機組成物層4を、アッシングして、透明基板1上に金属にナノホールを形成させる(9)。このようにして、、本発明に係る透明導電膜の製造が実現される(9)。尚、(7)のプロセスを省き、無機組成物4をマスクとしてウェットエッチング法を用いて金属2をエッチングすることでも同様の効果を得られるが、厚い金属(金属の厚みは、透過率の観点から、好ましくは200nm以下である)をエッチングするという観点から、(7)のプロセスを行うことが好ましい。
尚、透明導電膜の製造方法としては、ポリマーマトリクス部をマスクとする方法(A)よりも、無機組成物4の層をマスクとして金属層2をエッチングする方法(B)の方が、マスクのエッチング耐性が高いために、厚い膜厚の金属層2をエッチングでき、シート抵抗率の低い透明導電膜が得られるという観点から好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、ブロックコポリマー(a)とポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の合成例を、それぞれ、具体的に説明する。
<ブロックコポリマー(a)の合成>
[合成例1]
2Lフラスコに、溶媒として脱水・脱気したテトラヒドロフラン(以下、THFともいう。):490g、開始剤としてn−ブチルリチウム(以下、n−BuLiともいう。)のヘキサン溶液(約0.16mol/L):2.15mL、モノマーとして脱水・脱気したスチレン:20.8g入れ、窒素雰囲気下、−78℃に冷却しながら30分間撹拌し、その後、第2モノマーとして脱水・脱気したメタクリル酸メチル:6.7gを加えて2時間撹拌した。その後、メタノールを3L入れた容器に、反応溶液を撹拌しながら加え、析出したポリマーを室温で一晩真空乾燥した。
スチレンの重合が終わり、MMAを加える前に、反応溶液を3ml採取した。GPCの分析から数平均分子量が76,000のポリスチレンと同定された。
【0061】
<ポリマーの数平均分子量測定方法>
以下のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置、カラム、及び標準ポリスチレンを用いて、ポリマーの数平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC−8220
溶離液:クロロホルム 40℃
カラム:東ソー(株)製、商標名TSKgel SuperHZ2000、TSKgel SuperHZM-N 直列
流速:1.0ml/min
分子量較正用標準物質:東ソー(株)製TSKstandardポリスチレン(12サンプル)
【0062】
<ブロックコポリマー(a)のブロック部分の比率の測定方法>
以下の核磁気共鳴法(NMR)装置を用いて得た測定値の解析の結果から、ブロックコポリマー(a)のPS部分とPMMA部分のモル比を得た。該モル比は0.29であった。用いたNMRの装置、溶媒は下記の通りである。
装置:日本電子(株)製 JNM-GSX400 FT-NMR
溶媒:重クロロホルム
前記したGPCの結果と併せ、主生成物であるブロックコポリマーは、PS部分の数平均分子量が76,000、PMMA部分の数平均分子量が22,000であると同定された。得られたブロックコポリマーをBC−1とした。
【0063】
[合成例2]
第1モノマーとしてのスチレン:20g、第2モノマーとしてメタクリル酸メチル:8.6g、開始剤としてn-BuLi:1.79mlを用いた以外は合成例1と同様にブロックコポリマーの合成・キャラクタリゼーションを行った。その結果、合成例2で得られたブロックコポリマーは、PS部分の数平均分子量が77,000、PMMA部分の数平均分子量が35,000であると同定された。得られたブロックコポリマーをBC−2とした。
【0064】
[合成例3]
第2モノマーとしてメタクリル酸メチル:6.8g、開始剤としてnーBuLi:1.15mlを用いた以外は、合成例1と同様にブロックコポリマーの合成・キャラクタリゼーションを行った。その結果、合成例3で得られたブロックコポリマーは、PS部分の数平均分子量が150,000、PMMA部分の数平均分子量が36,000であると同定された。得られたブロックコポリマーをBC−3とした。
【0065】
[合成例4]
第2モノマーとしてメタクリル酸メチル:9g、開始剤としてn−BuLi:2.23mlを用いた以外は、合成例1と同様にブロックコポリマーの合成・キャラクタリゼーションを行った。その結果、合成例4で得られたブロックコポリマーは、PS部分の数平均分子量が114,000、PMMA部分の数平均分子量が50,000であると同定された。得られたブロックコポリマーをBC−4とした。
合成例1〜4で合成したブロックコポリマーBC−1〜4の数平均分子量、及び芳香環含有ポリマー部分とポリ(メタ)アクリレート部分の質量比を、それぞれ、以下の表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
[合成例5]
<ポリスチレンホモポリマーの重合方法>
2Lフラスコに、溶媒としてシクロヘキサン150g、及びTHF0.48gを用い、開始剤として1.6mol/Lのn−BuLiのヘキサン溶液:0.47mL、モノマーとして脱水・脱気したスチレン:20gを入れ、窒素雰囲気下、室温で攪拌し重合を行った。その後、メタノールで重合を停止させ、メタノールに再沈殿させて、ポリマーを乾燥させた。得られたポリマーの平均分子量は25,000だった。これをPS−1とした。
【0068】
<ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の合成>
[合成例6]
2Lフラスコに、溶媒として脱水・脱気したTHF:0.5L、開始剤としてジフェニルエチレン:0.32mlとn−BuLiヘキサン溶液(約1.65mol/L):1.12mLを反応させたジフェニルエチルリチウムを用い、モノマーとして脱水・脱気したスチレン:37.5ml入れ、真空下にて−78℃に冷却しながら30分間撹拌した。その後、メタノールで重合を停止させ、メタノールからポリマーを析出させた。再沈殿したポリマーを室温で24時間真空乾燥した。その結果、数平均分子量が24,000のポリメチルメタクリレートが得られた。得られたホモポリマーをPMMA−1とした。(尚、このときGPCにおいては、ブロックコポリマーBC−1〜4と同じ条件で測定したが、分子量較正用標準物質としては、ポリマーラボラトリー社製標準PMMA M−H−10(10サンプル)を用いた)。
【0069】
[合成例7]
n-BuLi:2.5mlを用いた以外は、合成例6と同様にポリメチルメタクリレートの合成・キャラクタリゼーションを行った。その結果、数平均分子量が10,000のポリメチルメタクリレートが得られた。合成例7で得たホモポリマーをPMMA−2とした。
【0070】
[合成例8]
1Lフラスコに、溶媒としてMEK:390g、開始剤として2,2’−アゾビス(イソ酪酸ジメチル):37.4g(0.16mol)、モノマーとしてメタクリル酸メチル:65g(0.65mol)入れ、窒素気流下、70℃に加熱しながら5時間撹拌しその後、室温まで放冷した。
ヘキサン3Lにこの反応混合物を撹拌しながら加え、ポリマーを析出させた。これを1時間撹拌した後、減圧ろ過し、固形分を一晩室温にて真空乾燥した。数平均分子量と分子量分布をGPCにより測定した結果、得られたホモポリマーの数平均分子量は2.3k、分子量分布(M/M)は1.86であった。分子量較正用標準物質は、合成例6で用いたものと同じであった。合成例8で得たホモポリマーをPMMA−4とした。
尚、ジーエルサイエンスから購入したホモポリマーを、PMMA−3とした。
以下の表2にPMMA−1〜4の数平均分子量等を、それぞれ、示す。
【0071】
【表2】

【0072】
[実施例1]
先の合成例1において合成したBC−1、及び合成例6において合成したPMMA−1のPGMEA2質量%溶液をそれぞれ作製し、得られたBC−1溶液4g、及びPMMA−1溶液6gを混ぜ合わせた溶液を調製した。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMMAホモポリマーの質量比は1:2.2であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:1.1であった。
【0073】
次に、シリコンウェハーにこの溶液をスピンコートし、110℃で90秒間プリベークして薄膜を形成させた。この薄膜の膜厚を、ナノメトリックスジャパン(株)製ナノスペックAFT3000Tを用いて測定した所、60nmであった。次に、アズワン社製の230℃に設定されたホットプレートの上にポリマーをスピンコートしたウェハーを3分間熱処理し、室温に冷却した。このウェハーをプラズマエッチング装置EXAM(神港精機(株)製)を用いて圧力30Pa、パワー133WでO2プラズマエッチングし、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM) S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ製)にて表面観察を行ったところ、海島構造パターンが形成していることが確認された。この海島構造パターンは、ポリスチレン部分が海、ポリメタクリル酸メチル部分が島であった。
この海島構造パターンを画像解析ソフトA像くん(旭化成エンジニアリング(株)製)を用いて解析したところ、島と島の平均重心間距離は250nmであり、島の面積率は45%であった。
【0074】
[実施例2]
BC−1、及びPMMA−3の各PGMEA2質量%溶液の添加量を、それぞれ、4g、6g用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ウェハー上に海島構造パターンを形成させた。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMAホモポリマーの質量比は1:2.2であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:1.4であった。実施例1と同様の方法により測定した島と島の平均重心間距離は280nmであり、島の面積は47%であった。
【0075】
[実施例3]
BC−2、及びPMMA−1の各PGMEA2質量%溶液の添加量を、それぞれ、4g、6g用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ウェハー上に海島構造パターンを形成させた。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMAホモポリマーの質量比は1:2.6であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:0.69であった。実施例1と同様の方法により測定した島と島の平均重心間距離は250nmであり、面積は38%であった。
【0076】
[実施例4]
BC−3、及びPMMA−1の各PGMEA2質量%溶液の添加量を、それぞれ、4g、6g、さらに加熱温度210℃を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ウェハー上に海島構造パターンを形成させた。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMAホモポリマーの質量比は1:2.1であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:0.67であった。実施例1と同様の方法により測定した島と島の平均重心間距離は350nmであり、面積は45%であった。
【0077】
[実施例5]
加熱条件として230℃、3分間を用いた以外は、実施例4と同様の操作を行い、ウェハー上に海島構造パターンを形成させた。実施例1と同様の方法により測定した島と島の平均重心間距離は500nmであり、島の面積率は45%であった。
【0078】
[実施例6]
BC−3に替えてPMMA−4を用い、加熱温度を230℃とした以外は、実施例4と同様の操作を行い、ウェハー上に海島構造パターンを形成させた。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMAホモポリマーの質量比は1:2.1であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:0.28であった。実施例1と同様の方法により測定した島と島の平均重心間距離は390nmであり、面積は38%であった。
【0079】
[実施例7]
ガラス基板の上に芝浦メカトロニクス社製CFS−4ESを用いてアルミニウムを30nm膜厚になるようにスパッタした(DC,パワー:200W、Ar:20sccm)。次に、SiO2を5nm膜厚になるようにスパッタした(RF、パワー:200W、Ar:20sccm)。その基板を用いて、実施例1と同様の操作をしてブロックコポリマーに海島構造を形成させた。
次に、RIE装置(ULVAC社製、NE-550)を用いてCF4プラズマエッチング(CF4=20sccm、圧力:0.5Pa、アンテナ/バイアス:50W/50W)を行うことで、相分離パターン中のエッチング耐性の低いPMMAドット部分を選択的に除去し、さらにエッチングをすることで下層のSiO2を除去し、SiO2層にドット部が抜けたマスクを形成した。続いて、アルミニウム上に形成した前記SiO2マスクを元にCl2プラズマエッチング(Cl2=20sccm、圧力:0.15Pa、アンテナ/バイアス:100W/100W)を行い、アルミニウムにナノオーダーのホールパターンを形成した。形成されたホールの平均重心間距離は250nm、ホールが全体に占める開口率は45%であった。その後、ナトリウム水溶液に透明導電膜を浸漬した後、開口率は62%になった。最後にSiO2をプラズマエッチング装置 EXAM(神港精機(株)製)にてCF4プラズマエッチングで除去した(圧力:30Pa、アンテナ:133W)。透明導電膜のSEM画像を図3に示す。この透明導電膜の透過率は70%(@550nm)、シート抵抗率は94Ω/□だった。透過率を測定した装置はSHIMAZU社製MPC-2200を用いた。シート抵抗率を測定するのに三菱化学社製Loresta-GP MCP-T610を用いた。
【0080】
[実施例8]
実施例7と同様にガラス基板の上にアルミニウムを20nm膜厚になるようにスパッタした。その基板を用いて、実施例1と同様の操作をしてブロックコポリマーに海島構造を形成させた。
続いて、実施例7と同様にブロックコポリマーのPMMA部をドライエッチング法により選択的に除去した。そして、残ったPSマスクを元にアルミニウムをナトリウム水溶液でウェットエッチング法により除去した。最後に残ったPSを酸素プラズマエッチングで除去した。開口率は49%だった。透明導電膜の透過率は73%、シート抵抗率は146Ω/□だった。
【0081】
[比較例1]
先の合成例4において合成したBC−4、合成例5において合成したPS−1、及び合成例6において合成したPMMA−1のPGMEA2質量%溶液をそれぞれ作製し、得られたBC−4溶液8g、PS−1溶液1.4g及びPMMA−1溶液0.6gを混ぜ合わせた溶液を調製した。実施例1と同様に海島構造の形成・パターン評価を行った。この溶液のブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPS対ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA及びPMMAホモポリマーの質量比は1:0.44であり、ブロックコポリマーにブロック部分として含まれるPMMA対PMMAホモポリマーの数平均分子量比は1:0.48である。得られたパターンは、ラインパターンになった。
【0082】
[実施例9]
シリコン基板の上に実施例6と同様にSiO2を10nmスパッタして基板を形成させた。
その基板の上に実施例1と同様の操作をしてブロックコポリマーの海島構造を形成させた。次に、実施例6と同様にPMMAドット部を除去し、さらにSiO2層を除去した。続いて、前記SiO2マスクを元にCl2プラズマエッチング(Cl2=20sccm、圧力:0.15Pa、アンテナ/バイアス:100W/100W)を行い、シリコン基板にナノオーダーのホールパターンを形成させ、ドット部分が凹んだモールドができた。得られたパターンにおける、島と島の平均重心間距離は250nm、島の面積率は40%であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明に係るパターン形成用樹脂組成物をレジストとして用いてエッチングすることで、ナノスケールのパターンを持つインプリントモールドや透明導電膜を作製することができる。かかるインプリントモールドを用いて、LEDや有機ELを高輝度化させたり、反射防止膜を作製することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環含有ポリマーとポリ(メタ)アクリレートとをブロック部分として含むブロックコポリマー(a)、及び該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマーからなるポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)を含むパターン形成用樹脂組成物であって、以下の要件:
(i)該ブロックコポリマー(a)全体に対する、該芳香環含有ポリマー部分と該ポリ(メタ)アクリレート部分の合計の比率は、50モル%以上であり、
(ii)該ブロックコポリマー(a)における、該芳香環含有ポリマー部分:該ポリ(メタ)アクリレート部分の質量比は、1:1〜9:1であり、
(iii)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び該ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、1:1.1〜1:11であり、及び
(iv)該ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、1:0.2〜1:2である、
を満たす前記パターン形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマーは、ポリスチレンである、請求項1に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロックコポリマー(a)は、ポリスチレンとポリメチルメタクリレートとのジブロックコポリマーである、請求項1又は2に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、1万〜50万である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロックコポリマー(a)の数平均分子量は、5万〜25万である、請求項4に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれる芳香環含有ポリマー:前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレートポリマー及び前記ポリ(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の質量比は、1:2〜1:4である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項7】
前記ブロックコポリマー(a)にブロック部分として含まれるポリ(メタ)アクリレート部分:該(メタ)アクリレートホモポリマー(b)の数平均分子量比は、1:0.5〜1:1.5である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパターン形成用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載パターン形成用樹脂組成物を溶剤に溶解してなるパターン形成用溶液であって、該溶液に対する該樹脂組成物の質量比は、0.1〜30質量%であるパターン形成用溶液。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン形成用溶液を、基材上に塗付し、塗布後溶剤を揮発させて、厚さ10nm以上500nm以下の薄膜を形成する工程、及び該薄膜を温度130℃以上280℃以下、かつ加熱時間10秒以上100時間で加熱する工程、を含む海島構造パターン形成方法。
【請求項10】
前記加熱時間が10秒以上30分以下である、請求項9に記載の海島構造パターン形成方法。
【請求項11】
海島構造における島部分の面積が35%以上、かつ、島と島との平均重心間距離が100nm〜800nmである海島構造パターン。
【請求項12】
島と島の平均重心間距離が100〜380nmである、請求項11に記載の海島構造パターン。
【請求項13】
請求項9若しくは10に記載の方法により形成された海島構造パターン、又は、請求項11若しくは12に記載の海島構造パターンの島相を選択的に除去する工程、及び海相をエッチングマスクとして用いる工程を含む、パターン転写方法。
【請求項14】
請求項13に記載のパターン転写方法を用いて、金属にエッチングでパターンを形成する工程を含む、透明導電膜の製造方法。
【請求項15】
前記エッチングは、ドライエッチングを含む、請求項14に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項16】
前記エッチングは、ドライエッチングによりホールを形成させ、次いでウェットエッチングを行う、請求項15に記載の透明導電膜の製造方法。
【請求項17】
前記金属は、アルミニウム、銀、クロム、及び銅からなる群から選ばれる、請求項14〜16のいずれか一項に記載の透明導電膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−79349(P2013−79349A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220907(P2011−220907)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】