説明

パターン形成装置、及び、パターン形成方法

【課題】基材に導電体の配線パターンを一連の処理で高効率に形成し、且つ、高導電率で高精度の配線パターンを確実に形成するパターン形成装置等を提供する。
【解決手段】基材に導電体の配線パターンを形成するパターン形成装置1において、窒素ドープしたDLCの表面に電極13を対向して配設し、当該電極13を正電位として当該DLC薄膜との間に放電が生じる電位差未満の電位差による電界を印加する電圧印加部11と、電界が印加された状態で、前記電極13を前記DLC薄膜との間で所定の距離を保って走査させて当該DLC薄膜の表面に潜像を形成する移動制御部12と、潜像が形成されたDLC薄膜を含む潜像対象物2を銅イオンが含まれるめっき液6に浸漬する浸漬部21と、浸漬後に潜像が形成された面に、転写基材7を接着させて導電体を転写する転写部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に導電体の配線パターンを形成するパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の背景技術として、特許文献1ないし特許文献3に開示されるものがある。
特許文献1に示す技術は、電子タグ等の半導体装置の製造において、半導体装置が備える配線回路のパターンの形成に当たり、高精度、短時間、低環境負荷かつ経済的な半導体装置の製造方法及びめっき用版であり、めっき版上に所望の配線回路に対応するレジストパターンを形成し、このめっき版上のレジストパターンの開口部に、電解めっきにより金属材料をめっきし、このめっきした部分を別基材に転写することにより、配線回路を備えた半導体装置を製造する。さらにめっき版を円筒形状とし、回転させながら外周部にめっきを析出させ、配線回路を形成し別の基板に転写をするものである。
【0003】
特許文献2に示す技術は、配線パターンと電子部品とを接合するための導電性接合材料を基体上に微細な接合パターンとして形成することができる接合パターンの形成方法およびそのための装置であり、まず、導電性支持体上の光導電体の表面に電荷を供給して第1電位に帯電させる。そして、第1電位に帯電した光導電体表面の所定領域に光照射して光照射領域に対応して潜像パターンを形成する。その後、第2電位に帯電した導電性粒子を光導電体表面に供給して潜像パターンに対応して導電性粒子からなる接合パターンを付着形成する。最後に、基体上に形成された配線パターンの所定箇所に接合パターンが配置されるように、接合パターンを光導電体表面から基体に転写する。これにより、電子部品実装において配線パターンと電子部品とを接合するための導電性粒子からなる接合パターンが基体上に形成されるものである。
【0004】
特許文献3に示す技術は、原版の表面を部分的に露光させ、この露光によって原版の表面に回路パターンどおりの静電潜像を作り、この静電潜像に無電解めっき用触媒を付着させた後、無電解めっきを施すことによりめっき金属を付着させて回路導体をつくり、この回路導体を基板に転写することによりプリント回路板を得るものである。
【0005】
特許文献4に示す技術は、ダイヤモンド様カーボンの薄膜表面をナノスケールで微細加工するダイヤモンド様カーボンの加工方法に関する技術であり、不純物をドープしたダイヤモンド様カーボンの薄膜表面に電極を所定間隔離隔し、この電極と薄膜表面間に放電が生じる電位差未満の電位差による電界を印加するようにしているので、ダイヤモンド様カーボンの薄膜表面における電極対向位置の組成変化を生じさせることができることとなり、任意の特定位置に電界が印加された電極を単に近接対向させるのみで、ナノスケールの突起を簡易且つ確実に微細に加工・処理できるものである。
【特許文献1】特開2007−123697号公報
【特許文献2】特開2001−358447号公報
【特許文献3】特開昭57−036890号公報
【特許文献4】特開2005−166411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、めっき版上にめっきをする工程と、このめっきした部分を別基材に転写する工程については、めっき版を円筒形状とし、当該めっき版を回転させることで一連の流れで行うことができるが、めっき版上に所望の配線回路に対応するレジストパターンを形成する工程については、別工程で行う必要があり、処理の効率化が不十分であるという課題を有する。
【0007】
また、めっき版上に所望の配線回路に対応するレジストパターンを形成する工程については、フォトリソグラフィ法、レーザー加工法、印刷方法、ルータ加工法、その他機械的なエッチング等により行われるため、いずれの方法においても処理が煩雑となり、処理に時間を要してしまうという課題を有する。
特許文献2に示す技術は、転写時における剥離容易性が十分ではない可能性があり、飛翔等が行われるなど、転写の精度が下がってしまうという課題を有する。
【0008】
また、接合パターンを付着させる処理が複数段階に分かれているため、処理を複雑化してしまうという課題を有する。
さらに、配線パターンと電子部品とを接合するための接合パターンが粉末状の導電性粒子からなるため、粒子間の空間が存在することにより導電率が低下してしまい、不良品を生成してしまう確率が高くなる可能性があるという課題を有する。
【0009】
特許文献3に示す技術は、特許文献2に示す技術と同様に、転写時における剥離容易性が十分ではない可能性があり、飛翔等が行われるなど、転写の精度が下がってしまうという課題を有する。
【0010】
また、パターンの形成から転写までの処理を一連の処理で連続して行うことができず、処理が煩雑になってしまうという課題を有する。
特許文献4に示す技術は、ダイヤモンド様カーボンの薄膜表面を微細加工する技術であり、配線パターンを形成する技術とは異にするものである。
【0011】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、基材に導電体の配線パターンを一連の処理で高効率に形成し、且つ、高導電率で高精度の配線パターンを確実に形成するパターン形成装置、及び、パターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1.パターン形成装置)
本願に開示するパターン形成装置は、基材に導電体の配線パターンを形成するパターン形成装置において、不純物が添加された炭素系薄膜の表面に電極を対向して配設し、当該電極を正電位として当該炭素系薄膜との間に放電が生じる電位差未満の電位差による電界を印加する印加手段と、前記印加手段が電界を印加した状態で、前記電極を前記炭素系薄膜との間で所定の距離を保って走査させて当該炭素系薄膜の表面に潜像を形成する電極制御手段と、前記電極制御手段により前記潜像が形成された炭素系薄膜を含む潜像対象物を所定の金属イオンが含まれる電解液に浸漬する浸漬手段と、前記浸漬手段による浸漬後の前記潜像対象物について、前記電極制御手段により潜像が形成された面に、転写対象物となる前記基材を接着させて前記潜像に吸着した金属からなる導電体を転写する転写手段とを備えるものである。
【0013】
このように、本願に開示するパターン形成装置においては、不純物が添加された炭素系薄膜の表面に正電位の電極で電界を印加し、その状態で電極を走査させるだけで潜像が形成できるため、処理が煩雑にならず、配線パターンの形成の処理効率を上げることができるという効果を奏する。
【0014】
また、電界の印加により潜像が形成された炭層系薄膜を電解液に浸漬するだけで、潜像箇所に金属を吸着させて導電密度を高くさせることができるため、導電率の高い配線パターンを形成することができると共に、配線パターンの形成処理を簡略化することができるという効果を奏する。
【0015】
なお、基材に導電体を転写させる際には、基材に接着剤等を予め塗着させておき、接着剤により導電体を接着させてから加熱により焼き付けることで転写をすることができる。
また、金属イオンの種類としては、銅、ニッケル、パラジウム、クロム等を用いるようにしてもよく、望ましくは、銅を用いるのがよい。
【0016】
(2.回転式ドラムによる配線パターンの形成)
本願に開示するパターン形成装置は、前記潜像対象物が、前記電解液が収容された電解槽内に配設され、当該電解液に一部の領域が浸漬した回転式のドラムの表面に前記炭素系薄膜が堆積されたものであり、前記電極制御手段が、前記回転式ドラムの繰り返しの回転動作と共に、前記潜像対象物における前記電解液に浸漬している領域以外の領域に、前記転写手段が転写処理を行った後で且つ前記浸漬手段が浸漬処理を行う前に、前記電極を走査させて潜像を形成するものである。
【0017】
このように、本願に開示するパターン形成装置においては、潜像対象物が、電解液が収容された電解槽内に配設され、当該電解液に一部の領域が浸漬した回転式のドラムの表面に炭素系薄膜が堆積されたものであるため、ドラムが回転動作を繰り返すことで、潜像の形成から基材への転写までの処理を一連の流れで繰り返して連続的に行うことができ、処理効率を格段に上げることができるという効果を奏する。
【0018】
(3.電位差の初期化)
本願に開示するパターン形成装置は、前記炭素系薄膜の電位をグランド電位にするグランド電位手段と、前記ドラムによる繰り返しの回転動作と共に、前記転写手段が転写処理を行った後で且つ前記電極制御手段が潜像を形成する処理を行う前に、前記炭素系薄膜に印加した電界と逆極性の電界を、当該炭素系薄膜に印加する逆印加手段とを備えるものである。
【0019】
このように、本願に開示するパターン形成装置においては、炭素系薄膜の電位をグランド電位にし、転写処理を行った後で且つ潜像を形成する処理を行う前に、前記炭素系薄膜に印加した電圧と逆極性の電圧を、当該炭素系薄膜に印加するため、潜像のパターンを初期化して自由に変更することができ、1つのパターンの繰り返しだけではなく、様々な配線パターンを連続的に形成することができるという効果を奏する。
【0020】
また、炭素系薄膜の電位をグランド電位にし、逆極性の電界を印加するという簡易な作業を行うだけで、潜像をクリアして新たな潜像に形成し直すこともできるため、様々なパターンの潜像を形成する場合に、処理の効率を格段に上げることができるという効果を奏する。
【0021】
(4.DLC)
本願に開示するパターン形成装置は、前記炭素系薄膜がダイヤモンド様カーボン(DLC:Diamond Like Carbon)であるものである。
このように、本願に開示するパターン形成装置においては、炭素系薄膜がダイヤモンド様カーボン(DLC:Diamond Like Carbon)であるため、電界が印加された箇所以外の領域には金属が吸着しにくく、且つ、電界が印加された箇所においても吸着した金属が剥離しやすくなっているため、転写処理をスムーズに行うことができ、高精度で確実に転写処理を行うことができるという効果を奏する。
また、DLCには金属が吸着しにくいため、電界が印加された箇所以外の領域について特別な処理を施す必要がなく、電解液から取出(又は取出後に軽く洗浄)するだけで、転写処理に移行することが可能となり、処理時間を短縮して処理効率を上げることができる。
【0022】
(5.電極と炭素系薄膜との距離)
本願に開示するパターン形成装置は、前記電極と前記炭素系薄膜との距離が1μm以上、100μm以下であるものである。
【0023】
(6.電界の強度)
本願に開示するパターン形成装置は、前記電極が印加する電界強度の絶対値が0.5V/μm以上、50V/μm以下であるものである。
【0024】
(7.添加される不純物)
本願に開示するパターン形成装置は、前記炭素系薄膜が、不純物を添加されたものである。
これまで、本発明を装置として示したが、所謂当業者であれば明らかであるように本発明を方法として捉えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。従って、本実施形態の記載内容のみで本発明を解釈すべきではない。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
以下の実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法としても実施できる。
【0026】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るパターン形成装置を図1ないし図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るパターン形成装置の機能ブロック図、図2は、本実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャート、図3は、図1における潜像形成部の斜視図、図4は、潜像形成部が潜像を形成した結果を示す図、図5は、図1におけるめっき部の斜視図、図6は、図1における転写部の斜視図を示す。
【0027】
前記各図において本実施形態に係るパターン形成装置は、炭素系薄膜としてダイヤモンド様カーボン(以下、DLCとする)を用い、当該DLCには窒素がドープされている。また、電解液には銅イオンが電解しており、この電解液をめっき液としてめっき槽に収容している。
【0028】
図1において、本実施形態に係るパターン形成装置1は、潜像形成部10とめっき部20と転写部30とを備える。また、潜像形成部10は、電圧印加部11と移動制御部12と電極13とを備え、めっき部20は、浸漬部21と取出部22とを備え、転写部30は、接着部31と加熱部32とを備える。
なお、浸漬部21と取出部22は一体的な装置構成として捉えてもよい。
【0029】
電圧印加部11は電極13に対して電圧を印加して電極13を正電位にする。正電位となった電極13は、表面がDLC薄膜からなる潜像対象物2に対して電界を印加する。電界が印加された潜像対象物2の表面のDLC薄膜は改質される。その状態で移動制御手段12により電極13を配線パターンに従って移動させることで、配線パターンに対応する潜像が潜像対象物2の表面に形成される。この移動制御部12は、電極13が移動する位置や速度を制御する。移動する位置には、水平方向の位置と高さ方向の位置があり、潜像する配線パターンにより適切な位置や速度が決定される。例えば、電極13とDLC薄膜との距離を大きくすると電界が広がり、太い潜像を形成することができる。逆に電極13とDLC薄膜との距離を小さくすると細い潜像を形成することができる。また、潜像を形成するのに必要な最大限の所定速度以下の速度範囲で、電極の移動速度を制御することで、潜像の太さを調整することもできる。すなわち、電極の移動位置や移動速度を微調整することで複雑なパターンや微細なパターンを正確に形成することができる。
【0030】
なお、配線パターンは予め配線パターン登録テーブル(図示しない)に登録されており、移動制御部12が登録されている配線パターンデータを読み込んで電極13の移動を制御するようにしてもよい。
【0031】
浸漬部21は、潜像形成部10により潜像が形成された潜像対象物2を、金属イオンを含むめっき液に浸漬し、取出部22が、浸漬された潜像対象物2をめっき液から取出する。この時、潜像が形成された箇所にのみ金属がめっきされ、潜像が形成されていない箇所には金属が吸着しない。従って、配線パターンに従っためっき処理をめっき液に浸漬するだけで施すことができる。
なお、めっき液に電解させる金属イオンは好ましくは導電性が高い金属を使用するのが良く、さらに好ましくは銅イオンを使用するのがよい。
【0032】
接着部31は、めっき液から取出された潜像対象物2の潜像が形成されている面と、予め接着剤が塗布された転写基材とを押圧して接着させる。めっきされていた金属が接着された転写基材は、加熱部32により加熱処理がされることで接着剤を溶解し、転写基材に金属が焼き付けられてプリント基板3が生成される。
【0033】
なお、この時、潜像対象物2の表面のDLC薄膜にめっきされている金属は、DLC薄膜に印加された電界による改質により吸着されているが、DLCと金属との性質から、剥離しやすい状態になっている。従って、必ずしも押圧等の特別な処理を行わなくても金属を転写基材に容易に接着させることができる。
【0034】
図2において、本実施形態に係るパターン形成装置の動作を説明する。まず、前提として潜像対象物2の表面に窒素をドープしたDLC薄膜を堆積しておき、DLC薄膜の表面の所定位置に電極13を配設しておく。電圧印加部11により、DLC薄膜の表面の所定位置に配設された電極13に電圧が印加される(ステップ1)。この時、電極13に印加される電圧値は、電極13とDLC薄膜表面との間に放電が生じる電圧未満の電圧値であり、好ましくは電極13の電界強度が0.5V/μm以上、50V/μm以下になるような電圧値を印加する。この状態で電極13を走査させて、DLC薄膜の表面に潜像を形成する(ステップ2)。この時、電極13の先端部とDLC薄膜との距離は好ましくは1μm以上、100μm以下とする。このステップ1からステップ2までの処理が潜像形成部10の動作を示す処理である。
【0035】
ここで、潜像形成部10についてさらに詳細に説明する。図3は、潜像形成部10の斜視図である。上述したように、潜像対象物2の表面には窒素ドープしたDLC薄膜4が堆積しており、DLC薄膜4の表面の所定位置に電極13が配設されている。電極13には、電圧印加部11により電圧が印加される。電極13は、さらに、移動制御部12により潜像対象物2の上方の3次元空間(x方向、y方向、z方向)を自由に走査できる。また、移動制御部12は、電極13の移動速度も併せて制御することが可能である。
【0036】
上記条件で図3に示すように電極13を走査させると、DLC薄膜4の表面が改質されて、電極13が走査した軌跡を辿った箇所が負に帯電する。上記条件で電極13を走査させた結果を図4に示す。
【0037】
図4において、電極13とDLC薄膜4との距離を50μm、印加電圧を1000Vとして潜像を形成している。図4の結果から、DLC薄膜4の表面が改質され、潜像が形成されたことを確認することができる。
【0038】
図2に戻って、ステップ2でDLC薄膜4の表面に潜像が形成されると、浸漬部21が潜像対象物2をめっき液に浸漬し(ステップ3)、取出部22がめっき液に浸漬された潜像対象物2を取出する(ステップ4)。このステップ3からステップ4までの処理が、めっき部20の動作を示す処理である。
【0039】
ここで、めっき部20についてさらに詳細に説明する。図5は、めっき部20の斜視図である。めっき槽5にはめっき液6が収容されている。めっき液6には銅イオンが電解されており、潜像対象物2をめっき液に浸漬することで、銅イオンが負に帯電したDLC薄膜4の表面に形成された潜像に近づいて吸着され、潜像箇所のみにめっき処理を施すことができる。この時、DLC薄膜4と銅の性質上、潜像箇所以外の領域には銅が吸着されず、潜像箇所にのみ吸着される。さらに、潜像箇所に吸着した銅は剥離しやすい状態となっている。潜像対象物2を所定時間めっき液6に浸漬した後に、当該潜像対象物2をめっき液6から取出する。取出後は潜像対象物2を軽く洗浄することで、余分なめっきを除去することができる。
【0040】
図2に戻って、ステップ4でめっき液6から潜像対象物2が取出されると、接着剤が塗布された転写基材を用意する(ステップ5)。
なお、転写基材に接着剤が塗布されるタイミングは、必ずしもめっき液6から潜像対象物2を取出した後でなくてもよく、接着剤が乾燥しないうちに、転写基材にめっきされた銅が転写できるタイミングであればいつでもよい。
【0041】
接着剤が塗布された転写基材と潜像対象物2を接着し(ステップ6)、転写基材を加熱して配線パターンを焼き付けて(ステップ7)、処理を終了する。このステップ5からステップ7までの処理が転写部30の動作を示す処理である。
【0042】
ここで、転写部30についてさらに詳細に説明する。図6は、転写部30の斜視図である。めっき部20で潜像箇所にめっきが施された面に対して、転写基材7の接着剤が塗布された面が接着するように押圧する。接着剤により転写基材7にめっきが接着され、当該転写基材7を加熱することで接着剤を溶解し、めっきを焼き付けてプリント基板3が生成される。
なお、上述したように、めっきとDLC薄膜4は剥離しやすい状態であるため、押圧は必ずしも必要ではなく、接着剤とめっきが接触できればよい。
【0043】
このように、本実施形態に係るパターン形成装置によれば、不純物が添加された炭素系薄膜の表面に正電位の電極で電界を印加し、その状態で電極を走査させるだけで潜像が形成できるため、処理が煩雑にならず、配線パターンの形成の処理効率を上げることができる。
また、電界の印加により潜像が形成されたDLC薄膜を電解液に浸漬するだけで、潜像箇所に銅を吸着させることができるため、処理を簡略化することができる。
【0044】
さらに、DLCを使用するため、電界が印加された箇所以外の領域には銅が吸着しにくく、且つ、電界が印加された箇所においても銅が剥離しやすくなっているため、転写処理をスムーズに行うことができ、高精度で確実に転写処理を行うことができる。
【0045】
さらにまた、DLCには銅が吸着しにくいため、電界が印加された箇所以外の領域について特別な処理を施す必要がなく、電解液から取出(又は取出後に軽く洗浄)するだけで、転写処理に移行することが可能となり、処理時間を短縮して処理効率を上げることができる。
【0046】
(本発明の第2の実施形態)
以下に、本実施形態に係るパターン形成装置について説明する。なお、ここでは、第1の実施形態と同様である点についての説明は省略する。
本実施形態に係るパターン形成装置を図7及び図8に基づいて説明する。図7は、本実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャート、図8は、本実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図である。
【0047】
図7において、ステップ1からステップ7までの処理は第1の実施形態と同様であるため説明は省略する。ステップ7で転写基材7に配線パターンが焼き付けられると、全ての転写基材7について転写処理が終了したかどうかを判定し(ステップ8)、全ての転写基材7について転写処理が終了していれば、そのまま処理を終了する。全ての転写基材7について転写処理が終了していなければ、DLC薄膜4の表面に形成された潜像の負電位の大きさが所定の閾値以下であるかどうかを判定し(ステップ9)、所定の閾値以下であればステップ1に戻り、所定の閾値より大きければステップ3に戻る。ステップ9の処理を行う理由は、潜像の電位が小さくなった場合には、めっき処理の処理効率や精度が下がってしまうため、所定の閾値以下の電位になった場合には、再度同じ潜像を形成してめっきの処理効率や精度を下げないようにするためである。そして、全ての転写基材7について転写処理が終了するまでこれらの処理が繰り返して行われる。
【0048】
なお、ステップ9の処理を省略して、常にステップ1に戻って潜像を形成するようにしてもよい。また、条件によって潜像の電位に変化が少ない場合には、常にステップ3に戻って、めっき処理を行うようにしてもよい。
【0049】
次に、本実施形態に係るパターン形成装置1の構成について説明する。図8に示すように、本実施形態に係るパターン形成装置1は、潜像対象物2がドラム状になっており、そのドラムの回転方向の外周領域にDLC薄膜4が堆積されている。このDLC薄膜4を含む潜像対象物2は、図の矢印方向に回転動作を行う。また、ドラム状の潜像対象物2は、一部がめっき液に浸漬しており、浸漬していない領域に潜像形成部10と転写部30が配設されている。転写部30は、転写処理が、矢印方向に対してめっき処理が行われた後に行われる位置に配設され、潜像形成部10は、潜像形成処理が、矢印方向に対して転写処理が行われた後で且つめっき処理が行われる前に行われる位置に配設される。
【0050】
また、この場合、転写基材として基材テープを用いることで、回転動作に伴って繰り返し連続して転写処理を行うことができる。電極13については、一筆で描画できる配線パターンであれば、電極の移動とドラムの回転速度を制御することで描画が可能であり、一筆で描画できない配線パターンであれば、複数の電極13を配設することで、複雑な配線パターンであっても短時間で潜像を形成することができる。
なお、複数の電極13を配設しなくても、電極13が印加する電界強度を0V/μmに制御することで、一本の電極で複雑な配線パターンの潜像を形成することが可能である。
【0051】
このように、本実施形態に係るパターン形成装置によれば、潜像対象物2が、めっき液6が収容されためっき槽5内に配設され、当該めっき液6に一部の領域が浸漬した回転式のドラムの表面に前記DLC薄膜4が堆積されたものであるため、ドラムが回転動作を繰り返すことで、潜像の形成から基材への転写までの処理を一連の流れで繰り返して連続的に行うことができ、処理効率を格段に上げることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
以下に、本実施形態に係るパターン形成装置について図9ないし図11に基づいて説明する。図9は、本実施形態に係るパターン形成装置の機能ブロック図、図10は、本実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャート、図11は、本実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図である。
【0053】
図9に示すように、本実施形態に係るパターン形成装置1は、潜像形成部10とめっき部20と転写部30と初期化部40とを備える。初期化部40は、グランド電位部41と逆電圧印加部42とを備える。潜像形成部10、めっき部20及び転写部30の機能は第1及び第2の実施形態と同様であるため説明は省略する。
グランド電位部41は、DLC薄膜4の電位をグランド電位にする処理を行う。
【0054】
逆電圧印加部42は、グランド電位になったDLC薄膜4に、現在の電位とは逆極性の電圧を印加する処理を行う。DLC薄膜4の電位が逆電位になることで、潜像を初期化することができる。従って、連続処理中であっても異なる潜像を形成することができ、様々な種類の配線パターンのプリント基板を生成することができると共に、電位を初期化することでDLC薄膜4に残留しためっきを綺麗に洗浄することができる。
【0055】
次に、図10のフローチャートについて説明する。ステップ1からステップ8までの処理は、第2の実施形態と同様であるため説明は省略する。ステップ8で全ての転写基材7について転写処理が終了していなければ、形成する潜像に変更があるかどうかを判定し(ステップ8a)、形成する潜像に変更がない場合は、DLC薄膜4の表面に形成された潜像の負電位の大きさが所定の閾値以下であるかどうかを判定し(ステップ9)、所定の閾値以下であればステップ1に戻り、所定の閾値より大きければステップ3に戻る。ステップ8aで形成する潜像に変更がある場合は、DLC薄膜4の表面に形成された潜像の負電位を初期化してグランド電位にして、逆電圧を印加し(ステップ10)、変更する潜像パターンのデータを配線パターン登録テーブル(図示しない)から読み出して移動制御部12に送信して(ステップ11)、ステップ1に戻る。
【0056】
なお、ステップ9で所定の閾値以下である場合に、ステップ10の初期化処理を行ってからステップ1に戻るようにしてもよい。
また、ステップ9の処理を省略して、形成する潜像に変更がない場合は、常にステップ1に戻って潜像を形成するようにしてもよい。また、条件によって潜像の電位に変化が少ない場合には、常にステップ3に戻って、めっき処理を行うようにしてもよい。
【0057】
次に、図11の、本実施形態に係るパターン形成装置の構成について説明する。図11において、図8と異なるのは、グランド電位部41としてアースに接続するアース端子44を有し、逆電圧印加部42として逆電圧電極45を有する点である。このアース端子44及び逆電圧電極45によるDLC薄膜4の電位の初期化は、図10のフローチャートでも示す通り、転写処理が行われた後で且つ潜像形成処理が行われる前に実行される。
【0058】
DLC薄膜4の電位の初期化は、必要に応じて行われる構成となっている。つまり、電位の初期化が必要である場合(例えば、潜像のパターンが変更される場合や繰り返しの処理により潜像の精度が下がってきた場合等)にのみ、アース端子44及び逆電圧電極45がDLC薄膜4と接続され、DLC薄膜4の表面に形成された潜像を初期化する。初期化が必要ない場合には、DLC薄膜4とアース端子44及び逆電圧電極45は接続されない。
【0059】
このように、本願に開示するパターン形成装置によれば、DLC薄膜4の電位をグランド電位にし、転写処理を行った後で且つ潜像を形成する処理を行う前に、DLC薄膜4に印加した電圧と逆極性の電圧を、当該DLC薄膜4に印加するため、潜像のパターンを初期化して自由に変更することができ、1つのパターンの繰り返しだけではなく、様々な配線パターンを連続的に形成することができる。
【0060】
また、DLC薄膜4の電位をグランド電位にし、逆極性の電界を印加するという簡易な作業を行うだけで、潜像をクリアして新たな潜像に形成し直すこともできるため、様々なパターンの潜像を形成する場合に、処理の効率を格段に上げることができる。
【0061】
以上の前記各実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【0062】
なお、上記各実施形態においては、炭素系薄膜としてDLC薄膜を使用したが、炭素系薄膜であれば何でもよい。
また、上記各実施形態における電極13は、先端が尖った形状を有するものを示したが、パターニングされている電極であってもよい。つまり、電極13を走査させてパターンを形成するのではなく、すでにパターンが形成されている電極13をDLC薄膜4に近づける。そうすることで、電極13を複雑に走査させなくても、所定時間だけDLC薄膜4に電極13を近づけるだけで、簡単にパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施形態に係るパターン形成装置の機能ブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】潜像形成部の斜視図である。
【図4】潜像形成部が潜像を形成した結果を示す図である。
【図5】めっき部の斜視図である。
【図6】転写部の斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図である。
【図9】その他の実施形態に係るパターン形成装置の機能ブロック図である。
【図10】その他の実施形態に係るパターン形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】その他の実施形態に係るパターン形成装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 パターン形成装置
2 潜像対象物
3 プリント基板
4 DLC薄膜
5 めっき槽
6 めっき液
7 転写基材
10 潜像形成部
11 電圧印加部
12 移動制御部
13 電極
20 めっき部
21 浸漬部
22 取出部
30 転写部
31 接着部
32 加熱部
40 電位差初期化部
41 アース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に導電体の配線パターンを形成するパターン形成装置において、
炭素系薄膜の表面に電極を対向して配設し、当該電極を正電位として当該炭素系薄膜との間に放電が生じる電位差未満の電位差による電界を印加する印加手段と、
前記印加手段が電界を印加した状態で、前記電極を前記炭素系薄膜との間で所定の距離を保って走査させて当該炭素系薄膜の表面に潜像を形成する電極制御手段と、
前記電極制御手段により前記潜像が形成された炭素系薄膜を含む潜像対象物を所定の金属イオンが含まれる電解液に浸漬する浸漬手段と、
前記浸漬手段による浸漬後の前記潜像対象物について、前記電極制御手段により潜像が形成された面に、転写対象物となる前記基材を接着させて前記潜像に吸着した金属からなる導電体を転写する転写手段とを備えるパターン形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成装置において、
前記潜像対象物が、前記電解液が収容された電解槽内に配設され、当該電解液に一部の領域が浸漬した回転式のドラムの表面に前記炭素系薄膜が堆積されたものであり、
前記電極制御手段が、前記回転式ドラムの繰り返しの回転動作と共に、前記潜像対象物における前記電解液に浸漬している領域以外の領域に、前記転写手段が転写処理を行った後で且つ前記浸漬手段が浸漬処理を行う前に、前記電極を走査させて潜像を形成するパターン形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成装置において、
前記炭素系薄膜の電位をグランド電位にするグランド電位手段と、
前記ドラムによる繰り返しの回転動作と共に、前記転写手段が転写処理を行った後で且つ前記電極制御手段が潜像を形成する処理を行う前に、前記炭素系薄膜に印加した電界と逆極性の電界を、当該炭素系薄膜に印加する逆印加手段とを備えるパターン形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記炭素系薄膜がダイヤモンド様カーボン(DLC:Diamond Like Carbon)であるパターン形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記電極と前記炭素系薄膜との距離が1μm以上、100μm以下であるパターン形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記電極が印加する電界強度の絶対値が0.5V/μm以上、50V/μm以下であるパターン形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のパターン形成装置において、
前記炭素系薄膜が、不純物を添加されたものであるパターン形成装置。
【請求項8】
基材に導電体の配線パターンを形成するパターン形成方法において、
不純物が添加された炭素系薄膜の表面に電極を対向して配設し、当該電極を正電位として当該炭素系薄膜との間に放電が生じる電位差未満の電位差による電界を印加する印加工程と、
前記印加工程で電界を印加した状態で、前記電極を前記炭素系薄膜との間で所定の距離を保って走査させて当該炭素系薄膜の表面に潜像を形成する形成工程と、
前記形成工程で前記潜像が形成された炭素系薄膜を含む潜像対象物を所定の金属イオンが含まれる電解液に浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程で浸漬された潜像対象物を前記電解液から取出する取出工程と、
前記取出工程が取出した前記潜像対象物について、前記形成工程にて潜像が形成された面に、転写対象物となる前記基材を接着させて金属からなる導電体を転写する転写工程とを含むパターン形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン形成方法において、
前記潜像対象物が、前記電解液が収容された電解槽内に配設され、当該電解液に一部の領域が浸漬した回転式のドラムの表面に前記炭素系薄膜が堆積されたものであり、
前記印加工程、形成工程、浸漬工程、取出工程、及び、転写工程が、前記回転式ドラムの繰り返しの回転動作に伴って、繰り返して実行されるパターン形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン形成方法において、
前記炭素系薄膜の電位をグランド電位にするグランド電位工程と、
前記ドラムによる繰り返しの回転動作と共に、前記転写工程後で且つ前記形成工程前に、前記炭素系薄膜に印加した電界と逆極性の電界を、当該炭素系薄膜に印加する逆印加工程とを含むパターン形成方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記炭素系薄膜がダイヤモンド様カーボン(DLC:Diamond Like Carbon)であるパターン形成方法。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記電極と前記炭素系薄膜との距離が1μm以上、100μm以下であるパターン形成方法。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記電極が印加する電界強度の絶対値が0.5V/μm以上、50V/μm以下であるパターン形成方法。
【請求項14】
請求項8ないし13のいずれかに記載のパターン形成方法において、
前記炭素系薄膜が、不純物を添加されたものであるパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−40983(P2010−40983A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205447(P2008−205447)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【Fターム(参考)】